前半から続く)

FP OCTOBER 10, 2017

How to Succeed in Business in North Korea

BY JUSTIN HASTINGS

FT October 11, 2017

How Donald Trump’s Iran policy has emboldened North Korea

Roula Khalaf

トランプは、2015年の主要諸国と交わした核合意をイランが守っていない、と主張した。もしあなたが金正恩なら、自分は正しかったと思うだろう。アメリカは信用できない。たとえ国際条約に署名しても、それを破るのだ、と。

金は中東から学んだ。イラクのSaddam Hussein、リビアのMuammer Gaddafi、と同じ運命をたどらないためには、アメリカに核攻撃できる能力が必要だ、と。トランプがイランとの合意を破棄すれば、その確信は強まるだろう。

FP OCTOBER 11, 2017

Your Apocalyptic Fantasies Aren’t Helping the North Korea Crisis

BY MICAH ZENKO

アメリカが北朝鮮に軍事攻撃する可能性は、かつてなく高い。ワシントンの北朝鮮に対する外交を考えるとき、次の6つの基本的質問を考えておくべきだ。

1.アメリカは、金正恩が合理的な判断や決定ができると考えているか? そうでなければ交渉は始まらない。

2.アメリカが交渉する前に、北朝鮮の行動で最小限変わる者は何か? 挑発行為、弾道ミサイルの発射実験、核開発計画のすべて。それは誰が、どうやって、検証するのか?

3.アメリカは北朝鮮に何をさせたいのか? トランプは、北朝鮮のいかなる威嚇も容認しない、という。しかし、この何十年間も、北はアメリカや同盟諸国を脅してきた。

4.アメリカは北朝鮮の軍事能力をどの水準まで認めるのか? 北の核開発計画を「凍結」するだけでは受け入れない、という。しかし、アメリカはイランに対するIAEAの検証も信用しない。

5.金正恩が合意することを受け入れるには、最低限、どのような誘因を与えるのか? しかし、ワシントンは金正恩の考えを理解しようとしない。あたかも、そうすることは共感することと考えて、認めないからだ。しかし、敵の視点を理解せずに、飴と鞭を用いた現実的交渉はできない。

6.トランプ政権にとっての交渉の期限と最終目的とは何か? これまでの大統領は許さない、受け入れない、と言いながら失敗してきた、とトランプは批判した。トランプはいつまで我慢するのか?

FP OCTOBER 11, 2017

Seven Reasons Why Putting U.S. Nukes Back in South Korea Is a Terrible Idea

BY JON WOLFSTHAL, TOBY DALTON

北に対抗して、韓国に米軍が核兵器を再配備するのは間違いだ。

FP OCTOBER 11, 2017

Trump’s Empty North Korea Threats Will Lead to Humiliation or War

BY PHILIP GORDON

NYT OCT. 12, 2017

Trump’s Scary Strategy on North Korea

Nicholas Kristof

NYT OCT. 12, 2017

Mr. Trump, I Live in South Korea, and You’re Scaring Me

By SE-WOONG KOO

私は家族に戦争が始まったら逃げることを話し合った。しかし父は、すぐに道路は閉鎖される、と言った。私は、鉄道の最寄り駅に集まって釜山へ逃げることを提案した。しかし母は、私が完全な愚か者だ、と言った。戦争が始まったら、皆死ぬだろう。だから私は、衝突が起きる前に、あなたがこの国を出るべきだ、と言い続けている、と。

母は、もう、アメリカが私たちを助けてくれる、とは言わなかった。


 デジタル通貨

PS Oct 9, 2017

Crypto-Fool’s Gold?

