(前半から続く)
● ヨーロッパ統合
VOX 17 November 2017
How European integration builds up
state capacity
László
Bruszt, Nauro Campos
FT
November 20, 2017
Europe
cycles into the digital age
Spyros Tsaousis
Bloomberg
2017年11月20日
How to
Build on Europe’s Economic Recovery
By
Mohamed A. El-Erian
Brexitや周辺地域の反発など、ヨーロッパ統合のプロジェクトを根本から動揺させる危機は、構造的問題から生じている。もし4つの領域で前進があれば、これは起きなかっただろう。
1.経済・金融統合と個々の国の構造改革により、成長のエンジンを強化する。2.独仏の機動的な協力関係の形成。3.Brexitより、ユーロ圏やEUにおいて、地域の分離独立派が求める朝鮮に答えを見出すこと。4.ギリシャの債務処理や、技術、課税、規制、最近の諸問題に共通の、協力した具体的解決策を開拓する。
FT
November 21, 2017
Tax
competition undermines European values of solidarity
Rositsa Kratunkova
FT
November 24, 2017
Europeans
should not abandon a collective identity
MARIE SOPHIE HINGST
● トランプと核戦争
FP NOVEMBER 17, 2017
President Trump and the Risks of
Nuclear War
BY PETER FEAVER
上院外交委員会で、初めて、大統領が核兵器を使用する権限に関する公聴会が開かれた。
NYT NOV. 18, 2017
Nuclear War Doesn’t Seem So Funny
After All
By BRITT PETERSON
核戦争は、小説やユーモアの領域であった。しかし、それは幻想から現実に近づいたようだ。
● トランプの貿易論
FT November 20, 2017
US trade problems begin at home not
abroad
RANA
FOROOHAR
アメリカの貿易について、1つ、知っておくべき統計がある。それは、アメリカ企業のわずか1%しか輸出していない、ということだ。
アメリカの貿易問題は、海外ではなく、国内に原因がある。NAFTA再交渉で、離脱するぞと脅してメキシコに改定を要求するより、国内の3つの政策失敗を考えるべきだ。そして、それを中国の政策と比べてみればよい。
第1に、製造業の投資が少ない。アメリカの工場や基幹設備は老朽化している。ところが、アメリカ政府は貿易や税において投資の促進策を採っていない。企業の海外に保有する利潤を送金させることが話題になるが、その資金は国内投資ではなく、株の買い戻しや配当になってしまうだろう。他方、中国は1兆ドルのインフラ投資を計画している。
第2に、アメリカの貿易論は大企業にばかり注目している。だが25万の企業グループの大多数は、雇用者数が100人以下の企業である。世界経済をゼロサム・ゲームとして観るのは、彼らに関わりのない問題だ。企業の多くは資本調達に苦しんでいる。大企業のサプライチェーンと結び付く形で、多くの企業が参加しなければならない。
グローバリゼーションの新局面は、サプライチェーンの地域化なのだ。中国はそれを2025年の開発計画において重視している。外国市場や技術への依存を低下させたいからだ。
第3に、アメリカはシリコンバレーとラスト・ベルトとを結び付けねばならない。ハイテク製造業には未来がある。しかし、アメリカ製造業の半分はデジタル化の戦略を欠いている。
トランプ政権は、産業戦略を機能させる明確かつ一貫した計画も持たずに、「アメリカ・ファースト」を推進する。しかし、トランプが破棄したTPPに集まる高成長諸国にこそ、アメリカの最も価値ある輸出品、ハイテク製品、医薬品、重機械などを需要する中産階級が増えている。NAFTAを離脱することも、同様に、大きな失敗だろう。
計画のない経済ナショナリズムが、アメリカを再び偉大にすることなどない。
PS Nov 21,
2017
Preparing
for the Trump Trade Wars
BILL EMMOTT
トランプは、さまざまな政策分野の中でも、貿易に関してイデオロギーを持っている。アメリカの貿易赤字は、中国、ドイツ、日本、メキシコなど、相手国の不公正な行いを証明している、と主張する。それはアメリカの製造業を苦しめ、雇用を奪っているのだ、と。
大統領になって1年目は、北朝鮮問題で中国に依存し、アメリカのビジネス界が中国との貿易戦争に強く反対したから、トランプは自制した。しかし、今、政府と共和党が進める税制改革が終われば、トランプが貿易で中国などを攻撃するのは確実だ。それは、国内のコア支持層をつなぎとめるためにも、政治的に不可欠である。
すでにTPPを離脱し、NAFTA再交渉を始めた。これはまだ序の口だ。何より、中国企業を標的に、反ダンピング法を適用するだろう。知的所有権の違反行為にも処罰を強化する。中国がこれに報復することも確実だ。
さらに、トランプ政権はWTO、特に紛争処理システムを攻撃している。すでに、WTOの仲裁パネルにアメリカの判事指名を拒んでいる。このままでは、数か月で、システムが機能しなくなる。
トランプは、アメリカが望む2国間取引の交渉を開始するつもりだ。ヨーロッパ、アジアの貿易相手国は、アメリカの重商主義を抑えるため、先行して独自の地域貿易協定を増やすことだろう。
● メルケルの政治的没落
FT
November 20, 2017
Is Angela
Merkel’s tenure as German chancellor drawing to a close?
