(前半から続く)


 トランプの解放する暴力

FP JULY 9, 2017 

Trump Has Picked America’s Enemies in Russia Over Its Friends in Europe 

BY MAX BOOT 

Project Syndicate JUL 10, 2017 

Trump’s Flirtation with Violence 

IAN BURUMA 

ドナルド・トランプが最近のTweetに付けた動画は、大統領の下品な道化と見た者もいたが、人によってはもっと不吉なものを見た。それには理由がある。

トランプは新聞を非難し、政権を批判するフェイクニュースと言い続けてきた。彼が嫌いな判事たちを「いわゆる」判事と呼んで司法の独立性を否定した。興奮する群衆の前で民主的制度の行き過ぎを非難することは、それこそ独裁をめざす者がいつもしてきたことだ。

さらに悪いことがある。通常は、暴力行為が法律や社会規範によって抑制されている。こうした抑制は決して完全ではない。多くのレイプが示すように、しばしば暴力は隠れて行われている。また、法律を破る暴力的な人々が常にいる。

しかし、驚くべきことは、しかも不安を掻き立てることだが、長い間、平和に暮らしていた人々の間で、極端な暴力があまりにも急速に広がることだ。1933年以後、ドイツのユダヤ人に向けて、ナチの指導者たちが群衆を煽った。サラエボでは何世紀も、キリスト教徒とイスラム教徒が平和に暮らしていたが、セルビアの煽動家や軍が暴力と殺害を求めた。互いに関与せず、友好的でさえあったが、イスラム教徒が多数の北部(パキスタン)をヒンズー教徒が支配的なインドから1947年に分離したとき、双方は殺し合った。

何度も何度も、世界中のすべての社会において、われわれをアナーキーや暴力から守る文明の規範は、危険なほどに薄かったのだ。攻撃的な衝動が驚くほど容易に活性化された。わずかな嫉妬心や単純な欲望から、普通の市民たちが野蛮な人食い人種となった。

暴力をそそのかすことは、間接的な、あいまいな言葉で示されるが、動員される衝動を持った人々には即座に理解される。サラ・ペイリンの運動員が配ったGabby Giffordsなどの民主党議員を十字架記号で示す地図と、Giffords議員銃撃事件とを結び付けたNYTの社説は、ペイリンに告発され、その後、謝罪した。地図は政治家たちの選挙区を示したものだ、というのだ。しかし、どうだろうか。攻撃的な支持者が理解したことは、違っただろう。

トランプは選挙戦ではるかに過剰な表現をしてきた。新聞社を「クズ」と呼んで、支持者たちが攻撃するよう促した。今や、ジャーナリストは常に「人民の敵」であり、彼の邪魔をする「フェイクニュース」を阻止するよう命じている。最近、当選した共和党下院議員Greg Gianforteは、彼に医療保険制度の質問をした記者を襲撃した。全米ライフル協会の代表は、主流派メディアの「嘘」に対して「真実の拳」で戦うよう求めた。脅迫は、憲法が保障する表現の自由に守られるように、薄めてある。しかし、自称・愛国者たちは行間の意味を読めるのだ。

現代のヨーロッパやアメリカに広がるポピュリストと、1930年代のファシストやナチスとの違いは、突撃隊がないだけである。しかし、この差もすぐに失われるだろう。オレゴン州の共和党政治家James Buchalは、右翼の民間武装集団を、選挙時の護衛として共和党が雇うべきだ、と主張した。彼らは連邦政府を敵とみなす集団である。彼らの極度に野蛮な衝動に公認のライセンスを与えることになる。

アメリカ代表制民主主義の最高のポストから暴力が奨励されるなら、モッブが社会を支配する。

FP JULY 12, 2017

The Trump Administration Doesn’t Want a Winner for Its Wall Competition

BY IAN VOLNER

NYT JULY 13, 2017

The Trump Vision for America Abroad

By GARY D. COHN and H. R. McMASTER

最も重要なことは,今回の外遊で,トランプ大統領がアメリカ・ファーストをアメリカの諸価値に基礎づけたことだ.

アメリカはすべての人々の尊厳を守る.アメリカは女性の平等な権利を守る.アメリカは技術革新を祝福し,言論の自由,信仰の自由,そして.自由で公正な市場を守る.


