IPEの果樹園2017
今週のReview
9/11-16
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国際経済秩序の改革 ・・・香港のチベット化 ・・・ケロッグ=ブリアン不戦協定 ・・・北朝鮮との戦争 ・・・日本国債は維持できる ・・・ヨーロッパへの難民 ・・・マクロンの労働市場改革
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 国際経済秩序の改革
Project
Syndicate SEP 1, 2017 3
Saving the
International Economic Order
Paola
Subacchi
IMFと世界銀行の総会がWashinton,
DCで開催される.彼らは制度の根本的な改革を集中的に議論するべきだ.昨秋のトランプ当選が示したようなナショナリズム・ポピュリズムが西側世界に広がる以前から,リベラルな世界秩序の危機は長期にわたって高まっていた.もはや第2次世界大戦後のガバナンスは構造を維持することがふさわしくない.今や,中国の台頭に示されるような,西側と「その他世界」との分裂が現れている.
1997年,アジア金融危機は金融システムが緊密に結合した世界の危険を示したが,2008年の世界金融危機はそれが全面的に顕著なネオンサインを発光した.中国の台頭,BRICSが新しい成長のエンジンになる時代にふさわしいガバナンスが求められる.アジア金融危機の後,1999年にG20がG8に代わってグローバル経済ガバナンスを代表する仕組みに変化してきた.指導者たちはここで国際通貨・金融システムの改革を議論している.しかし,その行動はわずかにとどまる.アメリカが拒否権を保持し,ヨーロッパが事実上はIMFのトップの地位を独占している.
正当で,効果的で,説明を行うガバナンスを築くには,多角的な経済制度が諸国間の相対的な経済力やシステム的な重要性が変化することに応じて,その代表権限を再調整しなければならない.もし発展途上諸国が唯一の候補に絞れば,その人物がIMFのトップに就くだろう.しかし,アジア金融危機から4半世紀を経ても,そのような画期は訪れない.主要先進経済が国際機関の重要ポストを徐々にあきらめる,という気配もない.アメリカ議会がIMFクォータの変更を承認するまでに,5年もかかったのだ.
こうした抵抗はむしろ強まっている.少なくともアメリカではそうだ.新経済諸国は,中国の指導により,もっとラディカルな改革の道を選ぶかもしれない.中国はすでにAIIB(the Asian
Infrastructure Investment Bank)と,NDB(the New Development Bank)やthe Silk Road Fundを設けた.その規模はIMF/世銀より小さいが,参加する地域のインフラ投資には十分な大きさだ.IMFに代わってthe Chiang
Mai Initiative (CMI)やBRICSは緊急融資のスワップ網を築いている.
2008年の金融危機以後,多くの議論がなされてきた.しかし,それは改革の合意を形成するものではない.中央銀行総裁や財務長官のOBたちが集まって改革を助言することより,トランプ政権が国際機関から離脱するリスクを各国は真剣に考え始めただろう.トランプが望む「アメリカ・ファースト」の交渉方式に従うのは,一部の同盟国に限られる.ブレトンウッズ体制は生き残れない.
● 香港のチベット化
NYT SEPT.
1, 2017
Hong
Kong’s Autonomy Is Slipping Away
Yi-Zheng
Lian
先月,香港の法廷は有名な3人の民主化指導者Alex Chow,
Nathan Law and Joshua Wongに対して処罰を追加した.下級審で示された軽い処罰に対して,北京の意向を受けた香港政庁は,より長い禁固刑を求めたのだ.
新しい判決は6か月から8か月の禁固刑であるが,3か月を超える禁固刑を受けた者は,5年間,選挙に立候補できない.かつて北京の圧力に対して果敢に抵抗した都市が,今や政治的な奴隷になってしまった.それはさらに悪化しそうだ.
香港は,司法の独立性を奪われ,立法院における代表制も失われて,北京が求める法律を認めるようになることが懸念される.その方針を進めるために,北京は,主要なポストにだれが就くか,その指名権を求める.そして,より北京に忠実な人間であることを精査する.
北京は次のチベットになるのかもしれない.チベット人は,独自の文化や言語を弾圧され,しばしば,個人の自由も無視されている.
