IPEの果樹園2017 

今週のReview

11/13-18

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カタルーニャ独立 ・・・大国間外交とユーラシア ・・・パンダ外交 ・・・反トラスト法の修正 ・・・MbSによる粛清と外交 ・・・北朝鮮危機の解決策 ・・・トランプの内政と外交 ・・・ロシア革命100周年 ・・・パラダイス・ペーパー ・・・モディの改革 ・・・イランの外交

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 カタルーニャ独立

The Guardian, Friday 3 November 2017

Catalonia isn’t just Spain’s nightmare – it is Europe’s

Simon Jenkins

2日前、マドリード政府は、バルセロナ政府が独立を宣言せず、新しい地方議会選挙を実施するなら、地方政府を廃止しないという合意を見直した。そしてマドリードは自治権停止を進めたが、カタルーニャは独立宣言の手続きを進め、ただし実施には言及しなかった。マドリードはただちにこれらカタルーニャの政治家と官僚たちを逮捕した。反乱と反逆の罪だ。

まったく愚かな展開である。世論調査はまだ独立支持が過半数を示したことはなかった。バルセロナ政府は民主的な規範を受け入れ、暴力を用いることなく、交渉してきた。住民投票を阻止するためにマドリード政府が行った介入を別にすれば。長期に及ぶ、流血の闘争を経てきた、バスク地方とは全く異なっていた。

カタルーニャは、程度の差はあるが、Basques, Bretons, Flemings, Scots, Bavarians, Silesians, Ukrainians, Transylvanians, Venetians, Corsicansなど、各地から注目されている。その紛争は、ポーランド人、ボヘミア人、ハンガリー人、ギリシャ人など、ヨーロッパ各地で地域的な紛糾をもたらし、長期にわたる不満を持ったナショナリストたちと共鳴するところがある。イギリスも偽善的に語ることはできない。アイルランドの分離主義に長く反対し、スコットランドとウェールズの地方分権を否定してきた。一方、ユーゴスラビアの分割を支援して軍隊を送った。

民族自決は、ウッドロー・ウィルソンが1917年に、ヨーロッパの平和に向けた14か条の原則で示したときから、ヨーロッパの安定に欠かせない部分であった。しかし、スペイン人とカタラン人の自決権はどうなるのか? その定義はヨーロッパの利益によって歪められる。分離独立は自治権の程度で表現されるだけだ。

EUとは、元来、中央集権化を進めた組織であった。47の国民を組織する欧州評議会が、ヨーロッパ全体で民主主義や人権の問題を扱う。EUそれ自体が政治的な拘束衣となった。加盟国にEU離脱の国民投票を行なわせない。しかし、これは健全ではない。アイデンティティ政治が高まって、ヨーロッパの自由を脅かしている。カタルーニャの問題は、小さな地方の紛争ではなく、ヨーロッパへの警告だ。

FT November 4, 2017

The perilous path to statehood is best taken slowly

DAVID GARDNER

国家形成という道は危険に満ちており、ゆっくり、急ぐことだ。

20世紀の脱植民地化、帝国を解体した2度の世界大戦、国境線を歪め、鉄のカーテンを引いた後、国家の形成は流血をともなわない過程になるはずだった。しかし、それは今も危険な罠に満ちている。カタルーニャとクルディスタンがそれを示した。現代の分離独立主義者は多くの要素を求められるが、広い合意形成、揺らぐことのない団結、適切なタイミングは、そのいくつかでしかない。

冷戦終結は最高のタイミングであったが、ソビエトから多くの共和国が分離し、チェコとスロヴァキアも「ビロードの離婚」を成功させた。しかし、ユーゴスラビア内戦で事態は悪化した。殺戮に向かうアイデンティティ政治が広がったのだ。民族自決への支持は消滅した。カナダのケベック、UKのスコットランドは、住民投票で独立反対派が勝利した。

独立に向けた合意形成は完璧でなければならない。クルド人も、カタラン人も、その夢の実現には、イラクの内戦やシリアの経済危機が妨げになっている。急ぐことは危険である。

The Guardian, Monday 6 November 2017

Carles Puigdemont: This is not just about Catalonia. This is about democracy itself

