IPEの果樹園2017 

今週のReview

10/2-7

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女性というディストピア ・・・社会主義政党の未来 ・・・クルディスタン独立 ・・・AfDが加わるドイツ議会 ・・・メルケルの憂鬱 ・・・金利生活者の支配 ・・・プエルトリコの災い

 [長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 社会主義政党の未来

The Guardian, Monday 25 September 2017

The AfD’s breakthrough shows that parties of the left must get radical

Paul Mason

ヨーロッパの社会民主主義プロジェクトは終わった、とある社会主義政党の幹部は私に語った。

ドイツの社会民主党の指導者たちが極右の進出に責任を感じているとしたら、それは彼らだけではない、と知ることは慰めになるかもしれない。フランスも、オランダも、オーストリアもそうだ。

ヨーロッパの中道左派政党は、余りにも長く連立政権に参加し、あるいは、味気ないテクノクラートになって、右派と左派の刺激的なポピュリストたちに容易に出し抜かれた。しかし、問題の根はもっと深い。社会民主主義がネオリベラルの経済モデルを穏健化し、人間的にするはずだったが、そのモデルはもはや機能していない。それは、中央銀行から12兆ドルを、世界規模の生命維持装置として供給され、生き延びている。

2008年以後、ネオリベラリズムは文字通り不正義となった。ヨーロッパの庶民は貧しくなった。子供たちの将来は不確かになった。金融と不動産開発に集まるエリートたちは、非常に裕福になった。主流派の政党が示す説明は意味をなさず、一部の人々には、ナショナリズムや外国人排斥の方が正しい解決策に見えた。

中道左派は、ネオリベラリズムから完全に切断しない限り、そして、市場諸力を人間の必要に従わせる経済モデルを示さない限り、失敗し続けるだろう。その経済モデルを改善するのではなく、サッチャー、レーガン、ベルルスコーニが1980年代、90年代に反革命を起こしたように、新しいモデルを示すのだ。

Bloomberg 2017926

Socialist Parties in Europe Keep Losing for the Same Reason

By Leonid Bershidsky

日曜日に行われたドイツの選挙後、ヨーロッパにおける既存の社会主義政党が敗北することは、孤立した現象ではなく、中道左派の趨勢、生存の危機であることがはっきりした。

社会民主党SPDのシュルツMartin Schulzはメルケルに憤慨した。彼女は「政治を組織的に回避した。」 そのことが生んだ空白をナショナリストが埋めたのだ。メルケルの「いいねキャンペーン」を「呆れたscandalous」中身だと非難した。まるで、この4年間も連立政権を組んだメルケル首相が敗北の原因であるかのように。SPDはわずか20.5%しか得票できなかった。

シュルツの非難は的外れだ。フランス社会党が今年の大統領選挙で消滅し、オランダの労働党も3月の選挙で崩壊した。

ノルウェイの選挙戦を指揮したAsbjoern Wahlは、労働党の敗北を次のように説明した。「社会民主主義の黄金時代は、階級的な妥協とパワー・バランスで、資本主義の社会的な規制を進めること(福祉国家)が可能になる時代であった。福祉政策を充実する物資知的基礎は、資本主義の深刻な危機と停滞、同時にネオリベラリズムの攻撃によって、今や終わりつつある。現在の政治状況で、社会民主的な試み、すなわち、階級的な妥協、三者協議、社会対話、は幻想である。」

他方、メルケルを含む、「ネオリベラル」は、資本主義の危機と停滞から利益を得た。彼らは速やかに有権者の地殻変動を吸収したのだ。左派政党は、1990年代に、肉体労働者が消滅する中で、労働者階級の支持基盤を失い始めていた。ポスト工業社会では、福祉政策を支持する同盟を中産階級に頼ることになる。中道右派政党の方がうまく対応した。SPDのシュレーダーが行った先駆的な労働市場改革を、SPDの支持層ではなく、CDUのメルケルが継承した。

