前半から続く)


 昆虫も、赤ちゃんも

NYT OCT. 29, 2017

Insect Armageddon

By THE EDITORIAL BOARD

昆虫の数が世界規模で急速に減少しているという警告を発する新しい証拠がある。Prof. Dave Goulsonたちの新しい研究だ。われわれは「生態系のハルマゲドン」に向かっている。なぜなら「もし昆虫がいなくなれば、すべてのものが崩壊するからだ。」

その研究はドイツ各地の自然保護区域で、25年間、飛翔する昆虫を集めた記録から導かれた。これらの昆虫のトータル・バイマスは驚異的な76%もの減少を示した。科学者たちは2つの主要な原因を考えている。殺虫剤の使用と、農場周辺の生息域の枯渇である。

もぞもぞ這い回り、うるさい虫がいなくなることは、たとえば、地球温暖化でシロクマがいなくなることに比べて、それほど同情されないかもしれない。しかし、昆虫のいない世界で、われわれは生き残れない。昆虫は我々の食糧となる植物の受粉に欠かせない。多くの魚、鳥、両生類が餌にしている。昆虫は自然界の掃除屋であり、土壌を肥沃にしてくれる。

昆虫を救う方法はある。単一種の耕作地の周りに、野生の花や自然植生を残す緩衝地帯を設ける。農業のやり方を変えて、生態系の多様さを尊重し、殺虫剤や除草剤の使用を減らし、あるいは完全にやめる。地球上の急速に失われている森林、湿地、草原が保護され、可能ないたるところで回復されるべきだ。

一層の研究が必要だ。しかし、明らかに、昆虫の運命はわれわれの運命と切り離せない。

Bloomberg 20171031

Rich Nations Need a Cure for the Baby Bust

By Noah Smith

豊かな諸国は国民がもっと子供を持つように奨励するべきか? 一般に保守派は、そうだ、と言う。中道派は、高齢化する中で、年金の財政負担に減少する若い労働者たちが耐えられない、と心配する。リベラルはしばしば、裕福な諸国の人口増加は環境への負荷であり、人口問題は移民で解決するのが良い、と考える。

真実は、この問題の答えが国によってさまざまである、ということだ。アメリカでは出生率を高めることは優先されていない。アメリカの総出生率(合計特殊出生率)は1.8であり、置換水準の2.1をそれほど下回っていない。またアメリカは移民を歓迎する国であり、熟練労働者の流入が財政的な持続可能性をもたらすだろう。

他方、ドイツ、日本、韓国のような、歴史的に国民のアイデンティティを重視する諸国は、十分な移民を受け入れない。しかも出生率は、ドイツ1.5、日本1.46、韓国1.24、と深刻な水準だ。子供が増えなければ経済規模を維持することはむつかしい。

政府は出生率を高めるためにどうするべきか? 保守派は、しばしば、信仰に篤い社会は出生率が高い、と強調する。しかし、イランやサウジアラビアで宗教的な保守派が権力を得ても、出生率は低下している。

シンガポールの出生を奨励する政策は、政府の限界を示している。政府は結婚を奨励し、より多くの子供を持つ人々に資金を与えると宣伝した。しかし、都市国家、シンガポールの条件は特殊である。他の国では補助金の効果があるかもしれないが、長期的には出生率を高めないだろう。

長期的な出生率の上昇に役立つ政策として、育児への補助金支給、育児期間の有給休暇制度、が挙げられる。これらは出産と育児に関する機会費用を低下させるものだ。人々(特に女性)が子供を持つために失業し、昇進を諦めることによって生じる費用は、政府の奨励策や補助金支給をはるかに超えている。

PS Nov 2, 2017

The US Plutocracy’s War on Sustainable Development

JEFFREY D. SACHS

富裕層の政治ゲームが国連・持続的開発目標を破棄させる。


 ロシア疑惑

NYT OCT. 30, 2017

Will Manafort Sing?

