IPEの果樹園2017
今週のReview
11/6-11
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トランプのアジア歴訪 ・・・社会主義の習近平段階 ・・・グローバルなデジタル経済革命 ・・・21世紀の国家 ・・・アメリカ連銀議長の指名 ・・・カタルーニャ危機とEU ・・・技術革新と対話による改革 ・・・代表制民主主義の敵 ・・・昆虫も、赤ちゃんも ・・・ロシア疑惑 ・・・トランプ減税 ・・・世界貿易ルールの解体 ・・・EUの遠心力 ・・・アメリカ外交の賢人たち ・・・デフォルトの減少
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● トランプのアジア歴訪
The
Guardian, Friday 27 October 2017
As Trump
turns his back on the world, the stage is set for President Xi
Larry Elliott
それは象徴的な瞬間であった。スイス・アルプスの高原で、超富裕層が毎年集まるダボスにおいて、中国の習近平はグローバリゼーションを力強く擁護した。彼は、保護主義は暗い部屋に閉じ籠るようなものだ、と言った。「風や雨を外へ締め出せたとしても、暗い部屋には明かりも空気もない。」
メッセージは明白だ。もしドナルド・トランプが世界に背を向けるなら、中国がその真空を埋めるだろう。
40年間、中国は経済を成長させる国内の改革に集中してきた。その間、いつ中国が世界の舞台に現れて大きな役割を果たすのか、推測されてきた。その時が来たのだ。
FP OCTOBER
27, 2017
Washington
Has a Bad Case of China ADHD
BY DANIEL KLIMAN, ZACK COOPER
FP OCTOBER
27, 2017
Asia
Awaits Trump’s Visit With Trepidation
BY MICHAEL J. GREEN
アメリカの同盟諸国は、トランプの最初のアジア歴訪で何を観るのか? 彼らはアメリカの力を求めているが、同時に、アメリカの引き揚げと中国の拡大を恐れている。
トランプ大統領が日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンを訪問することは、アメリカがこの地域に関与することの表明だ。
TPPからのアメリカの撤退に乗じた中国の拡大戦略は、「一帯一路」インフラ投資や海軍の寄港地確保に顕著に示されている。中国国内では習近平のカルトに等しい個人崇拝が進み、オーストラリアやシンガポールは中国からの寄付金や政治介入を懸念している。日本、インド、オーストラリアは民主主義国家の連携を進めている。中でも韓国は、中国の影響を抑える緩衝地帯が最も薄い。北朝鮮への対応では、トランプ政権の適切な姿勢が求められる。
YaleGlobal,
Tuesday, October 31, 2017
Under Xi,
China Aims to Be the World’s Middle Kingdom
Börje Ljunggren
PS Nov 1,
2017
The
Changing Geopolitics of Energy
JOSEPH S. NYE
2008年、アメリカのNational Intelligence Council (NIC)はGlobal
Trends 2025を公表した。その予測の基礎は石油価格の上昇であった。中国の需要が増大し、非OPECの産油量が枯渇しつつあった。2006年の石油価格は100ドルを超えた。アメリカが輸入石油に依存することは、その地政学的な影響力を制限する主な要因とみなされた。
しかし、シェール・オイル革命が起きた。2015年までに、アメリカで生産される天然ガスの半分以上がシェール・オイルになる。アメリカはエネルギーの輸入国から輸出国になった。かつて天然ガス市場は地理的に限定され、パイプラインに依存した。しかし、液化天然ガスLNGが弾力性を高め、ヨーロッパにおけるロシアへの依存を減らした。シェール・オイルの油井は小規模で、価格変化に対する高い反応を示す。
シェール・オイル革命は、アメリカ外交を革新し、国内のアメリカ衰退論を払しょくした。しかし、アメリカは中東から撤退しないだろう。ヨーロッパや日本は中東の石油に依存している。国連など、国際機関におけるロシアやヴェネズエラの影響をシェール・オイルが抑えるだろう。
FP
NOVEMBER 2, 2017
Trump
Needs to Show That He Is Serious About America’s Rivalry With China
BY DANIEL BLUMENTHAL
FT
November 3, 2017
China’s
soft power comes with a very hard edge
FT
November 3, 2017
America
still holds the aces in its poker game with China
Joseph Nye
アメリカは世界最大の貿易国で、世界最大の貸し手であった。今、ほとんど100か国近い国が中国を最大の貿易相手にしている。アメリカが最大である国は57か国だ。中国は10年間で1兆ドル以上ものインフラ投資を計画している。アメリカは援助を減らし、世界銀行への出資も減らす。中国が地政学ゲームでアメリカに勝利しつつあるのか?
