IPEの果樹園2017 

今週のReview

10/16-21

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カタルーニャの独立 ・・・トランプ税制改革案 ・・・ロシアとトルコ ・・・311と日本人 ・・・プエルトリコ ・・・リアリストの国際政治論 ・・・北朝鮮のカルト ・・・資本主義に代わる経済体制 ・・・トランプと政治システム ・・・世界経済のシナリオ ・・・グローバリゼーション ・・・新しい政治経済へ ・・・中国と電気自動車 ・・・安全保障と国際通貨 ・・・社会的市場経済

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 カタルーニャの独立

The Guardian, Sunday 8 October 2017

Endlessly refighting old wars does nothing to heal a fractured present

Will Hutton

記憶が多すぎる。カタルーニャ、スコットランド、セルビア、ザクセン、あるいは、Brexit推進派が好む、トラファルガー、アジャンクール、エリザベス1世もそうだが、ヨーロッパはますます深刻な、許されざる記憶の乱闘状態に陥っていく。

この大陸中に集団的な呪いが固定し、過去の勝利と現在の鬱屈とが対比される。独立によって、支配権を取り戻し、一連の不正義に復讐することで、正義と繁栄、失われた栄光を回復できる。という。そのような主張は内戦に至るだろう、と欧州委員Günther Oettingerは警告した。世界もこの病から無関係ではない。アメリカでは南軍の旗が振られ、日本では政治家たちが靖国神社に参拝し、あるいは、イスラム聖戦主義者が十字軍への復讐を行う。ヨーロッパこそ、余りにも多くの歴史、余りにも多くの国家があったし、それを誇りにする部族に満ちている。世界の記憶の首都であり、非常に多くの国家が分離と分裂の叫びに脆弱である。

その最新の例がカタルーニャである。ヨーロッパでもっとも繁栄した地域の1つであり、バルセロナは最もダイナミックな都市の1つである。しかし部族的な栄光の記憶を刺激して、かすてぃりあの支配から独立を主張する者がいる。今週、カタルーニャ議会で、その議長Carles Puigdemontが、住民投票の90%が独立を支持した、と演説した。しかし、それは有権者の半分以下である。ゴム弾で投票を阻んだことは間違いだった。スペインの憲法裁判所が示したように、住民投票は違憲である。Puigdemontが独立を宣言しても、EU諸国は承認しなし。国際機関も認めなし。使用する通貨も合意がない。

こうした膨張した記憶は泡のようなものだが、市民的な自治を実現する、国家よりも小さな、文化的に統合されたマイノリティーが心の底に抱く、当然の要求である。しかし、最悪の場合、カタルーニャのように、破壊的なポピュリストたちがその本能、引き延ばされた憎悪、架空の鬱屈、不可能な願い、を利用する。それらを自治政府や民主主義という言葉によって語るのだ。

われわれはもっと明確にその情念の源が過去の不正義の記憶であることを理解するべきだ。敵意のほかには何も生み出さず、存在しない差異を膨張させるだけだ。David RieffIn Praise of Forgettingで述べたように、われわれは非常に破壊的な、記憶のカルトの時代を生きている。記憶することは正しいけれど、あたかも過去を生きる者が、幼年期の不正義に復讐したいと願うことは精神病であるように、記憶に固執することはコミュニティーにとっての精神病である。

閉鎖を求め、エスニックな集団の優越性を主張するために、歴史は操作される。ボスニアの虐殺はその最悪の例だ。過去に敬意を払うべきだが、党派的な目的を神話にすることで賛美してはならない。グローバリゼーションの時代を生きるわれわれは、もっと許し、忘れることを学ぶ必要がある。そして公平な社会を維持するより良いガバナンスの構造を創り出すべきだ。

記憶の過剰には毒がある。

FT October 8, 2017

A Catalan breakaway would make Brexit look like a cake walk

Wolfgang Munchau

The Guardian, Monday 9 October 2017

A peaceful solution to the Catalan crisis is possible, but it must address austerity

