前半から続く)


 ドイツの政権交渉

FT November 25, 2017

Twelve years of Angela Merkel’s leadership style is enough

URSULA WEIDENFELD

これまで12年間、ドイツでは4年おきに選挙があり、メルケルのキリスト教民主同盟が勝利し、過半数を得るために社会民主党SPDと連立政権を組んだ。メルケルへの国民の高い支持とドイツの内外におけるパワーにより、連立相手の政党は苦しんだ。

これが、いわゆる、メルケル主義である。選挙によって勝利できなくても、連立政権交渉でトップを占め、議会を軽視した大統領的な役割を果たす。メルケルは西側の価値のシンボルであり、ドイツの経済的繁栄と国際的な地位上昇を担う存在であった。予測不能な世界での安全な港、利害の分散する政治を仲介する正直な仲介者とみなされていた。

しかし、メルケル主義はドイツに有害でもあった。ドイツの民主主義や政党を弱め、有権者たちの多くが政治的な左右の過激主義に流れた。SPDの得票は、歴史的な低水準にとどまった。

メルケルは大連立を組めるかもしれない。また、少数政権となるかもしれない。いずれにせよメルケルは新しい現実を受け入れる。連立交渉の破たんで彼女の権威は失われた。

ベルリンには苦渋と不信が満ちている。他者に妥協を求め、少数の側近だけで決める彼女の政治スタイルは維持できない。議会の重要性が回復するだろう。

それはドイツの民主主義にとって良いことだ。しかし、EU改革に意欲を示すフランスなど、他のヨーロッパ諸国には、内向きになるドイツに慣れるしかない。

The Guardian, Sunday 26 November 2017

There’s only one sick country in Europe – and it’s not Germany

Will Hutton

FT November 27, 2017

Germany’s coalition woes reveal the failing centre

WOLFGANG MUNCHAU

FDPの指導者Christian Lindnerは,公約に従って,ヨーロッパ安定化メカニズムESMの拡大を拒否した.これによってメルケルの連立交渉は破たんした.ドイツの政治に,かつてなかったことだ.しかし,私はLindnerの姿勢に賛同する.それはドイツ政治のダイナミズムを回復させるだろう.

ドイツで起きているのは自由民主主義の失敗である.システムの維持を目的にし過ぎれば,政治的な賭けを好むLindnerのような政治家が現れる.

FT November 28, 2017

A grand coalition is not in Germany’s interest

PS Nov 28, 2017

A New Grand Coalition for Germany – and Europe

JEFFREY D. SACHS

アメリカでは心理的に不安定な大統領が指導し、富裕層が閣僚の多くの席を占め、共和党が議会の多数を占める。ヨーロッパは、経済、社会、政治、制度の多重危機に苦しむ。逆に、ダイナミックで外向きの中国に、EUが指導力を発揮し、建設的な関係を結ぶ必要がある。

ドイツとヨーロッパにとって、今こそ、ビジョン、安定性、グローバルな指導力が求められる。CDUSPDの連立政権を組むべきだ。

2008年の金融危機から完全に立ち直り、改革をするために、SPDとの連立がふさわしい。気候変動の国際協定を推進するにも、マクロンの主張するヨーロッパ財務大臣に呼応するのも、SPDとの連立だ。ヨーロッパの外交を、平和と持続的発展を促す、また、アメリカの軍事力に依存しない新しい安全保障に向けるのも、連立政権に求められる。

その政治的な条件は明確だ。SPDは経済・財政=金融において閣僚を出し、CDU/CSUが首相を出す。SPDはヨーロッパ規模の開発、環境、財政・金融改革に指導的な役割を担えるだろう。

FT November 30, 2017

A coalition will be the end of Angela Merkel

PHILIP STEPHENS

連立交渉が失敗しても,再選挙はないだろう.ドイツ憲法は政治に妥協を求めている.CDUの少数政権は経験がない.しかし,さらに重要なことは,それを担う指導者がいないことだ.

