IPEの果樹園2017
今週のReview
9/18-23
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独仏とユーロ圏改革 ・・・アメリカのラスプーチン ・・・北朝鮮対策 ・・・21世紀の難問 ・・・ハリケーンの教訓 ・・・世界の重心移動 ・・・ロボットとITの世界 ・・・徴兵制 ・・・9・11の再来 ・・・イランとの核合意 ・・・EMS危機からBrexitまで ・・・オーストラリアの同性婚論争
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 独仏とユーロ圏改革
Project
Syndicate, Sep 8, 2017
Surmounting
the German Surplus
FABRIZIO CORICELLI
ドイツの経常収支黒字については論争がある。しかし、トランプのように、これをドイツが重商主義政策で創り出したと非難するのは間違いだ。しかし、ヨーロッパの多くの国でも、ドイツの黒字をユーロ危機や不況の原因として憎んでいる。ドイツは財政黒字に執着し、他国に緊縮政策を強制する、というのだ。ドイツが第1次世界大戦後に強いられた賠償金問題と比べる論もある。
Project Syndicateに現れた論説を集めて、ドイツの経常黒字を考える。まず、対外不均衡の説明はエコノミストによって大きく異なっており、意見は一致しない。経常黒字はさまざまな要因を反映しているからだ。2007年の金融危機によって、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペインのように、ヨーロッパ諸国の経常収支は大きな赤字になったが、バルチック諸国は赤字からGDPの15%に達する黒字になった。アメリカも赤字が半減し、中国の黒字もGDPの10%に相当する分が減少した。他方、ドイツの黒字はGDPの8%を超えた。
それは、見方によれば、アメリカがそれほど多くの金融商品を外国の投資家に買わせたせいだ。アメリカの経常赤字とドイツの経常黒字とは一緒にタンゴを踊っている。リスクの高い借り手があれば、慎重さを欠いた貸し手もいた。黒字の国も赤字の国も、同時に民間の判断で不均衡を拡大した。たとえば、それはユーロ圏ができたことで、リスクが無視できると思ったことだ。ドイツから南欧諸国へ、貯蓄が雪崩のように移動した。
ドイツの黒字を、需要の不足やユーロ危機と結び付けて議論するのは間違いだ。ドイツの製品が高い競争力を持つ、というのは、不均衡を説明しない。国際貿易はゼロサムではない。ドイツの特殊な事情に結び付けるより、オランダ、スイス、スウェーデン、ノルウェイがドイツに劣らぬ大幅な黒字を出していることに注意すべきだ。東西再統一の財政支出が1回きりの拡大を示したことが影響した。ドイツが急速に高齢化する社会であり、貯蓄率をしばらく高める理由があるから、経常黒字を出し続けることは当然だと言える。
しかし、ドイツ政府には不均衡を是正する政策が採用できるし、たとえば民間投資を刺激する正しい政策や、教育、エネルギー、インフラなどに政府支出を増やすこと、そして不平等を抑えるために貧困層の所得を増やすことは、ドイツの経常黒字を減らすだろう。サービス部門の規制を緩和し、競争を刺激することは、ドイツ国民にも好ましい。経常黒字が増えても、ドイツの経済パフォーマンスは決して他国より良好ではない。
そもそも、赤字諸国にポピュリストの政治家が増えているように、ドイツの黒字がユーロ圏の将来を悲観させるものとなっている。ドイツが黒字を減らす政策を採用することは、政治的に観て、ドイツに必要なのだ。
Project
Syndicate, Sep 11, 2017
The Euro’s
Narrow Path
BARRY EICHENGREEN
マクロンとメルケルは、ユーロ圏の最悪の弱点を改善できるかもしれない。しかし、2人の考え方は大きく分裂したままだ。マクロンは、フランスの伝統に従い、通貨同盟の権限集中が少なすぎる、と考える。ユーロ圏は独自の財務大臣と議会を持つべきである。何千億ユーロの規模の予算を立て、投資計画を推進し、高い失業率の国には支出を増加する。
メルケルは、ユーロ圏の問題が行き過ぎた権限集中であり、各国の責任が小さすぎることだ、と考える。彼女は、巨額のユーロ圏予算が責任ある支出にならないことを心配する。ユーロ圏の財務大臣に反対しないが、それが巨大な権力を持つとは考えない。