● ケロッグ=ブリアン不戦協定
NYT SEPT.
2, 2017
Outlawing
War? It Actually Worked
By
OONA A. HATHAWAY and SCOTT J. SHAPIRO
歴史家の多くは,1928年のケロッグ=ブリアン不戦協定を,もっとも愚かな条約として挙げるだろう.63か国が参加して,戦争を非合法化した.しかし,戦争を終わらせるというのは愚かしいほど野心的な目標だ.条約で何ができるか考えるなら,それは愚かであるだけでなく,危険なほどにナイーブである.
その批判は正しいように思えた.それから10年の間に,アイルランドを例外として,協定に参加したすべての国が戦争した.協定は第2次世界大戦を止めなかっただけでなく,朝鮮戦争も,アラブとイスラエルの紛争も,インドとパキスタンの戦争も,ベトナム戦争も,ユーゴスラビア内戦も,そして現在のウクライナ,シリア,イエメンの戦争も止めることに失敗した.
しかし,その批判は間違いだ.協定はすべての戦争を終わらせなかったが,諸国が戦争に及ぶ主要な理由を終わらせたのだ.すなわち,征服(新領土の支配)である.このことは1816年から現在までの軍事紛争について領土を得たケースのすべてを調査したわれわれの実証分析によって支持される.
1928年以前,諸国は戦争に訴えることが合法であった.もしある国が他国の犠牲になった場合,その国は武力に訴えて間違いを正すことが国際法により許されていたのだ.戦争によって,領土や,領民を得ることも合法であった.しかし,正しい制服であるかどうかの区別はもろいもので,征服者は容易に新領土の主権を得た.戦争の費用を得ることや,その乱用も行われた.
ケロッグ=ブリアン協定が戦争を非合法化したことで,何世紀にもわたり諸国が従ってきたルールの,ほとんどすべてが変わった.最も重要なことは,諸国がむき出しの武力によって正義や正当化を得ることができなくなったことだ.なぜなら戦争は,自衛の場合を除いて,違法であり,各国は征服の権利を失った.
ケロッグ=ブリアン協定は法律を変えただけでなく,諸国の行動も変えた.1816年から1928年まで,平均で10か月に1つ,領土の制服が起きていた.平均的な国は,毎年1.33%で征服される機会があった.それは一生に1度くらいの頻度だ.また征服された領土は,年に,11万4088平方マイルに達した.
第2次世界大戦以来,征服はほぼ完全に止まった.征服の発生は年に0.26,4年に1度まで減少した.年に5772平方マイルである.国が征服される機会は,0.17%,100年に1度か2度になった.ケロッグ=ブリアン協定成立後の20年間,1929年から1948年まで,征服は止まらなかったが,そのほとんどすべてが逆転された.
顕著な例外はスターリンのソビエト連邦であった.連合諸国で唯一,平和の代償として多くの領土を求めた.それは他の連合諸国にとって残念なことと見なされた.2014年,ロシアがクリミアを併合したことも例外であるが,それはむしろ,領土を征服することが許されなくなったことを示している.
確かに戦争は,征服以外の理由でも起きる.不戦協定が戦争を終わらせることはなかった.
しかし原子爆弾を正当化するとき,それは征服のため,ではなく,抑止と主張される.また,領土を併合することより貿易の利益が重要であり,軍事的な強制ではなく,経済制裁が主張される.
● 北朝鮮との戦争
FT
September 4, 2017
Miscalculation
could lead to a Korean war
Gideon Rachman
20世紀の大戦争はしばしば破滅的な誤解が先行した.ドイツ人は,1914年,イギリスがベルギーをめぐって戦争するとは思わなかった.スターリンは,ヒトラーがロシアに侵攻するとは予想していなかった.日本とアメリカは何度も相手の動機と反応を誤解し,真珠湾攻撃に至った.アメリカは,1950年,中国が朝鮮戦争に参加するとは思わなかった.
現在,同様に,誤解から戦争が始まる脅威が朝鮮半島に生じている.2人の指導者,北朝鮮の金正恩とアメリカのドナルド・トランプ大統領は,予測不可能である.
