(前半から続く)
● 経常収支不均衡の神話
Project Syndicate AUG 11, 2017 6
The
Deficit Tango
Charles
Wyplosz
経常収支不均衡に関する神話に振り回されてはいけない.
現在,黒字国は需要を奪うとして赤字国に非難され,赤字国は浪費を黒字国に非難されている.2000年を過ぎて,対外不均衡が危機に至る,と警告されていた.しかし,世界金融危機の原因は金融機関が過度にリスクを取ったからであり,それ以前の金融自由化と金融規制・監督の失敗が危機を生んだのだ.経常収支均衡は危機に関して連動していない.
確かに,ユーロ圏内では,大幅な持続的赤字国が激しい危機に苦しみ,黒字国は危機を回避した.しかし,オーストラリアは,1975年以来,ずっとGDPの平均4%という赤字国であった.しかし,その後の危機や不況を回避している.
反対に,スイスの経常黒字は,1981年以来,GDPの平均7.8%もあった.2010年には14.9%というピークに達した.しかし,危機はスイス経済に深刻なダメージを与えた.苗ならスイスの2大銀行が大きく傷ついたからだ.
トランプ大統領はドイツの経常黒字を非難する.まるで,それがアメリカの赤字や失業の原因であるというように.他方,ドイツの黒字はその高い生産性や優れた技能,賃金上昇を抑制する姿勢によるものだ,という多くのドイツ人が信じる説明も間違いだ.真の問題は,ドイツ人がその黒字をどうしたか,という点にある.輸入品に支出するより,その多くを貯蓄したのだ.
経常収支不均衡を輸出と輸入の差に結び付け,競争力に注目する議論がある.しかし,この競争力という概念は捉えにくいものだ.それは単に,財とサービスの価格だけでなく,その品質や生産コスト,それが輸送される過程が含まれる.企業の戦略や,福祉システムを含む,労働市場の構造といった,非常に多くの要素が関係しているのだ.なにか1つを強調することは誤解を生じやすい.
スイスの通貨はあまりにも過大評価されているが,経常収支は大幅な黒字だ.アメリカの経常収支赤字は1984年から続いているが,ドルの価値は大きく変動した.現在も1168億ドルの赤字だが,ドルの価値が過大評価されているとは言えない.競争力とは,不均衡の原因ではなく,むしろ兆候でしかない.
対外不均衡は貯蓄と投資とのギャップであり,赤字国が返済不能になるまで借入は増大する.こうした視点からは,過剰な債務が問題であるが,もし生産的な投資の機会が豊富にあるなら,その国が赤字を続けることは正しい.より多くの借入とそれによる投資が,より多くの富をもたらす.オーストラリアが何十年もそうであるように,債務の返済を心配することもない.
しかし,支出を維持するために大きな債務を生じるとしたら,そうとは言えない.民間の金融機関が仲介しているなら,しかも,その金融仲介機関が十分な監視を怠っているなら,結局,不良債権が増大する.巨額のデフォルトは金融システムに影響する.
最も深刻な懸念は,公的部門・政府が対外融資を受ける場合だ.過重債務を負うようになった政府は,民間部門よりも,容易にデフォルトを選択するからだ.国家は,企業や家計のように破産せず,資産の売却を強制されることもない.しかし,ギリシャやポルトガルが示したように,返済に関して一定の政治的な交渉力を持っている.
こうしたリスクが意識されると,外国融資はパニックを生じ,一気に途絶することもある.それは,国際的な貸手たちが恐れる危機を,まさに引き起こす契機になるのだ.ユーロ危機は,そのような自己実現的な危機であった.それゆえ,3つの考察が得られる.1.その国の競争力や,債務が過剰であるか,と問題にするまでには時間がある.2.過剰な債務が生まれる前に,不注意な,あるいは,救済されることを期待した,慎重さを欠いた融資が行われる.3.大幅な対外不均衡,対外債務の形成は,それ自体,脆弱性につながる.
黒字は危険なのか? さまざまな健全な理由で貯蓄が増える場合がある.しかし,貯蓄は国内で投資されない場合,海外に投資することになる.それにはリスクがある.慎重に投資しなければならない.また,不完全な通貨同盟においても,そのリスクはなくならない.ユーロ危機は,ユーロ圏内の赤字国に対して,ECBが金融規制や救済を実行できないことから生じた.
