(前半から続く)
● 資本主義
FT July
24, 2017
Public
offerings that serve a wealthy few
Rana Foroohar
The
Guardian, Monday 24 July 2017
The Tories
are still clinging to Poldark’s bleak vision of capitalism
Paul Mason
200年前のCornwallで、人々が冷酷に搾取され、簡単に弾圧されていた歴史のドラマシリーズPoldarkがBBCで放映されている。そこには最初の工業化世代が経験した社会対立が描かれている。
資本主義を再び「高揚させる」ことは可能である。搾取を防ぐ規制を行い、市場を抑制し、ある種の機能や価格は政府が管理するべきだ。投機家や独占業者、悪人に、政党の主要な資金援助を頼るのではなく、社会の部外者として扱うべきだ。しかし、保守党は200年経っても何も学ばない。
● 中国経済崩壊論
FT July
24, 2017
Wang
Qishan: China’s enforcer
Tom Mitchell in Beijing, Gabriel Wildau in
Shanghai and Henny Sender in Hong Kong
FT July
25, 2017
Why China
invests more in Europe than in the US
Yukon Huang
Project
Syndicate JUL 25, 2017
Deciphering
China’s Economic Resilience
STEPHEN S. ROACH
再び、中国経済の崩壊論が高まっている。実質GDPの成長率は、今年6.5%に低下し、2018年は6%になると予測される。しかし、中国経済は重大な構造転換を経験している。投資や輸出から国内消費に成長モデルを転換することは、成長を減速させる。
この論争には長い歴史がある。最初に議論されたのはアジア金融危機だった。タイに始まって、韓国、台湾に及び、中国も避けられないと予測された。1998年10月のThe
Economistは、その特集記事で、中国のごみが巨大な渦巻きに吸い込まれる絵を掲げていた。
しかし、それは全くの間違いだった。2008-09年の世界金融危機もそうだ。1930年代以来の深刻な世界不況にもかかわらず、中国経済は9.4%で成長した。もし中国の成長がなければ世界経済は一層深刻な原則を経験したはずだ。
最近の悲観論では、債務のズ台と不動産市場のバブルが注目を集めている。しかし、日本のようなバブル崩壊と経済停滞に向かうという予測は間違っている。中国は日本よりも貯蓄率が高く、GDPに対する債務の比率はまだ低い。中国の都市化率はまだ低く、今後も都市の住宅は増大する中産階級に需要される。
もちろん、債務を累積する国有企業は整理しなければならないが、資産バブルを避けて不動産市場を安定化することは可能である。他国の歴史的な経験から中国の成長を予測することは、しばしば間違っていた。
YaleGlobal,
Tuesday, July 25, 2017
Is a
China-Centric World Inevitable?
Shyam Saran
Project
Syndicate JUL 26, 2017
China’s
Weaponization of Trade
BRAHMA CHELLANEY
TPPをインドや韓国にも拡大し,中国の貿易を軍事化する姿勢に対抗するべきだ.
FP JULY
26, 2017
Beijing
Deals Another Blow to Hong Kong’s Autonomy
BY SUZANNE SATALINE
Bloomberg 2017年7月28日
Could
China Be Turning a Corner?
By Andrew Polk
● 国家から都市コミュニティーへ
FT July
24, 2017
Shifts in
responsibility show how power resides in cities
Bruce Katz
「行政国家」の解体を進めるトランプは、逆に、都市への権力分散を加速するだろう。
パワーはグローバルに移動している。国民国家の政府が攻撃することに応じた諸都市は、住民たちのための行政を実現するために連携し、対抗するだろう。経済的、物質的、市民文化的な能力は、ますます都市に集中している。都市こそが、技術革新と新産業の源である。それは現代の都市国家を出現させるのだ。
NYT JULY
26, 2017
Self-Driving
People, Enabled by Airbnb
Thomas L. Friedman
10年前、カリフォルニアから2つの企業が生まれた。1つは、ウーバーUber。もう1つは、エアーBアンドBであるAirbnb。
ウーバーは、電話で自動車を呼び出し、運転手に料金を支払うことで、すべての人を空いた時間にタクシー・ドライバーに変えた。しかし、ウーバーの究極の目標は、自動運転車である。
Airbnbは、世界中の人々が空いたベッドルームと見知らぬ人とを結びつけるプラットフォームを提供した。すでにその規模は、ヒルトン・ホテルの全部屋数に匹敵する。しかし、その究極の目的は、すべての人を「自動運転」に変えることだろう。
Airbnbは、単なる世界最大のホーム・レンタル業者ではない。世界最大のジョブ・プラットフォームなのだ。それは人々の仕事に向けた情熱を解放する。これは最も困難な社会問題の答えを示すものでもある。すなわち、ロボットとAIによって人間の仕事がなくなっていくことだ。