KENNETH ROGOFF


 ノーベル経済学賞

NYT OCT. 9, 2017

The Art of Thinking Well

David Brooks

ノーベル経済学賞を受賞したRichard Thalerは、人々が常に合理的に行動するのではないこと、われわれがシステム的に間違いを犯すこと、を明確にした。

しかし、行動経済学者たちは、われわれの非合理性の表面をひっかいたに過ぎない。

Bloomberg 20171010

Why Conservatives Should Celebrate Thaler's Nobel

By Tyler Cowen

VOX 12 October 2017

Richard Thaler, Nobel laureate

Hersh Shefrin


 資本主義に代わる経済体制

NYT OCT. 9, 2017

Giving Capitalism a Social Conscience

David Bornstein

ユヌスMuhammad Yunusは、バングラデシュのグラミーン銀行を創設し、2006年、ノーベル平和賞を受賞した。貧困をなくす強力な方法とは、どこにもある人々の満たされない企業家的能力を解放することだ、と断言する。「所有権は、貧しい人々が創ったものではない。」・・・「このシステムでは、貧しい人々は盆栽のようなものだ。森の高い木から落ちた実でも、小さな鉢に植えれば、1メートルしか育たないだろう。それは種のせいではない。」

資本主義は危機にあり、人間の動機に関する間違った考えに依拠している。彼は、「ソーシャル・ビジネス」に、経済における強固な役割を与える。それは「人間的な問題」を解決する「非配当型」の企業である。

Bloomberg 2017109

It's Denmark Versus Singapore for the Growth Crown

By Noah Smith

共産主義は終わった。北朝鮮は最後のソビエト型中央計画経済だが、雑種型経済に移行しつつある。キューバやベトナムもそうだ。

しかし、中国やロシア、その他の国も、権威主義的政府と概ね市場化された経済との組み合わせが成功する可能性を示した。これらのシステムは、国家資本主義というまとまりの中で、政府が経済の主要部分、通常は、資源採取、金融、通信分野を支配した。その他は民間部門に委ねるが、国家がいつでも、どこでも、介入する権限を保持した。

概念的に、それは豊かな西側諸国がしていることとそれほど違わない。欧米でもアジアでも、政府が公共サービスを厳しく規制し、道路を建設・維持し、債券市場を概ね保持・保証し、大手銀行を規制・救済し、医療保険制度を運営し、他にも多くの方法で経済に介入する。通信や資源分野も民間が行うが、冷戦期の東西対立ほど大きな差ではない。

民主的国家は福祉国家を築くために大きな政府を持つようになった。さまざまな社会的給付が行われ、アメリカでさえ、かつての「社会主義」という蔑称は消えて、国民保険への支持がある。フィンランド、カナダ、オランダはベーシックインカムを実験している。

中国も成長することで、国民が寛大な福祉国家を求め、さらには民主主義を求めるのか? しかし、これは絶対の法則ではない。シンガポールは成功した権威主義的資本主義のモデルである。今も、政府支出や規制を抑えた、一党支配体制である。中国や他の脱共産主義体制の諸国はシンガポールのようになるだろう。

冷戦の対立に代わって、新しい分割が現れた。社会民主主義国家と権威主義的国家資本主義との対立である。デンマークか、シンガポールか。

今度も民主主義が勝利するのか? 誰にも応えはわからないが、権威主義国家にはいくつかの優位がある。1.再分配や社会的給付には巨額の資金が必要だ。軍事費も削るだろう。2.再分配のために、社会民主主義国は民間部門に介入し、あるいは、保護貿易に偏る。それは成長を損ない、権威主義国家に追いつかれ、抜かれる。3.開放的な、民主主義国家は、現代の情報戦争に弱い。ロシアは西側諸国の政治に今も介入している。民主主義国はロシアや中国のインターネット規制に対抗できない。

かつて権威主義的指導者はスターリニズムを受け入れ、経済をダメにした。同じ失敗は犯さないだろう。

PS Oct 12, 2017

The Case Against Free-Market Capitalism

NGAIRE WOODS

自由市場型の資本主義に関しては裁判中である。労働党のJeremy Corbynは、ホームレスの増加、子供の貧困、生存水準以下への賃金切り下げ、を非難する。他方、保守党のTheresa May首相は、開かれた、革新的な、自由市場型資本主義の可能性を強調する。

