IPEの果樹園2017
今週のReview
12/18-23
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エルサレムをイスラエルの首都に ・・・Brexit交渉の1つの前進 ・・・トランプ減税と戦争 ・・・勢力均衡を恐れるな ・・・金融危機からの回復 ・・・ユーロ圏と政治統合 ・・・日本経済の転換 ・・・金融革命の時代 ・・・超低金利政策
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● エルサレムをイスラエルの首都に
NYT DEC.
7, 2017
Trump Is
Making a Huge Mistake on Jerusalem
By HANAN ASHRAWI
イスラエルが1967年の第3次中東戦争で東エルサレムを軍事的に占領して以来、アメリカと国際社会は、イスラエルが境界を非合法に拡大し、併合して、ヨルダン川西岸から切り離すために、その外周においてパレスチナ人の土地へ入植者の住宅を建てる行為を拒否してきた。水曜日のトランプの発表は、イスラエルの違法行為を合法化するものだ。そのメッセージは、アメリカがもはやいかなる国際合意や規範にも従わない、力や強制が正義や法律よりも勝る、ということだ。
The
Guardian, Saturday 9 December 2017
Jared
Kushner is wreaking havoc in the Middle East
Moustafa Bayoumi
パレスチナからイエメンまで、中東全体がこの1週間で炎に包まれたようだ。すでに分裂していた地域だが、最近お出来事はそれを悪化させた。このカオスが生まれるのにJared
Kushnerが果たした役割は何か?
彼は大統領の特別顧問として、中東全体を創り変えることを決意したように見える。新しく親友となったサウジアラビアの、32歳、サルマンMohammed
bin Salman皇太子とともに、混乱を広めつつある。サルマンが前代未聞の宮廷クーデタを始める数日前に、クシュナーは未発表のリヤド訪問を行っていた。2人がどのような相談をしたか、われわれにはわからないが、トランプはTweetで、サルマンを「大いに信頼」している、と書いた。
クシュナー=サルマン同盟はリヤドの政変だけにとどまらない。その新しい「和平」取り決めは、パレスチナ人やアラブの指導者たちにとって、これまでになくイスラエルに偏ったものである。「パレスチナには見せかけの国家だけで、占領地は切り離されたセグメントのまま支配され、東エルサレムは首都ではなく、パレスチナ難民には帰還する権利がない。」
イエメンは人道的な破滅の瀬戸際にある。その主要な理由は、サウジアラビアが封鎖しているからだ。サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、ますます自由にイエメンを攻撃するだろう、と言われている。トランプとその義理の息子が同意したから、と。それはまた、ティラーソン国務長官をイライラさせる。国務省では中東に関する責任者がどれも空席のままだ。さまざまな悪い事態が予想されるのに、だれも政権に発言できない。ホワイトハウスは中東外交に関して決定権を独占し、国務省を完全に消去した。
イランを孤立させる情念において、クシュナーとサルマンは一致し、彼らの周りには破壊が口を開ける。中東の住民を犠牲にして、専制君主との同盟を優先することが、アメリカ外交の歴史であった。
ますます少数者の手に権力が集中されていく。密室で語られる彼らのアイデアはすでに破滅でしかないのに、だれがそれを伝えるのか?