Airbnbの “home” ではなく “experiences” を訪ねてみることだ。人々は旅するとき、美術館やレストランを訪ねる。しかし、地元の人と同じ経験をすることはむつかしい。Airbnbなら、部屋を貸す人たちが、同時にさまざまなサービスや楽しみ方を提案している。イタリア料理を創る、すばらしい夜の町を見物する、帽子を創る、地元のバスケットボールの試合を観る、アフリカ移民の眼でリスボンを観光する。
こうして、無数の人々が起業家になる。
フォードが工場を建てることで、2万5000人を雇用してくれると期待してはいけない。今の工場は2500台のロボットを装備し、1000人を雇用するだけだ。未来は、人々の才能を発揮させるコミュニティーが担っている。
● テクノロジー
FT July
24, 2017
Domination
dies hard in technology markets
● 北朝鮮の核開発
FT July
24, 2017
Donald
Trump is the odd man out with Putin and Xi
Alexander Gabuev
プーチンとトランプの共謀ではなく、プーチンと習近平との共謀を観なければならない。彼らは、西側に反対するとき、その利害が一致する。たとえば、北朝鮮問題がそうだ。
Project
Syndicate JUL 24, 2017
Ten
Lessons from North Korea’s Nuclear Program
RICHARD N. HAASS
北朝鮮の核保有を阻止するにはもう遅い。しかし、北朝鮮がどのように核とミサイルの技術を獲得したか、理解することが重要である。
1.基本的な製造方法に関する知識と工業力を持つ国が、核兵器を開発すると決めたら、それを阻むことはむつかしい。2.外部からの支援を制限することはできるが、遮断はできない。3.経済制裁の効果には限界がある。そして、インドのように、いったん開発に成功した国は制裁を解除された。4.政府は世界的見地よりも自国の戦略を重視する。5.冷戦終結により、安全保障における核兵器の価値は高まった。6.核不拡散条約には欠陥が多い。7.国連総会決議による核の違法化は実効性がなく、かつてのケロッグ=ブリアン条約と同じである。8.国際システムには大きな意見の相違がある。核武装した国に対する対応にも合意がない。9.対応策には被害の予想と成功の不確実性が増している。10.すべての問題が解決されない以上、事態をどうにか管理し続けるしかない。
● オバマケア
Project
Syndicate JUL 24, 2017
Why
Obamacare Survived
JEFFREY FRANKEL
NYT JULY
24, 2017
Health
Care Is Still in Danger
Paul Krugman
Project
Syndicate JUL 26, 2017
How Would
Health-Care Reform Affect Patient Health?
MARTIN FELDSTEIN
NYT JULY
26, 2017
Why
‘Skinny’ Obamacare Repeal Is a Terrible Idea
By J. B. SILVERS
● ドイツ哲学
FP JULY
24, 2017
German
Philosophy Has Finally Gone Viral. Will That Be Its Undoing?
BY STUART JEFFRIES
ドイツ哲学の変貌をどう見るか? 最近のスター哲学者Richard
David Prechtは、かつてのドイツ哲学と全く異なって、大衆向けの文化産業に進出した。
● 世界経済
FT July
25, 2017
The world
economy flies on multiple engines
トランプが大幅減税や財政刺激策に失敗しても、アメリカ経済に代わって、中国、日本、ユーロ圏の経済が成長を回復するだろう。世界貿易も拡大する。
● ヴェネズエラ
Project
Syndicate JUL 25, 2017
Venezuela’s
Freedom Fighters
MIGUEL RODRIGUEZ MENDOZA
NYT JULY
26, 2017
How to
Avoid Civil War in Venezuela
By
DAVID SMILDE
● ロシア制裁
NYT JULY
25, 2017
To Punish
Putin, Economic Sanctions Are Unlikely to Do the Trick
Eduardo Porter
FT July
27, 2017
Transatlantic
fallout over Russian sanctions is dangerous
Anders Fogh Rasmussen
● グローバリゼーションと政治構造
FT July 26,
2017
Business
can help champion a more inclusive globalisation
Sunil Bharti Mittal
保護主義とポピュリズムの挑戦にビジネス・コミュニティーは対抗しなければならない。貿易をめぐる政策決定はテクノクラートに委ねるべきではなく、経営者も積極的に政策形成にかかわり、貿易によって社会が改善されることを示すべきだ。
市場を開放して、途上諸国の成長や雇用機会を高める。零細企業、中小企業の成長を支援する。世界貿易を民主化するためにデジタル技術を活用する。われわれは、ビジネスが社会にとって好ましいものであり、利潤には真の社会的目的がある、と示さねばならない。
VOX 26
July 2017
Changing
political structures in the two waves of globalisation: Lessons for the EU