Carles Puigdemont

The Guardian, Monday 6 November 2017

Carles Puigdemont gambled and failed. The consequences will live on

George Kassimeris

The Guardian, Wednesday 8 November 2017

Catalan nationalism isn’t the progressive cause you might think

Aurora Nacarino-Brabo and Jorge San Miguel Lobeto

Bloomberg 2017118

Catalan Separatists Don't Get a Martyrdom Boost

By Leonid Bershidsky


 大国間外交とユーラシア

The Guardian, Friday 3 November 2017

Trump’s Asia tour will expose his craving for the approval of despots

Simon Tisdall

北朝鮮の核問題や中国の不公正な貿易に関して多くのコメントが出るだろう。他方、ホワイトハウスがこれら2つのテーマに重点を置くことで、トランプのホストたちが人権についてひどい状態であることには触れないだろう。トランプは、開放型の、民主的なガバナンス、といった「西側の価値」を支持する見せかけも放棄してしまった。彼の前任者たちも、低度の差はあれ、こうした権利にはダブル・スタンダードがあった。しかし、トランプの姿勢には、まったくスタンダードというものがない。

何より、ドゥテルテとの会談に示されたトランプの歓迎ぶりがそうだ。フィリピンの大統領が行う麻薬の密売と常習者に対する超法規的な撲滅キャンペーンを、トランプは公認するのか? 5月の電話会談で、「麻薬問題で信じられないほどの成果を上げている」とドゥテルテを称賛したのだ。その成果とは、就任1年で7000人以上を法律によらずに処刑したことだ。

トランプの姿勢を弁解する者は、彼はアメリカ大統領として難しいバランスを取らねばならないのだ、と主張する。アメリカは、フィリピンが北朝鮮の体制に反対してほしいし、中国の南シナ海進出にも反対してほしい。ベトナムについてもそうだ。TPP離脱後、アメリカの2国間交渉を進めねばならない。同時に、防衛、安全保障、情報協力を進め、中国に対抗する必要がある。ベトナムが、いかに無慈悲な、共産党の一党独裁という、アメリカの民主主義に全く反する体制であることを指摘する話も出ないだろう。

トランプがマニラの殺人者やハノイの権力者を宥和するのは、支配的な、独裁的人物にすり寄っていく、彼のお馴染みの姿勢である。ウラジミール・プーチンへの執着もそうだ。中国の権力者、習近平への誇大な称賛もそうだ。アジア太平洋における将来のバランス・オブ・パワーで、トランプが譲歩するのではないか、と真剣に恐れるアナリストがいる。

トランプは、北朝鮮問題で習近平の協力を求めている。貿易摩擦では中国の譲歩を求めている。習の偉大さを称えている。トランプが人権問題を持ち出して、習を不快にすることはないだろう。しかし、習は、毛沢東の時代以来、個人の自由を最も制限した指導者である。表現の自由は細部にまで管理されている。反体制派は反逆罪で投獄ざれる。香港の理想主義的な、民主化運動に加わった若者たちは告発された。国中で、キリスト教会の指導者、人権擁護の弁護士が拘束されている。国連の要求は無視されている。中国の縁で、台湾の住民は常に軍事攻撃の脅威を感じている。

1945年以来、アメリカが普遍的な価値観、民主的、人間的、市民的な権利が攻撃されているのが、アメリカ大統領は、発言するべきだ。

PS Nov 3, 2017

What Does Xi Jinping Want?

KEYU JIN

鄧小平以来の巨大な権力を握った、と言われる習は、その政治資本を何に使うのか? その目標は、中国経済の成長を持続するために近代かを進めること、その中で中国共産党の地位を確立すること、最高指導者としての自分の遺産を示すこと、である。

PS Nov 3, 2017

Asia’s New Entente

BRAHMA CHELLANEY

アメリカのティラーソン国務長官は、世界の「重力の中心がインド・太平洋にシフトした」と認めて、この地域の民主主義諸国が「関与と協力」を実現するように求めた。唯一、民主主義諸国の同盟だけが、世界で最もダイナミックな地域のルールに依拠した秩序を強化し、安定したバランス・オブ・パワーを維持する方法である。

1次世界大戦前に、ドイツが急速に台頭してきたとき、フランス、ロシア、イギリスの「3国協商」が形成されたように、中国のますます攻撃的になる外交姿勢は、アジア太平洋の民主主義諸国がより強力な連合を形成する強い刺激を与えている。南シナ海の例が明確に示したように、一国では、領海や領土を書き換える中国に、その方針を変えさせるほど、十分なコストを強いることができない。