社会主義政党がもっと左に動くこと(ベーシックインカムや大規模な産業国有化)は、すでにある急進左派政党と衝突する。急進左派はその支持者に対して雄弁にアピールするから、たとえ中道左派政党が急進的な政策を掲げても、支持層を奪うことはできない。むしろ中産階級の支持者にとって、ユートピア的な主張として拒否される。

主流の左派政党にとって唯一の道は、中道右派勢力との合併である。それはフランスでマクロンが勝利した後に進んだ。ますます政治の中心には有権者の統合された勢力が現れ、そこは既存の諸政党が競争する場所ではなくなっている。中道右派が、しばしば、もっとも強力な勢力となって、合併と政治同盟の中核となる。強力な政党がなければ、フランスのシナリオが現れる。

今や競争は、左派でも右派でも、統合された中心勢力と急進派との間で戦われている。メルケルはSPDとの連携を、FDやグリーン都の連携に代えることで、マクロンの中道戦略を吸収した。他方、SPDの対抗策は見えない。

The Guardian, Thursday 28 September 2017

A new shock doctrine: in a world of crisis, morality can still win

Naomi Klein

われわれは恐怖の時代を生きている。国家のトップの地位からTweetで核によるせん滅の脅しが広まり、あるいは、地域全体が気候変動のカオスに陥り、何千もの移民がヨーロッパの沿岸で溺死し、公然と人種差別を主張する政党が議席を得ている。

真の危機の時には、大胆かつ未来を見据えた提案が要る。この数か月、労働党は他の選択肢を示してきた。富を再分配し、不可欠な公共サービス部門を国有化する。それはグローバルな現象だ。アメリカ大統領選挙で起きたサンダースの歴史的躍進。同様に、スペインのPodemosが大衆運動からパワーを得た。

ハイテクと化石燃料による経済ではなく、地球と隣人へのケアを重視した経済への転換を示すべきだ。気候変動と戦い、より公平で民主的な経済への転換が、100年に1度のチャンスとして現れている。労働党がより野心的で、一貫し、全体的な展望を示すなら、政権を獲得するだろう。

世界中で、左派の勝利は道義的に不可避である。


 クルディスタン独立

FT September 27, 2017

Thirsting for independence, Iraqi Kurds face serious obstacles

David Gardner

近隣諸国からの脅しを無視して、イラク北部のクルド人は投票した。現在のクルド自治政府を維持するか、それとも、中身のない、気まぐれなイラク国家からの完全な独立を目指すか。

イラクのクルド人は、1991年、湾岸戦争のときから独自の国家を創ると決意したように見える。アメリカが指導したイラク侵攻は、エスミックや宗派間の対立を刺激し、連邦政府の秩序が崩壊する。その過程で、クルド人指導者たちはバグダッド政府との連邦主義を試したが、シーア派のイラク政府が権力の共有は受け入れなかった、という。

しかし独立は高リスクのギャンブルだ。3000万人のクルド人たちがイラク、シリア、トルコ、イランに広がっている。彼らは100年前にオスマン帝国が崩壊したとき、イギリスとフランスに独立を拒まれたのだ。トルコ、イラン、そしてイラクの中央政府は、経済的禁輸や地上と領空の封鎖で脅している。また石油価格の下落は、クルド政府の財政危機を生じている。

The Guardian, Wednesday 27 September 2017

The Kurds of Iraq have been loyal allies. The west must repay its debt

Simon Tisdall

クルド人自治区政府KRGが独立を目指すのは、民族自決の理想であり、オスマントルコ帝国からの独立を英仏が恣意的に奪ったことで、彼らが第1次世界大戦後に離散し、国家を持たない人々となって、数世代にわたり持ち続けた願いであるからだ。

驚くべきは、そして憂慮すべきは、世界の主要な国・勢力the US, the EU, Russia and China, plus the Arab League, Iraq, Iran, Syria and Turkeyが、一致して、クルディスタンの独立に反対していることだ。彼らが、現代において、このように一致したことなどあっただろうか? 

