IPEの果樹園2017
今週のReview
10/9-14
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国家が分離するとき ・・・カタルーニャの住民投票 ・・・ドイツの選挙とヨーロッパ ・・・労働党政権の可能性 ・・・アメリカの減税と企業 ・・・米中貿易戦争 ・・・持続的開発目標と政治の貧困 ・・・ラスヴェガスの惨劇 ・・・社会民主党の没落 ・・・制度と革新
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 国家が分離するとき
PS Jul 9,
2014
Is There A
Right To Secede?
PETER SINGER
28か国が集まるEUができたことは,EU内の国で分離独立を求める動きを刺激するかもしれない.もしEUがなければ,そうした試みは深刻な不安定化に直面したはずだ.
スコットランドでは分離独立を求める住民投票が行われた.イギリスのキャメロン首相は,スコットランドがUKから離脱することには反対したが,住民投票を許した.それは独立派が,事前の予想で,過半数を占めることがなかったからだ.
しかし,スペインでは,カタルーニャの住民投票を許さなかった.カタルーニャの民族アイデンティティは強く,独自の言語を住民の多数が話せた.スコットランドでは独自言語の使用が1%しかない.中央政府は住民投票を憲法違反とみなしている.
住民の多数が支持すれば分離独立する権利があるのか? 1938年,ヒトラーはチェコスロヴァキアのズデーテン地方をドイツ系住民が多数を占めるという理由で支配下に置いた.ミュンヘン合意はドイツにこの地域を与えたが,それはチェコスロヴァキアの防衛すべき境界線を失わせ,その後のナチスの侵攻を準備させた.
スコットランドやカタルーニャの独立は,軍事的な侵略を刺激するわけではない.しかし,スコットランドは北海油田を,またカタルーニャはスペイン経済に占める重要な繁栄地域を,それぞれ奪うことになる.
人権が侵害されているような状態が広く放置されているような場合,そして,それを回復するには分離独立しか方法がないと判断されるとき,独立が支持された.バングラデシュがパキスタンから独立したときがそうだ.また,コソボのセルビアからの独立をNATOが支援したときもそうだった.
そのような事情がないとき,既存の諸国家は秩序の安定性に共通の利益を持つ.他国の一部が独立を宣言しても,それを承認することはない.そして,EUがあることで独立を目指す住民運動が高まるという意味で,欧州委員会も,独立したスコットランドやカタルーニャをEUの一部とは容易に認めないだろう.
住民投票の意味は,彼らが現状に対して強い不満を示し,その解消のために中央政府が交渉に応じることを求める点にある.
Bloomberg 2017年10月4日
Spain and
Iraq Are Failing Their Secessionists
By Noah Feldman
FT October
4, 2017
The
fraught right to self-determination
Roula Khalaf
独立運動により2つの批判が強まった。住民投票を強行したカタルーニャ地方政府の姿勢と、強硬な弾圧策を採ったマドリード中央政府の姿勢だ。
分離独立派は民族自決権を独立の根拠にする。それは国連憲章にもある原則だが、脱植民地時代に適用するのはむつかしい。特に、それは諸国家の領土保全と矛盾する。さらに、その権利を正当と認めても、それが行使できるとは限らない。自決権の国内における実現、すなわち、自治権が与えられる。
カタロニア人は植民地化されていないし、弾圧されても、差別されてもいない。民族自決権の専門家Allen
