IPEの果樹園2017
今週のReview
11/6-11
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トランプのアジア歴訪 ・・・社会主義の習近平段階 ・・・グローバルなデジタル経済革命 ・・・21世紀の国家 ・・・技術革新と対話による改革 ・・・代表制民主主義の敵 ・・・昆虫も、赤ちゃんも ・・・ロシア疑惑 ・・・世界貿易ルールの解体 ・・・EUの遠心力 ・・・デフォルトの減少
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● トランプのアジア歴訪
FP OCTOBER
27, 2017
Asia
Awaits Trump’s Visit With Trepidation
BY MICHAEL J. GREEN
アメリカの同盟諸国は、トランプの最初のアジア歴訪で何を観るのか? 彼らはアメリカの力を求めているが、同時に、アメリカの引き揚げと中国の拡大を恐れている。
トランプ大統領が日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンを訪問することは、アメリカがこの地域に関与することの表明だ。
TPPからのアメリカの撤退に乗じた中国の拡大戦略は、「一帯一路」インフラ投資や海軍の寄港地確保に顕著に示されている。中国国内では習近平のカルトに等しい個人崇拝が進み、オーストラリアやシンガポールは中国からの寄付金や政治介入を懸念している。日本、インド、オーストラリアは民主主義国家の連携を進めている。中でも韓国は、中国の影響を抑える緩衝地帯が最も薄い。北朝鮮への対応では、トランプ政権の適切な姿勢が求められる。
PS Nov 1,
2017
The
Changing Geopolitics of Energy
JOSEPH S. NYE
2008年、アメリカのNational Intelligence Council (NIC)はGlobal
Trends 2025を公表した。その予測の基礎は石油価格の上昇であった。中国の需要が増大し、非OPECの産油量が枯渇しつつあった。2006年の石油価格は100ドルを超えた。アメリカが輸入石油に依存することは、その地政学的な影響力を制限する主な要因とみなされた。
しかし、シェール・オイル革命が起きた。2015年までに、アメリカで生産される天然ガスの半分以上がシェール・オイルになる。アメリカはエネルギーの輸入国から輸出国になった。かつて天然ガス市場は地理的に限定され、パイプラインに依存した。しかし、液化天然ガスLNGが弾力性を高め、ヨーロッパにおけるロシアへの依存を減らした。シェール・オイルの油井は小規模で、価格変化に対する高い反応を示す。
シェール・オイル革命は、アメリカ外交を革新し、国内のアメリカ衰退論を払しょくした。しかし、アメリカは中東から撤退しないだろう。ヨーロッパや日本は中東の石油に依存している。国連など、国際機関におけるロシアやヴェネズエラの影響をシェール・オイルが抑えるだろう。
FT
November 3, 2017
America
still holds the aces in its poker game with China
Joseph Nye
アメリカは世界最大の貿易国で、世界最大の貸し手であった。今、ほとんど100か国近い国が中国を最大の貿易相手にしている。アメリカが最大である国は57か国だ。中国は10年間で1兆ドル以上ものインフラ投資を計画している。アメリカは援助を減らし、世界銀行への出資も減らす。中国が地政学ゲームでアメリカに勝利しつつあるのか?