FT
December 11, 2017
President
Trump has a chance to bring peace to the Middle East
Ghanem Nuseibeh
エルサレムは、繰り返し、戦争する集団がその国をより大きな地域紛争に引き込むために攻撃目標となってきた。イラクの元大統領サダム・フセインが、1990年代の初めに、第1次湾岸戦争でエルサレムをロケットで攻撃した。
トランプの決定がフセインよりも効果的に、エルサレムの未来を変えるかどうか、歴史が明らかにするだろう。エルサレムをイスラエルの首都と認定することは、彼が中東和平に失敗した過去の大統領たちと同じ列に加わったように見える。
エルサレムは、何よりも、その人々に帰属するのであり、アラブ人、ユダヤ人、すべてのものだ。私は都市の最も古いアラブ家族の一員である。十仁軍によって89年間の中断された時期を除けば、私たちは1400年以上もここに住んできた。いくつもの帝国が現れては消えたが、エルサレムが人々に対して持つ神聖さは、その宗教やエスニシティーに関係なく、強まり続けた。
今、トランプは、平和の指導者となる、改善に向かう特異な機会を得た。排除は宗派闘争と流血をもたらす。エルサレムをイスラエルの首都としてだけ認めることは、キリスト教徒やイスラム教徒の歴史を排除するものだ。
彼の任務は単純だ。エルサレムをパレスチナの首都としても認めるのだ。トランプは、エルサレムを平和の都市として、ユダヤ人だけでなく、キリスト教徒やイスラム教徒にとっても平和の都市にできるだろう。
● Brexit交渉の1つの前進
FT
December 8, 2017
The Brexit
monomania built on blind faith
TIM HARFORD
イギリスの政界におけるエスタブリシュメントがクリスマス休暇に読む本としては、William
Goldingの『尖塔』The
Spireがおすすめだ。
400フィートの尖塔を建てることに執着した男Dean Jocelinを描く小説だ。彼は、高い尖塔を建てようとするが、それは土地の状態や嵐の恐れから断念すべきだ、と説得されてもあきらめなかった。彼の野心の強さが他の義務を放棄させ、教会やそのコミュニティーの脅威となっていた。彼には何も見えなかった。
イギリスがBrexitについて抱いた熱狂的展望は、Jocelinに従う者たちが彼の意志に見たものだ。昨年の夏、Brexit担当大臣となったDavid
Davisは予言した。イギリスは2年以内に「EUよりはるかに大きな」自由貿易圏の交渉ができるだろう、と。17か月が経った。Davisがその当時見たものは、何であれ、現実ではなかった。
証拠を示しても、Jocelinはそれを認めない。彼は専門家たちの声を無視した。「私は助言を退け、信念において尖塔を建てる。それしかない。」
もちろん、純粋な決意が何らかの方法を見出して実現することもある。偏執によって世界は変わった。ときには良い方へ。スティーブ・ジョブズがAppleを始めたころのように。Brexitが最終的に称賛されるものであるかどうか、それは将来の歴史家が決めることだ。
Jocelinの野心は、尖塔を建設する労働者の軍団を必要とした。軍団は無辜の人々を殺戮する。天に向けてJocelinは告げた。「どうぞあなたの思うままに、犠牲を支払います。」
結末で、Jocelinはその地位も尊厳も失う。ついに嵐が来たのだ。現実がそれを確認した。強い圧力を受けて、ビジョンが、夢に執着する者が、尖塔が砕けた。「私は偉大な仕事をしていると思っていた。」と彼は告白する。「しかし私のしたことは破滅をもたらし、憎悪を広めただけだった。」
Brexitは、まだ、砕けていない。
● トランプ減税と戦争
PS Dec 11,
2017
Populist
Plutocracy and the Future of America
NOURIEL ROUBINI
ドナルド・トランプがアメリカ大統領になったのは、経済ナショナリズムのポピュリスト的公約に基づき、労働者階級と白人保守派の支持を得たからだ。トランプは、共和党の伝統的な政策、大企業に親密な、自由貿易を推進する政策を拒んで、バーニー・サンダースのような、破壊的な技術と貿易・移民を促す「グローバリスト」政策で傷ついたアメリカ人に呼びかけた。
しかし、トランプはポピュリストとして選挙を戦い、プルートクラット(富裕層による政治支配の信奉者)として統治する。最近では、共和党の執着するサプライサイド理論というまやかしを支持した。ワシントンD.C.やウォール街の汚物を洗い流すと約束したが、政権には億万長者とゴールドマンサックスの出身者が並ぶ。大企業のロビイストたちは今までにないほど繁栄している。
トランプは、生産拠点を海外に移す企業や、課税逃れをする企業に対して、攻撃するTweetをしたが、それは見せかけに過ぎないことを経営者たちは知った。メキシコや中国などへ、製造業の工場移転は続いている。同様に、移民を激しく攻撃したが、実際の移民政策は穏当なものである。トランプの選挙戦を支援した経営者たちの多くが、より穏健なアプローチを好むからだ。
トランプは、皆が言うように、ポピュリストの衣装を着たプルートクラットだ。しかし、なぜ彼の支持基盤は自分たちを傷つけるような政策を採る彼を支持し続けるのか? 彼らは、非常に保守的な人々、ナショナリスト、宗教的信念の強い、沿岸部のエリートを憎む白人の肉体労働者たちなのか?
