前半から続く)


 北朝鮮危機の外交

NYT DEC. 3, 2017

To Stop North Korea, Act Like Israel

By NITSANA DARSHAN-LEITNER

北朝鮮の弾道ミサイル発射は経済制裁によっても抑えられない。約8000門の大砲とロケット発射台がソウルを標的にしている。事実上、1000万人の市民が人質となっている。

制裁や交渉を組み合わせても金一族の支配する北朝鮮は屈しない。それは北朝鮮が通常の国家ではなく、マフィアのように運営される犯罪組織であるからだ。

その犯罪帝国の膨大さは、the Strategic Studies Instituteによれば、麻薬の密輸、ドル紙幣の偽造、銀行口座のハッキング、核技術の販売、スカッド・ミサイルの密輸、軍によるクリプトカレンシーの略取、を含む。犯罪は北朝鮮の国家産業だ。

アメリカと同盟諸国は、イスラエルがテロ活動に対して行った闘いの歴史から学ぶべきだ。伝説的な兵士であり、諜報員でもあった、Meir Daganは、ハマスとの戦闘の中で、資金こそ自爆テロ活動の酸素である、と確信する。1996年、彼が創設した部隊Harpoonは、テロリストの司令官たちが口座を持つ銀行を標的にして、テロの犠牲者に金銭的な賠償を請求しようとしていたアメリカ連邦裁判所とともに、法律家の集団を支援した。その最大の成果は、第2次レバノン戦争中のインティファーダを抑えたことだ。

The Guardian, Monday 4 December 2017

Have we got just three months to avert a US attack on North Korea?

Mark Seddon

12000人が参加する米韓合同軍事演習が行われた。初めてアメリカ空軍のF22「ステルス」ラプターが参加した。演習に先立ち、北朝鮮の外務省は、トランプ政権が「核戦争を求めている」と述べ、トランプの安全保障担当顧問HR McMasterは、「北朝鮮はアメリカが即時に対応すべき脅威である」と語った。

先週、ロンドンと下院を訪れた、アメリカの元国連大使で著名なタカ派のボルトンJohn Boltonは、CIA幹部がトランプ大統領に、北朝鮮のICBMを阻止する猶予期間は「3か月」である、と告げたことを伝えた。3月を最終期限とする北朝鮮への予防攻撃は、数日前に、アメリカの司令官からヨーロッパ議会の元議員にも告げられている。ティラーソンから強硬派のポンペオMike Pompeoに、国務長官の交代も推測される。

この危機を抜け出す唯一の道は外交である。トランプ政権は今も中国の行動に期待している。しかし、北朝鮮はすでに戦時の石油備蓄をしているだろう。アメリカとの直接対話は望みがなく、6か国協議も失敗した。北朝鮮は国連を信用しないし、トランプ政権もアメリカ外交に反対しないときだけ国連を許容する。今、中国がグテーレス国連事務総長に要請して、双方に国連の主催する対話を呼びかけるときだ。中国とEUもこれに参加する。

軍事攻撃は地球にとって恐るべき結果をもたらす。

PS Dec 4, 2017

The Madness of King Donald

ELIZABETH DREW

NYT DEC. 4, 2017

Madeleine Albright: How to Protect the World From North Korea

By MADELEINE ALBRIGHT

オバマが選挙直後に初めて大統領執務室でトランプに会ったとき、北朝鮮DPRKが最も深刻な安全保障に関する課題になるかもしれない、と警告した。その警告は正しかった。

北朝鮮に対するトランプのアプローチは何ら一貫性がない。韓国の指導者を、宥和策だと非難し、自由貿易協定を破棄すると脅した。同様に、クリントン大統領も好戦的な北朝鮮に直面した。私は国連大使として、また国務長官として、政権に参加していた。われわれの焦点は、北朝鮮の核開発を止めることだった。われわれは国連で圧力をかけ、同時に、原子炉への軍事攻撃を含む、他の選択肢を考慮した。

幸い、外交によって軍事衝突は回避された。同盟諸国と緊密に協力して、北朝鮮を含む「枠組み合意」を得たのだ。北朝鮮は原子炉を閉鎖し、再処理されたプルトニウムを含む8000本の燃料棒を取り出し、プルトニウムの生産施設をIAEAの監視下で凍結する。その見返りに、アメリカと同盟諸国は、北朝鮮の燃料不足を解消し、新しく2つの原発を建設するコストを支払う。

