(前半から続く)
● 米中貿易戦争
FT October
2, 2017
Donald
Trump’s war on trade deficit backfires
Shawn Donnan in Washington
中国からのダンピング価格による鉄鋼輸入を止めたがっていた労働者たちからは、トランプ大統領の命じた安全保障に関する審査は大きな希望であっただろう。
しかし、5か月後に政府は方針を転換する。政権内部の対立、ビジネス界や共和党からの反対があったからだ。
トランプのゼロサム思考、貿易赤字重視は変わらない。それは政権の貿易に関する姿勢を支配している。安価な輸入が製造業の失業や低賃金をもたらした、と確信している。それを逆転するには貿易赤字をなくすことだ、と考える。
経済学者たちEswar
Prasad、Anne
Kruegerは、こうした主張が、経済学の理解と完全に矛盾していることに不満を示す。アメリカの貿易赤字は1970年代から続いてきた。その原因は、マクロ経済的な安定性、低い貯蓄率、世界の準備通貨であるドルの強さが指摘される。グローバル化したスプライ・チェーンも問題を複雑化している。アメリカがメキシコからの輸入、たとえば、自動車部品輸入を削減すれば、アメリカの輸出も減るだろう。
それでも政府はNAFTA再交渉をこの問題のテコにしようと考えている。
● クルディスタンの住民投票
FT October
2, 2017
Use
diplomacy to avert conflict over Kurdistan
KRGのMasoud Barzani大統領は誤算したのかもしれない。イラクやイランはシリアの内戦終結に集中するかもしれない、と。シリア国内にはクルド人自治区がある。クルディスタン独立とも連動し、この2つの地区でクルド人が生き延びることは、非常に難しい。
FP OCTOBER
2, 2017
The United
States Must Prevent Disaster in Kurdistan
BY JOHN HANNAH
Bloomberg 2017年10月4日
How the
U.S. Can Quell the Kurdish Crisis
By Meghan L. O'Sullivan
● 日本
FT October
2, 2017
Japan
needs to debate policy, not personality
人口減少や外交の危機を迎えているにもかかわらず、ほとんど意見の異なるところがない安倍と小池の対決では選挙によって日本は何も前進できないだろう。人物ではなく、政策をめぐる論争が必要だ。
Bloomberg 2017年10月2日
Abe Makes
Life a Lot Tougher for Bank of Japan
By Daniel Moss
● 持続的開発目標と政治の貧困
FT October
2, 2017
Elections
that rely on votes for sale are bound to be violent
Abhishek Parajuli
PS Oct 3,
2017
Politics
in the Way of Progress
J. BRADFORD DELONG
国連の持続的開発目標SDGsは17もある。それは合意を形成するために増えたのだ。しかし、すべてのことを強調することは、何も強調しないことと同じだ。
さらに、Andrew
Sheng and Xiao Gengは、「技術的混乱、地政学的対立、社会的不平等の拡大」がその実現を阻む、という。しかし、何よりも、「貿易保護主義を含む、ナショナリスト政策を求めるポピュリストたち」が障害になる。
国民国家を超える権力がないことは、国益による共通の目標を妨げる世界に制約される。先進国でも、発展途上国でも、グローバルな公共財に対する支払いは受け入れられない。民主的か、権威主義的かにかかわらず、ガバナンスは自分たちの公平な開発を目指している。国民国家のウェストファリア型世界では、物価の安定や社会的調和を保つための、世界課税メカニズムによる世界公共財供給も、世界金融政策も、世界福祉政策もない。
理論的には、すべての人が、栄養や医療において、十分な人生を送ることが可能である。しかし、SDGsを実現するには、政治的な信念が不足している。
1974年、グウィンUrsula K. Le Guinの小説『所有せざる人々』を読むことだ。何かに値するとか、どれほど稼ぐとか、そうした考えを棄てなさい、と。
FT October
5, 2017
How
corruption became ‘state capture’ in South Africa
David Pilling
● 積極的な市民主義
The
Guardian, Monday 2 October 2017
The
Guardian view on Las Vegas and Puerto Rico: a tale of two Americas
Editorial
PS Oct 2,
2017
The Power
of Active Citizenship
LUCY P. MARCUS
なぜ数百万ドルも稼ぐアメリカンフットボールの選手たちが、黒人に対する警察官の暴力に抗議して、国歌斉唱の際に片ひざを折るのか。
たとえ個人の無力さを感じる時代でも、人々は自分たちが支持する価値を示し、社会や国家として実現するために、行動するときがある。大衆の抗議、積極的な市民主義は、今も民主的社会にとって欠かせない。
Bloomberg 2017年10月2日
Those Are
Americans in the Caribbean, Mr. President
By The Editors
NYT OCT. 3,
2017
If Only
Stephen Paddock Were a Muslim
Thomas L. Friedman
NYT OCT.