クルド人の問題を観るとき、いつものように、外部の勢力が自分たちの利害を主張して、より良い未来を見えなくしている。彼らは、短期的な目標として、ISISやイスラム・テロリズムとの戦いが続いている、という。長期的には、特にアメリカとロシアが、アラブの春の後、シリア内戦の後の、中東におけるバランス・オブ・パワーの形成に関心がある。大国の地政学ゲームにおいては、クルド人問題を利用するが、彼らが国家を持つことは迷惑だ。

イギリスやその同盟諸国は、クルド人のBarzani政府とその近隣諸国イラク、イラン、トルコとの間で急激に高まる対抗関係の、間違った側にいる。KRGが緊張の原因ではない。KRGは、その独立を長く阻まれたが、高度に成功した、透明で、民主的、包括的な運営を実現している。他方、この地域は住民の意見を聞かない政府ばかりである。

緊張の原因は外にある。例えば、トルコのエルドアンRecep Tayyip Erdoğan大統領だ。エルドアンは、20156月、クルド人の政党が躍進して、あやうく政権を失いかけたとき以来、トルコ南東部やシリア北部のクルド人を攻撃している。また、民主的な自由を奪い、その仲間として数万人を追放した。彼の政府はNATOとの協力を断ち、シリア難民問題ではEUを脅している。

エルドアンは、今、イラクのクルド人に、石油輸出のためのパイプラインを止めて飢えさせる、と警告している。「われわれが蛇口を閉めれば、それで終わりだ。彼らの収入はすべてなくなる。われわれがイラク北部に行くトラックを止めれば、彼らは食糧も得られない。」

2015年のレポートは、イギリスが信じるべき相手を示していた。それはKRGである。KRGを維持することは、「寛容と安定性の避難所」として、また女性の権利や人権を守るだけでなく、過激主義の軍団に対抗する同盟者として、決定的な重要性を持つ。

1次湾岸戦争で、1991年、サダムがイラク北部のクルド人を粉砕しようとしたとき、イギリスと友軍は安全地帯と飛行禁止ゾーンを設けて助けた。今もまた、クルド人の民主的権利を支持する姿勢を断固示すべきだ。


 AfDが加わるドイツ議会

FT September 25, 2017

The end of German exceptionalism

Gideon Rachman

選挙で明らかになったように、ドイツも、例外と思われてきたが、怒りに満ちた、反エリートのポピュリズムに免疫はなかった。それは中道の衰退であった。CDUSPDも得票を減らしたのだ。過激派のアピールに対する沈黙がドイツの「歴史的な負債」だ、という希望は打ち砕かれた。

AfDは、最初、ユーロ圏を批判する「プロフェッショナルな政党」であったが、難民危機を経て、時とともに過激化した。そして、移民排斥を主張する極右の運動になった。

その指導者の1人、Alexander Gaulandは、ドイツ人は両大戦のドイツ兵士たちに誇りを持つべきだ、と述べた。また他の指導者Alice Weidelは、ドイツ政府は第2次世界大戦の戦勝諸国の操り人形である、と攻撃した。こうした右派ナショナリストが議会に参加することで、そこでの論争や、他のヨーロッパ諸国の反応も変わるだろう。トルコやポーランドとの関係はすでに悪化しているが、今後の関係はさらに困難な、辛辣なものになるだろう。

フランスとの協力はメルケルにとっても難しくなり、まず、ドイツ人労働者たちの生活水準が停滞しているという不満にメルケルは応えねばならない。ユーロ危機と難民危機に対する彼女の対応は、その代価を示した。

ドイツが他のヨーロッパ諸国に似てきたことは、他国がその特別な優位を攻撃してきたことだが、決して歓迎すべきものではない。

The Guardian, Thursday 28 September 2017

Only respect for the ‘left behind’ can turn the populist tide

Timothy Garton Ash

グローバルなポピュリズムの流行はもはや終わった、と主張する気の早い評論家たちにとって、ドイツの選挙でAfDが多数の議席を得たことはショックであろう。ドイツ人は、世界でもっとも繁栄した経済をもつ、外国人排斥や右翼のナショナリズムを強くタブー視する、EUの統合化を自分たちの生存条件とみなす国民だ。その国で8人に1人の投票者が、ヨーロッパを嫌う、右派ポピュリストのAlternative für Deutschland (AfD) を支持した。