Nicholas Kristof

NYT OCT. 30, 2017

Mueller’s Investigation Won’t Shake Trump’s Base

By DAVID FRENCH

FP OCTOBER 30, 2017

Robert Mueller’s Opening Salvo Is a Show of Strength

BY SUSAN HENNESSEY, BENJAMIN WITTES

アメリカ大統領選挙にかかわった3Paul Manafort Jr., Richard Gates III, and George Papadopoulosが起訴された。選挙中のクリントン陣営に対するロシアの情報操作、選挙介入。ウクライナにおける新ロシア政党から彼らManafort and Gatesの海外口座にmore than $75,000,000の資金提供。

The Guardian, Tuesday 31 October 2017

The Guardian view on Robert Mueller’s investigation: this says it’s serious for Trump

Editorial

FT October 31, 2017

Mueller charges pitch US towards constitutional crisis

Edward Luce

これはドナルド・トランプの終わりの始まりなのか? モラー特別検察官はこれに答えないが、その標的は明確だ。

トランプ陣営の選挙マネージャーであったマナフォートPaul Manafortを、資金洗浄、脱税、その他、10の犯罪で起訴した。大統領選挙のマネージャーが巨額の資金洗浄の罪で、しかも外国政府のために働いたときに得ていた、という罪で起訴されたというのはかつてないことだ。

かつての選挙参謀George PapadopoulosFBIに虚偽の証言をした事実も公表した。彼はロシアとの関係を認めたのだ。

3つのことが明らかになった。第1に、モラーはトランプ陣営とロシアとの共謀を立証することを目標にしている。それが成功するか、わからない。しかし、彼はすべての証拠を集めるだろう。

Papadopoulosは明らかに「寝返った」。捜査に協力しているのだ。Mr Manafortと仕事仲間の Richard Gatesが同じように協力を求められている。複数の罪に問われた彼らは、明らかに、何年間も投獄ざれる恐れがある。その罪を軽くするために、モラーと取引する強い動機があるのだ。最初の安全保障担当補佐官であったMichael Flynn、長男Donald Trump Jr、娘婿のJared Kushnerもその視野に入っている。

さらに起訴される者があるだろう。もっとも経験を積んだ検察官として、彼は何をしているかわかっているはずだ。いつ、どのように動くか、慎重に考えたうえで行うだろう。

2に、トランプは逸脱の専門家だ。週末にはクリントン夫人を、彼女が国務長官時代にロシアが所有するウラニウム企業と共謀したという疑いをTweetした。この話をFox News, Breitbartなど、親トランプのメディアが広めている。共和党は、アメリカのウラニウム採掘の訳5分の1を占める、カナダが所有する企業Uranium Oneの持ち株売却を承認することにクリントン夫人がかかわった件で、議会審査を行うように脅している。トランプは、クリントンの「犯罪」に何かするべきだ、とTweetした。「彼女を投獄せよ」という呪文がよみがえる。

トランプは11日間のアジア歴訪に出発する。大統領就任以降で最も重要な戦略的意味のある訪問だが、ワシントンの紛争で影が薄くなるだろう。トランプは北朝鮮についての新しい非難を振りまくのか?

3に、最も決定的なことだが、共和党の決断がどうなるかだ。トランプは明らかにモラーを解任したいだろう。それは司法への介入であり、大統領を弾劾するべきだ、と多くの人は考える。しかし、裁判所はそれを阻止できない。トランプを弾劾できるのは、共和党が多数を占める議会だけである。

世論調査では、共和党支持者の多くが今もトランプを支持している。そのことが共和党議員にとって最も重要だ。もしそれが変わらなければ、トランプはモラーを解任できると思うだろう。そうなれば、アメリカは憲法の危機に陥る。私はそれが起きる可能性が、5050よりも多いと思う。

FT October 31, 2017

Mueller’s investigation puts down a marker

NYT NOV. 1, 2017

Robert Mueller Will Never Get to the Bottom of Russia’s Meddling

Ivan Krastev

FT November 2, 2017

Mueller and the fate of the US republic

EDWARD LUCE


 トランプ減税

FT October 30, 2017

Trump’s tax cut will put America back on a path to growth

Arthur Laffer

ドナルド・トランプは、彼の減税案がアメリカ経済を活性化し、何百万人もの雇用を生み出すことに賭けている。経済学の正統派が何を言うか、わかっている。「減税に経済成長をもたらす魔法の杖を求めても無駄だ」とNYTの見出しにあった。Lawrence Summers元財務長官は、呪術の復活と非難した。

大統領の計画を批判する者たちは、労働や投資に対する減税が労働や投資に何もインパクトを与えない、と信じているようだ。しかし、エコノミストや心理学者が、減税は何も影響しない、などと本当に思うのか? 経済学とは、誘因を是正すること、税金とは何かをさせないための誘因である。

