(前半から続く)
● 中国の大戦略
Project Syndicate JUN 12, 2017
Xi Jinping’s Marco Polo Strategy
JOSEPH
S. NYE
先月、中国の習近平主席は、北京で「一帯一路」フォーラムを開催した。2日間の会議に、29人の国家元首と、100か国以上から、1200人の代表が集まった。習は中国の一帯一路イニシアチブ(BRI)を「世紀のプロジェクト」と呼ぶ。
この野心的な計画は、貧しい諸国に、切望されている高速道路、鉄道、パイプライン、港湾、発電所を建設する。また、中国企業は、ヨーロッパの港や鉄道に投資することを奨励される。ベルトは、中央アジアを通る高速道路と鉄道のネットワークであり、ロードは、アジアとヨーロッパを結ぶ一連の海洋航路や港湾を含む。
マルコ・ポーロなら誇りに思うだろう。もし中国が、その余剰の金融準備を貧困国の救済と国際貿易の拡大のためにインフラ建設で使うつもりなら、それはグローバルな公共財の供給とみなせる。
もちろん、中国の動機は純粋に他人を幸せにしたいというものではない。中国の巨額の外故高為替資産は、利回りの低いアメリカ財務省証券から、高利回りのインフラ投資に向けられる。それは中国製品にとっての市場を提供する。過剰生産力に苦しむセメントや鉄鋼の中国企業は、新投資から利益を得る。中国の製造業はますますアクセスに困難な地域に移動しており、国際市場とのインフラによる統合は中国の開発にとっても望ましい。
しかし、そこには問題がある。FTによれば、ドイツに向かう列車は毎週5便が貨車を満載しているが、帰りの便は1便しかすべて埋まっていない。中国とヨーロッパの輸送費用は、陸路の方が海路よりも、なお2倍も高価である。BRIは、現実的な投資計画というより、政治的な方針なのだ。そこにはさらに、債務の危険、記念碑的な建造物の不良債権化、多くの国境を超えるプロジェクトを破滅させる安全保障の問題がある。インドは、中国がインド洋に進出するのを好まないし、ロシア、トルコ、イランは、独自に中央アジアにおける計画を持っている。
習の考えは印象的であるが、それは大戦略として成功するだろうか? 中国は旧式の地政学に頼っている。100年前、イギリスの地政学者Halford Mackinderは、世界島であるユーラシアを支配する者が世界を支配する、と唱えた。対照的に、アメリカの戦略は、長く、19世紀のAlfred
Mahan提督が示した地政学的洞察に依拠してきた。彼は、シー・パワーとリムランドとを強調したのだ。
第2次世界大戦の終わりに、ケナンGeorge F. Kennanはマハンのアプローチを発展させ、ソ連封じ込めの冷戦戦略を主張した。アメリカが、ユーラシアの両端で、イギリスと日本の島々、そして西ヨーロッパ半島と同盟すれば、アメリカの利害に好ましいグローバルな勢力均衡を創り出せる、と。ペンタゴンと国務省は、今もこの考え方を継承しており、中央アジアを重視しない。
インターネットの時代でも、地理は重要だ。19世紀には、オスマン帝国が衰退するとき、その地域をだれが支配するか、という「東方問題」をめぐって地政学的対立が生じた。ベルリンからバクダッドへの鉄道計画は、大国間の緊張を高めたのだ。「ユーラシア問題」が、それに代わって地政学的対立の焦点になるのか?