もし火星人が来たら、賢明にも、中国ではなくアメリカに賭けるだろう。なぜならアメリカには4枚の強力なカードがあるからだ。
1.アメリカの地理は、周囲に海と友好諸国しかない。他方、中国は14か国と国境を接し、インド、日本、ベトナムと国境紛争を抱えている。
2.エネルギー供給の確実さ。シェール革命や北米のエネルギー自給計画がある。他方、中国は中東からの石油輸入に依存し、その輸送も南シナ海の紛争海域を通過する。
3.米中貿易は緊密さを増して、「相互確証破壊」の状態にある。トランプ政権が慎重であれば、中国の対米依存はますます大きくなるだろう。
4.アメリカ・ドルの地位は人民元よりも圧倒的に支持されている。世界の諸政府が外貨準備とする通貨は、人民元のわずか1.1%に対して、USドルが64%である。最近、人民元による国際決済は減少している。
● 社会主義の習近平段階
PS Oct 27,
2017
The
Paradox of Xi’s Power
MINXIN PEI
約2200人の代表が「中国的な特徴を持つ社会主義の習近平段階」を決定した。毛沢東と鄧小平の2人だけが、個人の名前を中国共産党のイデオロギーとして認められた。
習が人民共和国の建国者たちに並んでパンテオンに祀られたことを別にすれば、彼は2つの政治的勝利を得た。第1に、習の第3期目について可能性を残した。政治局常任委員は60歳代のものばかりであり、68歳の非公式の定年制を考えると、5年後に習の後継者が含まれていない。
第2に、2人の緊密な同盟者を常任委員にしたことだ。Li
ZhanshuとZhao
Lejiが、人民代表大会と中国共産党を、反汚職キャンペーンなどにより、習近平の望む形で支配するだろう。
習は、世界最大の共産党を支配する圧倒的なパワーを得た。しかし、習時代の中国共産党が、ナショナリズムなどを利用し、中国社会を好きなように変える圧倒的なパワーを持つことはないだろう。なぜなら、毛沢東や鄧小平の時代とは、社会や経済の動きが全く変わったからだ。GDPの60%は民間部門が生み出し、庶民の眼からは中国共産党など無意味である。
FT October
31, 2017
The
challenge of Xi Jinping’s Leninist autocracy
Martin Wolf
「お前たちが好もうが好むまいが、歴史はわれわれの味方である。われわれがお前たちを葬ってやる!」と、1956年にフルシチョフは予言した。彼はソ連共産党の第1書記であった。
習近平は、はるかに注意深かったが、同じように大胆なことを述べた。「中国的な性格を持つ社会主義は新しい時代を拓いた。」 レーニン主義の政治組織である共産党は、歴史の灰燼からよみがえったのではなく、まさに、再びモデルになるのだ。
西側は、技術と経済の優位を維持する必要がある。西側は、中国の成果を認めて学び、自分たちの最近の失敗を超えて、中国がそうであったように、活力を再生するべきだ。
NYT OCT.
31, 2017
Xi Jinping
Vows No Poverty in China by 2020. That Could Be Hard.
