前半から続く)


 カタール危機

FT June 24, 2017

Barclays reels from its costly Qatar cash call

Caroline Binham, Martin Arnold and Patrick Jenkins

Project Syndicate JUN 24, 2017

Saudi Arabia’s Game of Thrones

BERNARD HAYKEL

サウジアラビアのサルマン国王が、将来、Mohammed bin SalmanMBS)に権力を移譲することを決定した。現在の皇太子NayifからMBSへの交代が円滑に進んだのは、国王の支持だけでなく、MBSが王室、国内諸勢力、官僚、石油企業から支持されたことにもよる。彼自身のウィット、狡猾さ、強制力によって、サウジ社会の重要部門を彼が支配することを確認したのだ。

これは、サウジ王室の伝統的な慣習に従った王位継承のための手続きであり、同時に、外交においてトランプ大統領にいち早く接近し、サウジとアメリカの同盟関係を確認したことが重要だった。

数十年の権力を得るであろうMBSは、2つの重要な目標を持つ。1つは、サウジアラビアを石油依存から解放すること、もう1つは、サウジアラビアを、アメリカに損しない、地域の覇権国家にすること、である。

FT June 26, 2017

A family coup in Saudi Arabia

Nick Butler's blog

NYT JUNE 28, 2017

A Way Out of the Qatar Mess

By THE EDITORIAL BOARD

アメリカは,カタールに限らず,中東地域全体に武器の販売を禁止する提案をしてはどうか?


 中国の政治経済

FT June 25, 2017

Xi Jinping’s war on the ‘financial crocodiles’ gathers pace

Minxin Pei

中国の金融集団は、有力政治家との強いコネクションを利用して富を蓄積している。習近平の金融規制強化は、旧政治家につながる影響を排除し、金融システムを再編するものだ。

NYT JUNE 28, 2017

Trump Is China’s Chump

Thomas L. Friedman

Project Syndicate JUN 29, 2017

Should China Deleverage?

YU YONGDING

GDPに対する債務の比率が高くなっても,中国に金融危機が起きる根拠にはならない.金融危機に至る3つの経路がないからだ.1.不良債権化.2.短期の資金不足.3.自己資本不足.

債務と債券は国有銀行と国有企業との間で発生する.中国は高貯蓄率と政府保証がある経済だ.中国は国際的な資本取引を禁止している.金融危機を回避して,政府は債務を処理できるだろう.


 ロシアのクローニズム

NYT JUNE 25, 2017

How Putin Seduced Oliver Stone — and Trump

Masha Gessen

Project Syndicate JUN 28, 2017

Russia’s Oligarchs-in-Waiting

ANDERS ÅSLUND

プーチン大統領の下で、ロシアの勃興しつつあった資本主義はクローニズムに置き換えられた。もしプーチンに生活信条があるとすれば、こういうことだろう。「私に友人には何でも認めるが、私の敵は法が裁く。」

インタビューで、何に最も頼れるか? と訊かれて、「多くの友人がいるけれど、その中でも特に親しい者たち。」・・・「彼らは決して私から去らない。彼らは私を裏切らず、私も彼らを裏切らない。」

実際、プーチンは友人たちに多くを与えた。彼らは、パナマ・ペーパーズでその海外資産を暴露される前でも、多くが億万長者であった。プーチンはロシアのオリガークたちを国有化したのだ。彼の最も親しい友人たちは、ペテルブルグやソ連時代のKGB出身であるが、子供たちにロシアで教育を受けさせた。外国に留学させることはない。既存のオリガークたちはその子供たちに地位を譲っている。プーチン・クローニーの子供たちは、40歳になる前から、すでに億万長者である。

ペテルブルグのクローニーの1人、Nikolai Shamalov2人の息子は、アメリカの証券取引委員会SECがジーメンスに買収の罪で134000万ドルの罰金を科した2008年まで、Siemens AGのためにロシアで医療機器を販売していた。兄のYuriGazfondGazpromの最大の年金基金)の最高経営責任者になった。弟のKirill25歳で、Gazpromからできた石油化学会社Siburの副社長になった。