中国のBRI(一帯一路)はマッキンダーとパルコ・ポーロの発想である。アメリカはマハンとケナンをもっと重視する。アジアには独自の勢力均衡が働き、インドも、日本も、ベトナムも、中国の支配を望まない。彼らはアメリカを解決策の一部とみている。アメリカの政策は、中国封じ込め、ではない。両国間で多くの貿易や留学が行われている。しかし、中国がその偉大さや海洋における領土紛争を誇示するほど、彼らはアメリカとの関係を重視するようになる。
中国にとって、真に問題であるのはそのナショナリズムを自己抑制“self-containment”することだ。かつて、アメリカ通商代表や世界銀行総裁であったRobert Zoellickが述べたように、中国の台頭がグローバルな公共財の供給に貢献するなら、アメリカは中国を「責任ある利害関係者」として称賛するだろう。アメリカ企業もBRIから利益を得る機会がある。
米中は、多くの超国家的課題について協力することから利益を得られる。しかし、BRIは中国に利益だけでなくコストももたらす。それが大戦略を変えるような要因にはならないだろう。むしろ、アメリカがその役割を果たせるかどうか、それが本当に難しい問題だ。
YaleGlobal,
Tuesday, June 13, 2017
Reconstruction
of Chinese History for a Peaceful Rise
Suisheng Zhao
FT
June 14, 2017
Chinese
investment in Africa: Beijing’s testing ground
David Pilling
ヨーロッパ人とアメリカ人はアフリカを、不安定性、移民、テロ、もちろん、貴重な支援はあるが、問題の源と見ている。しかし、中国人はアフリカを機会と見ている。石油、銅、コバルト、鉄鉱石がある。中国の製造業や建設業にとっての市場がある。そして、最も理解されていないが、アフリカは中国が地政学的影響を広める手段なのである。
Bloomberg
2017年6月14日
China
Rethinks Its Global Role in the Age of Trump
By David Shambaugh
Project Syndicate JUN 15, 2017
Countering China’s High-Altitude
Land Grab
BRAHMA
CHELLANEY
● アフリカの飢餓
NYT JUNE 12, 2017
A Fierce Famine Stalks Africa
By
NADIFA MOHAMED
● 北朝鮮と暴言
FP JUNE 12, 2017
North Korea Is About to Test a
Missile That Can Reach Trump Tower
BY
JEFFREY LEWIS
「私が5番街の真ん中でだれかを撃っても、私は支持者を失わない」と、トランプが豪語したことは有名だ。しかし、同じことを北朝鮮の長距離ミサイルについて言うのはどうだろうか?
敵対的な姿勢で北朝鮮の核武装を解除することが目標だ、と主張することの限界に達した、とトランプも認めるだろう。すでに北朝鮮は韓国と日本の米軍基地を核攻撃する計画を公言している。北朝鮮のICBMが完成すれば、トランプの暴言はむなしくなる。
● クレムリンの戦争
FP JUNE 12, 2017
The Kremlin’s Newest Hybrid Warfare
Asset: Gangsters
BY
MARK GALEOTTI
● マティスのアジア外交
FP JUNE 12, 2017
Trump’s Asia Policy Is More Confused
Than Ever
BY
COLIN WILLETT
マティス国防長官がアジアのコミュニティに対する防衛を確認したとき、マクマスター大統領補佐官とコーン国家経済会議議長はthe Wall Street Journalに「グローバル・コミュニティ」を否定する論説を発表した。
FP JUNE 12, 2017
The Saudi-Iran War Comes to
Washington
BY
KIM GHATTAS
Project
Syndicate JUN 13, 2017
The
Arab World’s Coming Challenges
TAREK OSMAN
FP JUNE
13, 2017
Why
Trump Should Stand Down in the Gulf Crisis
BY DOV ZAKHEIM
FP JUNE
14, 2017
Trump
Desperately Needs a Goodwill Ambassador
BY STEPHEN M. WALT
トランプ大統領の安全保障と経済の顧問であるMcMaster and Cohnが,国際関係と外交に関するリアリストにとって自明のことを,わざわざ外遊中に表明した.しかし,そのホッブズ的な世界観を超えて,世界の政治情勢には社会的な側面が存在している.それは各国政府が他国との関係を扱う上で,他国の支持や他国民の共感を得るために,重要である.
それは,例えば,イギリス王室,ウィリアムズ王子とケイト・ミドルトンの,幼いジョージを連れたオーストラリア訪問で示された.