FT November 30, 2017

After 12 years of leadership, Merkel fatigue spreads in Germany

Guy Chazan


 フランス大統領

FT November 26, 2017

French president Emmanuel Macron seeks the popular touch

Anne-Sylvaine Chassany in Haillicourt


 日本の金融政策

FT November 27, 2017

BoJ hints at normalisation, with Japanese characteristics

Gavyn Davies


 国歌をめぐる論争

FT November 27, 2017

Trump, Xi and the siren song of nationalism

GIDEON RACHMAN

「われわれの兵士たちを侮辱すること、あるいは、国歌を侮辱することを、私は容認できない。」と述べて、先月、ペンス副大統領はフットボール競技場を去った。選手の何人かが国歌の演奏中に跪いたからだ。同様の国歌に関する論争は、中国でも、インドでも、ヨーロッパでも起きている。

これはナショナリストとインターナショナリストとのグローバルなイデオロギー対立を象徴している。そこにはまた、狡猾な政治的側面もある。国歌に注目する議論は、国内の反リベラリズム、対外的な攻撃的姿勢と結びついている。

今月の初めに、中国の全国人民代表大会は、国歌を侮辱する者を、3年以下の禁固刑で処罰する法律を承認した。中国では愛国心を誇示することが増えており、習近平主席の「偉大な若返り」の一部である。他方、香港では最近のフットボール・マッチで国歌に対してブーイングが起きた。

インドでは、最高裁が昨年、公共の劇場で映画を上映する前には必ず国歌を流す、という指令を出した。支持者たちは、複数の宗教と数百の言語を話す国民の統合に国歌は重要だ、という。リベラル派は、モディ首相の下で、非寛容なナショナリズムが高まることを警戒する。マイノリティや政府を批判する者にとって生きるのが難しい状況を創り出している。また、警察が映画館をひそかに監視するようになる、と。

フランスの国歌論争はまた違う。昨年5月、選挙後の祝勝会で、マクロンはフランス国歌the Marseillaiseではなく、EU国歌、ベートーヴェンの“Ode to Joy”で登場した。それは、国粋派で反EUの国民戦線に対する巧妙な非難でもあった。

マクロンとトランプは、国歌論争において全く異なった立場をとる。彼らは国際政治における対抗するビジョンの提唱者だ。

トランプは、9月の国連総会演説で、「強力な主権国家」に基づく国際秩序を支持する、と何度も述べた。彼は選挙戦において、「国際機関を国民国家よりも優先する経済・政治イデオロギー」として「グローバリズム」を定義し、大統領になってもそれをしばしば攻撃している。その10日後、マクロンはパリで講演し、「われわれが国境内に閉じ籠ることはもはや不可能であり、その結果は集団的な破滅であろう」と述べた。

上海の評論家Eric Liは、習の中国とトランプのアメリカとは、見た目以上に共通点が多い、と主張する。どちらの指導者も国家主権を強調し、何でも普遍的な秩序に訴える姿勢を押し戻そうとしている。Liによれば、習近平とトランプは心も友であり、反グローバリストの仲間は世界中にいる。ロシアのプーチン、フィリピンのドゥテルテ、ハンガリーのオルバン、インドのモディ、エジプトのシシ、イギリスのBrexit推進派。

新しいナショナリストたちは主張する。「強力な主権国家」が安定した国際秩序の基礎である。ユートピア的で、エリートたちに偏った、過剰な「グローバリズム」は退場せよ、と。

しかし、ナショナリストたちの平和共存というのは愚かな考えである。確かに彼らは国際官僚制や人権派弁護士を侮辱する点で一致するだろう。しかし、同様に外国人を軽蔑する。アメリカ衰退論に刺激されたトランプと、中国の台頭と、歴史的な恥辱に復讐する気分を広める習近平が、朝鮮半島で、南シナ海で、WTOで衝突する。

PS Nov 28, 2017

Donald Trump Thought

CHRIS PATTEN

NYT NOV. 28, 2017

Forget Trump and Discover the World

Thomas L. Friedman


 株価上昇の3つの理由

PS Nov 27, 2017

Today’s Rational Exuberance

ANATOLE KALETSKY

世界中の株価が上昇して、ほぼ毎日、最高値を付けている。市場は「非合理的な高揚」を広め、暴落が待っているのか? おそらく、そうではないだろう。

多くのアナリストが人為的な、持続不可能な金融的刺激策によるバブルとみなすものが、経済活動、利潤、雇用の構造的な拡大となり、さらに長く続くだろう。その理由は少なくとも4つある。