By
JAVIER C. HERNÁNDEZ
● グローバルなデジタル経済革命
FT October
27, 2017
China
harnesses big data to buttress the power of the state
James Kynge
「2050年までに、「中華帝国」を苦痛と恥辱の次期に貶めたアヘン戦争後から200年が過ぎ、中国は力を得て、世界の頂点に再臨することになる。」 習は、大会を終えた記者会見で述べた。
その強烈な野心は、中国の成長がとん挫し、崩壊するという、数十年も続く西側の予言に対する挑戦である。それはまた、権威主義的な、一党支配国家が、ダイナミックで革新的な経済の成長をもたらすには、余りにも秘密主義で、腐敗しているはずだ、という通説に変更を求めるものだ。
データ革命は中国の共産党支配体制と融合し、潜在的な「テクノ独裁体制」を形成しつつある。すなわち、硬直的な政治管理体制と、自由市場型の豊富な柔軟性とが共存する、ハイブリッドな体制である。「企業、政府だけでなく、消費者にもデータ集積が支持された、新しいデータ推進型経済は、中国に新しい活力を与えている。」
それは以前の政府による資本投入と、国営企業から技術チャンピオンを育てるプロジェクトと全く異なる。その核心は、グローバルなデジタル経済革命の中心地として中国が発展しつつあることだ。その規模は、10年前に世界の1%以下であったが、今や中国が40%を占める。
モバイル機器による取引額は、中国が世界をリードしており、アメリカの取引額の11倍だ。シェアリング経済でも先頭を走っている。世界のウニコーン企業、すなわち、10億ドルを超える価値の新興ハイテク企業は、その3分の1が中国である。
中国は、その古代からの権威主義国家体制のシステム的な欠陥を解決するため、データを利用しつつある。すべての中国の王朝は権力のダイナミズムが示す基本法則と格闘してきた。すなわち、中央集権化した賢慮億は、宮廷からの距離によって、委縮し、腐敗したのだ。
デジタル取引の個人データを集積することで、個人の行動をチェックし、ルールから逸脱した者を処罰することができる、と金融部門の幹部は説明する。Alibaba,
Tencent and JD.comのような流通大手は、データを中国人民銀行のセンターと共有している。その範囲は、企業の社会保障の支払い、住宅基金の支払い、行政による処分・賞与、納税の遅滞、企業の評価や信用リスクに関する裁判所の判断、を含む。
その欠陥も指摘されている。データは人によって失われ、改ざんされる。特権的な機関が政治的に介入する。しかし、ビッグデータと中央計画経済との融合に新しい体制を期待する者もいる。
FT October
28, 2017
Big tech
rolls on, and the trust regulators roll over
FT October
30, 2017
Big Tech
and Amazon: too powerful to break up?
David J Lynch in Washington
Bloomberg 2017年10月31日
Debating
Where Tech Is Going to Take Finance
By Tyler Cowen and Matt Levine
スマートフォンのアプリやブロックチェーンによる記録と分散型の支払い・決済システム、暗号化された通貨、ヴァーチャル・リアリティー、ID詐欺・認証メカニズム・・・ IT技術と金融ビジネスの将来はどうなるのか?
FT
November 2, 2017
Both
robots and Big Tech have to earn our trust
ROULA KHALAF
FT
November 2, 2017
The
weaponisation of social media is real
PS Nov 2,
2017
Big Tech
Meets Big Government
MOHAMED A. EL-ERIAN
ハイテク大企業がその技術革新について最先端の能力を伸ばす可能性はまだ拡大し続けるだろう。これに対する政治的な介入の動きは強まっている。それが成長の可能性を制約するかもしれない。ハイテク大企業は、その拡大能力を相互に利益となる形で社会に位置付けておく必要がある。彼らはその行動と意図を表明し、社会の監視能力を高める方向で協力することだ。
NYT NOV.
2, 2017
Silicon
Valley Can’t Destroy Democracy Without Our Help
By
EMILY PARKER
● 21世紀の国家
NYT OCT.
27, 2017
What Is a
Nation in the 21st Century?
By MICHAEL GOLDFARB
イラクのクルディスタンとカタルーニャの住民投票は、予告されたように、バグダッドとマドリードからの強硬な反対が生じた。ここに生じた多くの問題は21世紀の国家の意味を問うものだ。国家とは何か? 国民国家とは何か? 国民とは何か? 部族と同じか? グローバル化する経済において、国家主権の意味とは何か?
冷戦終結から30年近くたって、世界の多くの地域でこうした問題に答えを求めている。ソ連崩壊だけでも15の新旧国家が現れた。ベルリンの壁崩壊から5年で、東ドイツは西ドイツに吸収され、チェコスロバキアは交渉によって2国に分かれ、ユーゴスラビアは流血の混乱の末に7か国になった。
全ての集団が国民国家を持つわけではない。クルド人のように、おぞましい弾圧を受けながら、自分たちの国を創ることを諦めない。
国家が地図を書き換えるのは、近代帝国の歴史によるものだ。クルディスタンもユーゴスラビアもその国境線はオスマントルコ帝国やオーストリア・ハンガリー帝国の敗北によって生じた。しかし、勝利したイギリスとフランスの帝国の都合がそれらを消したのだ。その後も境界線は、第2次世界大戦後のアメリカとソ連が維持した。
国家という存在は、共産主義の崩壊と、西側では2008年の金融危機によって、疑わしいものになった。
イギリスは、キャメロン首相がスコットランドの住民投票を許し、その独立派を敗退させたが、それで終わらなかった。刺激されたイングランドのナショナリズムはEU離脱を問い、今度はキャメロンが敗北したのだ。しかも、その投票結果はスコットランドで明らかに離脱に反対しており、再びスコットランド独立が要求されている。
カタルーニャ危機は、国家に関する最後の問題に至る。西欧の諸国家は、国家主権をプールすることなしに、グローバル化した経済で富を維持し、生活水準を高めて行けるのか?