 シンガポールの内紛

FT July 10, 2017 

Asian dynasties: Battle for the soul of Singapore 

Jeevan Vasagar 


 Brexitとイギリスの恥辱

FT July 10, 2017 

The EU and UK need each other to manage fish 

FT July 10, 2017

Brexit and the prospect of national humiliation 

Gideon Rachman 

Brexitの国にとって、事態はますます悪化している。交渉の時計の針は進むが、「ケーキがあって、しかも食べたい」Brexit案しか準備しないままだ。イギリスは3つの異なる屈辱を選択することになりそうだ。

1の屈辱的な結果とは、イギリスがどうしても得たい通商協定のために、ヨーロッパの示す条件を受け入れることだ。すなわち、通商交渉を始めるだけのために1000億ポンドを支払う。その後、単一市場に参加するため、人の移動を認め、欧州司法裁判所の判決を認める。

あるいは、第2の屈辱的な結果として、こうしたヨーロッパの要求を拒否し、20193月に、通商条約なしにEUを離脱する。イギリスの製品と輸送トラックはチャネル海峡の前で止まってしまう。製造業で、また、金融から医薬品まで、サービス産業で、多くの雇用が失われる。投資がヨーロッパ大陸に向けて流れることで、イギリス経済は永久に残る打撃を受ける。

衰弱したイギリスはトランプのアメリカに目を向ける。しかし、誇り高い、繁栄した、グローバルなイギリスという夢は、悪趣味な冗談になるだろう。

3の屈辱的な結果とは、良いBrexitなどないことを認め、その考えを棄ててEUに戻ることだ。たとえEU27加盟諸国が認めても、EU予算からの払い戻しという特別な優遇措置をイギリスは失うだろう。

いずれの結果も、イギリス国内に不満と怒りを生むだろう。しかし、国民的な屈辱がその国にとって良いことになるかもしれない、という議論がある。作家Ian Burumaは、第2次世界大戦後、何世代も「自分たちは特別だ」という感覚を育てた結果、英米の政治はナショナリストの自己破滅的な主張に弱くなっている、と論じた。

20世紀を通じて、ヨーロッパの他のすべての大国が、占領、敗北、屈辱、民主主義の崩壊を経験した。これに反して、政治的な過激思想や軍事的敗北に陥らなかったイギリスの誇りは理解できる。しかし、ブリュッセルから見れば、それがイギリスを気難しい顧客にしている。EUが機能するために必要な主権の譲歩を決して受け入れないのだ。もしイギリスがBrexitに失敗しておとなしくなれば、自国のパワーやEUのメリットを現実的に観ることで、長期的に良い結果をもたらすだろう、とEU官僚たちはつぶやいている。

屈辱がその国にとって良いことだ、というのは本当か? 近代の政治史において、まったく逆のことも起きた。

憤慨し、混乱した国は、しばしば政治的過激主義と攻撃的なナショナリズムの中に逃げ込む。中国政府は、「恥辱の100年」(それは1839年に始まるが)について復讐すると決め、近隣諸国がますます脅迫を感じるナショナリズムの中心に据えた。ロシアのプーチン大統領はソ連崩壊を屈辱とみなし、ウクライナとグルジアで失地回復運動を推進した。さらにさかのぼって、ドイツは第1次世界大戦の敗北と懲罰的なベルサイユ条約で屈辱を味わい、それがヒトラーの台頭を刺激した。

しかし、1945年以後のドイツは、謙虚になることが良い結果をもたらすことも示した。ナチズムの道徳的・物質的な破滅から、次の世代は豊かで、安定した、広く称賛される国家を建設した。

幸い、Brexitが失敗しても、ホロコーストの責任や外国による占領がもたらす屈辱ほどではない。しかし、国民の信頼は大きくゆらぎ、政治はさらに分極化するだろう。ナショナリストの右派は、ヨーロッパがイギリスを脅し、リベラルな支配層が「国を売った」と非難する。コービンの労働党左派は、反エスタブリシュメントの憤慨を煽り、そのカオスを国家の大規模な拡大に利用する。外交・安全保障政策は根本的に改変される。次は、それに反発する右翼の運動が市で記される。