Buchananは、独自の文化や予算が比例していないこと(納税額が地域内に支出されていない)は、(独立を主張するほど)不当とは言えない。裕福な諸都市が貧しい地域への分配を嫌い、分離を求めるというのでは、国家の分裂をもたらすだろう。
しかしBuchananは、カタルーニャに当てはまる他の2つの分離理由を挙げる。すなわち、自治権を剥奪されるとき、また、自治を認める道義的な理由があるのに、その地域との交渉を中央政府が拒むとき、である。カタロニア人は、後者の理由が既に存在する、という。2010年の憲法裁判所による自治権拡大の拒否以降、マドリード政府は交渉を拒んでいるからだ。
バルセロナから5000キロ離れた土地で、もう1つの独立をめざす住民投票が行われた。それは9月25日の、イラク北部におけるクルディスタンの投票だ。混乱も、不正もなく、円滑に行われた。クルド人は、想像を超える弾圧や脅威にさらされてきたし、彼らの半自治地区は、権力の共有を拒む、住民にとって役に立たない国家の一部であった。それでも、イラク政府が反対し、トルコやイランのような近隣諸国も反対する中で、独立することは大きなコストを意味する。アラブ人とクルド人との内戦が起きる危険によって、独立の意義は大きく失われる。
あるいは、最近の南スーダンを観れば、この世界で最も新しい独立国家は、「途方もない人為的な人道危機」となっている。南スーダンの人々は、長年、政治的、社会的、経済的な差別に苦しんだ。さまざまな国内的解決策が試みられたが、国際社会は南スーダンに独立国家を創る必要があると認めた。それでも、独立して3年もたたずに、200万人以上が住居を棄てて難民となる内戦状態になった。世界で最も新しい破たん国家を創ったのだ。
Bloomberg 2017年10月4日
Why
Catalonia Will Fail Where Crimea Succeeded
By Leonid Bershidsky
独立を掲げるカタロニアの政治家は,2014年のウクライナから分離したクリミアに言及した.ウクライナのViktor
Yanukovych政府を大した革命後,ロシアの正規・非正規軍がクリミアに殺到して,ウクライナから奪った,と革命政府は主張した.しかし,それは違う.住民投票がロシアの軍事的圧力によって強いられた,ということはなかった.
重要な類似点は,分離独立派は明確な目標を持っていたことだ.住民投票は正しく行われなかったし,投票率や賛成票を確かめることも不可能だ.その相違点は,クリミアの分離とロシアへの併合を行う際に,ロシア軍がこれを実行したことだ.カタルーニャ政府は何の手段も持たない.スペイン政府には分離を阻むさまざまな手段がある.国際的な介入を認めることは間違いだ.
● カタルーニャの住民投票
NYT SEPT.
30, 2017
A Fight
for Catalonia, Whatever That Means
By RAPHAEL MINDER
The
Guardian, Sunday 1 October 2017
The
Guardian view on Catalonia’s referendum: the Spanish state has lost
Editorial
NYT OCT.
1, 2017
Catalonia’s
Independence Vote Descends Into Chaos and Clashes
By
RAPHAEL MINDER and ELLEN BARRY
The
Guardian, Monday 2 October 2017
The crisis
in Catalonia is being fed by pernicious myths on both sides
Victor Lapuente Giné
経済パフォーマンスに優れ、人権擁護や民主主義の清廉さも改善していた国が、ヨーロッパ最悪の領土分割や憲法の危機に直面しているのか?