WOLFGANG
MUNCHAU
メルケルの政治的な没落を議論するのは早いが、それは遠くない。2018年、ドイツは再び選挙になるだろう。そのとき、メルケルが再びCDUの首相候補であるか、これからの出来事が有権者を動かす結果次第である。
SPIEGEL
ONLINE 11/20/2017
German
Meltdown
Everyone
Loses in Coalition Collapse
A Commentary by Philipp Wittrock
FP
NOVEMBER 20, 2017
Germany
Has Plunged Into Unprecedented Political Chaos
BY
PAUL HOCKENOS
日曜日の深夜、ドイツの主要4党の内、3党が連立協議に入ったことは、少なくとも長いトンネルの出口を示す明かりが見えたように思った。
キリスト教民主同盟
(CDU), バヴァリアの姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU),
緑の党,
自由民主党
(FDP)が、5週間近くも、厳しい交渉を続けてきた。社会民主党(SPD)は、投票日の直後に、メルケルとの連立政権協議を否定した。投票結果に示されたSPDへの支持率低下を、メルケルの政治スタイルとの関連で見たからだ。
交渉決裂はドイツを深刻な政治危機に投げ込んだ。それはかつて経験したことのない領域である。戦後ドイツにおいて、多数派の連立政権を形成できなかったことはないし、極右政党から圧力を受けたこともない。それはメルケルの権威をさらに傷つけた。
「ジャマイカ連合」(4政党を示す3色がジャマイカ国旗と同じ)がいずれの政党にとっても理想ではない。妥協を仲介するとしたら、それはメルケルだけであり、その複雑な連立の形成は、メルケルのEU改革を犠牲にするだろう。マクロンがユーロ圏改革に取り組むため、メルケルの支持を頼りにしたことは、ここで限界に直面する。
自由民主党FDPの指導者Christian
Lindnerは、多くの問題で合意はなく、目標が対立している、「信頼のための共通の基礎がない」と述べた。「間違った支配より、支配しない方がよい」と。FDPが連立協議から抜けたのは、4党が「この国を近代化する共通のビジョンを形成できなかった」からである、と主張した。
FDPは、政権に参加する重荷、その責任に耐えられなかったのだ、とも言える。特に4党の連立政権はむつかしい。その理由が何であれ、協議の失敗で最大の痛手を被ったのはメルケルだ。ドイツは再び選挙に入るのか、社会民主党SPDが、メルケルを拒んだ上で、連立政権を組むのか。Frank-Walter
Steinmeier大統領は、緑の党を加えたCDUとSPDの連立を模索するよう求めた。
極右のAfDが、この政治的混乱を宣伝に利用するのは間違いない。主流派の政党は何でも妥協するエリートであり、税金を無駄にしている、と。AfDは、選挙が再び行われれば、一層の右傾化は確実だ、と観ている。それはドイツにも、ヨーロッパにも、望ましくない。ジャーマニー・ファーストの主張が強まり、EU改革は進まないだろう。
CDUには、メルケルの後継者がいない。1人は現在の防衛大臣Ursula von der Leyenだが、CDU/CSUの保守派はメルケルの左派主義を嫌っており、リベラルなvon
der Leyenを支持しない。またヨーロッパにとっては、トランプ、プーチン、エルドアンに対抗できる政治指導者を、メルケルのほかには見いだせない。
SPIEGEL
ONLINE 11/20/2017
Collapsed
Coalition Talks
What's
Next for Merkel and Germany?