2011年から2013年まで、Kirillは経営者のストック・オプションとしてSiburの株式の4.3%を得た。その後、2013年、彼はプーチンの娘と秘密裏に結婚し、その後、プーチンのクローニーで最大の富豪であるGennady Timchenkoが、彼に有利な価格でSibur株式の17%を売った。こうしてプーチンの義理の息子は、34歳で、推定13億ドルの資産を持つ。

2015年、プーチン政権は新しい道路税を導入した。長距離トラック運転手たちが大規模な抗議デモを行ったが、プーチンは税収が道路基金を通じて建設に使われる、と擁護した。だれかの私腹を肥やすわけではない、と。しかし、彼のクローニーであるIgor Rotenbergのポケットに入るのだ。

ロシアには縁故主義が蔓延している。トップに君臨する少数の富裕層が、いかに小さな集団か、は衝撃である。プーチンのクローニーたちは世代を超えてますます富裕になっている。それは若者たち、能力ある者たち、野心あるロシア人たちの間に、怨嗟を蓄積するばかりだろう。


 ペロポネソス戦史

Bloomberg 2017626

Can an Ancient Greek Win America's Wars?

By Tobin Harshaw

トランプのインナー・サークルでツキディデスの『ペロポネソス戦史』が読まれている。2人の専門家Frederick W. and Kimberly Kaganに語ってもらう。

・・・「ツキディデスの罠」は存在しない。戦争は不可避ではない。諸国家の指導者たちが、市民たちの影響を受けながら、戦争に向かうか、回避するか、具体的な政策を決定する。ツキディデスがアテネとスパルタの戦争を不可避であるように書いたのは、彼が尊敬する、アテネの政治家ペリクレスの責任を免除するためだった。

FT June 27, 2017

For the love of Zeus, stop misusing Thucydides

Matthew C Klein

アメリカの政治家たちが一斉にツキディデスを語っている。Defence Secretary James Mattis, National Security Advisor HR McMaster, chief dweeb Michael Anton*, and strategist Steve Bannon である。ハーヴァード大学教授Graham Allisonは米中衝突の危険を予測する “Thucydides’s Trap” についての新しい本を出した。

しかし、ツキディデスの解釈は、ときに間違っているし、偏っている。彼は、アテネの敗北後に、その一般の解釈を反駁するために書いているからだ。彼は最初の歴史見直し論者revisionistである。

バノンの解釈には悪意がある。しかし、アリソンのような専門家でも、『戦史』についての表面的な理解しかないことを示している。ツキディデスは、個々の政策決定が国内政治によって決定されることを理解していた。


 インドの税制改革

Bloomberg 2017626

Tax Reform Looks Like an Indian Wedding

By Mihir Sharma

FT June 27, 2017

Narendra Modi embarks on a great tax gamble

Kiran Stacey in New Delhi

モディ政権による新しい税制GST]の導入は、インドに単一市場を創る試みである。もし成功すれば、企業の成長ははるかに容易になり、GDP2%増やすと推定されている。

FT June 29, 2017

Unity at midnight beckons with India’s tax reform

Gurcharan Das

Bloomberg 2017629

Has Modi Struck a New Bromance?

