IPEの果樹園2017

今週のReview

6/26-7/1

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富裕層のためのポピュリズム ・・・グレフェル・タワー火災 ・・・ソフトBrexitと国家回復 ・・・マクロン議会 ・・・ITの独占する世界 ・・・カタール断行 ・・・トランプの中東政策 ・・・トランプ政権の政策構想 ・・・ヘルムート・コールとドイツ統一 ・・・中国金融市場改革 ・・・北朝鮮の核危機と市場改革 ・・・世界の農産物供給圏 ・・・中国の見る世界秩序 ・・・地域秩序再編の時代 ・・・サウジアラビアの政変

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


 富裕層のためのポピュリズム

NYT JUNE 17, 2017

Trump Is Offering Populism, Minus the Free Candy

Neil Irwin

トランプをポピュリズムとみなす批判がある。ヨーロッパのナショナリストやラテンアメリカの強権指導者がトランプと比較される。彼らは権力を握ると、たとえ長期的な国家の財政基盤を損なっても、自分の支持者たちに具体的な利益をもたらす。

しかし、トランプ大統領は、選挙中に多くのことを支持者に約束したが、保守派の最高裁判事、移民法に従う執行強化、化石燃料の規制緩和、などを実現した一方で、財政支出に関する約束は実現していない。その政策は、彼の選挙中の約束に反して、財政均衡を重視する議会共和党のものである。

政府は、財政赤字を膨らませて、無料のお菓子を支持者に配るはずだった。そのコストは、後から高金利やインフレとして支払うことになる。しかし、そのような予算案は政府支出に批判的な共和党議員に受け入れられず、何が何でもトランプに反対するリベラル派の抵抗もあって、承認されないだろう。

トランプの主張は、ラテンアメリカの右派ポピュリストに似ている。特に、1940年代半ばから50年代半ば、そして1970年代にも短期間、アルゼンチン大統領であったペロンJuan Perónはもっとも有名である。彼は、その権威主義体制において、国民年金・医療保険を導入し、むやみに公共工事を増やした。

かつてドーンブッシュとエドワードRudiger Dornbusch and Sebastian Edwardsは、“The Macroeconomics of Populism in Latin America” を書いて、ポピュリズムを批判した。「政策担当者たちは、成長を加速し、再分配をするために、拡大的な財政政策、融資、通貨の増価に大きく頼る。」 「それは短期の成長の後、ボトルネックが生じ、持続不可能なマクロ経済的圧力に至る。それは最終的に、実質賃金の急落、国際収支の極度の困難に終わる。こうした実験の結果は、一般に、ギャロッピング・インフレーション、恐慌、経済システムの崩壊である。」

トランプの選択は非常に異なっている。彼は、支持者の多くが苦しむような医療保険の削減を行った。他方、富裕層への減税によって大幅な富を与える。1兆ドルのインフラ投資は提案されていない。減税によって民間投資を促すだけだ。地域振興の財源も削減する。

トランプは、ポピュリスト的な演説を多用する指導者であるが、その国内政策は、緊縮的な議会共和党員に委ねてしまう。彼がこのような政策を採るのだから、支持率が40%を切るのも当然だ。


 グレフェル・タワー火災

FT June 18, 2017

Grenfell Tower: tenants’ concerns can no longer be ignored

Shaun Bailey

FT June 20, 2017

Outrage at Grenfell Tower is a chance to fix housing policy

Diane Coyle

旧いジョークがある。2人の自由市場エコノミストが歩いていた。1人が床に20ポンド札が落ちているのを見つけた。「やった。20ポンド札を拾えるぞ。」 しかし、もう1人が言う。「そんな馬鹿な。もし本当に20ポンド札がそこに落ちているなら、もうだれかが拾ったはずだ。」

このジョークの意味としては、逆のことに注意したい。もし市場が本当に何かを解決するとしたら、それはすでに解決されているはずだ。イギリスの住宅問題についても、それが言える。

