IPEの果樹園2017 

今週のReview

12/11-16

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オーストラリアのヘッジ戦略 ・・・Brexitアイルランド問題 ・・・イエメンから中東へ ・・・EU「最適政治圏」 ・・・AIとロボット ・・・ポピュリスト政治とビットコイン ・・・WTOの崩壊 ・・・北朝鮮危機の外交 ・・・ターニング・ポイント ・・・トランプ減税と紳士同盟 ・・・プーチン後の始まり ・・・グローバリゼーションへの不満 ・・・エルサレムへの大使館移転

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 オーストラリアのヘッジ戦略

FP NOVEMBER 30, 2017

Australia Is Worried About America’s Ability to Lead

BY ROBERT A. MANNING

インド太平洋圏はその経済ダイナミズム、そして、ルールに依拠した秩序を維持できるのか? 中国の増大する戦略的、地経学的geoeconomicパワーに対抗しながら? 内向きの、信頼できないアメリカとともに?

この太平洋の難問に挑むことが、オーストラリアの新しい外交白書の核心である。

白書は述べる。急激な技術変化の中で、増大するナショナリズム、権威主義的な国家中心の資本主義から示される世界秩序の競合するビジョンが、「対抗する世界」をもたらす。ワシントンがこの地域で果たす不確実な役割を、「世界の指導力を維持するコストについてのアメリカの論争」と婉曲に描く。同時に、中国のことを隠れて指示し、「主要な大国は国際法を無視し、弱めている」と書く。

白書はトランプの「アメリカ・ファースト」がアジアにもたらすであろう結果を正確につかんでいる。アメリカの、経済、安全保障における強い関与がなければ、パワーはより急速に西から東に移動する。これに対して白書が唱えるのは、ダブル・ヘッジ戦略だ。近い考え方の(つまり民主主義)諸国と協力関係を強化し、ルールに依拠した秩序を維持して、中国の行動を牽制する。またアメリカがこの地域に関与し続けるように働きかける、ということだ。こうした協力により、アメリカと中国の両方がもたらす下振れのリスクを抑えたいのだ。

しかし、地域と世界の通商システムに対するトランプの攻撃は、ベトナムにおけるAPEC首脳会合で彼が行った演説に顕著に示された。トランプはTPPを離脱しただけでなく、第2次世界大戦後のアジアの成長を支えた通商レジームを、アメリカに貿易赤字をもたらす不公平なものとしか見ていない。NAFTAと米韓FTAが次の標的である。貿易が「自由かつ公平」であることの基準は、アメリカとの2国間で赤字かどうか、だけである。貯蓄も投資も関係ない、自国で生産した以上に消費しても気にしない。トランプが平坦な競争条件というとき、それは特に、アメリカの貿易赤字のほぼ半分を占める中国を指しており、1930年代の世界を再現する主張である。

トランプは地域的な、また世界的な通商レジームに戦争を仕掛けている。「われわれの手を縛り」「主権を手放すような」「大規模な条約にはもはや参加しない」と、トランプはAPEC首脳たちに述べた。多国間のシステム、特に、その最重要なWTOの紛争処理メカニズムを、主権の名のもとに攻撃する。それに代わってトランプが地域に示すのは2国間条約だ。しかし、インド太平洋圏では、ますます、地域全体に広がる貿易と投資が諸国を深く統合しつつあり、多角的通商レジームに向けて主要な政策は動いている。

トランプの、勝手にやるぞ、というアプローチはアジアを不安にする。ワシントンの姿勢は、北京に地域の秩序構築を委ねるだけである。日本はアメリカ抜きのTPPへ向かい、中国はRCEPを推進する。

他方、安全保障に関しては、白書は、キャンベラとアメリカの同盟関係が戦略の中心である、と強調する。トランプも、皮肉なことだが、オバマの「アジア旋回」が十分な資源を投入しなかった、と批判して、米軍のアジアにおける存在を高めてきた。

白書は明白にヘッジ戦略を採用する。一方では、民主主義的なパートナーとの協力。特に、Japan, India, South Korea, and Indonesiaを挙げる。他方で、国際システムを新興大国の利害に合わせて適応させるべきだ、と考える。すなわち、China, India, Brazil, and Nigeriaである。しかし、中国の略奪的な産業・通商政策と、領土回復主義の外交を観れば、こうした考え方は色あせる。また、アメリカがインド太平洋圏とは逆方向に経済を進めるなら、その防衛政策やアジアでの関与は持続するだろうか?