FP JUNE
14, 2017
How
Trump’s Black and White World View Met Reality in the Middle East
BY TAMARA COFMAN WITTES, ILAN GOLDENBERG
● 中国の住宅バブル
Bloomberg 2017年6月12日
Chinese Efforts to Stem Housing
Bubble Shows Promise
By
Junheng Li
NYT JUNE 15, 2017
China’s Real Estate Mirage
By
HELEN GAO
1990年代に、中国政府が住宅を民営化し、都市住民の多くに富をもたらしたとき、それは経済改革の注目すべき成果として称賛された。それ以来、住宅産業が膨張して、住宅は神話的な目標となり、中国の家計の富の70%を占めるまでになった。
民間住宅は、住む場所である以上に、この20年間で、都市の中国人が持つ熱望の的になった。住宅所有は、都市における、信頼性の高い投資対象である。その価値は急上昇しており、国家の福祉システムが解体する中で、病気や老後の資金を得る手段であった。不動産がもたらす利益で、子供を留学させることができた。
しかし、住宅価格の高騰は新規購入者にとってますます大きな悩みをもたらす。中位の所得に対する中位の住宅価格の比率は、ほとんどの第1級都市において、ロンドンの比率を超えている。
住宅市場の過熱を抑えるため、地方政府はさまざまな取引規制を行った。しかし、規制が増え、購入できない不動産が増えて、それは経済的希望から挫折のシンボル、現代中国の都市における社会的移動性の低下を示すものになった。
新聞や人々の会話には、住宅購入規制を免れるための偽装離婚、夫婦のアパートをめぐる権利訴訟、手付金の増加に対する不満、があふれている。住宅問題は子供の数にも影響する。息子が将来、結婚する年齢になったとき、嫁を得るには親がその住宅を準備する必要があるからだ。
住宅購入の闘いをめぐる最も関心の高い問題は、「学区内のアパート」である。住宅所有者には公立学校への入学が認められる。そのため大都市の住宅価格が異常に高騰する犯人として、高い評価の学校に近いアパートを得ようとする親たちの競争が長い間指摘されてきた。不動産市場に関する不満は非常に強い。先週、上海ではめったにない抗議デモが中心部で行われた。
さまざまな規制は効果がない。裕福な人々は、アメリカの郊外都市やオーストラリアの高級マンションなど、海外の不動産に関心を向けるようになった。アメリカの不動産購入額で観て、中国は国別の第1位であり、2016年3月までの1年間で273億ドル、以下の4か国を合わせた購入額を超えている。
政府は、もっと長期的、構造的な解決策を必要としている。たとえば、住宅所有と学校などの公共サービスとの関係づけをやめる、市場の不均衡を解消するために住宅建設を補助する。最善の策は住宅への課税であろう。投機的な売買には高いコストがかかるようにする。しかし、この政策は政治や企業の既得権と対立し、また住宅バブルを破裂させる恐れがある。
住宅市場の猛威にさらされる人々は、伝統的な勤労倫理を損なわれるだろう。一生懸命に働いても、子供たちを幸せにしてやれるとは思えない。都市に住む、地方からの出稼ぎ労働者たちは特にそうだ。彼らは北京や上海の人口の3分の1を占めるが、住宅市場から排除されている。それは、国家から人民への富の移転を、彼らが享受できないことを意味する。
Bloomberg 2017年6月15日
Can China Really Rein in Credit?
By
Michael Pettis
● 北朝鮮は歌うか?
NYT JUNE
13, 2017
South
Korea’s Left in Disarray
By SE-WOONG KOO
NYT
JUNE 14, 2017
Solving
the Korea Crisis by Teaching a Horse to Sing
Thomas L. Friedman
私は5月28日にソウルに着いた。翌朝、朝食の席で、私の携帯電話が警報音を発した。北朝鮮が短距離の弾道ミサイルを発射した、というのだ。
私は、ホテルのシェルターに避難するよう命じるサイレンが鳴るのを待った。ハマスのロケット攻撃があったイスラエルで経験したように。しかし、サイレンはならない。何も起きなかった。その雰囲気は、「・・・またミサイル発射実験? 私たちの狂った甥のことは気にしないでほしい。キムチを取ってくれないか? 」
アメリカの戦略爆撃機B-1B
Lancerがグアムの米軍基地から北朝鮮の境界線まで飛来した。しかし、韓国の株価は動揺しなかった。韓国の若者に最も人気の住宅地は、非武装地帯DMZのすぐ南にあるMusanである。そこはソウルに通勤するのに近いし、もし北朝鮮がロケットや迫撃砲でソウルを攻撃するとしたら、境界線に近い方が自分たちの上を砲弾が飛び越える、というわけだ。
何と素晴らしい、人間は神様の傑作だ。