もし火星人が来たら、賢明にも、中国ではなくアメリカに賭けるだろう。なぜならアメリカには4枚の強力なカードがあるからだ。
1.アメリカの地理は、周囲に海と友好諸国しかない。他方、中国は14か国と国境を接し、インド、日本、ベトナムと国境紛争を抱えている。
2.エネルギー供給の確実さ。シェール革命や北米のエネルギー自給計画がある。他方、中国は中東からの石油輸入に依存し、その輸送も南シナ海の紛争海域を通過する。
3.米中貿易は緊密さを増して、「相互確証破壊」の状態にある。トランプ政権が慎重であれば、中国の対米依存はますます大きくなるだろう。
4.アメリカ・ドルの地位は人民元よりも圧倒的に支持されている。世界の諸政府が外貨準備とする通貨は、人民元のわずか1.1%に対して、USドルが64%である。最近、人民元による国際決済は減少している。
● グローバルなデジタル経済革命
FT October
27, 2017
China
harnesses big data to buttress the power of the state
James Kynge
「2050年までに、「中華帝国」を苦痛と恥辱の次期に貶めたアヘン戦争後から200年が過ぎ、中国は力を得て、世界の頂点に再臨することになる。」 習は、大会を終えた記者会見で述べた。
その強烈な野心は、中国の成長がとん挫し、崩壊するという、数十年も続く西側の予言に対する挑戦である。それはまた、権威主義的な、一党支配国家が、ダイナミックで革新的な経済の成長をもたらすには、余りにも秘密主義で、腐敗しているはずだ、という通説に変更を求めるものだ。
データ革命は中国の共産党支配体制と融合し、潜在的な「テクノ独裁体制」を形成しつつある。すなわち、硬直的な政治管理体制と、自由市場型の豊富な柔軟性とが共存する、ハイブリッドな体制である。「企業、政府だけでなく、消費者にもデータ集積が支持された、新しいデータ推進型経済は、中国に新しい活力を与えている。」
それは以前の政府による資本投入と、国営企業から技術チャンピオンを育てるプロジェクトと全く異なる。その核心は、グローバルなデジタル経済革命の中心地として中国が発展しつつあることだ。その規模は、10年前に世界の1%以下であったが、今や中国が40%を占める。
モバイル機器による取引額は、中国が世界をリードしており、アメリカの取引額の11倍だ。シェアリング経済でも先頭を走っている。世界のウニコーン企業、すなわち、10億ドルを超える価値の新興ハイテク企業は、その3分の1が中国である。
中国は、その古代からの権威主義国家体制のシステム的な欠陥を解決するため、データを利用しつつある。すべての中国の王朝は権力のダイナミズムが示す基本法則と格闘してきた。すなわち、中央集権化した賢慮億は、宮廷からの距離によって、委縮し、腐敗したのだ。
デジタル取引の個人データを集積することで、個人の行動をチェックし、ルールから逸脱した者を処罰することができる、と金融部門の幹部は説明する。Alibaba,
Tencent and JD.comのような流通大手は、データを中国人民銀行のセンターと共有している。その範囲は、企業の社会保障の支払い、住宅基金の支払い、行政による処分・賞与、納税の遅滞、企業の評価や信用リスクに関する裁判所の判断、を含む。
その欠陥も指摘されている。データは人によって失われ、改ざんされる。特権的な機関が政治的に介入する。しかし、ビッグデータと中央計画経済との融合に新しい体制を期待する者もいる。
PS Nov 2,
2017
Big Tech
Meets Big Government
MOHAMED A. EL-ERIAN
ハイテク大企業がその技術革新について最先端の能力を伸ばす可能性はまだ拡大し続けるだろう。これに対する政治的な介入の動きは強まっている。それが成長の可能性を制約するかもしれない。ハイテク大企業は、その拡大能力を相互に利益となる形で社会に位置付けておく必要がある。彼らはその行動と意図を表明し、社会の監視能力を高める方向で協力することだ。
● 21世紀の国家
PS Oct 30,
2017
Centrifugal
and Centripetal Forces on Economic Areas
MICHAEL J. BOSKIN
経済、文化、エスニック、宗教の対立を管理できない政治制度のせいで、世界には、権力の分散、分離、独立に向かう地殻変動が起きている。
経済・政治の超国家機関は、中央政府に権力を集中するにつれて、明らかに政治的な反発を生じている。市民たちは、主権が侵食された、と感じている。Brexit、トランプ大統領、カタルーニャ、イタリアの最富裕地域Lombardy
and Veneto、クルディスタン、習近平政権・・・
アメリカでは、トランプ政権の方針に反対する州政府や都市が現れている。ヨーロッパの政治も、債務、銀行、成長、失業の問題を先送りするだけだ。
「ユーロの父」としてマンデルRobert
Mundellがノーベル賞を得たとき、彼はカナダ人として、最適通貨圏を貿易とマクロ経済の自然な関係によって定義した。彼の印象では、カナダとアメリカの通貨圏は「水平的」に分断しているが、カナダとアメリカの西部が「垂直的」に結び付いて地域の方が経済的に意味を持った。
