IPEの果樹園2017 

今週のReview

8/5-12

***************************** 

朝鮮半島の核危機 ・・・戦争 ・・・西側政治同盟の終わり ・・・トランプ政権と政治混乱 ・・・医療保険制度の改革 ・・・ドイツ自動車産業の危機 ・・・NAFTAから保護主義へ ・・・非リベラルな民主主義 ・・・ASEAN50周年 ・・・日本モデル

 [長いReview]

****************************** 

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 朝鮮半島の核危機

YaleGlobal, Thursday, July 27, 2017

Can the United States and a Rising China Avoid Thucydides’s Trap?

Börje Ljunggren

古代ギリシャの歴史家、ツキディデスは、27年に及ぶペロポネソス戦争の歴史を書いた。アテネの興隆とそれによって生じたスパルタの不安が、戦争を不可避にした、と。

ハーヴァード大学の政治学者Graham Allisonは、大国間の対立について、過去500年間に起きた主要な16のケースを研究した。彼は、「構造的リアリティー」を決定する4つの重要な考え方を指摘する。1.死活的な利益を明確にすること。2.他国の目的を理解すること。3.戦略を明確にすること。4.国家に対する挑戦に対応すること。そして、軍事衝突と予測可能性との関係を重視する。北朝鮮から南シナ海、人民元、人権問題まで、予測不可能な性格の問題が多くある。

幸い、第2次世界大戦後の2つのケースは戦争に至らなかった。冷戦終結とドイツの再統合である。しかし、アリソンは、1962年のキューバ・ミサイル危機が現在の米中対立にとって最も学ぶ点が多い、と考える。

アリソンの主張は、米中が衝突に向かうコースを取らないためには、双方が苦痛のともなう、困難な行動を取るべきだ、ということである。しかし、中国人は、5000年の繁栄を回復することに何の問題もないと考え、他方、アメリカ人は、遅れた農業国から世界史的な役割を担うようになった中国の変化を受け入れない。

2人の指導者も全く異なったタイプである。アリソンは、「構造的リアリティー」を重視し、双方の予測可能性を高めるように求めている。

バラク・オバマは、この点を強く意識して行動した。対抗するパワーを管理する米中間の予測可能なメカニズムを築こうとしたのだ。また、両国がより良い世界のために貢献できることを示そうとした。パリ協定がそうだ。

経済パワーとしてのアジアが世界に影響を及ぼしてきたが、今や、アジアの安全保障が世界を震撼させる。

FT August 2, 2017

The N Korea stand-off is worse than the Cuban missile crisis

Jongsoo Lee

1962年のキューバ・ミサイル危機よりも悪化した核ミサイル対立を回避するには、新しいアプローチが必要だ。

キューバ危機が破滅を回避したのは、ケネディと側近たち、そして、フルシチョフと政治局は、互いの意図を誤解することがなかったからだ。しかもワシントンは、効果的な行動を取った。海上封鎖である。現在の北朝鮮危機では、指導者たち(トランプと金正恩)が相手の意図を誤解する余地が大きい。また、北朝鮮はキューバと違って島ではないから、海上封鎖ができない(中国は封鎖に協力しない)。

今、アメリカ大統領は、むしろフルシチョフだ。フルシチョフは攻撃的で、大げさな表現を好み、誤解を生むような騒々しい演説をした。

打開策はあるか? ピョンヤンの核・ミサイル開発を凍結するのは、廃棄することまでは無理でも、非常に難しいだろう。もし可能であるなら、それはアメリカとのデタントの一部として、であろう。包括的なワシントンとの合意で、ピョンヤンは、核兵器保有の野心を後退させるというプライド喪失よりも、それを超える大きな経済的、安全保障上の利益を得る。そして、金は鋭敏な戦術家として尊敬される。

1のステップは、両者のコミュニケーションと接触を改善することだ。それは「和平のアーキテクチャー」である。

想像的な、シンボルになるような和平の行事を推進して、ピョンヤンの関心を高め、相互和解への建設的なムードを創り出すことだ。もしピョンヤンが実験を一時的に停止し、和平交渉に講じるなら、ワシントンはソウルとの軍事演習を一時的に停止してもよいだろう。徐々にエスカレートを解除し、信頼を醸成する。

これをナイーブであると非難する声はある。しかし、こうした試みをしないなら、その結果は核・ミサイル危機の増大であり、ワシントン、ソウル、東京と、北京、モスクワとのグローバルな混乱である。