4半世紀前に、経済システムをめぐる論争は終結したように見えた。国家管理型の社会主義vsリベラルな民主主義+資本主義、という論争だ。ソ連が崩壊したからだ。

しかし、それから中国の台頭があり、世界金融危機があった。2017年に効率の成長を実現した国(Ethiopia, Uzbekistan, Nepal, India, Tanzania, Djibouti, Laos, Cambodia, Myanmar, and the Philippines)はほとんど自由市場ではない。

新しい合意が登場しつつある。1.経済全体の投資と成長を実現するには、政府の介入が必要だ。2.民間部門の指導力は、短期思考から抜け出させるために、脱税、さまざまな機会主義、私腹を肥やす姿勢から転換するべきだ。3.被雇用者の賃金と労働条件を改善しなければならない。職業訓練と技術教育の改善は不可欠だ。4.政府は公共住宅部門にもっと投資しなければならない。5.民営化された公共サービスに関して、もっと低価格で高品質のサービスを供給するには、効果的なルールと規制が必要だ。

成長を高め、機会を広げるには、積極的で、効果的な政府が欠かせない。判決はまだである。


 トランプと政治システム

FT October 10, 2017

Donald Trump is more than a blip in history

Gideon Rachman

トランプを抑制する既存の民主的システムは効果的に働いている、という楽観がある。トランプはアメリカ政治に長期的な影響を何も残さない、というわけだ。しかし、安心するのはまだ早いだろう。

トランプ政権のスタッフは安定せず、指名すべき重要ポストを埋めることもできていない。狙ったような政策を成立させ、完全に実施することもできなかった。政権によるメディア批判も、もしトルコのエルドアンや、中国の習近平であれば、政府にとって好ましくないジャーナリストたちは職を失い、投獄されただろう。しかし、アメリカではできない。

アメリカのシステムはトランプ主義を拒んだのだ。ただしトランプが、北朝鮮との戦争を始めることや、再選されることも、ありえないことではない。アメリカのエスタブリシュメントは、そもそもトランプの当選する可能性を考えられず、人々に広まる政治的ムードを読み違えた。

その点で、トランプ主義の可能性は彼の政権を超えて持続するものかもしれない。アラバマの共和党候補をめぐる予備選挙で、党の指導部が推す候補を極右候補が破った。多くの有権者はワシントンを破壊するという使命を支持しているのだ。

トランプよりさらに右の、バノンが示したアイデンティティ型ナショナリズムは、トランプ大統領を超えて、アメリカ政治に長期の影響を残すだろう。それが十分なイデオロギー的スタッフと活動的な政治要員をともなうトランプ主義となったとき、現在の政権以上に、断固とした、危険な政治勢力が誕生する。

NYT OCT. 11, 2017

The Bannon Revolution

Ross Douthat

NYT OCT. 11, 2017

Trump’s Tough Talk on Nafta Suggests Pact’s Demise Is Imminent

By ANA SWANSON

FP OCTOBER 12, 2017

The Donald Trump-Kaiser Wilhelm Parallels Are Getting Scary

BY STEPHEN M. WALT

まだこの時点でも、新聞は、ぶざまで不安定な大統領にアメリカが「指導」されている、と書いている。すでに9か月が経って、共和党の外交専門家たちは、トランプが大統領執務室にはふさわしくない、という選挙戦中の警告が正しかった、と思っている。

アメリカにとっては初めてでも、世界中には、愚か者やもっとひどい人物が政府の高い地位を占めたことがある。しばしば比較されるのは、イタリアのベルルスコーニSilvio Berlusconi元首相だが、他にもBenito Mussolini, Carlos Menem, and Jean-Bédel Bokassaが挙げられる。

しかし、私にとって最も印象深い比較は、第45代アメリカ大統領とドイツ皇帝ヴィルヘルム2世である。その人間性だけでなく、国が直面した状況にも、意義深い比較を感じるからだ。多くの類似点と、いくつかの相違点がある。