4, 2017
Don’t Make
Things Worse for Puerto Rico
By
ANTONIO WEISS
FT October
6, 2017
Puerto
Rico’s recovery depends on debt forgiveness
Gillian Tett
Bloomberg 2017年10月6日
Puerto
Rico's Economic Disaster Was Made in Washington
By Justin Fox
● ロシアの成長
FT October
2, 2017
Brains,
not oil, should fuel Russia’s economy
John Thornhill
● 北朝鮮危機
PS Oct 2,
2017
South
Korea’s Looming Crisis
LEE JONG-WHA
FP OCTOBER
3, 2017
Donald
Trump Threatened North Korea After Completely Imaginary Negotiations
BY JEFFREY LEWIS
フェイクニュースに反応したのがアメリカ大統領であれば、その情報は現実に北朝鮮を動かす危険がある。
YaleGlobal,
Tuesday, October 3, 2017
Another
Nuclear Threat From North Korea? South Koreans Roll Their Eyes
Shim Jae Hoon
NYT OCT.
5, 2017
Inside North
Korea, and Feeling the Drums of War
Nicholas Kristof
● ラスヴェガスの惨劇
NYT OCT.
2, 2017
Preventing
Mass Shootings Like the Vegas Strip Attack
Nicholas Kristof
銃による殺人を減らすために、対応策はある。
PS Oct 3,
2017
Inside the
Mind of the Mass Shooter
RAJ PERSAUD, ADRIAN FURNHAM
NYT OCT.
3, 2017
America
Used to Be Good at Gun Control. What Happened?
By
ROBERT J. SPITZER
NYT OCT. 3,
2017
Why Gun
Control Loses, and Why Las Vegas Might Change That
Ross Douthat
FT October
4, 2017
Donald
Trump, America’s fake healer-in-chief
Edward Luce
ヨーロッパでテロ事件が起きたとき、トランプ大統領は渡航禁止令で即座に対応した。ロンドンの地下鉄テロでは死者が出なかった。
これに対して、アメリカ現代史で最悪の59人を殺害したラスヴェガスの大量殺人事件には、祈りをささげた。この事件から対策を求める声を封じた。それは聖書ではなく、the
National Rifle Associationの手引書に従う行動だ。NRAは彼の選挙戦を支援し、彼のもっとも堅い支持層が属する。
SPIEGEL
ONLINE 10/05/2017
A Nation
in Denial
When Is
the Right Time to Discuss Gun Control?
A Commentary by Marc Pitzke in New York
NYT OCT.
5, 2017
Guns
Aren’t a Bulwark Against Tyranny. The Rule of Law Is.