By Severin Weiland
NYT NOV.
20, 2017
Germany
and the Age of Political Absolutism
Anna Sauerbrey
Bloomberg
2017年11月20日
Germany's
Political Crisis Is No Tragedy
By
Leonid Bershidsky
FDPのChristian Lindnerは、減税、労働市場の弾力化、移民規制、という選挙公約について妥協することを拒んだ。
ドイツの政治危機は、BrexitやトランプのTwitter政治と異なる。ドイツの交渉にはその内実があるからだ。難民対策、旧東ドイツへの財政補助、持続可能なエネルギー政策。それらはイデオロギーの振幅やポピュリスト的な個人カルトではなく、ガバナンスが機能するために欠かせない。ドイツの選択する道が何であれ、それは効果的な妥協であるはずだ。
FT
November 21, 2017
Merkel
left searching for route out of crisis
Guy Chazan
FT
November 21, 2017
A wobbly
Merkel means a weaker Europe
GIDEON
RACHMAN
FT
November 21, 2017
Angela
Merkel’s intimations of political mortality
The
Guardian, Tuesday 21 November 2017
Germany’s
crisis means uncertainty for Europe. But it won’t be fatal
Natalie
Nougayrède
ドイツの戦後民主体制は安定しており、何の脅威にも揺るがない。メルケルが「ヨーロッパの状態が良い状態なら、ドイツも良好である」という発言に、ドイツの政治指導者たちは誰も反対しない。
ドイツは今もヨーロッパのアンカーであり、統合プロジェクトの継続を支持している。
SPIEGEL
ONLINE 11/21/2017
Coalition
Talks Collapse
Germany
Wins, Merkel Loses
A
Commentary by Ullrich Fichtner
メルケル首相の統治スタイルが終わった。
これは良いニュースである。連立交渉の破たんは、停滞した、ビジョンも野心もない政府が登場することから、この国を救った。4党は、建設的に互いを補完することはないだろう。むしろ、常に互いの邪魔をしただろう。
有権者の意志は、彼らに連立政権を求めたわけではない。連立は誰の意志をも反映していない。いかなる政策も、有権者から権限を委ねられていないことになる。
政党間の対抗は民主政治の活力であり、政党の何よりの使命は、国家の福祉ではなく、ドイツ社会の多様性を反映することだ。社会民主党はいち早く連立協議を否定したが、有権者がメルケルによる保守派とSPDの連立を否定したことは確かである。
この分裂状態で再選挙に向かうことから明らかに利益を受けるのは、AfDだけである。可能性としては、メルケルが少数議席で政権を運営することになる。メルケル自身が政治スタイルの最も重大な危機に直面する。イデオロギーを廃して、メルケルの下で、いかなる党派とも政策を実現してきた時代は終わるだろう。
PS Nov 21,
2017
The
Twilight of Angela Merkel
PHILIPPE
LEGRAIN
メルケルが去ることはドイツやヨーロッパにとって破滅を意味しない。ドイツ経済は、多くの者が思っているほど成功しているわけではない。労働者は輸出の増大から利益をほとんど受けてこなかったし、公共投資は不十分で、小さな革新を遂げてきたが、製造業部門はデジタル化に遅れている。メルケルはEUの困難について多くの責任を負っている。
PS Nov 21,
2017
Germany’s
Götterdämmerung
HANS-WERNER
SINN
少数政権は、その構成が何であれ、必ずしも悪いものではない。法案を通過させるために政府はパートナーを事後的に求めるから、ついに議会は再び公共の議論の場となる。あまりにも長い間、連立政権はパートナーとの閉ざされた交渉で政策を決定し、議会はそれを追認するか、採決するだけであった。
同時に、少数政権の外交は明らかに弱まるだろう。メルケルはヨーロッパ政治で積極的な行動を取れなくなる。しかし、それはまた、ドイツのパートナーたちがドイツ政府との妥協を模索することを意味する。
ドイツの少数政権は、すべての重要政策に関して議会の諸派と長い議論をしなければならない。そして、もしメルケルが過去においてもそうであったら、2010年の、マーストリヒト条約を無視した、主にフランスの銀行を救済する、ギリシャへの救済融資はできなかっただろうし、2012年の、ECBによる政府債券の購入プログラムも、実施できなかったはずだ。
またメルケルは、福島原発事故を理由にドイツの原発廃止を決断したり、100万人の難民を受け入れる政策に転換したりすることも、たとえ政治家としての信念がどうであれ、できなかっただろう。
SPIEGEL
ONLINE 11/22/2017
Collapse
Germany
Seeks to Pick Up the Pieces
By DER SPIEGEL Staff
NYT NOV.