経済成長の要素で最も多く語られているものを見ることだ。すなわち、生産性である。Stanley Fischerは警告した。「資本投下と生産性」が減速すれば、「成長も減速する。」 それは、政府が資本投下を罰する政策を実施しているからだ。

左派は、金融危機後の回復がなぜこれほど遅いのか説明しない。むしろ、これを「新しい常態」と呼ぶだけだ。マルでアメリカ人が働く気を失い、金儲けも嫌になったみたいに。

トランプ減税はこの悪化傾向を即座に逆転するだろう。アメリカは、デジタル時代の新局面を歓迎し、巨大な生産性上昇を実現する。AI、ロボットは、製造業の生産性を高め、新薬や新しい医療、生化学が、生産性を損なっている多くの衰弱性病状に解決策をもたらす。

起業への減税という正しい経済政策が、規制緩和、新しいエネルギー政策とともに、生産性を高める政策が導入されると、アメリカの成長率は3ないし4%の水準に高まる。

Bloomberg 20171031

Why Tax Deductions Are Stupid (and Why We Love Them)

By Justin Fox

PS Oct 31, 2017

America’s Tax-Cut Peronists

SIMON JOHNSON

国の名前を挙げよ。

その指導者は外国人を激しく非難し、さまざまな輸入障壁を設け、自分が気に入った産業に低利融資と補助金を与える。政府の借金はすでに多いが、さらに強権的な指導者を目指して予算赤字を増やし、かつてなかった水準の繁栄をもたらすと説明する。すべての者のためと言いながら、政府の契約は友人たちだけが利益を得る。

その答えは、ペロンJuan Perónのアルゼンチンだ。

しかし、もしあなたがトランプのアメリカと答えたのであれば、その答えも悪くない。現在のアメリカは、かつてラテンアメリカでポピュリズムと呼ばれた何かに向かっているからだ。

FT November 2, 2017

US tax reform will boost innovation and entrepreneurship

Kevin McCarthy

FT November 2, 2017

One last time on whom corporate tax cuts benefit

LARRY SUMMERS' BLOG

NYT NOV. 2, 2017

A Tax Plan for a New Gilded Age

By THE EDITORIAL BOARD

NYT NOV. 2, 2017

How to End International Tax Competition

By DANIELLE WENNER and KEVIN ZOLLMAN


 世界貿易ルールの解体

PS Oct 30, 2017

An Opportunity for the WTO

HECTOR R. TORRES

NYT OCT. 31, 2017

Trump’s Trade Endgame Could Be the Undoing of Global Rules

Eduardo Porter

トランプ大統領の究極の目的はWTOを葬ることなのか?

Robert Lighthizerがトランプ政権の通商代表になってから、ロナルド・レーガンの時代が復活したようだ。当時も、アメリカは硬直したやり方で貿易の不満を解決しようとした。

1980年代初め、日本はトヨタ、ホンダ、日産の自動車輸出を減らすために「輸出自主規制」に合意した。それはデトロイトが強く求めたものだった。15か国が参加する鉄鋼の輸出自主規制は、アメリカの鉄鋼輸入の80%に及んだ。

それが「自主的」と呼ばれるのは、外国の輸出業者が、懲罰的な関税を受けるよりも、合意することを好んだからだ。Douglas Irwinの新著“Clashing Over Commerce: A History of U.S. Trade Policy,”は、アメリカが規制する輸入財の割合が、19758%から198421%まで高まったことを示している。

ワシントンが望むのは、世界の法規制を目指すWTOを葬ることより、1980年代のようにフリー・ハンドを回復することである。アメリカは次々に黒字国を相手にしてその削減を求めた。

しかしLighthizerの要求には無理がある。アメリカの経常収支赤字は国内の貯蓄投資ギャップの反映でしかない。もしアメリカがNAFTAを離脱したら、その不確実さがメキシコ・ペソを暴落させて、むしろアメリカのメキシコに対する赤字を膨張させるだろう。たとえNAFTAでアメリカが貿易を均衡化しても、それがアメリカの貿易収支全体を改善するとは限らない。

しかも、もし共和党が減税案を通過させた場合、財政赤字は拡大し、貯蓄投資バランスはさらに不均衡を拡大するだろう。世界が懸念するのは、通商関係を不動産取引のように見なしているトランプ政権が、高まる貿易に関する不満からWTOの監督する法的な枠組みと衝突する方向に進むことだ。