マンデルの洞察はさらに展開できる。経済圏は、連続的に、求心力と遠心力の競合の結果として、形成され、結合され、解体されつつある。比較優位、規模の経済、取引費用の絶えざる変化が、同質的な地域の嗜好を同調する利益に影響する。
「最適」政治圏は、時間の経過とともに、技術と人口が変化し、文化、エスニック、宗教、その他の要因との相互作用において、変化している。集合や離散のプロセスは、有益でもあれば、有害でもある。EUは貿易圏として最良の成果を上げたが、労働市場や通貨圏としてはそれほど成功していない。銀行同盟や財政統合は全くの失敗である。
インド亜大陸を考える。隣国同士が不信感を高め、核武装している状態は、彼らだけでなく、世界にとって危険である。もしインドにパキスタンと同じくらい多くのイスラム教徒がいたら、宗教対立は1国内部で緩和できただろう。その場合、推定で、インドとパキスタンの貿易は25倍になるだろう。
経済、政治、宗教、エスニックの多様性をうまく統治することは容易でないが、それに失敗すれば成長が低下するだけでなく、深刻な政治的リスクを生じる。
FT
November 1, 2017
Africa is
not immune from secessionist sentiment
DAVID PILLING
アフリカで驚くのは、その境界線がいかに安定的であったか、ということだ。ヨーロッパでは教会の変更をめぐる戦争が何世紀も続き、1世代前にはユーゴスラビアが解体した。スペインやUKの国家統一も解決していない。アフリカの近代的な諸国家が、そのエスニック、政治、地理の現実を知らない植民地支配者たちによって、1884-85年のベルリン会議で決まったにもかかわらず、境界線は受け入れられてきた。
諸国は、しばしば、数十から数百ものエスニック、言語を異にする集団からなっていた。その多くはヨーロッパ人が来る前に、the
Ashanti, the Yoruba or the Bugandaのような、明確な、洗練された政治体制を持っていた。
全ての境界が維持されたわけではなかった。エリトリア、南スーダン、そして事実上、ソマリランドは分離独立した。いくつかの内戦があった。コンゴのKatangaや、ナイジェリア南東のBiafraは、独立を求める運動と内戦が関係している。1967-70年のナイジェリア軍による弾圧は、分離主義運動の高いコストを示した。
現在のアフリカは、カタルーニャやクルディスタン、スコットランドの運動に影響を受けるだろう。政治機構から排除されたと感じている集団に対して、政治、経済、文化的な中央政府の取り組みが失敗したことで、問題が生じる。
ノーベル文学賞を受賞した作家のWole
Soyinkaは、Biafraの分離主義が敗退することはない、と述べた。しかし、彼はナイジェリアの分裂を望んでいない。「絶え間ない交渉」によって、軍事支配体制を排除した真の連邦制が再生することを期待する。その先に、ミクロなナショナリティーを回復する、「自己認識」の深化が必要だ。
ケニアの大統領選挙で、Raila
Odingaが敗北を受け入れないのは、勝者がすべてを得るシステムで少数派が代表されないことを示している。異質な集団を多く含むアフリカ社会において、多数決原理は機能しない。
それでもアフリカは境界を維持してきたが、その境界が通過でき、汎アフリカ主義が支持されていることによって助けられただろう。少数派がより大きな政治体の一部であると感じるように努力しなければ、国家の統一は失われる。
● 技術革新と対話による改革
PS Oct 31,
2017
Learning
from Martin Luther About Technological Disruption
NICHOLAS DAVIS
500年前、ほとんど知られていない司祭で神学者、ルターMartin Lutherが請願書を教会のドアに釘付けした。それは、カトリック教会の免罪符販売に関する論争を求めるものだった。
なぜルターの行動はそれほどの衝撃を与えたのか? 法皇の超越性に関しては、その200年前から哲学、神学、政治学の論争であった。田舎の1人の神学者がこれほど重大な宗教的、政治的な混乱をもたらしたのはなぜか?
印刷術が宗教的な論争を近づきやすくして、ルターは教会に対する反抗を激化させた。現在、「第4の産業革命」が話題となり、次の活版印刷術は何か? と問われている。しかし、一層重大な教訓は、ルターが神学論争を挑み、その結果、教会の権威を損なうだけではなかったことだ。信仰の制度だけでなく、地域全体が分裂した。何世紀にも及ぶ残虐行為が正当化され、30年戦争の発端にもなったのだ。
どうすれば、われわれは新技術が建設的な論争を助けるように、保証できるのか? われわれのアイデンティティや親しみのある制度を脅かす邪教(新しい思想)が、世界に満ちている。それらを暴力的に弾圧すべき考えとしてではなく、いつ、どこで、現行制度が人々を排除し、約束した便益をもたらし損ねているか、それを理解する機会とみなせるだろうか?