今年の夏、中国はインフラの建設プロジェクトを利用して、ヒマラヤ高原の辺境の地で、南シナ海と同様に、現状を変更しようとした。インドが介入して、中国は建設工事を止めた。もしオバマ大統領が同じ決意と行動を南シナ海で取っていたら、中国が7つの軍事拠点を得ることはなかっただろう。中国の外交方針を変え、アジア太平洋地域のパワー変動を安定化するには、1国ではなく、アメリカ、日本、インド、オーストラリアが協力して、中国の行動を抑制するべきだ。

今年のインド洋におけるアメリカ、インド、日本の海軍合同演習Malabar exerciseには、初めて3国の空母が参加する。ティラーソンが述べたように、中国の内政干渉を恐れるオーストラリアも参加するべきだろう。これは正式な軍事同盟になるのではなく、民主主義諸国が広範な戦略的理解と価値観を共有することを目指すものだ。

この点で、トランプの訪中がグローバルな注目を集めるとしても、民主主義諸国の協力関係と同じような同盟関係にはならない。

NYT NOV. 3, 2017

The Quiet Rivalry Between China and Russia

By ROBERT D. KAPLAN

中国の「一帯一路」路線は、唐や元の時代にユーラシアを超えた貿易路をたどって、経済的な拡大を目指す野心的なものだ。そこにはユーラシアの未来が見える。

新シルクロードの目標はいくつかあるが、さまざまな道路、橋、パイプライン、鉄道をつないで、かつてソ連が支配した資源豊富な中央アジアまで結びつけること、また、中央アジアと中国のイスラム圏とがぶつかる地域を開発することが含まれる。

さらに西では、イランとの有機的な連携が意図されている。イランはその帝国の伝統だけでなく、規模、立地、人口が、中東と中央アジアにおける支柱として重要である。

さらに大きな目標は、ユーラシアを支配し、ロシアを二流の国家に降格することである。中国とロシアは2600キロもの国境を共有している。その一部は最近になって確定したものだ。1969年には、双方が部隊を展開し、中ソ対立の深刻化に乗じて、ニクソン大統領は中国との関係正常化、米ソデタントを行った。

ロシアの極東地域は非常に弱い。エスニック集団としてのロシア人は推定で600万人ほどしかいない。中国人労働者が、人口の足りない土地、天然ガス、石油、木材、ダイヤモンド、金といった資源豊富なシベリアに移住しつつある。中国がこの地域を失ったのは、清朝末期の19世紀であったし、その他も20世紀のことだ。

同時に、中国は中央アジアでもロシアを征服している。この10年で、中国国営石油公社が中央アジアの主要取引相手になった。中国は、カザフの石油を、ヨーロッパと中国にパイプラインで輸出している。またトルクメニスタンの天然ガスを中国西部に輸送している。中国資本が中央アジアの資源インフラを建設しているのだ。

イランがその最大の成果を得ている。中国企業はイランと契約して、資源を採掘し、軍隊を派遣する。ロシアのユーラシア経済同盟は、それに対抗するため、2014年に創設された。極東、中央アジアだけでなく、ヨーロッパでもロシアは中国に敗退しつつある。モスクワが旧ソ連圏の共和国に介入して、独立を脅かしつつあるとき、中国は貿易でヨーロッパとの関係を強化した。トランプ政権の自由貿易からの離脱も、ヨーロッパにおける中国の拡大を許した。中国からのシルクロードの終着点、ギリシャがそうだ。また東欧各地で、中国が原発やエネルギー・インフラを建設している。プーチンの西側への挑戦は、その経済の弱体化に応じて、戦略的な短絡さが明らかになる。

中国とロシアを「戦略的なパートナー」と見るのは間違っている。石油価格の下落で、中国のロシアへの依存は減少した。ロシアは、中国の敵であるインドやベトナムに武器を売っている。むしろ、両国は都合のよい時だけの同盟でしかない。北京とモスクワは対抗関係にあり、それは長期の、過度に軽視された、辺境の地域対立とみなされている。