21世紀の問題とは、ヨーロッパが1つの国民になれるのか、ということだ。
PS Oct 30,
2017
Centrifugal
and Centripetal Forces on Economic Areas
MICHAEL J. BOSKIN
経済、文化、エスニック、宗教の対立を管理できない政治制度のせいで、世界には、権力の分散、分離、独立に向かう地殻変動が起きている。
経済・政治の超国家機関は、中央政府に権力を集中するにつれて、明らかに政治的な反発を生じている。市民たちは、主権が侵食された、と感じている。Brexit、トランプ大統領、カタルーニャ、イタリアの最富裕地域Lombardy
and Veneto、クルディスタン、習近平政権・・・
アメリカでは、トランプ政権の方針に反対する州政府や都市が現れている。ヨーロッパの政治も、債務、銀行、成長、失業の問題を先送りするだけだ。
「ユーロの父」としてマンデルRobert
Mundellがノーベル賞を得たとき、彼はカナダ人として、最適通貨圏を貿易とマクロ経済の自然な関係によって定義した。彼の印象では、カナダとアメリカの通貨圏は「水平的」に分断しているが、カナダとアメリカの西部が「垂直的」に結び付いて地域の方が経済的に意味を持った。
マンデルの洞察はさらに展開できる。経済圏は、連続的に、求心力と遠心力の競合の結果として、形成され、結合され、解体されつつある。比較優位、規模の経済、取引費用の絶えざる変化が、同質的な地域の嗜好を同調する利益に影響する。
「最適」政治圏は、時間の経過とともに、技術と人口が変化し、文化、エスニック、宗教、その他の要因との相互作用において、変化している。集合や離散のプロセスは、有益でもあれば、有害でもある。EUは貿易圏として最良の成果を上げたが、労働市場や通貨圏としてはそれほど成功していない。銀行同盟や財政統合は全くの失敗である。
インド亜大陸を考える。隣国同士が不信感を高め、核武装している状態は、彼らだけでなく、世界にとって危険である。もしインドにパキスタンと同じくらい多くのイスラム教徒がいたら、宗教対立は1国内部で緩和できただろう。その場合、推定で、インドとパキスタンの貿易は25倍になるだろう。
経済、政治、宗教、エスニックの多様性をうまく統治することは容易でないが、それに失敗すれば成長が低下するだけでなく、深刻な政治的リスクを生じる。
FT
November 1, 2017
Africa is
not immune from secessionist sentiment
DAVID PILLING
アフリカで驚くのは、その境界線がいかに安定的であったか、ということだ。ヨーロッパでは教会の変更をめぐる戦争が何世紀も続き、1世代前にはユーゴスラビアが解体した。スペインやUKの国家統一も解決していない。アフリカの近代的な諸国家が、そのエスニック、政治、地理の現実を知らない植民地支配者たちによって、1884-85年のベルリン会議で決まったにもかかわらず、境界線は受け入れられてきた。
諸国は、しばしば、数十から数百ものエスニック、言語を異にする集団からなっていた。その多くはヨーロッパ人が来る前に、the
Ashanti, the Yoruba or the Bugandaのような、明確な、洗練された政治体制を持っていた。
全ての境界が維持されたわけではなかった。エリトリア、南スーダン、そして事実上、ソマリランドは分離独立した。いくつかの内戦があった。コンゴのKatangaや、ナイジェリア南東のBiafraは、独立を求める運動と内戦が関係している。1967-70年のナイジェリア軍による弾圧は、分離主義運動の高いコストを示した。
現在のアフリカは、カタルーニャやクルディスタン、スコットランドの運動に影響を受けるだろう。政治機構から排除されたと感じている集団に対して、政治、経済、文化的な中央政府の取り組みが失敗したことで、問題が生じる。
ノーベル文学賞を受賞した作家のWole
Soyinkaは、Biafraの分離主義が敗退することはない、と述べた。しかし、彼はナイジェリアの分裂を望んでいない。「絶え間ない交渉」によって、軍事支配体制を排除した真の連邦制が再生することを期待する。その先に、ミクロなナショナリティーを回復する、「自己認識」の深化が必要だ。
ケニアの大統領選挙で、Raila
Odingaが敗北を受け入れないのは、勝者がすべてを得るシステムで少数派が代表されないことを示している。異質な集団を多く含むアフリカ社会において、多数決原理は機能しない。
それでもアフリカは境界を維持してきたが、その境界が通過でき、汎アフリカ主義が支持されていることによって助けられただろう。少数派がより大きな政治体の一部であると感じるように努力しなければ、国家の統一は失われる。
YaleGlobal,
Thursday, November 2, 2017
Democracy
in Kurdistan and Catalonia: Does the People's Will Matter?