1.世界経済のすべてのシリンダーに火が付いた。2008年の金融危機以来、初めて、アメリカ、ヨーロッパ、中国のすべてが同時に拡大しつつある。それでも、ヨーロッパの高い失業率、中国の生産力余剰、そして技術とグローバル競争から生じるデフレ圧力が、なお数年は景気の過熱を抑えるだろう。

2.ゼロ金利や、QEと呼ばれる中央銀行による莫大な通貨供給増が、その後、良く理解されるようになった。最初の数年間、前例のない政策に対して投資家は不安を抱いた。人為的な刺激が終わったら、あるいは減るだけでも、不況になると考えた。しかし、それはもはや説得的ではない。アメリカ連銀は、2014年初めに長期債の購入を減らし、その年の後半、完全に停止した。2015年には金利を上げた。その後もアメリカ経済は拡大し、雇用を増やしている。

3.アメリカが示した金融政策と景気回復のロードマップは、さまざまな遅れをともない、他の諸国にも採用された。日本は2013年、アメリカに5年遅れ、ヨーロッパは7年遅れて20153月にQEを開始した。新興市場の多くでは、今年、金融刺激策と景気拡大が始まったばかりだ。その結果、世界の景気循環は以前の拡大期に比べて非同時化した。

4.アメリカ企業の利潤は、7年間の増大を経て天井に達しているだろう。しかし、アメリカ国外の利潤拡大や投資機会の利用は最近ようやく始まったところだ。利潤の増大は続き、他方で金利はまだ非常に低い。

楽観論を支持する景気循環的理由に対して、当然、長期的、構造的な不安が指摘される。債務の増大、生産性上昇の停滞、不平等の拡大、ナショナリズム、保護主義、政治的混乱。

こうした問題について、正しい答えはわからない。確信をもって言えることは、市場参加者による長期の予想が、短期の循環的な条件によって影響される、ということだ。不況期には、投資家が長期的問題の不安に支配され、好況期には、低金利や技術革新に関心が向かう。

楽観論が後退するとき、株価の見直しが始まる。サイバー通貨のように、明らかに危険な、投機によって上昇している分野もあるが、株価全般の水準は、下落するより、まだ上昇し続ける。

PS Nov 28, 2017

The Global Economy in 2018

MICHAEL SPENCE


 金融改革

Bloomberg 20171127

Maybe China Shouldn't Open Up

By Michael Pettis

FT November 30, 2017

The time is ripe to clean up eurozone banks’ bad loans

Danièle Nouy


 トランプ政権の外交

NYT NOV. 27, 2017

Dismantling the Foreign Service

By NICHOLAS BURNS and RYAN C. CROCKER

複雑かつ危険な世界を理解し、関わっていく上で、欠かせない資産である、アメリカ国務省、大使館、外交官たちの対外サービスが危機にある。

NYT NOV. 28, 2017

Rethinking ‘McNamara’s War’

FREDRIK LOGEVALL

FP NOVEMBER 28, 2017

Tillerson Takes on Critics: No ‘Hollowing Out’ at the State Department

BY ROBBIE GRAMER

FT November 29, 2017

Jim Mattis is America’s person of the year

EDWARD LUCE

アメリカで今年の人は、ジム・マティスである。彼はトランプ政権で第2の地位にあるが、われわれは彼がいるから核戦争を恐れずに眠ることができる。

彼の人柄は、トランプの最初の閣議で示された。だれもが大統領に対する称賛を述べた。マルで金正恩の閣議をまねたように。しかし、マティスは自分の本当の役割だけを述べた。「国防総省の男女を代表することは誇りである。」「アメリカの外交は強い力を保持して交渉する。」 そして、大統領への言及はなかった。

トランプの政権では、トランプ以外に誰もいない。皆がいつでも解任される。しかし、マティスは別だ。マティスは大統領と多くの重要政策で意見が異なる。

ペンタゴンの高官に、3つの優先目標に関して尋ねた。私は北朝鮮がトップに上がると思った。その返答は、「1.大統領を教育する。2.大統領を教育する。3.大統領を教育する。」 アメリカの同盟諸国も、マティスがそうすることを願っている。

FP NOVEMBER 29, 2017

Two Cheers for Rex

BY JOHN HANNAH

Bloomberg 20171129

Rex Tillerson Has Little to Offer Europe

By Leonid Bershidsky


 ハリス王子とマークルの婚約

NYT NOV. 28, 2017

Can Meghan Markle Save the Monarchy?