すべての経常収支不均衡は同じではない.
19世紀のアメリカは,巨額の,持続的な赤字を出した.アメリカの人口増加と広大な面積を満たす巨額の投資には,外国からの借り入れが不可欠だった.その大部分について,投資は非常に生産的であったし,外国の貸手を豊かにした.逆に,2000年代のギリシャは非生産的な消費を続けるために借り入れた.
たとえ良い投資でも対外借り入れの増加は脆弱性を増す.しかし,政策担当者たちは,兆候ではなく,その脆弱さの原因に注目すべきだ.民間債務を適切に規制し,監視するべきだ.政府債務は,IMFが提案しているような,国際的な債務処理メカニズムを実施するべきだ.
● インド独立70周年
NYT AUG. 11, 2017
India
at 70, and the Passing of Another Illusion
By
PANKAJ MISHRA
1947年8月15日,この日は近代史の「もっとも偉大な日」として記憶されるにふさわしい,とアフリカ系アメリカ人であるW.E.B. Du Boisは述べた.それは,インドがイギリスの支配から独立した日である.Du Boisは,この事件が,イギリスの民主主義が確立された日,アメリカで奴隷が解放された日,ロシアで革命が起きた日よりも,「大きな意味がある」と考えたのだ.このとき肌の色を理由に白人が有色人を支配する時代が終わったのだ.
しかしインドは,今,ヒンズー教を絶対視する正当に支配されている.Du Boisは絶望するだろう.40以上のアフリカ諸国の政府が連名で4月に出した要求書は,インドでアフリカ人に対して行われている「外国人排斥の,人種差別的な攻撃」を非難し,国連人権委員会に審査を願うものだから.
Bloomberg 2017年8月14日
India
Proved That Madison Was Right About Federalism
By
Noah Feldman
NYT AUG. 14, 2017
Gandhi
Won’t Leave India
By
GOPALKRISHNA GANDHI
FT August 15, 2017
India
at 70 is still experiencing growing pains
Gaurav
Dalmia
NYT AUG. 15, 2017
How
Pakistan Abandoned Jinnah’s Ideals
By
ABBAS NASIR
FT August 16, 2017
India’s
partition holds a lesson for today’s leaders
NYT AUG. 17, 2017
India’s
Muslims and the Price of Partition
By
AJAZ ASHRAF
NYT AUG. 18, 2017
Who
Is to Blame for Partition? Above All, Imperial Britain
By
ALEX VON TUNZELMANN
● インドネシアの華僑迫害
FP AUGUST 11, 2017
Beijing
Won’t Let Indonesia’s Chinese Burn Again
BY
SEBASTIAN STRANGIO
● トランプとヴェネズエラ
FT August 12, 2017
Trump
will not rule out military option in Venezuela
Shawn
Donnan in Washington
● ジェンダー論争
FT August 12, 2017
Suppressing
debate about gender will not help women at work
Anne-Marie
Slaughter
● アメリカ南部の労働組合
NYT AUG. 12, 2017
Union’s
Loss Is the South’s Loss, Too
By
THE EDITORIAL BOARD
アメリカ南部,ミシシッピ州のCantonにある日産工場で,最近,労働者たちは組合の結成に反対した.一般に組合に反対したヴェテラン労働者は時給6ドルであり,これは同じ自動車労働者の約30ドルの時給に比べて,少ない.
労働組合に反対する政治家や工場は,労働者の職が安定することと引き換えに労働組合を作らせない,という.しかし,彼らはそうやって賃金を抑えられている.