「パンとバター」を棄てて「神と銃」を支持する、と、どれほど長く期待できるのか? ローマ帝国のプルートクラットたちは、ポピュリストの群衆を取り込んでおくには「パンとサーカス」が必要なことを知っていた。
共和党があわただしく議会を通過させた減税は、特に危険である。多数の中産階級、低所得者層が、わずかしか得られないだけでなく、時間を経て所得減税が失われると、実際には、より多くを支払うだろうから。さらに、共和党はオバマケアも廃止するつもりだ。
それにもかかわらず、トランプと共和党員たちは、結局、中産階級の増税を先延ばしすることで、2018年の中間選挙、2020年の一般選挙に勝ち、その年の大統領選挙に向けて、2019年に刺激策の効果がピークになると考えて、リスクを取ったのだ。民主党が強い州に不利な形で、また、社会給付を増やすことができないようにする戦略(“starve
the beast”)を信じるからだ。
世界経済の拡大が続けば、トランプは少なくとも株価上昇を自慢できる。減税と規制緩和で雇用が増える、と思っているだろう。アメリカの成長率は、専門家たちの推定を無視して、4%に高まると主張する。トランプはフェイク・ニュースを流し、かつてない「最大かつ最高」の経済状態を吹聴する。こうすることで、ローマ帝国のサーカスに代わるものを彼は提供しているのだ。
しかし、そのもやもやした大言壮語だけでは十分でないとき、彼は攻勢に出る、特に国際政治で攻撃的になるだろう。NAFTA離脱、中国への貿易制裁、強烈な移民排斥。さらに最後の選択肢がある。ローマの皇帝たちや他の独裁者たちが、内政の困難さに苦しむとしたことだ。すなわち、外部の脅威を誇張し、外国における軍事的冒険を企てて、支持者たちの関心を、彼と共和党が議会でしていることから逸らすのだ。
北朝鮮やイランとの戦争を始めるかもしれない。イスラム教徒の邪悪さを強調し、怒りを煽って、ISISに多くのテロリストを提供するかもしれない。多数のテロ攻撃が起きることで、彼は「言ったと通りだ」と主張する。事態がさらに悪化すれば、彼は非常事態を宣言し、市民の自由を停止して、アメリカをまさにプルートクラットの支配する権威主義国家に変える。
上院外交委員会の委員長、共和党議員のBob
Corkerは、はっきりと警告した。トランプは第3次世界大戦を始めるだろう、と。信じないなら、ロシアとトルコの最近の歴史、ローマ時代のカリギュラやネロの時代を観ることだ。トランプ皇帝の君臨する時代が、すぐそこまで来ている。
● 勢力均衡を恐れるな
FP
DECEMBER 8, 2017
Who’s
Afraid of a Balance of Power?
BY STEPHEN M. WALT
国際関係論の入門で「勢力均衡」という言葉を聞かないとしたら、授業料を返してもらうべきだ。ツキディデス、ホッブズ、古代インドのカウティリヤ、現代のリアリストたちE.H.
