(前半から続く)
● NAFTAから保護主義へ
VOX 30
July 2017
Renegotiating
NAFTA: The role of global supply chains
Emily Blanchard
Project
Syndicate AUG 2, 2017
Protectionism
Will Not Protect Jobs Anywhere
KENNETH ROGOFF
アメリカとヨーロッパの指導者たちが高級な仕事の将来を心配するとき、発展途上のアジアが直面している問題にも注意するのが良いだろう。その問題は、グローバルな賃金水準に強い下落圧力を及ぼすだろう。
インドの1人当たり所得はアメリカの10分の1でしかなく、毎年、1000万人以上が地方を離れて都市に流入している。彼らは、コンピューター・プログラミングどころか、街頭のお茶売りの仕事を得るのも難しい。
インドも、日本が開拓して、中国を含む多くの国が追随してきた工業輸出型の成長モデルを採用するべきか? これからの数十年で、機会かがそうした分野の雇用を時代遅れにするとき、何を輸出できるのか?
それはサービス分野であろう。インドはアウトソーシングで世界トップである。しかし、30年間の高成長を達成した中国でさえ、今なお都市へ流入する年1000万人の雇用を確保するのに苦労している。機械化が進み、また、さらに低賃金のベトナム、スリランカと競争している。
最近、中国の鉄鋼のように、グローバルな保護主義が高まっている。アメリカやヨーロッパが公正な貿易を主張するとき、歴史は、裕福な、政治的に組織された者が利益を受け、より高い価格を支払う消費者が敗者になる、と示している。
しかし、国際競争に対して自国を閉じることは、結局、競争を妨げて、革新も、雇用も、成長も損なうだけである。また、グローバル・サプライ・チェーンに深く組み込まれている経済では、輸入に対する関税を引き上げることで、消費者も輸出部門も深刻な打撃を受ける。トランプはNAFTAを廃止できないだろう。
各国は、技術革新と貿易の高まる世界で、どのような対処すべきか? 世界金融危機以後も、中国が続けているように、インフラと教育を改善することだ。その国の立地やサプライチェーンの優位を確保できる。
また人々が職場を、急速に、頻繁に変わるために、職業訓練や成人教育のシステムを大幅に見直すべきだ。それは主にオンライン教育が担うだろう。また各国は、課税と所得移転を通じて、再分配する制度を強化しなければならない。
● ロシア制裁と効果
The
Guardian, Monday 31 July 2017
As the US
and EU square off over Russia sanctions, only Putin can win
Natalie Nougayrède
FP JULY
31, 2017
If Putin
Wanted to Step Up His Fight With America, You’d Know It
BY DMITRI TRENIN
Bloomberg 2017年7月31日
U.S.
Sanctions Are Another Gift to Putin
By Leonid Bershidsky
● アメリカ経済と労働組合
FT July
31, 2017
Strong
unions will boost America’s economy
Rana Foroohar
アメリカ経済の回復には、賃金の上昇が必要であり、そのために労働組合の役割が重視されるべきだろう。しかし、ヨーロッパと異なり、アメリカでは労働組合が経営者から敵視され、コミュニティーにとって否定的なものと見られている。組合はアメリカ労働者のわずか10.7%しか組織していない、それは1980年代初めの半分だ。
労働運動の新しい動きは、主要都市における、最近のフリーランス組合の拡大である。作家やアーティスト、写真家などが集まる。彼らは賃金よりも、雇用の安定性や年金、医療保険に強い関心を持っている。
NYT AUG.