Simon Doubleday

The Guardian, Monday 9 October 2017

Spain and Catalonia can find a way forward. Here’s what they must do

Gerry Adams

カタルーニャとスペイン政府との関係は悪化し、Brexitを除けば、1990年代のバルカン半島における戦争以来、ヨーロッパで最大の危機になっている。

カタルーニャの独立運動は何世代も前からあるが、平和的なものだった。スペイン政府は緊急事態に対する鎮圧のための軍隊を送り、月曜日のカタルーニャ議会を違法とし、ラホイ首相はカタルーニャ政府と議会を廃止して、直接統治に代えるだろう、とも警告した。

しかし、こうしたことは独立運動をくじくものではないだろう。むしろ一層の反発、抵抗が生じる。危機において必要な物は指導力である。スペイン国家、カタルーニャ、国際社会、特にEUは、指導力を発揮しなければならない。国際社会が関与を拒み、スペインの内政問題と主張して陰に隠れることは、平和的に解決の可能性を損なう危険がある。1970年代、80年代、90年代の初めまで、アイルランドもそうだった。イギリス政府は交渉過程を阻んだ。

成功の鍵は、前提条件なしに、包括的な対話の過程を進める覚悟を持つことだ。すべての問題を交渉で取り上げること、開かれた議論を行うことだ。国際社会の役割は欠かせない。

FP OOCTOBER 9, 2017

France Won’t Recognize an Independent Catalonia

BY JOHN KESTER

PS Oct 11, 2017

Europe’s Return to Crisis?

DANIEL GROS

カタルーニャで独立派が推進した住民投票は、スペイン政府によって暴力的に否定された。しかし、紛争がエスカレートしたことは、ヨーロッパが再び危機の時代にもどることを意味しない。実際、それはヨーロッパ経済の回復と、達成したものの限界を示した。

カタルーニャの混乱に対して、金融市場は何も反応しなかった。もし数年前に同じことが起きていたら、スペイン政府債は投げ売りされ、株価も暴落しただろう。しかし今は、市場が国家の深刻な政治不安をうまく吸収している。

この信認の投票には固い基礎がある。ユーロ圏の成長は明らかだ。スペイン経済の成長はその平均より速く、対外収支もわずかに黒字だ。それはスペインの回復が、国内需要の増大もそうだが、むしろ供給の増加に依拠していることを意味する。さらに、ユーロ圏の諸制度が一時的な困難に直面する銀行や国家を支援できること、スペインの政治危機はユーロ圏の金融市場に波及しないことを示すものだ。

しかし、他方で、カタルーニャ危機はEUの統合モデルが持つ限界を示している。EUの究極的な基礎は国民国家である、ということだ。政府間合意を実施するのは、EUではなく間接的に、すなわち、各国政府とその行政機関である。

金融政策の分野でそれは顕著だ。その意思決定は政府間ではなくECB理事会であり、そこにおける単純多数決だ。しかし、実施のメカニズムは間接的である。ECBが金融緩和を決定しても、政府債券を購入するのは各国の中央銀行だ。欧州司法裁判所もそうだ。

こうしたアプローチの弱さは、アメリカとの比較でよくわかる。アメリカ連銀も地方制度を持つが、各地方連銀は複数の州を管轄し、州政府やその行政機関と結びつかない。同様に、アメリカの最高裁判所の判事は連邦機関(大統領が候補を示し、上院が承認・否認する)によって指名され、州政府ではない。

EUにとって、加盟諸国に依拠するしか統合過程を進められなかった。諸国は互いに何度も野蛮な戦争をした結果、深刻な不信があったからだ。そしてEUの決定を実施することだけでなく、その正当性が国民国家によるのであるから、それらは個別加盟国の水準を決して超えることはない。

ギリシャでは、行政と司法が弱く、経済の回復を妨げた。ポーランドとハンガリーでは、「非リベラル」の政府が司法の独立性を破壊しつつある。スペインでは、政治システムがカタルーニャの自治権拡大を拒んで紛争になり、中央政府はそれを憲法の秩序に対する破壊と考える。ドイツでさえ、メルケルが政治的な挑戦に直面している。イタリアの世論調査では、ユーロ懐疑派の諸政党を支持する者が半数を超えている。