ミドル・パワーとして、オーストラリアがその運命を支配する力には限界がある。アメリカの支持がなければ、ルールに依拠した秩序のリベラルな性格と有効性は失われるだろう。中国はすでに地域における最大の貿易国であり、一帯一路で大規模なインフラ投資を約束している。

アメリカの指導力を失ったインド太平洋圏は、中国を中心とする地域に変わるのか?

NYT NOV. 30, 2017

How Rex Tillerson Did So Much Damage in So Little Time

Antony J. Blinken

NYT NOV. 30, 2017

Help Wanted: Top Diplomat Sought

By THE EDITORIAL BOARD

NYT DEC. 3, 2017

As China Rises, Australia Asks Itself: Can It Rely on America?

By JANE PERLEZ and DAMIEN CAVE

FT December 4, 2017

Farewell Uncle Sam, hello Uncle Donald

GIDEON RACHMAN

世界中に,アメリカの指導力や保護を頼りにする国は多くある.しかし,頼ることのできる,旧いタイプのサムおじさんは長期休暇のようだ.それに代わって,たちの悪いドナルドおじさんがホワイトハウスに住んでいる.アメリカと最も緊密な同盟諸国は,困惑と動揺に陥った.

特に,イギリス,オーストラリア,日本がそうだ.これらの国はアメリカとの緊密な関係を誇りにしてきた.従来であれば,中道右派の政権と共和党の大統領の関係は良好なはずである.しかし,イギリスのメイ首相は,トランプがTwitterで拡散したイギリス右翼集団の反イスラムビデオに憤慨した.オーストラリアのターンブル首相は,難民に関する合意を見直せ,と求められた.安倍首相は,ゴルフなどで,うまくもてなしたが,そもそもトランプが大統領になって最初にやったことは,安倍が経済・安全保障の中心政策としてきたTPPを破棄することだった.

中国の台頭,北朝鮮危機,Brexitなど,彼らにはアメリカに頼るしかない大きな理由がある.しかし,世論はアメリカから急速に離れようとしている.

NYT DEC. 7, 2017

Four Questions About American Greatness

Bret Stephens


 Brexitアイルランド問題

FT December 1, 2017

Brexit and the Irish contradiction

DAVID ALLEN GREEN

かつてジョセフ・チェンバリンは、アイルランド問題に関して自由党を分割し、その後、通商問題で保守党と統一党を分割した。その現代における後継者たちは、より野心的であるが、センスを欠き、2つの問題を同時に解決しようとしている。

この2つは1920年代までの100年間、イギリスの政党政治を支配する重要問題であった。それらが変化するとき、政党が再編され、新しい政党が生まれたのだ。現在、下院では「ハードBrexit」を支持する議員が少数派だ。政党を越えて多数派は、イギリスを単一市場とEUの関税同盟内にとどめる「ソフトBrexit」を主張している。しかし、与党でも野党でも、その幹部は「ハードBrexit」を推進する。

しかし、アイルランド国境がBrexitの最も困難な問題となっている。国民投票が明確に言及したことは、単一市場や、関税同盟、離脱の起源、依拠する法律ではなく、UKが離脱する、ということだった。すなわち、Brexitはスコットランド、ウェールズ、北アイルランドを含むのだ。