そうではない。カタルーニャにはエスニックな、あるいは言語の紛争はない。問題は2つの悪質な神話である。第1に、分離主義者やグローバルな左派のインテリが主張する、スペイン政府は歴史的に観て高度に権威主義的で、中央集権的だった、という神話である。第2は、スペインの連邦主義者や右寄りの思想家が主張する、危機に対処するのはハト派よりタカ派がうまい、という神話だ。
しかし、イギリスとスペインの帝国を比べても、スペインは決して中央集権や絶対主義の王国ではなかった。高度に分散した国家であり、アラブ人から奪い返した土地に入植する者には大幅な自由を与えた。ヨーロッパの中でも、スペインの都市や地方は自治能力を持ち、規制や税金にも違いがある。それは国内市場の統一を妨げたが、他方で、多様性が競争と協力を促した。
こうした歴史的な自由は、権力に対する健全な疑い、反エリート主義を広めた。さまざまな危機においても、スペイン人はボトムアップ型の自由主義運動を生み出し、極右の権威主義には向かわなかった。スペインは数百万の移民を受け入れて統合化することに成功した、開放的な国である。性的マイノリティにも最も寛容な国の1つである。
しかし、こうした多様性の勝利を称えるのではなく、カタルーニャの分離主義に対して見苦しい弾圧策を採った。ラホイ首相は、基本的な民主主義に背く、国際社会の受け入れない、住民投票を許容してもよかったはずだ。実際、2014年にはそうしたのだ。しかし、分離主義者に譲歩するような、よわい姿勢を政府は見せたくなかった。多数の警官隊を送って、暴力的に閉鎖し、その結果、分離に反対していたカタロニア人にまで反発が広がっている。
ラホイの行動は全くの逆効果であった。政府は、現代の国家が暴力の独占ではなく、正当性の独占に依拠していることを、理解できなかったのだ。カタルーニャがバルカン諸国やウクライナのようになったわけではない。しかし、その同じ傾向を示すものだ。
FT October
2, 2017
Force is
not the answer in Catalonia
Gideon Rachman
分離主義者たちは望み通りの写真でメディアに飾った。中央政府が暴力的な弾圧で住民を排除したのだ。警察官が独立支持のデモ隊を殴った。
幸い、死者はまだ出ていない。政府は戦術を転換するべきだ。
ラホイ政権は正しい。分離独立を問う住民投票は違法であり、スペイン憲法に反している。しかし、カタルーニャにおける逮捕や殴打は、政府の正当性を破滅的なほどに損なった。それは長期に重大な影響を及ぼすだろう。
カタルーニャは、2002年の東チモールや、1989年のエストニアとは違う。カタルーニャはヨーロッパでもっとも繁栄し、人々は権利と民主主義を享受し、政治的な自治権を得ている。
スコーっとランドの独立に関する運動を見聞したことから学んだのは、国家を分割するという考えが、どれほど苦痛に満ちた熱狂をもたらすか、ということだ。ナショナリズムは今なお本質的に正しく、ロマンチックである。それゆえ、民主的な国家は、統一を望むとしても、その考えを可能性としては進んで受け入れるべきだろう。
しかし、住民投票を許容することが、独立を容易にすることは意味しない。国家の分割には、単純多数決ではなく、条件付きの多数、例えば60%の支持を求めるべきだ。また、独立したカタルーニャはEUから離脱しており、参加を申請するしかない。Brexitが示したように、ヨーロッパ単一市場からの離脱は大打撃である。
この事件はヨーロッパに対する警告である。「ポスト国民国家」としてEUが主権をプールし、過去の紛争から解放される、というのは間違いだ。連邦主義者は真剣な見直しを求められている。
NYT OCT.
2, 2017
Spanish
Democracy vs. Catalonia’s Independence Vote
By CARLOS DELCLÓS
ラホイ首相にとって、住民投票への暴力的な介入は唯一の選択肢ではなかった。もし投票結果を否定するだけなら、それを拒否すれば、彼と右派の与党はスペインのほとんどの政治勢力から反対を受けなかったはずだ。
暴力の行使は、投票に参加した者にその正当性を与える意味を持ち、逆効果だった。しかし、ラホイの主要な目的は、カタルーニャの住民の心をつかむことではなかったのだ。彼はスペインの安定よりも、自分と党の利益を優先した。
ラホイの政党Popular
Partyは、常に、カタルーニャとバスクで多数の支持を得られなかった。それはフランコ独裁政権の下で弾圧され、分離主義が強いからだ。住民たちは反ファシスト運動に言及して、保守政党と自分たちとを対比した。
2012年、ラホイの最初の内閣で、彼はカタルーニャに一層の財政的な自治を与えることを拒んだ。その前に、カタルーニャの保守政党Convergenceはラホイ政権に協力して、緊縮政策を議会で通過させていた。しかし、緊縮策は非常に不人気で、Convergenceは連携を棄てて、革新政党や独立運動に参加した。