2, 2017
Racially
Charged Nissan Vote Is a Test for U.A.W. in the South
By NOAM SCHEIBER
● ベーシックインカム
FT July
31, 2017
Basic
Income: And How We Can Make It Happen, by Guy Standing
Review by Gemma Tetlow
著者は、社会正義のためにベーシックインカムを主張して、そのコストを無視する。トライデント・ミサイルの配備費用とベーシックインカムの選択、という問いを排除する姿勢は、説得的ではない。
● アメリカの金融引き締め
Bloomberg 2017年7月31日
Six Things
Central Bankers Don't Get About Wages
By A. Gary Shilling
Bloomberg 2017年8月1日
Six Things
Central Banks Don't Get About Wages, Part 2
By A. Gary Shilling
労働市場の需給がタイトになっていることを理由に、連銀は金融引き締めを進めるようだ。しかし、グローバリゼーションにおける経済変化、労働力の供給、労働組合、生産性、をもっと考慮しなければならない。
● 金融危機からの回復
FT August
1, 2017
The sequel
to the global financial crisis is here
Frank Partnoy
Project
Syndicate AUG 1, 2017
Explaining
Global Recovery Amid Political Recession
MICHAEL SPENCE
● コロンビア和平の教訓
Project
Syndicate AUG 1, 2017
The
Sandinista Shell Game
ANDRÉS VELASCO
● 移民問題とイタリアのポピュリズム
FT August
2, 2017
Migration
opens the door to Italy’s populists
James Politi in Salerno
● ロボット
FT August
2, 2017
Robot
behaviour is creeping beyond our control
Anjana Ahuja
FT August
3, 2017
Silicon
Valley needs to be a better neighbour
Richard Florida
● 非リベラルな民主主義
Project
Syndicate AUG 2, 2017
Why Are
Illiberal Democrats Popular?
DANIEL GROS
「非リベラル民主主義」がヨーロッパで誕生したことは、われわれの時代を示す重要な趨勢である。その指導者は権力に対するチェック・アンド・バランスを解除し、権力を集中した。ロシアのプーチン、トルコのエルドアン、ハンガリーのオルバンがその代表例だ。この現象を示す様々な特徴が議論されるが、中でも、彼らが他州的な支持を維持している点が最も重要だ。
テレビ、ラジオ、新聞のような、伝統的メディアを支配することは、当然、選挙で有権者に支持される上で重要である。しかし、世論調査でも高い支持率を得る理由は、彼らがいわゆる「ワシントン・コンセンサス」に従ってきたからだ。すなわち、慎重なマクロ経済運営と開放型の市場である。
プーチンのロシアはその典型である。政府は常に黒字の予算を示し、豊富な外貨準備を維持している。3国は、ともに公的債務を減らし、あるいは、すでに低水準だ。以前のリベラルな体制が金融危機に陥って支持を失ったことを、彼らはよく知っている。
ワシントン・コンセンサスを受け入れることが、長期的に、経済パフォーマンスを改善すると考え、彼らはマクロ経済管理を非政治的な専門家たちに委ねた。彼らは、支持率を高めるために短期的な財政・金融の刺激策を使用する誘惑を拒み、有権者が重視するアイデンティティ政治に集中したのだ。その長期的な結果としてマクロ経済が安定したことは、有権者を満足させた。
これは他の強権的な指導者、たとえば、ベネズエラのチャベスが終盤に行った政策と対照的である。ヨーロッパの非リベラルな強権指導者たちは、金融危機がIMF融資とその介入を招き、融資条件として権力を制限されることを知っている。
しかし、慎重なマクロ経済管理が成長をもたらすのは、彼らが経済を比較的自由に機能させる場合だけである。長期的な課題は、彼らの非リベラルな政治体制と経済的な自由とを両立できるか、ということだ。成長する経済で権力を握る者たちは、その家族や仲間に経済成果の大きな分け前を与えることを好み、汚職が広まる。この体制は、政治的なコネクションと優越的な選択に依存しているのだ。それは成長を損ない始める。
この意味で、プーチンのロシアは変化を示している。ワシントン・コンセンサスに従い,ロシア経済は石油価格のスーパーサイクルによって崩壊することを免れた.しかし,石油価格暴落から3年が経過したロシアは,生活水準が低迷し,成長率も推定1.5%である.同様にトルコでも,活発な民間投資を促すには,エルドアンが進めたクーデタ失敗後の弾圧が不安を高めている.
長期的な経済成長は経済的自由に依存する.権威主義的体制にとって有権者を満足させることは難しくなるだろう.