個人的な類似点は、その愚かさ、経験から学ばない、暴言、など。国としては、軍事力の大きく依存し、外交を歪めた。戦略的な課題を理解できず、歴史を誤解している。政治や外交を軍人に委ね、彼らは脅威を誇張した。しかも、国家の財政基盤を損なった。すなわち、他国よりも軍事支出を増やし、国民には多くの社会給付を与え、富裕層は税金を嫌い、それを回避する政治力を得ていた。

トランプのアメリカがヴィルヘルム2世のドイツと異なるのは、今なお愚かな指導者が権力の舵を握っていることだ。


 金融政策

FT October 10, 2017

The Federal Reserve treads a fine line on monetary tightening

Martin Wolf

アメリカ連銀は、徐々に金融引き締めを進める、としている。なぜ雇用水準が回復し、完全雇用に近づいても、インフレが起きないのか?

FT October 11, 2017

The puzzling, persistent weakness of wages

FT October 11, 2017

Central bankers face a crisis of confidence as models fail

Chris Giles in Washington

FT October 12, 2017

The ECB’s self-imposed limits complicate its QE exit

Lorenzo Bini Smaghi


 インドの貨幣改革

FT October 10, 2017

Modi’s pursuit of black money proves drag on India’s economy

Amy Kazmin in New Delhi


 世界経済のシナリオ

PS Oct 10, 2017

Three Scenarios for the Global Economy

NOURIEL ROUBINI

過去数年、世界経済は加速の時期と減速の時期とを振り子のように続けてきた。加速の1年を経て、次の減速へ向かうのか? あるいは、景気回復が続くのか? 2015年の夏や2016年の初めを思い出すことだ。そのころ投資家たちは、中国のハード・ランディングを恐れ、アメリカ連銀がゼロ金利政策をあまりにも急速に離脱することを恐れ、アメリカGDPの拡大の遅さや原油価格の低さを懸念していた。

次の3年ほどについて、世界経済に3つのシナリオを私は考える。強気のシナリオでは、世界の4大経済、システミックに重要な、中国、ユーロ圏、日本、アメリカが構造改革を進めて、潜在成長力を高め、金融的脆弱性に対処する。

弱気のシナリオでは、その反対だ。中国は、共産党の全国大会を改革の推進に利用せず、問題を先送りする。過剰融資と過剰生産力の道をそのまま進む。ユーロ圏は、一層の統合に失敗し、各国の構造改革は政治的な制約によって進まない。日本の低成長経路は持続し、供給側の改革も貿易自由化も消滅する。アメリカのトランプ政権は、富裕層に有利な減税、貿易保護主義、移民規制を続ける。それは潜在成長を損なうだろう。過度の財政刺激が赤字と債務の膨張、高金利とドル高をもたらす。そのことがまた成長を損なうだろう。トリガー・ハッピーのトランプが北朝鮮との戦争を始めれば、アメリカ経済の見通しはさらに悪化する。

3は、強気と弱気の間のどこかである。私は、これが最も起こりそうだと思う。中国も、ユーロ圏も、日本も、アメリカも、マドル・スルー(どうにか妥協してやっていく)を続けるだろう。しかし、この「平凡なmediocre」経済パフォーマンスは、そのまま拡大し続けることはない。不安定な均衡状態であり、経済、金融、地政学上のショックに脆弱である。

NYT OCT. 12, 2017

We’re About to Fall Behind the Great Depression

David Leonhardt


 グローバリゼーション

PS Oct 10, 2017

Growth Without Industrialization?

DANI RODRIK

工業化が成長を加速したのには理由がある。1.技術の吸収が容易、2.高度なスキルを要しない、3.製品の輸出によって生産・雇用を拡大できる。

工業化というアクセルを失ったアフリカなどの低所得諸国は、工業部門以外で、この数年、生産性の上昇を実現したが、その成長持続には限界があるだろう。

PS Oct 11, 2017

Globalization for All

ANABEL GONZÁLEZ

近年、貿易摩擦とその関心の高まりは、貿易が実際にどのように作用するのか、総所得、分配、調整コスト、その他を理解するために、多くの研究を生んだ。政府はますます、労働市場政策やその他の介入により、貿易のマイナスの効果を緩和する方策を探している。グローバリゼーションをすべてのものの利益にするため、必要な知識を学者たちは求めている。