By IRENOSEN OKOJIE

マークルMeghan Markleに関して、王子との交際について最初の報道があってから、人々は静かに鳴動した。半分黒人の血が混じる、アメリカ人の、離婚歴のある女優だ。彼女は王室にふさわしくない、と言われた。

しかし、彼女はハリー王子と婚約した。Brexitとドナルド・トランプの時代、すなわち、人種差別的な動機の犯罪、憎悪に満ちた言葉、不安を掻き立てる者たちの時代に、ハリス王子とマークルとの結婚は、単なる強い解毒剤ではなく、政治的に意味がある。

最近まで、私は王室に関心がなかった。旧式の、古代の排他的な制度であった。王室は白人以外の人々と関係のない、長く植民地を支配した歴史があるのに、特に投資もしなかったように感じていた。

しかし、ハリス王子が公開で、反抗的に、マークルと交際する姿は、黒人女性のイギリス市民である私にとって、王室の印象を少し変えた。他のカラー・ウーマンたちもそうだ。

ハリスは我々の時代の王子になった。彼が王室に与える影響は過小評価できない。この国で、だれが王室に席をおく資格があるのか、そのアイデアの核心を砕いたのだ。

NYT NOV. 29, 2017

The Prince and the Actress

By THE EDITORIAL BOARD


 反グローバリゼーション

NYT NOV. 28, 2017

On Trade, Trump Puts Corporate America First

By DANI RODRIK

NAFTA再交渉の最近の話し合いが終わった。その成果はわからないが、貿易に関する彼のアプローチが基本的に間違った、非生産的なものであることはよくわかった。

アメリカの結んだ通商条約が、大企業や金融ビジネスに利益をもたらすけれど、アメリカ全体の利益にならない、という主張は間違っていない。自由貿易ではなく、投資家、大企業、薬品業界の特殊な利益をもっぱら実現するTPPを離脱するのは正しかった。

トランプ政権の通商政策が示す最大の欠陥は、その重商主義的な伝統に依拠した行動である。こうした考え方は、国益と、アメリカ企業や保護主義集団の利益とを同一視する。しかし、現代の貿易交渉は、概ね、各国の規制や基準に関するものだ。重商主義はもはや役に立たず、単なる、投資家と企業の要望項目を並べただけになる。

製薬産業、ハイテク、金融サービスで、巨額の献金とロビー活動が行われ、トランプ政権は熱心にその通商交渉を推進する。他方、トランプは労働基準や環境規制に関してリップサービスをするけれど、貿易によって生活を損なわれた人々に役立つ国内政策には関心がない。

真に公平なグローバリゼーションは国内から始まる。すなわち、それは、企業エリートと富裕層が労働者や中産階級と結ぶ、社会契約である。世界経済と結びつくすべての社会は、社会的給付、労働訓練プログラム、貿易による不利益をこうむる労働者やコミュニティのための地域政策を必要としている。

そのためには、累進的な所得税、インフラ投資など、雇用をもたらす政策、富裕層が政治を動かすことへの規制、が求められる。トランプと共和党が要求していることと、まさに逆である。


 ビットコイン

Bloomberg 20171128

Invest in Bitcoin, Even If It's a Bubble

By Leonid Bershidsky

FT November 30, 2017

There are many reasons to be cautious about bitcoin

JEAN TIROLE

ビットコインのドル価値は大幅に上昇した。201111日の価値に比べて3万倍になった。「新規コイン発行」ICOは、今年だけでも35億ドルを発行者にもたらした。

2つの問題がある。ビットコインは持続可能か? ビットコインは公共財か? 私の答えは、おそらくNo, 完全にNo,である。

ビットコインは純粋なバブルだ。それ自体に価値はない。信頼が失われれば、価格はゼロになる。貨幣を最初に発行する者にはシニョレッジが生じる。それはコミュニティに帰属すべきものだ。しかし、ビットコインの発行は私的な利益になる。そのために新しいビットコインを探す「採掘」には、膨大な投資(コンピューターと電力)が行われ、資源の無駄使いとなっている。

ビットコインはリバタリアンの理想であるだろう。銀行など、金融仲介から解放される。しかし、実際には脱税、資金洗浄の手段として、市場経済をむしばんでいる。信頼できる、正しく資本化された金融仲介には、スクリーニングとモニタリングが必要だ。