Project
Syndicate AUG 3, 2017
Extraordinary
Measures for Ordinary Times
HAROLD JAMES
危機の時代には,脅かされた利益を守るために,非常手段が求められる.2008年の世界金融危機は,さまざまな,成功も失敗もした非伝統的な政策を実行させた.その効果は,確かに大恐慌を再現することもなく,正常化が議論されている.しかし,すでに法的な権限を越えた中央銀行の行為に関する警告が現れていた.
こうした行動をとった代表的な例は,首相であったプーチンだ.アルミニウム価格が暴落して工場が閉鎖され,職を失った労働者たちを助けるために,モスクワから訪問した.彼は工場を支配するオリガークを「ゴキブリ」と呼んで非難し,国家による救済を唱えたのだ.
強権的な指導者の決断が政治の本質である,というのはナチスの運動に参加したドイツの政治学者Carl
Schmittの分析であった.危機後の世界を生きる我々は,皆,危機を常態化する,ポスト・ソビエトの中にある.
● ASEAN50周年
Project
Syndicate AUG 2, 2017
ASEAN at
50
KISHORE MAHBUBANI
EUに代わってASEANが地域統合のモデルになるだろう.
ASEANは成功し,希望に満ちている.世界で最も多様性に富む地域である.6億4000万人の人口には,2億4000のイスラム教徒,1億2000万のキリスト教徒,1億5000万の仏教徒が含まれる.2億6100万人のインドネシアと45万人のブルネイが属し,1人当たり所得は,シンガポールの5万2960ドルからラオスの2353ドルまで,22.5倍の開きがある.
この多様性は地域統合の協力を妨げる条件と考えられた.1967年に,ASEANが数年以内に崩壊すると,多くのエコノミストは考えた.
同時に,東南アジアは深刻な安全保障上の問題を抱えた地域であった.ある歴史家は「アジアのバルカン半島」と呼んだほどだ.それはベトナム戦争が続く中で,5つの非共産主義国家が同盟を形成したものとみなされた.
しかし,ASEANはその予測を超えて拡大し,成長と共産主義諸国(ベトナム,ラオス)の加盟や民主化(ミャンマー)にも成功したのだ.ASEANが示す地域安全保障への制度的枠組みは,アメリカやEU,そして,中国,ロシアを含む重要な試みである.その経済的ウェイトや,インドネシアに代表される「説得と合意形成」を重視する方針は,南シナ海の中国との関係において試されている.
2012年,EUはノーベル平和賞を受賞した.しかし,将来のモデルはASEANである.
● ポスト真実
Project
Syndicate AUG 2, 2017
Surviving
in a Post-Truth World
DANIEL T. BLUMSTEIN
● 日本モデル
FT August
3, 2017
Can Japan
provide answers to the west’s economic problems?
Robin Harding in Tokyo
1979年,石油危機が起きたとき,日本はアメリカが求める理想のモデルになった.ソニーのウォークマン,トヨタの自動車,ジャパン・アズ・ナンバー・ワンである.
しかし,10年後バブルがはじけた.その後の停滞を含めて,日本は,他国がまねしてはいけない失敗の例になった.
しかし今,再び日本をうらやむ声がある.政治は退屈なほどに安定し,トヨタからファナックまで,ロボットの開発利用が進んでいる.生活水準は高く,貧富の格差は相対的に見て小さく,文化的な結束力が高い.ほぼ同質のエスニシティ―だ.
イギリスのBrexit推進派は,カナダやシンガポールを将来のモデルにしたが,移民が少なく,規制に関する主権があり,貿易に主導された経済を探すなら,それは日本である.
その中身を検討する価値がある.
Bloomberg 2017年8月3日
Japan Inc.
Might Have to Pay Up
By Daniel Moss
● BMWとノキア
Bloomberg 2017年8月4日
BMW as the
Next Nokia? Nonsense
By Leonid Bershidsky
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The Economist July 22nd 2016
Brain gains
Britain and the EU:
Facing up to Brexit
The economy: The debt
rollercoaster
NAFTA: Redesigning the
North American home
INDIA AND PAKISTAN:
Hissing Cousins
(コメント) NAFTAや香港の話もありますが,時間がなくて読めませんでした.