両者が合意できる細い道がある。それは銀行同盟だ。ユーロ圏の銀行に対応する金融監督をECBは行うが、銀行保険を欠いている。ドイツ政府は、ヨーロッパの銀行システムにおけるリスク削減が足りない、と考える。つまり、ドイツの銀行が支払う保険料で、他の国の銀行を助けるのではないか、と心配している。
その解決策は、BISによる資本基準を厳格に適用することと、政府債券の保有額を制限することだ。しかし、ここに逆説がある。ヨーロッパの金融監督局は、ドイツも含めて、アメリカとの交渉で基準のゆるやかな適用を求めているのだ。
また、ヨーロッパの金融安定化メカニズムがある。これは欧州安定化危機になると予定されている。政府は基金を拠出し、その借入額を増やすことになる。しかし、意思決定を現在の全員一致から条件付き多数決に移行しなければならない。また各国が集まって夜通し妥協案を模索するより、ユーロ圏の代表、市民社会の代表として欧州理事会が指名し、欧州議会が承認した代表、による執行委員会が意思決定するべきだ。
しかし、ドイツは財政負担が増える介入に反対だ。課税と財政支出とは今も各国の決定に委ねられ、外部の監視は効果がない。その代わりに、財政政策の権限を各国に戻し、EUルールによる制約を廃止することも考えられる。財政政策を間違った国は、破たんを回避するため、債務の組み替えに頼ることになる。その影響は他国に波及しない。なぜなら銀行の政府債券保有が減るだろうから。
こうした考え方は連邦主義者の嫌うものだ。それは、たとえば、GDPの1%を集めて失業保険の基金にしてみることだ。同様の仕組みはアメリカの連邦政府にある。その支出に関してユーロ圏の財務大臣が決定する。そして、これが成功すれば拡大する。
しかし、ドイツの政治家は不満であろう。フランスより失業率が低いからだ。フランスは構造改革を行って、失業率を下げてから失業保険に参加するべきだ、と考える。完璧ではないが、こうした独仏の取引がユーロ圏を改善する。
FT September
13, 2017
Why the
euro appreciation is a headache for the ECB
Lorenzo Bini Smaghi
Bloomberg 2017年9月13日
Juncker
Wants a U.S. of Europe. Does Anyone Else?
By Leonid Bershidsky
● アメリカのラスプーチン
NYT SEPT.
8, 2017
The Cold
Warrior Who Never Apologized
JONATHAN STEVENSON
反政府活動や非伝統的な戦闘など、ベトナム戦争は、第2次世界大戦や朝鮮戦争を経験してきたアメリカ軍の指導者たちにとって、何か異なるものであった。その結果、この戦争について楽観的な予想を示す非軍人の戦略家たちに対して、通常と違って反論しなかった。その中でもロストウWalt
Whitman Rostowがもっとも楽観的だった。
ロストウはMITの研究者からケネディー政権の国務省に入った。その後、リンドン・ジョンソンの国家安全保障顧問になり、ベトナム戦争にアメリカが関与を深めた時期を担った。彼は他の戦略家と同様、戦争経験のないエコノミストであり、テクノクラートであった。
1960年の著書(“The Stages of Economic Growth: A
Non-Communist Manifesto”)で、確かな経済成長が共産主義の政治運動を抑える最良の保証である、と説いた。成長は段階を追って生じ、その決定的な段階は、経済の基幹部門が急速に拡大する「離陸take
off」であった。この本は、西側に偏った思考と批判されたが、ケネディーの関心を惹き、数か月後に、ロストウはベトナムでの戦略を計画していた。
ロストウは、ベトコンが南ベトナムの「離陸」を妨げており、それゆえアメリカはベトコンのゲリラを阻止するために必要な軍事的、外交的な手段を駆使するべきだ、と考えた。それは軍事行動の拡大を推進しつつも、政治と経済とを結びつける思考であった。
マクナマラRobert
McNamara国防長官など、他の戦略家たちがベトナム戦争の拡大を批判した後も、ロストウは最後まで大統領を批判から守り、戦争を支持し続けた。歴史家David
Milneは、ロストウを「アメリカのラスプーチン」と呼んだ。ロストウは2003年に死去したが、戦争について謝罪せず、反省することはなかった。戦争はする価値があり、アメリカが敗北したのは議会が予算を削ったからだ、と主張していた。
