IPEの果樹園2017
今週のReview
10/16-21
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カタルーニャの独立 ・・・トランプ税制改革案 ・・・ロシアとトルコ ・・・3・11と日本人 ・・・北朝鮮のカルト ・・・資本主義に代わる経済体制 ・・・新しい政治経済へ ・・・安全保障と国際通貨 ・・・社会的市場経済
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● カタルーニャの独立
The
Guardian, Sunday 8 October 2017
Endlessly
refighting old wars does nothing to heal a fractured present
Will Hutton
記憶が多すぎる。カタルーニャ、スコットランド、セルビア、ザクセン、あるいは、Brexit推進派が好む、トラファルガー、アジャンクール、エリザベス1世もそうだが、ヨーロッパはますます深刻な、許されざる記憶の乱闘状態に陥っていく。
この大陸中に集団的な呪いが固定し、過去の勝利と現在の鬱屈とが対比される。独立によって、支配権を取り戻し、一連の不正義に復讐することで、正義と繁栄、失われた栄光を回復できる。という。そのような主張は内戦に至るだろう、と欧州委員Günther
Oettingerは警告した。世界もこの病から無関係ではない。アメリカでは南軍の旗が振られ、日本では政治家たちが靖国神社に参拝し、あるいは、イスラム聖戦主義者が十字軍への復讐を行う。ヨーロッパこそ、余りにも多くの歴史、余りにも多くの国家があったし、それを誇りにする部族に満ちている。世界の記憶の首都であり、非常に多くの国家が分離と分裂の叫びに脆弱である。
その最新の例がカタルーニャである。ヨーロッパでもっとも繁栄した地域の1つであり、バルセロナは最もダイナミックな都市の1つである。しかし部族的な栄光の記憶を刺激して、かすてぃりあの支配から独立を主張する者がいる。今週、カタルーニャ議会で、その議長Carles
Puigdemontが、住民投票の90%が独立を支持した、と演説した。しかし、それは有権者の半分以下である。ゴム弾で投票を阻んだことは間違いだった。スペインの憲法裁判所が示したように、住民投票は違憲である。Puigdemontが独立を宣言しても、EU諸国は承認しなし。国際機関も認めなし。使用する通貨も合意がない。
こうした膨張した記憶は泡のようなものだが、市民的な自治を実現する、国家よりも小さな、文化的に統合されたマイノリティーが心の底に抱く、当然の要求である。しかし、最悪の場合、カタルーニャのように、破壊的なポピュリストたちがその本能、引き延ばされた憎悪、架空の鬱屈、不可能な願い、を利用する。それらを自治政府や民主主義という言葉によって語るのだ。
われわれはもっと明確にその情念の源が過去の不正義の記憶であることを理解するべきだ。敵意のほかには何も生み出さず、存在しない差異を膨張させるだけだ。David
RieffがIn
Praise of Forgettingで述べたように、われわれは非常に破壊的な、記憶のカルトの時代を生きている。記憶することは正しいけれど、あたかも過去を生きる者が、幼年期の不正義に復讐したいと願うことは精神病であるように、記憶に固執することはコミュニティーにとっての精神病である。
閉鎖を求め、エスニックな集団の優越性を主張するために、歴史は操作される。ボスニアの虐殺はその最悪の例だ。過去に敬意を払うべきだが、党派的な目的を神話にすることで賛美してはならない。グローバリゼーションの時代を生きるわれわれは、もっと許し、忘れることを学ぶ必要がある。そして公平な社会を維持するより良いガバナンスの構造を創り出すべきだ。
記憶の過剰には毒がある。
PS Oct 11,
2017
Europe’s
Return to Crisis?