Humphrey Hawksley
● アメリカ連銀議長の指名
PS Oct 27,
2017
The Perils
of a Trumped Fed
ESWAR PRASAD
アメリカの税制、貿易、移民政策を改変する試みと並んで、ドナルド・トランプ大統領はアメリカ経済のもっと深刻な影響をもたらす決定を考えている。それは、Stanley
Fischer副議長の退任により、連銀理事が7人中3人も空席となっているからだ。2018年2月には、Janet
Yellen議長の任期が終わる。トランプは連銀を変革する機会を得た。
インフレは多くの要因で決まるが、期待も重要である。企業や労働者が、連銀はインフレ抑制に関心が薄いと思えば、インフレ率が上昇する。
デフレも重要だ。財・サービスが安くなるのは良いことがと思うかもしれないが、デフレは破滅的である。消費者は買うのを遅らせ、企業は投資を延期する。雇用、成長が損なわれ、物価がさらに減少する。
連銀の信用はドルの国際金融における支配的地位を支えている。外国の投資家や中央銀行は、6兆ドルを超えるアメリカ財務省証券を保有している。ドルが世界の準備通貨であることは、アメリカの金利を低く維持し、アメリカの消費者や政府の借り入れコストを抑制している。
連銀の独立性は、アメリカの制度におけるチェック&バランスや法の支配と並んで、投資家たちのドルの信頼に欠かせないものだ。連銀は政府と国民に対して説明責任を負うが、それはあらかじめ決められたターゲットに関する責任だ。そのときの権力者に対する責任ではない。
だからトランプが、もし自分に対する政治的な忠誠を求めるなら、それは連銀総裁の独立性を大きく損なう。
NYT OCT.
30, 2017
The Fed
Chair Should Be a ‘Principled Populist’
By STEPHANIE KELTON and PAUL MCCULLEY
FT
November 2, 2017
Powell as
Fed pick may not be the non-event it seems
John Authers
PS Nov 2,
2017
Donald
Trump’s Federal Reserve
KENNETH ROGOFF
Bloomberg 2017年11月2日
What
Jerome Powell Should Say as the New Fed Chair
By Daniel Moss
FT
November 3, 2017
The new
Fed chair must prioritise continuity
FT
November 3, 2017
Jay
Powell’s appointment is just the start
Glenn Hubbard
Jay Powellは3つの問題に答えることになる.
1.正常な金融政策とは何か? 2.金融規制におけるFedの役割は何か? 3.敵対する政治状況において,金融政策の独立性をどのように守るか?
● ヨーロッパの難民
NYT OCT.
27, 2017
Abandoned
in Calais
By THE EDITORIAL BOARD
PS Oct 31,
2017
Lesbos’s
Ghosts, Europe’s Disgrace
YANIS VAROUFAKIS, GEORGE TYRIKOS-ERGAS
● 北朝鮮の脅威
NYT OCT.
27, 2017
North
Korea and the Threat of Chemical Warfare
By
THEO EMERY
NYT OCT.
