IPEの果樹園2017 

今週のReview

12/4-9

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ヨーロッパのアイデンティティ ・・・中国と国際秩序 ・・・トランプ税制改革 ・・・技術革新のエコシステム ・・・プーチンによる平和 ・・・北朝鮮の核抑止 ・・・Brexitの妄想 ・・・ドイツの政権交渉 ・・・国歌をめぐる論争 ・・・株価上昇の3つの理由 ・・・トランプ政権の外交 ・・・ハリス王子とマークルの婚約 ・・・反グローバリゼーション ・・・ビットコイン ・・・ジンバブエの政変と成長

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 ヨーロッパのアイデンティティ

FT November 24, 2017

Europeans should not abandon a collective identity

MARIE SOPHIE HINGST

アメリカ映画は、なんでも可能だ、というユニークな人生を描く。フランス映画では、なんでも可能とは言えないが、少なくとも、人生にワインとチーズがある。ヨーロッパの生き方には、何かそのようなものがあると、われわれは認めるだろうか?

最近、ヨーロッパが直面する問題とは、政治演説でしばしば強調される、ヨーロッパの諸価値、ヨーロッパの共有するアイデンティティ、それはヨーロッパ最南端、クレタ島の町Ierapetraと、アイルランド最西端のDingle半島とを結び付けるものだが、われわれはどの程度までそれを自分たちのものだと認めるだろうか?

Brexitが迫ってくる。シリアやリビアの戦禍を逃れた難民が来るのを東欧の加盟諸国は激しく拒絶する。カタルーニャのように分離独立運動が高まっている。ヨーロッパのアイデンティティなど共有されていない。

EU創設の原点となった4つの自由、人、商品、資本、労働力の自由、はその中心を占める考えだが、EU内の市民を統合する力強さを欠いている。経済ブロックとしてだけ支持する人々、よみがえったナショナリストの理想を広める人々(彼らは暴力的な過去を無視する)、さらに、EUも資本主義システムも排除した、「国境のない、国民のない」世界を唱える人々もいる。

4つの自由は、各国のガバナンスを変え、国際通商条約を変え、51000万人の生活を変えたが、ヨーロッパのアイデンティティの基礎ではない。むしろ、その結果である。

その基礎にある信念は、ブリュッセルやストラスブールで創られたのではなく、18世紀にさかのぼる。1796年には、ほとんどすべてのヨーロッパの国が互いに戦争していた。フランス革命を批判した保守派のエドマンド・バークは、「ヨーロッパ人はだれも、どこにいても、亡命者になりえない。」

ヨーロッパが王族の利害と暴力的な紛争に満ちていた時代に、ヨーロッパのビジョンが唱えられた。バークは考えた。ヨーロッパとは、宗教的な、あるいは、政治的な、歴史的な構築物ではない。それは文明の感受性である。Kerry郡のチーズ販売人と、ボルドーのワイン醸造所とが、仲間であると感じる意識、連帯感である。

200年間、ヨーロッパがこの感覚を破壊してきたことは明らかだ。体に染みこんだ感覚は、20世紀の初めに、ほとんど絶えてしまった。しかし、21世紀に、バークの希望はすでに共有された現実である。たとえば、ヨーロッパにおける死刑廃止に関する論争がそうだ。1848年にサンマリノが廃止し、1977年まで、フランスでは実施された。この廃止に至る長い過程を通じて、バークの指摘は正しかった。ヨーロッパが最も強くなるのは、ここに生きる人々、ここに逃れてくる人々にとって、最も重要な問題を論争するときだ。

4つの自由を諦めるなら、ヨーロッパのどこにいても、市民たちが亡命者になるだろう。

FT November 25, 2017

Germany’s place at the centre of the EU cannot hold

ENRICO ELLERO


 中国と国際秩序

PS Nov 24, 2017

The China Factor in Kenya and Zimbabwe

HANNAH RYDER

ケニアでは最高裁が大統領選挙のやり直しを命じた。他方、ジンバブエで長期の独裁的な権力を保持したムガベが退場した理由は、軍による介入であった。ケニアの成長が期待される理由は多い。

しかし、アフリカにおいて中国が果たす重要な役割を考えると、両国と中国との関係に注目しなければならない。それはケニアの経済規模ほどに、ジンバブエを軽視するものではなく、貿易収支や直接投資において、中国にとってのジンバブエの重要性を示している。