DANIEL GROS
カタルーニャで独立派が推進した住民投票は、スペイン政府によって暴力的に否定された。しかし、紛争がエスカレートしたことは、ヨーロッパが再び危機の時代にもどることを意味しない。実際、それはヨーロッパ経済の回復と、達成したものの限界を示した。
カタルーニャの混乱に対して、金融市場は何も反応しなかった。もし数年前に同じことが起きていたら、スペイン政府債は投げ売りされ、株価も暴落しただろう。しかし今は、市場が国家の深刻な政治不安をうまく吸収している。
この信認の投票には固い基礎がある。ユーロ圏の成長は明らかだ。スペイン経済の成長はその平均より速く、対外収支もわずかに黒字だ。それはスペインの回復が、国内需要の増大もそうだが、むしろ供給の増加に依拠していることを意味する。さらに、ユーロ圏の諸制度が一時的な困難に直面する銀行や国家を支援できること、スペインの政治危機はユーロ圏の金融市場に波及しないことを示すものだ。
しかし、他方で、カタルーニャ危機はEUの統合モデルが持つ限界を示している。EUの究極的な基礎は国民国家である、ということだ。政府間合意を実施するのは、EUではなく間接的に、すなわち、各国政府とその行政機関である。
金融政策の分野でそれは顕著だ。その意思決定は政府間ではなくECB理事会であり、そこにおける単純多数決だ。しかし、実施のメカニズムは間接的である。ECBが金融緩和を決定しても、政府債券を購入するのは各国の中央銀行だ。欧州司法裁判所もそうだ。
こうしたアプローチの弱さは、アメリカとの比較でよくわかる。アメリカ連銀も地方制度を持つが、各地方連銀は複数の州を管轄し、州政府やその行政機関と結びつかない。同様に、アメリカの最高裁判所の判事は連邦機関(大統領が候補を示し、上院が承認・否認する)によって指名され、州政府ではない。
EUにとって、加盟諸国に依拠するしか統合過程を進められなかった。諸国は互いに何度も野蛮な戦争をした結果、深刻な不信があったからだ。そしてEUの決定を実施することだけでなく、その正当性が国民国家によるのであるから、それらは個別加盟国の水準を決して超えることはない。
EUが直面しているのは、明確な敵意ではない。「妨害することを含む無関心」である。加盟諸国の多くで、国内事情が重視され、欧州統合は二の次になっている。もはや、ユーロ危機の際に繰り返された、他の選択肢はない、という主張でだれも説得できない。受動的な合意では統合を進められない。市民たちに深まる無関心を克服する新しいモデルを、指導者たちが発見しなければならない。
Bloomberg 2017年10月12日
Italy
Knows How to Solve Catalonia's Problem
By Leonid Bershidsky
受け入れ可能な枠組みの例はイタリアにある。ドイツ語を話す住民が多数を占める南ティロールとローマ政府との協約だ。
自治は、地方議会の権限を明確に認めることに表されている。農業、観光、公的医療、福祉、環境、その他で、地方の法律が優先される。警察と軍事を除く、行政と公共サービスで職員にはエスニック比率が反映されねばならない。裁判所は2言語で行われる。南ティロールの域内で徴収された税は、所得税を含めて、90%が域内にとどまり、付加価値税も70%がとどまる。そのうえで、イタリア政府は補助金を給付している。
この寛大な協約は、もしウクライナ政府が支配権を回復した場合、親ロシア派が占拠した東ウクライナとの可能な合意の例であろう。しかし、ロシアの関与があり、この3年間の戦争で数千人の死者を出したことで、紛争を解決することはむつかしい。カタルーニャは、それが行き過ぎる前に、まだ解決できる。
● トランプ税制改革案
FT October
8, 2017
America’s
tax plan is not worth its name
Lawrence Summers