こうした状況が、ラホイの強硬策の政治的コストを低くした。むしろ彼は、野党勢力の分断を促すために問題を利用している。スペインの連邦制や民族自決権は、左派にとって内部対立を生じる問題である。伝統的な中道左派の社会党は連邦制を支持し、住民投票を避けたがった。しかし草の根の新しい左派、Podemosは、カタロニア人独立の法的拘束力を持つ投票を支援している。
ラホイ政権も、独立運動も、自分たちを民主主義の擁護者であるという。ラホイは演説で、法の支配、警察と司法制度を称えた。カタロニア人独立派は、民衆のパワー、自治権を訴える。この危機はスペインの領土を超えている。スペインはヨーロッパの小さな宇宙なのだ。
Bloomberg 2017年10月2日
Spain Can
Blame Only Itself for Catalonia's Resistance
By Therese Raphael
FT October
3, 2017
Catalan
separatists must step back from the brink
FT October
3, 2017
Solution
to Catalonia crisis can only come from inside Spain
David Gardner
FT October
3, 2017
Catalonia’s
road towards secession has complex roots
Andrew Dowling
経済危機が、スコットランド、カタルーニャ、フランダースの分離主義を活性化し、ナショナリストの運動につながった。2008年からスペインを襲った危機は、フランコ独裁体制から移行した後、1970年代半ばに成立した、相対的に安定した政治秩序を動揺させた。カタルーニャはずっとスペインの領土的危機の震源地であった。
2000年代の半ばでも、カタルーニャのナショナリストたちは分離主義者ではなかった。スペインの国家体制は、本物の連邦的秩序に向けて移行しているように見えた。カタルーニャは、ヨーロッパにおいて、また、それを超えて、権限移譲の成功例として称賛されてきた。
20世紀の大部分において、バルセロナはスペインの経済的首都であった。しかし、1990年代の半ばまでに、マドリードがますますスペインの明確な首都となって、バルセロナはもはやそれに対抗できなかった。カタロニア人に生存の危機を感じさせた起源をたどるなら、スペイン政治システムにおける相対的な重要性を失い始めたことに求められる。要するに、カタルーニャはスペインの政治・経済発展における指導的地位を失い、そのことが1980年代から出現したカタルーニャ民族主義の政治的物語の中心要素となった。
保守派の人民党政権1996-2004年は、さらに権限委譲を進めることを嫌った。1970年代後半の憲法や領土に関するあいまいな解決はそれを可能にした。このときスペインの権限移譲モデルは、中央政府によって、はじめて疑問とされたのだ。2010年6月には最高裁が自治権の主要政策を否定する判決を出した。経済危機によって生じていたカタルーニャの不満は、この判決後、政治的な悲観論に変わった。
もしカタルーニャが一方的に独立を宣言すれば、マドリードはその自治権を停止するだろう。そしてカタルーニャでは市民的不服従が新しい段階に入る。マドリードの交渉姿勢が足りないときには、国際圧力によって事態の打開が求められる。
PS Oct 3,
2017
The
Resilience of Spanish Democracy
SHLOMO BEN-AMI
NYT OCT.
3, 2017
Damage to
Catalonia
Roger Cohen
FT October
5, 2017
Talks are
the only way to solve the crisis in Catalonia
Jonathan Powell
北アイルランドに置ける武装闘争のような事態になることを避けねばならない。双方が交渉に向けて条件を課すことは間違いだ。そのような主張は、交渉を永久に延期してしまうだろう。交渉が始まれば、それは予想外の方向に向かうことが多い。第三者が交渉を仲介することはむつかしい。
その起源において、これは政治問題であり、政治的な手段でのみ解決できる。手遅れになる前に、双方は真剣な、制度化された交渉だけが解決の道だと認めねばならない。それを拒むことは、自主権をめぐる、長期の、流血の紛争に向かうことだ。ミャンマーから南スーダンまで、われわれはその例を多く見てきた。
FT October
5, 2017
Sovereignty
and self-determination collide in Catalonia
Philip Stephens
FT October
6, 2017
Big bank
to move headquarters out of Catalonia
Michael Stothard in Madrid and Tobias Buck
in Barcelona
● 中国の姿
China
Daily 2017-09-30
China is
not an evil empire facing US
By Doug Bandow
Bloomberg 2017年10月2日
Can
Communists Be Good Capitalists?