WTOPublic Forum 2017における最近テーマは。「新聞記事の背後で」作用している貿易のダイナミズムを理解すること、であった。WTOの最近の出版物(World Trade Report 2017)でも、貿易は雇用水準を減らさないが、影響を受ける労働者の分野とタイプが問題である。貿易の利益は地域の特徴や労働者の差異に依存する。

IMF、世界銀行、WTOによる研究(Making Trade an Engine of Growth for All)は、貿易の潜在的な利益を最大にするための国際政策や制度改革を示した。Mary Hallward-Driemeier and Gaurav Nayyarは、発展途上諸国の企業や労働者が、技術革新とグローバリゼーションにおいて機会をつかむためになすべきことを考察している。

VOX 11 October 2017

Industrial robots and inclusive growth

Jörg Mayer


 新しい政治経済へ

The Guardian, Wednesday 11 October 2017

How Labour could lead the global economy out of the 20th century

George Monbiot

われわれはまだ長い20世紀を生きている。余計な技術にこだわっている。内燃式エンジン。火力発電所。工場型農場。余計な政治にこだわっている。不公平な選挙制度。資金提供者やロビイストたちによる政治。本当の政治参加を欠く。

そして、余計な経済学だ。ネオリベラリズムと、それに反対するときまだ主張されるケインズ主義だ。たとえそれが30年やそこらうまく行くとしても、1世紀を経て何に至るのか? 少なくとも、成長は環境の危機へ向かう。

しかし2008年に始まった破裂は、すべてを変化させた。新しい政治運動が既存の権力を脅かし、旧いアイデアではなく新しいアイデアが広まる自由な空間を与えた。

新しいアプローチは、民間の満足と公共の贅沢から始まる。だれもが民間の贅沢を楽しむ物的・環境的な余地はない。テニスコート、プール、庭、美術品の蒐集。そのような資産を、国家でも市場でもなく、コミュニティーが公共物として所有する。公共物は、永久に、コミュニティーにより、そのメンバーが利益を等しく共有できる形で管理される。資本主義システムではない、真の管理形態である。

地代や地価の可能性。コミュニティーによる購入。政府系投資信託に似たローカル版、市民による投資信託。市民参加型予算。参加型経済学と参加型政治学。

今や、過去のいかなる時代よりも、世界を変えるチャンスが存在する。


 中国と電気自動車

FT October 11, 2017

Under Xi Jinping, China is turning back to dictatorship

Jamil Anderlini

NYT OCT. 11, 2017

Asia Dreams in Skyscrapers

By JASON M. BARR

FT October 12, 2017

Electric cars: China’s highly charged power play

Charles Clover in Beijing

中国には内燃式エンジンから離脱するのを急ぐ多くの理由がある。大気汚染、石油輸入と線らy区的な脆弱さ、国内自動車企業の不振。

先月、北京はグローバルな内燃式エンジンからの離脱運動に強力な支援策を発表した。自動車メーカーにバッテリー式の電気自動車を生産する割当てを決め、それを次第に増大させる。同時に、すべての伝統的な自動車の生産には、他の生産者から電気自動車EVクレジットの購入を求める。

世界最大の、最も大きな利潤をもたらす市場として、中国は自動車産業の強大な影響力を持っている。すでに電気自動車でも世界最大の市場である。政府は全国に充電ステーションを建設した。

産業政策は試行錯誤であった。1960年代以来、日本、韓国の成功に倣い、中国は電気自動車の飛躍を目指した。さらに、それは将来の産業政策“Made In China 2025”1つに過ぎない。中国は自動車産業の育成に失敗し、むしろスマートフォンやコンピューターで成功した。複雑な内燃式エンジンではなく、電気自動車を中国南部で生産する新しい商品として狙っている。

市場介入の結果は、鉄鉱から太陽電池まで、しばしば過剰生産になった。電気自動車が次だ、と恐れる声もある。北京大学のMichael Pettisは、中国は産業政策で資金を大きく失っている、という。革新的な企業は、民間部門で成功している。

電気自動車の割当てやクレジット制度に対して、問題がある。消費者は電気自動車を買わないかもしれない。国家による中央計画経済と違い、すでに消費者は政府の指導に従わない。

NYT OCT. 12, 2017

In Hong Kong, New Ways of Caving In to China

Yi-Zheng Lian


 安全保障と国際通貨

PS Oct 11, 2017

The Demise of Dollar Diplomacy?