もしUKが離脱すれば、EUとの間に税関や国境検問が復活する。それゆえ、もしアイルランド共和国政府が、アイルランド島にいかなる異なる規制も境界も認めない、と主張すれば、ここに矛盾が生じ、解決は困難だ。たとえ武力衝突が起きると言わないまでも、アイルランド問題がロンドンの政治家たちを1世代にわたって苦しめた問題であったことを思い出すべきだ

しかし、政治家たちは1998年のグッド・フライデー合意以降、アイルランドに関する政治問題は「解決された」かのように振る舞っている。

チェンバリンの亡霊だけは、この政治的混乱を楽しんでいるだろう。

FT December 3, 2017

Even £50bn will not buy Britain very much

WOLFGANG MUNCHAU

500億ポンドで何を買うのか? 通商協定か? おそらくそうだ。しかし、それほど中身のある合意はないだろう。

ヨーロッパの通商政策に関する政治を考えてみよう。Cetathe EU-Canada Comprehensive Economic and Trade Agreement)を交渉する過程で、ベルギー議会がそれをもう少しで拒むところだった。その合意は、ドイツが選挙後の連立政権を交渉する中で決まった。しかし、交渉過程で、メルケルが緑の党によるCetaの承認拒否を受け入れた、というニュースを得た。

カナダはEUにとって重要な通商相手ではない。小規模で、論争もない。しかし、イギリスは違う。通商条約の議会通過は契約ではなく、政治問題だ。

UK政府が500億ポンドを支払うほど、EUは重要な合意を将来に向けて準備していないだろう。EUが、ユーロ圏諸国による高度な統合と、より緩やかな周辺の組織化に分割される、という合意だ。もし単なる財・サービスの旧式の合意だけなら、500億ポンドは意味がない。

もちろん、UKEUと何位も合意できないまま崖を飛び降りることは回避するべきだ。しかし、これはもはや不可能だ。いわゆるノルウェー型の選択を、メイ首相は公然と否定したからだ。

Brexit推進派も残留派も、カナダ型の合意と単一市場・関税同盟とを、連続的なものと誤解している。現実は、EUにその用意はない。イギリスはカナダではないのだ。500億ポンドを支払っても、得られるものはない。

FT December 4, 2017

Now the Brexiters surprise us with their realism

JANAN GANESH

PS Dec 4, 2017

The Brexit Tragicomedy

HAROLD JAMES

Brexitは単なる政治的混乱ではない.これは革命だ.

イギリスの政党政治が再編されたのは,2大政党が誕生した1688年の名誉革命,穀物法をめぐって保守党が分裂した1846年.このとき,地方の農村に依拠した保守党員は反対したが,製造業や,イギリス社会にとって,穀物保護は良くないことだった.そして1920年代,労働党が自由党に代わって,保守党と政権を争うようになった.

再び,そのような時が来たようだ.Brexitをめぐって,保守党も,労働党も,党内が分裂している.っそして,グローバリゼーションをめぐる同様の対立が,ドイツやフランスなど,ヨーロッパ諸国でも起きている.

イギリスの将来には2つのシナリオがある.1つは,ハムレットだ.混乱の末に,イギリスは単一市場や関税同盟から飛び出す.政治的な死者が並び,破滅の部隊ができる.もう1つのシナリオは,良識の支配だ.マクロン型のプラグマティズムがイギリスにも広まる.反EUの「離脱」キャンペーンから政治を切り離す.それはヨーロッパにも生じて,アメリカ,ロシア,トルコに生じた機能不全の歪んだ政治,そして新しくドイツにも生じた不安定性から,政治を切り離すだろう.

