IPEの果樹園2017
今週のReview
6/19-24
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コービンとメイ ・・・選挙とBrexit ・・・安倍首相の憲法改正 ・・・トランプと政治的再編 ・・・マクロンの可能性 ・・・中国の大戦略 ・・・マティスのアジア外交 ・・・中国の住宅バブル ・・・北朝鮮は歌うか? ・・・アメリカ抜きの西側同盟 ・・・ロンドンのタワー火災 ・・・ユーロ圏は持続不可能だ ・・・レソトの人口爆発
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● コービンとメイ
NYT JUNE 9, 2017
The Year of Voting Recklessly
Bret
Stephens
The Guardian, Saturday 10 June 2017
Jeremy Corbyn didn’t win – but he
has rewritten all the rules
Jonathan
Freedland
The Guardian, Saturday 10 June 2017
Despite all the smears and
distortions, this was a victory for hope
Gary
Younge
希望は、励ましとその余地が与えられれば、絶望よりも強い力になる。それが要求する信念の飛躍は、まだ存在しない未来を想像するものであり、冷笑家の侮蔑にさらされる。信念により行動にはリスクがある。
余りにも長い間、イギリスの選挙政治には冷笑が支配してきた。意志ある者は常に敗北したのだ。たとえ群衆を観ても、政治階級やメディアの記者たちは彼らを無視した。彼らは民衆がすぐれた本性を持つとは考えなかったため、それに訴えることはなかった。
道義性をナイーブと誤解し、彼らは利己心でしか民衆は動かないと考えた。しかも、狭い、知覚できるような利己心だ。政治は可能性のアートであると言いながら、われわれが新しい可能性を創り出すことを、彼らは受け入れなかった。
木曜日の夜、さまざまな障害にもかかわらず、希望が勝利した。イギリス政治は、もはや多くの旧いルールが適用できなくなって、少なくとも今は、根本的な再編が起きている。
憂鬱な、懐古的ブレア主義は破棄された。
テリーザ・メイは、ハードBrexitのために政権を求め、さらに強い交渉力を求めた。それは間違いだった。
保守党は今や、それ自体がUKIPである。小さな島々で国旗を振るだけの、実行できる政策を持たない党だ。
ジェレミー・コービンは、好ましい考えによる政権を求めた。より公正な社会、よりバランスの取れた経済を実現するために、富とパワーを再分配する。
多くの若者たちが労働党に投票したことで、コービンを投手から追放しようとしてきた議員たちが身分を維持できた。議員たちはコービンに対する反対をやめるべきだろう。
政治とは何かを想像し、誰のための政治家を考える、希望が回復した。
最も重要な教訓の1つは、国境を超えて、この選挙結果が、外国人排斥、人種差別、過激なナショナリズム、など、グローバリゼーションが引き起こすさまざまな偏見に対する答だった。
労働党は若者だけでなく、支持層を拡大した。UKIPに投票して見捨てられた人々、外国人排斥に偏った人々も、学校や病院に対する公共投資を提案する労働党を支持した。
木曜日の勝利は、どの政党や指導者の勝利というより、政治的傲慢さの敗北だった。保守党の大勝を前提した人々の敗北だった。対立する政党との討論にも答えない指導者、国民を侮辱する指導者の敗北だった。
党員選挙で党首になったコービンを軽蔑し、その指導力を損なっていた労働党議員たちの敗北だった。
最後に、政治を勝手に都合よく解釈してきた政治評論家たちの敗北であった。しかし、皮肉なことに、彼らがあれほど労働党の力を軽蔑していたからこそ、選挙結果はこれほど破壊的であるのだ。
労働党は勝利しなかった。しかし、希望は勝利したのだ。
FT June 11, 2017
There is a silver lining for
business in UK political upheaval
Sarah
Gordon
The Guardian, Monday 12 June 2017
This is Corbyn’s moment: he’s
rescued Britain from the chains of austerity
Polly
Toynbee
The Guardian, Monday 12 June 2017
Jeremy Corbyn has won the first battle in a long war against the ruling elite
Paul
Mason
ストップ、ジェレミー・コービン。これがイギリスのエリートたちの目標になった。彼らは、Brexitをソフトな形に変え、すべてやめてもよい、と考える。それが政治工作の背後にある考えだ。
Brexitとは、サッチャー主義2.0を実現するものだった。法人税をアイルランドと同じくらい低くする。人権を守る法律を弱め、フォークランド戦争と同じように、ブリュッセルとの戦争状態を煽る。Brexitに反対する議員は、内部の敵、として非難する。
しかし、コービンが首相になれば、これは不可能だ。
それにもかかわらず、コービンと労働党への支持が高まっている。何が起きているのか、それを理解したい者には、アントニオ・グラムシが教えてくれる。グラムシは、1937年にファシストの牢獄で死んだイタリア共産主義の指導者だ。成熟した民主主義において左派がどのような闘いを経て勝利に至るのか、彼は理解していた。
労働党のマニフェストがリークされ、その中身を批判されたが、すぐにコービンの支持率が高まった。イギリスはテロリストに攻撃されたが、保守党の支持率は下がった。労働党の現職候補者は、「コービンでは勝てない」と主張していたが、コービンが来ると支持は増えた。