北朝鮮はあまりにも閉鎖的であり,専門家でもその行動を予測できない.主流の見方によれば,金正恩は,核兵器を持たなかったイラクのサダム・フセインやリビアのカダフィのような破滅を避けて,生き延びるために核武装した,という.しかし,それにしては,北朝鮮の指導者の行動は,アメリカ,日本,中国まで挑発しており,明らかに限度を超えている.
北朝鮮は過去最大の核実験を行い,日本本土を超えて弾道ミサイルを飛ばした.核ミサイルがアメリカ本土に到達することを示す,ということだとしても,これほど急速に核実験をすれば,アメリカ人は,金正恩が完全に非合理的であると考え,ホワイトハウス内で先制攻撃論が強まるだろう.
キムの誤算は潜在的にアメリカの攻撃を刺激したが,それはトランプの予測不可能さによっても高まった.トランプは北朝鮮を脅したが,軍事行動は何百万人もの犠牲をもたらすことで,疑わしいことだった.しかもトランプは,韓国との協力を強めるより,ムンジェイン大統領の「宥和」策を非難した.トランプが米韓FTAを見直す,というニュースは,米韓の対立を望む北朝鮮を喜ばせるだろう.またトランプは,北朝鮮と取引する国との貿易をストップする,とTweetした.それは世界最大の米中貿易を停止し,世界経済を混沌に突き落とすだろう.大統領の保護主義を好む直観が,北朝鮮の核の脅威にも優先される.
こうしたホワイトハウスの混乱したメッセージによって,ピョンヤンだけでなく,ソウル,北京,東京にも誤算が生じる危険が高められる.ソウルでムンジェインは,北朝鮮の攻撃より,トランプの先制攻撃を最大の危険と見なすだろう.その場合,米韓が公然と対立する.中国政府も複雑な計算をしている.制裁を強めることは,金正恩を追い詰め,その体制崩壊と破滅を覚悟して,核兵器を使用させるかもしれない.
合理的で,経験豊富な指導者たちでも,こうした危機を管理することは難しい.激情に駆られる,外交についての経験がない,71歳のビジネスマンと,未熟な,33歳の,ごますりに取り巻かれた独裁者,この2人が主要な意思決定者である.
Project
Syndicate SEP 4, 2017
A ‘China
First’ Strategy for North Korea
BILL EMMOTT
ほとんど認められていないが,最小のリスクで実行できる軍事オプションがある.それはトランプ大統領が,危険な隣国に対する責任を持て,と中国に要求したとき暗に認めたことだ.すなわち,中国による軍事侵攻と,それを脅しにした北朝鮮の体制転換である.
もしこれが行われれば,東アジアにおける戦略的なバランスが一気に中国に有利な形に変わるだろう.
中国であれだれであれ,軍事侵攻には甚大なリスクが伴う.しかし,中国が軍事介入に成功した場合,何を得るか考えることだ.北朝鮮は中国の核の傘に入るだろう.朝鮮戦争で中国はアメリカが勝利することを好まず,北朝鮮の側に参戦した.しかしその後,日本と韓国はアメリカの核の傘の下で同盟国にとどまっているが,北朝鮮は中国の方針から遠く離れてしまった.
中国は北朝鮮が何を考えているかわからず,貿易やエネルギー供給を支配しているが,これらによって金正恩を処罰するより,それが北朝鮮をロシアからの支援に頼らせることを懸念する.広く想定されるように,もし北朝鮮が核武装の廃止と交換に安全保障を得るとしたら,それを提供できる唯一の国は中国である.アメリカではない.
それゆえ,もし中国が侵攻の威嚇と,安全保障,核の傘を加えて,それと交換に,協力並びに潜在的な体制転換を求めるなら,北朝鮮軍の多数に支持される可能性は高いだろう.アメリカと核攻撃を交わせば破滅であり,中国に従うことは生き延び,おそらく,ある程度の自律性を残すだろう.金正恩の最側近を除けば,その選択は難しいものではない.