しかし、「枠組み合意」は完全ではなかったし、双方とも実施が不十分であった。ブッシュ政権の誕生で、アメリカ政府は交渉を続けるより、対決する戦略を選択した。2003年までに「枠組み合意」は崩壊し、2006年、北朝鮮が最初の核実験を行ったのだ。

私が政権を去るとき、朝鮮半島には多くの可能な方向性がある、と思った。根本的には、北朝鮮指導部が、核兵器なしには生き残れない、と確信していることが問題だ。今、安定化のために北朝鮮に求める合意も、われわれが試みたものと大きく異ならないだろう。外交圧力、軍事的抑止、韓国・日本との緊密な協力、直接対話への呼びかけ、それを北朝鮮への報酬とみなさず、われわれの安全保障に必要であると理解することだ。

PS Dec 6, 2017

Understanding the North Korea Threat

JOSEPH S. NYE

まず、神話を解体することだ。アメリカは、危機を鎮静化して、北朝鮮の核を抑止できる。アメリカの目標が限定されていることを中後港に理解させ、中国との協力で、より高度な外交と経済の圧力を行使できる。

NYT DEC. 6, 2017

The Price of War With North Korea

By BARRY R. POSEN

トランプは朝鮮半島で戦争を始めることがもたらす人的コストを決して過小評価すべきではない。北朝鮮は、すでに韓国と日本に対する核攻撃が可能なミサイルを持っている。たとえ1つでも隔壁が到達すれば、都市が全滅するだろう。

アメリカが先制攻撃することは、もっとも北朝鮮の核兵器を破壊することに成功する可能性を高めるが、1つでも核が使用されれば、アメリカはその後の責任を何十年も問われるだろう。また、通常兵器や化学兵器による報復、テロ攻撃などを防ぐことはできない。

China Daily 2017-12-07

Moon's China visit key to peace amid tensions

By Jin Qiangyi


 ターニング・ポイント

NYT DEC. 3, 2017

A Fractured 2017

Roger Cohen

ウッドロー・ウィルソン大統領が14か条でアメリカの世界計画を示してから、1世紀が経った。彼は世界から貿易障壁を取り除き、住民の意思を尊重して植民地要求を調整するよう求めた。そして国際連盟を創設し、政治的独立と領土の一体性を大国にも小国にも保証する、と。しかし、ウィルソンは失敗した。世界の青写真を描く試みをアメリカは引き継いできた。2017年までは。

世界は、ドナルド・トランプの特異な直観とギャンブルのために準備されていた。ニューヨークで育った不動産取引業者である。彼は外交に国務省など必要ないと考えている。「唯一、重要なことは私だ。」 それは「ミーイズム」である。新しい世界秩序へトランプは猛進する。

何でもやれる世界。アメリカの処方箋はないし、道義的なコンパスも持たない。新しい真空状態の危険性を打ち消すのは、21世紀のソーシャル・ネットワークだ。境界線を越えてコミュニティーをつなぐ。戦後秩序の構造物は崩壊しつつあるが、まだ失われていない。トランプは、まだ、世界を崖の向こうに突き落としてはいない。

21世紀の世界はピラミッドだ。だれもがつながる世界でも、だれもがサミットに並ぶエリートのように力を得るわけではない。彼らは何でも知っており、見た物を金の泉に変えてしまう。彼らはグローバルに活躍し、低賃金や低税率から利益を得る。彼らはもはや下々の大衆とつながることは気にしない。大衆は今もナショナルで、ローカル文化に帰属し、グローバリゼーションの変貌に苦しんで、怒りを高めている。

怒りはトランプの馬車である。ナショナリズム、ネイティビズム、ゼノフォービア。民族が失われた世界でも、主権はますます重要だ。ヴァーチャル・リアリティーに人は生きるから。西側民主主義のどこでも、トランプは人間の悪しき本質を解放する手助けとなる。

NYT DEC. 4, 2017

Bill Clinton: Americans Must Decide Who We Really Are

By BILL CLINTON

NYT DEC. 4, 2017

Why Does Our Side Keep Losing Elections?