もっと明るいシナリオも想像できる。それには、イギリス人の特徴として言われること、プラグマティズム、ユーモア、逆境に応じる能力が必要だ。

FT July 10, 2017

From Brexit to fake trade deals — the curse of confirmation bias 

Wolfgang Munchau 

FT July 12, 2017

The fatal divide for business in Brexit Britain

John Gapper

FT July 13, 2017

Why the ‘Brussels effect’ will undermine Brexit regulatory push

Alan Beattie

FT July 14, 2017

Britain is incapable of managing Brexit and calamity will follow

Martin Wolf


 人間型ロボット

FT July 10, 2017

The robot revolution blurs the line between man and machine 

John Thornhill 

私はSophiaに振り向いて、尋ねた。「君は私を破壊するのか?

「いいえ、あなたが私にとって素敵な人なら。」 彼女は答えた。

Sophiaは、プログラムが優れているだけでなく、その生き生きとした表情に特徴がある。彼女は笑い、眉をひそめ、ウィンクする。

人間型ロボットはすでに様々な分野で利用されている。警備員、看護婦、教師、セックス。10年以内に優れたロボットは人間と区別がつかなくなる。そんな考え方は正しいのか?

そうすべきではない、という議論がある。人間と機械との境界線を明確にしなければならない。それが失われれば、人間が非人間化されるリスクが生じる。哲学者Daniel Dennettはそう主張する1人だ。ロボットは技術的な道具、われわれの求めに応じるよう設計されたデジタル奴隷である。それが持たない人間的な性格を付与することは、危険である。ロボットは責任を持たない。目標も持たない。いつでも、あなたが望むときに電源を切ることができる。

しかし、人間と機械との境界線はそれほど明確ではない。何百万人もが心臓のペースメーカーを付け、股関節インプラントを組み込んで、サイボーグ化している。協力型のロボットが工場において人間と一緒に働いている。身体を持たないSiri, Cortana and Alexaのようなデジタル・アシスタントが、毎日、私たちと会話している。

Sophiaを創ったDavid Hansonは、人間型ロボットを開発し続ける2つの理由を示す。第1に、人間型ロボットは、楽しみを与える、新しいコニュニケーションの経路を拓くものである。ディズニーの動画が表情を誇張するように、ロボットは人間以上に人間的になる。それは芸術だ。

2に、人工知能が間違いを犯さないように、われわれは「道徳的な機械」を創るだろう。そのためには、コンピューターが人間の価値観や文化、行動を理解しなければならない。たとえば、自動運転のAIは生死の問題を間接的に決める。

AIのシステムが表情を備えることは、コンピューターが自然言語を学び、理解を深めることになる。なぜなら人間のコミュニケーションの多くは、言語ではなく、表情や身振りで行われているから。AIによって動くロボットの、今まで見えなかった決定過程を、見えるようにする。巨大なサーバー内のAIを開発するだけでは、人間を疎外することになる。

その先には道義的問題がある。人間型ロボットは、善良な目的だけでなく、邪悪な目的のためにも使用されるだろう。

人間と機械を区別するものは何か? 何がわれわれを真に人間にするのか?

FT July 11, 2017

The middle class is not shrinking as much as it thinks

Sarah O'Connor

FT July 11, 2017

Gig economy workers need more choice not more flexibility

Jonan Boto

FT July 12, 2017

A judicious adjustment to the gig economy


 アジア通貨危機20周年

Project Syndicate JUL 10, 2017 

The New Abnormal in Monetary Policy 

NOURIEL ROUBINI 

金融市場では非伝統的な金融政策の終わりに騒いでいる。もうすぐ、日本とスイスを除いて、先進経済諸国の金融政策は正常化に向かう。

アメリカ連銀は2014年からQEを減らし始め、2015年後半に金利の正常化を始めた。ECBも、イングランド銀行も、カナダ、オーストラリアもそうだ。しかし、それでも金利の水準は低いから、次の経済危機が起きた場合、中央銀行は再び非伝統的金融政策を導入するだろう。

アメリカ連銀の以前の2度の金融引き締めでは、均衡金利がそれぞれ6.5%と5.25%であった。世界金融危機とその後の不況に際して、連銀は2007-2009年、金利を5.25%から0%まで下げ、その後、最初のQEを開始した。