By MICHAEL SHERMER
ラスヴェガスの惨劇は58人の死者、500人もの負傷者を出した。銃の所有を認めるもっともよく聞く議論は、a)自衛のため、b)専制支配に対する抵抗の砦になる、というものだ。
自衛のために銃を持つ話は、銃の愛好家や保守派のラジオ・トークの司会者により広まっている。しかし、1998年のThe
Journal of Trauma and Acute Care Surgeryにある研究は、その一例だが、異なる事実を示す。「自宅にある銃を自衛のため、法的に正当化される形で使用したケース1つに対して、4つの暴発事故、7つの犯罪や殺人のための使用、そして11の自殺や自殺未遂があった。」
また、銃保有の権利を主張する者が示す誇大妄想とは、人民の銃保有が独裁的政府に対する抑止になる、という主張だ。それは実際、アメリカ憲法修正第2条に記されている。その条文は1770年代には意味があった。当時の武器は元込め式のマスケット銃だった。現代では、市民が武装して、国家に暴力的に反対することに意味はない。
どのような場合も、政府と問題を生じたら、銃よりも強い武器として、弁護士がいる。政治家や警察官は、銃器で武装した市民より、法律で武装した市民を恐れる。前者は射ち倒せばよいが、後者は法廷に出ることが必要だ。
市民社会は、外部からの脅威に対して市民を守る専門的な軍事集団をともなう、法の支配に依拠している。警察力は内部の危険から市民を守る。刑事訴追システムは国家と市民との紛争を平和的に解決する。民事訴訟は市民間の紛争を非暴力で解決する。こうした制度があることで、過去数世紀に渡り、暴力は劇的に減少した。それは武装した大衆がいたからではない。
国家というのは、暴力の合法的な使用を独占することで、犯罪学者の言う「自助的な正義self-help
justice」に代えるのだ。後者では、麻薬密売集団やマフィアのように、諸個人がしばしば暴力的に自分たちの問題を解決する。例えば殺人事件は、14世紀のイングランドに比べて、100分の1に減った。当時、10万人に対して110人が殺害されたが、今では年間、10万人に1人も殺害されない。
専制国家は市民の自由を蹂躙するが、それに対して武装した市民が対抗することは、もはや現実的でない。はるかに優れた方法は、非暴力で民主的な、権力のチェックア・アンド・バランス、市民権を守る憲法、さまざまな自由の法的保護である。
Bloomberg 2017年10月5日
Want to
Keep Gun Rights? Strengthen the Social Fabric
By Leonid Bershidsky
ラスヴェガスの殺人者は15分間で、イスラム主義テロリストが西欧で1年間に殺害したよりも多くの人々を殺害した。
銃規制を強化する、というのは1つの答えであるが、アメリカでは実現しない。銃保有の権利を主張する者たちと、それに反対する者たちが、共通の基礎を得られるかもしれない別の方法がある。
アメリカはもちろん世界でもっとも銃保有率の高い国である。100人当たり89の銃器が保有されている。しかし、ヨーロッパでもスイスやフィンランドなど、高い保有率の国があった(100人当たり46と45)。スイスでは、多くの家庭が外国の侵略を恐れて銃を保有する。アメリカの保有論者にとって模範となる国だ。高い銃保有率が、スイスでは、高い殺人発生率にならない。10万人当たりわずか0.7件である。フィンランドは0.2である。
なぜ相対的に多くの銃を保有する諸国が、アメリカのような大量殺人や高い殺人発生率につながらないのか? UKの犯罪学者Peter
Squiresは、結束した、信頼し合う、寛容な、責任ある社会ほど、銃保有のリスクを低く抑える、と述べた。
銃保有の文化を持つこれらの諸国Switzerland,
Finland, Norway and Icelandは、小さな、豊かで、同質的な社会であり、ローカル・コミュニティーが強い。また、これらは世界で最も幸せな国として評価されている。World