もちろんドイツ人のすべてがBMWに乗っているわけではないし、マヨルカ島での長期休暇を楽しむわけでもない。しかし、AfDに投票した理由は経済的な不満ではない。彼らの95%が指摘したのは「ドイツの言語や文化」への脅威である。

特殊な事情として、ドイツは過去12年の8年間をCDUSPDとの大連立政権が統治した。そのことが不満のはけ口として小政党や急進政党への投票になった。メルケルは、穏健派、市民派、リベラル派の中道を支持層にした。私はその姿勢を過去に称賛したし、今も優れた政治手法だと思う。しかし、その中道的な、少し左派寄りの姿勢は、代償をともなった。他の主流派政党が極右に寛容になったのだ。

また、ドイツの東西分断がある。極右の、外国人排斥ポピュリズムが強い支持を得ているのは旧東ドイツである。AfDがもっとも多くの支持を得た地域には、ほとんど移民がいない。そこにあるのは40年間の共産主義体制の遺産であり、また、再統一後の東西関係・交流の型である。

トランプ支持者にも、Brexit支持者にも、ポーランドの「法と正義」党の支持者にも、リベラルな中央に対する地理的な反発が見られる。ポピュリストに投票するこれらの地域の住民には共通した怨嗟の感覚がある。「ここに我われもいるのだ。しかし、彼らは我われを無視し、自国の二流市民として扱っている。」

それは経済的な不平等ではなく、不平等の社会的な側面である。ネオリベラルな、金融資本主義的グローバリゼーションでは、トップの人々に富が集中し、逆に、社会の下半分では賃金や家計所得が停滞し、減少している。増大する社会・経済的な不平等は機会の不平等をもたらす。

ポーランドの右派ポピュリストたちは「威信の再分配」をスローガンとして広めた。この初めて聴くと奇妙な主張は、貨幣だけでなく、威信も再分配せよ、と求めるものだ。人々は、社会において関心を争っている。ドイツの有権者には、文化的な不安がある。「私はこの国が私の国とは思えない」という。移民はそのカギとなる要素である。彼らは、現実であれ、想像であれ、イスラムの脅威を恐れている。

こうした間違った診断により、病が治癒することはない。


 メルケルの憂鬱

PS Sep 25, 2017

Germany’s Weimar Ghosts

HAROLD JAMES

多くのSPD指導者たちは、連立政権に参加してきたことを悔やんだ。それは、戦間期のドイツに短期間だけ存在したワイマール共和国の特徴であった。権力からの逃避である。1949年に連邦共和国ができたとき以来、1つの疑問がドイツ政治にさまよっている。「再び極右が勝利し、ワイマールの経験が再現するのだろうか?

ワイマールでは、大恐慌に先立つ安定した時期にも、政権に参加した諸政党が有権者によって罰せられた。そして、自分たちを代替勢力や抵抗の党と示すとき、党勢を拡大した。その後、不況になり、同じメカニズムがさらに強く働いた。政府を支持することは自殺行為になり、ますます急進化する反対派がそう呼んだように、「システム」の支持者は処罰された。

今回の選挙結果で楽観できる余地があるとしたら、それはヨーロッパ的な基準に近いことだ。13%の支持率は、オランダのポピュリストGeert Wildersが獲得した数字と同じだ。ドイツ人の多数がAfDの支持者ではないし、AfDは指導部が分裂して衰退するかもしれない。

工業諸国の選挙は景気動向の反映である。しかし、ドイツの長期政権は、政治家たちの新しいアイデアを示す力が足らず、2016年末にはメルケルが疲れた様子であった。選挙は、こうした指導者たちへの不満を表明した。

メルケルがCDUと市場リベラリズムのFDP、グリーンとの連立を目指すことは、ドイツに新しい政策をもたらすだろう。グリーンも、環境政策を市場メカニズムに依拠させる姿勢を示しているからだ。その新しいドイツ政治は、独仏協力の強化と、ヨーロッパ諸制度の改革を進めるだろう。市場だけでは受け入れられない。