Bloomberg 017年8月17日
13
Ways to Strengthen America's Economy
By
Noah Smith
● グーグル
NYT AUG. 12, 2017
Google
Doesn’t Want What’s Best for Us
By
JONATHAN TAPLIN
● 白人至上主義
NYT AUG. 12, 2017
Charlottesville
and the Bigotocracy
Michael
Eric Dyson
The Guardian, Sunday 13 August 2017
The
Guardian view on Donald Trump and racism: a moral failure that shames America
Editorial
NYT AUG. 13, 2017
What
Trump Got Wrong on Charlottesville
By
ERICK-WOODS ERICKSON
FT August 14, 2017
Violence
in Virginia, void in the White House
NYT AUG. 14, 2017
Why
the Nazis Came to Charlottesville
By
SIVA VAIDHYANATHAN
The Guardian, Wednesday 16 August
2017
With
every sneer, liberals just make Trump stronger
Simon
Jenkins
FP AUGUST 18, 2017
When
(and When Not) to Fight With Fascists
BY
DANIEL TILLES
イギリスにもファシズムはあった.雄弁な政治指導者モズレーは,重要な演説会で反対に遭い,その支持拡大に失敗した.アメリカの右翼にも,今,反撃することが必要だ.
FT August 19, 2017
Past
battles should not inflame present disputes
● 米中経済摩擦
FT August 13, 2017
It
is crunch time for Donald Trump on trade
Shawn
Donnan
Bloomberg 2017年8月14日
U.S.
Needs China Trade Deals, Not 'Remedies'
By
Caroline Freund
アメリカの主要企業は,中国市場に参加する条件として,中国の国有企業との合併企業を通じて生産することを強いられた.しかし,その後も,中国の要求や不確実さについてアメリカ企業の不満は強い.
アメリカ政府は,アメリカ企業の扱いや知的所有権保護を含め,中国との貿易不均衡に対して,関税や制裁を用いるのではなく,メガ地域協定のような多国間のアプローチを採用するべきだ.中国との貿易戦争は双方にとって,また世界貿易にとって,大きな損失でしかない.メガ地域協定で貿易の条件を修正することは,アメリカ市場のアクセスを交渉に利用でき,自由貿易に反対するという汚名を免れる.
FT August 15, 2017
American
genius is under attack from China
Wilbur
Ross(US Secretary of Commerce)
アメリカの知的所有権は推定で年間6000億ドルも失われている.それはアメリカのGDPの3%に等しい.中国がその主犯である.
それ以上に,中国政府が推進する“Made in China 2025”は,半導体,AI,ロボット,バイオ,など,経済成長をもたらす主要産業を中国が担う計画だ.技術革新の指導国であるアメリカを,中国は抜き去るために,知的所有権や技術の権利を合併企業によって無視している.また,アメリカの新興企業による技術開発を,企業ごと買収している.
アメリカの技術優位,革新的企業を守るために,トランプ大統領は行動を起こした.
NYT AUG. 15, 2017
China’s
Intellectual Property Theft Must Stop
By
DENNIS C. BLAIR and KEITH ALEXANDER
NYT AUG. 18, 2017
How
Trump Can Improve Nafta
By
JORGE G. CASTAÑEDA
● 連銀議長の交代
FT August 13, 2017
Why
the Federal Reserve’s job will get harder
Lawrence
Summers
● Brexitとノルウェー
FT August 13, 2017
EU
should welcome the UK back from Brexit like the prodigal son
Hugo
Dixon
FT August 15, 2017
Brexit
Britain has displaced Germany as the land of dreamers
Josef
Joffe
なぜイギリスは離脱したのか? イギリスの精神とヨーロッパの精神は,互いを刺激し,受け入れて来たのに.離婚は誰をも苦しめるから,家族は不満をなだめている.冷静な議会の選択ではなく,ポピュリストたちの欺瞞によって.
Project Syndicate AUG 15, 2017
Britain’s
Road to Perdition
ANATOLE
KALETSKY
完全な離脱は遠のいた.2019年ではなく2021年までEUに従う.投票権は持たないが.
しかし,それでも新しい条約を結ぶ時間が足りない.2021年に向けた「断崖」が近づくだろう.
1994年,ノルウェーがEU加盟の国民投票で否決したため,一時的な措置としてEEAができた.その後24年間,それが維持されている.イギリスもこの枠組みに参加できるだろう.幸い,EUはすでに,ゆっくり,2重構造に向かっている.それは,連邦主義者の考える「2スピード」アプローチではない.デンマーク,ポーランド,スウェーデンのような国がユーロ圏の外に作る経済協力圏だ.将来もユーロ圏や政治統合に参加しない.