By Michael Schuman
● ドイツの選挙とヨーロッパ
FT October
1, 2017
Macron may
have a bold vision but Merkel calls the shots
Wolfgang Munchau
SPIEGEL
ONLINE 10/02/2017
Never
Fear!
Merkel
Should Follow Macron's Lead on Europe
Christiane Hoffmann
PS Oct 2,
2017
Europe’s
Future After Germany’s Election
GUY VERHOFSTADT
CDU/CSUとSPDは、まったく内向きの、選挙区に焦点を限った運動を展開した。確かにドイツの有権者には、ディーゼル車の禁止や税制、賃貸料などが重要かもしれない。しかし、EUとユーロ圏が直面している課題には全く触れなかった。
それは多方面にわたる。イギリスのEU離脱が生じた不確実さ。ポーランドとハンガリーでさらに後退する法の支配と民主主義。移民・難民危機の長期的な解決策。テロリズムの拡大、国際秩序の改変を目指すロシア、方向性を見失ったトランプのアメリカがもたらす安全保障上の危機。ユーロ圏の景気回復を維持し、安定化すること。
これらの課題にどのように取り組むかによって、ヨーロッパの将来と、その中でドイツが占める位置が決まるのだ。CDU/CSUとSPDは、大きな問題を避けて、小さな問題に議論を集中することで、政治に真空を創り出した。そして極右のナショナリストたちAfDが喜んでこの真空を埋め、13%の票を得た。
ドイツの選挙結果は、マクロンが望む独仏によるEU改革を打ちのめしたのか? そうではない。この10年間、ユーロ圏改革のほとんどを拒んだのはCDUのWolfgang
Schäuble蔵相であった。メルケルがFDPとグリーンを加えた連立政権を組むことは改革の出発点になる。
EU改革は、リベラルで民主的な勢力にかかっている。マクロンもFDPもEUの民主的改革を支持している。たとえば、EUレベルの選挙における国家の枠を超えた候補者リストの作成。加盟諸国におけるEU市民権の拡大。移民に関するEU共通のルール。テロに対するヨーロッパ規模の捜査態勢。FDPはEUの安定・成長協定を重視し、単なる財政移転だけでなく、ガバナンスの改善を求めている。その基本は、財政規律ルールと成長を高める公共投資の組み合わせである。
ヨーロッパは重要な局面にある。独仏が改革に向けて前進するべきだ。
The
Guardian, Wednesday 4 October 2017
Emmanuel
Macron’s appeal has already worn thin
Gabriel Bristow
マクロンは、そのリアリスト的な就任演説によってイメージを転換した。ネオリベラルな政策を継承する、権威主義的な大統領になった。ブレア、クリントンの系譜に連なる、現代資本主義の守護神だ。
PS Oct 4,
2017
The
Chimera of Franco-German Reform
HANS-HELMUT KOTZ
NYT OCT.
4, 2017
Germany’s
Problem Is Europe’s Problem
Ivan Krastev
繁栄し,民主的で,寛容なドイツ.選挙戦を通じて,その異常なほどの正常さに私はショックを受けた.ヨーロッパの他の社会は不安と怒りによって分裂状態にあるのに,ドイツでは市民の大多数が経済状態に満足している.