EUが直面しているのは、明確な敵意ではない。「妨害することを含む無関心」である。加盟諸国の多くで、国内事情が重視され、欧州統合は二の次になっている。もはや、ユーロ危機の際に繰り返された、他の選択肢はない、という主張でだれも説得できない。受動的な合意では統合を進められない。市民たちに深まる無関心を克服する新しいモデルを、指導者たちが発見しなければならない。

PS Oct 12, 2017

Why Catalonia’s Independence Bid Is Failing

SHLOMO BEN-AMI

FP OCTOBER 12, 2017

Catalonia Leaving Spain Would Be Like Illinois Leaving the United States

BY DANIEL RUNDE

スペインの1978年憲法は、アメリカ合衆国憲法と多くの点で似ている。合衆国憲法も分離を認めない。南北戦争の起きた理由の1つは、州が分離できるかどうか、であった。もし、たとえば、ルイジアナやイリノイが分離独立しようとしたら、合衆国連邦政府が介入しただろう。

Bloomberg 20171012

Italy Knows How to Solve Catalonia's Problem

By Leonid Bershidsky

ラホイ首相には良い手がない。カタルーニャの分離問題は住民投票の混乱を治めるだけでは解決しないだろう。カタラン人が生きることのできる枠組みを示す必要がある。

受け入れ可能な枠組みの例はイタリアにある。ドイツ語を話す住民が多数を占める南ティロールとローマ政府との協約だ。

1次世界大戦が終わったとき、1919年のサンジェルマン条約に従って、イタリアは南ティロールをオーストリアから得た。イタリアのファシスト政権は住民の同化を試み、その後、ヒトラーとムッソリーニが、ドイツ帝国への移住を望む者には再定住化を認めた。多くは残ったがアイデンティティを保持した。第2次大戦後、連合諸国はイタリアに南ティロールを残したが、イタリアとオーストリアはその条件を合意した。イタリア語とドイツ語の2か国語が公用語となり、学校ではドイツ語で教育がなされ、ドイツ系家族の名前はイタリア語から元に戻し、自治政府と議会を持ち、その他の特権が認められた。

自治は、地方議会の権限を明確に認めることに表されている。農業、観光、公的医療、福祉、環境、その他で、地方の法律が優先される。警察と軍事を除く、行政と公共サービスで職員にはエスニック比率が反映されねばならない。裁判所は2言語で行われる。南ティロールの域内で徴収された税は、所得税を含めて、90%が域内にとどまり、付加価値税も70%がとどまる。そのうえで、イタリア政府は補助金を給付している。

この寛大な協約は、もしウクライナ政府が支配権を回復した場合、親ロシア派が占拠した東ウクライナとの可能な合意の例であろう。しかし、ロシアの関与があり、この3年間の戦争で数千人の死者を出したことで、紛争を解決することはむつかしい。カタルーニャは、それが行き過ぎる前に、まだ解決できる。


 トランプ税制改革案

FT October 8, 2017

America’s tax plan is not worth its name

Lawrence Summers

アメリカ政府の税制改革案はプランではない。正確さも計算もなく、いろいろなアイデアを混ぜただけだ。予算への影響、経済への影響、分配への意味を、まともな国なら法案を出す前に、慎重に、数量分析するはずだ。そのようなクリアな中身はない。財務省Steven Mnuchin, 経済評議会Gary Cohn、経済諮問委員会Kevin Hassettは、互いに無視し、不誠実で、嘘をついている。

共和党系のエコノミストたちGreg Mankiw, Glenn Hubbard and Martin Feldstein、財務省の元長官たちNick Brady, John Snow and Hank Paulsonの意見に、私は反対である。しかし、トランプ政権が示したほど愚かで、不正直な内容を、これまで彼らが話したり、書いたりしたことはない。政府の税制改革が成長を実質的に高めることはなく、予算赤字が増大し、一層の不均衡に陥るだろう。