1980年代に、安全保障をアメリカに依存する日本を困らせることは容易だったが、今、同じことを中国に対してするのはむつかしいだろう。アメリカの離脱はWTOにとって困惑するとしても、崩壊するわけではない。世界貿易に占めるアメリカの割合は、1980年代の約4分の1から、今ではわずか13%に低下している。

アメリカの砂糖政策を観よ。1980年代の初めに、アメリカは砂糖の最低価格を維持しようとした。政府は輸入に対する割当を行った。世界価格が下落すると、アメリカの認める割当て量はますます減少し、ついに、アメリカの砂糖価格が高くなりすぎて、砂糖を抽出・販売するために砂糖製品を輸入するまでになった。コークやペプシは砂糖をトウモロコシ・シロップに代替し、キャンディー工場は海外移転した。

カリブ海域や中米の農民たちは、砂糖生産を諦め、アメリカ人が密輸する違法麻薬の耕作に代えた。1986年、アメリカは136000トンの砂糖を中国に売ったが、それは国内価格を引き上げるためだった。その際、1ポンド18セントで買って5セントで売った。数日中に、世界の砂糖価格は暴落した。

NYT NOV. 2, 2017

Trump’s Trade War With Canada

By PAUL HEINBECKER


 EUの遠心力

PS Oct 30, 2017

Europe’s Economic Dilemma

MARTIN FELDSTEIN

ヨーロッパ経済は回復したが、ECBには深刻な問題がある。次の景気後退は避けられないが、そのとき、金利を下げる余地がないことだ。金利を下げて、ユーロ安による輸出を増やすこともできない。

PS Oct 30, 2017

Can France and Germany Come Together?

DOMINIQUE MOISI

Bloomberg 20171030

The European Project Needs a New Long-Term Vision

By Jean Tirole

1950年代には、EUの創設者たちが第2次世界大戦後の危険な時代を管理する長期的ビジョンを持っていた。今日、われわれは再びそれを必要としている。

ユーロ圏には2つの選択肢がある。マーストリヒト条約を改善する、すなわち、財政規律を厳格に守らせる既存のアプローチか、あるいは、連邦制に向かうより野心的なアプローチだ。それは加盟諸国の一層のリスク・シェアリングを求める。どちらの選択肢も、より大きな主権とは矛盾する。それが問題の核心にある。

マーストリヒト型は、独立の財政監視委員会を導入し、それが加盟国の最適成長予測として、赤字削減予想を示す。委員会は是正策を強制する権限を持ち、その委員は各国ではなく、ヨーロッパから選ばれる。

連邦型は、19世紀末のアメリカのように、各加盟国が破たんする恐れがあるとき、連邦が債券発行の能力を持ち、システムとして財政移転する。より大きなリスク・シェアリングとして、連邦債の発行、連邦予算、共通の銀行・失業救済保険、を導入する。

連邦型は、1.保険契約における「無知のヴェール」が成り立たねばならない。しかし、非対称性があることを知っているために、北欧諸国は南欧諸国と共通の保険に参加したがらない。ヨーロッパ規模のシステムには、たとえば、各国政府が既存の不良債権を処理する責任を認める必要がある。

2.モラルハザードを抑える共通のルールが必要だ。銀行監督に関しては、政治家の大幅な影響を考えれば、それを各国レベルで実施してはならない。共通の失業保険に関するルールはさらに複雑だ。失業は、単に経済の循環によるのではなく、産業保護策、社会保障政策、職業訓練、集団交渉、専門職の資格制度、など、政府の姿勢によって変わる。政策の調和には各国が主権を譲歩しなければならない。

地域間で財政移転が行われるには、その条件よりも構造が重要だ。アメリカでは、カリフォルニア、ニューヨークのような豊かな州から、アラバマ、ルイジアナのような貧しい州に、システムとして、大幅な財政移転が行われている。ドイツ内で、イタリア内で、UK内で、スペインのカタルーニャから他の地域へ、ベルギーのフランダースからワロニアへ、財政移転される。

すべては豊かな地域が貧しい地域に進んで移転を認めることにかかっているが、何が彼らの意欲を決めるのかはよくわからない。共通の言語やナショナリスト的感覚は関係あるだろう。一般に、同質的なコミュニティーの方が福祉国家に向いている。