By ORHAN PAMUK

NYT DEC. 5, 2017

What China Can Teach Developing Nations About Building Power

By JUSTIN YIFU LIN

NYT DEC. 5, 2017

Where Is Latin America Headed?

By JORGE G. CASTAÑEDA


 社会的移動性

The Guardian, Monday 4 December 2017

Upward mobility has been shattered. And no one in power cares enough to fix it

Paul Mason

資本主義を救いたかったら、社会的な移動性を高めることだ。1950年代の労働者階級の若者たちは、社会的な上昇、非暴力の、やさしさ、改善策を熱望していた。安い家賃、無料の教育、崩壊する家族に代わる積極的な社会政策。無関心を強めるより、社会慈善活動家によって運営されるテレビ局。

FT December 7, 2017

UK politics: can business learn to live with a ‘hard-left’ Labour?

Jim Pickard and Sarah Gordon in London


 トランプ減税と紳士同盟

FT December 4, 2017

The Republicans’ faith-based tax plan

RANA FOROOHAR

FT December 4, 2017

Thousands will die as a consequence of this new tax bill

LAWRENCE SUMMERS

Bloomberg 2017125

Trump's Economic Revolution Is All About Investment

By Tyler Cowen

トランプの経済革命の核心は、通商政策ではなく、投資にある。トランプ主義者の望みと共和党の願いが重なる部分を観れば、それはこうだ。アメリカを新しい、支配的な、投資の中心地にしたい。他国を犠牲にしても。

共和党は法人税率を20%に引き下げることに固執する。これはおそらく外国投資を大量に引き寄せる。もしフラッキングがアメリカを次のサウジアラビアにするとしたら、減税はアメリカを次のアイルランドにする。しかも、はるかに大きな規模だ。その前提には、より多くの投資がもたらす利益は、多くのアメリカ人に直接税が増えることを相殺する、という信念がある。

それは新しいサプライサイド経済学だ。1980年代のそれは、主に個人に焦点を当てていた。減税が個人や企業のパワーを解放し、労働や投資は増える、と。今の理論は企業集団に注目する。

減税案と通商政策とはその基礎にある哲学が同じである。大統領が最初にしたことの1つは、TPPからの離脱であった。ナショナリストから見れば、TPPは通商政策ではなく、ベトナム、マレーシア、その他の新興経済に、多国籍企業が投資することを安定的に承認するものである。アメリカから多くの投資が失われる。

政策の核心は、通商ではなく投資である。国際経済学の視点では、アメリカに向けた投資が増えれば、貿易赤字が増えるだろう。それはトランプの選挙公約に反する。

トランプ政権はすぐに中国に対する不満を強めるだろう。しかし、重要なことは、アメリカが中国からの投資をどこまで受け入れるか、である。アメリカの投資は長期的に減少しており、投資の促進は新産業、技術革新、賃金を高めて、最終的に税収を増やす。アジアの貯蓄過剰が消滅する過程で、外国投資を引き寄せることはむつかしくなる。

私はまだ、相互の優位を生かすグローバルな通商秩序を築く戦後の計画を信じている。アメリカは多くの国に利益をもたらし、アメリカも互恵的に利益を得た。しかし、トランプ政権はそうしたアプローチから離れていく。しかし、細部は不明であっても、これがトランプのもたらす経済政策の革命だ。

PS Dec 5, 2017

Trump’s Willing Accomplices

IAN BURUMA

1933220日、ベルリンにおいて、ゲーリングHermann Göringの豪邸で開催された秘密会議に、20人を超えるドイツ産業の指導者たちGustav Krupp, Friedrich Flick, and Fritz von Opelが参加した。彼らはヒトラーの演説を聴いた。ヒトラーは、彼らの資産は安全だ、と約束し、その結果、ナチ党は200億ライヒスマルク以上の資金を得た。それは当面の選挙資金を十分に賄う莫大な額であった。

彼らのほとんどだれも、ナチスを信奉していなかった。彼らは保守的な紳士同盟the German Herrenklub (Gentlemen’s Club)のメンバーであったが、国家社会主義者ではなかった。しかし、狭隘な私的利益に従い、ヒトラーの擁護者となった。