韓国の学生たちに話を聞いた。「私たちは北朝鮮が私たちを害し、あるいは、戦争を始めるとは思わない。私たちの方が経済的にも軍事的にも強いからだ。」「GDPの差は、北朝鮮の20倍もある。私たちは彼らの経済を再建するために増税されるのを望まない。」 そして、私はアメリカがこのドラマで奇妙な人物になっていることを理解した。
中国と韓国には1つの共通点がある。彼らが最も恐れるのは、北朝鮮の核ミサイルで自分たちが破滅することではない。経済制裁の圧力で自ら崩壊するか、アメリカの爆撃で破壊されるか、いずれであれ、北朝鮮が破滅することを恐れている。それは核汚染物質や難民の大規模な流入、その莫大な処理費用だけでなく、中国にとって、核武装した統一朝鮮が隣に出現するかもしれないのだ。
アメリカは、逆に、今や、北朝鮮がアメリカ本土、少なくともロサンゼルスを攻撃することを恐れている。アメリカは北朝鮮の攻撃を恐れ、中国と韓国はアメリカが一方的に北朝鮮を攻撃するのを恐れている。ソウルの不安とは、トランプが否応なく韓国を朝鮮戦争に巻き込むことだ。それは、かつて、ド・ゴールがキューバミサイル危機で示した警告と同じである。THAAD配備に関して、アメリカと韓国の異なる姿勢がそれを示す。
北朝鮮が大量破壊兵器の開発を始めたころ、アメリカは韓国や日本に、われわれが守ってやる、と約束した。アメリカの抑止力とその意志が問題であった。しかし、北朝鮮は長距離核ミサイルでアメリカを攻撃できるようになった。アメリカは何よりも、自国民を守らねばならない。韓国や日本に相談することなく、必要なことはすべてするだろう。韓国から見て、金正恩より、理解できないトランプを恐れる声が出てくる。
中国は北朝鮮の石油輸入の95%を支配する。北京は一晩で北朝鮮経済を打倒できる。しかし、それはしなかった。北朝鮮からの石炭購入を止めたが、ミサイルの発射実験を止めるほど厳しい制裁ではなかった。今や、中国はトランプを窮地に追いやったように見える。北朝鮮はアメリカに届く長距離核ミサイルを完成する寸前まで到達し、その体制の崩壊も、核開発の停止も実現していない。
外交はどうなっているのか? 北朝鮮は、核開発とアメリカによる体制転換の放棄とを取引するつもりはない。トランプ政権は、完全な非核化なしに、そのような保障は与えない。
要するに、中国も韓国も北朝鮮の崩壊を望まず、その反撃を恐れて攻撃しない。アメリカも含めて、彼らは北朝鮮の核保有を認めたくないから交渉せず、そもそも金正恩が約束を守るとは思わない。しかし、金正恩を無視することはできない。核とミサイルの能力は高まり続けている。
この状況は、中世の寓話を思い出させる。ある犯罪者が、王様に命乞いをして、1年間を与えてくれたら、あなたの愛馬が歌を歌えるように調教できる、と約束した。囚人仲間は彼をバカにした。馬が歌えるわけない、と。しかし、彼は言った。「何であれ、私は以前持たなかった1年を得たのだ。1年あれば多くのことが起きる。王様が死ぬかもしれない。馬も死ぬかもしれない。私もだ。だれにもわからない。もしかすると、馬が歌うことだってあるだろう。」
これがわれわれの北朝鮮政策だ。
● アメリカ抜きの西側同盟
FP JUNE
13, 2017
The
West Will Have to Go It Alone, Without the United States
BY CHARLES KUPCHAN
トランプが同盟諸国に示した態度は、単に過渡的なものではなく、アメリカが第2次世界大戦後に築いた西側民主主義の同盟を完全に離脱するものだ。しかし、それは西側のない世界を意味するのではなく、アメリカを欠いた西側を意味する。
トランプは西側同盟に敵対することはないが、それを経済取引と考えるビジネスマンだ。防衛費の支出や貿易収支が、短期的に、アメリカにとって有利であることを求める。しかし、西側世界は、そのようなゼロサム的、自国だけのための世界を、離脱したことで成功したのだ。
多くの戦争を経て、大西洋民主諸国が理解したことは、流血を抜け出すには国際コミュニティを築く必要があり、それは信頼、合意によるルール、超国家機関、開放的な貿易体制に依拠しなければならない、ということだ。その中では、コミュニティのメンバーが長期的連帯のために、短期的な利益を犠牲にした。その結果、かつてない平和と繁栄の時代を得たのだ。
西側の価値と制度を守るのは、EUにかかっている。ドイツも、EU全体でも、その役割を果たす準備はない。しかし、トランプの衝撃が、ヨーロッパに立ち上がる意志を与えるかもしれない。
第1に、EUの意思決定メカニズムに均衡を回復する。ドイツの発言力が大きすぎる。それは他の加盟諸国の不満を強める。フランスのマクロンが政治力を回復し、さらに、Brexitによって、ドイツがもっとイタリアやスペイン、他の小国とも合意を形成する必要を迫られる。
第2に、左右のポピュリストたちからの反EU感情にもかかわらず、EUは深化する必要がある。経済問題、外交・防衛問題で、集団的なガバナンスを強化するべきだ。そのための中央集権化で、主権を失うことを、アメリカとの紛争が繰り返される中で、人々も理解するだろう。
第3に、多角的な国際主義からアメリカが離脱する中で、EUは他の諸国と効果的な関係を築くべきだ。特に中国とは、環境問題や貿易自由化で、互いに優れたパートナーになれる。