政府は、法人税を下げれば投資が一気に増える、と考える。しかし、減税で企業がより多くの収益を国内に置くとしても、それを投資することはないだろう。すでに金利は2%を切り、株価は高水準である。資本コストはかつてなく低いからだ。
アメリカがGDPで最も急速な成長を示したのは1950年代、60年代、70年代であるが、当時の法人税は今のほぼ2倍であった。現状でそのような税率は間違いだが、法人税を下げれば過去の高成長がよみがえると思うのはばかげている。次の不況に備えるべきだし、社会保障の給付が増大し、防衛費が増大することにも備えるべきだ。
政府は連銀の量的緩和が資産価格を上昇させていると考えている。もしそうなら、予算赤字で債券の供給を増やすことは、資産価格や経済に深刻なマイナスの影響を与えるだろう。
最後に、公平さの問題がある。法人税の引き下げは企業を助けるが、株式保有は所得分配の上位層に集中しており、彼らの資産を増やす。政府は相続税の問題を議論から外している。
今週、IMF/世銀の総会で、世界中の財務長官と中央銀行総裁が集まる。アメリカ政府が政策決定の際に経済法則や計算を無視する姿勢は、政府官僚たちを苦しい立場に置くだろう。その結果、政府の経済チームが、Twitterだけでなく、自分たちの良心に応えることを期待する。
● ロシアとトルコ
FT October
8, 2017
Russia and
America can reset relations by looking north
Vladislav Inozemtsev
こうしてアメリカとロシアは、ヨーロッパの新興入植地であり、ヨーロッパ文明の2つの新しい翼であった。その歴史的使命は、何世紀にもわたって大西洋をめぐるヨーロッパであったが、それと同様に、「北のベルト地帯」や「太平洋」を中心に観るべきだ。
今、ロシアの政策担当者たちは、不信を抱く「西側」に代えて、「東への旋回」を話題にしている。そして、ロシアの東とは「西側」に至る。こうした「北」という視点こそ、世界を変える秩序につながる。「北側のベルト」諸国、アメリカ、カナダ、EU、ロシアは、天然ガスの26%、石油の20%、核兵器の96%、軍事支出の61%、GDPの48%、特許申請の約3分の2を占める。
現在のロシアは弱い。しかし、もし正しく組み合わせるなら、ロシアは世界のチェス盤を根本的に組み替えるだろう。想像するとよい。自由貿易圏、軍事同盟に入ったロシアを。その市民やエリートは、西側と同様に、北の政治・ビジネスにおけるコミュニティーに参加する。新しい、持続的な、地政学的構造が出現する。
● 3・11と日本人
Bloomberg 2017年10月8日
What Will
It Take for Japan to Change?
By Nisid Hajari
多くの記者と同じように、2011年3月11日、巨大な津波が襲った東北に向かった。そして、多くの記者と違って、彼は東北にもどり続けた。福島原発事故ではなく、大川小学校の74人もの子供がなくなった事件にこだわったのだ。何か月もかけて、子供たちの親にインタビューし、その悲しみと怒りを伝えた。
Richard Lloyd Parry: 日本社会の強さと弱さが、津波そのものより、被災後の姿に現れた。多くの人々が何もかも失って、学校、寺、体育館の床に眠った。彼らがそれに耐え、さらに、結束と連帯感を示したことは、実に驚くべき姿だった。外国記者の多くが、その夕食もない人々から、ビスケットやソーセージをもらった。
世界中のどこでも、このような光景を目にする国は多くないと思う。しかし、私はそのことが示す他の面にも気づいた。多くの日本人は指導者たちに対する期待が非常に低いことだ。それは、長期的に、日本の民主主義システムを腐食させるものだ。あなたはしばしば、政治家と政治に対する絶望に直面するだろう。それはあたかも、一部の日本人にとって、政治は彼らを犠牲者にする自然災害なのだ。
Nisid Hajari: このように大規模な災害が、日本人を行動させるのに必要なのか? 金正恩のミサイル発射実験は、日本人の核兵器に対する感覚を変えるのか?