もしヨーロッパがともに生きることを願うなら、ヨーロッパの理想を復活し、その実現に向けて団結することだ。

PS Nov 1, 2017

Europe’s Hard-Core Problem

HAROLD JAMES

ヨーロッパが遠心力によって引き裂かれつつある。

ポピュリズムがグローバリゼーションの犠牲になった人々を不可避に巻き込む、という説明は間違っている。チェコもハンガリーもポーランドも、経済パフォーマンスは良好だった。難民危機との関係も、移民排斥のポピュリズムが強い地域には難民がほとんどいない。

不満の背景を考えるとき、われわれは独仏パートナーシップによる指導力を検討しなければならない。歴史的に、独仏が決めたことに他の諸国は追随するとされた。しかし、2009年後半から、ユーロ圏の債務危機においてパワーがドイツに偏り、ヨーロッパは両国の指導を嫌うようになった。

メルケルは、緊縮策を強いる体制に固執したし、難民危機に対する人道的な選択やテロも、EU内の反対派を強めた。ユーロ危機では、ギリシャ、イタリア、スペインなどがフランスをドイツに対抗する国として期待した。しかし、ロシアによるクリミア併合で明らかになったように、フランスは安全保障・外交で、ドイツは財政・経済で、指導力を分担した。

独仏パートナーシップがパワーをさらに強めたのは、UKEU離脱を決めたからだ。多くのEU周辺諸国はUKに独仏と対抗するパワーを期待してきた。しかし今や、UKは離脱交渉で独仏の姿勢に圧倒されている。

将来を観れば、独仏は各国の政策を超えて、真にEU改革の方針を合意する必要がある。防衛協力や税制の調和がすでにある程度の合意を得ている。財政の中央集権化、政府債務の組み換えなど、重要問題についても方針を示すべきだ。

政策論争を、独仏パートナーシップに頼るのではなく、むしろすべてのEU加盟諸国に開くべきだ。そのために欧州議会に向けたEUレベルの候補者リストを作成し、ヨーロッパの地域や都市を意思決定に参加させるメカニズムが提唱されている。

EUに求められるのは、中核国家ではない。中核の思想である。

FP NOVEMBER 1, 2017

The Battle for Austria’s Right Is a Harbinger for the Rest of Europe

BY PETER ROUGH

Bloomberg 2017111

France's Labor Laws Should Protect People, Not Jobs

By Jean Tirole

フランスのマクロン大統領が労働規則を緩和する方針には賛成だ。それによって投資が増えるだろう。企業と労働者の利害対立を和解させるには、人を守るべきであって、職場ではない。

根本問題とは、失業手当のコストが解雇する企業によって負担されていないことだ。それは雇用を維持している企業に負わされ、社会保障への支払いとなっている。企業にはより大きな解雇の自由を認める代わりに、懐古に対する罰金を要求する。その資金は社会保障や財政に入り、被雇用者には支払われない。企業に追加の負担を求める必要はない。罰金を集めて、労働者の雇用を維持する企業の社会保障支払いを減額する基金にする。

Bloomberg 2017111

No, Europe Isn't About to Break Up

By Leonid Bershidsky

プチデモンが亡命者として独立政府を指導する、と表明したことは、分離派の過剰なレトリックに過ぎない。

ベルギーでもスペインでも、分離派は独立しないだろう。その公的債務負担は大きく、独立すれば経済が破たんする。また、主要都市の住民は独立の経済コストを知っており、たとえ分離派の主張に共鳴しても、独立を歓迎することはない。

スペイン、ベルギー、UKの分裂は起きないだろう。統治する者は、被統治者と緊密な関係にあるほど成功する。市民たちの生活に配慮し、彼らが過激な変化を好まないようにすることだ。

FT November 2, 2017

Europe’s choice — French ambition or German bean-counting

PHILIP STEPHENS


 日銀

Bloomberg 20171030

Bank of Japan Is in Kuroda Mode Even If He Leaves

By Daniel Moss


 人民元

PS Oct 31, 2017

Why China’s Capital-Account Liberalization Has Stalled

YU YONGDING


 アメリカ外交の賢人たち

NYT OCT. 31, 2017

When the Wise Men Failed

JONATHAN KIRSHNER

1967112日、アメリカで最も尊敬される外交関係者たちが、ジョンソン大統領とそのベトナムの最高顧問とともにホワイトハウスに集まった。

元国務長官Dean Acheson、元国際銀行家・財務長官Douglas Dillon、トルーマン大統領の大統領府弁護人Clark Clifford、元上院議員・南ベトナム大使Henry Cabot Lodgeが含まれる。