NYT NOV. 25, 2017

In China, the Brutality of ‘House Arrest’

By STEVEN LEE MYERS

NYT NOV. 26, 2017

China’s Trojan Train Into Hong Kong

Yi-Zheng Lian

NYT NOV. 26, 2017

Beijing Hinders Free Speech in America

By WANG DAN

FT November 27, 2017

Brussels rattled as China reaches out to eastern Europe

James Kynge in London and Michael Peel in Brussels

中国が指導する中東欧の16か国が集まるグループ16+1は、ヨーロッパ主要諸国で厳しい見方を生じている。北京がEUのルールを侵食し、EU内の東西の緊張を高めて利益を得るのではないか、と外交官たちは恐れるのだ。北京が彼らにとっての輝く星になったことは間違いない。

Hungary, Bulgaria, Romania, Poland, Bosnia and Herzegovina, Serbia, Croatia, Slovenia, Slovakia, Albania, Macedonia, Montenegro, Czech Republic, Lithuania, Latvia and Estonia

しかし、「ツキディデスの罠」ではなく、既存の秩序や制度に並行して新しい制度を築き、競争する、パラレル・アプローチを中国は採用した。AIIB、上海協力機構、ロシアが指導するユーラシア経済同盟、一帯一路。

FP NOVEMBER 29, 2017

America Just Quietly Backed Down Against China Again

BY JULIAN G. KU

YaleGlobal, Thursday, November 30, 2017

The Four Faces of China in Central and Eastern Europe

Michał Romanowski

中国が促進するグローバリゼーションは、善意からだけでなく、国益を実現するものだ。


 トランプ税制改革

PS Nov 24, 2017

America’s Supply-Side Scam

STEPHEN S. ROACH

ワシントンでは税制改革の仮面舞踏会が繰り広げられている。支持する意見は政治的なものだ。共和党の大統領と共和党が多数を占める議会であること。しかし、その結果は究極において経済的なものだ。

ドナルド・トランプ大統領は議論を指導する。減税は「アメリカを再び偉大にする」ために欠かせない、と。過剰な税負担と詐欺的な通商条約のせいで、アメリカは苦しんでいる。競争力を回復するために減税するべきだ、と。

この改革案の焦点は、政治的に唱えられた中産階級の家族を助けること、ではなく、アメリカ企業である。しかし実際は、アメリカ企業の多くは22%の法人税しか支払わず、それは第2次世界大戦後の歴史において低い税率である。アメリカ企業の競争力は、the World Economic Forumの評価で世界第2位に復活している。株式市場からも豊富な資金を得ている。

しかし、こうした事実を忘れて、共和党員たちは主張する。企業の税負担を軽減せよ。すべての病気はそれで治る、と。

経済論が政治化されるときは危険である。政党に偏らない予算局の予測によれば、減税は10年間で14000億ドルの赤字になるだろう。問題は、アメリカの貯蓄不足が今や危険領域に入ったことだ。1964年のいわゆるケネディー減税、1981年のレーガン減税のとき、国内貯蓄率は平均で10.1%であった。今や、わずか1.8%である。

貯蓄不足の経済では、要するに、海外から余剰貯蓄を借り入れることなしには、赤字支出ができない。だから国際収支や貿易赤字問題が、直接、財政政策に関係してくる。注目すべきは、1964年、1981年の大幅減税のとき、アメリカの経常収支が少し黒字であったことだ。対照的に、今ではGDP2.6%に達する赤字がある。赤字財政が貯蓄率をマイナスにするだろうから、経常赤字がさらに増大する大きな危険がある。これはトランプ経済学Trumponomicsの破たんである。アメリカを偉大にするには、経常赤字は減るべきなのだ。

この点で、架空の話が入る。トランプと共和党員たちは、減税がそれ自体で歳入不足を埋める、と主張するのだ。なぜなら、成長を加速するから、と。レーガン減税のときに現れた、いわゆるサプライサイドの主張である。現実はそうならなかった。確かに、経済は深い不況から脱して劇的に回復したが、それは2桁インフレを退治した後、積極的に金融緩和したからだ。対照的に、サプライサイダーが約束した財政の至福状態は決して実現しなかった。1980年代の予算赤字はGDP3.5%となり、公的債務のGDP比は198025%から199041%に上昇した。