ワイマールの罠をドイツが打破する道は、ドイツだけで考えることではない。政治不安の答えは、ドイツとヨーロッパの制度にある。安定したヨーロッパだけが、過去の亡霊を封じるのだ。

NYT SEPT. 25, 2017

The Twilight of Angela Merkel

Roger Cohen

AfDの指導的政治家Alexander Gaulandは、「われわれの国、われわれの民族 “Volk” を取り戻す」と誓った。

ドイツはより怒った、より乱れた国になるだろう。タブーは失われた。西側民主主義の主要政党を襲う波はよく知られている。未来への不安、移民、イスラム、テロへの不安だ。責任を免れた者への怒り、不平等とグローバルなエリートの示す傲慢さへの怒りだ。ドイツもそれらに対する免疫を持たなかった。

AfDはトランプが創り出したのではないが、アメリカ大統領がネオナチを明確に非難しないことで、自由世界の政治的地平が変わった。

ドイツは、より穏健でない、たぶん、より普通の国、よりナショナリストの国になる。メルケルは、この選挙戦中、嵐に向かって夢遊病者の歩みを続けた。そのメッセージ、安心感を与え、庶民的で、抜け目ない、退屈な、ライバルにとっては鋭いナイフである政治家、はもう十分すぎた。

10年以上も政権にとどまることは長すぎた。メルケルは疲れ、ドイツも疲れた。


 金利生活者の支配

PS Sep 25, 2017

The Rentiers Are Here

STEPHANIE BLANKENBURG, RICHARD KOZUL-WRIGHT

金融危機以後、所得の不平等に関心が集まってきた。その原因として、貿易や技術革新が焦点となっている。しかし、不平等の潜在的なエンジンが抜けている。それは慢性的なレント・シーキングである。市場シェアの集中、企業支配力の強化、規制体制の変容が、それを可能にしてきた。

レントとは、広い意味で、資産の所有や支配から吸収される所得であり、技術革新や資源の企業家による利用から得られるものと区別される。かつてケインズは、1936年の一般理論で「利子生活者の安楽死」を予想した。しかし、過去30年間、金融的な利子生活者は(その傾向に対して)報復している。民間の信用創造、金融的錬金術を通じて、彼らはその活動が社会にもたらす収益に比べて、まったく釣り合いの取れないほど大きな利益を上げているのだ。

さらに、ハイパーグローバリゼーションの時代には、非金融部門の大企業もまた利子生活階級へと変わってきた。彼らの市場支配力、政治的なロビー活動が、そのレント・シーキング活動を拡大したからだ。知的所有権、民営化、公的補助制度、市場操作、多国間の貿易・投資協定を通じて、彼らは債務の取り立て機関に変身しつつある。

UNCTADのデータによれば、56か国の公開企業に関して、余剰利潤(その部門の典型的な利潤を超える)が全利潤の4%1995-2000年)から23%2009-2015年)に増加した。上位100企業の市場シェアは、同じ時期、16%から40%に上昇した。企業間の格差拡大はレント・シーキングの特徴だ。2015年、上位100社の全市場価値(公開株式の最高価値)は最底辺2000社のそれの7000倍であった。20年前、その比率は20倍でしかなかった。

彼らは市場支配力、資金調達力を急増させたが、それに比べて、雇用の大幅な増大にはつながらなかった。

金利生活者の資本主義に向かう傾向はまだ阻止できる。反独占の法的規制強化、労働者の組織化を促す法整備、貿易協定の見直し、国際的な移転価格や課税回避を監視する能力の改善、など。大企業の活動を、生産的投資と雇用の拡大に向けるべきだ。

NYT SEPT. 27, 2017

How Big Banks Became Our Masters

By RANA FOROOHAR

金融危機から10年が経ったが、既視感は明らかだ。金融スキャンダルとルール作りをめぐる口論がメディアの見出しに並ぶ。ホワイトハウスと共和党員たちは、ドッド=フランク法の厳しい金融業規制を後退させようと試みている。

われわれがまだ十分に理解していない金融システムの中核的な真理とは、金融システムがわれわれの利益に尽くしているのではなく、われわれが彼らの利益に従わされている、ということだ。

