(前半から続く)
● 核兵器をもつ諸国
FT
September 25, 2017
The
nuclear threat can be contained by diplomacy
John Sawers
核兵器が再び話題になっている。1960年代以来、その緊張状態は最悪だ。
現在、核武装した国は9つある。アメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、インド、中国は、純粋に防衛的な武器として、攻撃を抑止する手段としてのみ設定されている。残る3か国は違う。ロシアとパキスタンは、減的な紛争にも核兵器を使用することを考える。北朝鮮は、体制の維持ともっと実際的な利益を得るために、他国を威す手段と考えている。
核兵器は、通常兵器の劣位を均衡させる手段である。冷戦の時代は、ソ連が軍事力の優位を持っていたため、NATO軍は核兵器による報復で均衡を維持した。今、ロシアの巧妙なハイブリッド戦争により、通常兵力のバランスは逆転している。
パキスタンは防衛として核武装した。他方、インドは、次にパキスタンからテロ集団が攻撃した場合、軍事的に報復すると宣言している。軍事的な劣位にあるパキスタンが、いかに早く核兵器による反撃を行うかについて、インド側は理解していない。
北朝鮮をどうするべきか? アメリカ政府は朝鮮半島の非核化を目指してきたが、それはもはや不可能だ。最善の取引は、核・ミサイル開発の停止と、安全保障、実際的な支援を交換することだろう。しかし、金正恩が譲歩することはもはや難しく、中国はアメリカ主導の侵攻や難民流出より、核武装した北朝鮮との共存を選ぶかもしれない。
北朝鮮、パキスタン、イランの核武装をどう扱うのか。われわれは冷戦時代に示した最高の外交術と、適切な防衛力の整備に投資しなければならない。
PS Sep 25,
2017
The Return
of the Madman Theory
NINA L. KHRUSHCHEVA
FP
SEPTEMBER 25, 2017
California
Is Already Preparing for a North Korean Nuclear Attack
BY JANA WINTER
FP
SEPTEMBER 25, 2017
North
Korea Threatens to Shoot Down U.S. Bombers
BY PAUL MCLEARY
FT
September 26, 2017
Donald
Trump’s tweets are weapons of mass distraction
Courtney Weaver
FP
SEPTEMBER 26, 2017
Trump
Needs to Watch Ken Burns’ ‘Vietnam War’ ASAP
BY MAX BOOT
FT
September 27, 2017
Trump says
US willing to use military option against North Korea
Katrina Manson in Washington
FT
September 27, 2017
The
world’s hopes rest with America’s generals
Edward Luce
FT
September 28, 2017
America is
making life difficult for China over North Korea
Fu Ying
● インド
FT
September 25, 2017
Botched
reforms put the brakes on India’s growth
FT
September 28, 2017
Why Thomas
Piketty is wrong about inequality in India
Swaminathan Aiyar
● 金融市場の不安
PS Sep 25,
2017
Why
Financial Markets Underestimate Risk
JEFFREY FRANKEL
PS Sep 25,
2017
The Fear
Factor in Today’s Interest Rates
CARMEN REINHART, VINCENT REINHART
PS Sep 26,
2017
The
Courage to Normalize Monetary Policy
STEPHEN S. ROACH
いつまでも危機状態を前提とした金融政策を続けることは間違いだ。
● 金利生活者の支配
PS Sep 25,
2017
The
Rentiers Are Here
STEPHANIE BLANKENBURG, RICHARD KOZUL-WRIGHT
金融危機以後、所得の不平等に関心が集まってきた。その原因として、貿易や技術革新が焦点となっている。しかし、不平等の潜在的なエンジンが抜けている。それは慢性的なレント・シーキングである。市場シェアの集中、企業支配力の強化、規制体制の変容が、それを可能にしてきた。
レントとは、広い意味で、資産の所有や支配から吸収される所得であり、技術革新や資源の企業家による利用から得られるものと区別される。かつてケインズは、1936年の一般理論で「利子生活者の安楽死」を予想した。しかし、過去30年間、金融的な利子生活者は(その傾向に対して)報復している。民間の信用創造、金融的錬金術を通じて、彼らはその活動が社会にもたらす収益に比べて、まったく釣り合いの取れないほど大きな利益を上げているのだ。
さらに、ハイパーグローバリゼーションの時代には、非金融部門の大企業もまた利子生活階級へと変わってきた。彼らの市場支配力、政治的なロビー活動が、そのレント・シーキング活動を拡大したからだ。知的所有権、民営化、公的補助制度、市場操作、多国間の貿易・投資協定を通じて、彼らは債務の取り立て機関に変身しつつある。
UNCTADのデータによれば、56か国の公開企業に関して、余剰利潤(その部門の典型的な利潤を超える)が全利潤の4%(1995-2000年)から23%(2009-2015年)に増加した。上位100企業の市場シェアは、同じ時期、16%から40%に上昇した。企業間の格差拡大はレント・シーキングの特徴だ。2015年、上位100社の全市場価値(公開株式の最高価値)は最底辺2000社のそれの7000倍であった。20年前、その比率は20倍でしかなかった。
彼らは市場支配力、資金調達力を急増させたが、それに比べて、雇用の大幅な増大にはつながらなかった。
金利生活者の資本主義に向かう傾向はまだ阻止できる。反独占の法的規制強化、労働者の組織化を促す法整備、貿易協定の見直し、国際的な移転価格や課税回避を監視する能力の改善、など。大企業の活動を、生産的投資と雇用の拡大に向けるべきだ。
PS Sep 26,
2017
Tackling
Non-Inclusive Growth
MICHAEL SPENCE
FT
September 28, 2017
Boeing
seeks protection in the guise of fairness
FT
September 27, 2017
Humbler is
better for Uber and Facebook
John Gapper
NYT SEPT.