長年、需要に見合う十分な住宅の供給がないことは明らかだった。特にロンドンでは、住宅価格も賃貸料も、まるで金融危機などなかったみたいに、高騰し続けている。

若者たちは裕福な両親の支援なしには住宅を買えない。非常に多くの人が基準以下の住宅に住むしかない。以前の保守党政権と連立政権は、住宅購入者への補助金を与えるだけで事態を悪化させた。それは需要を増やすだけで、供給を増やさなかったからだ。

先週の恐ろしいグレフェル・タワー火災も、このような状況で起きた。今や多くの人々の怒りが頂点に達しており、政策転換に向けたイデオロギー的、政治的な障壁が打ち破られるだろう。市場だけでは、この問題を解決できない。

民間の住宅開発業者は、住宅価格を下げるほど住宅の供給を増やすつもりがない。彼らは不動産をキャピタル・ゲインのために売買しているからだ。

ロンドン西部の私の家のそばにも、良い空き地が2年前からある。しかし、開発業者は価格を下げて売ろうとしない。彼らのバランスシートにおいて、資産価格の下落を認めたくないからだ。首都の中心地に、海外投資家が購入した空っぽの住宅が多くある。

経済学が示す答えは単純だ。もっと住宅を建設せよ、である。そして、低所得者用の公共住宅や既存の施設の維持に投資せよ。地方議会は、この低金利を利用して、もっと借り入れるべきだ。

しかし、既存の不動産業者のロビー活動やイデオロギーが邪魔をしている。他の住宅政策、たとえば、キャピタル・ゲイン課税も人々の住宅売買に適用するのが良い。それは住宅所有者・相続人と非所有者との間で不平等が拡大するのを抑制する。

住宅市場の危機を解決するのは、政策転換に向けた幅広い連携が成立するときだ。

NYT JUNE 20, 2017

Would a White British Community Have Burned in Grenfell Tower?

By DAWN FOSTER


 ソフトBrexitと国家回復

The Guardian, Sunday 18 June 2017

Britain is leaving the EU – just as Europe is on the up

Natalie Nougayrède

The Guardian, Monday 19 June 2017

The 10 Brexit compromises Theresa May won't talk about

Charles Grant and John Springford

選挙中、メイもコービンもBrexitの交渉内容について多くを語らなかった。しかし、両党が「よりソフトな」Brexitを考え始めただろう。しかし、どちらもEUの離脱が苦痛の多いトレード・オフであることを認めたがらない。ここに、答える必要のある10の問題を示す。

1.通商助役を交渉する前に、財政負担を求められるだろう。・・・EU離脱後、イギリス国内でのEU市民が享受する権利と、イギリスがEUに支払う財政負担とを合意する必要がある。EUはそれを経済規模に応じた予算として、550-750億ユーロと考えている。

2.移行期に関する合意を受け入れる。・・・イギリスが新しい関税や移民に関するインフラを整備するために数年を要する。もしその間、イギリスが単一市場や関税同盟にとどまるなら、人の移動、財政負担、欧州法廷を認めねばならない。

5.シティの利益を守る。・・・シティは、単一市場の利益を失うとしても、イギリスとEUの法律や規制を相互に等しく扱うように求めている。EUはそのような寛大な扱いを考えていない。

10.もし交渉が決裂したら、合意されないまま、何か準備するのか? 不況が起きることに財政刺激策で対処する。ヨーロッパ外の諸国と通商条約を結ぶ。一層の産業政策に踏み込むのか?

FT June 19, 2017

A post-Brexit Europe is starting to take shape

Carl Bildt

Brexitが始まれば、ヨーロッパのパワー・シフトはどのように起きるだろうか?

重要な、避けられない事実は、イギリスが議論から外れることだ。不確実さが増す中で、さまざまな問題のEUサミットが開かれる。金融危機、ロシア、中東、全く予想外の事件。

もしソフトBrexitが進めば、英米の関係より、さらに緊密な「特別なパートナーシップ」のメカニズムを制度化することができる。

イギリス内部のダイナミズムがEUを形成する重要な要因であった。単一市場、自由貿易、競争力、EU拡大をめぐる議論がそうだった。共通のEU外交を推進したのもイギリスだ。より閉鎖的なアプローチをとる国に対するカウンターとしてイギリスは重要だった。