しかし,問題もある.こうした意向に関して,EU加盟諸国やイギリス国内で反対が強まることだ.たとえイギリスが再加盟を求めても,その条件は悪くなり,ユーロの採用を求められるかもしれない.残留を支持した人々にも不満が生じるだろう.イギリスは,石油資源も,社会的な結束もない,ノルウェーになってしまう.
すでにBrexitによる経済の悪化が現れ始めている.最終的にBrexitが実現するまで,事態が一層悪化しなければ,前進できないのかもしれない.
● 従軍慰安婦問題
NYT AUG. 14, 2017
Why
Is the Plight of ‘Comfort Women’ Still So Controversial?
By
ILARIA MARIA SALA
● マクロンの革命
FP AUGUST 14, 2017
Macron’s
Revolution Is Over Before It Started
BY
ROBERT ZARETSKY
● 日本
FT August 15, 2017
Japan’s
economy extends its winning streak
FP AUGUST 17, 2017
Tokyo
and Washington Have Another Nuclear Problem
BY
HENRY SOKOLSKI, WILLIAM TOBEY
● 第3共和制に向けて
FP AUGUST 15, 2017
It’s
Time to Found a New Republic
BY
DARON ACEMOGLU, SIMON JOHNSON
アメリカは,18世紀から同じ政治形態のまま維持されてきたのではない.19世紀の末,厳しい挑戦を受けて,「第2共和制」とも呼べるほど根本的な転換を果たしたのだ.現在,われわれが直面する政治・経済的な機能不全は,再び根本的な制度の核心を求めている.すなわち,第3共和制である.
1900年までにアメリカが問題に陥ったのは,成長を加速する技術革新が広まったからである.その直接の利益は少数者に集まり,多くの国民は将来に不安を感じた.アメリカの共和制は,奴隷制や南北戦争だけでなく,20世紀の初めに機能しなくなっていただろう.改革の主要な推進力は,進歩的な社会運動であった.それは技術変化や寡占体制に応じて現れた.
当初,アメリカ独立革命を実現した社会は,東海岸に小さな商業活動があるだけで,ほとんど農業が支配する社会であった.南北戦争の直前,アメリカの横断には少なくとも3週間かかった.しかし,それからの時代に15万マイルを追加した世界最大の鉄道ネットワークにより,わずか4日間で移動できるようになった.穀物,工業製品,人間の移動可能性が一気に拡大したのだ.統一された国民市場の出現で,巨大企業は可能になっただけでなく,さまざまな産業で避けられないものになった.零細企業は,潤沢な金融を受ける大企業によって吹き飛ばされた.
生産性の上昇は多くの機会を生み出したが,市場の支配や略奪的な価格設定も行われた.1860年代半ば,クリーブランドの精製業者として競争していたロックフェラーは,1890年代初めに,スタンダードオイルの会社組織を通じて,全国の石油精製とパイプラインのおよそ90%を支配した.さまざまな分野で「トラスト」を介した独占状態が現れた.その企業家たちはアメリカの政治も支配するようになった.
市民や労働者たちは,衝突や闘争によって支配に抵抗し,公平な分配,より高い賃金や労働時間の短縮を求めた.たとえば,the Great Railroad Strike
of 1877, the Great Southwest railroad strike of 1886, the Carnegie Steel strike
of 1892, the 1894 Pullman Strike, and the anthracite coal strike of 1902.
進歩派は,都市の改善(汚職・貧困の減少)を目指す市民たちと,大企業の横暴を批判する政治家たちとの,緩やかな連合体であった.運動には混乱や間違った考えも入っていたが,それが達成したものは偉大であった.1890年のシャーマン反トラスト法がそのよい例であった.1914年までに,20年前に起きつつあったアメリカの姿とは全く異なる方向へ,道が選択されていた.連邦税制は,富裕層から貧困層への再分配を行う手段となった.法廷で,議会で,選挙で,闘いは続いた.
1945年以後,アメリカは成長を加速し,所得分配の底辺においても,その恩恵をもたらした.アメリカ経済はグローバル化し,アメリカ市場は開かれて,さまざまな分野で世界がアメリカ製品を理想とした.しかし,1980年代までに世界は大きく変化していた.人々は雇用が失われて,遠くの土地で生産された商品が輸入され,半導体やコンピューターが自動化するのを恐れるようになった.良い職場を追われた労働者たちは,同じような条件で仕事を見つけるのがますます難しくなった.