中国の戦略的利益は,単に朝鮮半島で何が起きるかを支配するだけでなく,破滅的な戦争を回避したことで地域全体に感謝されることだ.中国のアジアにおける指導力をこれほど信頼できるもの,特に,無謀な,あまり計画性のないアメリカ軍の侵攻と比べるなら,望ましいものに思える状況は考えられない.中国が望む正当性,Joseph
S. Nyeの言う「ソフトパワー」を得るのだ.
しかし,本当に成功するだろうか? 中国軍の装備は優っているが,経験を欠いている.他方,北朝鮮の指導者たちは,中国の条件や屈服を認めず,核兵器や大量破壊兵器を使用する準備がある.
確実に言えるのは,中国の軍事侵攻に対して,金正恩が韓国・ソウルの同胞に攻撃を加えることはない,ということだ.報復として正当化できない.また中国が北朝鮮のミサイルの標的になることも考えにくい.中国の軍事的選択肢を真剣に考慮するなら,アメリカは諜報やミサイル防衛システムで中国に協力する価値がある.
結局,これは中国がアメリカと戦略的な対等の地位を得る最善の機会なのだ.
NYT SEPT.
6, 2017
The Way to
Make North Korea Back Down
By SUNG-YOON LEE
北朝鮮は,ロシアや中国が核保有で生き帯びたような条件と異なる.隣国として,繁栄する民主的国家,韓国があるからだ.北朝鮮の体制は正当性を持たない.
FP
SEPTEMBER 7, 2017
A Sneak
Peak at America’s War Plans for North Korea
BY CHETAN PEDDADA
秘密の地下基地で,米韓合同司令部が北朝鮮との戦争シナリオを予測した.われわれは大規模な人的犠牲を予想した.それは北朝鮮が敗北するしかないと覚悟し,できるだけ多くの被害を朝鮮半島に生じさせるからだ.
北朝鮮の兵站が限られているために,食糧,弾薬,燃料,水は数日で枯渇するだろう.そのことは北に,勝利を期待するとしたら短期決戦しかない,と確信させる.第2次世界大戦で日本帝国軍が行ったように,決定的な戦闘によりアメリカ軍の士気をくじくのだ.非武装地帯とソウルに駐留するアメリカ軍駐留部隊が主要な標的になる.韓国や日本の米軍基地も狙われるだろう.
推定で,約1000基のミサイルが韓国内,特にソウルに向けられている.その発射地点を探査して米韓軍が反撃するが,北は地下トンネルをめぐらして発射地点を移動させるよう準備をしている.また朝鮮戦争の停戦後,北は生物兵器,化学兵器を備蓄し,サイバー攻撃を準備している.戦争になれば,北はこうした武器を躊躇なく使用するだろう.
最初の1日の戦闘で,28000人の駐留米軍のかなりが犠牲になる.外交交渉は困難であろう.しかし,最も深刻な犠牲は,朝鮮半島が破壊された後の難民流出と,敵意による殺害や病気,栄養失調によるものだろう.
● 日本国債は維持できる
FT September
5, 2017
The fears
about Japan’s debt are overblown
Robin Harding
日本の「国の借金」の残高は1000兆円(¥1,000,000,000,000,000)を超えた.GDPの239%になる.あまりにも巨額の債務は,明らかに,金融的破滅で終わる.ギリシャを見れば良い.今すぐに債務を減らすべきだ,と議論は終わる.
国際に関する経済論争は日本の政治を混乱させてきた.しかし,財政破たんの警告は20年前からあるが,債務危機は決して訪れなかった.リーマン・ショックも,東北の大震災も,国債の取引に影響しなかった.
しかし,債務を恐れることは間違いかもしれない.危機は来ない,と認めるべきだ.日本は世界最速の高齢化を円滑に実現してきた.2014年の増税という失敗が示すように,財政破たんを議論することは政策決定に望ましくない.
巨額の公的政務を処理するには4つの方法しかない.成長,償還,デフォルト,インフレである.安倍首相が何と言おうと,人口が減少する中で,成長が債務増を超えることはできない.大規模な移民流入はすべての条件を変えるだろうが,債務比率から,それほど重大な社会的選択をすべきではない.
債務の償還も困難だ.それに必要な財政黒字を達成するには,医療保険制度や年金,防衛費を削減することになる.財政の黒字は,成長を維持するなら,民間部門の赤字を意味する.増税や年金不安に対して,家計が貯蓄を減らすとは思えない.