今後は、ますます多くのことがパリ・ベルリン関係の強化に依存する。しかし、パリがブリュッセルで改革を唱えると、ベルリンはパリの改革を強く求める。ベルリンが当面の影響力を拡大するが、歴史的理由で、その過大な影響をドイツの政治家たちは懸念するだろう。

オランド前大統領は、その任期終盤に、一連の「EU南部」サミットを開催した。それはフランスを南部地域の指導国とみなし、マドリードやローマを重視する試みだ。マクロンもこれを引き継ぐだろう。経済改革が進む中で、マドリードはその意志を強めるはずだ。

他方、「コア・ヨーロッパ」を重視するパリは中欧の問題諸国を排除しようとするが、ドイツは近隣諸国を無視できない。ボンはフランスとの国境に近いが、ベルリンはポーランドとの国境にもっと近い。

北欧諸国との協力関係は重要だろう。EU防衛協力の問題では、フィンランドが目立って先に進んでおり、スウェーデンは躊躇し、デンマークとバルチック諸国はNATOを重視している。この面での改善が求められる。

Brexit後、EUは変貌していく。イギリスが議論に参加できることを願う。

FT June 19, 2017

Hammond’s narrow path through Brexit and austerity

Gavyn Davies' blog

Project Syndicate JUN 19, 2017

Britain’s Deepening Confusion

ROBERT SKIDELSKY

ロンドン・ブリッジのテロ事件の後、メイ首相は“Enough is enough”と語った。しかし、総選挙で示されたのは、メイにももう十分だ、という拒否だった。保守党は絶対多数を失った。

選挙はイギリスを分裂状態のまま残した。昨年のBrexit国民投票が、離脱派と残留派に分断し、今年の総選挙は、より伝統的な左派と右派の分断が争われた。労働党は、保守党の緊縮予算に対する不満を吸収して議席を増やした。

イギリス政治は2つの軸と4象限に分けて考えることができる。EU離脱と残留の軸、予算削減と経済拡大の軸。4つの方向性はまとまった過半数を形成せず、有権者が何を求めて投票したのかわからない。

しかし、有権者が拒否したものは明確だ。第1に、緊縮策だ。保守党政権の予算削減は、間違った理論と間違った実践であった。ジョージ・オズボーンは2010-2016年の蔵相であったが、その予算目標を達成できなかった。赤字は2015年、2017年、2020-2021年に解消するとしていた。現政権では目標年を示していない。

目標年は、「信頼できる」赤字削減計画がビジネスの自信を回復し、削減の効果を打ち消すほど民間投資の増加をもたらす、という間違った考えに依拠していた。真実はそうではない。経済成長なしには赤字は減少しないのだ。予算の削減は成長を妨げる。

2に拒否されたのは、EUからの無制約な移民流入だ。離脱派は、東欧からの無制限な経済移民を拒否した。EUが西欧に限定されていたころ、ヨーロッパ内部の移民は少なかった。脱共産体制の低賃金労働者が加わったとき、これが変化したのだ。

移民は、イギリスやドイツの労働力不足を解消し、移民労働者の所得も増えた。しかし、制限のない移民流入には、そのような利益を期待できない。George J. Borjasによれば、キューバからの大規模な移民流入は、1980年、マイアミの競合する国内労働者の賃金を下げた。こうした不安から、主権国家は移民規制の権利を主張する。

正統な政治権力とは、近代的な国家と国民市場の登場で変化した。財、資本、労働力が、複数の主権国家内で、制限なしに移動するためには、2つの条件が必要だ。国民のアイデンティティと社会・安全保障が強化されることだ。

EUはどちらの条件もみたさなかった。市民たちはそれぞれの国民国家の市民であると考えている。市民と国家の関係で。ヨーロッパ規模の国家は存在しないからだ。EU市民であるという条件で異動の自由を主張することは間違いだった。それはBrexitに限らず、全EU加盟国で制限すべきだ。

選挙結果を受けて、イギリス政府はどうなるか? メイ首相は短命で終わるだろう。その結果、保守党と労働党の大連立が求められる。たとえば、Boris Johnson首相とJeremy Corbyn副首相だ。ソフトBrexitを実現し、住宅、インフラ、グリーン・エネルギーに大規模な公共投資を行う。景気が回復すれば移民への反発は弱まり、EUとの交渉で正しい移民規制を要求できる。

しかし、選挙が示すこうした連立政権の政治的可能性は全くない。

Project Syndicate JUN 19, 2017

Brexit In Reverse?