● 北朝鮮のカルト
PS Oct 9,
2017
The North
Korean Cult
IAN BURUMA
北朝鮮の独裁体制を漫画にするのはとても簡単だ。金正恩の髪型は、1930年代の、プリンのようであり、毛沢東の人民服を着て、その背丈の低い、膨れた体形は、そのまま漫画の人物だ。
しかし、もちろん、北朝鮮の生活は楽しみとはかけ離れている。繰り返される飢餓により人口は破壊され、20万人にも達する政治犯が奴隷のように労働キャンプで暮らす。彼らが幸運であれば、拷問による死を免れる。言論の自由は存在しない。金・キムの神聖さを疑うことも禁止されているが、それだけでなく、生きるためだけにも献身を常に要求される。
多くの北の人々が、強いられて崇拝しているのか、それしか生き延びる仕方を思いつかないのか、あるいは、どこでもそうだが、考えることもなく、自分たちの周りの規範に従うのだろう。しかし、ある種の人々、おそらく、多くの人々が、本当に金王朝のカルト信者なのだ。
金のカルトは、スターリニズムや、キリスト教、儒教の祖先信仰、自生的なシャーマニズム、日本人の天皇崇拝、が混じり合ったものだ。金の父、金正日は、朝鮮の最初の王朝を建てた王が生まれた神聖な山で生まれた、という。金正日は親愛なる指導者と呼ばれ、その誕生は冬を春に変え、天空に明るい星が現れた、という。
これらは全部ばかばかしい話だが、どのような信仰でも奇蹟に関する話は同じようなものだ。重要なことは、それを人々が信じていることだ。
ある種の信仰が受け入れられるのには、しばしば、相応の理由がある。イスラム教やキリスト教は、神の眼から見て平等である、ということを差別された集団や抑圧された人々に広めた。北朝鮮の信仰はそれほど人々を包括的ではないが、エスニックの純粋性という意味で、神聖なナショナリズムを広め、いかなる犠牲を払っても外敵を撃退する。
ポーランドがキリスト教的な自己イメージとして国民的殉教を強く意識するように、朝鮮半島の人々は大国によって支配された歴史を持つ。主に中国だが、ロシアにも、そして最も顕著な支配は、16世紀の野蛮な侵攻以来、日本が行った。アメリカ人は遅れてきたが、北朝鮮がアメリカ帝国主義に示す憎悪は、単に朝鮮戦争だけでなく、外国による弾圧の長い歴史から生じている。
北朝鮮のナショナリズムは、自立・主体思想のカルト、政治的であるが信仰でもある。金王朝を守ることは、外敵への抵抗のシンボルであり、神聖な任務だ。それゆえ妥協は不可能である。ドナルド・トランプは不動産デヴェロッパーであり、何でも交渉できると信じている。ビジネスにおいて神聖なものは何もない。取引するとは、相手を威嚇し、委縮させることであり、北朝鮮を完全に破壊するぞ、と約束する(2000万人が死ぬとしても)。人民の神聖な守護者である金正恩が、そのような威嚇によって説得されるとは思えない。
金は、屈服するより、消滅されることを選ぶかもしれない。しかし、さらに起こるかもしれないリスクがある。トランプの脅迫があると、それを否定する慎重な発言が政府幹部によって出される。しかし、金はそれらをまじめに取らない。トランプの脅しは偽物だ、と。そして無謀な行動、例えば、グアムをミサイルで攻撃する。それに対して、アメリカは報復するしかないだろう。
NYT OCT.
12, 2017
Mr. Trump,
I Live in South Korea, and You’re Scaring Me
By SE-WOONG KOO
私は、鉄道の最寄り駅に集まって釜山へ逃げることを提案した。しかし母は、私が完全な愚か者だ、と言った。戦争が始まったら、皆死ぬだろう。だから私は、衝突が起きる前に、あなたがこの国を出るべきだ、と言い続けている、と。
母は、もう、アメリカが私たちを助けてくれる、とは言わなかった。
● 資本主義に代わる経済体制
NYT OCT.