22, 2017
Angela
Merkel’s Failure May Be Just What Europe Needs
Ross
Douthat
FT
November 23, 2017
Stop the
world. Germany is stepping off
PHILIP STEPHENS
● ヴィクトリア・シークレットのトップモデル
The Guardian,
Monday 20 November 2017
How China
made Victoria's Secret a pawn in its ruthless global game
Paul Mason
ランジェリーの有名ブランドVictoria’s Secretが中国で行うショーに、人気モデルを呼んだところ、中国政府に入国を拒まれた。Katy Perryは台湾独立の支持者とみなされ、Gigi Hadidは人種差別的な仕方で中国人をにらんだ、という理由だ。
企業にとって中国市場を得ることは非常に重要だ。中国における高価格の女性下着に対する需要は、賃金上昇と生活態度の変化とともに、急速に増えている。この5年間で販売額は5倍になり、180億ドルに達する。中国の下着は今も機能を重視し、そのギャップはこれまでオンライン販売で埋めていた。しかし、2億人のヤングアダルトの女性たちは90ドルのブラを買う用意がある。
習近平の体制では、すべてが政治によって決まる。Hadidはメディアで批判され、謝罪した。中国では、習の「思想」が党綱領において神聖化された。それを広めるために、行政機関は市民の思想や行動を監視している。
中国がこれまでグローバリゼーションと対抗した方法は論理的であった。自国の企業と市場を厳格に守って、低利融資や政治的な保証のついた投資によって成功してきたからだ。特に、情報分野における「万里の長城」は、西側企業に政府の情報管理を受け入れるように求め、受け入れない企業を遮断した。
Sesame
Creditは、Alibaba
と
Tencentによって設立された信用評価機関だが、オーウェルが描いた自己監視社会を実現している。個人の信用評価だけでなく、巨大インターネット企業の顧客データが、政治的忠誠の評価にも利用されている。評価の低い人々には仕事のオファーがなく、融資やハイスピード・インターネットも利用できない。低評価の人々とネットワークを共有する人々の評価も、下げられる。人権団体はこうした機関を、大衆監視手段である、と批判している。
インターネット市場はバルカン化しており、国家が民間の情報をいつでも利用できる中国の市場と、西側の市場とは、分断されている。中国に進出する西側のビジネスでは、それを利用することになる。それが国家による大衆の監視や反政府的な意見の弾圧に協力している、ということも考えねばならない。
FT
November 20, 2017
China’s
promised energy revolution
NICK BUTLER
FT
November 21, 2017
China’s
investment in Europe offers opportunities — and threats
ANDERS
FOGH RASMUSSEN
● Brexitと安全保障
PS Nov 20,
2017
A Silver
Lining for a Hard Brexit
JACEK
ROSTOWSKI
もしアメリカがヨーロッパの安全保障に関与を拒むなら、イギリスは最も重要なEUの安全保障を同時に失うことになる。「ハード」Brexitがもたらす、長期的に観て、もっとも深刻なコストは、安全保障の劣化である。
FT
November 21, 2017
Whitehall
must create a regional industrial strategy
Michael Heseltine
産業戦略の目的は、生活水準を高めるための資源を生み出し、世界で活動する支出を賄うだけでなく、人間の勤勉さ、技量、専門知識の最前線に立つ国家のビジョンを示すことにある。
● ティラーソン国務長官の評価
FP
NOVEMBER 20, 2017
Rex
Tillerson Is Underrated
BY STEPHEN M. WALT
ティラーソン国務長官は厳しく批判されている。アメリカ外交に関する明確なビジョンがない、アメリカが直面する外交課題に応えていない。トランプ大統領の発言と矛盾する。自分の国務省に関する予算削減を支持した。国務省改革に関して外部のコンサルタントを使った。
ティラーソンは、これまでの天才的な国務長官たちJames
Baker, Dean Acheson, or (more controversially) Henry Kissingerには劣るが、かといって無能な、あるいは大失策を犯した、過去の国務長官ほどひどくはない。
外交政策は、だれがやっても以前に比べて非常に難しくなっている。国務省の組織は時代遅れであり、さまざまな無駄や肥大化がある。21世紀の環境に合わせたリエンジニアリングは避けられない。また、外交を動かす力は、すでに以前から国務省ではなく、大統領府の国家安全保障会議やペンタゴンに奪われてきた。
つまり、ティラーソンの外交が示す不十分さは、彼の欠陥というより、以前から積み重なった問題である。
● プーチン
Bloomberg
2017年11月21日
Of Course
Putin's Heroes Are Too Good to Be True
By Leonid Bershidsky
Bloomberg
2017年11月23日
Putin's
Patriotic Frenzy Is Turning on Him
By
Leonid Bershidsky
FT
November 23, 2017
Russia’s
World Cup: a Putin own goal?