GEORGE SOROS

FT June 20, 2017

The Brexit atmospherics favour Remainers

Janan Ganesh

FT June 20, 2017

Britain on its own will count for little on the world stage

John Sawers

FT June 20, 2017

The significance of the Brexit sequencing U-turn

David Allen Green's blog

交渉の初日,イギリスは重要な後退を受け入れた.交渉の「順序」問題で,EUは最初に離脱の条件を合意し,次に離脱後の条件(主に貿易)を交渉する,と求めていた.イギリスは,後者の取引材料がないことを知っているので,2つの問題を結び付けて,同時に交渉しようとした.

順序問題に関して,EUが勝ったのだ.

The Guardian, Wednesday 21 June 2017

These are the negotiating skills David Davis will need to get a good Brexit deal

Patrick Forsyth

The Guardian, Thursday 22 June 2017

A year after voting for Brexit, Britain’s divided, and in uncharted waters

Timothy Garton Ash

スイスの新聞the Neue Zürcher Zeitungは書いた.「イギリス人は何をしたいのかわかっていないのだ.」 全くその通り.

イギリス人は,何を求めているのか,合意できず,どうやってそれを得るのか,知らないのだ.国民投票から1年経って,イギリスがこれほど破滅的な混乱状態にあるのを見るのは悲しいことだ.

対照的に,EUは団結している.マクロンは仏独関係によるEU統合の推進に自信を深めており,ユーロ圏経済もイギリスより成長している.Brexitとトランプを受けて,メルケルはヨーロッパの自立を求めた.彼らから見れば,Brexitは不快な余興である.マクロンとメルケルの最初の会談で,イギリスについて話し合ったのは約60秒だけだった,という.

EUの交渉姿勢は明白だ.「ケーキを持ったままで,ケーキを食べたい,というのは許されない.」

イギリス総選挙の結果は,ソフトBrexitを求めるものだった.残留を支持した保守党員が気勢を上げ,経済と雇用を重視するソフトBrexitを優先するだろう.その1人であったPhilip Hammond蔵相は,解任されるどころか,選挙後も留任し,経済問題の重視を唱えた.

しかし,この姿勢は奇妙である.もし経済問題を重視するなら,その明白な選択肢はEUにとどまることだ.David Cameronは国民投票で残留を訴えた.誇張されたとはいえ,Brexitが経済的にマイナスであることは明らかであった.

しかしキャメロンは敗北し,国民は離脱を選んだ.移民を規制し,国民の主権を回復する,“take back control”を,経済問題よりも優先したからだ.国民は間違った論争によって投票を決めたのだ.保守党も,労働党も,議員たちは私的な会話でそれを認めている.しかし,自分の党が分裂するのを恐れて沈黙している.

欧米の政治が昨年教えたことは,選挙では何が起きるかわからない,ということだ.イギリスは移行期を経て,ノルウェー型のEEAを新しく合意するだろう.EUやトルコを含む関税同盟.ユニオンジャックに飾られた,共同市場における二流の参加国.EU財政に分担金を支払い,移民はほとんど減らず,重要な領域でEU法廷に縛られる.イギリス議会は,得意のマドリング・スルーを経て,そのすべてを承認する.これがBrexitに関してコンセンサスを示せないイギリスの,離脱と残留の中間点なのだ.

スイス人の学生と話した.スイスが大幅にEUに依存していると知ったが,それでもEUには加盟したくない,という.なぜなら,「自分たちを統治するという感覚」を持ちたいから.イギリス人の願いもそうだろう.たとえ合理的に考えて,形式的な主権と実質的な権力とは違うものだ,と知っても.

