IPEの果樹園2017
今週のReview
11/20-25
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ポピュリスト政治に対抗する ・・・サウジアラビアの変身 ・・・中東政治の波乱 ・・・タックス・ヘイブン ・・・金融政策のフロンティア ・・・トランプとアメリカ民主主義 ・・・大国による世界秩序の逆転 ・・・アジア外交 ・・・テクノロジー企業の巨大化 ・・・日本経済の構造問題 ・・・Brexitと闘う ・・・デジタル経済の税制 ・・・グローバル・ガバナンス ・・・ジンバブエのムガベ失脚
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● ポピュリスト政治に対抗する
The
Guardian, Friday 10 November 2017
We’ll
never stop Brexit or Trump until we address the anger fuelling both
Jonathan Freedland
大西洋の両側で、新しい「特別な関係」を築くことに期待するリベラルな人々は、1年前にトランプが大統領となり、イギリスがEU離脱を決めたことに、まだ納得できない気持ちだろう。彼らは共通の敵を見出し、弾劾裁判や2度目の国民投票で、こうした問題を一掃したいと願っている。
しかし、彼らには見逃している事実がある。トランプやBrexitに投票した人々は態度を変えていないのだ。確かに、予告された政策は実現していない。しかし、その失敗は支持者たちの気持ちを挫いていない。
裕福な有権者たちはまだ分析が不十分だ。小さな町に住む白人支持者の多くが、グローバリゼーションや、近代化そのものからも、取り残されたと感じている。トランプが有能な官僚であるとは考えられない。若者たちに旧来の工場労働を取り戻すことも期待していない。しかし、支持者たちはトランプの暴言や敵に関心がある。トランプの成果ではない。
エリート、リベラルなメディア、有色人種について、支持者たちは最も関心を示す。人種やアイデンティティによる政治支配だ。アイデンティティ、移民、ノスタルジア、地位の低下、この国の変化から取り残されている感覚。
トランプに敵対するより、トランプの原因、経済・社会条件に対処しなければならない。それができないなら、彼らはその勢いを失わない。
PS Nov 13,
2017
How to
Combat Populist Demagogues
DANI RODRIK
最近、会議でNAFTAについて話し合った。トランプ大統領はNAFTAのせいで労働者が苦しんでいると非難し、再交渉を求めている。あるエコノミストが、NAFTAは重要じゃなかった、と述べたことに私は驚いた。彼は専門家としてNAFTAの成立を強く推進した1人である。
また、数週間後に、ユーロ圏の国で財務大臣であった人物の夕食会に出た。彼は、ポピュリストたちが守れないような約束をする、とわれわれは攻撃したが、その批判は自分たちにも帰ってきた、と述べた。
多くのエリートたちは、貧しい人々、労働者がトランプのような人物に投票したことに戸惑った。結局のところ、ヒラリー・クリントンの約束した政策の方が、労働者にとって好ましい結果になっただろうから。このパラドックスを解くために、エリートたちは有権者が無知で、非合理的で、人種差別的である、と考えた。
しかし、別の説明もできる。有権者は合理的で、自己利益に従ったのだ。主流の政治家たちが有権者の信用を失った。そして有権者は、反主流の候補者たちの方が、確実に、支配的な政策から離れられると期待した。
これをエコノミストは、情報の非対称性、と考える。政治家たちは改革を唱えるが、有権者たちは政治指導者を信じない。グローバリゼーションの利益を誇張して売りつけ、彼らの苦悩を軽視してきた政治家たちと何も違わない、と思うからだ。クリントンの場合、彼女は民主党のグローバリゼーション推進派に近く、金融部門にも密接な関係を持っていた。彼女は選挙中、公正貿易を約束し、TPPへの支持を撤回した。しかし、国務長官としてTPPを推進したのは彼女だった。
エコノミストが、プーリング均衡、と呼ぶ問題だ。伝統的政治家と改革派の政治家は同じように見える。だから有権者は、システムを破壊する、と約束するポピュリストやデマゴーグに票を入れてしまうのだ。この条件では、伝統的政治家が決してマネしないほどに「十分に過激」でありながら、ポピュリストにならず、むしろ彼らの目的をくじくような改革派である「抑えた過激さ」を持たねばならない。
中道派の政治家はデマゴーグの怒りを退けるために、非常に狭い経路をたどらねばならない。その目的に合うのは、新しい、若手の政治家である。同時に、政治家になるのは国益を実現するためだ、と明確にすることだ。すなわち、既存の政治的な聖域をすべて攻撃しなければならない。たとえば、金融の自由化、財政緊縮へのバイアス、経済に対する政府の消極さ、世界中で資本移動を自由化する姿勢、国際貿易の神聖化。
主流派から見れば、そのような主張は「過激」である。しかし、ポピュリストを支持する有権者の関心を取り戻せる。そして政治家として、ネイティビズムではなく、包括的な、国民的アイデンティティを示して、政治をリベラルな民主主義の規範内に回復するのだ。
● サウジアラビアの変身
NYT NOV.