● 北朝鮮対策
Bloomberg 2017年9月8日
Negotiate
with North Korea? A Russian Tried
By Leonid Bershidsky
FP
SEPTEMBER 11, 2017
Trump
Administration Pulls Back from Aggressive U.N. Resolution on North Korea
BY COLUM LYNCH
決議に違反した疑いのある北朝鮮船舶を、アメリカが強制的に検査する項目は削除された。それは米軍の介入に安保理が承認を与えるものだった。しかし、安保理の全会一致を維持したことは成果である。この決議案が成立したのは、典型的な安保理の取引であった。中国とロシアは強い制裁に賛成する余地はなかった。
YaleGlobal,
Tuesday, September 12, 2017
Game-Changer:
North Korean Provocations Spark Policy Dilemmas
Robert A. Manning
北朝鮮をめぐって、アメリカ、中国、ロシア、日本が対立する間に、金正恩は核兵器とミサイルの技術を急速に完成しつつある。今後、世界最大の貿易相手国であるアメリカと中国とが北朝鮮をめぐって対立を深めるのか、あるいは協力と信頼を形成するのか、それが東アジア地域の将来を決めるのだ。
NYT SEPT.
13, 2017
North
Korea’s Nuclear Weapons, Japan’s Bind
By YOICHI FUNABASHI
日本政府は北朝鮮の脅威に対して有効な選択肢がない。
ミサイル防衛システムを強化することを進めている。北朝鮮のミサイル基地に報復攻撃する能力を持つことも防衛大臣は指摘したが、それを実現するにはさまざまな問題がある。アメリカとの安全保障条約を改正しなければならない。アメリカでは韓国と日本が独自に核武装することも考える者がいる。しかし、韓国と違って、日本の世論は支持しない。
日本政府は、外交的な協力によって圧力を強める、としか答えられない。しかし、これまでは関係諸国間の対立が目立っている。南シナ海の対立、日韓の従軍慰安婦問題、中国とアメリカの貿易問題、など。
北朝鮮があまりにも脅威を強めたせいで、関係諸国には対立を克服する動きが見え始めた。安倍首相はトランプ大統領と緊密に話し合っている。プーチン大統領との関係も長い。中国や韓国との関係も、北朝鮮をめぐって変化がみられる。
Bloomberg 2017年9月13日
A Naval
Blockade Is the Best Option to Cut Off North Korea
By James Stavridis
● 21世紀の難問
NYT SEPT.
8, 2017
Hungary Is
Making Europe’s Migrant Crisis Worse
By THE EDITORIAL BOARD
われわれの時代の人道における難問は、中東やアフリカから、危険な過程を経て地中海を超え、暴力を逃れるためにヨーロッパへやってくる多数の難民たちを、どのように再定住させるか、ということだ。彼らの土地に平和と繁栄が戻らぬ限り、永続的な解決策は見つからない。
ハンガリーはEUへの難民を割り当てることに反対し、難民を拒否している。それは恥ずべきことだが、EUには強制する手段がない。ハンガリーは、特に1989年、東欧からの移民に国境を開放し、人権の擁護、人道的配慮は国際的なルールである、と宣言した国である。その姿勢の変わりようは、強い批判にあって当然だ。
FT SEPTEMBER
10, 2017
The perils
of a hard line on post-Brexit immigration
Wolfgang Munchau
FP
SEPTEMBER 11, 2017
Trump
Doesn’t Understand the Economics of Immigration
BY LINDA CHAVEZ
トランプ大統領は、オバマによるDeferred
Action for Childhood Arrivals (DACA)を廃止する決定を下した。6歳以下で両親とともにアメリカに入国した正式の書類を持たない移民たちが、国外退去されないよう、その延期を認めた法律である。