かつてアダム・スミスは、金融サービスを、それ自体に存在する目的はなく、他のビジネスを助けるために存在する、とみなした。しかしメイン・ストリートへの融資は、最大級の銀行が行うことのわずかな部分でしかない。1970年代、金融的フローの大部分は、当然、われわれの貯蓄から直接に出て、新しいビジネス投資に注ぎ込まれていた。今は、最大級の金融機関から出る資金のわずか15%しか投資に向かわない。ほかは閉じられた取引である。株式、債券、不動産、その他の資産を売買することに資金が使われ、それは資産の80%を所有する人口の20%を豊かにしている。こうした取引は成長を助けるのではなく、資産ギャップを拡大している。

われわれが本当に議論すべきは、ビジネス・モデルのこうした変化であって、流動性比率や自己資本水準、銀行業の特定の間違った行為に対する処罰方法など、テクニカルな細部ではない。われわれの銀行システムは、もはやアダム・スミスが認めたような市場ではない。すなわち、すべてのプレーヤーが情報に平等にアクセスし、透明な価格と倫理的な枠組みを共有するものではない。

大銀行はディール・メイクに従い、自分たちの利益に尽くす。われわれの経済における砂時計の中間に位置し、他人がそこを通るたびに、彼らが好むレントを取るのだ。大銀行が支配する金融産業は、この国の雇用のわずか4%でしかないが、企業利潤全体のおよそ4分の1を占めている。それゆえ、どのような業種の企業も、このモデルをまねようとする。今や、シリコン・ヴァレーの大企業が、その余剰資金の大部分をゴールドマンサックスと同じ債券の引き受けに使っている。

真に社会のために尽くす金融システムを創るにはどうすればよいのか? このことを議論しない限り、ウォール・ストリートとメイン・ストリートとのギャップはなくならない。


 プエルトリコの災い

Bloomberg 2017926

Puerto Rico's American Dream Is Dead

By Tyler Cowen

プエルトリコの政治・経済モデルは機能していない。アメリカ本土の経済と収れんするという夢も捨てられた。アメリカは、この島の体制を転換して繁栄をもたらすことを諦めたのか?

伝統的なアメリカン・ドリームとは、この国の貧しい部分も、遅かれ早かれ、豊かな部分に追いつくだろう、というものだ。アメリカ南部は、極度に乖離した後、第2次世界大戦後に北部と収れんした。しかし、プエルトリコは決してそのような飛躍を経験しなかった。1970年以降、その相対的な経済条件は変化していない。

さらに悪いことに、島の債務額は1230億ドルに達し、1000億ドルしかないGDPを超えている。この10年間で、人口が9%も減少した。労働者は20年間で20%も減少した。それは特に医療分野で深刻だ。ハリケーン・マリアの被害で、全島で水の供給や電話サービスが止まり、食料供給やアクセスも不確実だ。

連邦政府からの支援は災害前の水準も回復していない。財政的に支払い不能である。340万人のアメリカ人を救出する議会の姿勢は、あまりにも弱い。

プエルトリコが成長する最大のチャンスは、州になることだろう。独立後のアメリカで最も優れたアイデアは、地域を州にすることを重視したことだ。地域の集まりから州になったとき、1人当たり所得は急上昇した。しかし、プエルトリコはそうしなかった。彼らはそれに反対投票した。また本土がヒスパニックの領土を吸収したがらなかった。プエルトリコの上院議員はほとんど民主党員になるだろうから、現在の分断された政治情勢下ではさらに難しい。

西側世界の多くでも同じ問題がある。ギリシャ、イタリア南部、バルカン、ラテンアメリカの多くは、プエルトリコと同様に、キャッチアップに失敗している。アメリカ人は、緊急援助を超えて、プエルトリコの債務を免除する用意があるのか? そのような議論も出ない。

それは彼らの生活水準だけでなく、アメリカという国のかたちを問うものだ。

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The Economist September 16th 2016 

America and the Middle East: Shia crescent rising

Banyan: The people’s strongman

Germany’s refugees: Hearts and minds

Immigration: Return journey

Free exchange: Remote control

(コメント) トランプの中東政策は,ISISを滅ぼし,オバマ外交を破棄し,イランを抑え込み,アメリカの関与を引き下げる,というものです.イランとの核合意を破棄(そして核施設を空爆?)しても,これらを整合的に実現することはできません.