27, 2017
How Big
Banks Became Our Masters
By RANA FOROOHAR
金融危機から10年が経ったが、既視感は明らかだ。金融スキャンダルとルール作りをめぐる口論がメディアの見出しに並ぶ。ホワイトハウスと共和党員たちは、ドッド=フランク法の厳しい金融業規制を後退させようと試みている。
われわれがまだ十分に理解していない金融システムの中核的な真理とは、金融システムがわれわれの利益に尽くしているのではなく、われわれが彼らの利益に従わされている、ということだ。
かつてアダム・スミスは、金融サービスを、それ自体に存在する目的はなく、他のビジネスを助けるために存在する、とみなした。しかしメイン・ストリートへの融資は、最大級の銀行が行うことのわずかな部分でしかない。1970年代、金融的フローの大部分は、当然、われわれの貯蓄から直接に出て、新しいビジネス投資に注ぎ込まれていた。今は、最大級の金融機関から出る資金のわずか15%しか投資に向かわない。ほかは閉じられた取引である。株式、債券、不動産、その他の資産を売買することに資金が使われ、それは資産の80%を所有する人口の20%を豊かにしている。こうした取引は成長を助けるのではなく、資産ギャップを拡大している。
われわれが本当に議論すべきは、ビジネス・モデルのこうした変化であって、流動性比率や自己資本水準、銀行業の特定の間違った行為に対する処罰方法など、テクニカルな細部ではない。われわれの銀行システムは、もはやアダム・スミスが認めたような市場ではない。すなわち、すべてのプレーヤーが情報に平等にアクセスし、透明な価格と倫理的な枠組みを共有するものではない。
大銀行はディール・メイクに従い、自分たちの利益に尽くす。われわれの経済における砂時計の中間に位置し、他人がそこを通るたびに、彼らが好むレントを取るのだ。大銀行が支配する金融産業は、この国の雇用のわずか4%でしかないが、企業利潤全体のおよそ4分の1を占めている。それゆえ、どのような業種の企業も、このモデルをまねようとする。今や、シリコン・ヴァレーの大企業が、その余剰資金の大部分をゴールドマンサックスと同じ債券の引き受けに使っている。
真に社会のために尽くす金融システムを創るにはどうすればよいのか? このことを議論しない限り、ウォール・ストリートとメイン・ストリートとのギャップはなくならない。
● 移民政策
NYT SEPT.
25, 2017
Italy’s
Dodgy Deal on Migrants
By
THE EDITORIAL BOARD
NYT SEPT.
27, 2017
How to
Treat Refugees With Dignity: A Lesson From Turkey
By RULA JEBREAL
● ロシアの情報戦争
NYT SEPT.
25, 2017
The Only
Way to Defend Against Russia’s Information War
By NINA JANKOWICZ
● マクロンとEU改革
The
Guardian, Tuesday 26 September 2017
The
Guardian view on Macron’s Europe speech: a bold vision
Editorial
FT
September 26, 2017
Imaginative
reform is vital for the eurozone to thrive
Martin Wolf
ユーロ圏は2度の危機を生き延びた。今は景気回復が実現しているが、それをユーロ圏改革の機会として利用しなければならない。問題は、どのような改革を行うか、である。
政府債務危機に陥る国に対して緊急支援する制度の構築は決まった。しかし、ユーロ圏内では収斂より分散・乖離が進みつつある。政府も民間も債務が増大している。次のショックが金融市場を襲った場合、ユーロ圏は生き延びられるだろうか?