Happiness Reportによれば、その順位はアメリカよりもはるかに高い。
エコノミストのJeffrey
Sachsは、このレポートの支援者で、2017年版に特別な章を書いている。そこで、アメリカの1人当たりGDPは、1960年以来、3倍になったが、幸福を測ればそうではない。実際、それは最近になって低下した、と指摘する。
アメリカは幸福度を上げることができるし、そうするべきだ。そのためには、アメリカの多面的な社会的危機に対処することだ。不平等、汚職・腐敗、孤独、信頼の喪失。Jeffrey
Sachsはもちろん、Sandersの顧問をした党派的な人物だ。しかし、多くの観察者が同じような問題を指摘意する。社会資本の欠如。コミュニティーの分解=アトム化。
鬱屈やイデオロギーから虐殺を行う者から、社会を守ることはできない。しかし、アメリカでは銃による大量殺人が頻発しており、この問題に多方面で取り組みことが急務なのだ。さまざまな人と話したが、アメリカは銃規制を選択しないだろう。しかし、他の方法で結果を変えるだけの、経済的な能力をアメリカは持っている。
それは、より強固な社会保障制度、より平等な、社会資本の充実した社会を実現することだ。それを多くのアメリカ人は「社会主義」と呼んで拒むが、そうではない。他の西側世界が広く実現している標準的な社会民主主義である。それによって、銃の保有はそのリスクを減らすだろう。
FT October
6, 2017
US gun
ownership: a deadly love affair
Barney Jopson and John Burn-Murdoch
● 社会民主党の没落
NYT OCT.
2, 2017
The
Disastrous Decline of the European Center-Left
By
SHERI BERMAN
最近のドイツの選挙結果には多くの憂慮する点があるけれど、中でも主要な中道左派の勢力、社会民主党が没落したことは重要だ。
第2次世界大戦後、社会民主的な諸政党は、市場が経済成長の最も効率的なエンジンと認め、他方で、古典的な自由派や保守派と違い、市場の効果が不安定化におよぶ側面を、政府が緩和する、と考えた。資本主義が社会の安定性や連帯という目標に従うべきであって、その逆ではないのだ、と。
しかし、20世紀の後半までに、この主張は分解した。左派では2つの陣営が支配的である。
第1は、イギリスのトニー・ブレア、ドイツのゲルはルト・シュレーダーに代表される、資本主義のマイナス面を無視するグループだ。セーフティーネットの拡大を支持するが、資本主義を非難することはない。この姿勢は、2008年の金融危機によって反発を受けた。
第2は、イギリス労働党のCorbyn派やギリシャのSyrizaである、彼らは市場のプラス面を観ない。しかし、資本主義を改革できるとか、すべきだという確信はなく、富裕層への攻撃、保護主義、深く死を充実する増税、などを主張する。
社会民主主義があったことで、19世紀後半と20世紀前半、ヨーロッパの民主主義を破壊した社会的分断は回避されてきた。中道左派は、共産主義者と違い、市民としての義務や、政府が良い社会を築く責務を強調した。
しかし、こうした理解は放棄された。ある者は、社会的、文化的な変化に対応できず、経済問題を解決できない。他の者は、こうした変化を受け入れ、コスモポリタンな方針、マイノリティの利益や主張を取り込む。そして国民的なアイデンティティを否定する。
その結果、左派は一貫性を失ってきた。増税、社会福祉の拡大、積極的な政府介入を、社会的連帯や共有された目標として示せない。その空隙に、ポピュリストたちは入り込む。彼らはリベラリズムも民主主義も明確に支持しない。
社会民主主義がその挑戦に応えることができないとき、ポピュリズムの拡散、民主主義の動揺が続く。
● イランとの核合意
NYT OCT.