中国の地政学的野心も、ロシアと同じように、内部の不安定性から生じている。中国の弱点は西域にあり、そこは歴史的に東トルキスタンがあった、トルコ系イスラム教徒、ウイグル人少数派の土地である。彼らは、中国国家とは別に、独立のアイデンティティを持っている。「一帯一路」は中央アジアを、経済的、政治的に、中国と緊密に統合化し、ウイグル人が反抗する拠点を奪うものだ。

しかし、かつてSamuel P. Huntingtonが指摘したように、社会がより複雑になれば、制度はより住民に責任を持たねばならない。さもなければ多数の中産階級が不安定化する。中国の専制体制は、その成功ゆえに、社会、エスニック、宗教における緊張を、漢民族、ウイグル族の双方で生じ、正当性の危機に直面する。特に、成長が減速し、人々の過度に高められた期待を裏切るときに。

アメリカは、東アジアにおける中国の脅し、中東欧におけるロシアの脅しから、長期にわたって同盟諸国を守ってきたが、それは中国とロシアの間に静かな地政学的対立があったことに助けられた。中露の地理的近接性は避けられず、アメリカは状況に応じて、どちらかに対して態度を硬化させ、あるいは、軟化させる柔軟性があった。

アメリカが西半球で支配的な役割を果たしてきたのと同じように、中国が東半球で支配的な地位に就くのを阻止しなければならない。しかも、中欧や中東で、ロシアに影響力を奪われることなく、そうしなければならない。そのための答えは、地政学の外にある。アメリカは、中国人やロシア人のような領土的な野心を持たず、現地の人々もそのことを疑わない。アメリカは、自由貿易、人権、市民社会を広めることで、地域に広がる急速な社会変化における信頼性を得るのだ。

こうして、ニクソンの時代よりも中国とロシアの対抗関係が大幅に見えにくくなったとしても、アメリカはある国を他の国に対して乱暴に均衡させることなく、ユーラシアでの影響を保持できる。中国が促進する経済発展こそが、シルクロードに沿った多くの社会、特に、イランと中央アジアの独裁体制を管理し、支配する者の困難を増すのである。

トランプ大統領はそれを理解していない。

FP NOVEMBER 3, 2017

The Next Space Race Is Artificial Intelligence

BY JOHN R. ALLEN, AMIR HUSAIN

FT November 4, 2017

Trump under siege from Mueller as he travels to Asia

Edward Luce

NYT NOV. 4, 2017

Once Formidable, Taiwan’s Military Now Overshadowed by China’s

By STEVEN LEE MYERS and CHRIS HORTON

習近平による中国軍の近代化は進んでいる。他方、兵力でも装備でも、台湾の軍事力は大幅に弱体化している。台湾の経験は、この地域で台頭する中国の軍事力に対峙する、日本、韓国、ベトナム、その他の国にとっても、深刻な意味を持つ。

台湾は、空軍でも海軍でも、中国に匹敵できない。しかし、それは防衛力を持たないことを意味しない。「台湾人民やその領土に対するいかなる侵害も、多大のコストをもたらすだろう。」

NYT NOV. 5, 2017

In Asia, Mr. Trump Is Met by Doubt

By THE EDITORIAL BOARD

PS Nov 6, 2017

Trump’s Opportunity in Asia

DOUGLAS H. PAAL

PS Nov 6, 2017

Mr. Trump Goes to China

RICHARD N. HAASS

トランプ大統領は、中国によって北朝鮮問題を解決できる、と考えているが、それはむつかしいだろう。北が戦争を始めることは中国の戦略的利益を損なうからだ。長期的な不利益にもかかわらず、危機回避という、短期的な選択は変わらない。

米中が、第2次朝鮮戦争で直接に戦争を始めるのか、あるいは、北朝鮮の核を協力体制の下で管理するのか? 