それだけでなく、サプライサイダーの議論が間違っていたのは、これがアメリカの国際収支の均衡を終わらせた始点となったことだ。1960年から1982年まで、経常収支は基本的に均衡していた。平均してGDP0.2%の黒字であった。レーガノミクスの予算赤字で国内貯蓄が落ち込み、経常収支赤字が急速に膨張して、1983-1989年の平均で、GDP-2.4%になったのだ。

ジョージ・HW・ブッシュは1980年の共和党大統領候補予備選挙で、対立候補のレーガンを「ブードゥー(呪術)経済政策」と批判した。今や、将来に関する無謀な予測に既視感を覚える。

PS Nov 24, 2017

Reagan’s Tax Reforms Revisited

JEFFREY FRANKEL

レーガンの時代には2つの大幅減税が行われた。1981年と1986年の減税だが、それらはすべての点で大きく異なっていた。

1981年減税は、法人税も個人所得税も含めて、真の税制改革ではなく、財政的な無責任さに突進した、お粗末な熱狂であった。1986年減税は、長期の、慎重な、超党派の審議を経て、所得の限界税率を下げ、特に企業の側の控除を減らすことで、歳入に中立的な、よく考えられたものだった。

1986年の税制改革を見習うべきだが、現在、共和党員たちが進めている減税案は、避けるべき1981年のモデルに近い。

責任ある税制改革には、難しい選択がともなう。それが成功するには、犠牲を分かち合う精神がなければならない。ところが共和党の案には、慎重な考慮も、明敏な妥協もなく、何のコストもないまま減税できる、というふりをするだけだ。

まともな指摘がないわけではない。もしさまざまな抜け穴をふさぐなら、法人税の引き下げは良いことだ。また、1986年のレーガン減税では、企業よりも労働者家族が重視されていた。しかし、現在、こうした慎重さはなく、むしろ逆転している。企業は減税を享受し、75000ドル以下の家族では増税になるだろう。

より長期的な結果も懸念される。1つは、景気循環だ。1981年の減税は1981-82年の景気後退期に適当な短期的刺激策として行われた。今は逆である。失業率は4.1%で、刺激策は必要ない。さらに、ベビーブーム世代が引退しつつある。11万人が引退し、医療保険や年金の支払いが急速に増えていく。

アメリカ政府が国民に負う債務額はGDP76%に達する。レーガンが就任したときの25%、ジョージ・HW・ブッシュが退任したときの46%と比べてみるべきだ。政府債務の総額は、連銀の保有額を含めて、GDP104%に及ぶ。こんな状況で債務を増やすべきではない。

PS Nov 27, 2017

Cutting US Corporate Tax Is Worth the Cost

MARTIN FELDSTEIN

私は赤字予算が嫌いだし、そのマイナス効果について長く批判してきた。しかし、法人税減税のもたらす経済的利益は、債務増大のマイナス効果を上回るだろう。

法人税を引き下げれば、アメリカの企業部門に資本が集まる。海外の低い税率を好んで投資している企業が、国内により多く投資するだろう。利潤の本国送金も増える。これは生産性や実質賃金を高める。

財政赤字に関わる反対理由は、いずれも当てはまらない。政府債務の増大が民間投資から資金を奪う、高金利になる、社会投資や防衛費を奪う、完全雇用の経済に不要な刺激策となる、債務水準が高まって緊急の支出能力を損なう。

財政赤字による刺激策や法人税減税による投資増大は、2つの理由で歓迎される。1.連銀が金利を引き上げると予想され、量的拡大を終える。29年間の経済拡大の後、この先、5年の間に景気は悪化し始める。また、公的債務のGDP比上昇の影響は誇張されている。

NYT NOV. 27, 2017

The Biggest Tax Scam in History

Paul Krugman

最初はさまざまな減税を組み合わせて中産介入にも恩恵があるように見える.しかし,数年経つとそうではなくなる.

財政的に無責任だ,という批判をかわし,富裕層にだけ有利だ,という攻撃にも耐えられるような政治的工夫がなされている.政治的な必要だけで,それには何の合理的な理由もない.

FT November 28, 2017

Trump tax cuts: a wage rise for all or wealth boost for the rich?