しかし,その満足感は表面的でしかない,と言える.ユーロ危機,Brexit,ウクライナの戦争,なにより難民危機は,ヨーロッパの将来を変えるだろう.東ドイツの地方政治家は述べた.「政府は難民を統合したいと言うが,どうしてまず我々を統合しないのか?」
彼らの不満を吸収したのは,共産主義後の左派政党ではなく,右派のAfDであった.選挙結果は,ドイツの移民政策をヨーロッパの合意に近づける.すなわち,国境は閉鎖すべきだ.あるいは,少なくとも,慎重に開放するべきだ.
他方,東西の移民を拒むことは,ヨーロッパの東西の対立を強めるだろう.東ドイツの住民は,自分たちが西へ移住した者よりも政治的・経済的な敗者の側にある,と後悔している.彼らの多くはポピュリストを支持した.
YaleGlobal,
Thursday, October 5, 2017
Can
Macron’s "Fire and Fury" Lead a Renaissance for Europe?
François Godement
● 労働党政権の可能性
FT October
1, 2017
Capitalism
must be revolutionary to defeat Jeremy Corbyn
Danny Kruger
ブライトンの党大会で、コービンは遺体の国有化を語った。それは国民医療保険制度に属すべきだ、と。彼にとって国有化は絶対的で魅力的だ。だれが余剰資源の再配置に反対するだろうか? たとえば、遺体の心臓や肝臓のように、その所有者が必要としないものだ。
ブライトンで、コービンは「われわれが今や主流派だ」と語った。すべての年齢、人口分類で、人々が社会主義についての話を聴くのは、この1世代において初めてのことだ。
しかし、コービンの診断は間違っている。彼は正しい問題に関心を示すが、少なくとも臓器以外では、その処方箋は恐るべきものだ。しかし反対派は、1970年代に言及したり、ヴェネズエラの失敗を挙げたりして議論してはいけない。ここは21世紀のイギリスである。ゲームのルールが違うのだから。
他方、保守党のBrexit推進派のDaniel
Hannanは、資本主義の擁護を訴えた。競争を通じて、勝者が報奨され、敗者は消滅する、という説明ではなく、むしろ資本主義の勝利は、人々が互いを頼る瞬間である、と。資本主義は根本的に、寛大さを信条とする。見知らぬ者への支援が互恵的であること、その精神に依存している。
有権者の認識の変化は、資本主義そのものの行動を観直すことを求める。労働党の中央集権化に挑戦する、独立した活動家が、多様な協力関係を築くだろう。それは資本主義の信条に見合う革命的瞬間だ。
The
Guardian, Monday 2 October 2017
In a Tory
party torn apart by Brexit, the fever of schism burns
Polly Toynbee
FT October
3, 2017
A welcome,
if thin, vision of a free-market Britain
FT October
3, 2017
A Brexit
transition fails to dodge the perils of leaving the EU
Nick Clegg
NYT OCT.
3, 2017
The Ritual
Humiliation of Theresa May
Matthew d’Ancona
メイ首相の権威を失わせているのはジョンソンBoris
Johnson外相の個人的な言動と、EUとの交渉でメイの姿が見えないことだ。
The
Guardian, Wednesday 4 October 2017
The
Guardian view on Theresa May’s speech: the Tories’ faltering voice
Editorial
The
Guardian, Thursday 5 October 2017
Labour has
a once-in-a-generation opportunity, and the Tories know it
Larry Elliott
FT October
5, 2017
The
economic consequences of Jeremy Corbyn
Martin Wolf
もしJeremy
Corbynが政権を執ったら,経済成果を示せるのか? 私たちはそれを考えてみるべきだろう.
すでに労働党の党首となってから,Brexitの論争では消えてしまい,推進派が勝利するのを助けた.若者たちがBrexitに憤慨して自分を支持すると喜んだとしたら,きわめて無責任だ.EUに対する立場も示さない.
保守党がこれほど分解している以上,Jeremy
Corbynが勝利することも考えられる状況だ.彼は何をするのか?