フランスのマクロン大統領が目指す財政統合は成功しないと思う。ドイツの選挙結果は、それを一層難しくした。むしろAdam
Lerrick(the
American Enterprise Institute)が示した提案が興味深い。危機の際には、強い国と弱い国の間に政府債の金利差が発生する。そこから得る利益の半分を、基金としてプールして、弱い国への支援に回すのだ。その仕組みを、Eurozone
Financing Cost Stabilisation Accountと呼ぶ。ドイツの嫌う財政移転同盟ではなく、それは「連帯」を示す行動になる。
財政の連邦化を強いることなく、その効果を得られる優れたアイデアだ。
FT
September 27, 2017
Macron’s
bid to reinvent the European project
SPIEGEL
ONLINE 09/2/2017
Fresh
Headwinds for Euro Reforms?
Uncertainty
Dogs Europe After German Election
By Peter Müller
PS Sep 26,
2017
Europe’s
Battle on Four Fronts
ANATOLE KALETSKY
ドイツの選挙が終わって、ヨーロッパにおける一連の政治的混乱は終わった。これらの投票結果がもたらした騒動を超えて、今や、行動するときだ。ヨーロッパの「多次元危機」(“multi-crisis”:
Brexit, refugees, “illiberal democracy” in Hungary and Poland, the
still-unresolved euro crisis, and the geopolitical risks attributable to Donald
Trump and Vladimir Putin)は迫っている。
フランスは過剰な規制と過度のシフ支出を削減せねばならない。ドイツは財政緊縮と金融政策のドグマを再考せねばならない。イギリスはナショナリズムと移民の方針を逆転せねばならない。EUは、各国の市民が望まないような、すべての加盟国の「より緊密な同盟」を推進する姿勢を改めねばならない。
これら4つの転換を同時に進めるべきだ。
FT
September 29, 2017
Macron is
right — the eurozone needs a finance minister
Reza Moghadam
PS Sep 28,
2017
Macron’s
Challenge for Europe
PHILIPPE LEGRAIN
マクロンの議会演説はEUの改革を訴えている。しかし、ドイツの選挙結果はメルケルの制約を重くしただろう。メルケルはユーロ圏が必要とする改革をマクロンと実行することが難しいかもしれない。それは、金融市場の深い統合、銀行・政府の債務処理の円滑化、財政のより大きな弾力性、より均衡のとれた経済調整メカニズム、である。
● NAFTA
PS Sep 26,
2017
How to
Improve NAFTA
JORGE G. CASTAÑEDA , CARLOS HEREDIA
● ロヒンギャ難民
FP
SEPTEMBER 26, 2017
The
Rohingya Are the New Palestinians
BY CRAIG CONSIDINE
YaleGlobal,
Tuesday, September 26, 2017
Mishandling
the Rohingya Crisis May Open New Frontier for Terrorism
Bertil Lintner
PS Sep 27,
2017
Myanmar’s
Jihadi Curse
BRAHMA CHELLANEY
FT
September 29, 2017
Myanmar’s
new regime flounders over Rohingya crisis
John Reed in Naypyidaw
● プエルトリコの災い
Bloomberg
2017年9月26日
Puerto
Rico's American Dream Is Dead
By Tyler Cowen
プエルトリコの政治・経済モデルは機能していない。アメリカ本土の経済と収れんするという夢も捨てられた。アメリカは、この島の体制を転換して繁栄をもたらすことを諦めたのか?