SIMON KUPER
● イギリス予算案
FT
November 23, 2017
Budget
2017 shows a reactive government throwing cash at crises
TIM HARFORD
FT
November 23, 2017
Budget
2017: the UK chancellor has played his bad hand cleverly
MARTIN WOLF
● ムラジッチと国際法廷
FT
November 22, 2017
The
conviction of Ratko Mladic is a significant achievement
TONY
BARBER
NYT NOV.
22, 2017
Flawed
Justice for the Butcher of Bosnia
By
JANINE di GIOVANNI
● モディ
FT
November 22, 2017
Modi’s
India: the high cost of protecting holy cows
Amy Kazmin in Pipaliya Mira, Madhya Pradesh
Bloomberg
2017年11月24日
Modi
Should Beware the Gandhi Trap
By Mihir Sharma
● 移民の社会政治的コスト
PS Nov 22,
2017
Inconvenient
Truths About Migration
ROBERT SKIDELSKY
経済学ではなく、社会学、人類学、歴史が移民論争に大きな役割を果たしそうだ。
移民に反対する人々は、単に失業や賃金低下、不平等を嫌うからではない。経済問題は確かにアイデンティティ・ポリティクスの登場に関係しているが、アイデンティティ危機は経済改革だけでは解消しない。
英連邦UKには、1991年から2013年までに、490万人の外国生まれの移民がやってきた。標準的な経済理論は、自由貿易と同様に、移民流入も一定の時間を経て自国生まれの人々に利益をもたらす、と教える。すなわち、労働力の流入で賃金は下がるが、利潤が増え、投資が増え、賃金が逆に上昇する。以前よりも多くの人々が、良い生活水準を享受できるだろう。
しかし、ケンブリッジのRobert
Rowthornは、この議論に多くの欠点を観ている。たとえ不況にならないとしても、一時的な賃金低下は5年、10年と続くだろう。また、1度きりの移民流入ではなく持続的な流入であれば、労働需要の増加は常に供給の増大よりも遅れる。移民が失業や賃金低下をもたらした、という主張は、誇張もあるが、間違いではない。
また、移民が労働力を若返らせ、財政を安定させる、という議論もある。若い労働者の納税が高齢者の年金の財源となるからだ。Rowthornは、これを際限のないtreadmillと批判する。1度きりの移民流入では、労働力の年齢構成が元の経路にもどるだろう。高齢化問題は解消しない。
大規模な移民流入を支持する経済学は決定的なものではない。移民問題の核心は社会的な衝撃、人々の結束力を低下させることだ。
David
Goodhartは、社会民主主義の視点で移民に反対した。移民規制に反対するリベラルの前提は、社会に対する個人主義的な観方である。リベラルは、移民の社会統合に関して非常に楽観している。しかし、「社会という何か」は存在し、移民たちがそれに参加するよう努めないと、生まれつきの市民たちは彼らを「想像の共同体」の一部とみなさない。
あまりに急速な移民流入は連帯の紐帯を弱め、長期的に、福祉国家の基盤を侵食する。多くの異なる背景を持つ人々から成る社会は、ふさわしいコミュニティーを定義するような、現実的なリベラリズムでなければならない、とGoodhartは主張する。
経済と政治のリベラリズムは、無制限の移民を支持する元来の仲間である。彼らは、国境を不合理な障壁とみなし、国民国家や忠誠心を人類の政治統合を妨げるものと考える。しかし、市民とは、そこに生まれることで形成されるものだ。諸価値は特別な歴史と地理の産物である。もしコミュニティーがあまりにも急速にその構成を変えるなら、人々は自身の歴史を見失い、漂流し始める。
「国境の管理」に失敗した政治家たちは、人々の信頼を失うのだ。
● イスラム国家
FP
NOVEMBER 22, 2017
The
Caliphate Is Destroyed, But the Islamic State Lives On
BY MICHAEL P. DEMPSEY
● 厄介な経済学者
FT
November 24, 2017
Economicky
words are just plain icky
TIM HARFORD
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The Economist November 11th 2017
Endangered
Initial coin offerings
The rise of Muhammad bin