NYT NOV. 6, 2017

A Deal-Maker Goes to China

By ORVILLE SCHELL

FP NOVEMBER 7, 2017

Japan Knows How to Pet the Donald

BY ORVILLE SCHELL

トランプと安倍の親密さが目立った。習との関係がこれほど近づくことはないだろう。米日関係がこれまでにない水準まで高められた。

横田基地でのトランプのスピーチは、アメリカがアジアにとって必要なことを明確に示す内容だった。日本はアメリカの重要なパートナーである。インド・太平洋の安全保障を重視し、米日は特別な同盟関係にあることを強調した。

しかし、トランプは「関与」の意味を変えてしまった。TPPWTOを否定しながら、トランプはどのようにアジアに関与するのか? 習は、アメリカの衰退する「新時代」を宣言し、「中国の特徴を持つ社会主義」が台頭する、と宣言する。

われわれはその答えをソウルや北京で探す必要がある。

YaleGlobal, Tuesday, November 7, 2017

Facing an Aggressive China: The US May Be Inching Towards Asian Alliance

Harsh V Pant

FT November 8, 2017

The House of Trump and the House of Saud

EDWARD LUCE

豪邸に黄金のエレベーターがあるように、トランプ一家とサウド家の趣味は一致する。しかし、ドナルド・トランプとサルマン皇太子の親和性は、単なる「独裁趣味」を超えている。それは主として取引を交わすことだ。アメリカ=サウジ関係こそ、トランプ外交の神髄である。その行方は、アメリカが指導するグローバルな秩序の衰退を象徴する。

対外関係を扱うトランプの姿勢とは、家族と金をブレンドした上で、お愛想に弱い、というものである。安倍首相は娘のイヴァンカが主催する世界女性基金に5000万ドルの寄付を約束した。半年前には、サウジアラビアとアラブ首長国連邦がイヴァンカに最初の寄付1億ドルを出した。今度は中国がトランプをもてなす番だ。

世界中の政府が、アメリカの大統領家族から気に入られようとして競っている。この点でサウド家に勝る者はいない。リヤドが、大統領となったトランプの最初の訪問地であった。彼の動機は明白だった。サウド家が1100億ドルの武器購入を表明することに合意したからだ。それこそトランプが求めていたものだった。しかし、その趣意書は事実だが、サウジアラビアが支払うことはないだろう。

それは「フェイク・ディール」であったが、トランプが望み、Tweetできるような驚きの購入リストであった。娘には現金を与え、黄金のカーペットで歓迎し、一緒にオバマの遺産を消去する。次はトランプがサウド家に返礼する番だ。

MbSとして知られるモハマド皇太子が、王族たちの逮捕を含む、権力奪取を行った。少なくとも1人は殺害された。トランプはそれをTweetで承認する。その粛清は、先月、トランプの娘婿であるクシュナーが皇太子と話し合った後、行われた。トランプの側では、オバマが残したイラン核合意を弱体化した。トランプはまた、テヘランと緊密な関係を持ったカタールをサウジがボイコットするのも支援した。

トランプが、何をしているかわかっているのか、不明である。しかし、MbS支援は、アメリカ外交の2つの原則を否定した。すなわち、1.スンニ派とシーア派の宗派対立に関わらない。2.超資産家・ポピュリストの強権体制を擁護しない。しかしトランプは、多数の市民を犠牲にしたサウジによるイエメン空爆にも、中東地域の安定化にも、関心がない。「ワシントンの大掃除」どころか、サウジ王族の比類ない汚職にも無関心で、これにより中国の習近平に対する信頼も予告された。

ポピュリストは敵を個人攻撃し、権力を私物化する。ポピュリストたちの外交において、体制が専制か民主制かが重要ではない。サウジアラビア、中国、ロシア、トルコ、その他の国が指導者に対するカルトを病んでいる。彼らは互いに助け合っている。世界にとって衝撃であるのは、アメリカの指導者もその仲間であることだ。

トランプがアジア歴訪で何を示すかに注目したい。国益と家族の利益を区別できない、サウジ王家と利己的な取引をした大統領の言動を注視するつもりだ。

FT November 8, 2017

South Korea’s success reflects core American values

Jamil Anderlini

危機に直面している韓国に,トランプ大統領はもっと滞在し,意見交換するべきだ.

FP NOVEMBER 8, 2017

Wary of Trump, Taiwan Shies From Spotlight in President’s Asia Trip

BY ROBBIE GRAMER

台湾に関しては言及することもない.トランプの訪中に,恐怖と動揺が広がっている.台湾が最も恐れるのは,トランプが朝鮮半島と貿易不均衡の問題を解決する代わりに,台湾を北京に委ねるのではないか,ということだ.ワシントンは否定する.しかし,うわさは残る.