Carr, Hans J. Morgenthau, Robert Gilpin, and Kenneth Waltzが書いている。
しかし、アメリカの外交エリートたちはしばしばそれを忘れてきた。その代わりに、ロシアや中国に関して、権威主義体制や反アメリカ主義のような、イデオロギー的連帯を強調する。
勢力均衡のロジックは単純だ。他国の侵略から自国を守ってくれる世界政府はなく、国家は自分の資源と戦略で危険を避けねばならない。強力な敵対する国家が現れた場合、より多くの資源を求め、同じ危険に直面する他国との同盟を模索する。
バランスのための同盟化の相手には、かつての敵国や、将来において敵になると思う国も含まれる。チャーチルはこのロジックを完璧に理解していた。「もしヒトラーが地獄を責めるなら、私は議会で悪魔たちについて好意的な発言をするだろう。」
アメリカ外交の担当者や評論家は、しばしば、勢力均衡のロジックが同盟国や敵国をどのような行動に向かわせるか、正しく理解していない。そして、その外的環境(直面する脅威)より、内的な性格(指導者の性格、政治経済体制、支配的イデオロギー、など)を重視する。それはいくつかの仕方で間違いを生んだ。
1.既存の同盟関係の結束や持続性を誇張する。NATOがそうだ。「共有された価値観」は、大西洋を超えて30もの国を同盟化するには不十分だ。トルコ、ハンガリー、ポーランドはリベラルな諸価値を放棄した。
2.他国が自分たちに敵対する同盟を組むたびに驚き、困惑する。ジョージ・W・ブッシュ政権が、フランス、ドイツ、ロシアが連携してアメリカの求めるイラク侵攻の安保理決議に反対したとき、驚愕したように。しかし、彼らはサダム・フセインを打倒することがもたらす危険を正しく理解していた。
3.敵を実際以上に団結しているとみなす。世界中のすべての共産主義者がクレムリンの忠実な手先であると考えたり、中国とソ連との間にある反目を見逃したりした。イラン、イラク、北朝鮮を合わせて「悪の枢軸」と呼んだり、イスラム過激派のさまざまな運動を「イスラモ・ファシズム」として同一の行動原理に従っていると考えたりした。
4.アメリカの主要な地政学的優位を消耗している。西半球で唯一の大国として、アメリカは同盟国の選択や交渉において圧倒的な自由度を持っている。遠隔の地でも、諸国や非国家アクターを競わせ、アメリカの支持を与えたり、奪ったりできる。アメリカと敵対する諸国の対立を促すことができる。そのためには、外交の柔軟性、諸地域の事情に関する高度な理解、他国との「特別な関係」を避ける、異なった性格の諸国を過剰に敵視しない、ということが重要だ。
残念ながら、アメリカは過去数十年間、それと全く反対のことをしてきた。
● 金融危機からの回復
NYT DEC.
13, 2017
The Global
Economy Is Partying Like It’s 2008
By DESMOND LACHMAN
いわゆる大後退Great
Recessionは、2008年後半に始まって、2009年半ばまで続いたが、高騰していた住宅価格や様々な資産価格が暴落した。あとから見れば明らかなことであったが、だれも暴落を予想していなかった。
われわれは同じ間違いを犯しつつあるのか? 明らかに、そうらしい。世界の資産価格は再び急速に上昇している。つまり、バブルだ。10年前よりも広がっている。元FRB議長のグリーンスパンは、世界の主要中央銀行が続けてきた非正統的な極端に緩和した金融政策の下、政府債券はグローバルなバブルを生じており、長期金利が歴史的な低水準となっている、と警告した。その結果、新興市場の企業債務、リスクの高い債務が急増している。
超低金利の時代は終わる。アメリカ連銀はすでに金利を引き上げ始めた。多くの主要新興諸国に断層線が走っている。特に、深刻な公的債務と不安定な銀行システムを抱えるイタリア、政治的混乱と持続不可能な公的債務の増大を続けるブラジル、アメリカを超える住宅債務、信用膨張を示す中国では、それが顕著である。
アメリカのNAFTA離脱や、朝鮮半島の軍事衝突がバブル崩壊のきっかけになるかもしれない。それにもかかわらず、金融担当者たちは2008年のリーマン・ショックから学んだ銀行規制に満足し、安全性を過信している。彼らは、バブルを防ぐには遅すぎるが、ブームと破たんのサイクルが襲ってきたときの対策を用意する時間はある。それはほぼ10年おきに起きた。たとえば、M.フリードマンの「ヘリコプター・マネー」を市民に供給して不況を回避する対策だ。
しかし、世界最大の経済を指導する地位にトランプが就いていることは、アメリカ政府がバブル崩壊に対処する能力を制約するだろう。そのことが一層の異常な金融緩和策に依存する結果となり、再び、次のブームと破たんのサイクルを招来する。
● ユーロ圏と政治統合
PS Dec 11,
2017
Does
Europe Really Need Fiscal and Political Union?