FT December 5, 2017

Skeleton Brexit deal risks leaving parliament in the dark

NICK CLEGG

FT December 6, 2017

Theresa May’s Brexit strategy risks fracturing the United Kingdom

SEBASTIAN PAYNE

FT December 6, 2017

Blocking a Brexit divorce deal is a high-stakes game

PS Dec 6, 2017

The UK’s Multilateral Trade Future

GIANCARLO CORSETTI, MEREDITH A. CROWLEY

PS Dec 6, 2017

A Better British Story

JIM O'NEILL

FT December 7, 2017

Harsh lessons for the next phase of Brexit

PHILIP STEPHENS

SPIEGEL ONLINE 12/07/2017

Not So Great

Britain Grows Increasingly Hostile to EU Citizens

By Jörg Schindler

NYT DEC. 7, 2017

A New Threat to Brexit?

By THE EDITORIAL BOARD


 イエメンから中東へ

SPIEGEL ONLINE 12/01/2017

The New Saudi Arabia

Absolute Power in the Hands of a Crown Prince

An Essay by Jamal Khashoggi

NYT DEC. 4, 2017

With Death of Ali Abdullah Saleh, Need for Yemen Peace Grows

By THE EDITORIAL BOARD

FT December 6, 2017

In Yemen, the wheel of chaos keeps on spinning

イエメンの無慈悲な支配者Ali Abdullah Salehサーレハが殺害された。この殺害は、彼が2011年のアラブの春で失った権力を取り戻そうとする中で、フーシ派の手により行われたが、事態を一層の悪化に導くだろう。

イエメンはすでにアラブ諸国で最も貧しい国である。さまざまな武装集団が内戦を続け、世界最悪の人道危機に向かっている。イランが支援するフーシ派の反政府軍は首都を支配し、サウジアラビアとアラブ首長国連邦UAEが支援する政府軍、その他、さまざまな分離主義者、部族集団、アルカイダが戦闘に加わっている。

サーレハは、内戦の原因となったが、政治的首領として和平を求めていた。サウジとUAEが、英米の支持を得て、イエメンに介入した後、事態は破滅そのものになった。サウジの空爆による犠牲者はすでに1万人を超え、部分的な封鎖によって700万人のイエメン人が餓死寸前である。サーレハが封鎖解除を緊急に求め、リヤドとの関係を修正したことが、彼を死に追いやった。

正常な状況では、こうした人道危機を回避するために国際的プレーヤーが介入し、停戦を指導する。しかし、世界政治の2大国として過去には行動したはずの、アメリカとイギリスは、その意志と能力を欠いている。彼らはイランと対抗するために、同盟国であるサウジを支持しているのだ。これは、戦略的な大失策である。