By Mihir Sharma

NYT JUNE 29, 2017

India and the Visible Hand of the Market

By KAUSHIK BASU


 北朝鮮とアメリカ・ファースト

FT June 26, 2017

North Korea and the dangers of America First

Gideon Rachman

韓国の文在寅Moon Jae-in大統領は、人権擁護の弁護士であった。トランプのようなビジネスマンではない。トランプは北朝鮮を孤立させ、空母で威嚇する。しかし、文は対話と協力を呼びかける。

韓国大統領は、トランプが「アメリカ・ファースト」の政策を選択しないように説得する必要がある。すなわち、それはアメリカにとっての安全保障上の脅威となる北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄させるためにトランプが先制攻撃を命じ、韓国は北朝鮮による報復の犠牲になることを意味するからだ。

アメリカ政府に詳しい関係者に意見を聞くと、ワシントンの右派には、軍事攻撃を支持する意見が広がっている、という。彼らは、もしアメリカが攻撃を受けるのであれば、その前に朝鮮半島が戦場となることを支持する。


 日本のマクロ政策

Project Syndicate JUN 26, 2017

Another Lesson from Japan

STEPHEN S. ROACH

アメリカのコア・インフレ率が、上昇するはずだったが、低下した。エネルギと食品を除いた消費者物価は1年前とくらべて1.7%高いだけであるである。アメリカ経済は完全雇用に近いはずだが、2%というインフレ目標に戻ろうとしている連銀にとっては驚きだろう。

世界を半周ほどすると、日本でも同じ話が聞かれる。ただし、デフレに落ち込みがちな日本経済の状態はさらに深刻だ。

かつてない日伝統的な金融緩和政策を採用して、1994年から2013年まで、19年に及ぶデフレを退治するはずだった。インフレ率がほぼゼロであるのは敗北に近い。

この問題は世界的な規模で起きている。イギリスやマレーシアのような例外もあるが、先進経済のインフレは2%に満たないとIMFも予測する。その最初の現象は、ずっと前に日本で始まっていた。資産バブルと過剰なレバレッジから、通貨のひっ迫、生産性の減退へ、今や4半世紀に達する(成長の)失われた時代は、すべての裕福な諸大国に対する黙示録なのである。

何より、日本銀行の一連の政策失敗がそうだ。金融政策を緩和して、ゼロ近辺の金利、さらにはマイナスにもしたし、量的緩和や長期金利へも介入した。しかし、それは不健全な依存状態を創り出して、正常化を難しくしている。

多くの本が書かれ、シンポジウムが開催された。バーナンキ前連銀議長は、日本の失敗を繰り返すことは決してない、と約束した。しかし、他の中央銀行も、特にアメリカ連銀とECBは、同じ悲惨な結果をともなう金融緩和を再現してきた。

2017年のインフレ状況から、3つの重要な理解が得られる。第1に、インフレと経済的ゆるみとの関係、いわゆるフィリップス曲線は破たんした。Richard Baldwinが「グローバリゼーションの第2の「(供給体制の)分解“second unbundling”」と呼んだ変化は、ますます分節化されたグローバル・すプライ・チェーンの過剰供給能力を世界に広めた。アウトソーシングがグローバルな供給曲線の弾力性を劇的に増大し、労働市場や財市場における「ゆるみ」の概念を根本的に変えた。

2に、現在のグローバリゼーションは、本来、非対称的な性格を持つ。日米ではバランス・シート不況からの悪影響が残り、中国では不安から貯蓄が高まり、ヨーロッパでは生産性に制約されて消費が弱い、など、さまざまな理由で、需要側が深く損なわれたままである。供給側の拡大と合わせて、デフレ的な状況が続く。

3に、中央銀行はその目標を達成する能力がない。いわゆる流動性の罠である。1930年代の大不況でケインズが初めて観察したのだが、政策金利はゼロ近辺にまで下落し、慢性的な総需要の不足を刺激できない。

しかし、これは不治の病ではない。ハイパー・グローバリゼーションの世界では、「アメリカ・ファースト」を唱えて保護主義を採用するのではなく、需要側に焦点を絞るべきだ。1930年代とともに、より最近の日本の経験が教えるのは、金融政策ではなく、もっぱら財政当局が問題解決に動くべきだ、という点である。