DANI RODRIK
ギリシャの元財務大臣Yanis
Varoufakisとドイツの元財務大臣Wolfgang
Schäubleは、ギリシャ債務問題に関して天敵の関係にあったが、ユーロ圏の将来に関して一致する見解を示した。すなわち、通貨同盟には政治同盟が必要である。中間の道はない、ということだ。
しかし、それとは異なる意見もある。財政統合も政治同盟も必要ない、というものだ。FTのMartin
Sandbuは、民間の金融と政府の財政とを切り離すべきだ、と主張している。民間金融部門はヨーロッパ全体で完全に統合し、他方、財政は個々の加盟国に委ねられる。政府による民間銀行の救済を止めさせるには、そのような改革が必要だ、と考える。銀行の破たんはその所有者と債権者によって負担され、ベイル・アウトではなくベイル・インが行われる。
カリフォルニア大学、バークレー校のBarry
Eichengreenも、財政政策の再国有化を主張する。それは、財政の悪化を民間銀行システムに負担させることをやめさせるために必要だ、と考えるからだ。財政破たんした政府は、他のEU諸国によって救済されるのではなく、自ら債務を組み変えねばならない。
しかし、こうした提案が本当に有効か、はっきりしない。経済政策が国民国家によって決定される限り、ソブリン・リスクは続くだろう。主権国家は、常に、事後的にルールを変更できるし、ローカルな金融・財政ショックは容易に分散化できない。アメリカではどうなっているのか? 彼らの提案する改革はすでに実現している。地域経済の悪化は波及しない。なぜなら、信用力は借り手のファンダメンタルズによって決定され、居住する州ではないからだ。だれも州政府が、州間貿易に介入する、破産法を書き換える、独自通貨を発行する、とは思わない。
州政府が主権の大部分を行使しないのは、その必要がないからだ。州の住民は中央から財政移転を受けている。連邦政府の政策を決定するため、彼らの代表をワシントンD.C.に派遣している。
EUはそうではない。加盟国とEU諸機関との関係は非常に異なっている。なぜなら彼らは主権を保持しているからだ。金融市場に介入する可能性がある。EUにおける金融的ショックが同じ国にいることで他のすべての借り手に影響するだろう。われわれは民間金融と公的金融が分離されているふりをしても無駄だ。
現代社会では、金融は金融市場の利益を越えて、公共の目的に従う。それは必ず政治化するのだ。
● 金融革命の時代
Bloomberg
2017年12月12日
Must-Reads
of 2017: How Finance Ate Everything
By Pankaj Mishra
30年前、世界経済には革命が起きた。われわれはその政治的な結果を生きている。その革命とは金融革命だ。金融サービスが、銀行、ヘッジ・ファンド、トレーディング・ハウスによるものだが、アメリカ経済で最大の産業になった。成長のエンジンは工業生産性から市場投機に変わった。資本移動が世界中で、税制と規制を自由化したのだ。
それは予想外のものであり、十分に理解されてもいない。少数の急速に豊かになる者がいたし、多くの者が失望し、苦しんだ。すべての大陸で政治は不安定化し、トランプのようなデマゴーグが力を得た。
19世紀の産業革命も人類史の新しい時代を拓いた。大衆が政治に参加し、不平等は政治問題となって解決を求め、社会主義思想や帝国主義が広まった。
脱工業化した社会、モノを売るより、貨幣から貨幣を生み出す経済の意味を理解するために、3冊の本を取り上げる。
Joseph Vogl’s “The Ascendancy of Finance”
Rana Foroohar “Makers and Takers: How Wall
Street Destroyed Main Street”
Sheelah Kolhatkar’s “Black Edge: Inside
Information, Dirty Money and the Quest to Bring Down the Most Wanted Man on
Wall Street”(新版)