トランプの醜悪な選挙キャンペーンは、非合法移民に焦点を当て、壁を建設する、アメリカ人の雇用を守る、移民たちは犯罪を激増させる、と宣伝した。しかしその背後で、合法移民の数を大幅に減らすロビー活動を長年停会する集団とも協力していた。それが2015年の、アメリカを偉大にする移民改革法のキャンペーンであった。
トランプ政権が支持しているThe
Reforming American Immigration for Strong Employment (RAISE) Act案は、合法移民を即座に41%減らし、10年以内に半減させる。熟練と英語能力によるポイント制を導入する。配偶者と18歳未満の子供を除いて、家族への支援を廃止する。新移入民の構成を大きく転換するものだ。かつて1917年にアジア系移民、1924年に南欧・東欧系移民を排除した。RAISEはそれと同様に、移民の同化に対する根拠のない不安を理由にしている。
法案の起草者が目指すのは、現在、低熟練の移民労働者が働く職場を、失業中の、あるいは、労働市場から脱落したアメリカ人に開放することだ。しかし、失業手当や福祉などで暮らすアメリカ人が、農産物の収穫や乳しぼり、トイレ掃除、鶏肉の加工、屋根の修理、などの職に就こうと、即座に応じるとは思えない。
より重要なことは、現在の移民システムがアメリカの人口変動に応じるだけの柔軟性と市場型の労働力供給を満たすことだ。多くの工業化した諸国で出生率が低下し、高齢化が進んでいる。人口減少による社会保障や医療保険制度の問題が悪化する。21世紀の移民システムを、20世紀初めの、人種差別に依拠したアメリカ人優遇策に戻すことは間違いだ。
FP
SEPTEMBER 12, 2017
THIS LAND
IS THEIR LAND
BY SUKETU MEHTA
難民は,Zygmunt
BaumanがNYTのインタビューで述べたように,カオスと無法状態の亡霊である.秩序ある豊かな諸国が,余剰人口を植民地に放出し,その後,撤退して,不出来な「国民国家」が残された.経済的・政治的な無秩序はそうして生まれたのだ.難民は「無国家」に苦しみ続ける.
われわれは難民を拒む.なぜなら彼はわれわれの最悪の不安を集約しているから.21世紀のかなたに浮かぶ恐怖が,人の姿で国境に現れた.彼はわれわれに教える.同じことはわれわれにも起こるだろう,と.すべてが,根本的に,逆転しえない形で,突然変化する.
西側の豊かな諸国は,移民によって破壊されるのではなく,移民への恐怖心によって滅ぶのだ.
もしあなたが自分は世界市民だと思うなら,どこの市民でもない.イギリスのメイ首相は2016年10月にそう語った.
なぜメキシコ人,グアテマラ人,ホンジュラス人,サルバドル人は北に行くことを切望し,アメリカへ来て,洗車やクリーニングのような,都市の下層労働に就くのか? それはアメリカ人が彼ら二十を売り,麻薬を買うからだ.彼らの国の殺人の多さは,内戦状態を意味している.
1968年,パウエルEnoch Powellは,私の家族のような人たちを念頭に,演説した.イギリスが彼らを受け入れることはあまりにも愚かである,として,イギリスの将来を予告したのだ.「それは火葬の準備を急ぐようなものだ.・・・ローマ帝国がそうなったように,私には見えるのだ.ティベル河に大量の血が流れている.」
半世紀を経て,テムズ川には血が流れていない.現実は,その逆だ.東アフリカのアジア系難民コミュニティーは,キリスト教徒,ヒンドゥー教徒,イスラム教徒,パーシ教徒,シーク教徒のコミュニティーがあり,イギリスで最も裕福なコミュニティーだ.教育水準もイギリス生まれの水準を超えている.
カナダのように,移民を受け入れる諸国は,日本のように,受け入れない諸国よりも成長している.移民たちは職場を作り,料理や,ダンス,著作を豊かにする.移民たちの船があなたの国の岸に就くのは,あなたを助けるためなのだ.
FP
SEPTEMBER 12, 2017
Lebanon’s
Shining Island of Example Is Shrinking
BY KIM GHATTAS
SPIEGEL
ONLINE 09/13/2017
Open
Borders
Uganda Is
the Most Refugee-Friendly Country in the World
By Christoph Titz and Maria Feck (Photos)
in Arua, Uganda
Project
Syndicate Sep 14, 2017
The
Urgency of Refugee Education
FILIPPO GRANDI
NYT SEPT.