それゆえ2つの危機が不可避になる.デフォルト,もしくは,インフレの加速だ.しかし,デフォルトは無意味である.国債のほとんどが日銀と国内の金融機関によって保有されている.インフレの加速は,20年間も2%のインフレ目標が達成できないのであるから,債務を緩やかに消滅させるうえで助けになる.日銀が物価のコントロールを失うことはないだろう.日本政府はインフレ税を求めないからだ.年金生活者は物価に敏感であり,政府がインフレ加速を望むのは政治的な自殺行為である.また,日本は世界最大の債権国であるから,投資家がパニックになって日本から資本逃避する理由もない.
より説得的な大5の選択肢を観るべきだ.すなわち,公的債務を持ち続けることだ.意外なことに,それは可能である.コロンビア大学の2人の研究者が示すように,その条件は,利払いコストの抑制,高齢化支出の抑制,大幅な増税,である.
ベビーブーム世代が引退し,彼らの資産や消費に対して増税する必要があるだろう.財政破たんの不安や支出削減をするより,日本はそうすべきだ.政府は財政比率を安定化し,インフレが生じるまで低金利で経済を刺激して,ブームになれば財政黒字も生じる.
債務危機の際にあっても,支出に規律があれば転落はしない.
● ヨーロッパへの難民
Bloomberg
2017年9月5日
Europe's
Migrant Crisis Isn't Over
By Pankaj Mishra
2年前,3歳のシリア人少年Alan Kurdiの遺体がトルコのリゾートに近い浜辺でうつぶせに倒れている写真は,多くのヨーロッパ人の良心を揺さぶった.その当時の罪や恥の意識はすでにない.Kurdiの死後,少なくとも8500人,その多くは身寄りのない子供たちが,地中海を渡る中で死亡したり,行方不明になったりしている.われわれはそのことをほとんど気にしない.
国境警備は強化され,難民の受け入れを拒む国が増えている.しかし国家が崩壊しつつある中で,あるいは破たん国家から,国籍の無い人々が,また強奪や終わりのない内戦の犠牲者が,絶望から壊れたボートや釣り船に乗ってヨーロッパに向かうのを止めることはできないだろう.
他方で,各国はすでに多くの移民を受け入れてしまった,という極右の不安が実現し,エスニック的・文化的な同質社会のファンタジーを脅かしている.多くのデマゴーグが国内政治を支配し始めている.ハンガリーのオルバンはその1人だが,彼に反対する運動がポスターに書いたように,「平均的なハンガリー人は,人生で移民に会うより,UFOを見るほうが多い.」
明らかに,政治家たちは難民の幻影から政治的な利益を得ようとする.現実であれ想像であれ,われわれの中に奇妙な人々がいる,という社会心理を利用する.移民はグローバリゼーションの強大で,あいまいな強制力を体現している.多くのヨーロッパ人が,もろい社会・経済的な地位について心配しているのだ.賃金は長期に停滞し,雇用センターや学校,病院の行列は長くなっていく.
しかし,この政治的な悪用に反対する国もある.難民問題はドイツの選挙戦で主要な関心とならなかった.ドイツの行政府は新規移民たちの統合を促し,彼らがドイツ市民と共存して生きるしかないことを知っている.ドイツ語のクラスに入り,仕事を見つける.選挙戦でメルケルも主要な対抗者も,難民による犯罪を誇張しなかった.
十分な政治的意志があれば,大規模な移民も受容できるのだ.
● マクロンの労働市場改革
Project
Syndicate SEP 7, 2017
Macron’s
Labor Gambit
DANI RODRIK
マクロンの労働市場改革に見るロジックは,IMFやOECDの求める「労働市場の弾力化」と同じである.解雇するコストを下げると企業は雇用を増やす,というのは,矛盾ではない.企業は採用コストと解雇コストを考慮している.解雇コストの引き下げが雇用を増やすのは,企業が活発に拡大することを望んでいる時期だ.
他方で,労働者の法的な保護は,エコノミストが「硬直性」と呼ぶが,社会的な交渉の結果として,先進資本主義経済に必ず含まれている.それは予期しない変動にさらされる労働者の所得や雇用を安定化することで,経済全体を効率化するものだ.
マクロンの改革の成果が問われるだろう.