10, 2017
Can the
Saudi Crown Prince Transform the Kingdom?
By
MADAWI al-RASHEED
サウジアラビアは生まれ変わろうとしている。モハマドMohammed
bin Salman皇太子は、11人の王子、数人の閣僚、実業家を逮捕した。その2週間前、リヤドでサウジの未来を宣伝したのだ。
石油だけに依存しない多様化した経済。5000億ドルをかけて紅海沿岸に未来都市Neomを建設する。それは穏健なイスラム国家の再生である。富裕なエリートたちの多く、王子たちと取り巻きは追放する。
モハマド皇太子は1979年をサウジの過激化した年とした。それはイランのイスラム革命が起きた年だ。それはサウジアラビアにとっても熱病のような年だった。イランはサウジの誇る唯一のイスラム教国家という地位を脅かしたのだ。
不安に駆られたサウジ国民の間に、18世紀のイスラム純粋信仰としての、ワッハービズムが復活した。その1集団がメッカのモスクを占拠して、政府の腐敗、西側との関係、西洋化に反対した。サウド家は宗教的な混乱を鎮静化するより、過激な集団と妥協した。1979年はキャンプ・デーヴィッド合意の年でもあった。エジプトがイスラエルを承認したのだ。国民の不満を背景に、サウジアラビアはエジプトを追放した。
ソ連がアフガニスタンに侵攻したのも1979年であった。サウジアラビアは、この機会を利用して、信仰心を示すようにした。自国のイスラム過激派をアフガニスタンの聖戦に送り、殉教させたのだ。その結果は、ビンラディンの指揮するグローバルな聖戦であった。
モハマド皇太子は穏健なイスラム国家がどのように実現するのか示さなかった。さまざまな信仰に関する自由な議論を許すべきだろう。逆に、多くの聖職者、知識人、思想家が投獄されている。サウジアラムコの社員たちは壁に囲われた敷地内で自由に暮らしている。サウジの富裕層も同じだ。しかし、体制はこうした生活を壁の外には広めない。
モハマド皇太子は、国民に絶対王政の新しい正当性の説明を売り込む必要がある。しかし新都市の建設は、経済発展や雇用機会をもたらすことはなく、人間よりも。ロボットに依存している。彼はあまりにも多くのことを、余りにも短時間に計画したのだ。
この粛清は権力を固めるためのものであった。
FT
November 11, 2017
Greed and
intrigue grip Saudi Arabia
Simeon
Kerr in Dubai
YaleGlobal,
Tuesday, November 14, 2017
After a
String of Failures, Saudi Crown Prince Monopolizes Power
Dilip Hiro
PS Nov 15,
2017
Saudi
Arabia’s Populist Temptation
ISHAC DIWAN
Bloomberg 2017年11月15日
Saudi
Arabia Is Set to Become a Bigger Commodities Player
By
Shelley Goldberg
サウジアラビアは、石油の輸出だけに経済の90%を依存している状態から、他の国際商品市場でも主要なプレーヤーとなるだろう。経済を多様化し、テクノロジー分野でも投資を増やし、紅海沿いのエジプト・ヨルダン国境に近い国際都市Neonを建設する。
PS Nov 16,