イエレン議長が金融政策の正常化に向かうのは正しい。期限のない非伝統的な金融拡大は、実体経済を刺激しないまま、アメリカと世界金融市場に過剰な流動性を供給している。それは資産バブルや投機、次の危機を育てるからだ。こうした金融緩和策は、非常時の、一時的なものだった。このままでは次の不況や危機に対応する金融緩和の余地がない。

インフレ目標を達成できないのは当然だ。日本の経験を注意深く学ぶべきだ。

Bloomberg 2017628

Japan Inc. Repeats Its Mistakes

By Michael Schuman


 パレスチナの人権・市民権

Project Syndicate JUN 26, 2017

Reimagining Palestine

MARWAN MUASHER

1967年のアラブ・イスラエル戦争から50年が経つ。紛争を終わらせる「最終的な地位」に関する合意の見通しは、かつてないほど暗い。交渉は何十年間も失敗し、パレスチナ人の地位が認められる期待は大幅に失われ、それとともに、自分たちの指導者や制度に対する信頼も失われている。

イスラエル政府は、現状を変更することに関心がない。入植地の拡大戦略を続けても、外交的にも、経済的にも、また安全保障上も、コストはほとんど生じていない。イスラエルは交渉に真剣に取り組まず、譲歩せず、世界はパレスチナの苦しみに沈黙したままだ。

これまで、紛争を解決する努力はオスロ合意に従って行われた。それによれば、パレスチナの自治が、境界線、入植地、領土、帰還の権利をめぐる両者の合意によって達成される。しかし、この枠組みは狭く、すべての側が消耗しただけで、解決には向かわなかった。

パレスチナ人の権利を中心と前面に据えた、新しいモデルを見出すときだ。パレスチナ社会に変化が起きていることを指導部は認めつつある。若者たち、市民社会グループは、個人の権利が守られることを重視し、市民的自由をパレスチナ国家の結果としてではなく、その始まりと考えている。パレスチナ人の3分の2が、2国家案を実現可能とは考えない。

パレスチナ人の市民権、人権が政治課題の最優先目標に改められるべきだ。そのようなアプローチが、すでに地方の非暴力型抵抗運動から、国際レベルのthe Boycott, Divestment, Sanctions (BDS)にまで、示されている。

パレスチナの国民運動の経緯を示すカーネギー財団の報告書“Revitalizing Palestinian Nationalism: Options Versus Realities”は、58人のパレスチナ人専門家を集めて、運動の再生を論じている。そのためには2つの根本問題に答えねばならない。1.独立国家を得ることから、権利を中心とした運動に転換できるか? 2.パレスチナ国家の原理を、そのような国家に転換できるか?

パレスチナのナショナリズムは滅びない。それはパレスチナ人のアイデンティティの中核をなしている。しかし、パレスチナの国民運動は再定義されるだろう。

FP JUNE 27, 2017

Inside Israel’s Secret Program to Get Rid of African Refugees

BY ANDREW GREEN

FP JUNE 28, 2017

Israeli Minister Plans a Floating Island Off the Coast of Gaza

BY JESSE CHASE-LUBITZ


 社会主義

NYT JUNE 26, 2017

Socialism’s Future May Be Its Past

Bhaskar Sunkara


 ユートピア

NYT JUNE 26, 2017

A Utopia for a Dystopian Age

Espen Hammer

「ユートピア」という言葉は500年前にできた。ギリシャ語の「ない」と「場所」から、人文学者で政治家のトマス・モアが創ったものだ。それはギリシャ語の「幸せの場所」という意味もある。モアは、ヘンリー8世の支配するイギリスに生きた政治家であり、余り多くの批判を意図しなかったようだ。

しかし、その後、ユートピアが進歩的な社会改革を目指す思想を刺激したことは明らかだ。欲望(満足)のユートピア、正義のユートピア、科学技術のユートピア、など、さまざまなユートピアが生まれた。