Sam Fleming in Dallas

トランプの法人税引き下げは,投資と生産性上昇をもたらし,賃金を上昇させるのか? 完全雇用状態で行う減税は,金融政策によって無効になるのか?

FT November 29, 2017

A modest proposal: time to rethink the impact of US tax reform

LAWRENCE SUMMERS

FT December 1, 2017

A modest proposal part II: the debate over US tax reform

LAWRENCE SUMMERS

財務長官Mnuchinに宛てた公開質問状.

NYT NOV. 29, 2017

Trump Ran for the ‘Forgotten.’ Then He Forgot Them.

By ROBERT KUTTNER

この政権を動かすのは金融エンジニアたちだ.ウォール街の「抽出ビジネス」が多くの報酬を得る.彼らは富を創り出すことがない.

FT November 30, 2017

How Donald Trump uses tribal loyalty to drive economic optimism

GILLIAN TETT


 中東地域の混乱

PS Nov 24, 2017

The Dangers of Nuclear Bombast

JAVIER SOLANA

Bloomberg 20171126

Three Problems With Trump's 'Ultimate' Middle East Peace Plan

By Ami Ayalon , Gilead Sher , And Orni Petruschka

PS Nov 28, 2017

God’s Middle East Playground

DOMINIQUE MOISI

NYT NOV. 29, 2017

Is Trump Going to Lie Our Way Into War With Iran?

By MEHDI HASAN


 技術革新のエコシステム

PS Nov 24, 2017

How Best to Promote Research and Development

RICARDO HAUSMANN

スタートアップ、インキュベーター、アクセレレーター、エンジェル投資家、ヴェンチャー・キャピタル、M&AIPO(株式公開)、流動的な株式市場、テクノパーク(特区)、大学との連携、専門法律事務所。こうしたシリコンバレー風のエコシステム(生態系)が築ける、と信じられてきた。

しかし、もっと複雑なシステムはまねる者がいない。その全体の中から切り取っても意味がない。それは特有の、経路依存性の強い開発であり、組織的な革新がエコシステムを変え、さらに他の変化を可能にする。そのエコシステムの結果だけをコピーすることは、足場もなしに橋を建築するようなものだ。それ自体の重みに耐えられず、建築は失敗する。

スタートアップ型の技術革新がある一方で、企業規模について全く逆の極端にある、大企業の研究開発組織がある。ATTやベル研究所がそうだった。シュンペーターは、人生の異なる時期に、その両方のアプローチについて議論していた。

現在、R&D支出の大部分が、Volkswagen, Samsung, Intel, Microsoft, Roche, Novartis, Toyota, Johnson & Johnson, Google, and Merckなど、巨大企業の組織内で行われている。中所得国の成長にとって、金融や市場、企業規模に欠くことはないが、技術革新やM&A投資が欠けている。大企業に対するAT&T型の契約、すなわち、企業の独占を容認して技術革新を加速することで、経済全体やスタートアップ企業にも利益をもたらすことが可能になる。

Bloomberg 20171124

China's Bike-Sharing Bust

By Adam Minter

中国の町が再び自転車で埋まるなどと、わずか2年前に誰も考えなかったはずだ。1990年代後半でも、自転車は都市の最も重要な交通手段であった。

シェア自転車のシステムは、現代中国の問題を解決するために新興企業による投資で誕生した。それは、最後の1マイル問題、大気汚染問題、運動不足を解決する。しかし、同様に問題も明らかになっている。特に、1.膨大な数の自転車が、歩道や道路の端にあふれ、都市生活を不快にしている。都市政府がその増大に制限を設けている。2400ドルもする自転車を時間当たり数ペニーで貸している。その管理システムは破たんしつつある。

最大企業Ofo Mobikeは、膨大な出資を受けて今も経営を継続しているが、その運営資金を確保するために合併を検討している。シェア自転車の規模、環境改善、経営など、適切な目標を実現するために、地方政府が介入するべきだ。

自由市場がもたらしたシェア自転車革命を救出するために、少し社会主義を回復するのもよいだろう。

FT November 26, 2017

Let the 5G battles begin

RANA FOROOHAR

FT November 27, 2017

The essential ingredient for European tech dominance

NEIL RIMER

FT November 27, 2017

Driverless cars may kill off the world’s deadliest invention

JOHN THORNHILL

FT November 29, 2017

The challenges of a disembodied economy

MARTIN WOLF

FT November 29, 2017

Robots will drive us to rethink how work is distributed

SARAH O'CONNOR


 プーチンによる平和

NYT NOV. 24, 2017

Russia Is Returning to Growth. (Just in Time for an Election.)