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The Economist August 26th 2016
Islam and democracy
Courts in Hong Kong:
Truth, justice and the Chinese way
Politics in Thailand:
Tongue Thai-ed
Steve Bannon: Gone but
not forgotten
(コメント) ムスリム同胞団がエジプトの民主主義を実現する力になったかもしれない,と記事は指摘します.香港ではジョシュア・ウォンが投獄されました.タイの軍政も,王の権威を借りて,ますますタクシン派の追放に執着します.
スティーブ・バノンが,たとえホワイトハウスを追放されても権力を失わないのは,今も政権内にポピュリストがおり,大統領は支持者に答えねばならず,バノンがBreitbartを使ってトランプを擁護できるからです.
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IPEの想像力 9/11/17
北朝鮮の核武装に対して,好ましい選択肢はない,と外交評議会の公開対話で,元国務省の北朝鮮担当官,ジョージタウン大学教授のガルーチR.
Gallucciは語りました.
経済制裁はうまくいかない.ミサイルを撃墜できる保証もない.交渉による合意も失敗した.軍事攻撃の被害は甚大であると予測される.つまり,トランプ政権にとって良い選択肢は何もないのです.ガルーチはそれを認めます.しかし70年間,核武装して対立した諸国は,互いに核抑止体制を管理してきた.北朝鮮にも同じように対応するしかない.核保有国として外交関係を結ぶ.核抑止の下で,核拡散を厳しく監視し,さまざまな問題で各国と北朝鮮との交渉が続くだろう,と.
金正恩は何を考えているのでしょうか? さまざまな国の諜報機関が北朝鮮に入ったでしょうが,北の政権幹部について情報を得ることは非常に難しい,と言われます.中国政府との主要な人脈を粛清してしまったくらいですから,金正恩とその側近が何を考えているのか,誰にも確かなことは予測できないのです.
アメリカでは,金正恩がソウルを人質にして,さらに軍事的な挑発を繰り返すのではないか,と懸念されています.アメリカ本土に届くことを十分に示してから,交渉を始めるつもりだろう,というわけです.グアムやハワイどころか,アメリカ西海岸へ向けて弾道ミサイルを発射するかもしれません.
トランプは何を考えているのでしょうか? 思い出すのはシリアへの空爆です.化学兵器を使用したアサド政権への制裁として,トランプはトマホーク巡航ミサイルを50発以上,化学兵器を搭載した飛行機が発進したと思われる飛行場へ撃ち込みました.
つまり,北朝鮮に対しても限定的な軍事行動であれば,トランプは命じる用意があるのではないか? と私は思います.
もし,たとえば,アメリカ西海岸近海を狙って,北朝鮮が弾道ミサイルを撃てば,ただちに,その発射基地に向けて,集中的なミサイル攻撃をするでしょう.アメリカは北朝鮮に,これが限定的な制裁であることを明確に伝えます.そして,核実験とミサイル発射とを凍結するなら,交渉に応じる意思を表明します.
その場合,ソウルと韓国北部,38度の非武装地帯から一定の地域の住民を,強制的に退去させて,北朝鮮との限定戦争に備えるでしょう.
もし限定戦争が始まったら,北朝鮮に核兵器や生物・化学兵器を使用するな,と明確に警告しなければなりません.同時に,強制退去の地域を一層拡大するでしょう.そして,金正恩が限定戦争に拡大する場合,北朝鮮全土の軍事力を破壊することを明確に伝えます.同時に,それが体制転換を目指す軍事侵攻ではないことを,アメリカは北朝鮮政府と中国に伝えるでしょう.
核兵器など,大量破壊兵器の管理と,戦後処理の枠組みは,6か国協議に委ねます.
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米中露が合意して,北朝鮮を抑える,長期の核抑止体制が続くのでしょうか?
どのように説得しても,突然,危機は深まるでしょう.国連安保理決議に続いて,地域安全保障の制度化が進むときだけ,北朝鮮の金正恩を権力から切り離し,平和的な核管理体制を交渉によって実現するのではないか? 金正恩とドナルド・トランプの暴言に代えて,アメリカと中国が合意したとき,韓国,日本,ロシアも主要利害と発言力をめぐる外交に移行します.
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