政府は、法人税を下げれば投資が一気に増える、と考える。しかし、減税で企業がより多くの収益を国内に置くとしても、それを投資することはないだろう。すでに金利は2%を切り、株価は高水準である。資本コストはかつてなく低いからだ。

アメリカがGDPで最も急速な成長を示したのは1950年代、60年代、70年代であるが、当時の法人税は今のほぼ2倍であった。現状でそのような税率は間違いだが、法人税を下げれば過去の高成長がよみがえると思うのはばかげている。次の不況に備えるべきだし、社会保障の給付が増大し、防衛費が増大することにも備えるべきだ。

政府は連銀の量的緩和が資産価格を上昇させていると考えている。もしそうなら、予算赤字で債券の供給を増やすことは、資産価格や経済に深刻なマイナスの影響を与えるだろう。

最後に、公平さの問題がある。法人税の引き下げは企業を助けるが、株式保有は所得分配の上位層に集中しており、彼らの資産を増やす。政府は相続税の問題を議論から外している。

今週、IMF/世銀の総会で、世界中の財務長官と中央銀行総裁が集まる。アメリカ政府が政策決定の際に経済法則や計算を無視する姿勢は、政府官僚たちを苦しい立場に置くだろう。その結果、政府の経済チームが、Twitterだけでなく、自分たちの良心に応えることを期待する。

NYT OCT. 9, 2017

Why Corporate Tax Cuts Won’t Create Jobs

By MARCUS RYU

私は、ある種の政治家たちが言う「雇用の作り手」である。シリコンヴァレーでソフトウェア企業を創設・経営している。

アメリカの税制は、通常の所得に比べて、キャピタル・ゲインへの課税率が低すぎる。それは多くの偉大な企業家たちBill Gates, Steve Jobs, Jeff Bezosが主張していることだ。

減税は税引き後の利潤を増やすが、その資金は連邦政府から株主に流れるものだ。その結果はおそらく1度きりの株価上昇であろうが、われわれの生産規模や雇用を増やすものではない。もし成長や競争力、雇用に関心があるなら、税制以外にその答えを探すべきだ。


 ロシアとトルコ

FT October 8, 2017

Russia and America can reset relations by looking north

Vladislav Inozemtsev

現在、アメリカとロシアの関係は今までになく悪い。これを改善するには、冷戦時代から引き継いだ、関与の言葉を変えることだ。シリアやドンバスで「協力」することより、ロシアを西側の家族に統合することをもっと語るべきだ。それはロシアをEUNATOに参加させるかどうかではなく、もっと大きなものだ。

西側の歴史は、ヨーロッパ中心の文明化の歴史であった。ヨーロッパからの入植者たちが開拓したのは、アメリカとともに、ロシアであった。20世紀を通じて、ロシアはアメリカと敵対し、モスクワは「西側」ではなく、アメリカと対等であろうとした。ロシアは「西側」に参加することを受け入れられなかったが、「北」という形で、ヨーロッパやカナダと同じ集団を意識した。

こうしてアメリカとロシアは、ヨーロッパの新興入植地であり、ヨーロッパ文明の2つの新しい翼であった。その歴史的使命は、何世紀にもわたって大西洋をめぐるヨーロッパであったが、それと同様に、「北のベルト地帯」や「太平洋」を中心に観るべきだ。

今、ロシアの政策担当者たちは、不信を抱く「西側」に代えて、「東への旋回」を話題にしている。そして、ロシアの東とは「西側」に至る。こうした「北」という視点こそ、世界を変える秩序につながる。「北側のベルト」諸国、アメリカ、カナダ、EU、ロシアは、天然ガスの26%、石油の20%、核兵器の96%、軍事支出の61%GDP48%、特許申請の約3分の2を占める。