そうすることで、彼らは、大量殺戮や、採取的に時刻を滅ぼした、犯罪体制の共犯者になったのだ。彼らの企業は奴隷労働から大きな利益を得た。トーマス・マンは紳士同盟を「時代の方向を決めた」と非難したが、彼らは戦後も、わずかな禁固刑だけで、昇進を妨げられなかった。

ドナルド・トランプ大統領はナチの独裁者ではない。しかし、民主主義を脅かし、自由な報道や司法の独立性を攻撃する。ネオナチを含む、群衆の暴力を称賛している。多くの共和党指導者たちはトランプと協力し、億万長者たちも彼に選挙資金を与えた。少数の政治家を除いて、だれもトランプを支持していないが、その理由はドイツ紳士同盟と同じだ。狭隘な私的利益、自分が権力にとどまること、支援者たちに大きな利益をもたらすことだ。

その最たる例が、最近、上院を通過した税制法案だ。貧困層や社会的に弱い立場の者を犠牲にして、大企業と富裕層に利益をもたらす。党派性のない議会予算局によれば、アメリカの財政的な健全さを損ない、2027年までに12140億ドルの赤字をもたらす。

短期的に、富裕層や企業は利益を受けるだろう。まだしばらく株価は高騰を続けそうだ。しかし長期的に、財政赤字は膨張し、国際的な通商協定は破棄され、重要なインフラ・教育・医療に十分な投資を行わないことで、事態は悪化するだろう。

NYT DEC. 5, 2017

Tax Plan Aims to Slay a Reagan Target: The Government Beast

Eduardo Porter

Bloomberg 2017125

Our Broken Politics Only Encourages Deficit Busting

By Megan McArdle

FT December 6, 2017

US tax reform will benefit shareholders more than workers

MICHAEL MORITZ

PS Dec 7, 2017

America’s Broken System

J. BRADFORD DELONG

アングロサクソン型の代議制モデルは深刻な問題を示している。しかも、解決策がない。もはや誰も、Brexitやトランプ大統領を生んだシステムを他国に推奨できない。


 インド

FT December 4, 2017

The Taj Mahal is caught in a tug of war over Indian identity

AMY KAZMIN

Bloomberg 2017127

India's the Anti-Goldilocks Economy

By Mihir Sharma


 プーチン後の始まり

FT December 4, 2017

Changing the rules: what comes after a Putin election victory?

Kathrin Hille in Moscow

Alexei Navalnyは、おそらく、来年3月の大統領選挙から排除されるだろう。彼は、どこに選挙戦があるのか? と問う。

だれが勝つかは明白でも、選挙はロシア政治の未来を決める点で重要だ。それは、プーチンがだれに、いつ、どうやって権力を渡すのか、ということだ。

FT December 6, 2017

Liberal America’s unhealthy fixation on Russia

EDWARD LUCE

FP DECEMBER 6, 2017

Vladimir Putin Isn’t as Russian as He Seems

BY JOHN SIPHER

FT December 7, 2017

Russia’s Olympic ban is a sad but necessary step

FP DECEMBER 7, 2017

Putin Uses Olympic Ban to Rally Support for His Presidential Bid

BY AMIE FERRIS-ROTMAN

Bloomberg 2017127

Russia Takes a Step Toward the Post-Putin Era

By Leonid Bershidsky

2012-18年、プーチンはアメリカやヨーロッパ諸国と協力する見せかけをすべて捨てた。パックス・アメリカーナは終わる、と世界に向けて広言した。その一方で、地政学に達成したものが、彼の国であるロシアにとって維持できないことを無視した。ロシアは、プーチンが代表することも、ましてや運営することもできない、膨大な、今なお貧しい、ますます冷笑的で、潜在的な怒りに満ちた国民を抱えている。

プーチンの技量は地政学で発揮されたが、自国においては、ますます不在地主のような存在になった。クレムリンの政治工作を担当したGleb Pavlovskyは、その感覚をラジオのインタビューで語っている。「世界にとってはプーチンのロシアであるが、国内では、もはやプーチンの国ではない。プーチン後の時代は始まっている。・・・プーチンはもはや事態の周辺を歩き回るだけだ。」


 変動レート

PS Dec 4, 2017

The Elusive Benefits of Flexible Exchange Rates

GITA GOPINATH

Milton Friedmanが変動レートを支持した1953年の有名な論文は、半分しか正しくない。為替レートの変動は確かに金融政策の自律性を高めるが、いずれの国もドルによって貿易する世界では、完全雇用を実現する効果が極めて限られている。