1980年代から、国民国家ではなく世界経済が、より大きな主権を行使するようになった。「現代金融は、・・・意思決定を集中する。」 それは主権国家とは別に侵攻しており、民主的意思決定過程をバイパスする。政府はこうしたシステムを改革することに失敗し、弱者が犠牲となって、システムに対する怒りが広まった。トランプの成功は、ウォール街が破滅的な失敗を犯したことの結果である。金融の億万長者たちが集まれば、いかに小さな集団が容易に民主主義を解体できるか、が示された。福祉、年金、貯蓄、医療、教育が金融システムのリスクと結びつくようになった。多数のアメリカ市民がその参加者にされた。
しかしForooharが書いたように、金融化によって成長の見せかけはできても、賃金の停滞、不平等、雇用の不確実さは解決されない。
● 超低金利政策
PS Dec 14,
2017
Surveying
the Damage of Low Interest Rates
ANDERS ÅSLUND
金融危機以後,超低金利政策が長期化している.ケインズ主義者たちのコンセンサスでは,今金融を引き締めることは間違いだ,という.
しかし,インフレーションの測定は恣意的であり,2%という目標も恣意的だ.巨額の財政刺激策が公的債務を累積させたことも心配だ.
通常,金融危機は構造改革を刺激するはずだ.しかし,金融危機後のゼロ金利で,それは全く起こらなかった.シュンペーター型の創造的破壊を避けたのだ.過去において超低金利を続けた後には赤字支出の増大とバブル崩壊が起きた.いつ,どこで,バブルが破裂するかは予測できないが,金融危機の研究者たちが示すことは無視できない.
世界中にバブル現象を見いだせる.タジキスタンのような,貧しい,経済運営を失敗している国が,ユーロ債を発行する.その買い手がいるからだ.中産階級の年金は運用先に苦しんでいる.保険も,銀行も,ビジネスが成り立たない.不透明で,投機的な金融手段に資金が流れ込んでいる.低利融資によって栄えるそのような金融機関は,しばしば税金を回避し,さまざまな優遇策を利用している.
低金利の利益は人口の大部分が受け取るのではなく,中産階級に及ぶ者ではない.人口の0.1%でしかない超資産家たちが得るのだ.低金利を支持するグローバルなプルートクラシーに対して,西側の制度は耐えられるのか?
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The Economist December 2nd 2017
The war the world ignores
Internal migrants in
China: Expelling Chinese people from Chinese cities
Yemen: From bad to worse
Society: Life imitates
nightmares
Free exchange: The second
chance
(コメント) イエメンの戦争がどのようにして拡大したのか,また,その終着点をどこに求めるべきか,興味深い考察を示しています.どのような軍事紛争も,その背景を知らねばなりません.サウジアラビアの皇太子やトランプ大統領,顧問のクシュナーが,どこまで真剣に理解していたのか.
中国の出稼ぎ労働者たちが,都市の巨大化を嫌う政府や都市住民によって弾圧されている,という記事を読んで,驚く人はいないと思います.しかし,それがSF小説となって,アメリカのヒューゴー賞を受賞した,というのには驚きました.
ユーロ圏の抱える問題は,次の金融危機までに解決できるのか? あるいは,SF小説になるのか?
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IPEの想像力 12/18/17
クリスマスから年末年始の休日に、何より、読書を楽しむのが最高でしょう。戦争,貧困,富裕層,バブルの物語,社会改革,難民,移住者,差別,新しい技術の普及過程,輸送,携帯電話に閉じ込められた時代,地球工学,・・・時代小説,スパイ,SF
Hao
Jingfangは若手の中国人作家です.彼女の書いた短編「折り畳み式の北京」
“Folding Beijing” がSF小説の分野で国際的に有名なHugo賞を受賞しました.