 戦争

NYT AUG. 2, 2017

Dunkirk, the War and the Amnesia of the Empire

By YASMIN KHAN

南アジアにおけるイギリス帝国から250万人の兵士を使って、イギリスは第2次世界大戦を続けた。しかし、第2次世界大戦に関するイギリスの多くの記念や記録において、彼らのことは忘れられている。Nolanの新しい映画“Dunkirk”でも、そこにいたインド兵は映らない。

2次世界大戦を記念する行事はイギリス中で観られる。気の利いた戦時スローガン“Keep Calm and Carry On”は、挨拶状やマグカップ、ドアマットにもある。

しかし、イギリスは戦争の複雑さを正当に扱っていない。イギリスだけが残されても闘い続けた“standing alone”という意識は、戦争が世界中の多くの場所で、どのような苦しみを与えたかということを、ときに軽視する危険を冒す。

イギリスは常に植民地に頼っていた。第2次世界大戦では、かつてないほど多く、インド、東南アジア、アフリカ、カリブ海域の植民地にイギリスは人、物、支援を頼った。イギリスが第2次世界大戦を戦ったのではなく、大英帝国が戦ったのだ。

イギリスが帝国から大量の食糧供給を得たことで、各地に戦時の食糧不足が起きた。インドでは大規模な飢饉が起きた。少なくとも300万人のベンガル人が1943年の飢饉で死んだ。それは決して議論されたことのない飢饉である。帝国の戦争は、一方で、勇敢さやヒロイズムであったが、同時に、搾取、不確実さ、分断政治でもあった。

ダンケルクの神話は、イギリスが単独で立っていたことを強調する。それはイギリスの歴史をヨーロッパの歴史から切り離し、Brexitの神話を強化したい者たちの政治手段なのだ。

FP AUGUST 2, 2017

How Long Can China and India Avoid War in the Himalayas?

BY SAMEER LALWANI, YUN SUN, LIV DOWLING

ヒマラヤの高山地帯に展開する,ありえないような光景が,2大国,中国とインドの軍事衝突を導く舞台になっている.外交交渉を重ねて危機を回避できるのか,あるいは,究極の大戦争に至るのか.

ブータンの役割,また,中国が進めるインフラ建設は,ヒマラヤの障壁を変えるかもしれない.


 西側政治同盟の終わり

The Guardian, Friday 28 July 2017

After Trump and Brexit, is this the end for the Anglo-Saxon west?

Timothy Garton Ash

ますます、Brexitそれ自体がイギリスの有権者を苦しめることが分かってきた。ほとんどすべての分野で、Brexitを支持したイギリスの取り残された労働者階級は、自分たちの生活状態が悪化するのを観るだろう。

Brexitを公に支持した有名な政治家としてはトランプが重要だが、アメリカ大統領の人間性がそもそも問題である、と人々は思い始めている。トランプはBrexitを助けることもなく、フランス大統領と歓談した。

トランプが選挙戦で示したすべての悪癖が、そのまま大統領としても流布され続けている。ナルシストで、女性に対する偏見を持ち、規律がなく、情緒的に他人を非難する。政府の主要なポストは指名されないままだ。

ワシントンとロンドン、2つの首都が、これまで一般に安定した効率的な政府を維持したにもかかわらず、きわめて混乱した状態にある。ドイツの首相が、大陸ヨーロッパは伝統的な、海峡や大西洋を超えた同盟国にもはや頼れない、と指摘したのは全く当然である。ロシアも中国も、ハンブルグG20で大笑いした。

西側は終わったのか? 少なくとも、アングロサクソンの西側は? 19世紀のイギリス、20世紀のアメリカ、ソ連崩壊から世界金融危機までの時期において、ネオコンは一種の、アングロサクソンが創った、世界イデオロギーであった。

特にフランスでは、人々がそう考えている。21世紀はアングロサクソンではなく、マクロンとトルドーのような開明的な政策が創るだろう。しかし、それは習近平、ウラジミール・プーチン、レセップ・タイイップ・エルドアンが重要な役割を担う過程だろう。

アメリカの著名なん政治学者と語り合った。アメリカの民主的政治システムは試されている。トランプはチェック・アンド・バランスによって政策を阻止されている。外交において抑制システムは弱いが、共和党が支配する議会が、北朝鮮との戦争を抑え、ロシア制裁を強化した。

アメリカはこの4年間で大きな損害を被るだろうが、修復可能である。イギリスの民主主義も、混乱した議会を通じて、事態の狂気から抜け出し、最も柔軟なBrexitへ、あるいは、BrexitからのExitへ向かうだろう。