伝統的なアメリカン・ドリームとは、この国の貧しい部分も、遅かれ早かれ、豊かな部分に追いつくだろう、というものだ。アメリカ南部は、極度に乖離した後、第2次世界大戦後に北部と収れんした。しかし、プエルトリコは決してそのような飛躍を経験しなかった。1970年以降、その相対的な経済条件は変化していない。
さらに悪いことに、島の債務額は1230億ドルに達し、1000億ドルしかないGDPを超えている。この10年間で、人口が9%も減少した。労働者は20年間で20%も減少した。それは特に医療分野で深刻だ。ハリケーン・マリアの被害で、全島で水の供給や電話サービスが止まり、食料供給やアクセスも不確実だ。
連邦政府からの支援は災害前の水準も回復していない。財政的に支払い不能である。340万人のアメリカ人を救出する議会の姿勢は、あまりにも弱い。
プエルトリコが成長する最大のチャンスは、州になることだろう。独立後のアメリカで最も優れたアイデアは、地域を州にすることを重視したことだ。地域の集まりから州になったとき、1人当たり所得は急上昇した。しかし、プエルトリコはそうしなかった。彼らはそれに反対投票した。また本土がヒスパニックの領土を吸収したがらなかった。プエルトリコの上院議員はほとんど民主党員になるだろうから、現在の分断された政治情勢下ではさらに難しい。
西側世界の多くでも同じ問題がある。ギリシャ、イタリア南部、バルカン、ラテンアメリカの多くは、プエルトリコと同様に、キャッチアップに失敗している。アメリカ人は、緊急援助を超えて、プエルトリコの債務を免除する用意があるのか? そのような議論も出ない。
それは彼らの生活水準だけでなく、アメリカという国のかたちを問うものだ。
FT
September 28, 2017
The woeful
response to Puerto Rico’s plight
PS Sep 28,
2017
What
Puerto Rico Needs
SIMON JOHNSON
NYT SEPT.
28, 2017
Washington
Set Puerto Rico Up for Disaster
By HECTOR FIGUEROA
それは自然災害だけではなかった。ワシントンに代表を送らないプエルトリコは、常に、島民に責任を負わない政治家たちの気まぐれに従うしかなかった。半世紀も前に、免税措置で本土の産業を島へ誘致したが、この数十年はその効果も失われた。ハゲタカのヘッジ・ファンドが集まるだけで、病院、学校、電力、通信は投資が不足し、巨大ハリケーンに対して脆弱な社会となっていたのだ。
● アメリカの税制改革
PS Sep 27,
2017
The
International Consequences of US Tax Reform
MARTIN FELDSTEIN
アメリカが法人税を大幅に変更し、子会社の海外における利潤が本国に送金された分に課税するのをやめれば、また法人税率を半分にすれば、その影響は深刻だ。これまでアメリカに帰らず世界の投資をになって北アメリカ企業がヨーロッパやアジアへの投資を減らし、また、アメリカに本社機能を移す企業が増えるかもしれない。世界の主要国間で移動する傾向を強める資本に対する、国際的な税率引き下げ競争にもなるだろう。
● トランプの描く秩序
PS Sep 27,
2017
Trump on
the Warpath
JEFFREY D. SACHS
アメリカの軍事的な優位は外交をより傲慢にし、戦争を繰り返してきた。アフガニスタンとイラクでブッシュ政権が行ったことを、トランプは北朝鮮とイランで繰り返すかもしれない。
NYT SEPT.
27, 2017
Folks,
We’re Home Alone
Thomas L. Friedman
かつてアチソンDean
Acheson国務長官は、著名な回想録“Present
at the Creation”を残した。多くの人々に60年間の安全保障と繁栄をもたらした、第2次世界大戦後の秩序が誕生した過程を描いたものだ。われわれは同様に内外の秩序が激変する瞬間を生きている。しかし、ワシントンについて書かれた本はどれも“Absent
at the Creation”である。
気候変動の科学を否定する指導者をアメリカが抱えていることは、急速に変化し、連携を強める時代において、われわれの個人・社会を適応不能にする。医療保険や教育を改善し、個人や企業よりも炭素排出に課税し、移民・通商政策をできるだけオープンにする。
“America First”ではなく、“America
Connected”であることがわれわれを豊かにする。
PS Sep 28,
2017
Trump’s UN
Hypocrisy
CHRISTOPHER R. HILL
● 中国の秩序
FP
SEPTEMBER 27, 2017
China’s
Mekong Plans Threaten Disaster for Countries Downstream
BY RICHARD BERNSTEIN
FT September
29, 2017
China’s
party congress will show Xi’s supremacy
FP SEPTEMBER
28, 2017
Sex Dolls
Are Replacing China’s Missing Women
BY MEI FONG
女性の足りない中国では、Sex
dollsの市場が拡大している。2030年までに男性の約3000万人が余剰になる。
● 中東地域の紛争
FP SEPTEMBER
28, 2017
Israel Is
Going to War in Syria to Fight Iran
BY JONATHAN SPYER
FP SEPTEMBER
28, 2017
A Field
Trip to the Front Lines of the Qatar-Saudi Cold War
BY SIMON HENDERSON
● ヴェネズエラ
Bloomberg 2017年9月28日
The Right
Way to Do Regime Change in Venezuela
By Meghan L. O'Sullivan
経済制裁でヴェネズエラ政府を倒すことはできるが、体制崩壊後の混乱は望まない。南アフリカ政府がアパルトヘイトを続けたときにアメリカがしたように、反対勢力に政権を委譲する能力が高められるような制裁を科すべきだ。
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The Economist September 16th 2016
America and the Middle
East: Shia crescent rising
Banyan: The people’s
strongman
Germany’s refugees:
Hearts and minds
Immigration: Return
journey
Free exchange: Remote
control
(コメント) トランプの中東政策は,ISISを滅ぼし,オバマ外交を破棄し,イランを抑え込み,アメリカの関与を引き下げる,というものです.イランとの核合意を破棄(そして核施設を空爆?)しても,これらを整合的に実現することはできません.