現在のロシアは弱い。しかし、もし正しく組み合わせるなら、ロシアは世界のチェス盤を根本的に組み替えるだろう。想像するとよい。自由貿易圏、軍事同盟に入ったロシアを。その市民やエリートは、西側と同様に、北の政治・ビジネスにおけるコミュニティーに参加する。新しい、持続的な、地政学的構造が出現する。

FT October 10, 2017

Turkey and the US face the end of a promising partnership

Philip Gordon

オバマ政権が始まったとき、国務省でヨーロッパ諸国のポートフォリオを観ると、外交におけるもっとも輝く地点はトルコだった。イスラム教徒が多数を占める国で、ダイナミックな、国民に支持された指導者が改革を、すなち、経済の成長、新聞報道の自由、政治への軍介入の追放、を進めていた。

トルコは熱心にEU加盟を望み、アフガニスタン、イラク、中東の和平で、アメリカやEUと協力した。

しかし、10年もたたないが、こうした展望は完全に消滅した。両国の関係はもはや修復できないほどに悪化した。アメリカが憤慨した最近の例は、エルドアンが20167月のクーデタ後に進めてきた5万人以上もの逮捕・拘束で、アメリカ市民もますます多く拘留されていることだ。トルコは次第に拘留中のアメリカ人を取引材料にし始めた。アメリカが亡命者Fethullah Gulenを引き渡さないことを、クーデタを支援した証拠だとトルコは主張している。

エルドアンとその政党は、アメリカを彼らの現実の、もしくは想像上の、敵に対する支援者として敵意を高めている。両国の安全保障上の方針も全く異なるようになった。アメリカはISISとの戦争を重視するが、トルコはシリアとイランにおけるクルド人との戦いを優先する。アメリカはISISが残した真空にイランが浸透することを軽快するが、トルコはイスラム主義グループ、ハマスやムスリム同胞団に明確な支持を表明する。トルコは、アメリカの反発を無視して、NATOに打撃となる、ロシアとの防空システム構築を契約した。

もはやアメリカ人はこうした現実を認めるしかない。トルコをありのままに、すなわち、独自の価値と優先順位を持つ国として、扱うことだ。

Bloomberg 20171011

Why Erdogan Doesn't Care About U.S. Good Will

By Leonid Bershidsky


 311と日本人

Bloomberg 2017108

What Will It Take for Japan to Change?

By Nisid Hajari

Richard Lloyd ParryAsia Editor for the Times of London)は "People Who Eat Darkness," そして"Ghosts of the Tsunami: Death and Life in Japan's Disaster Zone,"の著者である。日本に20年間住んでいる。

多くの記者と同じように、2011311日、巨大な津波が襲った東北に向かった。そして、多くの記者と違って、彼は東北にもどり続けた。福島原発事故ではなく、大川小学校の74人もの子供がなくなった事件にこだわったのだ。何か月もかけて、子供たちの親にインタビューし、その悲しみと怒りを伝えた。

Richard Lloyd Parry: 日本社会の強さと弱さが、津波そのものより、被災後の姿に現れた。多くの人々が何もかも失って、学校、寺、体育館の床に眠った。彼らがそれに耐え、さらに、結束と連帯感を示したことは、実に驚くべき姿だった。外国記者の多くが、その夕食もない人々から、ビスケットやソーセージをもらった。

世界中のどこでも、このような光景を目にする国は多くないと思う。しかし、私はそのことが示す他の面にも気づいた。多くの日本人は指導者たちに対する期待が非常に低いことだ。それは、長期的に、日本の民主主義システムを腐食させるものだ。あなたはしばしば、政治家と政治に対する絶望に直面するだろう。それはあたかも、一部の日本人にとって、政治は彼らを犠牲者にする自然災害なのだ。

Nisid Hajari: このように大規模な災害が、日本人を行動させるのに必要なのか? 金正恩のミサイル発射実験は、日本人の核兵器に対する感覚を変えるのか?