Gino Gancia, Giacomo and Ponzetto, Jaume
Ventura
グローバリゼーションの第1期に、世界の国家の数は半分になった。しかし、その後、グローバリゼーション第2期では大幅に増えた。第2期において、国境の変更はもっと平和的に行われ、それは政治構造と貿易機会との関係を示す理論に一致する。
グローバリゼーションは、国境をコストのかかるものにする。初期の段階では、国家の規模を大きくすることで国境線が減った。しかし、後期には、国境のコストが平和的な経済同盟を創ることで取り除かれ、それゆえ、国家の規模は小さくなった。
1820年、世界には125の主権国家があった。第1期グローバリゼーションが終わった1914年に、その数は54に減少した。戦間期にはこの傾向が逆転し、世界貿易が崩壊し、1949年までに、国家の数は76に増えた。そのときまで、政治統合と経済統合は一緒に進んだ。しかし、第2次世界大戦が終わって、新しい時代が始まった。
第2期グローバリゼーションは、1950年以後、貿易をかつてないほど繁栄させた。しかし、経済統合は、世界政治統合の異なる変化をともなったのだ。一方で、国家の数は190を超え、記録的に増えている。他方、WTOやEUが示すような、経済統合を促す国際条約が増えた。
なぜ第1期グローバリゼーションは政治的集中と紛争を生じたのか? なぜ第2期グローバリゼーションは政治的分割と、より平和的な解決に導いたのか?
これらの疑問に答えるには、国境が貿易を妨げ、グローバリゼーションは国境をコストの高いものにする、という前提である。初期には、国境線を拡大することで、この問題を解決した。しかし、のちには、経済同盟を創り出すことで問題を解決し、それゆえ、国家の規模は小さくなった。グローバリゼーションは、攻撃的な市場征服の誘因となるが、国際的な経済同盟はその誘因を取り除き、外交による支配をもたらした。
● アメリカ連銀
Bloomberg 2017年7月27日
Fed Reinforces
Its Path Toward a 'Beautiful Normalization'
By Mohamed A. El-Erian
Bloomberg 2017年7月27日
In Asia,
the Fed Still Rules
By Daniel Moss
FT July
27, 2017
Back to
the future on inflation
Felix Martin
● 減税策
Project
Syndicate JUL 27, 2017
Why Tax
Cuts for the Rich Solve Nothing
JOSEPH E. STIGLITZ
アメリカの右派・資産家層は、不平等、低成長、オピオイド依存症(麻薬)、学校やインフラの劣化、などに対する政策について合意できない。彼らの答えはいつも同じだ。減税と規制緩和、投資家に「動機づけ」を与え、経済を「解放する」、と。
しかし、それは機能しなかった。1980年代にレーガン大統領が試みたとき、彼は税収が増える、と言った。実際は、成長が減速し、税収は減って、労働者が苦しんだ。相対的な意味で、勝者は企業と富裕層だった。
税制改革は税収に対して中立であるべきだ。企業は巨額の利益を上げている。他方で、庶民は苦しんでいる。ましてや、2008年の金融危機を招いた金融業界が経済的損害を支払わないどころか、減税されることは、倫理的に受け入れがたい。
現在のアメリカの税制は非効率で不公平である。重要な問題の1つは、アメリカ企業の外国における所得に課税することだ。民主党員は、企業がアメリカの法の支配やパワーから得ている優位を考えれば、もっと税金を支払うべきだ、と主張する。しかし、これに対して企業は、本社を海外に移転する、と脅迫する。
共和党員は、この脅迫に応える意味でも、ほとんどの国が採用しているような、領土的な税制を提案している。すなわち、ある国で行われた経済活動に対してのみ課税する、ということだ。その際、アメリカ企業が海外で保有する、課税されていなかった利潤に対しては、1回限りの課税を行う。
ただし、領土的税制による税収の減少について、下院議長のPaul
Ryanは、純輸入税を提案している。その問題は、誰がそれを支払うか、である。中国からの安価な衣服の消費者がそれを支払うだろう。
政治的に明敏な大統領なら、法人税改革の経済学と政治学をよく理解して、意味のある税制改革に向けて議会を押し出すだろう。しかし、税制改革はすべて秘密裏に取引される。むしろ、幅広い減税が実現し、敗者は将来の世代である。
減税は成長を刺激する、という口当たりの良い宣伝は、何の根拠もない。特に、アメリカでは投資が債務で行われ、金利には税額控除が行われているから、そのようなことは起きない。
多くの問題、特に不平等に苦しむ国で、裕福な企業に対する減税が問題を解決することはない。
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The Economist July 8th 2016
The German problem
North Korea: Containing
Mr Kim
Longevity: Over 65 shades
of grey
The war against Islamic
State: After the califhate
The German economy:
Vorsprung durch Angst
Housing in Singapore: The
high life
The new old: The
economics of longevity
Germany’s reluctant
leadership: The Merkel doctrine
(コメント) (The Economist の紹介ですが,前回と順番を間違えました.)