社会主義自体は新しいものではない.それには3つのタイプがあった.専制的,ポピュリスト的,社会民主的なタイプだ.ソビエトや毛沢東の,専制的社会主義は破滅をもたらした.他方,北欧やオランダの謝意民主主義は,豊かで,ダイナミックな,安定した経済を実現した.ポピュリスト的な社会主義は,ラテンアメリカがそうだが,経済的に機能しなかった.
なぜヨーロッパの社会民主主義は成功したのか? 1.社会主義の魔術ではなく,財政規律を守った.2.人間行動を決める価格の誘因を重視した.3.それを形成する安定した諸制度を重視した.4.経済における民間部門の重要性を理解していた.
たとえ税収がGDPの50%を超え,政府の経済分野における大きな役割を認めても,民間部門が活発に働くように指導した.他方,ポピュリストはこうした制約を一切認めようとしない.彼らはエリートに対抗する「人民の声」であるから,その能力を制約するものは,どんな制度も不当なのだ.
Jeremy Corbynはどうなのか?
NYT OCT.
5, 2017
Get Ready
for Prime Minister Jeremy Corbyn
By
RACHEL SHABI
● アメリカの減税と企業
FT October
2, 2017
Donald
Trump’s trickle-down delusion on tax
Rana Foroohar
トランプ大統領がポピュリストではなく、トリクル・ダウン経済学の仲間であることは、もはや明らかだ。ジョージ・W・ブッシュ以来、最大の減税法案を準備している。
トランプ案の支持者たちは正しい主張をしている。アメリカの法人税率はOECD諸国の平均より大幅に高い。アメリカは、資産の国際的な課税回避を阻むために、より単純で、統一した税制を必要としている。
しかし、法人税の引き下げがアメリカの成長を引き上げ、職場を取り戻し、賃金を引き上げる、とも主張する。それは信じがたい。減税は、今後20年間の持続的成長をもたらさない。レーガン時代とは条件が全く異なる。当時は、生産性が高まり、女性が大量に雇用され、連邦財政赤字はGDPの20%でしかなかった。
今、生産性の上昇はほとんどなく、女性の職場進出はすでに実現し、出生率は低く、大統領は移民を減らすと約束している。成長率は生産性と人口成長の和であるから、この公式を変えない限り、成長は高くならない。
減税によって資産の持ち手が変わるとしても、それは実質成長を意味しない。ディール・メイキング、資産評価、企業債務は記録的な水準かもしれないが、雇用が増えたわけではない。それは十分な消費需要がないからだ、と私は思う。企業幹部たちはアメリカ国内の成長を諦めている。平均的なアメリカ人の給与は、1990年代初めから、実質的な増加していない。
企業は誰が経営すべきか? どのように経営すべきか? 「エージェンシー理論」によって、それは株主がその利益を増やすために経営者を決定する、とアメリカ(そして、より程度は少ないがイギリス)の企業は答える。それによって企業の投資が、賢明かつ公平に行われ、成長も実現するはずだった。
しかし、経済成長の成果と株主の利益との間にはますます大きなギャップが現れている。たとえば、Appleがそうだ。彼らは1980年に最初の株式市場公開でわずかに資本調達しただけで、市場で資本を調達したことがない。
民間企業の市場システムは、もはや経済全体の利益を実現していないのだ。減税とトリクル・ダウンの正当化は、長期の成長や競争力を実現する答えにならない。
NYT OCT.
3, 2017
The Trump
Tax Idea That’s a Boon for Shareholders
By
DAVID J. HERZIG
FT October
4, 2017
A lost
chance for reform of US corporate taxes
Martin Wolf
FT October
4, 2017
Tax
affairs of American tech groups come under fire
PS Oct 4,
2017
Déjà
Voodoo
JOSEPH E. STIGLITZ
Bloomberg 2017年10月5日
The EU Is
Pulling Its Punches Against Tech Giants
By Leonid Bershidsky
(後半へ続く)