By ANDREW E. KRAMER

FT November 27, 2017

What Is Russia Up To in the Middle East? by Dmitri Trenin

Review by David Gardner

PS Nov 27, 2017

The Last Silovik?

NINA L. KHRUSHCHEVA

セーチンIgor Sechinは没落するのか? 「シロヴィキ」という、治安と軍の官僚から生まれた灰色の集団が、過去1世代、ロシアの根幹を支配してきた。しかし、セーチンはプーチンよりも長くKGBに勤めた官僚で、政権の重要ポストを占めた人物である。特に、Khodorkovsky投獄の後、Yudosを買収したRosneftの指導者として、大きな権力を握るようになった。

そのセーチンが買収の罪で法廷に呼び出されている。ロシアでは、これをシロヴィきに対する法の支配が及んだ、とみなす評価はない。むしろ、法律はクレムリンが認める形で行使される。政治スキャンダルを法廷で裁くのは、だれがロシアを支配するか、エリートに示すための事件である。

2018年の大統領選挙が関係あるだろう。プーチンが立候補するかどうかにかかわりなく、少なくとも一時的な、プーチンの同伴者が求められる。メドベージェフは信用を失い、無能である。国民は彼を政治の小間使いとみなしている。

ロシアではたった1人の人物だけが、プーチンだけが最終の権力を握るのだ。

NYT NOV. 27, 2017

Vladimir Putin vs. the Token Women

By AMIE FERRIS-ROTMAN

FT November 29, 2017

Vladimir Putin won the Syria war, but can he keep the peace?

ROULA KHALAF

プーチンは,その目的の多くを達成した,と主張する.ISISを敗退させ,アサド政権に対する反抗を鎮圧し,地中海に面したロシア軍の拠点を強化した.彼はまた中東の地図を塗り替えた.中東では,彼のシリア政策に反対する者で,その話に耳を傾ける.

問題は,彼が再介入をすることなく,シリアから撤退できるのか,である.プーチンが西側を非難したように,軍事介入によってカオスを拡大しただけだ,と言われることなく,秩序が広まるのを確実に保証できるのか?

これは,プーチンによる平和,ではない.政治的解決策はまだはるかに遠い.反政府勢力は,もはやアサドの退陣を要求しないだろう.しかし和解はなく,廃墟に建つ国家,死者と飢餓に苦しむ社会だけである.

もっともありそうな結果は,ロシアが得意とする戦略,紛争の凍結だ.ソチでプーチンがアサドとあったとき,トルコとイランの大統領も参加した.これら3国が合意したのは,紛争を沈静化させるゾーンの確定だ.それは,事実上,すでに進んでいるソフトなシリア分割である.

シーア派民兵集団(イラン)と体制派の軍隊,トルコ軍,クルド人民兵集団,反政府集団が占領地域を管理している.南部ではヨルダンもゾーンを管理している.

分割という言葉を,外交官たちは決して口にしなかった.もしシリアが解体されるなら,同じような状態のイラクやレバノンも解体するだろう.それはタブーである.

しかし,現実にはソフトな分割が固まりつつある.たとえプーチンがシリアに国家を再建したと主張して,西側に説教するころには,その国家はもはや存在しないだろう.


 北朝鮮の核抑止

NYT NOV. 24, 2017

The Parasites Feeding on North Koreans

By BRIAN H. HOOK

FP NOVEMBER 28, 2017

China Should Send 30,000 Troops Into North Korea

BY ALTON FRYE

北朝鮮の核武装を止めるすべての選択肢が失敗した。朝鮮半島の非核化を宣言したが失敗し、国連の安保理決議も失敗し、制裁の強化も失敗した。金正恩を侮辱することは強硬姿勢を煽っただけだ。