アチソンは、「われわれが勝つ能力と意思を持つこと」を大統領に明言し、「ベトナムから撤退すべきではない」と大統領に述べた。McGeorge Bundyは、撤退を「不可能」であり、「望ましくない」とした。交渉は無駄であり、空爆の停止は弱みを見せることであり、必要なことは国民への宣伝であった。

しかし、その10週間後、テト攻勢に遭って、彼らの助言に乗った大統領の戦争拡大計画は失敗に終わる。Westmorelandは米軍の増派を求めたが、大統領はCliffordに助言を求め、その戦争が終わりのないものになる、と聞いた。

再び集められたthe Wise Menは先の助言が間違いであったと認め、意見を逆転させた。5日後、ジョンソンは再選に立候補しない、と発表した。

FP NOVEMBER 2, 2017

If Trump Forgets About Human Rights in Asia, the World Will Suffer

BY MICHAEL H. FUCHS, SHANNON MCKEOWN, BRIAN HARDING


 イラク

FP OCTOBER 31, 2017

Iraqi Kurdistan Was Never Ready for Statehood

BY DENISE NATALI

NYT NOV. 2, 2017

Iraq Is Not Iran’s Puppet

By RENAD MANSOUR


 デフォルトの減少

PS Nov 1, 2017

The Curious Case of the Missing Defaults

CARMEN REINHART

国際資本移動と国際商品価格のブームと破たんが、国際金利水準の変動と並んで、長い間、経済危機を引き起こしてきた。特に、そこだけではないが、新興市場においてそうだった。ときには資本流入の「突然の停止」が通貨危機を生じ、ときには銀行危機を生じ、しばしば政府債のデフォルトにつながる。2つもしくは3つの危機が重なることも珍しくない。

グローバルな諸力の開放経済に及ぼす影響、それらに対処する方法が、何十年も、国際的な政策担当者たちの間で議論された。アメリカ連銀が金利を引き上げるという予想される中で、IMF年次総会がこうした問題を取り上げた。

しかし、国際商品価格やグローバルな資本移動が2011年にピークに達して以降、世界的に観て、政府債のデフォルトはわずかに増加しただけであった。この調査の欠陥として、中国からの政府系融資が事実上のデフォルトになっているかもしれない。アフリカの商品輸出国やヴェネズエラがそうだ。

それにもかかわらず、デフォルトの少なさを説明する2つの観方があるだろう。1つは、新興市場経済が変動に対して強くなったことだ。景気循環を抑制するような財政・金融政策、資本流入が続く間もマクロ・プルーデンシャルを維持する規制を彼らも学んだ。もう1つは、グローバルな流動性供給だ。現在、危機後の引き締めは、過去の景気循環に比べて、その程度も速さも劣っている。

これは構造的な変化が生じているのであろう。しかし、引き延ばされてきた主要国の金融政策正常化によって、新興市場の弱さが表面化するかもしれない。


 自然失業率

PS Nov 2, 2017

Nothing Natural About the Natural Rate of Unemployment

EDMUND S. PHELPS

現代は、失業率もインフレ率も低い。

かつて、1950年代に学んだケインズ経済学に、私は1960年代になって反対した。総需要からすべてを導く発想を、構造的な変化を反映する自然失業率によって否定したのだ。しかし、自然失業率という考え方は、「自然」という点で間違っている。失業率は「自然」ではなく、すべての構造変化によって影響を受ける。

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The Economist October 21st 2017

Left behind

Left-behind places: In the lurch

After the caliphate: Dashed Kurdish dreams

Bagehot: Bagehot v Brexit

Buttonwood: A taxing problem

Free exchange: The low road

(コメント) クルディスタンの独立やUKEU離脱が大いに望ましい未来を描いたとしても,現実は異なっていたようです.ペシュメルガや地方政府KRGは分裂状態であり,指導者たちの権力争いの末にクルド人たちの夢が消滅します.Brexit推進派とイデオロギー闘争をイギリス政治の良質さを失わせた,と記事は批判しています.

政治経済秩序の地理的構造・空間的な編成が変化し始めると,人々の満足感や統一精神は蝕まれてしまうと言えます.国家も市場も,市民の公平な感覚,参加意識を高めるように,再分配メカニズムを修復できなくなったとしたら,国境を超える長期の社会紛争が背景となって,大国の邪悪な取引政治が支配するのではないか?