本号では2つのテーマに関心が向くでしょう.1つは,ドイツ.もう1つは,「高齢化」を再編する特集記事です.
ドイツの経常黒字問題は,ドイツ経済の強さと,それを創り出した経済モデルの弱さに関する再考を求めます.国際収支不均衡をグローバル・ガバナンスの端緒と見るなら,同時に,ドイツがアメリカに代わって国際システムを担うことはない,という記事にも注目します.
「高齢化」という重苦しいテーマを,全く違う概念に再編する試みは,ある程度,成功しています.
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IPEの想像力 7/31/17
かつて,「子ども」や「ティーンエイジ」が発見されたように,人は職場を引退して老人になる前に,1つの異なる世代を形成する,と見るのが正しいだろう.The
Economistは,そう主張しています.
新しい人生の局面を定義することは,労働,年金,教育,消費,保険,医療,などの在り方と政策思想.社会制度を転換することを意味します.特集記事は,新しい人々,すなわち,65歳を超えても,元気な老人たちのことを “Nyppies”
(Not Yet Past It) “Owls” (Older, Working
Less, Still earning) と呼びます.
人類の平均寿命が延びたのは,医学の進歩で出生や幼年期に関する死亡率が低下したからでした.しかし,その後,豊かな諸国で老人たちの健康状態が改善し,病気に関する医薬品や治療が大いに発達したことで,元気な高齢者たちが増えたのです.
かつてのような一律の引退制度と年金の支給,医療保険制度は,さまざまな老人たちの状況に一致しなくなりました.彼・彼女らにふさわしい働き方,稼ぎ方があれば,Owlsたちは働き続けるでしょう.ただし,より少ない時間,柔軟な雇用形態であれば.彼らが活躍するには,企業の雇用形態だけでなく,年金や医療保険制度の扱いにも,それにふさわしい扱い方が求められます.
社会の急速な高齢化を,何か宿命的な,若年層に対する負担の増大,成長に対する制約と見なすことは間違っています.Owlsは収入を得ている限り,楽しく消費し続けます.彼らは食事や音楽,海外旅行を楽しみ,健康にも,美容にも,支出し続けます.Owlsにふさわしい産業が勃興し,経済成長を支えるでしょう.
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ドイツの経常収支黒字が問題視されています.それは,ドイツの人口が急速に高齢化することに備えて貯蓄率を高く維持していたから,ということでは説明できません.
貿易収支そして経常収支は,ドイツの工業製品が優秀であるから,というのではなく,国内貯蓄が国内投資を超えているときに発生します.しかし,これは変数間の恒等式を示すだけで,原因の説明ではありません.
なぜドイツは過剰貯蓄もしくは国内投資が過小になり,また,なぜアメリカやユーロ圏内の赤字国,例えばギリシャは,その逆になるのか?
内外の不均衡について説明を求めるなら,それは各国の経験した歴史的なショックや社会変動に求めるしかないのです.記事が指摘するのは,輸出産業の競争力に配慮した労使交渉による賃金決定,中小企業の製造業地域が及ぼす社会的合意,シュレーダー政権が唱えたアジェンダ2010,ユーロ圏の成立と金融・財政政策の不適応,など.ドイツの優れた輸出力が,今や,賃金抑制によるデフレの輸出としてユーロ圏や世界経済を苦しめます.
トランプ政権が貿易赤字と雇用の流出についてメキシコを非難し,中国やドイツや日本を非難し,NAFTAもTPPも否定するのは,レーガン政権が同じような不満をプラザ合意や協調的なドル価値の切下げに,すなわち,多角的な外交交渉によって解決しようとした姿勢と対照的です.トランプは赤字や黒字の理由を十分に考慮する能力を欠いていることで,国際政治システムを劣化させています.
もちろん,変動レート制で完璧であれば,すなわち,国際資本移動と価格変動に応じる弾力的な消費と供給体制があれば,トランプのような政治家に翻弄されることはなかったはずです.
ドイツでもOwlsが育てば,高い貯蓄率を維持するより,もっと消費が伸び,ユーロ圏内の不均衡を調整する過程にも積極的な投資が刺激されるでしょう.73歳のサー・ミック・ジャガーのような元気な老人たちが,豊かな諸国の政治や思想を動かすのです.
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