 カタルーニャ

NYT DEC. 4, 2017

We Catalans Owe the World an Explanation

By ALBERT RIVERA


 グローバリゼーションへの不満

NYT DEC. 4, 2017

No Wonder Millennials Hate Capitalism

Michelle Goldberg

PS Dec 5, 2017

The Globalization of Our Discontent

JOSEPH E. STIGLITZ

グローバリゼーションへの不満は、発展途上諸国だけでなく、アメリカや先進諸国のポピュリズムにも示されている。

発展途上諸国の人々から見たら、トランプの不満はお笑い草である。基本的に、アメリカがグローバリゼーションのルールを決め、制度を創ったのだ。私の経験からも、アメリカが交渉で望むものをほとんど得たことは明らかである。しかし、問題はその望むものである。彼らの要求項目は、密室において、大企業が決めている。それは巨大な多国籍企業のために、彼らが書いた要求であり、どこでも労働者や市民はその犠牲になるのだ。

しばしば、賃金低下や職場の消滅に苦しむ労働者たちは、経済進歩にともなう、無実ながら不可避な犠牲者のように見える。しかし、異なる解釈もある。グローバリゼーションの目的の1つは、労働者たちの交渉力を奪い、企業が安価な労働力を得ることなのだ。

通商協定で不思議なのは、先進諸国の最大の優位、例えば、「法の支配」さえ譲歩してしまうことだ。最近の通商協定の多くが、その国の規制によって企業が被った損害を補償する権利を投資家に認めている。たとえその規制がどれほど望ましいもので、その規制がなければ企業がどれほど大きな損害をもたらすかもしれないときでさえ、政府は企業に補償を求められる。

グローバリゼーションへの不満には3つの対応があるだろう。第1に、ラスベガス戦略。過去4半世紀のグローバリゼーションを2倍に強める。たとえば、トリクル・ダウン経済学のような、失敗した政策が将来は成功する、と信じて。第2は、トランプ主義。失われた世界を取り戻すために世界から自分を切り離す。しかし、先進的な製造業が復活しても、雇用は回復しない。より少ない労働者しか必要としないからだ。

トランプは、貿易赤字を減らす、という目標も達成できないだろう。共和党が億万長者に有利な減税を行い、貯蓄率を下げるからだ。世界最強の地位にあっても、支配できないことがある、と認めるだろう。

3は、保護主義に頼らない社会的な保護である。北欧の小国が採用しているものだ。彼らは、小国が市場を開放しておく必要があると知っている。しかし、それは労働者たちに大きなリスクとなる。高度に民主的な社会である北欧諸国は、労働者たちがグローバリゼーションを利益とみなさなければ、それを維持できないことも知っている。また富裕層も、グローバリゼーションが成功するなら、十分な利益がめぐってくることを知っている。

だから彼らは、労働者たちが新しい職場に移ることを支援する、という社会契約を結んだ。

アメリカの資本主義は、2008年の金融危機が示したように、果てしない貪欲さに委ねられている。しかし市場経済は、資本主義とグローバリゼーションの行き過ぎを是正し、持続的な成長や、多くの市民により高い生活水準を実現できる。

グローバリゼーションを制御しなければ、新旧世界の不満は高まり、反動のリスクを生じるだろう。


 南アフリカ

FT December 5, 2017

The Zuma years: the fall from grace of South Africa’s ANC

David Pilling and Joseph Cotterill in Johannesburg

NYT DEC. 5, 2017

Ben Affleck: Why I’m Hopeful About Congo

By BEN AFFLECK


 エルサレムへの大使館移転

The Guardian, Wednesday 6 December 2017

Donald Trump’s Jerusalem statement is an act of diplomatic arson

Jonathan Freedland

ドナルド・トランプがアメリカを北朝鮮との核戦争の淵に向かわせることには満足できないが、今度はその国際的な文明破壊戦略を世界で最も敏感な地政学的発火点に適用した。エルサレムをイスラエルの首都と認め、アメリカ大使館を移す、と演説したのだ。それは乾燥した森の中へ松明をもって踏み込むようなものだ。