14, 2017
Welcoming
Refugees Should Be a Settled Question
By DAVID MILIBAND
● ハリケーンの教訓
Project
Syndicate, Sep 8, 2017
Learning
from Harvey
JOSEPH E. STIGLITZ
ハリケーン・ハーベイが去って、生活が再開し、被害が明らかになっている。不動産の被害額は推定1500-1800億ドルだ。ハリケーンは、アメリカの経済システムと政治に関する深刻な疑問を生じた。
ハリケーンは気候変動と関連しているが、多くの住民が気候変動を否定し、その経済が地球の温暖化を進める化石燃料に大きく依存している土地を襲ったことは皮肉である。科学者たちは、長い間、温暖化ガスが増加することで気温が上昇するだけでなく、ハリケーン・ハーベイのような異常気象が増えると予測していた。「温暖化は大気中の水分を増やし、より激しい降雨をもたらす。」
ヒューストンとテキサスは、温暖化ガスの増加について自分たちにできることはあまりないが、強力な気候対策をできただろう。かつて災害が多く発生していた地方政府や州政府は予防策をもっと採れただろう。
ハリケーンに遭えば、人々は修復費用の支援を政府に求める。それは2008年の経済危機の後にも求められた。ここは政府や集団的行為に対する非難が頻繁に行われる地域であるが、それも皮肉なことである。銀行業界の巨人たちが政府の縮小、規制の撤廃を唱えて、ねーリベラルの福音を説き、その先には非常に危険な、反社会的行為がもたらされ、破たんすれば政府による救済が必要になる。それは皮肉どころではない。
金融危機と同様、気候変動の衝撃を緩和するには予防的な集団行動が必要である。災害に耐える建物の基準を守らせ、危険な地域には建てない。嵐の衝撃を吸収する湿原地帯を守る。危険な化学物質の流出が起きないように、また、退避命令など、緊急時の対応を計画しておくことだ。
テキサスなど、それに反対する政治文化が支配的でも、効果的な政府投資や強力な規制が必要だ。もし規制が不十分で、個人や企業の対応に頼るなら、彼らは災害の費用が他者によって(税金で)支払われると知っているから、対策を取らない。公的な計画や規制がなければ、洪水は悪化する。その場合、ヒューストンが経験したように、避難を命じなければ多くの者が死に、避難を命じても、混乱で交通は渋滞し、多くの人が死ぬ。
アメリカと世界は、トランプ大統領と共和党の極端な反政府イデオロギーによって高い代償を支払わされている。
アメリカには、ハリケーンや気候変動のような複雑な現象とその結果を分析する技能と、対処する資源がある。アメリカにないのは、正しいことを主張する人々の政府に関する一貫した見解であり、双方で、極端な政策により特殊な利益を得る人々が論争している。危機の前には規制や政府の行動、計画に反対し、危機の後には、簡単に予防できたことでも、自分たちが被った損失の補償を要求し、それを得るのだ。
FT
September 11, 2017
The
lessons of Hurricane Harvey
Nick Butler's blog
NYT SEPT.
12, 2017
Harvey,
Irma, Jose … and Noah
David Brooks
ハリケーン、嵐、洪水から、われわれは何を学ぶのか?