他の選択肢はないのか? 冷戦の歴史を観れば、その基本要素は戦略的保障の確立であった。それは他の諸国の核武装を抑えてきた。ドイツ、日本、韓国は、北朝鮮よりも、はるかに核武装する能力があった。彼らが核武装を選択しなかったのは、多くの要因によるが、アメリカとの軍事同盟によって安全保障を確保し、同時に、それが領土内の米軍基地によって確認されていたからだ。同盟国への確認は、敵を抑止する上で、この上なく重要だ。

ピョンヤンは、アメリカと韓国が金正恩の体制を転覆しようとしている、と恐れる。

長年、交渉の鍵は中国が握っている、と言われてきた。中国は北朝鮮の主要貿易相手であり、安全保障の支持を与えてきたからだ。それを交渉のテコにすることを中国政府は嫌った。しかし、朝鮮半島が核武装することは、明らかに中国の利益にならないから、次第に、北朝鮮に対する多角的な圧力の強化に関与するようになった。それがどこまで強化できるか、は疑わしい。

今、異なる視点で問題をとらえるべきだ。中国は、アメリカが韓国に安全保障の確認を与えるように、北朝鮮に約束してはどうか? 北の若い独裁者は、中国が払った犠牲の大きさを理解していない。その犠牲の大きさが北朝鮮を守る保証となっていた。米軍が韓国に駐留するのと同じ規模で、中国軍3万人が北に駐留するなら、安全保障への関与を確立できるだろう。

ピョンヤンは、この確認を歓迎しないかもしれない。中国の支持は欠かせないが、同時に、それに依存することを恐れるのだ。

中国は、朝鮮半島で戦った後、軍を撤退させた。ソ連は中国と異なり、領土や軍の駐留で東欧諸国の政府を拘束した。中国軍の駐留による安全保障の確認は、ピョンヤンをアメリカの攻撃に関する不安から解放する。そして核兵器やミサイル開発の正当化も、その根拠を失うだろう。制裁の緩和や政治的孤立の解消を求めて、金正恩は交渉に応じるかもしれない。

中国はこうしたアプローチを好まないだろう。しかし、状況は変化した。核兵器の拡散を抑えるために、また次の戦争のリスクを抑えるために、最小限の軍事力を朝鮮半島に置くことも考慮するはずだ。北朝鮮はこうした提案を歓迎しないだろう。それは、韓国が米軍の駐留を嫌うのと同じだ。中国軍の駐留を、安定化の枠組みではなく、体制転換の準備とみなすかもしれない。

しかし、たとえ好まないとしても、中国軍も参加した朝鮮半島の安全保障に関する確認が、戦争を回避するため、すべての関係諸国に欠かせない条件であるとわかるだろう。

Bloomberg 20171129

Missile Launch Is Just North Korea's Latest Bait and Switch

By Eli Lake

PS Nov 29, 2017

Trump’s Missing North Korea Strategy

CHRISTOPHER R. HILL

NYT NOV. 29, 2017

Is North Korea’s Nuclear Test a Sign of Hope?

By THE EDITORIAL BOARD

Bloomberg 2017121

Give Up on Stopping North Korea

By Eli Lake


 Brexitの妄想

FT November 25, 2017

A shared history means Britain and Ireland remain intertwined

Ruth Dudley Edwards

FT November 25, 2017

The case for cool heads on the Irish question

FT November 27, 2017

An Irish border solution offers a template for post-Brexit trade

NIALL FITZGERALD

FT November 27, 2017

Theresa May is learning the true cost of her deal with the DUP

Sebastian Payne

FT December 1, 2017

Six impossible notions about ‘global Britain’

MARTIN WOLF

ロンドンのシンクタンクLegatum Instituteが発表したレポートThe Brexit Inflection Point: The Pathway to Prosperityは、朝食の前に、不可能なことを6つ信じなさい、というルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に出てくる白の女王と同じだ。

1.イギリスの自由貿易システムが世界を豊かにした。2EUの規制は拒んで、市場だけ利用できる。3WTOを介してイギリスは通商条約を指導し、アメリカや中国とも交渉できる。4.離脱に向けた制限時間は存在しない。5.イギリスは好ましい条件を示し、EU27か国はこれを受け入れるだけだ。6EUの交渉権限に縛られることはない。

全部、ウソだ。目を覚ませ!

SPIEGEL ONLINE 11/30/2017

Potential Catastrophe

How the Irish Border Became Brexit's Biggest Hurdle

By Markus Becker


(後半へ続く)