Salman: A palace coup in Riyadh
Technology in Africa: The
leapfrog model
(コメント) まるで軍事政権のような、ポピュリストの指導者に軍人が取り囲むアメリカの姿を、リベラルな国際秩序の指導者とはみなせません。その反対の極端が、仮想通貨の新規発行による富の創造かもしれません。
サウジアラビアの若い指導者がイスラム世界をどのように変えるのか? 期待と不安、希望と恐怖の幕が切って落とされました。
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IPEの想像力 11/27/17
さて、どうも書くことがありません。そういう日もある、かな。
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アン・マリー・スローターが言うように、豊かな諸国の労働者たちが、ロボットやAIによって職場を奪われることを恐れるより、新興市場や発展途上諸国の貧しい労働者たちを観て、学ぶ方がよいでしょう。私には、共通のプラットフォームによって、時間や専門知識、技量を示し、必要な知識や労働、話し相手を求める人とのマッチングをする社会が、良い社会のように思います。
ロシア革命100周年に、いずれの記事も称賛する内容ではありません。しかし、社会主義が共同の食堂や住居を提供し、運営する理想は、将来も失われないでしょう。現実の暮らしにおいても、そうした共通のプラットフォームがあるなら、異なる出自を持つ多様な人々と、ロボットやAIのもたらす新しい社会変動にも、容易に溶け込めるのではないか、と思います。
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大学祭のために講義がなく、すばらしい好天であったために、鴻ノ池運動公園までランニングしました。往復すると20キロです。最初、足は重いながら市街地を抜けて、次第に、ゆるやかな起伏のある住宅地を過ぎ、もっと行くとゴルフ場、そして、開けた土地を蛇行しながら、道は奈良の中心部へ向かいます。
ゆっくりジョギングするだけでいいや、と思って走り始めても、せっかく20キロも走るのだから、とタイムが気になり出しました。快晴の空と開けた土地を楽しむはずが、足が止まるのも我慢して、上り坂でペースを刻みました。なかなかの苦行です。
近鉄電車の線路を越え、国道を越えると、もはや住宅はなく、歩道を行く人もいないような場所です。それでも自動車が絶えることなく走ってきますが、ランナーには誰も会いませんでした。
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ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、内政、外交において、余りにも急激な改革目標を同時に進めている、と懸念されています。あれは、明治維新かもしれない、と私は学生に答えました。
明日はないと思っているのか、なぜそれほど急ぐのか? とトマス・フリードマンは問います。すると彼は、「人生は短い。」・・・自分が死ぬまでに、思い描いたことが達成できるかどうか、見極めたいと答えたそうです。
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ランニングの本には、なぜ走るのか、とか、走ることの爽快感、達成感、など、さまざまな理由が書いてあります。私にはあまり当てはまりません。人それぞれに、こうした苦行を楽しむ理由はあるのでしょう。
意外に多くの人がフルマラソンを走っています。冬場になると、週末には駅伝やマラソンのテレビ中継があります。先日の大阪マラソンも、参加者は3万人以上。ほとんどが完走する、というのですから、大したもんだ、と思いました。
私の悩みは、30キロ過ぎて足が動かないことです。歩道に上がって屈伸運動しますが、何度も歩くようになり、さらに、歩いてばかりになります。これでは「完走」と言えません。
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あちこち悪くなって、今まで聴いたこともないような不思議な病気になります。歳を取ったわけです。医療費や保険料が、自分や家族、社会にどのような形で負担されるのか、私たちは十分に考えてシステムに合意していないように思います。
これも共通のプラットフォームでしょう。複数の仕事を経て、体や意欲に合わせて、いくつか引退し、あるいは、楽しく続けることができる社会なら、医療や介護も、それほど負担にならないと思うのです。精一杯働いて、静かに老いて、死にたいですね。
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酒も、食事も楽しまない、好きな本を読むだけの地味な毎日です。せめて、ランニングを続けていてよかったです。
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