9, 2017
Giving
Capitalism a Social Conscience
David Bornstein
ユヌスMuhammad
Yunusは、バングラデシュのグラミーン銀行を創設し、2006年、ノーベル平和賞を受賞した。貧困をなくす強力な方法とは、どこにもある人々の満たされない企業家的能力を解放することだ、と断言する。「所有権は、貧しい人々が創ったものではない。」・・・「このシステムでは、貧しい人々は盆栽のようなものだ。森の高い木から落ちた実でも、小さな鉢に植えれば、1メートルしか育たないだろう。それは種のせいではない。」
資本主義は危機にあり、人間の動機に関する間違った考えに依拠している。彼は、「ソーシャル・ビジネス」に、経済における強固な役割を与える。それは「人間的な問題」を解決する「非配当型」の企業である。
Bloomberg 2017年10月9日
It's
Denmark Versus Singapore for the Growth Crown
By Noah Smith
共産主義は終わった。北朝鮮は最後のソビエト型中央計画経済だが、雑種型経済に移行しつつある。キューバやベトナムもそうだ。
しかし、中国やロシア、その他の国も、権威主義的政府と概ね市場化された経済との組み合わせが成功する可能性を示した。これらのシステムは、国家資本主義というまとまりの中で、政府が経済の主要部分、通常は、資源採取、金融、通信分野を支配した。その他は民間部門に委ねるが、国家がいつでも、どこでも、介入する権限を保持した。
概念的に、それは豊かな西側諸国がしていることとそれほど違わない。欧米でもアジアでも、政府が公共サービスを厳しく規制し、道路を建設・維持し、債券市場を概ね保持・保証し、大手銀行を規制・救済し、医療保険制度を運営し、他にも多くの方法で経済に介入する。通信や資源分野も民間が行うが、冷戦期の東西対立ほど大きな差ではない。
民主的国家は福祉国家を築くために大きな政府を持つようになった。さまざまな社会的給付が行われ、アメリカでさえ、かつての「社会主義」という蔑称は消えて、国民保険への支持がある。フィンランド、カナダ、オランダはベーシックインカムを実験している。
中国も成長することで、国民が寛大な福祉国家を求め、さらには民主主義を求めるのか? しかし、これは絶対の法則ではない。シンガポールは成功した権威主義的資本主義のモデルである。今も、政府支出や規制を抑えた、一党支配体制である。中国や他の脱共産主義体制の諸国はシンガポールのようになるだろう。
冷戦の対立に代わって、新しい分割が現れた。社会民主主義国家と権威主義的国家資本主義との対立である。デンマークか、シンガポールか。
今度も民主主義が勝利するのか? 誰にも応えはわからないが、権威主義国家にはいくつかの優位がある。1.再分配や社会的給付には巨額の資金が必要だ。軍事費も削るだろう。2.再分配のために、社会民主主義国は民間部門に介入し、あるいは、保護貿易に偏る。それは成長を損ない、権威主義国家に追いつかれ、抜かれる。3.開放的な、民主主義国家は、現代の情報戦争に弱い。ロシアは西側諸国の政治に今も介入している。民主主義国はロシアや中国のインターネット規制に対抗できない。
かつて権威主義的指導者はスターリニズムを受け入れ、経済をダメにした。同じ失敗は犯さないだろう。
PS Oct 12,
2017
The Case
Against Free-Market Capitalism
NGAIRE WOODS
自由市場型の資本主義に関しては裁判中である。労働党のJeremy
Corbynは、ホームレスの増加、子供の貧困、生存水準以下への賃金切り下げ、を非難する。他方、保守党のTheresa
May首相は、開かれた、革新的な、自由市場型資本主義の可能性を強調する。
4半世紀前に、経済システムをめぐる論争は終結したように見えた。国家管理型の社会主義vsリベラルな民主主義+資本主義、という論争だ。ソ連が崩壊したからだ。
しかし、それから中国の台頭があり、世界金融危機があった。2017年に効率の成長を実現した国(Ethiopia,
Uzbekistan, Nepal, India, Tanzania, Djibouti, Laos, Cambodia, Myanmar, and the
Philippines)はほとんど自由市場ではない。
新しい合意が登場しつつある。1.経済全体の投資と成長を実現するには、政府の介入が必要だ。2.民間部門の指導力は、短期思考から抜け出させるために、脱税、さまざまな機会主義、私腹を肥やす姿勢から転換するべきだ。3.被雇用者の賃金と労働条件を改善しなければならない。職業訓練と技術教育の改善は不可欠だ。4.政府は公共住宅部門にもっと投資しなければならない。5.民営化された公共サービスに関して、もっと低価格で高品質のサービスを供給するには、効果的なルールと規制が必要だ。
成長を高め、機会を広げるには、積極的で、効果的な政府が欠かせない。判決はまだである。
● 新しい政治経済へ
The
Guardian, Wednesday 11 October 2017