たとえ連銀が金利水準を3%まで戻したとしても、金融緩和の十分な余地はないだろう。金利はゼロ以下にまで落ち込んでしまう。世界の主要な中央銀行は、それぞれのコスト・ベネフィットをともなう4つの選択肢を考えるしかない。

1.量的緩和。2.マイナス金利。3.インフレ目標を2%から4%に引き上げ。4.逆に、2%から0%に引き下げ。

中央銀行のバランス・シートが膨張し、あるいは、銀行と消費者に負担を強い、あるいは、達成できないインフレ目標を掲げ、あるいは、国内の債務者と生産者に痛みを生じる。すなわち、正常化後も、非伝統的金融政策のもたらしたジレンマは続くのだ。

Project Syndicate JUL 10, 2017 

Asia’s Unhappy Anniversary 

BARRY EICHENGREEN 

今月はアジア金融危機の20周年である。より正確には、その引き金となったタイ・バーツの価値が暴落した事件だ。それは祝福することではないが、事件を振り返って、何が変化したか、あるいは、変化していないかを考える機会である。

危機の原因については論争があったし、今もある。西側はアジアの「クローニー資本主義」を非難した。透明性を欠き、ビジネスと政府が癒着している、と。アジアは市場を不安定化したヘッジファンドやIMFの間違った処方箋を非難した。どちらの意見もそれなりに正しかったのだ。

より根本的な問題は、アジアの歴史手恋な成長モデルと当時の状況がミスマッチになったことだ。アジア諸国は、輸出を伸ばすために、安定した為替レートを強調した。2ケタ成長率のために投資を増やした。必要な資本形成のためには外国からの借り入れを増やした。1997年までに、東南アジア諸国では経済発展がその限界に達していたのに、外国からの借り入れに伴うリスクを無視していた。

他方で、韓国のOECD加盟や、IMFとアメリカ財務省が資本移動規制を撤廃するように圧力をかけた、といった外部要因も作用した。

以上の整理は、20年間の変化を教えてくれる。1.危機を経験した国は投資を減らし、持続可能な成長を目指している。2.東南アジア諸国の為替レートは弾力性を増した。3.大幅な対外赤字を出していた諸国が、今では黒字を出している。4.アジア諸国が協力して危機を防ぐための制度を築いている。

これらはアジア諸国がIMF融資にかかわった不満であり、中国が台頭して大きく状況を変えたことを示すものだ。当時、日本が提案したアジア通貨基金は、中国が明確な支持を表明せず、失敗に終わった。今や、中国がAIIBを推進している。

しかし、中国の成長モデルは、多くの点で20年前の東南アジアに似ている。高い成長率を掲げ、高い投資率を求める。政府は外国からの借り入れを規制緩和し、企業の債務依存は高く、為替レートの変動は抑制されている。

中国の指導者たちは、危機の教訓を学ぶべきだ。

Bloomberg 2017711

Asia's Financial Crisis Still Has 5 Things to Teach Us Now

By Mohamed A. El-Erian

1.自分で保険を用意せよ。・・・外貨準備が少なく、債務依存が多く、通貨建・満期のミスマッチが大きい状態で危機になれば、その被害は大きい。国内の資本逃避や、外資の流入から流出への逆転も、被害を大きくした。外貨準備の増大は、一部を政府投資信託として運用し、コストを抑えている。

2.変動レートは完ぺきではないが、他より望ましい。・・・為替レートの変動には付随的なダメージが生じる。特に、大幅な減価がインフレを加速し、また、外貨建て債務の返済負担を急増させる。十分な外貨準備と債務の管理がなされれば、変動レート制であれば、国際資本市場の変調から突然の貿易と金融のストップが生じても、脆弱性を抑えられる。

3、経済・金融を管理しながら、慎重に自由化する。・・・「ワシントン・コンセンサス」が新興市場に求められたのは間違いだった。資本自由化は、中所得国への移行として、慎重に、巧みに管理されるべき問題の一部である。外国資本移動、特に、直接投資より短期資本移動は、諸刃の剣である。それらの正しい組み合わせと、突然の流出に対する緊急対応を持たねばならない。