だから、アングロサクソンは沈むが、それを頼りにすることはないと決めるのは早すぎる。


 トランプ政権と政治混乱

NYT JULY 31, 2017

Trump Goes Rogue

By MATTHEW CONTINETTI

Mr. Priebus and Mr. Spicernの解雇、John Kelly and Anthony Scaramucciの採用は、トランプ大統領のメッセージである。すなわち、トランプは最初の6か月間を共和党の大統領としてふるまったが、それは終わった。彼の敵は民主党員だけでなく、両党の政治エリートである。

トランプはワシントンとそのすべてを軽蔑している。政府職員、ロビイスト、コンサルタント、戦略家、弁護士、ジャーナリスト、ウォンクス、兵士、官僚、教育課、心理学者。トランプにとって、医療保険制度の改革、オバマケアを破棄できなかったことは、ワシントンが機能しないことの証拠であり、プリーバス、共和党、政治規範からの独立を宣言する理由である。「沼地の水を抜いてやる」というのは、まさに大統領との戦争になった。

われわれが目撃しているのは文化衝突である。トランプの原則は、ワシントンの悪夢である。彼は予定を嫌い、予測不能であることを好む。批判には応えず、誰でも激しく攻撃する。幹部スタッフには何よりも忠誠心を求める。家族とは血とビジネスの利益でつながっている。不確実さは彼の美ジュネス手法である、人々に確実なことを知らせないで不安をもたらし、自分の地位を強化する。

トランプとワシントン政治のスタイルは全く異なる。最近、アウトサイダーの大統領としては、ビル・クリントンやロナルド・レーガンであるが、彼らは政治に長く関わり、ワシントン政治の一部であった。その意味では、トランプに近いのはジミー・カーターである。彼らは閣僚経験がなかった。その所属政党から疑いをもたれていたため、家族に多くを依存した。そして、自分が制御できない事件に振り回された。

トランプはあらゆる戦争で負けるだろう。たとえワシントンの沼地を嫌うとしても、勝利のためには同盟が必要だ。


 医療保険制度の改革

NYT JULY 28, 2017

Why Health Care Policy Is So Hard

By N. GREGORY MANKIW

トランプ大統領は述べた。「医療保険制度がこんなに複雑とは、誰も知らなかった。」

なぜこんなに複雑なのか? 他の財やサービスと何が違うのか?

外部性があるからだ。ワクチン接種を考えてみる。その人が病気にならず、感染が広がらない。しかし、そのコストとベネフィットを個人に委ねると、スピルオーヴァー効果を考慮しないから、ワクチン摂取する人が少なくなる。そこで、政府がワクチン接種を促すために介入する必要がある。

医療の研究にも、同様の、プラス効果がある。

病気になった人は、医療サービスや薬が自分にとって良い者かどうか、判断することができない。医師の専門的判断に従うだけである。医療保険の消費者は、そのサービスや薬品に関する規制を必要とする。また、医療費の支払いには、ランダムな形で、個人の財政負担応力に比べて大きなものとなるから、個々のリスク負担を多くの人でプールして対応する。つまり、支払いの多くは本人ではなく、第三者の負担になる。

保健を利用できる消費者は過剰に医療サービスを消費する傾向がある。それゆえ、支払い方法や保険の対象を制限する。医療サービスの市場では、逆選択の問題が生じる。

左派は政府の役割を要求するが、右派は小さな政府を求める。


 ドイツ自動車産業の危機

FT August 1, 2017

Carmakers’ troubles shake Germany’s national psyche

Guy Chazan

195585日、100万台目のVW Beetleが生産ラインから誕生した。自動車産業は、ドイツ経済の奇跡を表し、敗北と破局からの戦後の復活を示すものだ。多くのドイツ人にとって、Beetleは単なる自動車以上の意味がある。最近の世論調査では63%がドイツ自身のシンボルとしてBeetleを選んだ。大きく劣って、第2位はゲーテである。

2017年の新車発表が、かつてBeetleがそうであったように、大きな革新的衝撃を与えた。Tesla 3が最初の大衆的な電気自動車として現れたのだ。ドイツにおける反応は、魅了、羨望、パニックを等しく集めたものだった。

自動車は、ドイツの自我の中心にある。それは移動手段というより、ドイツの良い部分をすべて蒸留したもの、と見なされている。それは効率性、信頼性、正確性。至上のものを追求する姿勢である。