そのためには社会が、ルターの時代よりもさらに深く、アイデンティティ、パワー、技術の相互作用を理解する必要がある。
● 代表制民主主義の敵
FT October
31, 2017
Direct
democracy threatens way we are governed
Janan Ganesh
独裁制に比べて、統治者を住民たち全員で決める普通選挙制度を支持する意見は今も強いが、必ずしも、この制度が成功しているわけではない。代表制民主主義は、ロシアやトルコで、かつてのような独裁化の道を進んでいる。
絶え間ない住民投票で民主主義が機能しなくなるというシナリオよりも、恐れるべきは2つの傾向だろう。1つは、代表制民主主義より、専門家の委員会による政策決定を好ましいとする意見だ。もう1つは、主要な問題ごとに直接投票して法律を決めることだ。
大企業はその組織内に一種の政府を持っている。かつて、フォードやマクドナルド、ソニーを動かしたのは社内の政治家たちからなる重役会議であった。しかし、今、GoogleやFacebookの運営は、絶えざる住民投票に似ている。これらの企業は、その資本規模に比べて、わずかの雇用しかしない。それゆえ、彼らの決定は、地上の政府を軽視することになる。
カール・マルクスは、資本主義システムに内在する不安定性を批判したが、それはむしろ民主主義制度に当てはまるだろう。貧者の数は常に富者の数を圧倒する。テクノクラシーは、こうした富者を貧者から守っている。直接民主主義は貧者に圧倒的なパワーを与える。代表制民主主義は、そのどちらでもない。
● 昆虫も、赤ちゃんも
NYT OCT.
29, 2017
Insect
Armageddon
By THE EDITORIAL BOARD
昆虫の数が世界規模で急速に減少しているという警告を発する新しい証拠がある。Prof.
Dave Goulsonたちの新しい研究だ。われわれは「生態系のハルマゲドン」に向かっている。なぜなら「もし昆虫がいなくなれば、すべてのものが崩壊するからだ。」
その研究はドイツ各地の自然保護区域で、25年間、飛翔する昆虫を集めた記録から導かれた。これらの昆虫のトータル・バイマスは驚異的な76%もの減少を示した。科学者たちは2つの主要な原因を考えている。殺虫剤の使用と、農場周辺の生息域の枯渇である。
もぞもぞ這い回り、うるさい虫がいなくなることは、たとえば、地球温暖化でシロクマがいなくなることに比べて、それほど同情されないかもしれない。しかし、昆虫のいない世界で、われわれは生き残れない。昆虫は我々の食糧となる植物の受粉に欠かせない。多くの魚、鳥、両生類が餌にしている。昆虫は自然界の掃除屋であり、土壌を肥沃にしてくれる。
昆虫を救う方法はある。単一種の耕作地の周りに、野生の花や自然植生を残す緩衝地帯を設ける。農業のやり方を変えて、生態系の多様さを尊重し、殺虫剤や除草剤の使用を減らし、あるいは完全にやめる。地球上の急速に失われている森林、湿地、草原が保護され、可能ないたるところで回復されるべきだ。
一層の研究が必要だ。しかし、明らかに、昆虫の運命はわれわれの運命と切り離せない。
● ロシア疑惑
FT October
31, 2017
Mueller
charges pitch US towards constitutional crisis
Edward Luce
これはドナルド・トランプの終わりの始まりなのか? モラー特別検察官はこれに答えないが、その標的は明確だ。
トランプ陣営の選挙マネージャーであったマナフォートPaul
Manafortを、資金洗浄、脱税、その他、10の犯罪で起訴した。大統領選挙のマネージャーが巨額の資金洗浄の罪で、しかも外国政府のために働いたときに得ていた、という罪で起訴されたというのはかつてないことだ。
かつての選挙参謀George
PapadopoulosがFBIに虚偽の証言をした事実も公表した。彼はロシアとの関係を認めたのだ。
トランプは11日間のアジア歴訪に出発する。大統領就任以降で最も重要な戦略的意味のある訪問だが、ワシントンの紛争で影が薄くなるだろう。トランプは北朝鮮についての新しい非難を振りまくのか?