詐欺的な、無価値のプロジェクトを排除し、ガバナンスへの発言を保証する。しかし、ほとんどのICOはフリーライドにおよび、株式とは異なり、発言権のないトークンの配布は投機でしかない。

ビットコインを容認する政府は、市民と金融機関をバブルの破たんから護るべきだ。

Bloomberg 20171130

The Blockchain Is Bigger Than Any Bubble

By The Editors


 アメリカ連銀

FT November 29, 2017

The unfortunate exit of an exemplary Fed chair


 Facebook

FT November 29, 2017

Facebook faces the tragedy of the commons

JOHN GAPPER


 金融規制の解体

FT November 29, 2017

US consumer financial protections in jeopardy

PS Nov 29, 2017

Trump’s Fateful Mistake on Consumer Financial Protection

SIMON JOHNSON


 ジンバブエの政変と成長

FT November 29, 2017

Zimbabwe’s chance to follow the China model

DAVID PILLING

ジンバブエの新大統領Emmerson MnangagwaムナンガグワとRobert Mugabeムガベには類似点が多い。2人は、1980年以来、Zanu-PFの支配をともに担ってきた。

大統領が変わっても何も変わらない。ムナンガグワも権力を維持するためには何でもやり、自分の支持者たちのネットワークを守るだろう。それはZanu-PFのエリートたちに富をもたらす仕組みだ。

しかし、同様に、ムナンガグワがムガベ体制からの決定的な転換を目指す、という見方にも説得的な理由がある。ムナンガグワはプラグマティックで、イデオロギーを抑えると予想されている。より重要なことは、ジンバブエの経済状況だ。通貨、雇用、資源採掘が破たんし、国際融資も得られない。ムナンガグワはこうした問題にオープンな姿勢で取り組むだろう。

彼はすでに、市場の基本要素を重視する、と演説している。それは言葉だけかもしれない。しかし、国際投資家を呼び込まねばならない。なぜなら、彼は選挙を約束しているからだ。経済が回復する、という希望を必要としている。

ムガベの破滅的な支配の後でも、ジンバブエの資源、農地、インフラ、人材は、国際投資家にとっての魅力を失っていない。その成長は、国有化プログラムを廃止し、通貨を安定化することから始まる。

NYT NOV. 30, 2017

Can the Singapore Model Save Zimbabwe?

By STEVE H. HANKE

ムガベの支配下で、国有企業、資本規制、価格管理、輸入管理、採掘課徴金、規制だらけの経済活動、が政治的に決定された。1人当たりGDPは、ムガベが権力を握った1980年に比べて、その78%にまで下がった。

毎年の予算赤字がGDP11.2%に達し、ハイパーインフレーションが起きた。200811月、年間インフレ率は89.71021乗倍に達した。最高裁判所が憲法に違反していると宣言しても、ムガベは補償なしに白人が所有する農場を奪った。

国民が政府の発行する通貨を拒んで、ドル化したとき、ムガベの選挙による敗北で連立政権がドル化の条件となる予算の制限を認めたため、経済活動が急速に回復した。しかし、国民統一政権が崩壊し、ムガベが権力を回復すると、ハイパーインフレーションが再発した。

ムナンガグワがなすべきことは、リー・クァン・ユーの戦略を採用することだ。それは4つの原理に基づく。1.安定した通貨。2.海外援助を受けない。3.世界1の競争力。4.私有財産と国民の安全を守る。シンガポールは、貧困の中から抜け出し、世界で最も豊かな国の1つになった。


 トランプ訪英

FT November 30, 2017

Theresa May’s difficult decision on Donald Trump

Sebastian Payne

NYT NOV. 30, 2017

Prime Minister, Tell Trump He’s Not Welcome in Britain

Matthew d’Ancona

FP NOVEMBER 30, 2017

Donald Trump Is Singlehandedly Wrecking the Special Relationship

BY DOV ZAKHEIM

FT December 1, 2017

Donald Trump’s UK state visit — a few teensy tweaks to the itinerary

ROBERT SHRIMSLEY


 債務免除

PS Nov 30, 2017

The Long and Winding Road to a Haircut

CARMEN M. REINHART


 不平等の解決

NYT NOV. 30, 2017

A Simple Fix for Our Massive Inequality Problem

By MATT BRUENIG

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The Economist November 18th 2017