28, 2017
North
Korea Rouses Neighbors to Reconsider Nuclear Weapons
By DAVID E. SANGER, CHOE SANG-HUN and
MOTOKO RICH
● 社会民主主義の未来
FT October
28, 2017
The
reversible rout of social democracy
社会民主主義に未来はない、と決めつけるのは間違いだ。中道左派の政権は、労働者のホワイトカラー層と都市の専門職との巧妙な連携によるものだった。社会民主党は、もっと政治の基本を問い直すべきだ。カリスマ性のある指導者、情熱が、そのイデオロギーを再生する。
The
Guardian, Tuesday 31 October 2017
The
‘welfare state’ should be something we’re proud of. Not a term of abuse
Nicholas Timmins
The
Guardian, Tuesday 31 October 2017
A basic
income for everyone? Yes, Finland shows it really can work
Aditya Chakrabortty
フィンランドの田舎で,毎月約560ユーロ(500ポンド)のベーシックインカムを預金口座に支給する実験が行われた.失業者も含む.
財源と失業者の扱いに関して,イギリス人の偏見を訂正するときだ.
● カタルーニャ危機とEU
FT October
28, 2017
Catalan
crisis finally boils over
Gideon Rachman
カタルーニャ危機の原因はさまざまであるが、なぜこの時期に起きたのか。もしユーロ危機と緊縮策が深く関わっているのであれば、Brexit、トランプに加えて、ここにも危機の関連性が見えたことになる。
カタルーニャの独立運動は、バスクに比べて暴力行為がないため、最近までマドリードも許容してきた。しかし、互いの非難は強硬な言葉を示している。独立派はしばしばマドリードを「ファシスト」と呼ぶ。他方、その独自言語や学校の勝手な歴史教育は、多くのスペイン人にとって不快なものだった。保守派は、今回の独立派にもつながる、こうしたやり方を見直すべきだ、という主張を強めている。
ラホイ政権が強硬策を多用すれば、今は過半数を得ていない独立派が刺激されて、結果的に独立を強める危険がある。
Bloomberg
2017年10月28日
Catalonia
Isn't Ready for This Fight
By Leonid Bershidsky
NYT OCT.
28, 2017
The
Catalan Martyr vs. the Spanish Strongman
By
OMAR G. ENCARNACIÓN
The
Guardian, Sunday 29 October 2017
The
Catalan dream will not be extinguished by force
Matthew d'Ancona
FT October
30, 2017
Spain’s
crisis is the next challenge for the EU
Gideon Rachman
EUは、政治的、知的に、カタルーニャ独立を扱う準備がなかった。EUはリベラルな諸価値の「安全地帯」であると前提されている。いったん、ある国がEUに加盟すれば、ここでは内外の旧い紛争はドアの外側に棄ててきたものと考えていた。
民主主義、法の支配、市場経済によって、すべての問題は平和的に解決されるはずだった。EU内では国家主権の問題が重用ではなく、地域、国民、ヨーロッパの適当なレベルで決定がなされるだけでよかった。
独裁者フランコの死から11年後、1986年にスペインはEUに加盟したが、それはスペインの民主化と、孤立から国際主義へ、貧困から繁栄へ、というマドリードとブリュッセルとの勝利の物語であった。しかし、もしスペイン国家内には危機が継続しており、予想外の衝突につながるとすれば、それはBrexit以上に深刻なEUの危機になりかねない。
これまでのところ、スペインの危機をEUとしては静観するしかなく、ベルリン・ブリュッセル・パリのネットワークに障害となるようなものではない。しかし、独仏関係に関するEU官僚たちの対策と違って、スペインの危機は、東欧からチェコやオーストリアに拡大するポピュリズムと同様、EUに対応策のない危機である。
ヨーロッパの指導者たちはスペインの危機を見逃すかもしれないが、スペインの危機は彼らを見逃さない。
FT October
31, 2017
Healing the
wounds of secessionism in Spain
Bloomberg 2017年10月31日
In
Catalonia, Let the Long Game Begin
By Leonid Bershidsky
FT
November 1, 2017
Statesmen
not lawyers are needed to resolve the Catalonia crisis
David Gardner
NYT NOV.
1, 2017
Catalonia
Will Not Retreat
By ORIOL JUNQUERAS
PS Nov 2,
2017
A Federal
Spain in a Federal Europe
GUY VERHOFSTADT
NYT NOV.