議会には離脱交渉の結果が示される.そのとき,イギリスのヨーロッパ人である私たちは力いっぱい叫ぶだろう.「これは2つの世界の最悪のものだ.われわれはケーキを持たず,食べることもない.」

FP JUNE 22, 2017

Two Japanese Banks Bail on London Ahead of Brexit

BY DAVID FRANCIS

FT June 23, 2017

One year on, how do we bridge the Brexit divide

Peter Mandelson


 マクロン議会

The Guardian, Sunday 18 June 2017

Macron has led a brilliant coup – could the British now do the same?

Will Hutton

マクロンEmmanuel Macronは、新しい政党を立ち上げ、大統領に選出されるという、驚異的な成果を上げた。フランスが革命の歴史を持っている。フランスが機能するには、疲弊し、腐敗した、保守党と社会党の政治家たちから成る旧体制を廃するまで、右でも左でもない、知的、思想的な運動に向かう揺籃期が1世代を費やした。

デジタル化、AI、ナノ、など、技術革新の波が経済変化を加速し、新企業の勃興、旧企業の没落、流動的「フリーランス」経済を生んだ。新生資本主義は、右派の思想によれば、多数者のために富を生む道徳的規範を支持し、さまざまな機会を資本化する。他方、変化のスピードが顕著な格差をもたらし、新しい不確実性や環境悪化の圧力を生じている。この面では、左派の思想を借りて、知的な介入、道義に基づく是正策が必要だ。

グローバルな相互依存が増す中で、EUのような多角的な機関が効果的に機能しなければならない。この点で、アメリカがパリ協定を去ったことで、マクロンにとってEU支持こそ、「我らの地球社会を再び偉大にする」というアピールなのだ。39歳の新大統領は、こうした左右の錬金術を唱えて、新しい政治を指導してきた。

それを信じない者も多い。先週の投票率は大統領選より低かった。失策もあるだろう。特に、労働市場改革はむつかしい。解雇、労働評議会、賃金交渉に関して、マクロンの希望は、大規模なストライキに遭うかもしれない。そしてル・ペンが復活する。

しかし、En Marche!の教訓は政治の刷新を意味している。フランスに広まる現状維持に対する不満を誰も軽視できない。マクロンは、その声を聴いて、ビジネス界を抑え、必要なら、労働界も抑える勇気を持つだろう。

その目標は、北欧型の社会・経済モデルをフランスに実現することだ。スウェーデン、フィンランド、デンマークは、経済のダイナミズムを維持し、しかも、GDPの半分を公共部門に向けている。マクロンは労働規制の改革と開放型の貿易システムを採用する北欧モデルに従い、最も必要な分野には社会投資を集中することを目指す。

フランスの革命はドーバー海峡を超えるだろうか? フランスは労働規制の緩和を、イギリスは逆に再強化を目指している。しかし、北欧モデルから学ぶ点は、同じ力が作用している両国にあるだろう。

NYT JUNE 18, 2017

America in Retreat, Europe en Marche

Sylvie Kauffmann

YaleGlobal, Tuesday, June 20, 2017

Understanding the Macron Phenomenon

Jolyon Howorth

NYT JUNE 21, 2017

Emmanuel Macron’s Next Gamble

By MICHEL WIEVIORKA

FT June 22, 2017

Emmanuel Macron and Theresa May tell the tale of two nations

Philip Stephens

NYT JUNE 22, 2017

Central Europe’s Tough Choice: Macron or Orban?

Ivan Krastev


 ITの独占する世界

FT June 18, 2017

Four ways Google will help to tackle extremism

Kent Walker

テロリストのインターネット利用を阻止する方法が模索されている。

FT June 19, 2017

Release Big Tech’s grip on power

Rana Foroohar

政策の急激な変化による影響を恐れて、シリコン・バレーの大企業はますます政治献金で重要な役割を果たすようになった。特に、独占をめぐる規制の議論に神経を使っている。

Bloomberg 2017619

Alibaba in America? Don't Bet on It.

By Christopher Balding

NYT JUNE 20, 2017

Can Amazon Be the Next Apple?

By MARC LEVINSON

Appleの利益率は非常に低い.むしろAppleのように,食料品でも,高い費用の掛かる店舗を持たない,魅力的な新商品を消費者に示すことで,利益率を高めるつもりではないか?