ドゥテルテはタクシンに似ている.IMFからイスラエル中銀,アメリカ連銀を経て,S.フィッシャーが体現するケインズ主義と官僚支配体制の是非.

ドイツとイギリスの移民・難民政策を調べて,日本の移民・難民政策も積極的に示すべきです.

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IPEの想像力 10/2/17

政治にとって,選挙は答えではありません.それは,世界中で多くの選挙が示すように,独裁者を決めるために許された1日だけの国民主権です.

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地下鉄で移動するとき,前の座席の老人は図書館の印が入った本を熱心に読んでおられました.近頃は電車の中で読書する人が少ないのですが,いつか,余裕ができたら,図書館ごと自分の「書斎」にして,好きな小説や歴史,地理,科学の読み物を借りたいな,と思いました.

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政党は看板だけではないはずです.

安倍晋三が自民党の多数を維持・拡大するために解散し,党の利益を優先して選挙を利用しました.小池ユリ子は首相になるために,東京都で自民党を脅かし,民進党を解体して候補者を吸収することで,保守政党の新しい選択肢を提示しました.

衆議院選挙ではなく,安倍vs小池の大統領選挙になった,ということです.安倍も小池も,トランプやマクロンと似た,旧い政党の破壊者です.しかし小選挙区制である以上,野党が分裂するほど,自民党候補たちの笑みは止まりません.

もしかすると民進党は,小池ユリ子の「希望の党」に合流し,多数の力で,その性格を事実上の民進党に変えることができる,と考えたのかもしれません.

アベノミクスの成長戦略を,既得権層の抵抗から切り離すため,保守政党間の競争が有効でしょう.・・・外交・安保では協力できる.社会保障の財政負担,さまざまな不平等,貧困の問題も,左派ではなく右派の政治が議論する.

安倍政権,希望の党を生んだのは,中国・尖閣諸島問題から北朝鮮・核ミサイルです.政治舞台をリアリズムの潮流が切り取りました.保守的再編で排除される姿勢,政治への絶望は急進左派と急進右派に流れ,危機に乗じて政治を支配します.AfDとグリーンが伸びたポスト・メルケルの時代です.

保守派は答えるべきでしょう.政府に批判的なメディア,SNSに広がる人種差別やヘイト・スピーチ,社会運動の模索,マイノリティの権利擁護,をどう考えるか?

他方,リベラル派は具体的に提案できるでしょうか? それは原発廃止のエネルギー政策,近隣諸国との領土問題,沖縄米軍基地,憲法改正案,アジア・外交,安全保障政策について,保守派を超える優れた構想と解決策です.

枝野幸男のサイトを観ました.・・・えらいな,と思います.小池ユリ子と枝野幸男の党首討論,政党間対決・選挙を観たいです.政治家が政党を移り,党名や党首だけで中身のない選挙をしたことで,政治不信は深まるでしょう.次の選挙を前に,自民党は安倍派を追放し,希望の党に合流する.自民党内リベラル派は立憲民主党に参加する.

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ドイツの選挙では,政党のブースが街頭で誰にでも説明するそうです.政党助成金を与えるなら,説明会を常設して,選挙後のチェックをしてほしいです.そして選挙時の公約を掲示し続け,政策を転換したり,政党を離脱したり,新党を作ることの意味を,政治家11人に厳密に説明させます.

政治意識の質を高める工夫はないでしょうか? たとえば,地下鉄の車内で本を読んでいた老人が通うような,図書館を利用してみることです.静かな,小さな図書館で,優れた政治評論を紹介し,諸外国の政治論争や選挙結果を解説し,若者や日本に住む外国人,世界中のジャーナリストたちの話を聞いて質問します.

優れた,熱意ある政治家,高い政治的関心,静かな,中身のある議論.

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