NYT NOV. 8, 2017

Trump Is Ceding Global Leadership to China

Antony J. Blinken

China Daily 2017-11-08

Personal rapport can guide ties in new era

The Guardian, Thursday 9 November 2017

The Guardian view on Trump in China: a bromance unlikely to run smooth

Editorial


 アメリカ連銀議長指名

FT November 3, 2017

Why interest rate decisions are deliberately ambiguous

Stephen King

FT November 4, 2017

Jay Powell: a safe pair of hands takes over the Fed

Sam Fleming

パウエルは、64歳、連銀の政策を継続する候補として知られているが、多くの点で注目に値する。彼は弁護士であり、1970年代後半の短命かつ失敗したG William Miller以来、エコノミストではない議長になる。中央銀行家としての経歴は5年だけである。

IMF代表であるDouglas Redikerは、パウエルのことを「聡明な合意形成に優れた人物であり、連銀議長にふさわしい」と語った。「金融街は厳しいところだが、パウエルと一緒に仕事をした者、彼とともにいた者が、彼について否定的なことを言うのは聴かない。」

ヘッジファンドで財を成し、議会の財政赤字上限問題について超党派のシンクタンクでその主張を担った。


 パンダ外交

FT November 3, 2017

China’s soft power comes with a very hard edge

中国もソフトパワーを意識している。たとえば、パンダ外交だ。1950年代以来、中国はパンダを多くの国に送った。それは友好もしくは報酬であった。

パンダには隠れたコストがあった。中国はパンダの雌雄を送った国から年100万ドルを得て、同時に、その繁殖した子孫に対する送還の権利を求めた。習近平主席はすべてのパンダ融資を、その見返りや交渉によって見直した。

北京は、より互恵的な、権威主義的でないアプローチを模索し、ソフトパワーを求めている。中国が西側諸国のクラブに参加していない、ということを知っているからだ。歴史、イデオロギー、経済システムがあらゆる意味で異なっている諸国が、第2次世界大戦後の支配的な地位に就いていたが、彼らは中国に譲歩しなければならないことを理解しても、中国からの露骨な介入は好まない。

中国のソフトパワーはその意味で強国の誘惑なのだ。オーストラリアでは中国人留学生の表現の自由に介入し、韓国政府のミサイル防衛システムに関しては韓国企業ロッテへの不買運動や、中国からの旅行者を制限した。

ソフトパワーは相互の優位と信頼を築く有機的な過程に依存する。しかし多くの場合、中国は脅しを多用する。

FT November 9, 2017

Beijing’s endgame: football with Chinese characteristics

Ben Bland in Hong Kong and Murad Ahmed in Wolverhampton


 反トラスト法の修正

SPIEGEL ONLINE 11/03/2017

Digital Darwinism

We Need New Rules for the Internet Economy

A DER SPIEGEL Editorial by Armin Mahler

反トラスト法は、いかなる物的な製品も作らない会社に対して、対処するものではない。新しい法律を交渉するべきだ。さもないと、われわれの将来の経済は、わずか数社によって支配されるだろう。

Amazonを、インターネット版の百貨店だと思っている人がいる。しかし、そうではない。Amazonは急速に成長するインターネットの巨大企業であり、われわれの購買方法を変え、ますます多くの市場を支配している。Alexaを使い、誰もいない家に入って個人情報を集めている。

Facebookも、友人たちと会話するソーシャル・ネットワークではない。その中身を確かめもせず、多くの広告を拡散して莫大な利益を得ているメディア企業である。Google, あるいはAlphabetもそうだ。彼らの成長率は、アナログ経済では不可能なものだ。危険なほどのパワーを集中しており、政治的な反発が高まっている。

GoogleAmazonがヨーロッパ市場で駆使するパワーをEUが制限するのを、アメリカは保護主義として、ヨーロッパ人が劣ったデジタル経済を保護している、と非難してきた。しかし、アメリカの政治家やエコノミストも、インターネット大企業の分割を議論し始めた。

デジタル化には、もちろん、多くの優れた点がある。しかし、旧法が効果的でないとき、デジタル資本主義を規制する新しい法律が求められる。アルゴリズムに依拠したデジタル経済では、その最も影響力ある企業が物質的な製品を売っていない。顧客はただでそのサービスを利用し、その代わりに情報を提供する。顧客が多いほどサービスは魅力的であり、ますます多くの顧客とデータを集めてしまう。それゆえGoogle Facebookは競争を恐れない。