BARRY EICHENGREEN

何度も予告されたにもかかわらず、国際的な準備通貨としてドルの役割は衰退しなかった。1969年にロンドンの金プールが崩壊したときも、1970年代に入ってブレトンウッズ体制が崩壊したときも。2001年のテロ攻撃や、2008年の世界金融危機でさえ、ドルの役割は変わらなかった。

外国為替市場の取引でもドルに取引が集中し、中央銀行と政府はドルの準備を保持し続けている。ドルの価値は大きく変わったが、それでも国際市場におけるドルの魅力は衰えなかった。

さらに、アメリカ外交や軍事上の関係は、同盟諸国のドル保有を増やしているかもしれない。アメリカに安全保障を依存する国は、核保有国でアメリカに依存しない国に比べて、多くのドルを保有する。地政学的な関係と国際通貨の選択には結びつきがある。韓国や日本は、アメリカの財務省証券を多く保有し、アメリカ連邦政府の赤字の上限を、議会とは別の意味で、高く維持している。

それゆえ、トランプがその威嚇や暴言の末に、北朝鮮と交渉すれば、その結果はオバマ政権がイランと結んだ核合意に似たものとなるだろう。トランプ政権が北に合意を促すために提供するのは、米軍が朝鮮半島にとどまるレベルを引き下げる、ということだ。あるいは、アジア全般で米軍の関与は低下する。そのことが、中国に地政学的な拡大の機会を与える。

中国が地政学的な指導的役割を引き受ける地域では、その通貨である人民元も拡大するだろう。


 社会的市場経済

FT October 12, 2017

How to beat populism in Europe

Philip Stephens

ヨーロッパの戦後の政治指導者たちが1930年代から学んだことは、民主主義と資本主義との持続可能な均衡は、市場の過剰によって破壊される、ということだ。エリートたちにすべての利益を、貧困層にはコストを強いる市場モデルを、市民たちは受け入れなかった。

今、エリートたちは自問するべきだ。政治家が企業の経営者に直結し、中央銀行の幹部が投資銀行家たちに占められ、企業の指導者は何でも好きな報酬を自分に与える。独占企業は富の創造を辞めて、レント・シーキングにふけっている。デジタル時代の巨大資本となったGoogleAppleはもっと税金を支払うべきだ。移民たちが賃金を引き下げないように、弾力的な市場とともに、もっと十分な職業訓練が必要だ。

ヨーロッパの人民は起こっている。革命を求めてはいないが、政治家たちは公平なバランスを回復せよ。われわれが必要としているものを、社会的市場経済、と呼ぶだろう。

NYT OCT. 12, 2017

White Nationalism Is the Real Threat to the West. Not Islam.

By SASHA POLAKOW-SURANSKY

FP OCTOBER 12, 2017

The Pro-Free Speech Way to Fight Fake News

BY SUZANNE NOSSEL


 社会民主党の失敗

SPIEGEL ONLINE 10/12/2017

Seven Months with Martin Schulz

The Anatomy of a Failed Campaign

By Markus Feldenkirchen


 トランプの難民政策

FP OCTOBER 12, 2017

The Trump Administration Wants Refugees to Fit In or Stay Out

BY LAUREN WOLFE

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The Economist October 6th 2016 

Europe’s new order

A snap election in Japan: Abe’s road

Fighting love jihad in India: Invading the bedroom

Banyan: The long watch

France: Regeneration

(コメント) マクロンの改革は成功するのか? マクロンが既存の右派と左派の政治に不満を持つ市民や若い企業家を取り込んだこと,また,困難な労働市場改革について合意を形成し,推進していることが示されます.しかし,ル・ペンが依拠した高失業地域や移民・2世・3世.難民への不安,郊外都市問題は,解決策が見あたらない,と書きます.