最後に、トランプの任期は限られている。EUは大西洋同盟を支持する姿勢を堅持し、アメリカの再参加を歓迎するだろう。また、たとえトランプでも、短期的なコスト・ベネフィットの計算で、ヨーロッパと協力することに利益を見出すことも多いはずだ。その点で、メルケルは、ドイツの防衛費を増やし、国内需要を刺激して、ヨーロッパの雇用を増やすべきだ。
The
Guardian, Wednesday 14 June 2017
Britain
and the US once ran the world. Now they’re all at sea
Linda Colley
FT
June 14, 2017
The
Anglo-American democracy problem
Edward Luce
● ウーバー
NYT
JUNE 13, 2017
Why
Companies Like Uber Get Away With Bad Behavior
By RANDALL STROSS
FT
June 15, 2017
At
Uber, counting the costs of winner take all
FT June 16, 2017
On the rise of unproductive
entrepreneurs like Travis Kalanick
Izabella
Kaminska
● 労働市場
FT
June 14, 2017
New
angles catch the light on the state of global labour markets
Sarah O'Connor
労働市場は機能しているのか? 失業者が少ないほど良い、というのは正しい。しかし、高い雇用は健全な職場を意味するのか? OECDの調査は9つの指標を示している。3つは職場の量、3つは職場の質、3つは包括性だ。
日本の労働者たちはイギリスに比べて、失業しても所得の減少な小さく、安定している。しかし、職場においても強いストレスを感じている。
● ロンドンのタワー火災
NYT JUNE 14, 2017
London Fire Shows Why Britons Don’t
Trust the System
By
HEATHER BROOKE
The Guardian, Thursday 15 June 2017
The Guardian view on Grenfell Tower:
Theresa May’s Hurricane Katrina
Editorial
指導者には、勇気と、想像力と、感情移入の能力が求められる。
ロンドン西部のGrenfell
Towerが炎上してから2日間で、メイ首相はこれらの資質を示さなかった。第1日目の水曜日、メイは午後6時30分まで何も言わなかった。木曜日の朝、彼女は火災現場に行った。そこで彼女は救助隊員たちの不屈の努力を称えた。しかし、打ちのめされた被災者には会わなかったし、地域の苦しみに優れた同情を示して働く教会関係者やボランティアの人々にも会わなかった。1時間足らず遅れて、ジェレミー・コービンが到着した。彼は人々の声を聴き、彼らを抱きしめ、真相の究明と、彼らの声を代表することを約束した。それらはすべてメイが言うこと、すべきことであったが、彼女はしなかった。
Grenfell Towerは、メイにとってのHurricane
Katrinaになるだろう。
● 南スーダン
FT
June 14, 2017
South
Sudan is the African exception, not the rule
David Pilling
NYT
JUNE 14, 2017
The
U.N.’s Tragic Inaction on Congo
By IDA SAWYER and JASON STEARNS
● ラッカ陥落とクルド
SPIEGEL
ONLINE 06/14/2017
Taking
Back Raqqa
Kurds
Seek to Expand Reach in Northern Syria
By Christoph Reuter
FP JUNE 15, 2017
‘I Want to Die in the
Shadow of the Flag of an Independent Kurdistan’
BY
CAMPBELL MACDIARMID
FP JUNE 15, 2017
Masoud Barzani: Why It’s Time for
Kurdish Independence
BY
CAMPBELL MACDIARMID
● ユーロ圏は持続不可能だ
Project
Syndicate JUN 14, 2017
The
Eurozone Must Reform or Die
KENNETH ROGOFF
マクロンが当選し、メルケルも再選されるだろう。ユーロ圏は改革できるのか? むしろ、低成長と債務危機が再燃する方が起こりそうだ。安定性と持続可能性を強化する政策がとれないなら、ユーロ圏は最終的に崩壊すると言えるだろう。