FT June 21, 2017

Amazon goes back to the future of groceries

John Gapper

NYT JUNE 21, 2017

Amazon Bites Off Even More Monopoly Power

By LINA M. KHAN

アマゾンの資本額は大きすぎる.アマゾンが市場独占を広げて行くのは,資本市場の利益にもならない.


 カタール断行

NYT JUNE 18, 2017

Qatar Punched Above Its Weight. Now It’s Paying the Price.

By JOOST HILTERMANN

懲罰的な禁輸措置にもかかわらず、湾岸諸国間で起きた対立が、中東に増大する紛争の中に、新しい戦争を追加することはないだろう。サウジアラビアとアラブ首長国連邦が一方に、カタールが他方に、対立する構図は以前から長く存在した。今回の措置は、サウジ側が友好的なトランプ大統領の登場を利用して、敵対するカタールの姿勢を懲罰しようとしたものだ。

そもそもカタールは莫大な天然ガスの埋蔵量から金融的パワーを保持していたが、それを非常に攻撃的な外交戦略に利用してきた。カタールには小規模な外務省しかない。その戦略がだれにとっても脅威でないなら、サウジアラビアはそれを放置していた。

しかし、「アラブの春」ですべてが変わった。専制支配体制がドミノのように打倒され、サウジ王家や旧王朝にも広がる恐れがあった。リヤドでは反革命が模索された。最初の主要な標的は、選挙で政権を得た、エジプトのムスリム同胞団であった。しかしカタールは、2011年以前の中立的な姿勢を変えて、ムスリム同胞団に強い支援を与えていた。

サウジとカタール、双方の対立は、カタールと巨大な埋蔵資源を共有するイランの関与があり、サウジ側の諸国の姿勢の違いもあるため、これ以上は悪化しないだろう。クウェートやオマーンのような小国が、双方の名目を立てる仲介の役割を担う。地域の誰にとっても、カップの中の嵐に終わらせるのが望ましい。

FT June 19, 2017

The Qatar crisis has global implications

Gideon Rachman

過去6年間、2つのアラブ世界があった。一方は、暴力と悲劇の世界。他方は、輝くグローバリゼーションの世界。前者は、シリア、イラク、リビア、そして、いくらかましなエジプトだ。後者は、カタール、アブダビ、ドバイの、旅行、ビジネス、金融のグローバル・ハブがもたらす繁栄に示されていた。湾岸のメトロポイリスは他の中東世界の暴力から切り離されているように見えた。

しかし、この2つの世界を分離する壁が倒れた。サウジアラビア、バーレーン、エジプト、アラブ首長国連邦UAEが、カタールを封鎖したのだ。

シリアやリビアが分裂しても、世界経済に影響を及ぼさなかった。しかし、湾岸諸国は違う。カタールとUAEの人口は、220万、910万人しかいないが、カタールは世界最大規模の天然ガス輸出国である。The Qatar Investment Authorityは西側の主要企業、フォルクスワーゲンやバークレイの大株主である。2022年のワールドカップ開催もカタールで予定されている。

湾岸諸国は、世界経済に大きな影響を及ぼす。ドバイは、ヨーロッパ、南アジア、アフリカ、ロシアに近く、中東の拠点となっている。世界最大の建築物the Burj Khalifaがあり、その政府系投資信託The Abu Dhabi Investment Authority8000億ドルの資産規模を持つ。世界最大の不動産所有者である。

サウジアラビアは、地域で最大かつ最強の国であり、世界最大規模の石油供給者として世界経済に長期にわたって影響力を行使してきた。サウジ王室は、カタールが国際舞台で独自行動を取るのを嫌っていた。それはAl Jazeeraへの出資、ムスリム同胞団の活動拠点となること、また、余りにもイランに接近したことである。

アメリカ外交が正常な時期には、最大の軍事拠点を提供するカタールの安定を守るために、サウジとの紛争を鎮静化するための仲裁を行ったはずだ。しかし、トランプ大統領はサウジアラビアを訪問し、公式にサウジの姿勢を支持した。

カタール危機は、中東地域で紛争が続く中でも湾岸諸国の繁栄は維持できる、という時代が終わったことを示す。


 知識人

FT June 19, 2017

The Ideas Industry by Daniel Drezner — lost intellectual capital

Edward Luce

かつて権力者に真実を告げる勇気を示すことが知識人の証であった。しかし、今では、富・資産家に真実を告げる方が難しい。アイデア産業の実態を暴く本が出た。


 トランプの中東政策

NYT JUNE 19, 2017

Why Is the U.S. Killing So Many Civilians in Syria and Iraq?