2国家案を最終的解決と信じる者には、エルサレムが両国の首都である。東エルサレムはパレスチナの、西エルサレムはイスラエルの。そうなって初めて、アメリカは大使館をイスラエルに移すことができる。

The Guardian, Wednesday 6 December 2017

Trump’s error on Jerusalem is a disaster for the Arab world … and the US too

Rashid Khalidi

FP DECEMBER 6, 2017

Trump Just Sabotaged His Own Peace Process

BY KHALED ELGINDY

NYT DEC. 6, 2017

Trump, Israel and the Art of the Giveaway

Thomas L. Friedman

FP DECEMBER 6, 2017

Will the U.S. Embassy’s Move to Jerusalem Matter?

BY WILL INBODEN

FP DECEMBER 6, 2017

Trump Just Sabotaged His Own Peace Process

BY KHALED ELGINDY

The Guardian, Thursday 7 December 2017

The Guardian view on Trump and Jerusalem: undiplomatic diplomacy

Editorial

トランプは交渉の達人ではなく,単なる詐欺師である.

FT December 7, 2017

Trump’s dangerous decision on Jerusalem

Bloomberg 2017127

Trump Teaches Palestinians About the New Middle East

By Zev Chafets

Bloomberg 2017127

Trump's Move Frees Palestinians to Focus on Peace, Not Jerusalem

By Eli Lake

PS Dec 7, 2017

Donald Trump Versus Mideast Peace

DAOUD KUTTAB

NYT DEC. 7, 2017

Can Trump Bring Peace to the Middle East?

By STEVEN SIMON

NYT DEC. 7, 2017

Trump Is Making a Huge Mistake on Jerusalem

By HANAN ASHRAWI

FP DECEMBER 7, 2017

Moving the U.S. Embassy to Jerusalem Is Not a Disaster

BY DENNIS ROSS, DAVID MAKOVSKY


 世界経済

FT December 6, 2017

The sun is shining over the global economy

MARTIN WOLF

世界経済は同期回復によって好調である.しかし,投資が高所得国で増えなければ,持続的ではない.また,債務が増大している.これがOECDの最新Economic Outlookが示す予想だ.


 リカードの比較優位説

VOX 06 December 2017

The Principle of Comparative Advantage 200 years on: Introducing a new eBook

Simon Evenett


 ポーランド

FT December 7, 2017

Poland’s flirtation with nationalism will backfire

LUKASZ PAWLOWSKI

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The Economist November 25th 2017

The case for taxing death

The splintering of German politics: Deadlock in Berlin

Marriage: A more perfect union

Coal in Australia: Pier pressure

Tying Hong Kong to the mainland: Signal failure

Marriage: A looser knot

Sustainable investing: Generation SRI

Ethical investing and passive funds: Thin end of the wedge

(コメント) 課税や投資の合理性が,死や結婚,持続可能性,倫理的な動機といっしょに議論されていることに注目します.それは,オーストラリアや香港についても,やはり,捉えがたい社会政治問題と経済的なロジックとが交差しているのです.

正直,ここで議論されている諸問題が,市場メカニズムや資本の論理から観て,他の商品や資本市場と両立可能なものか,あるいは,もしかしたら新しい時代を示しているのか,私にはわからない,と白状します.結婚の在り方が世界中で変化しているように,投資や,資本をキー概念として市場を動かす時代も,いつの間にか大きく変化するのかもしれません.

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IPEの想像力 12/11/17

こころの時代「紛争の地から声を届けて」で,ハアレツ新聞記者,アミラ・ハスのことを知りました.そこでは,在日朝鮮人作家の徐京植が話し相手でした.

彼女は,ガザ地区やヨルダン川西岸で,パレスチナ人たちと一緒に暮らしています.彼女から見ると,イスラエルでも,これらの地区でも,2つの民族がともに住む社会なのです.その意味では,どちらも同じです.しかし,2つの民族の間に,大きな差別があります.それは,水道管の太さが違うことでわかる,と彼女は東大の教室で語っていました.アパルトヘイトなのだ,と.

2国家案を最終解決と見なすオスロ合意は,彼女から見ると,間違いでした.彼女は,新自由主義も批判します.解決策は,国家が与えるものでも,市場に見出すものでもなく,社会が「平等」であることから実現し始めるものだ.彼女はそんな風に言いたいのかな,と思いました.