FT October 10, 2017

An unflinching look at Tokyo’s dark side

Leo Lewis


 ショイブレ

FT October 9, 2017

Wolfgang Schäuble warns of another global financial crisis

Guy Chazan in Berlin

Bloomberg 20171010

Schaeuble Leaves, But His Ideas Are Here to Stay

By Leonid Bershidsky


 プエルトリコ

FT October 9, 2017

Puerto Rico after the storm: an island on the edge

Eric Platt in San Juan

先週、ドナルド・トランプ大統領がSan Juan空港に降り立ったとき、36歳のTanya Diazは反対方向を向いていた。彼女の仕事はなくなり、2人の息子と祖母はハリケーン・マリアの被害を逃れてカリフォルニアに飛び立ったからだ。

プエルトリコの人口340万人の内、40万以上がこの数年で流出する、と推定されている。このカリブ海の島はすでに債務を支払いないが、才能ある人々が流出した後、その経済の再建はさらに難しくなるだろう。

「食べ物も、水も、見つけるのが難しい。」と、ミズ・ディアスは言う。「ガソリンスタンドで4時間待った。子供たちには学校もない。」

Barry Bosworththe Brookings Institution)は、「移民として出国するのは苦しいだろうが、島の多くの住民にとって最善の選択肢だ。」という。推定では、移民流出が倍増し、数年で人口は300万人を切り、経済問題がさらに顕著になる。

「ハリケーンが来る前に、プエルトリコは大幅な、持続不可能な、債務超過があった。債務の70もしくは80%を償却する候補であった。」と元財務長官Lawrence Summersは言う。「今や、それが100%と言うのも当然だ。」

FT October 9, 2017

Overhaul fund manager incentives to win best value for investors

Abigail Johnson

どうすれば手数料によって、投資家の利益を資産管理者に反映できるか?


 リアリストの国際政治論

PS Oct 9, 2017

The False Narrative of Realpolitik

LEE HOWELL

トランプの国連演説は、特に、国益と主権を強調した点は、注意を要する。彼は、アメリカ・ファーストだけでなく、他国にも国益を重視するように求めた。「強い、独立した諸国が、安全保障、繁栄、平和を、自国にとって、そして世界にとって維持すること」を成功の条件とみなした。

アメリカ外交はリアル・ポリティークにもどるが、歴史家John Bewはこうした外交の振れ、循環を説明した。しかし、リアル・ポリティークは、そのアイデアや規範から切り離して、国益追求だけでは意味がない。この概念は、1848年にヨーロッパの諸革命から生まれた。それは、ドイツの将来の統一だけでなく、より大きな政治目標として、諸大国間の妥協による国際秩序を目指した。

言葉や物語は、国際事情に影響する。世界経済フォーラムで、中国の習近平主席が示した理解もそうだ。グローバリゼーションを擁護し、同時に、各国はその目標を追求しつつ、より広い文脈で、他国を犠牲にしてはならない、と。

世界統合の利益を保持しつつ、他方で、その共有された義務は、ローカルな、ナショナルな関心に制約されている。SNSに生きる我々も、アイデンティティを共有しておらず、集団的な目標を追求することはあてにならない。

FP OOCTOBER 9, 2017

An Award for the Collapse of Nuclear Disarmament

BY JEFFREY LEWIS

The International Campaign to Abolish Nuclear Weapons (ICAN)がノーベル平和賞を受賞した。私はそれを歓迎したが、多くの防衛関係者はそうではなかった。アメリカは核兵器禁止条約に署名しない。

ICANは、新しい時代の始まりではなく、核軍縮に向けた情熱の無駄な目標だ、というのにも理由がある。数年前、バラク・オバマは「核なき世界」を唱えてノーベル賞を得た。しかし、オバマは何もしなかった。

現在の核軍縮の動きは、2007年、George Shultzらがthe Wall Street Journalで、核兵器廃絶の道を唱えたことだった。それはレーガンとゴルバチョフのレイキャビク合意に基づくものだった。