2017
Saudi
Arabia’s Revolution From Above
JOSCHKA FISCHER
アラブの春が中東と北アフリカに及ぶ一帯で革命的熱狂を巻き起こしてから7年経って、ついにサウジアラビアが独自のやり方で追いついた。極端に保守的な王国を近代化するよう若者たちが求めているが、それを指導するのは街頭に現れた群衆と革命ではなく、32歳の皇太子、王国の公式の継承者、モハマド・ビン・サルマンMBS皇太子である。
アラブ世界で最大の面積、莫大な石油の富を持つ国家であるが、西側、特にアメリカの戦略的なパートナーであった。しかし、イスラム教徒の中世国家と西側の近代化とに挟まれた国家として、極度の矛盾を常に抱えている。近代的なインフラとアメリカ風のショッピングモールが、イスラム教徒にとって最重要な聖地、メッカやメジナにも建設されている。
MBSは、中国の習近平が行った汚職撲滅キャンペーンのまねたように見える、権力基盤の獲得を行った。しかし、同様に権力を得ていたイランのパーレビ国王が、最終的には、1979年のイスラム革命で追放されたことも思い出すべきだ。その革命が失敗することは望まないが、それが成功することも地域の緊張を劇的に高め、戦争の可能性さえある。
NYT NOV. 16,
2017
If Saudi
Arabia Reforms, What Happens to Islamists Elsewhere?
By
KAMEL DAOUD
● 中東政治の波乱
FP NOVEMBER
10, 2017
Donald
Trump Has Unleashed the Saudi Arabia We Always Wanted — and Feared
BY AARON DAVID MILLER, RICHARD SOKOLSKY
私たちが国務省にいたころの、サウジが自分自身の影におびえた失われた時代を懐かしく思った。
かつて、サウジの指導者たちはリスクを避けたがった。内外の安全保障に関して、自ら解決することを目指さず、アメリカに依存しただけだった。その行動力に欠ける、注意深さに、われわれは失望した。
しかし、今、モハマド皇太子の下で、サウジはわれわれが求めたことをすべて実行しつつある。むしろ多すぎるくらいだ。イエメン、カタール、そして、今や陰で進行中のレバノンは、かなり深刻な外交政策の失敗だ。唯一、成功と言えるのはトランプを取り込んだことだ。
それでさえ、両者の取引でしかない。一時的な戦略の一致によるものだ。トランプ政権はオバマのすべてを嫌い、サウジはイランのすべてを嫌う。
しかし、トランプ政権でも確かな目を持つ者がいたら、アメリカ大統領の誰もサウジにこれほどの政策転換を望まなかった、とわかるだろう。注意深く、距離を取るべきだ、と。しかし、トランプにはそれがわからない。
大統領は、サウジの始めた流血の、人道に反する、破滅的なイエメンへの軍事介入を支持する。カタールへの断交を支持する。サウジ国内の人権蹂躙や国外への過激派輸出を気にしない。トランプはサウジを西側文明の拠点に変えたいのかもしれないが、サウジの政策がアメリカや地域の利益になるかどうか、考えていない。
それはアメリカの信頼、イメージ、政策を、自分の知識や経験、判断力を超えた野心に取りつかれた若い王子に委ねるものだ。
FT
November 13, 2017
Does the
oil market expect a new Mideast war?