By MICAH ZENKO

NYT JUNE 19, 2017

President Trump’s Arab Alliance Is a Mirage

Antony J. Blinken

FP JUNE 21, 2017

This Is How Great-Power Wars Get Started

BY EMILE SIMPSON

2011年にシリア内戦が始まって以来,初めて,アメリカはシリア政府軍を直接に空爆した.しかも4度にわたって.アメリカとロシアは中東において直接に戦争状態に入り,エスカレーションを続けるのか? 5つの戦闘集団・政治同盟が混在し,3つのストーリーがあった.エスカレーションを避けるには,中東に関する明確な政治構想を,トランプ政権が持たねばならない.


 リビア

NYT JUNE 19, 2017

How to Save Libya From Itself? Protect Its Oil From Its Politics

By MUSTAFA SANALLA


 トランプ政権の政策構想

FP JUNE 19, 2017

It’s OK That Trump Doesn’t Care About Human Rights

BY SUZANNE NOSSEL

FP JUNE 20, 2017

Why Trump’s Foreign Policy Can’t Be Stopped

BY AARON DAVID MILLER, RICHARD SOKOLSKY

FP JUNE 21, 2017

Not Dazed, but Definitely Confused: Allies Struggle to Divine U.S. Policy

BY EMILY TAMKIN

Project Syndicate JUN 22, 2017

Trump’s Sugar Swamp

JEFFREY FRANKEL

メキシコ,カナダとの,NAFTA再交渉がトランプ政権の強い要求であった.そこで注目されるのは1つの品目だ.砂糖である.再交渉は,おそらく,アメリカの砂糖産業に甘い(利益を大きく増やす)取引をもたらすだろう.それはトランプの約束,「沼を干上がらせる」(ワシントン政治の既得権による支配を破壊する)という言葉がどれほど無意味であるか,示すだろう.

Project Syndicate JUN 22, 2017

Donald Trump’s Trade-Knowledge Deficit

PASCAL SALIN

Project Syndicate JUN 22, 2017

Trump’s Trade Illogic

CHRISTOPHER SMART

トランプ政権のNAFTA再交渉は,間違った3つの貿易理解によって失敗するだろう.第1に,TPPのように,通商協定はアメリカ労働者の雇用と権利を守る.雇用を失ったのは機械化やロボットのせいであり,グローバリゼーションはそれを抑える効果がある.第2に,通商協定は,トランプが思うような1度きりの「取引」ではない.超党派による交渉団が,長い年月をかけて達成するものだ.第3に,2国間交渉が有利である,と誤解している.通商協定は,貿易の基準を定めることで市場アクセスを保証する.多くの国が参加するほうが,バンドワゴン効果が作用する.

NYT JUNE 22, 2017

Congress Steps Up on Foreign Policy

By THE EDITORIAL BOARD

FP JUNE 22, 2017

The Trump Tower Peace Theory

BY PHILLIP Y. LIPSCY

推定35億ドルの個人資産を持つ不動産業者,ドナルド・トランプが大統領になったことで,アメリカ外交は影響を受けるだろう.彼は世界規模の不動産帝国を管理している.

民主主義的平和論the democratic peace theoryをまねて,1999年,ジャーナリストのThomas Friedmanは,平和のマクドナルド理論,を提唱した.マクドナルドが店舗を拓いた国同士は,戦争の起きる可能性が低くなる,というものだ.同じことを,トランプが不動産を所有する国同士で言えるかもしれない.

FP JUNE 22, 2017

Trump’s Five Mistaken Reasons for Withdrawing from the Trans-Pacific Partnership

BY ROBERT D. BLACKWILL, THEODORE RAPPLEYE

FT June 23, 2017

A Trumpcare debacle is at risk of becoming real


(後半へ続く)