日本の解散・選挙では経済改革の停滞を懸念します.イスラム教徒と結婚するインドの女性に対する非難,北朝鮮に対する慎重な静観,は面白いです.

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IPEの想像力 10/16/17

BSTBSの番組が若者たちの「保守化」を議論していました。20代の若者に,他の世代よりも多くの自民党支持者がいる,というのは意外でした.若者にとって,民主党政権の「失敗」や経済停滞,デフレの時代がイメージとしてあり,自民党・安倍政権は,それを変えたプラスのイメージなのです.保守と革新が入れ替わった世代だと思いました.

右派と左派の対立は,若者にとって,もちろん意味をなさない,むしろ左派が愚かであるなら,右派は普通の主張になってしまったのかもしれません.グローバリゼーションや外国企業は不安材料であり,愛国心は普通の言葉でしかなく,国旗・国歌や自衛隊が論争になることは理解できない話です.

こうしたことに加えて,北朝鮮の核武装や弾道ミサイル発射実験が繰り返されるニュースにあきれ,あるいは,中国経済の躍進や軍事的な拡大と日本との領土紛争を聞けば,保守でも右派でも,日米同盟でも,それは100年前から続く,この国の基礎だと感じているように思います.というか,それが何であれ,それなしに自分たちの就職やそれなりの賃金は維持できないのではないか,という漠とした不安があるのでしょう.

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「保守化」というのは,脱イデオロギーの時代,理想や革命ではない,大義の下に集まることのない,遠くの戦場や秩序の動揺を感じつつ,自分の周りにある安定した暮らしや個々の満足に充足する感覚として定着したようです.声高に議論したり,脅したり,戦争の記憶に頼ることのない,柔らかい宗教のような時代なのです.

左派や革新はどうなったのでしょうか? ソ連が崩壊し,愚かな社会革命や性革命を主張できた,平和と繁栄を若者たちが享受する時代は終わったのだから,もはや意味がない,というわけです.保守vs保守対決の選挙が続くとも予想されます.

しかし,番組が議論していた若者の「保守化」は,親の世代がぎりぎりで維持している暮らしの豊かさを前提にした,苦労しない側の満足感ではないか,と思いました.親が大切に守ってくれる子供たちは幸せです.親たちの格差が拡大し,正規雇用が失われたり,賃金が下がったりしたとしても,そのショックはなかなか子供にまで及びません.

選挙戦で,安倍氏は日本のGDPや株価を挙げて,アベノミクスの成果だと主張しました.これに対して,共産党や立憲民主党は反発しました.労働者の賃金や消費は増えていない.子供の貧困をどうするのか? 派遣労働者や過労死の問題をどう考えているのか? 成長を実現しているのではなく,異常な金融緩和と円安で大企業や資産家に利益をばらまいただけである,と.

これは,若者たちのことを議論しているのだな,と思いました.彼・彼女たちは政治家の論戦を聞いているでしょうか? あなたのお父さんやお母さんの苦労を,働く姿を観ているでしょうか?

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Reviewを読んでください.

社会の豊かさを何で測るべきか? 社会の豊かさを,どのように実現し,どのように分配するべきか? 石油や原発に依存したGDPの成長率を,どこまで重視するべきか? インターネットが普及し,自動運転の電気自動車が普及し,スマホやアプリの開発が経済の中心をなす.AIとロボットの時代が来るのかもしれません.

理想主義やユートピアを実現する想像力を,政治は持つべきです.貧困や栄養不良に沈む子どもたちや,わずかな給与のためにいくつも不安定な職を掛け持ちするお父さん,お母さんに,前進し,飛躍する展望を示せる,能力と勇気のある政治家が登場する機会にしたいです.

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