技術革新がすべてのアメリカ人を豊かにする時代は終わった.生産性の上昇は,企業の所有者,すでに高所得の高度な教育を受けた労働者に利益をもたらした.グローバリゼーションに参加した企業は所得に対して税を支払わなくなった.19世紀末のように,機能しない経済,現状維持に対する政治的不満が,トランプの選出につながった.
われわれは繁栄を分かち合うことに向けて集まる必要がある.生産性の上昇が,高賃金の雇用を増やし,技術革新やグローバリゼーションによって失われる職場に対する再分配のよりよい方法を見いだすべきだ.
ビッグデータに依拠した産業支配に対抗して,反トラスト法を見直すべきだ.教育やソーシャル・ネットを改善するべきだ.ベーシックインカムは助けになるが,十分でも適切でもない.むしろ高度教育を無料にする方がよい.ロボットやグローバリゼーションに対しても税制によって制御する余地がある.政治システムを富裕層の影響から切り離すべきだ.そのためにはデータ処理のテクノロジーが効果的である.大企業や公人は,データに関する公開を強く求められるだろう.そして,司法が強化される.
アメリカの諸制度は大規模かつ根本的な変化を遂げてきたし,再び遂げるだろう.アメリカの第3共和制が,産業に影響を及ぼし,民主主義を強化する.
● マララへの反発
FP AUGUST 15, 2017
Why
Pakistan Hates Malala
BY
MICHAEL KUGELMAN
● リビアの難民
SPIEGEL ONLINE 08/16/2017
Hell
on Earth
Libyan
Camps for Refugees Are Not the Answer
By
DER SPIEGEL Staff
● ドルと人民元
Project Syndicate AUG 16, 2017
Is
Trump Killing the Dollar?
BENJAMIN
J. COHEN
トランプ政権の混乱ぶりはドルに対する信認を損なうものだ.しかし,まだドルからの資本逃避が起きてはいない.トランプはドル安を歓迎するかもしれないが,それは間違いだ.
Bloomberg 017年8月18日
Why
China Can't Free the Yuan
By
Christopher Balding
● プーチンの国
Project Syndicate AUG 16, 2017
A
Trip Through Putin Country
ROBERT
SKIDELSKY
● デジタル市場
FT AUGUST 17, 2017
Digital
platforms force a rethink in competition theory
Diane
Coyle
● 南シナ海とアメリカ
FP AUGUST 17, 2017
Stop
the South China Sea Charade
BY
ROBERT A. MANNING, JAMES PRZYSTUP
南シナ海を,まるでアメリカの東海岸のすぐそばにあるかのように思うことはない.それはアメリカの死活的な利益を意味しない,そのことを中国は知っている.確かにシーレーンは重要だが,アメリカと中国はその平和に対して利益を共有している.アメリカにとって南シナ海の領有権問題は,複雑な米中関係を管理する問題の,ごく一部でしかない.
中国は,アメリカに新しい現実を受け入れさせるように行動するはずだ.さまざまな方法を駆使して.アメリカも,中国がこの地域で重要な役割を引き受けることを求めている.それが21世紀の新しいバランスだ.
● ドイツの貧困
FT August 18, 2017
Germany:
the hidden divide in Europe’s richest country
Stefan
Wagstyl from Gelsenkirchen
メルケルは,ドイツ人がこれまでになく幸せな時代に暮らしている,と述べたが,ドイツの貧困層はそう思っていない.9月の議会選挙では,ドイツの不平等が争点になる.
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The Economist August 5th 2016
It could happen
North Korea’s missiles: Testing, testing…
War in Korea: Red lines and bad choices
Phoenix economies: When the news gets better
(コメント) 北朝鮮の核危機に関する分析は変わりません.しかし,双方の警告と制裁がエスカレートして,金正恩が譲歩する前に一定の軍事攻撃を行った場合,それが核を含む全面戦争に向かう危機であるとアメリカ側は誤解し,全面的な制圧を命令する.短期間で報復のための軍事力を奪われると確信した金正恩が,核ミサイルを発射する機会を失う前に,ソウルや日本,アメリカに及ぶ標的に向けて発射する命令を下し,アメリカの防衛システムを抜けていくつかが到達する.これに応じて米軍も核を使用する.・・・というフィクションが描かれています.