NICK BUTLER
Bloomberg 2017年11月13日
Only the
UN Can Hold a Real Syrian Election
By Leonid Bershidsky
FT
November 14, 2017
The Hariri
mystery shows the extent and risks of Saudi influence
ROULA KHALAF
サルマン皇太子は最初の戦争であるイエメンで勝利しなければならない。イエメンのフーシ派を支援するヒズボラに敵対するよう、サウジアラビアはレバノン政府に圧力をかけたのだ。しかし、フーシ派の最大の支援者はイランだ。そして、この政治介入は、レバノンをもサウジアラビアに敵対させるだけかもしれない。
FT
November 14, 2017
To help
Saudi Arabia, Trump must offer more than mere applause
PHILIP GORDON
SPIEGEL
ONLINE 11/15/2017
War in
Yemen
In a
Devastated Country, One City Is Thriving
By Christoph Reuter
NYT NOV. 16,
2017
Saudis Try
to Starve Yemen Into Submission
By THE EDITORIAL BOARD
サウジアラビアはイエメンへの人道支援物資の補給を阻止している。それは最悪の飢饉を生じ、数百万人が犠牲になる恐れがある。
FP NOVEMBER
16, 2017
Israel
Isn’t Going to Fight Saudi Arabia’s Wars
BY AMOS HAREL
● タックス・ヘイブン
SPIEGEL
ONLINE 11/10/2017
Wolfgang
Kubicki on Tax Havens
'We Can
Solve the Problem Unilaterally'
Interview Conducted by Christian Reiermann
産業界に近い立場の自由民主党員で、次期財務大臣となるWolfgang
Kubickiに尋ねた。タックス・ヘイブンをどうするべきか?
Kubicki: 指摘されている多くの行為は詐欺ではない。合法である。その状況をもたらした各国に責任がある。タックス・ヘイブンはバーミューダやケイマンだけではない。
SPIEGEL: マルタとか?
Kubicki: オランダ、アイルランド、ルクセンブルグ、など。EU加盟諸国は他国を犠牲にして自国を有利にすべきではない。それは国際合意がなくても一国で行える。だれも、EUでも、その国に税制を強制できない。ドイツの税制に、規制を追加するのだ。課税されていない収入は控除されない、と。国内企業と同じ税負担を、外国企業にも求める。
SPIEGEL: グローバルな課税原則になれば、財に価値を付加した国が課税するべきである。それはドイツの利益を損なわないか? ドイツの自動車会社は中国やインドで多く生産しているが、その利益から主要な税を得ているのはドイツである。彼らはもっと多くの税金を求めるだろう。
Kubicki: 私は、ドイツ財務省が税収を失うとは思わない。将来は、そのような合意が世界中で行われる。われわれは、税収の公平な割合が自国に残るように求める必要がある。
SPIEGEL
ONLINE 11/10/2017
Paradise
Looted
How Sicily
Became Ungovernable
By Walter Mayr
SPIEGEL
ONLINE 11/10/2017
Game for
the Wealthy
The
Ongoing Battle against Tax Havens
By Christian Reiermann
企業や超富裕層が税金を回避するさまざまな仕組みに関して暴露する文書が公開された。Apple、Nikeのような多国籍企業がその典型である。
財政当局の国際協力が模索されている。企業が課税回避のために「経営指導料」、「ブランド使用料」などの名目で海外支店への支払いを膨張させ、利潤を移転することを阻止する合意が重要だ。
EU加盟諸国が、たばこ税やVATのように、法人税の最低率を合意することだ。マルタのような国がそれを阻んでいる。米日が透明性に関する合意を阻んでいる。ドイツの政府は、独自に改革できる余地を模索し始めるだろう。
NYT NOV.