A coup in Zimbabwe: Fall of the dictator

China’s fiscal system: Muddled model

Wages: Great again

Zimbabwe: The man who wrecked a country

Lebanese politics: The mysterious Mr Hariri

German foreign policy: Taking the strain

(コメント) 日本に関しても2つ記事がありました.しかし,平凡です.中国の地方財政がどうなるのか,民主化運動の淵源にあるものです.トランプの場合,全く間違った政策を自慢しながら,実際に起きている賃金上昇が彼に慢心と再選をもたらすなら,アメリカと世界をさらに苦しめます.

ジンバブエの独裁終焉,レバノンの政変,ドイツの外交政策に関して,面白い記事を読みました.世界の政治経済が変貌する背景に,強い刺激を得るでしょう.

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IPEの想像力 12/4/17

メルケルは連立政権交渉に失敗し,トランプは共和党と組んで金融富裕層に有利な減税法案を前進させ,プーチンはシリアに平和をもたらす皇帝の輝きを得ました.それは個人の精神的な高潔さ,公共の善を目指す姿勢を問うとともに,その条件を私たちに問いかけます.

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相撲の人気は高いのに,スキャンダルが繰り返されています.プロスポーツの世界には,莫大なお金が動き,プレイヤーに慢心や嗜虐の心が生じ,詐欺行為を依頼する者も現れます.彼らの身体的な能力の高さが,むしろハラスメント,暴力,買収による詐欺行為の温床になるのだと思います.

個人の道徳や倫理観,相撲道,教育が,高い身体能力に見合っていない,という問題です.それは社会や経済が巨大かつ複雑なシステムになったことで,それに見合う強固な制度を求めています.

これに関して思うのは,脱税や金融市場の規制方法です.短期の投機を市場から完全に締め出すことはできません.しかし,高額所得は公開し,透明にして市民が監視するとよいでしょう.その弊害が明らかな場合,個人消費を超える,所得の大部分を資産管理口座で保管し,その用途を,長期投資だけに限定する法律を定めてはどうか,と思います.力士やスポーツ選手もそうです.

BBCの日本語記事を読みました.レベッカ・シールズ「スキャンダル相次ぐ日本の角界――何が起きているのか」BBC121日.

http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-42191155

「国技」と「暴行」(さらには死亡事件)とが,なぜ結びつくのか? 「モンゴル人力士」など,外国人の力士が増える中で,相撲部屋の伝統的な慣習・管理体制は,どうなっているのか? 給料,恋人,携帯電話を,どのように管理するのか? 保守的な相撲協会と「沈黙の掟」,効果的な宣伝活動は,いつまで相撲人気を維持できるのか? 相撲は日本スタイルのプロレスリングや公式ギャンブルになるのか? 柔道,剣術,弓道も同じです.しかし,後者はプロ化していません.

スポーツを楽しみ,スポーツを究めることの素晴らしい精神や身体を,私は心から称賛します.しかし,スポーツをめぐるスキャンダル,失敗した例も多いでしょう.オリンピックのドーピング問題もそうです.

スポーツが,その極端な報酬や営利ビジネス,社会的地位,政治権力と結びつく中で,おそらく,選手たちの精神は腐食されるのです.厳しい練習に耐える選手たち自身も,その周辺も,高い身体能力が異常な事態を正当化し,なかなか正しい判断ができない,という閉塞状況に陥ります.

まるで,平和を願いながら殺し合いをやめない,部族紛争や宗派対立のようです.横綱や金メダル獲得のために,その選手を育て,すべてを犠牲にしても守ります.

勝敗や順位,戦争状態が,スポーツの目指す精神,あるいは,政治家の理想とは違うでしょう.

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イギリス王室が認めたハリス王子の婚約や,法制化された天皇の退位に関する報道にも,私は類似の問題をみます.イギリスの王子は,黒人と白人の両親を持つアメリカの映画俳優と結婚できるし,日本の天皇も老人として,皇位を譲り,引退できるのです.

横綱や天皇は,現代を生きる貴族であり,最後の独裁者です.王室や皇室が好ましい社会の一部であるには何が必要か,国民が議論する十分なスペースを得るべきだと思います。

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