しかし、自動車産業は生存の危機に瀕している。VWのディーゼル・エンジンに関するデータ改ざんスキャンダルでは、自動車会社が数十年間も共謀していた。それは自動車の評価を損なっただけでなく、ドイツ製品そのもののブランドを損なった。

ドイツの自動車ブランドは、シリコンバレーのもたらす急激な技術革新に脅かされている。カー・シェアリング、電気自動車、自動運転システム。ドイツの自動車会社の重役たちは、その慢心、保守主義、不正行為そのものによって非難されている。

自動車産業、VW, Mercedes-Benz and BMWは今もドイツの貿易黒字の半分を占めている。しかし、その支配的な役割が脅かされているのだ。Telsa 3が発表された同じ月に、イギリスがフランスの2040年までに化石燃料による自動車販売を禁止する方針に同調した。

自動車が過去の産物になることは、ドイツにとって悪夢である。


 NAFTAから保護主義へ

Project Syndicate AUG 2, 2017

Protectionism Will Not Protect Jobs Anywhere

KENNETH ROGOFF

アメリカとヨーロッパの指導者たちが高級な仕事の将来を心配するとき、発展途上のアジアが直面している問題にも注意するのが良いだろう。その問題は、グローバルな賃金水準に強い下落圧力を及ぼすだろう。

インドの1人当たり所得はアメリカの10分の1でしかなく、毎年、1000万人以上が地方を離れて都市に流入している。彼らは、コンピューター・プログラミングどころか、街頭のお茶売りの仕事を得るのも難しい。

インドも、日本が開拓して、中国を含む多くの国が追随してきた工業輸出型の成長モデルを採用するべきか? これからの数十年で、機会かがそうした分野の雇用を時代遅れにするとき、何を輸出できるのか?

それはサービス分野であろう。インドはアウトソーシングで世界トップである。しかし、30年間の高成長を達成した中国でさえ、今なお都市へ流入する年1000万人の雇用を確保するのに苦労している。機械化が進み、また、さらに低賃金のベトナム、スリランカと競争している。

最近、中国の鉄鋼のように、グローバルな保護主義が高まっている。アメリカやヨーロッパが公正な貿易を主張するとき、歴史は、裕福な、政治的に組織された者が利益を受け、より高い価格を支払う消費者が敗者になる、と示している。

しかし、国際競争に対して自国を閉じることは、結局、競争を妨げて、革新も、雇用も、成長も損なうだけである。また、グローバル・サプライ・チェーンに深く組み込まれている経済では、輸入に対する関税を引き上げることで、消費者も輸出部門も深刻な打撃を受ける。トランプはNAFTAを廃止できないだろう。

各国は、技術革新と貿易の高まる世界で、どのような対処すべきか? 世界金融危機以後も、中国が続けているように、インフラと教育を改善することだ。その国の立地やサプライチェーンの優位を確保できる。

また人々が職場を、急速に、頻繁に変わるために、職業訓練や成人教育のシステムを大幅に見直すべきだ。それは主にオンライン教育が担うだろう。また各国は、課税と所得移転を通じて、再分配する制度を強化しなければならない。


 非リベラルな民主主義

Project Syndicate AUG 2, 2017

Why Are Illiberal Democrats Popular?

DANIEL GROS

「非リベラル民主主義」がヨーロッパで誕生したことは、われわれの時代を示す重要な趨勢である。その指導者は権力に対するチェック・アンド・バランスを解除し、権力を集中した。ロシアのプーチン、トルコのエルドアン、ハンガリーのオルバンがその代表例だ。この現象を示す様々な特徴が議論されるが、中でも、彼らが他州的な支持を維持している点が最も重要だ。

テレビ、ラジオ、新聞のような、伝統的メディアを支配することは、当然、選挙で有権者に支持される上で重要である。しかし、世論調査でも高い支持率を得る理由は、彼らがいわゆる「ワシントン・コンセンサス」に従ってきたからだ。すなわち、慎重なマクロ経済運営と開放型の市場である。

プーチンのロシアはその典型である。政府は常に黒字の予算を示し、豊富な外貨準備を維持している。3国は、ともに公的債務を減らし、あるいは、すでに低水準だ。以前のリベラルな体制が金融危機に陥って支持を失ったことを、彼らはよく知っている。

ワシントン・コンセンサスを受け入れることが、長期的に、経済パフォーマンスを改善すると考え、彼らはマクロ経済管理を非政治的な専門家たちに委ねた。彼らは、支持率を高めるために短期的な財政・金融の刺激策を使用する誘惑を拒み、有権者が重視するアイデンティティ政治に集中したのだ。その長期的な結果としてマクロ経済が安定したことは、有権者を満足させた。