10, 2017
How
Corporations and the Wealthy Avoid Taxes (and How to Stop Them)
By Gabriel Zucman
企業が利潤をタックス・ヘイブンに移転することでアメリカが税収を失っている額は、私の推定によれば、ほぼ700億ドルである。それは各年の法人税の20%に近い。これは合法である。
世界の課税避難所に超富裕層が保有する資産は、推定で8.7兆ドル、世界GDPの11.5%に匹敵する。その多くは関連する課税当局に報告されていない。これは、・・・合法とは言えない。
ここには莫大な資源の無駄があり、そこからの税収があればわれわれには減税できるし、社会にとって有益なプログラムにもっと支出できるはずだ。
どのようにして行うのか? たとえば、今、あなたの目の前にあるGoogleもそうだ。
最初、Googleは検索や広告に関する重要な技術の知的所有権を、すべてGoogle
Ireland Holdingsに移転した。アイルランドの規制では、バーミューダにおいて「経営」することを認めているからだ。そこからさらに別会社のGoogle
Ireland Limitedに技術の利用ライセンスを与えている。このGoogle
Ireland Limitedがすべての国のGoogle子会社と契約し、技術を利用させている。利用料から生じた利潤はバーミューダ経由で親会社のthe
Google Ireland Holdingsに送られる。
2015年、155億ドルの利潤を出したGoogle
Ireland Holdingsは、バーミューダで数人しか雇用していない。その法人税率は?
ゼロである。
FT
November 11, 2017
Stranger
than paradise: the truth about tax
NYT NOV.
12, 2017
Paradise
Papers Show How Misguided the G.O.P. Is on Taxes
Bryce Covert
● 金融政策のフロンティア
FT
November 10, 2017
We’re in
bubble territory again, but this time might be different
MARTIN WOLF
PS Nov 10,
2017
Central
Banks in the Dock
BARRY EICHENGREEN
中央銀行は政治的な責任を果たすために、その独立性を譲歩するべきだろうか? インフレ目標は達成できず、金融安定化に失敗し、金融危機後のデフレに対して財政政策との協力が必要であり、非伝統的な金融緩和を続けて、その金融市場や国際的影響にも批判が高まっている。
しかし、だから中央銀行から独立性を奪うというのは、産湯といっしょに赤子を棄てることになる。金融政策は、複雑で、技術的なものである。その管理を政治家に委ねるのは、原子力発電所の鍵をすべて政治家に預けるようなものだ。
中央銀行は、こうした脅しに対して、もっと透明性を高めるべきだ。政治家たちに、なぜ財政政策との協力が必要か、外国の中央銀行と協力するか、公共の利益から説明するべきだ。より詳細な金融捜査に関する情報を開示する。
2011年、ECBはイタリアのベルルスコーニ政権が崩壊するのを早めた。中央銀行はそのような議会政治への干渉を回避する。そして、政治家たちの批判を静かに聞き、最善の判断を待つことだ。
PS Nov 10,
2017
Banking on
the Unbanked
REETA ROY
昨年、世界銀行は、主に発展途上諸国の7億人が、過去3年間で、金融サービスへのアクセスを得た、と報告した。しかし、世界の最貧困層にも金融サービスを利用可能にする、という目標の達成はまだ遠い。現時点では、まだ成人の20億人が金融サービスから排除されている。
貧困層が銀行口座を持ち、モバイル決済を利用できれば貯蓄が促される。子供が学校に行き、女性はビジネスに参加して自立できる。凶作、病気、災害のようなショックに対する貧困家庭の適応力が高まる。資本を得て零細ビジネスが繁栄すれば、大企業も繁栄し、雇用が増える。特に若者が働く機会を得る。
VOX 11
November 2017
Democratising
finance: The digital wealth management revolution
Juergen Braunstein, Marion Laboure
FT
November 13, 2017
Unusual
times call for unusual strategies from central banks
MARTIN WOLF
● トランプとアメリカ民主主義
PS Nov 10,
2017
Facing the
Four Structural Threats to US Democracy
LAURA TYSON, LENNY MENDONCA
トランプ政権が成立した後、その混乱と暴挙に対して信頼が失われた一方で、州政府と地方政府への信頼は損なわれていない。彼らは民主主義に対する構造的な4つの脅威に対処する必要がある。すなわち、ゲリマンダリング、予備選挙、政治献金、妥協を妨げる立法過程、である。
NYT NOV.