人類は何千年も、その問いに答えを求め、自然災害を理解する物語を作った。洪水の物語はよく似ている。
聖書にある「ノアの箱舟」もその1つだ。物語の初めで、人類は法律のない暮らしを過ごし、暴力的で、悪徳に染まる。1人の正しい者がいて、ノアと言う。神はノアに箱舟を作らせる。なぜなら神は大洪水で彼らを除いて人々を洗い流そうとしていたから。
ノアはこれを聴いて何を言うのか? 何も言わない。アブラハムは、神がソドムを滅ぼしたとき、神に抗議した。モーゼも神に抵抗した。しかし、ノアは何もしない。隣人を助けることもない。
ラビや神学者たちは、この点でノアを非難してきた。「ノアは正しい人かもしれないが、指導者ではない。」 指導者は自分の周囲の人々に責任を負い、世界を救おうとする。道徳的な誠実さが邪悪に対する行動につながる。対照的に、ノアは汚れないために、腐敗した世界から身を引く。
ノアに神との契約が示されても、ノアはその責任を果たさない。生き延びたことで罪を感じ、酔っぱらう。ノアは、盲目的な服従に関しても危険な話である。
現代も、自然の、そして人工の、多くの災厄が起きる。人々は個々に問題を解決しようとする。ヒューストンの人々は隣人を心配した。しかし、問題は集団行動がとれないことだ。新しい制度を築き、旧い制度を再活性化する。自分は関係ない、という気分が広がり、社会的な不信感がかつてなく強い。
洪水は世界を再生する招待だ。強い個性が人々を集団的な制度に結び付けるときだけ、それは成功する。
The
Guardian, Wednesday 13 September 2017
A lesson
from Hurricane Irma: capitalism can’t save the planet – it can only destroy it
George Monbiot
金融システムに関するグリーンスパンの理論には,問題が存在しえない.市場とは自己訂正するものだから.政府や市民が市場の決めた出来事を変えるのは,間違いである.
しかし,その理論には欠陥がある.ハリケーンは市場シグナルに反応しない.海洋を漂うプラスチックごみも,食糧や飲み水も,市場シグナルに反応しない.昆虫やサンゴ礁,オランウータン絶滅するのも.
NYT SEPT.
14, 2017
Don’t
Repeat the Mistakes of the Katrina Recovery
By ANDY HOROWITZ
● 世界の重心移動
The
Guardian, Saturday 9 September 2017
Global
power is shifting to Asia – and Europe must adapt to that
Natalie Nougayrède
2012年、McKinseyのアナリストたちはthe
University of Groningenのデータから驚くべき地図を作った。世界経済の重心をAD1年から現在まで示したのだ。この地図を観れば、世界に占めるヨーロッパの位置がわかる。ヨーロッパの統合プロジェクトを弱めるのではなく、これを完成しなければならない、ということがよくわかるはずだ。
地図を観ればすぐにわかるが、1820から1913年まで、世界経済の重心(それは各地のGDPの重心である)は、1世紀をかけてアジアからヨーロッパに移った。第2次世界大戦後、その点は大西洋を超えてアメリカに渡った。1960年代、70年代、80年代、90年代は、北半球の西部にあった。しかし、わずか10年で、2000年から2010年に、それはアジアに戻ったのだ。それに先立つ2000年の趨勢が逆転した。
私は、オバマ政権の官僚が言ったことを思い出す。ヨーロッパは退屈だが、アジアは興奮する、と。
世界の他の地域からヨーロッパを区別するものとは何か? リベラルな民主主義、個人の自由、社会的に配慮する市場経済、というユニークな組み合わせに、連帯の強調、そして主権のプールを加えたものだ。中国人とインド人に対する意識調査の結果、彼らはヨーロッパの安定性を評価し、積極的なイメージを持っている。
この世紀は「アジアの世紀」であるだろうが、ヨーロッパというカードを失ってはならない。
NYT SEPT.
14, 2017
Joe Biden:
Reclaiming America’s Values
By
JOE BIDEN
アメリカの指導力は,パワーを示すこと以上に,模範を示すことで発揮されている.アメリカが自ら民主主義的な価値を損なうことは重大な損失だ.
● ロボットとITの世界
NYT SEPT.