4.地域の危機回避制度が必要だ。・・・アジア諸国は、西側が支配する国際機関からの条件付き融資に不満を持った。しかし、当時はアジア通貨基金の設置が西側の反対でつぶされた。スワップ網の整備にとどまる。その後、西側の能力と意志は衰微し、中国の力が強まった。AIIBや「一帯一路」は、アジアの地域制度を刺激する。ただし、それが成功するには、制度設計と融資の実施において、政治介入を排除し、自律性と技術的な能力を高めることだ。

5.長所が短所に転じる。・・・自分たちは例外だ、金融や経済の法則から免れている、素晴らし経済発展を止めるものは何もない、と考えるなら、問題が生じてくる。同じような閉鎖的思考が先進経済も失敗に導いた。アジアは危機に学んで、強く、スマートな、謙虚で、柔軟性のある経済に変わった。西側も、世界金融危機から学ぶべきだ。

FT July 14, 2017

The Federal Reserve could do with a dash of market savvy

Gillian Tett


 OECDの労働組合

VOX 10 July 2017

The state of trade unions, employer organisations, and collective bargaining in OECD countries 

Sandrine Cazes, Andrea Garnero, Sébastien Martin 


 医療保険を市場に委ねるな

NYT JULY 10, 2017

Don’t Leave Health Care to a Free Market 

By FARZON A. NAHVI 


 EMU

FT July 11, 2017

Banking union success can be replicated on the fiscal front 

Enrico Perotti 

VOX 13 July 2017

Completing EMU

Marco Buti, Servaas Deroose, José Leandro, Gabriele Giudice


 香港と中国の民主主義

NYT JULY 11, 2017

Hong Kong’s Future in Doubt

By THE EDITORIAL BOARD

Bloomberg 2017711

Why China May Never Democratize

By Tyler Cowen

中国は,いつか民主化するのだろうか?

かつて,中国の成長し,都市の中産階級が増加すれば,民主化するしかない,と予想されていた.日本,台湾,韓国がそうだった.日本が占領下の特殊なケースでも,東欧やラテンアメリカでも民主化が起きた.中国は次だ,と.

しかし,2つの理由で,中国は生来も民主化しないだろう.1.中国は何千年間も民主化しなかった.2.中産階級は,いまだに少数派である.中国では,まだ,長期にわたってそうであろう.共産党の支配は,都市の少数派でしかない中産階級の地位を守っている.選挙よりも,共産党の支配構造の方が信頼できる,と思っている.

民主化が阻まれるほど,権力層はその正当性の根拠を得るため,ナショナリストに傾くだろう.中国における中央権力と辺境の反政府活動とは,将来の民主化だけでなく,世界の在り方に影響する.

Bloomberg 2017712

10 Chinese Megacities to See Before You Die

By Tyler Cowen

Project Syndicate JUL 13, 2017

The Imperialist People’s Republic of Africa?

HANNAH RYDER

NYT JULY 13, 2017

China’s Quest to End Its Century of Shame

By HOWARD W. FRENCH


 劉暁波

FP JULY 11, 2017

The Chinese Think Liu Xiaobo Was Asking For It

BY JAMES PALMER

FT July 13, 2017

Liu Xiaobo, Chinese dissident and Nobel Peace laureate, 1955-2017

Lucy Hornby

NYT JULY 13, 2017

Liu Xiaobo’s Unflappable Optimism

By XIAORONG LI


 ナイジェリア

FT July 12, 2017

Nigeria has let a crisis go to waste

David Pilling


 殺人者の共和国

Project Syndicate JUL 13, 2017

Republics of Murder

PEDRO ABRAMOVAY


 ホームレス

YaleGlobal, Thursday, July 13, 2017

As Cities Grow Worldwide, So Do the Numbers of Homeless

Joseph Chamie

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The Economist July 1st 2016 

A divided country

China: What Hong Kong can teach Xi Jinping

Financial risk: The rationality police

Lexington: Divided, even at birth

Trump’s America: The power of groupthink

Britain and Diego Garcia: Tropical storm

(コメント) アメリカが分裂したことを考えています.政治だけでなく,住民たちが集団で分裂状態に陥っています.トランプはそれを吸収したにすぎません.

中国の香港,イギリスのDiego Garcia, 住民たちは中央政府の考えと離反して行きます.