How Labour
could lead the global economy out of the 20th century
George Monbiot
われわれはまだ長い20世紀を生きている。余計な技術にこだわっている。内燃式エンジン。火力発電所。工場型農場。余計な政治にこだわっている。不公平な選挙制度。資金提供者やロビイストたちによる政治。本当の政治参加を欠く。
そして、余計な経済学だ。ネオリベラリズムと、それに反対するときまだ主張されるケインズ主義だ。たとえそれが30年やそこらうまく行くとしても、1世紀を経て何に至るのか? 少なくとも、成長は環境の危機へ向かう。
しかし2008年に始まった破裂は、すべてを変化させた。新しい政治運動が既存の権力を脅かし、旧いアイデアではなく新しいアイデアが広まる自由な空間を与えた。
新しいアプローチは、民間の満足と公共の贅沢から始まる。だれもが民間の贅沢を楽しむ物的・環境的な余地はない。テニスコート、プール、庭、美術品の蒐集。そのような資産を、国家でも市場でもなく、コミュニティーが公共物として所有する。公共物は、永久に、コミュニティーにより、そのメンバーが利益を等しく共有できる形で管理される。資本主義システムではない、真の管理形態である。
地代や地価の可能性。コミュニティーによる購入。政府系投資信託に似たローカル版、市民による投資信託。市民参加型予算。参加型経済学と参加型政治学。
今や、過去のいかなる時代よりも、世界を変えるチャンスが存在する。
● 安全保障と国際通貨
PS Oct 11,
2017
The Demise
of Dollar Diplomacy?
BARRY EICHENGREEN
何度も予告されたにもかかわらず、国際的な準備通貨としてドルの役割は衰退しなかった。1969年にロンドンの金プールが崩壊したときも、1970年代に入ってブレトンウッズ体制が崩壊したときも。2001年のテロ攻撃や、2008年の世界金融危機でさえ、ドルの役割は変わらなかった。
外国為替市場の取引でもドルに取引が集中し、中央銀行と政府はドルの準備を保持し続けている。ドルの価値は大きく変わったが、それでも国際市場におけるドルの魅力は衰えなかった。
さらに、アメリカ外交や軍事上の関係は、同盟諸国のドル保有を増やしているかもしれない。アメリカに安全保障を依存する国は、核保有国でアメリカに依存しない国に比べて、多くのドルを保有する。地政学的な関係と国際通貨の選択には結びつきがある。韓国や日本は、アメリカの財務省証券を多く保有し、アメリカ連邦政府の赤字の上限を、議会とは別の意味で、高く維持している。
それゆえ、トランプがその威嚇や暴言の末に、北朝鮮と交渉すれば、その結果はオバマ政権がイランと結んだ核合意に似たものとなるだろう。トランプ政権が北に合意を促すために提供するのは、米軍が朝鮮半島にとどまるレベルを引き下げる、ということだ。あるいは、アジア全般で米軍の関与は低下する。そのことが、中国に地政学的な拡大の機会を与える。
中国が地政学的な指導的役割を引き受ける地域では、その通貨である人民元も拡大するだろう。
● 社会的市場経済
FT October
12, 2017
How to
beat populism in Europe
Philip Stephens
ヨーロッパの戦後の政治指導者たちが1930年代から学んだことは、民主主義と資本主義との持続可能な均衡は、市場の過剰によって破壊される、ということだ。エリートたちにすべての利益を、貧困層にはコストを強いる市場モデルを、市民たちは受け入れなかった。
今、エリートたちは自問するべきだ。政治家が企業の経営者に直結し、中央銀行の幹部が投資銀行家たちに占められ、企業の指導者は何でも好きな報酬を自分に与える。独占企業は富の創造を辞めて、レント・シーキングにふけっている。デジタル時代の巨大資本となったGoogleやAppleはもっと税金を支払うべきだ。移民たちが賃金を引き下げないように、弾力的な市場とともに、もっと十分な職業訓練が必要だ。
ヨーロッパの人民は起こっている。革命を求めてはいないが、政治家たちは公平なバランスを回復せよ。われわれが必要としているものを、社会的市場経済、と呼ぶだろう。
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The Economist October 6th 2016
Europe’s new order
A snap election in Japan:
Abe’s road
Fighting love jihad in
India: Invading the bedroom
Banyan: The long watch
France: Regeneration
(コメント) マクロンの改革は成功するのか? マクロンが既存の右派と左派の政治に不満を持つ市民や若い企業家を取り込んだこと,また,困難な労働市場改革について合意を形成し,推進していることが示されます.しかし,ル・ペンが依拠した高失業地域や移民・2世・3世.難民への不安,郊外都市問題は,解決策が見あたらない,と書きます.