9, 2017
These Are
Not the Robots We Were Promised
By NICHOLAS CARR
召使や友人として、さまざまな人間型ロボットが空想されてきた。しかし今、そうしたロボットではない新しいロボットが急速に普及している。Amazon
Echo, Google Home and the forthcoming Apple HomePodのような対話による情報交換や情報管理だ。Siri
and Alexaのような “chabots” により、3500万人のアメリカ人がコンピューターと対話するようになった。
FT SEPTEMBER
12, 2017
New
realities confront a maturing internet
FT
September 13, 2017
Tech
utopias can drive workers to distraction
John Gapper
iPhone Xの発表とともに、Appleの新社屋Apple Parkが関心を集めている。1万2000人のスタッフを抱える、緑の公園に囲まれた、広大な円形の建物は、50億ドルをかけて建てられた。
IT産業の新しい社屋は、労働者たちの新しい生活と勤労形態に応じて、協力や革新を刺激し、オフィスの無駄を省くことになっている。摩天楼は消えて、よりフラットな、壁や廊下に隔てられない、キャンパスのような社屋に転換した。
NYT SEPT. 13,
2017
Chelsea
Manning: The Dystopia We Signed Up for
By
CHELSEA MANNING
● 徴兵制
FT SEPTEMBER
10, 2017
The
benefits of conscription are economic as well as military
Elizabeth Braw
来月、スウェーデンは、7年前の停止以来、初めての18歳徴兵クラスを始める。4000人の男女がスウェーデン軍によって選ばれる。
徴兵制は、侵略軍に兵士として対抗する以上の利益をもたらす。防衛大臣Peter
Hultqvistは、徴兵制はスウェーデンの危機管理能力を高め、防衛に関する一層の取り組みと参加を促すだろう、と述べた。
スウェーデンへの軍事的な脅威は高まっており、月曜日には、23年ぶりの大規模な演習を行う予定だ。フィンランドの起業家Peter
Vesterbackaは、兵役の経験を、他では決して一緒に暮らすことがない人々と働き、多くのことを学べた、と肯定する、フィンランドの若者の80%は軍務を経験している。それは冷戦のもっとも深刻な時期に並ぶ規模だ。
イスラエル防衛軍を経験した2人の研究者は、新しいスキルを得て、新しい社会ネットワーク、新しい社会規範行動基準を学んだ、と言う。彼らはそれを「ミリタリー資本」と呼ぶ。その経験とネットワークがイスラエルのハイテク部門で多くの起業を刺激している、と言う。
また、もしギリシャが徴兵制を実施していたら、若者の47%が失業しているが、軍務でスキルを得た多くの若者たちを企業が雇用できるだろう。ヨーロッパの安全保障は大きく変化している。徴兵制を実施するには大きなコストがかかるだろう。そのためにも、徴兵制が社会に通用するスキルを得て、軍務の経歴が積極的に評価されなければならない。
● 中国
FT SEPTEMBER
10, 2017
China is
leaving Donald Trump’s America behind
Michael Moritz
FT
September 13, 2017
China
exploits the vulnerability of open democracy
Jamil Anderlini
リベラルで開放型の民主主義諸国は、中国による諜報活動に弱い。中国のスパイ組織は中国系の移民として入り込んだ人を利用できるからだ。
NYT SEPT.
13, 2017
In China’s
Hinterlands, Workers
By CAO LI and GIULIA MARCHI
中国・内モンゴルの町でビットコインの探索が行われている。労働者たちは炭坑夫や農民として働いた。ブームが終われば、彼らは仕事を探す。今、彼らが捜すのはデジタル貨幣である。
YaleGlobal,
Thursday, September 14, 2017
China and
India Pull Back on Doklam, Choosing to Fight Another Day
Harsh V Pant
● トランプのロシア疑惑
FT
September 11, 2017
Donald
Trump and Vladimir Putin could destroy each other
Gideon Rachman
プーチンがトランプのホワイトハウス入りを助けたことは、ロシア外交の大きな勝利であった。しかし、それは両大統領の終わりをもたらすかもしれない。トランプがロシア疑惑を捜査されている一方で、そのようなトランプ政権へのロシアの関わりを、議会は厳しいロシア制裁でチェックしている。
FT
September 11, 2017
Trump dips
a toe into bipartisan waters
SPIEGEL
ONLINE 09/11/2017
A
Shrinking Giant
EU Worries
Grow over U.S. Economic Chaos
By Christian Reiermann
Project
Syndicate, Sep 11, 2017
Trump’s 3%
Growth for the 1%
KENNETH ROGOFF
NYT SEPT.
12, 2017
A Problem
Much Bigger Than Putin
By MIKHAIL KHODORKOVSKY
FP
SEPTEMBER 12, 2017
The
Disturbing Paradox of Presidential Power
BY BENJAMIN WITTES
(後半へ続く)