10, 2017
Socrates
in the Age of Trump
Nikos Konstandaras
FP
NOVEMBER 13, 2017
Trump
Isn’t Sure If Democracy Is Better Than Autocracy
BY STEPHEN M. WALT
1990年代の初めから半ばにあった、アメリカ型のリベラルな民主主義が世界に広まるという確信は、わずか20年ほどで、専制支配者の復活に変わった。Francis
Fukuyama の「歴史に終わり」も、Tom
Friedmanの「黄金の拘束衣」やDOS資本主義6.0も、そのモデルとしてのアメリカとともに失われた。
今やアメリカのドナルド・トランプは専制支配者たちを羨望して、その権力を称賛する。彼らは彼以上に自由で、彼の手を縛るチェック・アンド・バランスなど許さない。
確かに民主主義は多くの失敗を犯した。しかし、民主主義には自己調整する能力があるはずだ。アメリカの現状は根本的な改革を必要とする。その満足感や理想主義が、内外において、リアリズムをもっと必要としたのだ。
NYT NOV.
14, 2017
Can
Trumpism Survive Trump?
By
ROSS DOUTHAT, DANIEL McCARTHY and HENRY OLSEN
NYT NOV.
13, 2017
President
Trump’s Thing for Thugs
By
THE EDITORIAL BOARD
FP NOVEMBER
15, 2017
It’s Too
Early to Celebrate the Survival of American Democracy
BY DARON ACEMOGLU
● 大国による世界秩序の逆転
PS Nov 10,
2017
China’s
New World Order?
RAMESH THAKUR
Bloomberg 2017年11月10日
Trump and
Xi Both "Lose-Lose"
By Michael Schuman
NYT NOV. 10,
2017
China Has
Donald Trump Just Where It Wants Him
Roger Cohen
習近平は明確な世界像を描いている。中国はグローバル・リーダーになる。トランプは中国で歓迎されて、米中が世界のほとんどすべての問題を解決できる、と述べた。
北朝鮮の体制が崩壊し、朝鮮半島がアメリカの同盟国として統一されることは、中国にとって望むことではない。朝鮮半島の非核化というより、北朝鮮が日本や韓国の核武装を刺激しないようにすることだ。
また、習はトランプの予測できない行動を管理するという問題を抱える。
NYT NOV. 10,
2017
Trump in
the Age of the Strongman
Bret Stephens
習近平とモハマド・ビン・サルマンは、かつてないほど権力を個人に集中した。ドナルド・トランプは、自由世界の指導者であるはずだが、彼ら2人の権力確立を祝福した。
彼らだけではない。われわれは強権指導者の時代に生きている。トルコのエルドアン、エジプトのシシ、フィリピンのドゥテルテ、ハンガリーのオルバン、ロシアのプーチン。トランプはその仲間ではない。アメリカのシステムがそれを許さない。しかし彼は強権指導者の心理的な素質を持ち、彼らのような権力集中を熱望している。
われわれは、また、民主主義の自信喪失の時代を生きている。低成長の常態化。勝利する道が見えない戦争に踏み込み、あるいは、それを恐れて踏み込めない。議会は機能せず、政党制は破たんし、大統領は愚か者だ。
それは歴史的に観て、およそ40年ごとに再現した。1930年代、1970年代にも、専制体制が現れ、民主主義は衰退した。政治の交渉過程に対する嫌悪感から、カリスマの政治、効率性の政治、その両方が熱狂的に支持された。
現代が異なるのは、以前の時代にはフランクリン・ルーズベルトやドナルド・レーガンがいたことだ。彼らは開放型の社会が閉鎖社会に対する優位性を疑わず、民主主義を歴史の使命として、道義において支持した。トランプは違う。
北京を訪問したトランプは、歓迎式の軍事パレードに感動した。「あなたは私にとって特別な人間だ」と習に話しかけ、その独裁的権力の獲得を「驚くべき昇進だ」と祝福した。香港で反体制的書店の体制による店主誘拐、ノーベル賞受賞者の投獄、公海における米海軍の拿捕があっても、習が支配する体制について何も言わなかった。
国家安全保障会議や国務省が、その使命から民主主義や人権を削った。それはリアリズムに依拠し、民主主義を過剰に奨励して失敗した、過去の厳しい経験から学んだからだろう。しかし、アメリカ大統領の理想は強権指導者ではない。それはアメリカの価値に反する。自由を支持して立ち上がる意志が疑われる。