しかし、現代ではさまざまな物があふれており、フランス革命は暴力と戦争に終わり、20世紀の多くの虐殺や収容所、マルクス主義者の政治体制、文化大革命、チェルノブイリや福島を観た後では、ユートピアに対する批判が強い。最近のリベラリズムは、管理された、漸進的改革を目指す。欧米の右派は、冷笑主義、ユートピアへの冷淡さを共有する。

悲惨な歴史を拒む意味で、ディストピアがある。われわれの時代のユートピアは、基本的に、2つである。エコロジカルな破滅と、熱核戦争だ。

ユートピアは生き残れるか? 近代社会は未来に向けて開かれており、ユートピアの精神を失わない。しかし、モアのような遊び心を持つべきだ。ユートピアが向かうのは、自然、であろう。われわれは地球の自然生態系を破壊することができる。

われわれはどこに向かうのか? どうしたら破滅を避けられるか?


 トランプのシリア介入

FP JUNE 26, 2017

Trump Is Tripping Over Iran and Russia’s Red Lines in Syria

BY JONATHAN SPYER

FP JUNE 29, 2017

Pentagon: Russia Very Much a Threat to the United States

BY RUBY MELLEN


 アフガニスタン和平

FP JUNE 26, 2017

Can There Be Peace With Honor in Afghanistan?

BY LAWRENCE FREEDMAN


 NATOの使命

Bloomberg 2017626

NATO Can Fight Terrorism and Help Refugees

By The Editors


 アフリカの水問題

Project Syndicate JUN 27, 2017

Confronting Africa’s Water Challenge

AKINWUMI ADESINA


 香港返還20周年

Project Syndicate JUN 28, 2017

China’s Hong Kong at 20

CHRIS PATTEN

FT June 29, 2017

China tensions give Hong Kong an identity crisis

Ben Bland

1990年生まれのKelvin Leeは,香港返還後の世代だ.中国名には「希望」がある.返還によって双方の生活がよくなると信じていた.彼は中国史や中国文化を愛し,本土から進出してきた保険会社で働いた.しかし,香港の自治や自由,生活スタイルに北京政府が締め付けを強める中で,政治に関心がなかった保険の労働者は活動家になった.

「私は今も中国の文化を素晴らしいと思う.しかし香港住民は香港に住み,香港の文化を持っている.」 彼は保険会社を辞めて,コミュニティーの活動家になったのだ.

Project Syndicate JUN 29, 2017

One Country, One System

MINXIN PEI

基本法は無視され,香港経済は共産党のクローに資本家によって買い占められてしまった.「12制度」ではなく,最初から「11制度」が目標だった.

Project Syndicate JUN 29, 2017

Hong Kong’s Handover Hangover

SIN-MING SHAW

NYT JUNE 29, 2017

Hong Kong’s Democracy Dreams

By REGINA IP

NYT JUNE 29, 2017

Once a Model City, Hong Kong Is in Trouble

By KEITH BRADSHER


 カナダの移民政策

NYT JUNE 28, 2017

Canada’s Ruthlessly Smart Immigration Policy

By JONATHAN TEPPERMAN


 気候変動

FT June 29, 2017

Better market information can help combat climate change

Mark Carney


 メキシコの犯罪と政治

NYT JUNE 29, 2017

The Atenco Warning

By FRANCISCO GOLDMAN

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The Economist June 17th 2017

Europe’s saviour?

Chinese law: Champions chained

The French election: Les magnifiques

Paris-Berlin relations: The age of Merkron

History: A not-so-golden age

Qatar: With a little help from its friends

The American economy: Finding Phillips

Free exchange: National treasure

(コメント) マクロンの登場が意味するものは何か? フランス政治の再編,独仏関係の強化とユーロ改革.もしフランスの労働市場改革が進み,財政再建が期待できれば,メルケルは最後の政権として動く.安定化,構造改革と投資基金,そして共通の財務省.

フィリップス曲線は消えたのか? 政府による雇用は支持できるか? ともに,マクロ経済政策を根本から見直す作業です.