この物語の舞台は,人口が増大し,さまざまな公共サービスの不足,交通渋滞,病院・学校の混雑,騒音などに悩む市民たちの姿,「生活の快適さ」が重要な政治問題となった,世界中に見られる都市化現象です.
単なる小説ではなくSFであるのは,そこに示された解決策が空想的だからです.都市の住民たちは,政府によって居住できる地区だけでなく,生活時間を管理・配分されます.
First
Spaceの人々は富裕層であり,支配階級です.500万人が,午前6時から翌日の午前6時まで,まる1日を生活します.
Second
Spaceの人々は中産階級です.2500万人.彼らは2日目の午前6時に目覚め,その日の午後10時まで生活します.
Third
Spaceには,市民citizenではなくdenizen不法占拠民,都市底辺層です.彼らが目覚めるのは2日目の午後10時です.そして3日目の午前6時まで生活します.夜だけの人々です.
そして3日目の午前6時に,富裕層は目覚めて,この循環を繰り返すのです.
彼らは生活時間だけ目覚めているだけで,他の時間を眠るように政府が薬で管理します.こうすることで,スムーズに移動でき,公園を散歩し,病院で診察を受け,ショッピングをゆっくり楽しめます.もちろん,底辺層の人々が太陽の出ている青空を知らない,そして,望まないのであれば.
The
Economistが紹介する現実の北京は,東京とそっくりです.・・・11月18日の夕刻,倉庫と住宅を兼ねた建物から出火した.そのあたりは北京南部,出稼ぎの人々が住む貧民街である.都市政府は彼らのことを「最下層民」と呼ぶこともある.7歳の子どもを含む,19人の出稼ぎ労働者たちが焼死した.
北京の都市政府は人口の上限を2300万人と決めました.移入民を周辺の都市に向けるだけでなく,北京の底辺住民を強制的に退去させます.出稼ぎ労働者たちの職場を閉鎖し,電気や水道を止め,貧民街の住宅や道路が火災を防ぐ基準を満たさない,として破壊します.ホームレスとなって,極寒の街頭で困窮する人々に,自発的な避難シェルターを提供する慈善活動も禁止しました.
現実の北京で暮らす,いわゆるSecond
Spaceの中産階級にも,さまざまなスキャンダルが襲っています.・・・高額の幼稚園に通う子供たちに針で刺された跡がみつかった.幼児たちが薬を飲まされ,裸にされて性的に虐待された.幼児にカラシや殺菌剤を飲ませた.昼寝を拒む子どもの尻に青インクを注射した.
だから,都市を「折り畳む」ことは,不平等やストレスを抑制し,都市の公共財を有効に利用し,たとえ超富裕層であっても,都市に住む限りは人生の半分を失うという分担に従う,過剰都市化の現実に対する「理想的」な社会管理システムなのです.
まるで異なる惑星のように,小説でも現実でも,異なる階層の人々は隔絶した形で生活しています.しかし小説の主人公は,うっかり,異なる空間に足を踏み入れてしまいます.娘をダンス教室に通わせるため,追加の収入を得たかったからです.現実の北京でも,人々はWeChatにおいて,さまざまな意見や批判を表明しています.それは政府による検閲システムによって直ちに消去されても,次々に現れるのです.
The
Economistは,北京でも,ロンドンでも,政府による社会管理を好みません.人々は自由に移住し,市場の需給で決まる公共料金を払うべきだ,と考えます.・・・東エルサレムや「惑星ガザ」の住民たちにも,メリー・クリスマス?
Folding
Beijing
BY
HAO JINGFANG, TRANSLATED BY KEN LIU
https://uncannymagazine.com/article/folding-beijing-2/
"Society:
Life imitates nightmares" The Economist December 2nd 2017
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