イエメンにおける戦争は、中東全体のサウジアラビアとイランの闘争の兆候である。地域の2大国が合意しない限り、イエメンに平和は来ない。

より多くのイエメン人が苦しむのを止めるために、英米は戦略を見直すべきだ。

YaleGlobal, Tuesday, December 5, 2017

Saudi-Iranian Rivalry Mushrooms to Threaten the Middle East

Rakesh Sood

NYT DEC. 5, 2017

Obsession With Iran Is Driving the Mideast and the U.S. Crazy

Thomas L. Friedman

FP DECEMBER 7, 2017

Here’s How Both Obama and Trump Stoked the Saudi-Iranian Rivalry

BY ILAN GOLDENBERG

YaleGlobal, Thursday, December 7, 2017

Expanding Russia-Iran-Turkey Alliance Puts the US on Back-Foot

Dilip Hiro


 ドイツ

SPIEGEL ONLINE 12/01/2017

Germany's Fate

The Dispiriting Prospect of a New Grand Coalition

By DER SPIEGEL staff


 中国

PS Dec 1, 2017

The Economics of China’s New Era

JUSTIN YIFU LIN

Bloomberg 2017124

Maybe China Can't Take Over the World

By Christopher Balding

中国のハイテク企業の優位は、その特殊な条件に依存している。彼らがそのまま世界市場で優位を拡大するとは思えない。

FT December 4, 2017

Stop worrying about Chinese debt, a crisis is not brewing

Chen Zhao

PS Dec 4, 2017

China, the Digital Giant

KAI-FU LEE, JONATHAN WOETZEL

PS Dec 5, 2017

China’s Solitary Development Model

PRANAB BARDHAN

China Daily 2017-12-05

Building a better world for all is China's mission

China Daily 2017-12-05

EU welcome to work with China to help Africa

FT December 6, 2017

Xi Jinping’s anti-corruption drive mimics a Ming obsession

JAMIL ANDERLINI


 EU「最適政治圏」

FT December 2, 2017

Refugee plan exposes the limits of EU harmony

PS Dec 4, 2017

Europe’s Crisis Starts at Home

MARK LEONARD

EU内の対立を理由に、統合の深化を推進する者は、より小さなグループでより大きな利益をもたらす方が良い、と考えるかもしれない。

しかし、ヨーロッパの統合に対する脅威は、個々の国の内部にも生じている。ドイツでは、中道右派と中道左派の連立が崩壊した。オランダでは、Mark Rutte首相が連立政権を組むのに208日もかかった。UKでは、政治のエスタブリシュメントがBrexitをめぐって分裂状態だ。ポーランドでは、白人ナショナリストとネオナチがワルシャワの町を行進した。

各国はEUに参加するときリベラルな民主主義の基準(いわゆるコペンハーゲン基準)に合意している。しかし時間が経過する中で、ハンガリーとポーランドの政府は、もはやルールに縛られない、と決意した。1つの解決策は、EUを縮小することだ。しかし、その解決策には大きな問題がある。国家間の分断よりも、国内の社会により大きな分断があることだ。

メルケルは連立政権交渉において、CDUと、より自国民優先のCSU、ビジネスを重視するFDP、そして左派のグリーンと話し合った。移民・難民に関して、グリーンは歓迎する文化を重視し、CSUthe Visegrád Groupと近い立場で、オーストリアのOrbán首相を会議に招いた。ヨーロッパの連帯を説くグリーンはギリシャやイタリアを支持し、FDPはフィンランド、オランダ、ドイツの財政規律重視に傾く。

ドイツでは、連立に失敗しても、議会の安定したリベラル派が多数を占めている。同じことはEUについて言えない。ほとんどの国は「50-50社会」なのだ。半分はコスモポリタン、半分は共同体主義。こうした社会では、いつでも文化戦争によって政府が反対側に交代する可能性がある。イギリスが52%の支持でEU離脱を決めたように。フランスではヨーロッパ派のマクロンが勝利したけれど、それはイギリスがフランスよりもコスモポリタンであるという意味ではない。

ブルッキングズ研究所のレポートは、R.マンデルの「最適通貨圏」を援用して、「最適政治圏」という概念を示した。その研究によれば、過去30年間で、EU加盟諸国の間で文化的・制度的な収斂は進んでこなかった。また、国家間の差異は国内の差異よりも小さい、というのだ。つまり、人の異動に関して、UKとポーランドとの差異より、ロンドンとイングランド中部の差異の方が大きい。

社会内部の課題に応えなければ、ヨーロッパの統合プロジェクトは容易に進まない。

SPIEGEL ONLINE 12/05/2017

Ego Trip in Brussels

Juncker Seeks Greater Commission Control over Eurozone

By Peter Müller and Christian Reiermann

FP DECEMBER 6, 2017

Germany Is Preparing to Send Refugees Back to Syria

BY JAMES TRAUB

FT December 7, 2017

Europe must create its own ‘big bazooka’ monetary fund

FT December 8, 2017

A flawed blueprint for reform of the eurozone


 AIとロボット

FT December 2, 2017

Ocado invests in a utopian robot future

MARK VANDEVELDE

FT December 3, 2017

China and America must shape the high-tech future together

Kai-Fu Lee

NYT DEC. 3, 2017

Lost Einsteins: The Innovations We’re Missing

David Leonhardt

PS Dec 7, 2017

Rage Against the Machine?