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IPEの想像力 7/3/2017

TPPから離脱し、EUを軽視し、NAFTAを書き直すことは、トランプ政権の無能さを示し,世界の不信感や軽蔑をトランプに向けて高めることでした。しかし、北朝鮮への軍事攻撃は異なります。誰であれ,アメリカ大統領だけが,その趨勢を決めるでしょう.

ロシア軍が、モスクワの劇場や中央アジアのテロ集団を制圧するとき、市民に多くの犠牲を出したが、その前後に情報を統制し、神経ガスや特殊な制圧手段を使用した、と報道された。トランプも同じような準軍事的制圧行動を試みるのではないか?

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エッジワースについて,ハイルブローナーは書いています.

「この奇妙な男は,経済学が『数量』を扱い,そして数量を扱うものはなんでも『数学』に変換できるがゆえに,経済学に魅せられたのである.」・・・「数理心理学の理論体系は実に整然としており,人を楽しませるものであり,・・・人間の抗争や社会的矛盾の考察によって汚されていない」.

アルフレッド・マーシャルについて,「政治」経済学からのこの奇妙な方向転換,とハイルブローナーは書きます.おそらく,ヴィクトリア時代の好景気が,社会の陰鬱な問題から関心を奪ったのであろう,と.しかし,J.A.ホブソンの『帝国主義論』は,同じ時代を表現した,素晴らしく興味深い研究なのです.

M. WolfFTのコラム(The economic origins of the populist surge)を紹介しました.Brexitやトランプを選択した人々は,都市から離れた,高等教育を受けていない,移民や難民の話に経済的・文化的な脅威を感じる高齢の白人男性労働者たちが多かったとしても,それは,なぜイギリスとアメリカで,なぜ今,ポピュリストたちが政治システムの中枢を乗っ取ることになったか,を説明していません.それは金融危機の影響であった,と.

また私は,非都市部において多くの有権者が間違った選択肢を好んだことの背景には,共和党(2大政党制,国民投票)による選挙=政策選択過程の劣化,憎悪メカニズムがあったと思います.対立候補に関するネガティブ・キャンペーン,宗教や文化,性別,人種,さまざまな偏見を利用する有権者の取り込み,他方で,経済政策に対する正面からの論争を取り上げないことが,選挙で勝つための戦略でした.

もし政策選択としてBrexitが詳しく議論されていたらEU離脱は支持されず,また,アメリカの政治指導者としてだれがふさわしいかを考えていたら,トランプが共和党を乗っ取ることもなかったでしょう.

スタンレー・ホフマンの議論を思い出します.ホフマンは,「いわゆる経済学や物理学などをモデルにして国際関係の科学を発展させたい」という願いを,慎重に留保しています.なぜなら,国際政治学が扱うのは「暴力が飼いならされ,日常的な内戦が存在しない社会」,市民権や福祉システムにより「不正義が極小化されている社会」ではないからです.

豊かな社会から見れば,とても受け入れがたいような貧困,暴力,不正義が,日常的に存在している世界を前にして,「国際システムがもたらす拘束と機会と問題に関するできるだけ現実的な分析が必要だ」と,ホフマンは警告します.

現在も「経済学」は,エッジワースのイメージを継承しています.「快楽の社会的ストックの分け前を競う人間の快楽メカニズムの研究」である経済学は,「完全競争の世界では,それぞれの快楽機械は社会が付与しうる最大量の快楽を得るであろう」.

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静かな日常生活やメディア,テレビの映像から,いつか,にわかに戦争の霧が立ち込めるのでしょう.だれも予想していないとき,しかし,一部の軍事関係者と政治家,外交官だけが機密情報を管理し,激しく交渉の優位を競う中で,偶発的な事件や国内政治の軋轢が,あるいは,落とし穴に落ちたような衝撃が,大規模な策謀への入り口を現実の世界に出現させるのでしょう.

トランプと北朝鮮は,私たちのガラスの世界を打ち壊します.

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