南欧諸国にとって、ユーロ圏は金の檻になっている。財政政策と金融政策の基準を強いておきながら、為替レートの変動によるショックの緩和もできない。
今や、ユーロはEU統合の必要な条件ではなく、その深刻な障害となった。それは大西洋のアメリカ側で多くのエコノミストが主張していたことだ。EU官僚たちは、統合を自転車の運転にたとえた。倒れないためには、前進しなければならない。もしそうなら、たとえ生乾きのセメントでも、条件を満たさない単一通貨の採用が必要だった、と。
南欧諸国でユーロが強く支持されたのは、ドイツのように安定した物価、信頼できる金融政策を求めたからだ。しかし、それには中央銀行の独立性の方が重要である。イタリアやスペインは、ユーロに参加せず、中央銀行に独立性を与えていたら、インフレ率は今のように低下しただろう。ギリシャでさえ、アフリカ諸国が成功したように、インフレ抑制に成功したかもしれない。そして、もし南欧諸国が自国の通貨を持っていたら、為替レートの変化がショックを緩和し、債務の罠に落ち込むより、インフレによって債務の一部をデフォルトできたはずだ。
すでに、ECBは周辺諸国の政府債券を購入し、暗黙の補助金を与えている。ユーロ債の発行もマクロンが強く主張するだろう。ユーロ圏の回復は続かない。マクロンとメルケルが決めるのは、楽観論の終わる時期だ。
● 都市化
Project
Syndicate JUN 14, 2017
Urbanization
2.0
CARL BILDT
● 電気自動車
FT
June 15, 2017
Reality
of subsidies drives Norway’s electric car dream
Richard Milne in Oslo
● ポピュリスト
Project Syndicate JUN 15, 2017
How Populists Win When They Lose
JAN-WERNER
MUELLER
● サービスのグローバリゼーション
VOX15 June 2017
Services as a growth escalator in
low-income countries
Ejaz
Ghani, Stephen O'Connell
YaleGlobal, Thursday, June 15, 2017
Why Do People Oppose Globalization?
Farok
J. Contractor
● レソトの人口爆発
NYT JUNE 15, 2017
Remember the Population Bomb? It’s Still
Ticking
By
EUGENE LINDENJUNE 15, 2017
アフリカ南部の内陸国、レソトは、人口200万人の3分の1が干ばつと飢餓に苦しんでいる。1974年、レソトは1人当たりでどこよりも多くの援助を受けていた。しかし、この援助の成果は、1798年のマルサスThomas
Malthusの警告を証明しただけであった。人口の増加が、必然的に、生活に必要な資源を超えたのだ。
レソトの物語は、干ばつに苦しむ他のアフリカ諸国にも再現されている。トランプ政権はレソトから学ぶべきだ。国連人口計画への分担金拠出を拒み、気候変動抑制のためのパリ協定から離脱することは、地球規模で、戦争や飢餓から逃れる難民の数を増やすだろう。
国際援助機関、妊娠中絶、経済成長、南アフリカ鉱山への出稼ぎ、輸出向け織物産業、エイズの蔓延、土壌侵食、難民流出。
トランプの答えは、壁を築け、である。しかし、上昇する海面に対するとき、それは機能しない。
● ロボット
Bloomberg 2017年6月15日
The Robot Takeover Is Greatly
Exaggerated
By
Noah Smith
● アメリカの労働者
FT June 16, 2017
US workforce: paying young Americans
to learn the right skills
Rana
Foroohar
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The Economist June 3rd 2017
Britain’s missing middle
Donald Trump and the world: Turning ugly
British politics: The summer of discontent
Banyan: The blind man’s elephant
Lexington: Like a wrecking ball
Europe and Trump: Don’t let him get to me
Charlemagne: Rebuilding the House of Euro
America’s foreign policy: Goodbye to values
(コメント) イギリスの選挙に関する記事では,保守党と労働党のマニフェストが示す政治思想の振り子を説明します.同時に,Brexitや労働党の党首選,解散・総選挙をめぐる政治的な策謀の詳細が解説されています.