2, 2017
One Very
Big Reason Not to Scrap the Iranian Nuclear Deal
By JEREMY BERNSTEIN
FP OCTOBER
2, 2017
Keep the
Iran Deal, Attack the Regime
BY MAX BOOT
● セックス・ロボット
The
Guardian, Tuesday 3 October 2017
How sex
robots could help with the nuts and bolts of relationships
Neil McArthur and John Danaher
● 制度と革新
PS Oct 4,
2017
Dealing
with Damaging Institutional Inertia
MOHAMED A. EL-ERIAN
深く根を張った、信用でき、説明責任を果たす、効果的な諸制度があることは、長く、社会の持続的な厚生と繁栄にとって決定的に重要であった。それらが社会を、頻発する、解決できない、経済、政治、社会の変動から守り、高いコストを生じるショックのリスクを抑えている。しかし近頃、基軸となる政治・経済制度が、その環境における異常な流動性と、住民小川における累積する信頼喪失の効果に、圧迫されつつある。
適切に設計された、見事に機能する道路網のように、強固な諸制度は、安定的な作用環境、円滑な移行メカニズム、コストやリスクを抑えた経済取引、信頼できる所有権、法の支配に対する服従をもたらすことで、経済を活性化する。それらは幅広いウィン・ウィン関係を用意するだけでなく、信頼できるゲートキーパーとして働くのだ。
民間部門では、そうした圧力の主要な源泉が技術革新、特に、人工知能、ビッグ・データ、位相性の、ますます興梠オクな組み合わせである。その強烈な競争から攪乱的なコンテンツと巨大なプラットフォームを築いた例、Amazon,
Facebook, Google, Netflix, and Uberは有名だ。
公的部門の調整過程はさらに困難な問題が多い。それはゲートキーパーと、能力の付与と、規制する役割を兼ねる点からも生じている。惰性、不完全情報、リスク回避、意識的・無意識的な偏見、これらが結び付いて、緊急の、重要な適用を妨げている。教育システムの顕著な、引き続く失敗はその1つである。
公的部門への効率性に対する信頼喪失は、さらにその効率を悪化させ、高い、包括的な成長を実現することを妨げて、悪循環を生じる。人々は失望し、疎外され、見捨てられたと感じるのだ。
● ウクライナの軍備強化
NYT OCT.
4, 2017
Time for
the Trump Administration to Arm Ukraine
Antony J. Blinken
● ヨーロッパ難民危機と開発支援
FP OCT. 4,
2017
The
Paradox of Prosperity
BY
TY MCCORMICK
ヨーロッパはア難民危機に応じて,莫大な支援を行い,アフリカの貧しい経済を成長させたいと考えている.しかし,それは難民流出をむしろ増やすだろう.ヨーロッパから見て,アフリカの政府組織には腐敗が蔓延している.ヨーロッパの開発プロジェクトはアフリカのために行っていない.
FP OCT. 4,
2017
Highway
Through Hell
BY
TY MCCORMICK
● ミャンマー
PS Oct 5,
2017
Five Steps
to Peace in Myanmar
RAMESH THAKUR
● サウジとロシア
NYT OCT.
5, 2017
Saudi King
Seeks Warmer Ties With Russia, a Historic Foe
By IVAN NECHEPURENKO and BEN HUBBARD
● アメリカと国際機関
FP OCTOBER
5, 2017
It’s Time
for the United States to Grade the U.N. and Other International Organizations
BY MARK P. LAGON
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The Economist September 23rd 2016
Does China play fair?
A crisis in Spain: The
Catalan question
Innovation in China: The
next wave
The future of Kurdistan:
In a terrible state
Spain: The clash in
Catalonia
China’s economy: Biting
the bullet
(コメント) 中国製品が世界市場に輸出されることについて,特に市場を失うアメリカなど,多くの国は対策を迫られています.「貿易戦争」ではなく,その違いを区別せよ,と記事は主張します.違法な競争,苛烈な競争,不公正な競争,です.WTOによる規制や制裁の強化,産業の転換を助けて輸入品を歓迎,中国に対抗して欧米アジアの市場が連携する.
他方,中国の新興企業群が示す革新の能力と,中国政府が占める広範な産業政策について,考察しています.
カタルーニャとクルディスタンに関して,独立を問う住民投票の理想ではなく,その統治の問題点を厳しく指摘する内容です.