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アミラ・ハスの母はスペイン出身のユダヤ人でした.ユーゴスラビアに住んでいたそうです.彼女には共産主義の理想があり,それを共有する仲間がいました.さまざまな集団が,その時代の,集団的生活に関する理想を持っています.「共産主義」という言葉ではなく,共有された理想の社会を意識することが,おそらく,現実の困難を克服する鍵でした.

彼女は,わずかな紙を見つけて,収容所で日記を書きました.誰かに思いを伝える,記録を残すことで,絶滅される人々の生きたことを知る者がきっといる,と思ったのか.親や兄弟を失った子供たちが多くいたそうです.子供たちのために彼女は学校を開きました.あるいは,何も入っていない,水のようなスープでも,その配給を平等にするようストライキをした,と言います.それは命がけの行動であったはずです.

彼女は奇跡的に生還しました.戦争が終わったからです.しかし,彼女の帰るべき「国」はなかった,と言います.多くの人々はすでに死んで(gone)いました.ユダヤ人のコミュニティーも,共産党の仲間も,もはやいなかったのです.彼女は「空虚さ」に苦しみました.「空虚さ」から逃れ,押し出されたのだ,とアミラ・ハスは彼女の心を語りました.

イスラエルに来て,共産党の活動で父と知り合って結婚し,すぐに2人は政府に反対しました.ベングリオンに反対し,占領に反対し,レバノン侵攻に反対しました.母は死にたかったのだと思う,とハスは述べています.悪しき現実の世界から,多くの仲間が去った(gone)後でした.

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プリーモ・レーヴィの話が,ここで入ります.徐京植はレーヴィのことを本に書き,また同様の,故郷を失った者たちがどのように苦しんだか,長く研究してきたからです.

レーヴィは,イタリアのトリノ出身.収容所から生還しましたが,それから40年後,アパートで昇降機のホールに投身自殺したのです。ユダヤ人の多くが,突如,自殺によって命を終える,ということでした.占領や収容所の記憶が,人間に与える衝撃の深さを示すものです.

2002年のイスラエルによるレバノン侵攻に反対して,知識人や作家が新聞広告を出したとき,レーヴィもこれに署名した1人でした.イスラエルがしている戦争行為は,かつてナチスがユダヤ人に対して行った虐殺と同じではないか,と感じたからです.しかし,この署名によって,彼はユダヤ人から厳しく非難されたそうです.

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多くの場所を訪れた,と,アミラ・ハスは話しました.記者として,まだ書いていない,多くの人の話が私に突き刺さる,と言います.彼女は記者として書くことを,一時も停止できないのです.

ユダヤ人は2つの中心を持つ.それは,ディアスポラ(離散)とシオニズムである.パレスチナ人に対する植民地主義は廃止されるべきだ,と考えます.レーヴィもハスも,徐京植も,国家の暴力に頼った解決策を信じません.

あなたは “Humanism” を何だと思うか? という質問に対して,ハスは考えます.苦しむ人,抑圧されている人々の手にこそ,現実を変える力がある.しかし,いくら記事を書いても,イスラエルは変わらない.ユダヤ人たちは現在のシステムから利益を受けているのだから.パレスチナ人など見たくない.ユダヤ人たちの眼には,存在しない.

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日本に来たアミラ・ハスは,記者として,福島、広島、沖縄を取材しました.

福島では,非常に詳しい説明を受けた.彼らは私に,原発事故を必ずコントロールできる,ということを示したかったのだと思う.しかし私は,原子力エネルギーが大きな賭けであると感じた.人類がこうした賭けに依存することは間違っている,とハスは考えます.

“People” という言葉を,民族や国境を超えて,彼女は感じます.

彼女の父は,レバノンに向かうイスラエル軍の飛行機が爆音を残して飛び去ることに,身をよじって苦しみました.自分たちが苦しんだ同じ苦しみに反対する.その姿が,沖縄で米軍基地に反対する老人たちと共通します.沖縄からB52が飛び立って、ベトナムに爆弾を降らすことが耐えられない.沖縄が受けた苦しみを思い出す.

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再び,エルサレムでは抗議デモが起き、ガザ地区から発射されたミサイルに対してイスラエル空軍が「報復」のために爆撃しました.

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