他方,トランプの外遊をめぐって,オバマ外交との比較で,アメリカ外交の姿勢を再評価します.およそ9000人もの麻薬密売関係者を殺害したフィリピンのドゥテルテ,裁判官,クーデタ未遂事件後,ジャーナリスト,メディアを含む1万人以上を投獄したトルコのエルドアンをトランプは称賛し,サウジアラビアでは1100億ドルの武器を売って,雇用が増えたと自慢し,エジプトの軍事独裁者シシにも安全保障を祝福しました.
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IPEの想像力 6/19/2017
サッチャーの最後、ブレアの最後、あるいは、徹底した政府介入と能力主義,多民族の平等社会を築いたリー・クアンユーの晩年についても、権力者の自信過剰と妄執を聞いたことがあります。
メイ首相の傲慢さ、無能さが、保守党の後退につながりました。しかし,それは40年に及ぶネオリベラリズムの支配が終わったことを示す,とThe Economistも認めています.
それは,保守党であれ,労働党であれ,国家の役割を減らして,民営化,規制緩和,減税,特に,富裕層への減税(逆向きの再分配)が支配する時代でした.彼らはグローバリゼーション,特に金融のグローバリゼーションを支持し,インフレ抑制と均衡予算を重視し,創造的破壊を推進したのです.
金融市場のバブルに依存し,不平等の拡大を肯定(あるいは奨励)する,政治とイデオロギーのもたらす社会的害悪は,国家介入の増大と集産主義の理想化が残した害悪と,憎悪・恐怖の均衡に達したようです.
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14歳,藤井聡太の28連勝で国民的な興奮が静かに広がることを,私たちは歓迎するでしょう.卓球の伊藤美誠,16歳,平野美宇,17歳の大活躍にも,中国やヨーロッパの体の大きな選手に負けない彼女たちの気迫に感動します.心から喜び,声援を送りたくなります.
しかし,アメリカ大リーグや欧州のフットボール・リーグで活躍する日本人選手たち,アメリカのゴルフやイギリスのテニスで好成績をあげる選手たちを,その超人的プレーに酔うとはいえ,けた外れの報酬額にあきれ,納得できない気持ちが湧くのとは,少し違います.
超豪華列車「四季島」「瑞風」「ななつ星」の登場が,まるで国民的な祝祭のように報道されるのを,異質のニュースとして聞きました.富裕層の個人的な楽しみであることを,地域の復興や伝統文化の再発見のように称える映像の編集は,領土紛争やテロ事件,浜辺に打ち上げられた難民の遺体,と共通する,メディアの社会・政治姿勢が問われます.
皇族や貴族,国賓の来訪に子どもたちが並んで小さな旗を振る政治や外交のイメージ,戦争時代の社会意識(統制経済)が,金融危機,震災,原発事故後の「復興」「再生」に重なります.
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ユーロ危機に対する根本的な改革が,マクロンとメルケルによって進むかもしれません.
J.E.スティグリッツの『ユーロ』が訳されて,ようやく読み始めました.ユーロ圏の制度は持続可能ではない,とこれまでも多くの論者が主張しました.特に,アメリカ側で.その基本的な理由は,参加する諸国の経済条件が共通通貨に適合しないことです.あるいは,それにふさわしい政治・制度が整備されていないからです.
ギリシャはユーロ圏を離脱するおそれがあり,イギリスもEUを離脱することになりました.Brexitは,スティグリッツに言わせれば,機能しないユーロ圏の前提,自由貿易や移民・難民問題の延長なのです.
経済学は解決策を示せる,と彼は考えます.それは,全ヨーロッパの税制・累進課税,社会のセーフティー・ネット,遅れた地域・諸国のための産業政策,そして,金融を社会のために機能させる規制,です.
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