Bloomberg 2017年11月11日
Putin's
Trolling of the West Is Not Just a Tactic
By Leonid Bershidsky
2016,2017年にアメリカや西側民主主義国で行った公然の情報介入は、プーチンの戦略的失敗であったのか? エストニアの大統領Toomas
Hendrik Ilvesは、会議で、戦術的には大成功だが、戦略的に観て、失敗だった、と述べた。プーチンは多くの国を敵にしただけだ。
西側の専門家たちは、プーチンの力を数年に関して観ている。しかし、それは戦術か、あるいは、戦略か? もし他国に混乱を起こす作戦、選挙でポピュリストを支援する作戦であったなら、それは失敗であった。プーチンは、短期のゲームによって、長期のゲームをしくじった戦術家だ。
しかし、プーチンの権力を観察してきたが、大統領としての最初の8年間に、彼は2つの異なる長期ゲームを行った。1期目は、パックス・アメリカーナのルールに従って、経済効率と国際的な評価を高めようとした。ロシアのNATO加盟についてまで話した。
2期目は、西側のルールに飽き飽きして、ロシアは、アメリカやヨーロッパ諸国と話すとき、同じ地位に立とうとした。石油価格の上昇から莫大な富を得て、ロシアの富が国際的に波及し、プーチンの自信となった。ロシアはG8に参加し、テロとの戦いでも仲間であった。
2008-2012年の大統領でなかった4年間、西側とのパートナーシップに基づく戦略はうまく行かなかった。西側のリビアに対する軍事介入に反対し、ロシア人が不正選挙に抗議する中で、クリントン国務長官は公然とロシア国内の抗議活動を支持した。
プーチンの行動は、混乱したものでも、予測不能なものでもなかった。おそらく、西側指導者の誰よりも戦略的であった。3度目の大統領任期が、突然、機会主義的な戦術家になったのではない。第3の長期ゲーム、彼自身にとっても、これは未知の領域に向かう邪悪な旅である。
クリミアを併合し、ウクライナ東部で分離独立派の内戦を刺激し、シリアに軍事介入し、英米、その他の西側諸国でプロパガンダを流し、選挙に介入した。フランスのル・ペンのような、友人と極右政治家をヨーロッパ各地で支援した。プーチンは、西側との協力に利益はない、と確信したのだ。ロシアが何をしても、西側はロシア制裁をやめない。
だからプーチンは、西側が、特にアメリカが非常に不安定で、わずかな攻撃にもバランスを崩すことを示した。それは、発展途上諸国に対して、アジア、中東、ラテンアメリカ諸国がアメリカのヘゲモニーに挑戦するよう促したのだ。西側は粘土の足で立つ神殿だ。フィリピンや中国で、それはうまく行った。
プーチンは、かつて西側の指導者たちとG8に参加し、ハイレベルの外交や心のこもった会話を行えたが、今やその失った地位を苦しんでいる。トランプとの会談を求めたクレムリンの外交努力を、後悔やメンツの維持、と観るのは間違いだろう。プーチンの考え方は逆転しえず、ロシアが苦境を耐える能力はいつも過小評価されている。だれが正しいか、現時点ではわからない。
西側がプーチンのゲームに勝つには、民主的制度が機能すること、人々の望みを政府が叶えること、発展途上諸国や、さらにはロシア人にとっての模範であると示すことだ。これまでのところ英米はそれに失敗している。実存的な危機として分裂と破たんをもたらすプーチンの戦略は、必ずしもまだ、失敗していない。
Bloomberg 2017年11月11日
Trump,
Brexit and Echoes of World War I
By Tobin Harshaw
ドナルド・トランプが大統領に当選してから、歴史は笑劇になった。He
is Hitler, he is Stalin, he is Mao, he is Caligula, he is Cyrus the Great, he
is Pharaoh, he is Joe McCarthy, he is Charles Lindbergh, he is King George III
(both the sane and insane versions), he is Julius Caesar, he is Hamlet, he is
the Know-Nothing Party, he is Charles Manson, he is Jimmy Carter, he is Andrew
Jackson, he is Herbert Hoover, he is Woodrow Wilson, he is -- wait, what:
Woodrow Wilson? Seriously?