これは他の強権的な指導者、たとえば、ベネズエラのチャベスが終盤に行った政策と対照的である。ヨーロッパの非リベラルな強権指導者たちは、金融危機がIMF融資とその介入を招き、融資条件として権力を制限されることを知っている。

しかし、慎重なマクロ経済管理が成長をもたらすのは、彼らが経済を比較的自由に機能させる場合だけである。長期的な課題は、彼らの非リベラルな政治体制と経済的な自由とを両立できるか、ということだ。成長する経済で権力を握る者たちは、その家族や仲間に経済成果の大きな分け前を与えることを好み、汚職が広まる。この体制は、政治的なコネクションと優越的な選択に依存しているのだ。それは成長を損ない始める。

この意味で、プーチンのロシアは変化を示している。ワシントン・コンセンサスに従い,ロシア経済は石油価格のスーパーサイクルによって崩壊することを免れた.しかし,石油価格暴落から3年が経過したロシアは,生活水準が低迷し,成長率も推定1.5%である.同様にトルコでも,活発な民間投資を促すには,エルドアンが進めたクーデタ失敗後の弾圧が不安を高めている.

長期的な経済成長は経済的自由に依存する.権威主義的体制にとって有権者を満足させることは難しくなるだろう.

Project Syndicate AUG 3, 2017

Extraordinary Measures for Ordinary Times

HAROLD JAMES

危機の時代には,脅かされた利益を守るために,非常手段が求められる.2008年の世界金融危機は,さまざまな,成功も失敗もした非伝統的な政策を実行させた.その効果は,確かに大恐慌を再現することもなく,正常化が議論されている.しかし,すでに法的な権限を越えた中央銀行の行為に関する警告が現れていた.

こうした行動をとった代表的な例は,首相であったプーチンだ.アルミニウム価格が暴落して工場が閉鎖され,職を失った労働者たちを助けるために,モスクワから訪問した.彼は工場を支配するオリガークを「ゴキブリ」と呼んで非難し,国家による救済を唱えたのだ.

強権的な指導者の決断が政治の本質である,というのはナチスの運動に参加したドイツの政治学者Carl Schmittの分析であった.危機後の世界を生きる我々は,皆,危機を常態化する,ポスト・ソビエトの中にある.


 ASEAN50周年

Project Syndicate AUG 2, 2017

ASEAN at 50

KISHORE MAHBUBANI

EUに代わってASEANが地域統合のモデルになるだろう.

ASEANは成功し,希望に満ちている.世界で最も多様性に富む地域である.64000万人の人口には,24000のイスラム教徒,12000万のキリスト教徒,15000万の仏教徒が含まれる.26100万人のインドネシアと45万人のブルネイが属し,1人当たり所得は,シンガポールの52960ドルからラオスの2353ドルまで,22.5倍の開きがある.

この多様性は地域統合の協力を妨げる条件と考えられた.1967年に,ASEANが数年以内に崩壊すると,多くのエコノミストは考えた.

同時に,東南アジアは深刻な安全保障上の問題を抱えた地域であった.ある歴史家は「アジアのバルカン半島」と呼んだほどだ.それはベトナム戦争が続く中で,5つの非共産主義国家が同盟を形成したものとみなされた.

しかし,ASEANはその予測を超えて拡大し,成長と共産主義諸国(ベトナム,ラオス)の加盟や民主化(ミャンマー)にも成功したのだ.ASEANが示す地域安全保障への制度的枠組みは,アメリカやEU,そして,中国,ロシアを含む重要な試みである.その経済的ウェイトや,インドネシアに代表される「説得と合意形成」を重視する方針は,南シナ海の中国との関係において試されている.

2012年,EUはノーベル平和賞を受賞した.しかし,将来のモデルはASEANである.


 日本モデル

FT August 3, 2017

Can Japan provide answers to the west’s economic problems?

Robin Harding in Tokyo

1979年,石油危機が起きたとき,日本はアメリカが求める理想のモデルになった.ソニーのウォークマン,トヨタの自動車,ジャパン・アズ・ナンバー・ワンである.

しかし,10年後バブルがはじけた.その後の停滞を含めて,日本は,他国がまねしてはいけない失敗の例になった.