勝者がすべてを得るのだ。ダーウィン型のデジタル経済法則は、独占を生み出す傾向が強い。それゆえ、1.デジタル企業のパワーとその濫用を再定義すべきだ。大企業は潜在的な競争企業を、その発展の前に、買収してしまう。こうした行為を監視し、必要なら、阻止するべきだ。

2.蓄積したデータをだれが所有するか、決めるべきだ。競争相手も利用できるのか、消費者は検索結果を無料で記利用する以上に、十分なサービスを得ているのか?

3.彼らによる情報の拡散は、その内容に関する責任をともなうべきだ。虚偽の主張や表現は、許されない。

4.こうした情報から莫大な富を得るものは、十分な税金を支払うべきだ。それは企業の所在する国だけでなく、関係するすべての諸国によって求められる。

法改正を、メルケル首相は次の連立政権の課題にするべきだ。

PS Nov 3, 2017

The Illusion of Freedom in the Digital Age

MARK LEONARD

The Guardian, Saturday 4 November 2017

Beware: this Russian cyber warfare threatens every democracy

Natalie Nougayrède

 


 経済政策の透明性

PS Nov 3, 2017

Keeping US Policymaking Honest

J. BRADFORD DELONG


 ドイツとEU

NYT NOV. 3, 2017

Does German Conservatism Have a Future?

Anna Sauerbrey

PS Nov 9, 2017

Germany’s Dangerous Obsession

JEAN PISANI-FERRY

ドイツはEU改革に積極的な姿勢を示すべきだ。

ドイツは、国内の改革に比べて、他国の改革には疑いを持っている。EU予算やEUのデフォルト処理基金に関して、ドイツ国民は信用しない。ECBに蓄積されるTarget 2に関して、無理やり融資する仕組みを嫌っている。しかし、これらはドイツの利益にもなるものだ。ドイツを損失を強いられている、というのは間違いだ。


 MbSによる粛清と外交

FP NOVEMBER 3, 2017

Saudi Arabia Is Betting Its Future on a Desert Megacity

BY ELIZABETH DICKINSON

FT November 6, 2017

Mohammed bin Salman aims to win Saudi game of thrones

DAVID GARDNER

FT November 7, 2017

Saudi Arabia’s purge is all about consolidating power

FT November 7, 2017

Saudi crown prince’s purge extends into Lebanon

DAVID GARDNER

サウジアラビアの最強のサルマンMohammed bin SalmanMbS)皇太子が、王族、閣僚、富豪を粛清しただけでなく、外国にも粛清の手を伸ばした。

レバノンのハリリSaad Hariri首相が、リヤドでサウジのテレビ放送に登場し、辞任の声明文を読み上げたのだ。サウジが支援し、スンニ派の指導者として首相であった、彼の父が2005年に暗殺された政治情勢と似てきた、と語った。イランが支援する、シーア派のヒズボラと形成している連立政権の内紛である、という予測もある。

ハリリの周辺ではだれも辞任を予想していなかった。サウジ皇太子がハリリに辞任を強制した、と考える側近もいる。レバノンと地域の仲間から彼を切り離すためにリヤドに召還した、と。サウジの政府関係者たちが、ヒズボラと、イランにいるシーア派の支援者たちに攻勢をかけたのは間違いない。

1年前、サウジはテヘランが大統領選挙とハリリの連立政権を組むのを承認していた。しかし、今やリヤドは、「サタンの政党」(ヒズボラは「神の政党」という意味がある)がレバノンを支配し、サウド王室との戦争を指揮する拠点にしたと考え、戦うつもりである。サウジの外相は、イエメンからリヤド空港に向けて発射された弾道ミサイルは、イランが供給し、ヒズボラによって発射されたものだ、と主張した。

サウジの皇太子MbSは、王国の経済並びに防衛と治安を担当する大臣である。しかし彼のタカ派の外交はうまく行っていない。イエメンに軍事介入し、カタールの首相を追放して、経済封鎖している。シリア内戦では、シーア派のイランが勝利した。しかし、イスラム教徒とキリスト教徒がモザイク状に混じるレバノンでは、いまだに197590年の内戦から完全に抜け出していない。イランとサウジが、ほぼ均等に対抗している。