オバマとICANの平和賞は、この運動の2つのブックエンドである。

FP OOCTOBER 9, 2017

What Realists Don’t Understand About Law

BY OONA HATHAWAY, SCOTT J. SHAPIR

PS Oct 10, 2017

A New Front in Asia’s Water War

BRAHMA CHELLANEY

YaleGlobal, Tuesday, October 10, 2017

Great Power Divisions Stymie Nonproliferation Debate

Richard Weitz

Bloomberg 20171010

Trump's Madman Theory Is Simply Crazy

By Hal Brands

YaleGlobal, Thursday, October 12, 2017

The Kyrgyz Presidential Elections: Peaceful Transfer With 5 Caveats

Michał Romanowski


 北朝鮮のカルト

PS Oct 9, 2017

The North Korean Cult

IAN BURUMA

北朝鮮の独裁体制を漫画にするのはとても簡単だ。金正恩の髪型は、1930年代の、プリンのようであり、毛沢東の人民服を着て、その背丈の低い、膨れた体形は、そのまま漫画の人物だ。

しかし、もちろん、北朝鮮の生活は楽しみとはかけ離れている。繰り返される飢餓により人口は破壊され、20万人にも達する政治犯が奴隷のように労働キャンプで暮らす。彼らが幸運であれば、拷問による死を免れる。言論の自由は存在しない。金・キムの神聖さを疑うことも禁止されているが、それだけでなく、生きるためだけにも献身を常に要求される。

多くの北の人々が、強いられて崇拝しているのか、それしか生き延びる仕方を思いつかないのか、あるいは、どこでもそうだが、考えることもなく、自分たちの周りの規範に従うのだろう。しかし、ある種の人々、おそらく、多くの人々が、本当に金王朝のカルト信者なのだ。

金のカルトは、スターリニズムや、キリスト教、儒教の祖先信仰、自生的なシャーマニズム、日本人の天皇崇拝、が混じり合ったものだ。金の父、金正日は、朝鮮の最初の王朝を建てた王が生まれた神聖な山で生まれた、という。金正日は親愛なる指導者と呼ばれ、その誕生は冬を春に変え、天空に明るい星が現れた、という。

これらは全部ばかばかしい話だが、どのような信仰でも奇蹟に関する話は同じようなものだ。重要なことは、それを人々が信じていることだ。

ある種の信仰が受け入れられるのには、しばしば、相応の理由がある。イスラム教やキリスト教は、神の眼から見て平等である、ということを差別された集団や抑圧された人々に広めた。北朝鮮の信仰はそれほど人々を包括的ではないが、エスニックの純粋性という意味で、神聖なナショナリズムを広め、いかなる犠牲を払っても外敵を撃退する。

ポーランドがキリスト教的な自己イメージとして国民的殉教を強く意識するように、朝鮮半島の人々は大国によって支配された歴史を持つ。主に中国だが、ロシアにも、そして最も顕著な支配は、16世紀の野蛮な侵攻以来、日本が行った。アメリカ人は遅れてきたが、北朝鮮がアメリカ帝国主義に示す憎悪は、単に朝鮮戦争だけでなく、外国による弾圧の長い歴史から生じている。

北朝鮮のナショナリズムは、自立・主体思想のカルト、政治的であるが信仰でもある。金王朝を守ることは、外敵への抵抗のシンボルであり、神聖な任務だ。それゆえ妥協は不可能である。ドナルド・トランプは不動産デヴェロッパーであり、何でも交渉できると信じている。ビジネスにおいて神聖なものは何もない。取引するとは、相手を威嚇し、委縮させることであり、北朝鮮を完全に破壊するぞ、と約束する(2000万人が死ぬとしても)。人民の神聖な守護者である金正恩が、そのような威嚇によって説得されるとは思えない。

金は、屈服するより、消滅されることを選ぶかもしれない。しかし、さらに起こるかもしれないリスクがある。トランプの脅迫があると、それを否定する慎重な発言が政府幹部によって出される。しかし、金はそれらをまじめに取らない。トランプの脅しは偽物だ、と。そして無謀な行動、例えば、グアムをミサイルで攻撃する。それに対して、アメリカは報復するしかないだろう。

(後半へ続く)