しかし今,再び日本をうらやむ声がある.政治は退屈なほどに安定し,トヨタからファナックまで,ロボットの開発利用が進んでいる.生活水準は高く,貧富の格差は相対的に見て小さく,文化的な結束力が高い.ほぼ同質のエスニシティ―だ.

イギリスのBrexit推進派は,カナダやシンガポールを将来のモデルにしたが,移民が少なく,規制に関する主権があり,貿易に主導された経済を探すなら,それは日本である.

その中身を検討する価値がある.

******************************** 

The Economist July 22nd 2016 

Brain gains

Britain and the EU: Facing up to Brexit

The economy: The debt rollercoaster

NAFTA: Redesigning the North American home

INDIA AND PAKISTAN: Hissing Cousins

(コメント) NAFTAや香港の話もありますが,時間がなくて読めませんでした.

インドとパキスタンに関する特集記事が圧巻です.ともにイギリスから独立した後,大規模な流血を経て分離します.インドは多くの官僚を育て,パキスタンでは多くの軍人が育った,という両国の在り方は,長い紛争と関係しています.

****************************** 

IPEの想像力 8/7/17

The Economistの特集記事を読みました。

インド、パキスタン、両国は70年前,1947年半ばに,イギリスから独立した.エスニック,言語,宗教において,多くの共通点を持つ.イスラム教徒が,ヒンズー教徒の多数派により支配されることを不安として,秩序正しく分離することに合意した.しかし,国境線や資産に関して明確な合意があったにもかかわらず,計画はすぐに大きな混乱に陥る。100万人以上の死者と、1500万人の難民を生んだ.

宗教が分断の理由になったが,それは安定した国家の条件ではない.たとえば土地の支配者と住民の宗教が異なるとき,支配者は住民の意思に反してインドやパキスタンの介入を望んだ.それは住民の間で不満と反政府活動を強め,暴動や敵対的な介入,戦争にもつながった.その後,テロによる膨大な犠牲者が続き,安全保障を最優先した軍部の政治的影響力が強まった.パキスタンの民主政治は安定した基盤を得られず,軍事クーデタ、冷戦下のアメリカによる軍事支援,さらに,両国の核開発にまで至る.

****

核兵器の広がる世界で、大国間では戦争を回避するとしても、シリア内戦が示すように、小国の内戦と武装集団による代理戦争は起こるでしょう。

北朝鮮の危機も、核兵器を隔離した形で、金正恩の独裁体制を維持する政治勢力と、それを排除する勢力との内戦状態に向かい、彼らが外部からの支援を得て長期に戦闘を継続する可能性はあるのでしょうか? 周辺の諸大国が、いずれの勝利も望まないとき、そのような均衡状態で核による脅威を抑え込むシナリオが検討されているかもしれません。

中国、インド、日本にとって、地域の安全保障は溶解し始めます。ASEANが「説得と合意形成」を唱える中で,将来,中国が空母を10隻建造するとしたら、日本も原子力潜水艦を,周辺諸国と合わせて,15隻建造するでしょう。その後、ASEANと主要諸国の軍関係者は,海軍力の均衡と抑制に関する国際合意(アジアSALT 1)に至るかもしれません。

アジア地域の安全保障とは,こうした合意にアメリカ,ロシアが参加して,核兵器、空母と潜水艦の能力を細かく分類し,国際機関による監視・管理が確立される状態を意味するのでしょう。

それと並行して,ASEAN諸国と中国との経済統合が進みます.この米中+5(日本、アメリカもしくは台湾,韓国、ロシア、ベトナム)の海軍抑制体制の性格が,次第に,貿易や投資の急速な増大と保証・調整メカニズムに転換し始めます。

****

インドとパキスタンは,互いの貿易や人の交流を制限し,南アジアの発展を制約してきました.インドは人口や領土,経済発展において優位を占めており,パキスタンとの対立に制約されるとしても,協力や経済統合のために譲歩する姿勢を欠いていました.しかし,そのことが結果的に,パキスタンの危機意識を刺激し、政治を軍部や過激主義に依存させることになったのです.

中国の急速な経済成長と南アジアにも及ぶ影響力は,インドのナショナリズムを刺激します.インドのヒンズー教を重視した政治運動は,モディの政権基盤を強化したけれど,その姿はパキスタンに似ている,と指摘されます.パキスタンでは,アメリカに代わって中国の影響力が強まり,政治家たちは植民地化を懸念しますが、軍部は既得権を手放そうとしません.

The Economistは,まず,国内の民主主義体制を改革・強化することで,両国は大きなチャンスを手にするだろう,と激励します.

******************************