ハリリは、レバノンの権力闘争において、突如、暗殺された父と同じ状況に陥ったようだ。彼のサウジにおける建設会社がMbSの経済改革で破たんに瀕している。皇太子は、トランプ大統領やイスラエルのイランとヒズボラに対する強硬姿勢が、自分に有利であると考えている。イスラエルが、シリアの拠点を築くイランやヒズボラと戦争を始めるのは時間の問題だ。

FT November 7, 2017

Saudi Arabia’s crown prince plays for high stakes

ROULA KHALAF

先週、サウジアラビアにも西側銀行で有名なロボットSophiaが現れた。彼女はMohammed bin Salmanサルマン皇太子から市民賞を授与されたのだ。しかし今週、かつてない反汚職の粛清が行われた。失脚した王族や多数のビジネスマンが逮捕されたのだ。

MbSは、リベラルな社会、多様な経済、という王国の改造を固く決意している。そのために権力を集中したのだ。彼は、人口3200万人の多数を占める若者に支持される、と考えているが、さまざまなセクションを敵にした。聖職者から政治エリート、王室の他の派閥、ビジネス・エリートたち。皇太子の夢が広がるほど、さまざまな敵が共謀する。

MbSは、一方で、サウジアラビアをかつてのような自由な社会に戻したいのだ。1979年、メッカの神殿がワッハーブの過激派に占拠されてから、サウド家は保守派の聖職者たちにパワーを大きく譲歩したのだ。他方、MbSは、国家による過度の社会保障を削減しようと計画している。サウジはもはや石油の富に依存できないのだ。厳格な緊縮策を実行する上で、王室内、近隣のスンニ派国家まで、あらゆる反対派を粛清した。

外交においては、中東におけるイランの影響力を押し戻そうとしている。イエメンでは、テヘランの支援を受けた反政府軍と戦争し、サウジの路線に従わないカタールを外交的に懲罰し、イランが支援するヒズボラを含む国民統一政権のハリリ首相に辞任を強いた、と言われる。

いずれの政策も大きなリスクをともなう。イエメンでの戦争は何十億ドルもの費用が掛かり、MbSが約束した国内の雇用創出に投資する財源がなくなった。粛清はサウド家の支配の恣意性とビジネスの不安を強めた。MbSは、一方の手で創ったものを、他方の手で破壊している。

NYT NOV. 7, 2017

Attention: Saudi Prince in a Hurry

Thomas L. Friedman

NYT NOV. 8, 2017

The End of Saudi-Style Stability

By THOMAS W. LIPPMAN

Bloomberg 2017119

Saudi Arabia Is Putinizing, Not Modernizing

By Leonid Bershidsky

権威主義体制は汚職を招き寄せる。権力者に近いほど多くの商談を得られるのだ。粛清はその性格を変えるわけではない。サルマン皇太子とプーチン大統領は、相違点より、類似点の方が多い。今回のサウジにおける粛清は、2003年のプーチンによるオリガークMikhail Khodorkovsky粛清とよく似ている。

MbSが公表した砂漠の空想都市建設は、ロシアの冬季オリンピックに合わせて建設されたソチとよく似ている。権威主義的指導者は自国を世界に開かれた、投資を招き寄せる未来の国として見せたがる。ソチが失敗したのは、プーチンがクリミア併合に動いたからだ。

シリア内戦では、プーチンはイランとともに戦った。それゆえ、最近、サルマン皇太子はモスクワを訪問し、MbSとクレムリンの間で頻繁な交渉が行われたのだ。中東におけるアメリカ外交の失敗を前提に、ロシアとサウジアラビアは積極的な役割を果たすつもりがあり、両者の協力は有益である。彼らは同じ言葉で考えている。国内の反対派は粛清し、迅速な意思決定で取引する。

MbSがサウド家の改革派で、プーチンは時代を逆行する独裁者だ、と西側の多くの論者は思いたがる。しかし、2人は世界最大の石油輸出国の支配者として、その価格を引き上げ、軍備や未来都市のために財源を維持する強い動機を共有している。

Bloomberg 20171110

Saudi Prince's Revolution Is the Real Arab Spring

By Zev Chafets


(後半へ続く)