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IPEの想像力 10/9/17
日本の衆院選挙は、幸い、関心を集めています。小池ユリ子と希望の党が、枝野幸男と立憲民主党とともに、台風の目になることを,日本の政治のために良かったと思います。
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中国のIT関連新興企業に関して、The
Economistの特集記事を読みました。記事に付いたイラストは,ジェット機のように空を飛行する若者,あるいは,子どもたちの姿です.Tシャツを着て,ヘッドセットで音楽を聴き,ゲーム機を片手に,ランドセルを背負った姿の,彼・彼女たちは,前方を向いてはるか上空を飛翔します.
中国のIT企業といえば,BAT(Baidu, Alibaba,
Tencent)ですが,彼らも陰に呑み込まれるような新興企業向け投資の波が起きている,と言います.中国製品といえば,まがい物,コピー商品,という時代は数年前まであったのです.しかし,今は違います.野心に満ちた,才能あふれる,世界志向の,若手起業家たちが群れを成して現れました.
なぜなら中国には,1.広大な市場があり,2.失敗をあまり気にしない,冒険的な消費者がおり,3.(逆説的ですが)あまりにも消費者を無視した,非効率な国有企業が支配する分野に,人々の不満が蓄積されているからです.その答えを,技術革新と資本,アイデアによって,新興企業家たちが発見するのを,人々は待っています.
「Ofoの創設者たちは,北京で暮らす貧しい学生であったとき,しばしばバイクを盗まれた.今では,800万台のバイクを管理し,中国だけでなく,アメリカ,シンガポール,イギリスで,1日に2500万回の利用を管理している.」
バイク戦争が起きています.ウーバーの成功に決して劣らない,配車サービスのネットワークから,バイクの利用,充電器など,さまざまなシェア・ビジネスが広がります.Didiはカー・プール,ミニバス,バス,タクシー,豪華自動車の時間利用を管理し,高齢者に対しては運転手とともに配送します.1日2000万件の利用があり,それはUberが世界全体で利用される件数の数倍である,と記事は紹介します.DidiはAIで需要の立地を予測し,それを自動車,公共輸送,自転車にも拡大します.20万台の電気自動車をプラットフォームに,数年で100万台を投資します.
中国の新興企業群は,ITやSNSのビッグ・データを活発に利用します.スマートフォン,ネットの決済,モノのIT化が急激に進む中国で,欧米に比べて,中国人は企業による情報の利用を気にしません.企業家はそれを基礎に次々と新しいビジネスを生み出します.利用者の行動に関して記録を取り,良い利用者を優遇し,悪い利用者を罰します.
記事は,中国を称賛するわけではありません.The
Economistは,中国(アジア)式の産業政策に批判的ですし,政府の介入や規制が起業家を変えるか,企業家・投資家たちが共産党を変えるのか,わかりません.過当競争,過剰生産,金融的なバブル,国際紛争が待っています.
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北朝鮮の核実験やミサイル発射を,一種の,安倍政権応援団のように感じるのは,安全保障政策を「日米同盟の強化」しか語らないからです.選挙が政策論争を欠き,人物評価に偏るのは,与野党とも成長をめぐる「アベノミクス」への賛否しか報道しないからです.
「政権選択選挙」と言いますが,そうでしょうか? だれが政権を執るかより,日本の未来を決める選挙のはずです.トランプ政権の迷走や,日銀の超金融緩和政策に頼ることを超えて,平和と繁栄を築く長期の構想,孫たちの社会像を示すべきです.ポピュリストという非難を恐れず,財政規律を無視したバラマキという批判にもしっかり答える,自分たちの政策能力を示して闘う政党を,国民が選ぶ仕組みこそ「選挙」と呼びたいです.
超高齢化と急激な技術革新の間で,アメリカと中国の対抗と共謀の時代に,あなたたちは政府を組織し,日本の未来をどうしたいのか?
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