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IPEの想像力 10/16/17
BS・TBSの番組が若者たちの「保守化」を議論していました。20代の若者に,他の世代よりも多くの自民党支持者がいる,というのは意外でした.若者にとって,民主党政権の「失敗」や経済停滞,デフレの時代がイメージとしてあり,自民党・安倍政権は,それを変えたプラスのイメージなのです.保守と革新が入れ替わった世代だと思いました.
右派と左派の対立は,若者にとって,もちろん意味をなさない,むしろ左派が愚かであるなら,右派は普通の主張になってしまったのかもしれません.グローバリゼーションや外国企業は不安材料であり,愛国心は普通の言葉でしかなく,国旗・国歌や自衛隊が論争になることは理解できない話です.
こうしたことに加えて,北朝鮮の核武装や弾道ミサイル発射実験が繰り返されるニュースにあきれ,あるいは,中国経済の躍進や軍事的な拡大と日本との領土紛争を聞けば,保守でも右派でも,日米同盟でも,それは100年前から続く,この国の基礎だと感じているように思います.というか,それが何であれ,それなしに自分たちの就職やそれなりの賃金は維持できないのではないか,という漠とした不安があるのでしょう.
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「保守化」というのは,脱イデオロギーの時代,理想や革命ではない,大義の下に集まることのない,遠くの戦場や秩序の動揺を感じつつ,自分の周りにある安定した暮らしや個々の満足に充足する感覚として定着したようです.声高に議論したり,脅したり,戦争の記憶に頼ることのない,柔らかい宗教のような時代なのです.
左派や革新はどうなったのでしょうか? ソ連が崩壊し,愚かな社会革命や性革命を主張できた,平和と繁栄を若者たちが享受する時代は終わったのだから,もはや意味がない,というわけです.保守vs保守対決の選挙が続くとも予想されます.
しかし,番組が議論していた若者の「保守化」は,親の世代がぎりぎりで維持している暮らしの豊かさを前提にした,苦労しない側の満足感ではないか,と思いました.親が大切に守ってくれる子供たちは幸せです.親たちの格差が拡大し,正規雇用が失われたり,賃金が下がったりしたとしても,そのショックはなかなか子供にまで及びません.
選挙戦で,安倍氏は日本のGDPや株価を挙げて,アベノミクスの成果だと主張しました.これに対して,共産党や立憲民主党は反発しました.労働者の賃金や消費は増えていない.子供の貧困をどうするのか? 派遣労働者や過労死の問題をどう考えているのか? 成長を実現しているのではなく,異常な金融緩和と円安で大企業や資産家に利益をばらまいただけである,と.
これは,若者たちのことを議論しているのだな,と思いました.彼・彼女たちは政治家の論戦を聞いているでしょうか? あなたのお父さんやお母さんの苦労を,働く姿を観ているでしょうか?
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Reviewを読んでください.
社会の豊かさを何で測るべきか? 社会の豊かさを,どのように実現し,どのように分配するべきか? 石油や原発に依存したGDPの成長率を,どこまで重視するべきか? インターネットが普及し,自動運転の電気自動車が普及し,スマホやアプリの開発が経済の中心をなす.AIとロボットの時代が来るのかもしれません.
理想主義やユートピアを実現する想像力を,政治は持つべきです.貧困や栄養不良に沈む子どもたちや,わずかな給与のためにいくつも不安定な職を掛け持ちするお父さん,お母さんに,前進し,飛躍する展望を示せる,能力と勇気のある政治家が登場する機会にしたいです.
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