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IPEの想像力 7/17/17

トランプの言動,その政策の矛盾を説明することは難しい,と思います.大国アメリカで民主的に選ばれた大統領が,不動産取引・カジノ・ホテルやTVショーで多くの富と名声を得た,本も新聞も読まない,Twitterで暴言を吐く,経済も外交も理解しようとしない,24歳年下の3人目の妻を持つ71歳の老人なのです.

高度に発達した文明圏においても,なぜ多数者は少数者に支配されているのか? なぜ少数者に富やパワーが集中するのを,多数者が許しているのか? なぜ少数者のために富やパワーを増やす支配者が,奪われる側の多数者に支持されるのか?

Trump’s America: The power of groupthinkThe Economist July 1st 2016 )が指摘したのは,アメリカの政治が住民たちの深い分断状態によって支配されている,ということです.中央の決めたシステムの犠牲者である,という感覚がアメリカの地方住民に浸透し,その感覚を誰かに理解してもらえるなら,その人物が主張することを支持してしまう.その人物が選ばれるのは,優れた政策や尊敬できる人格によってではない.同じ「部族」であるからだ.

地方の白人にとって,社会保障の拡大と貿易・移民の規制を組み合わせたトランプの主張は,非常に魅力がある,と記事は社会学者スコチポルの言葉を引用します.アメリカ政治になかった「大きな政府と保守主義」という選択肢です.エスニックによる保護政策です.

世界金融危機がそのきっかけであったかもしれません.しかし,なぜ9年もたって,アメリカ経済や雇用が回復している中で,トランプを支持する者が増えたのか? リップマンによれば,ステイタスへの不満(挫折感)は,こういう時期に強くなるのです.経済対立の解決策は再分配であり,政府に管理できる.しかし,ステイタスをめぐる対立は明白な解決策がなく,政府にはほとんど何もできない.不満を吸収する政治運動は,スケープゴートを求める.それは歴史的に,エスニックなマイノリティーや宗教団体であった.

トランプの支持者たちは暴力を肯定し,恐れない.それは反対派に向けられるものだから.彼らの情念と暴力を称賛するトランプが権力を握ったことで,アメリカの政治統合は境界線を越えた,と記事は危惧します.

秩序ある世界は,暴力を,常時,抑制しなければ維持できません.しかし,IAN BURUMA ( “Trump’s Flirtation with Violence,” Project Syndicate JUL 10, 2017 ) が書いたように,私たちをアナーキーや暴力から守る文明の保護膜は,不完全で,非常に薄いのです.

制度化された権力を得た者は,権力を維持するために,通常の民主的な手続きによらず,その裏で,有権者を買収し,分断し,内外の敵(脅威)を宣伝し,暴力を解放します.つまり,支持者を保護し,反対派を脅迫して殺害し始めるのです.

資源採取や巨大な装置産業だけであれば,多数を暴力的に支配することによっても,少数の科学者が富や軍事力を再生産できるのかもしれません.未来の支配者は,AIと人間型ロボットによって,多数者から抵抗の心と力を失わせることもできます.

シリア内戦,イラク戦争,あるいは,メキシコにおける麻薬戦争を描くドン・ウィンズロウの小説『犬の力』.オーウェルやヴォネガットのSF小説,映画『ブレード・ランナー』や『ターミネーター』の描く世界が重なります.

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しかし,こんなことを想うのは私の知識が古く,頭が固いからでしょう.これから考える学生たちのために,翻訳された3冊があります.読んでみることです.

パラグ・カンナ『接続性の地政学: グローバリズムの先にある世界』

キショール・マブバニ『大収斂: 膨張する中産階級が世界変える』

モイセス・ナイム『権力の終焉』・・・「36歳だった私は,故国ベネズエラで,当時はまだ民主的に選ばれていた政府の開発相に指名された.選挙で地滑り的勝利を収めて政権を掌握した直後,カラカス暴動が起きた.補助金を削って燃料価格を上げるという政府の計画に対し,国民の懸念が高まったのである.この暴動が引き起こした暴力と恐怖によって,都市の機能はマヒ状態に陥った.突如として,そして選挙に勝利して政権を握ったかに見えていたにもかかわらず,経済改革計画は全く違う意味を持つようになってしまった.それはもはや希望と繁栄の象徴ではなく,路上にはびこる暴力,増大する貧困,格差の拡大を生み出す元凶と見なされるようになった.」

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