第1次世界大戦の前に似てきたのか? このことを26冊の著書があるイギリスの歴史家Sir Max
Hastings、特に"Catastrophe
1914: Europe Goes to War"の著者に尋ねた。
政治家たちは100年前と同じようにナショナリズムをもてあそんでいる。中国の指導者たちは反日感情を煽り、経済改革の口実にする。他方、安倍晋三はナショナリズムを同様の理由で利用している。ウラジミール・プーチンはシリアが解体されるのに満足し、20世紀の戦争に対する集団的反省であったEUは、その創設以来、これほど感情が荒廃し、原始的ナショナリズムによって分断されたことはない。
Max Hastings(MH): 歴史は決して再現しない。しかし、過去に犯した重大な失敗から、われわれは多くを学ぶことができる。
3年前、中国から軍事使節団がイギリスに来たとき、私は彼らと話すように求められた。彼らは私が第1次世界大戦に関する本を書いたことから、類似のことは起きているか、と尋ねた。私は1つ指摘した。
私にとって1914年の最も皮肉な事実とは、もしドイツ人が戦争しなかったとしたら、彼らが20年以内にヨーロッパを平和的に征服するのは確実であったことだ。経済・産業指標のすべてが、イギリス、フランス、ロシアに対するドイツの優位を示していた。しかしヴィルヘルム皇帝とその将軍たちは兵力のみで優位を判断し、戦争に踏み切った。その結果は、歴史が示すものだ。
私は彼らに、中国政府がその多くの成果を犠牲にしてまで南シナ海や台湾について強硬姿勢を取るべきか、と問いかけたのだ。
MH: 歴史において不可避なものなど何もない。「ツキディデスの罠」という話の半分しか私は支持できない。
Richard Haass and Graham Allisonが指摘した重要な点は2つだ。1.アメリカはもはや、世界のどこでも、何にでも、自分の意志を押し通す力がない。問題によってはアメリカが譲歩しなければならない。特に、中国に。それは厳しい駆け引きだ。
2.われわれはしばしば「平和」という言葉に最高の価値を与え過ぎている。Sir
Michael Howardが指摘するように、「安定性」 stability こそがキーワードだ。本当に貴重なもの、われわれを次の戦争に向かうことから救出するものは、安定性と予測可能性である。政治家たちはその意味を語らねばならない。
MH: 「栄光ある戦死」"The Glorious Dead"という言葉を観る。しかし戦争は、狂人を除く、すべての者にとって絶対的に凄惨な経験だ。こうした標語で、社会は大衆を鼓舞し、息子たちを戦場へ送ってきた。若者が死ぬことに栄光など決してない。言いうるのは、ある戦争が他の戦争に比べて、優れた大義を示したかどうか、である。
(後半へ続く)