LAURA TYSON, SUSAN LUND

AIによる配達ルートの最適化。自動運転。3Dプリンター。ドローン。こうした驚異の新技術が高い生産性、安全性、弾力性、快適さを実現する。同時に、それが雇用、スキル、賃金に与える影響には不安がある。

歴史と経済理論が示唆するのは、ケインズが1世紀近く前に「技術的失業」と呼んだことへの不安は、誤解である、ということだ。将来も、過去と同様に、技術変化は生産性を高め、所得を増やし、労働需要を増やすだろう。価格低下と質の改善に加えて、今は想像もできないような仕事が生まれるだろう。消滅する職場を補って余りある新しい職場が生まれるのだ。

しかし機械化のペースによっては、2030年までに、世界労働力の3-14%が職を変わる必要がある。われわれは機械化にともなう職場の変化に見合う、さまざまな政策を採ることができる。第1に、財政・金融政策で完全雇用水準の受容を維持することだ。第2に、労働力の再訓練プログラムを劇的に再編し、拡充することだ。

PS Dec 7, 2017

Europe’s Chance to Lead on Robotics and AI

GUY VERHOFSTADT


 ポピュリスト政治とビットコイン

FT December 2, 2017

Bitcoin is a faith-based financial asset for a populist era

MILES JOHNSON

ビットコインの価格が1000ドルを超えたとき、クリプトカレンシー(暗号通貨・仮想通貨)の支持者は、先週、勝利をTwitterで自慢した。「ウォール・ストリートのトレーダーたちよ。お前たちは何年も学校で金融論の細目を学び、毎週100時間を10年間も、家族にも会わず、今年のリターンが10%であれば異常に興奮しているのだろうが」・・・「ビットコインを愛する私はどうだ。本を読み、Twitterに書き込み、ステーキを食べて、900%のリターンを得た。」

このトローリングを意図したソーシャル・メディアの投稿は、ビットコインの登場を疑念と恐怖で観察してきた専門の金融業者たちと、金融における偶像破壊行為としてクリプトカレンシーを保有する真の信奉者たちとの、相互の侮蔑感情を完璧に示している。

主流の金融界は、ビットコインの人気や行動を理解できなかった。それは彼らが、事実に依拠する理論を、それが全く当てはまらない資産に適用したからだ。ビットコインは、ポピュリスト時代の、信念に基づく金融資産である。

ビットコインの価格は、通常の金融論があつかう何ものにも依拠せず、むしろ過去2年間に政治的ショックを引き起こしたのと同じ力によって上昇した。ポピュリスト政治と同じく、クリプトカレンシーと「信頼を欠くネットワーク」への信念は、伝統的な権威への信頼が崩壊したこと、専門家たちへの侮蔑と一緒に高まってきた。ビットコイン物語への揺るがぬ信仰は、群衆によって生じるインターネット上の権威なのだ。

金融専門家たちが、余りにも顕著なバブルに自分の富を投げ出す人々を理解できなかったのは、政治アナリストたちがUKEU離脱はあり得ないと信じていたことに匹敵する。

世界金融危機は銀行システムの信用を極度に損なった。投資の世界で、専門の投資家や投資アドバイザーが言うことは信頼されなくなった。多くの人々から年金運用を託され、過剰な報酬を得て乏しい成果しか上げなかった投資銀行への批判が強まる中で、インデックス・ファンドのようなパッシブ投資が広まった。

最も献身的な支持者たちは、価格に何が起きてもビットコインを保有し続けるのであり、これまでの価格暴落を生き延びたことを誇りにする。ビットコインの価値と将来を敬虔に支持する姿勢は、信念の問題であり、マニ教的な信仰と懐疑との闘いなのだ。

これから数週間でビットコインの価格がどうなるかに多くの関心が集まっている。しかし、数十年後には、ビットコインがあってもなくても、われわれの時代を創った政治的力の将来を予見するバロメーターであった、とみなされるだろう。

Bloomberg 2017124

Government-Run Digital Currencies Could Disrupt U.S. Dominance

By Leonid Bershidsky

FT December 8, 2017

Don’t worry about bitcoin — at least not yet

FT December 8, 2017

Self-driving finance could turn into a runaway train

GILLIAN TETT


 WTOの崩壊

FP DECEMBER 2, 2017

Trump Boycotts U.N. Migration Talks

BY COLUM LYNCH

FT December 6, 2017

WTO faces an identity crisis as Trump weighs going it alone

Shawn Donnan in Washington

PS Dec 6, 2017

Whither the Multilateral Trading System?