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IPEの想像力 11/6/17

Nyeは、火星人なら、中国ではなくアメリカが勝つ方に賭ける、と述べています。しかし、どうでしょうか? 中国でもアメリカでもなく、勝者を決めるのは、ハイテク大企業の立地でしょう。

AIに呼び掛けることで、すべての仕事と生活が進むことを,火星人は知っています。

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パソコンや携帯電話を使うのと同様に,自宅のドアも顔認証で開錠されます.

「ただいま!」 ・・・「お帰りなさい.今日はどうでした? うまくいきましたか?」 AIとのそんな会話も,疲れた1日の仕事を反省したり,成果を確認したり,明日の課題と戦略に見通しをつける自然なやり取りになるはずです.AIが用意してくれた好きな晩御飯を食べ,お酒やデザートもあれば,その日の大失態を思い出してくよくよ悩む時間は短くて済むのです.

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IT技術による企業の統合化はどこまで進むのでしょうか? さまざまなビジネスが携帯電話の中に取り込まれ,アプリやAIによって好ましい選択肢を示す時代に,製造業や流通業は,全く異なる形で再編され,旧企業の吸収・合併を繰り返すかもしれません.

それは,スマートフォンとシェアエコノミーが技術革新を広めるからです.さまざまな技術が,AmazonGoogleFacebookにより,既存産業を消滅させます.顔認証,音声認識,自動翻訳,電子マネー,など,経済取引であれ,行政サービスであれ,企業の独立性は薄れ,社会的な活動の境界線が消去されます.

自動車は,電気自動車EVAIによる無人自動車が広まり,自分で自動車を運転したり,所有したりする者はいなくなります.それは,現代でも乗馬を楽しむ者がいる程度に,富裕層の趣味として残るだけです.自動車産業は消滅し,さまざまな装置の生産と組み立て作業が各地で組織され,スマホで呼び出しの多いタイプの自動車を供給します.

住宅の質は急速なAIの導入によって決まるため,IT企業との合併や吸収が進むでしょう.旅行や滞在型のビジネスにAirBnBを利用するだけでなく,個人は賃貸契約により移動性を高めます.地域の生活条件やアメニティの改善にもデータ集積が役立ちます.観光業はもちろん,住宅産業,地方行政,ローカル市場の広告から個人商店の起業まで,ネットワークが広がります.

コンテナ船と長距離トラックは,無人化され,定期便や大陸規模の港湾,鉄道,インフラ投資を経て,生産拠点のグローバルなフロンティアを拡大します.一時雇用から移民労働者に対する国境が解放されて,大陸規模の生産集積地が現れるでしょう.巨大ビジネスの外交官たちが,こうした集積地と,グローバルな権力・情報のセンターとを往復して,微妙なバランスを調整します.

銀行と仮想通貨は,金融ビジネスや中央銀行に示される富と権力の地理的・社会的な集中を,根本的に崩しはじめそうです.だれでもスマホで決済し,給与を貯蓄し,その行動記録に応じた信用評価で口座への融資,納税,資産管理や投資が行えます.銀行も,証券会社も,保険や郵便局も,その境界線だけでなく,ビジネスそのものが消滅します.

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少数のグローバルなフロンティア企業だけが,生産性を引き上げ,新しい産業集積を生み出すパワーを発揮します.衰退産業と衰退地域に「取り残された人々」が政治の遠心力と地殻変動を生んでいる,とThe Economistは紹介しています.問題は,こうした雇用や地域を救済するために財政支援が行われ,かつてのような移住や,地域の消滅を妨げて,衰退地域に多くの失業者や貧困層を維持している,という矛盾です.

既存の政治体である<国家>は,賃金や所得の格差が急速に拡大しているのに,再分配メカニズムで不平等を抑制できず,富裕層や企業への課税もむつかしくなっています.このままでは規模や軍事力に関係なく,政治体として国家は衰退に向かうでしょう.家族や信仰はどうなるのでしょうか? 貧しい者にも進んで富を再分配する富者の参加する政治共同体を、誰が、どこに、築くのか? 

新しい視野で,11つ,問題を解決するために,各地の政策研究機関が連携し始めています.AIEVをスマホで駆使する新人類たちの,暮らしやすいコミュニティーと企業群を通じた雇用の在り方は,旧人類が恐れるより早く実現しそうです.

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