パキスタンについて,改革を進める場合は,経済が崩壊する状態からよみがえる「フェニックス経済」が適応できる,という話です.
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IPEの想像力 8/21/17
「国際政治経済学は死なない」という研究ノートを書きたいです。ざっくり、こんなことを考えています。
貿易摩擦というのは、保護主義によって国内産業を保護することにもなれば、為替レートの変更や貿易パターンを介した相互の調整過程を受け入れることもあるし、あるいは、融資によって調整を延期し、不均衡の拡大を持続する場合もあるのです。それはなぜか? いずれの対応が正しいのか? なぜ激しく対立する場合もあれば、まったく問題にならない場合もあるのか?
IPEが誕生したのは、貿易と投資・融資をめぐる摩擦や対立が各国の政治過程において死活的な重要性を示すときでした。研究者たちは、国際収支不均衡の調整過程が、帝国の拡大や戦争とパラレルな関係にある、と気づいたのです。
それは意識されずに形成されていた、国家を超える政治経済過程が、市場を介する機能的な、円滑な統合化から、政治摩擦や一方的なルールの強制に変質したからです。国境を超えて、社会的な広がりのある問題、不況や金融危機、紛争の事例について、共同で最終的解決策を示し、強制を試みるからです。
私は通貨・債務危機と移民危機に注目してきました。危機が示すのは、日常の政治化です。発達した市場が示す諸問題は、身分制の社会から解放された、平等な市民の間にも、深刻な社会対立、秩序の問題が生じていることを意味します。資本主義システムが、しばしば莫大な富をもたらす生産技術や情報、組織化の拡大でありながら、その分配や権力・権限のありかたには大きな格差が生じていることを、人々は問題にしました。特に、極度な貧困状態が集中的に現れる地域、階層、不満の蓄積する時期に、それが政治権力と秩序の正当性を揺るがせたのです。
社会制度や国家による調整・介入のシステムを、政治的に再編する社会運動の誕生は、市場システムとパラレルなものです。紛争・対立は、既得権や政治エリートから、ダイナミックな政治を市民たちが取り戻すうえで欠かせないものであったと思います。少なくとも、国境の内側では、秩序が直ちに内乱や戦争状態に陥らないよう、制度や規範が重視されていたからです。
いつか国境を超えて世界でも、そのような市民的ネットワークによる戦争状態の回避が、人々の政治に対する信頼を得るのに不可欠なものとなるでしょう。今は、違います。むき出しの暴力や不正義が日常的に社会を圧倒する地域が、まだまだ存在するのです。
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IPEというのは、帝国主義論(軍事的な拡大や植民地化)であり、国際通貨制度、国際金融市場の政治的な利用・受容に関する合意なのです。ロシアの社会主義革命が、それ自体、失敗で終わるまでの過程で、資本主義システムは進歩的な改革を取り入れてきたと思います。グローバリゼーションとIT革命後の社会でも、資本主義システムの危機を抑える諸制度が、各地の政治システムを介して再編されるでしょう。
帝国主義は、かつて軍事的な侵略によって政治的秩序を改変しました。しかし今、それは多国籍企業の直接投資やサプライ・チェーンの構築であり、金融・情報ビジネスのネットワークが円滑に機能する領域、それゆえ、共通通貨や安全保障共同体に関する制度や思想が共有されるダイナミックな政治経済圏の構築なのです。
金融ビジネスが主導したグローバルな資本主義は、まだ、その寿命を終えていません。しかし、ユーロ危機やBrexit、トランプのアメリカは、その終わりの始まりであったと思います。それと同時に、北朝鮮の核危機が、アジアの成長の時代の終わり、中国とアメリカの第2次世界大戦後の関係を見直す事件となりそうです。
つまり、市場統合と政治統合が、深い意味で、連動して危機と社会システムの再編を模索する歴史が続く限り、IPEは死なない、と思うのです。
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