第3に、最も決定的なことだが、共和党の決断がどうなるかだ。トランプは明らかにモラーを解任したいだろう。それは司法への介入であり、大統領を弾劾するべきだ、と多くの人は考える。しかし、裁判所はそれを阻止できない。トランプを弾劾できるのは、共和党が多数を占める議会だけである。
世論調査では、共和党支持者の多くが今もトランプを支持している。そのことが共和党議員にとって最も重要だ。もしそれが変わらなければ、トランプはモラーを解任できると思うだろう。そうなれば、アメリカは憲法の危機に陥る。私はそれが起きる可能性が、50・50よりも多いと思う。
● 世界貿易ルールの解体
NYT OCT.
31, 2017
Trump’s
Trade Endgame Could Be the Undoing of Global Rules
Eduardo Porter
トランプ大統領の究極の目的はWTOを葬ることなのか?
Robert Lighthizerがトランプ政権の通商代表になってから、ロナルド・レーガンの時代が復活したようだ。当時も、アメリカは硬直したやり方で貿易の不満を解決しようとした。
1980年代初め、日本はトヨタ、ホンダ、日産の自動車輸出を減らすために「輸出自主規制」に合意した。それはデトロイトが強く求めたものだった。15か国が参加する鉄鋼の輸出自主規制は、アメリカの鉄鋼輸入の80%に及んだ。
アメリカの砂糖政策を観よ。1980年代の初めに、アメリカは砂糖の最低価格を維持しようとした。政府は輸入に対する割当を行った。世界価格が下落すると、アメリカの認める割当て量はますます減少し、ついに、アメリカの砂糖価格が高くなりすぎて、砂糖を抽出・販売するために砂糖製品を輸入するまでになった。コークやペプシは砂糖をトウモロコシ・シロップに代替し、キャンディー工場は海外移転した。
カリブ海域や中米の農民たちは、砂糖生産を諦め、アメリカ人が密輸する違法麻薬の耕作に代えた。1986年、アメリカは13万6000トンの砂糖を中国に売ったが、それは国内価格を引き上げるためだった。その際、1ポンド18セントで買って5セントで売った。数日中に、世界の砂糖価格は暴落した。
● EUの遠心力
PS Nov 1,
2017
Europe’s
Hard-Core Problem
HAROLD JAMES
ヨーロッパが遠心力によって引き裂かれつつある。
将来を観れば、独仏は各国の政策を超えて、真にEU改革の方針を合意する必要がある。防衛協力や税制の調和がすでにある程度の合意を得ている。財政の中央集権化、政府債務の組み換えなど、重要問題についても方針を示すべきだ。
政策論争を、独仏パートナーシップに頼るのではなく、むしろすべてのEU加盟諸国に開くべきだ。そのために欧州議会に向けたEUレベルの候補者リストを作成し、ヨーロッパの地域や都市を意思決定に参加させるメカニズムが提唱されている。
EUに求められるのは、中核国家ではない。中核の思想である。
● デフォルトの減少
PS Nov 1,
2017
The
Curious Case of the Missing Defaults
CARMEN REINHART
国際資本移動と国際商品価格のブームと破たんが、国際金利水準の変動と並んで、長い間、経済危機を引き起こしてきた。特に、そこだけではないが、新興市場においてそうだった。ときには資本流入の「突然の停止」が通貨危機を生じ、ときには銀行危機を生じ、しばしば政府債のデフォルトにつながる。2つもしくは3つの危機が重なることも珍しくない。
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The Economist October 21st 2017
Left behind
Left-behind places: In
the lurch
After the caliphate:
Dashed Kurdish dreams
Bagehot: Bagehot v Brexit
Buttonwood: A taxing
problem
Free exchange: The low
road
(コメント) クルディスタンの独立やUKのEU離脱が大いに望ましい未来を描いたとしても,現実は異なっていたようです.ペシュメルガや地方政府KRGは分裂状態であり,指導者たちの権力争いの末にクルド人たちの夢が消滅します.Brexit推進派とイデオロギー闘争をイギリス政治の良質さを失わせた,と記事は批判しています.
政治経済秩序の地理的構造・空間的な編成が変化し始めると,人々の満足感や統一精神は蝕まれてしまうと言えます.国家も市場も,市民の公平な感覚,参加意識を高めるように,再分配メカニズムを修復できなくなったとしたら,国境を超える長期の社会紛争が背景となって,大国の邪悪な取引政治が支配するのではないか?