2, 2017
Catalonia
Tottering
By
THE EDITORIAL BOARD
● 技術革新と対話による改革
The
Guardian, Sunday 29 October 2017
The rise
of the robots need not spell downfall for humans
Chi Onwurah
FT October
31, 2017
Why
machines do not have to be the enemy
Sarah O'Connor
機械との競争に人間は勝てない、と思っている人は多いが、OECDの研究は、その結論がまだ出ていない、とした。機械を抑えるよりも、人間の飛躍を助けることだ。
PS Oct 31,
2017
Learning
from Martin Luther About Technological Disruption
NICHOLAS DAVIS
500年前、ほとんど知られていない司祭で神学者、ルターMartin Lutherが請願書を教会のドアに釘付けした。それは、カトリック教会の免罪符販売に関する論争を求めるものだった。
ルターの「95か条の論題」は、プロテスタントの宗教改革に火をつけた行為として広く認められている。それは教会の行為や法皇の権威についてだけでなく、究極的な、人間と神との関係について論戦を挑み、パワーとアイデンティティの体系を組み替えて、現在のような姿にした。
なぜルターの行動はそれほどの衝撃を与えたのか? 法皇の超越性に関しては、その200年前から哲学、神学、政治学の論争であった。田舎の1人の神学者がこれほど重大な宗教的、政治的な混乱をもたらしたのはなぜか?
その答えの中心にあるのは、活版印刷術、という当時の技術革新だ。印刷術は思想を広める革命を起こした。ルターはその潜在的なパワーを理解し、短い、明瞭な、人民の言葉で、ドイツ語を書いた。「人々が市場で話すように書く」と彼は決意し、数十年でルター版聖書は10万部以上が印刷された。ある推定によれば、ルターは25年間にわたり、2週間ごとに、文書を発表した。
印刷術が宗教的な論争を近づきやすくして、ルターは教会に対する反抗を激化させた。現在、「第4の産業革命」が話題となり、次の活版印刷術は何か? と問われている。しかし、一層重大な教訓は、ルターが神学論争を挑み、その結果、教会の権威を損なうだけではなかったことだ。信仰の制度だけでなく、地域全体が分裂した。何世紀にも及ぶ残虐行為が正当化され、30年戦争の発端にもなったのだ。
どうすれば、われわれは新技術が建設的な論争を助けるように、保証できるのか? われわれのアイデンティティや親しみのある制度を脅かす邪教(新しい思想)が、世界に満ちている。それらを暴力的に弾圧すべき考えとしてではなく、いつ、どこで、現行制度が人々を排除し、約束した便益をもたらし損ねているか、それを理解する機会とみなせるだろうか?
そのためには社会が、ルターの時代よりもさらに深く、アイデンティティ、パワー、技術の相互作用を理解する必要がある。
● Brexit
The
Guardian, Sunday 29 October 2017
Leftie?
Yes, and proud to be among those upholding Enlightenment values
Will Hutton
Brexitの論争は、啓蒙主義の科学思想を破壊しようとしている。
FT
November 3, 2017
Britain
has to offer more money for a smooth Brexit
MARTIN WOLF
● 代表制民主主義の敵
FT October
29, 2017
Investors
pass the buck on governance
Rana Foroohar
FT October
31, 2017
Direct
democracy threatens way we are governed
Janan Ganesh
独裁制に比べて、統治者を住民たち全員で決める普通選挙制度を支持する意見は今も強いが、必ずしも、この制度が成功しているわけではない。代表制民主主義は、ロシアやトルコで、かつてのような独裁化の道を進んでいる。
絶え間ない住民投票で民主主義が機能しなくなるというシナリオよりも、恐れるべきは2つの傾向だろう。1つは、代表制民主主義より、専門家の委員会による政策決定を好ましいとする意見だ。もう1つは、主要な問題ごとに直接投票して法律を決めることだ。
大企業はその組織内に一種の政府を持っている。かつて、フォードやマクドナルド、ソニーを動かしたのは社内の政治家たちからなる重役会議であった。しかし、今、GoogleやFacebookの運営は、絶えざる住民投票に似ている。これらの企業は、その資本規模に比べて、わずかの雇用しかしない。それゆえ、彼らの決定は、地上の政府を軽視することになる。
カール・マルクスは、資本主義システムに内在する不安定性を批判したが、それはむしろ民主主義制度に当てはまるだろう。貧者の数は常に富者の数を圧倒する。テクノクラシーは、こうした富者を貧者から守っている。直接民主主義は貧者に圧倒的なパワーを与える。代表制民主主義は、そのどちらでもない。
(後半へ続く)