DANIEL GROS

近頃、自由貿易の支持者は減っているようだ。グローバリゼーションはますます不満を広めている。

60年ほど前は、アメリカが世界で唯一の経済「超大国」であった。疑いなく、主要な先端的工業部門を支配していた。ルールを広めるパワーも、そこから最大の利益を得る支配力も、持っていた。だから「利益をもたらすヘゲモン」の役割を担えたし、実際に担った。

しかし、日本やヨーロッパが第2次世界大戦から復興し、アメリカの指導力は衰えてきた。1970年代、80年代には、世界の通商問題を解決するパワーをヨーロッパと分け合うようになった。それでも両者は多くの共通利益を持ち、協力アプローチを採用した。

アメリカがますます多くの産業で輸入品に圧倒され、巨額の持続する対外赤字を生じて初めて、通商政策が国内産業の保護に向かい、貿易摩擦を生じるようになった。それでもアメリカの指導者たちは、リベラルな多角的通商システムの価値を理解していたから、GATTを引き継ぐWTOの創設を支持した。WTOは関税だけでなく、コック内規制に絡む他の障壁も扱ったので、効果的な紛争処理メカニズムが重要だった。このシステムが機能したのは、主要国が独立パネルの正当性を認めていたからだ。

今やそれが疑わしい。ルールに依拠したシステムを支持する経済のタイプとは何か? それは、第2次世界大戦後のアメリカのように、世界に圧倒的な経済優位を持つ国が1つあるか、すべての国が小国である場合だ。

世界が同じような規模の少数の経済から成るとき、事態は複雑になる。P.クルーグマンが1989年の2国間主義に関する論文で示したことだが、世界が主要な3つの経済から成るとき、貿易にとって事態は最悪である。3者の間に明確な協力がないまま、貿易障壁が増加する。現在の世界がまさにそうだ。中国、EU、アメリカが、それぞれ4兆ドルの貿易額を示し、世界貿易の40%、世界GDP45%を占めている。

原材料は自由であり、農産物は特殊な問題として自由化されない。その結果、アメリカ通商政策の焦点は工業製品の自由化であった。しかし、アメリカがエネルギーで時給を高めている今、世界に工業製品を輸出する必要は、国内にエネルギーを持たない他の工業国に比べて少ない。

アメリカの大企業は海外に生産拠点を多く持っているから、トランプが貿易戦争に向かうことに反対するだろう。しかし、個別企業としては、自由化による損失を耐えたり、他国の企業と利益を分け合ったりすることは望まない。そして3大経済圏も、たとえば、EUが政治資本を費やしてアメリカの保護主義を抑制しても、その利益を受けるのは中国である、ということを知っている。

中国の指導者たちは、あれほど明確にルールに依拠した通商システムを支持しながら、具体的な行動を取っていない。それは、恐らく、今の世代の内にも中国が世界経済を支配するだろう、と考えているからだ。その時点で、もはや他国のルールには縛られない。

中国は、1党支配の国で、経済のすべての領域で共産党がパワーを強めている。そのような体制が、国内利害より、国際的なルールを優先するとは思えない。


 マークル

The Guardian, Sunday 3 December 2017

Meghan Markle’s handy A-Z guide to her new family

Catherine Bennett


 中央銀行

FT December 3, 2017

Central banking has never looked more daunting

Charles Bean


(後半へ続く)