インドとパキスタンに関する特集記事が圧巻です.ともにイギリスから独立した後,大規模な流血を経て分離します.インドは多くの官僚を育て,パキスタンでは多くの軍人が育った,という両国の在り方は,長い紛争と関係しています.
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IPEの想像力 8/7/17
The
Economistの特集記事を読みました。
インド、パキスタン、両国は70年前,1947年半ばに,イギリスから独立した.エスニック,言語,宗教において,多くの共通点を持つ.イスラム教徒が,ヒンズー教徒の多数派により支配されることを不安として,秩序正しく分離することに合意した.しかし,国境線や資産に関して明確な合意があったにもかかわらず,計画はすぐに大きな混乱に陥る。100万人以上の死者と、1500万人の難民を生んだ.
宗教が分断の理由になったが,それは安定した国家の条件ではない.たとえば土地の支配者と住民の宗教が異なるとき,支配者は住民の意思に反してインドやパキスタンの介入を望んだ.それは住民の間で不満と反政府活動を強め,暴動や敵対的な介入,戦争にもつながった.その後,テロによる膨大な犠牲者が続き,安全保障を最優先した軍部の政治的影響力が強まった.パキスタンの民主政治は安定した基盤を得られず,軍事クーデタ、冷戦下のアメリカによる軍事支援,さらに,両国の核開発にまで至る.
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核兵器の広がる世界で、大国間では戦争を回避するとしても、シリア内戦が示すように、小国の内戦と武装集団による代理戦争は起こるでしょう。
北朝鮮の危機も、核兵器を隔離した形で、金正恩の独裁体制を維持する政治勢力と、それを排除する勢力との内戦状態に向かい、彼らが外部からの支援を得て長期に戦闘を継続する可能性はあるのでしょうか? 周辺の諸大国が、いずれの勝利も望まないとき、そのような均衡状態で核による脅威を抑え込むシナリオが検討されているかもしれません。
中国、インド、日本にとって、地域の安全保障は溶解し始めます。ASEANが「説得と合意形成」を唱える中で,将来,中国が空母を10隻建造するとしたら、日本も原子力潜水艦を,周辺諸国と合わせて,15隻建造するでしょう。その後、ASEANと主要諸国の軍関係者は,海軍力の均衡と抑制に関する国際合意(アジアSALT
1)に至るかもしれません。
アジア地域の安全保障とは,こうした合意にアメリカ,ロシアが参加して,核兵器、空母と潜水艦の能力を細かく分類し,国際機関による監視・管理が確立される状態を意味するのでしょう。
それと並行して,ASEAN諸国と中国との経済統合が進みます.この米中+5(日本、アメリカもしくは台湾,韓国、ロシア、ベトナム)の海軍抑制体制の性格が,次第に,貿易や投資の急速な増大と保証・調整メカニズムに転換し始めます。
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インドとパキスタンは,互いの貿易や人の交流を制限し,南アジアの発展を制約してきました.インドは人口や領土,経済発展において優位を占めており,パキスタンとの対立に制約されるとしても,協力や経済統合のために譲歩する姿勢を欠いていました.しかし,そのことが結果的に,パキスタンの危機意識を刺激し、政治を軍部や過激主義に依存させることになったのです.
中国の急速な経済成長と南アジアにも及ぶ影響力は,インドのナショナリズムを刺激します.インドのヒンズー教を重視した政治運動は,モディの政権基盤を強化したけれど,その姿はパキスタンに似ている,と指摘されます.パキスタンでは,アメリカに代わって中国の影響力が強まり,政治家たちは植民地化を懸念しますが、軍部は既得権を手放そうとしません.
The
Economistは,まず,国内の民主主義体制を改革・強化することで,両国は大きなチャンスを手にするだろう,と激励します.
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