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IPEの想像力 11/6/17
Nyeは、火星人なら、中国ではなくアメリカが勝つ方に賭ける、と述べています。しかし、どうでしょうか? 中国でもアメリカでもなく、勝者を決めるのは、ハイテク大企業の立地でしょう。
AIに呼び掛けることで、すべての仕事と生活が進むことを,火星人は知っています。
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パソコンや携帯電話を使うのと同様に,自宅のドアも顔認証で開錠されます.
「ただいま!」 ・・・「お帰りなさい.今日はどうでした? うまくいきましたか?」 AIとのそんな会話も,疲れた1日の仕事を反省したり,成果を確認したり,明日の課題と戦略に見通しをつける自然なやり取りになるはずです.AIが用意してくれた好きな晩御飯を食べ,お酒やデザートもあれば,その日の大失態を思い出してくよくよ悩む時間は短くて済むのです.
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IT技術による企業の統合化はどこまで進むのでしょうか? さまざまなビジネスが携帯電話の中に取り込まれ,アプリやAIによって好ましい選択肢を示す時代に,製造業や流通業は,全く異なる形で再編され,旧企業の吸収・合併を繰り返すかもしれません.
それは,スマートフォンとシェアエコノミーが技術革新を広めるからです.さまざまな技術が,Amazon,Google,Facebookにより,既存産業を消滅させます.顔認証,音声認識,自動翻訳,電子マネー,など,経済取引であれ,行政サービスであれ,企業の独立性は薄れ,社会的な活動の境界線が消去されます.
自動車は,電気自動車EVとAIによる無人自動車が広まり,自分で自動車を運転したり,所有したりする者はいなくなります.それは,現代でも乗馬を楽しむ者がいる程度に,富裕層の趣味として残るだけです.自動車産業は消滅し,さまざまな装置の生産と組み立て作業が各地で組織され,スマホで呼び出しの多いタイプの自動車を供給します.
住宅の質は急速なAIの導入によって決まるため,IT企業との合併や吸収が進むでしょう.旅行や滞在型のビジネスにAirBnBを利用するだけでなく,個人は賃貸契約により移動性を高めます.地域の生活条件やアメニティの改善にもデータ集積が役立ちます.観光業はもちろん,住宅産業,地方行政,ローカル市場の広告から個人商店の起業まで,ネットワークが広がります.
コンテナ船と長距離トラックは,無人化され,定期便や大陸規模の港湾,鉄道,インフラ投資を経て,生産拠点のグローバルなフロンティアを拡大します.一時雇用から移民労働者に対する国境が解放されて,大陸規模の生産集積地が現れるでしょう.巨大ビジネスの外交官たちが,こうした集積地と,グローバルな権力・情報のセンターとを往復して,微妙なバランスを調整します.
銀行と仮想通貨は,金融ビジネスや中央銀行に示される富と権力の地理的・社会的な集中を,根本的に崩しはじめそうです.だれでもスマホで決済し,給与を貯蓄し,その行動記録に応じた信用評価で口座への融資,納税,資産管理や投資が行えます.銀行も,証券会社も,保険や郵便局も,その境界線だけでなく,ビジネスそのものが消滅します.
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少数のグローバルなフロンティア企業だけが,生産性を引き上げ,新しい産業集積を生み出すパワーを発揮します.衰退産業と衰退地域に「取り残された人々」が政治の遠心力と地殻変動を生んでいる,とThe
Economistは紹介しています.問題は,こうした雇用や地域を救済するために財政支援が行われ,かつてのような移住や,地域の消滅を妨げて,衰退地域に多くの失業者や貧困層を維持している,という矛盾です.
既存の政治体である<国家>は,賃金や所得の格差が急速に拡大しているのに,再分配メカニズムで不平等を抑制できず,富裕層や企業への課税もむつかしくなっています.このままでは規模や軍事力に関係なく,政治体として国家は衰退に向かうでしょう.家族や信仰はどうなるのでしょうか? 貧しい者にも進んで富を再分配する富者の参加する政治共同体を、誰が、どこに、築くのか?
新しい視野で,1つ1つ,問題を解決するために,各地の政策研究機関が連携し始めています.AIやEVをスマホで駆使する新人類たちの,暮らしやすいコミュニティーと企業群を通じた雇用の在り方は,旧人類が恐れるより早く実現しそうです.
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