ドゥテルテはタクシンに似ている.IMFからイスラエル中銀,アメリカ連銀を経て,S.フィッシャーが体現するケインズ主義と官僚支配体制の是非.
ドイツとイギリスの移民・難民政策を調べて,日本の移民・難民政策も積極的に示すべきです.
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IPEの想像力 10/2/17
政治にとって,選挙は答えではありません.それは,世界中で多くの選挙が示すように,独裁者を決めるために許された1日だけの国民主権です.
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地下鉄で移動するとき,前の座席の老人は図書館の印が入った本を熱心に読んでおられました.近頃は電車の中で読書する人が少ないのですが,いつか,余裕ができたら,図書館ごと自分の「書斎」にして,好きな小説や歴史,地理,科学の読み物を借りたいな,と思いました.
****
政党は看板だけではないはずです.
安倍晋三が自民党の多数を維持・拡大するために解散し,党の利益を優先して選挙を利用しました.小池ユリ子は首相になるために,東京都で自民党を脅かし,民進党を解体して候補者を吸収することで,保守政党の新しい選択肢を提示しました.
衆議院選挙ではなく,安倍vs小池の大統領選挙になった,ということです.安倍も小池も,トランプやマクロンと似た,旧い政党の破壊者です.しかし小選挙区制である以上,野党が分裂するほど,自民党候補たちの笑みは止まりません.
もしかすると民進党は,小池ユリ子の「希望の党」に合流し,多数の力で,その性格を事実上の民進党に変えることができる,と考えたのかもしれません.
アベノミクスの成長戦略を,既得権層の抵抗から切り離すため,保守政党間の競争が有効でしょう.・・・外交・安保では協力できる.社会保障の財政負担,さまざまな不平等,貧困の問題も,左派ではなく右派の政治が議論する.
安倍政権,希望の党を生んだのは,中国・尖閣諸島問題から北朝鮮・核ミサイルです.政治舞台をリアリズムの潮流が切り取りました.保守的再編で排除される姿勢,政治への絶望は急進左派と急進右派に流れ,危機に乗じて政治を支配します.AfDとグリーンが伸びたポスト・メルケルの時代です.
保守派は答えるべきでしょう.政府に批判的なメディア,SNSに広がる人種差別やヘイト・スピーチ,社会運動の模索,マイノリティの権利擁護,をどう考えるか?
他方,リベラル派は具体的に提案できるでしょうか? それは原発廃止のエネルギー政策,近隣諸国との領土問題,沖縄米軍基地,憲法改正案,アジア・外交,安全保障政策について,保守派を超える優れた構想と解決策です.
枝野幸男のサイトを観ました.・・・えらいな,と思います.小池ユリ子と枝野幸男の党首討論,政党間対決・選挙を観たいです.政治家が政党を移り,党名や党首だけで中身のない選挙をしたことで,政治不信は深まるでしょう.次の選挙を前に,自民党は安倍派を追放し,希望の党に合流する.自民党内リベラル派は立憲民主党に参加する.
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ドイツの選挙では,政党のブースが街頭で誰にでも説明するそうです.政党助成金を与えるなら,説明会を常設して,選挙後のチェックをしてほしいです.そして選挙時の公約を掲示し続け,政策を転換したり,政党を離脱したり,新党を作ることの意味を,政治家1人1人に厳密に説明させます.
政治意識の質を高める工夫はないでしょうか? たとえば,地下鉄の車内で本を読んでいた老人が通うような,図書館を利用してみることです.静かな,小さな図書館で,優れた政治評論を紹介し,諸外国の政治論争や選挙結果を解説し,若者や日本に住む外国人,世界中のジャーナリストたちの話を聞いて質問します.
優れた,熱意ある政治家,高い政治的関心,静かな,中身のある議論.
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