これらはすべて「政治の常識」において起きないはずのことだった。グラムシはこの点を初めて理解した。労働者階級や左派にとって、その闘いのすべてがこうした常識を覆し、否定することである、と。エリートたちが権力を維持しているのは、情報機関や秘密警察、軍の力によるのではなく、受け入れられている常識の力なのだ。
それを知った上で、コービンが達成したものの大きさを測ることができる。彼は政権を執れなかったが、ネオリベラリズムの主張を公式に打ち破った。排外主義的な、ナショナリストの経済学を敗退させた。
グラムシはわれわれに教えた。支配階級は国家によって統治しているのではない。国家は最後の強制地点でしかない。エリートのパワーを奪うには、彼らの防衛線を1枚1枚はがさねばならない。
多くの社会主義者は、労働者をハチの群れのように扱っている。歴史的な役割を演じるようにあらかじめプログラムされている。しかしグラムシは、すべての者がインテリである、と述べた。たとえ職場では、訓練されたゴリラのように思われている労働者でも、職場の外では、哲学者、芸術家、趣味の人、意識して道義に基づく行動を取る人物なのだ。
労働党が示したのは、このような長い文化戦争の一端である。
保守党は敗退した。彼らはBrexitを利用して、福祉国家の残骸を叩き潰し、イギリスをグローバルなシンガポールにするつもりだった。
次の選挙を、保守党は増税、財政支出増、高賃金、高公共投資について闘うだろう。コービンがゲームを急速に変えてしまったのだ。
FT June 12, 2017
Six myths of the UK election
Robert
Shrimsley
NYT JUNE 12, 2017
Theresa May’s Weak and Unstable
Leadership
By
JOAN SMITH
NYT JUNE
13, 2017
Theresa
May’s Weak and Wobbly Outfit
Roger Cohen
メイ首相は繰り返す。“Brexit
means Brexit.” ・・・彼女はそれしか言えないのだ。
Fintan O’Toole がBrexitについて、The New York Review of Booksでうまく要約したように、「脱帝国のまやかしと小イングランドの懐古趣味をはぎとれば、そこには何も残らない。最大の市場から切り離され、最も重要な政治同盟を失った後、自国産業などほとんど何もない中位のヨーロッパ国家がどうやって繁栄するのか、明確な意識がまったく見えない。」
メイはまた、この台詞も繰り返した。“No deal for Britain is better than a bad deal.”
しかし、DUPとの連立によって過半数を得た今、DUPはアイルランとの国境線が検問所によって閉じられることを拒む。それは関税同盟からイギリスが離脱できないことを意味するだろう。
FP JUNE
13, 2017
Can
Britain Still Keep Calm and Carry On?
BY JOHN GEARSON
Project
Syndicate JUN 13, 2017
How
to Prevent the UK’s Self-Destruction
JIM O'NEILL
FT
June 14, 2017
Lessons
from the 1970s: how Theresa May can govern with no majority
Bernard Donoughue
Bloomberg
2017年6月14日
Why
the Media Keeps Missing Political Earthquakes
By Pankaj Mishra
FT June 16, 2017
Austerity is dead. Long live
austerity
Martin
Wolf
労働党の昔の財政刺激策が人気を呼んだ。Brexitによってイギリス経済は損なわれるだろう。しかし、これに加えて財政悪化が困難を増すのは、賢明なことではない。
財政赤字が小さなときは、完全雇用の近辺まで財政支出を増やすことが望ましい。しかし、財政は将来のショックにも備えて債務の水準を下げねばならない。現在のような低金利であれば、質の要公共投資は好ましいだろう。経常収支の赤字が続き、ポンドの脆弱性は増している。
こうしたことを考慮すれば、財政赤字は少ない方がよい。
財政支出削減が必ず求められる、ということではない。スカンジナヴィア諸国、オランダ、ドイツも、イギリスより大きな財政支出を行っている。政府が支出を増やせば、増税しなければならない。それを正直に考えることだ。緊縮策が不要になるわけではない。
● 選挙とBrexit
FT June 9, 2017
What the UK election result will
mean for Brexit
George
Parker, Political Editor
メイの惨敗は、親ヨーロッパの人々にとって、首相がハードBrexitを放棄するという期待を生む。
前蔵相のGeorge Osborneは、EU単一市場と関税同盟から離脱する、という彼女の目標は、これで不可能になった、と述べた。下院の多数が支持するとは思えない、と。
メイは、保守党内の親ヨーロッパ派と、ヨーロッパ懐疑派との間で、板挟みになる。前者はBrexitの中身を薄めるように求め、後者は彼女がためらうことを拒む。
交渉は10日後に始まるが、いくつか変化があった。
第1に、メイが議会の絶対多数を失ったこと。移民、関税、農業を含む、7つの主要分野で、詳しい中身に関する法案を成立させねばならない。
第2に、北アイルランドのDUと連立を組むことは、問題を生じる。DUはBrexitを支持するが、アイルランドとの国境に検問が再現するのは受け入れない。もしUKがEUの関税同盟を離脱すれば、それは検問所の復活を意味する。
第3に、保守党には12人のスコットランドで当選した保守党議員が加わった。スコットランドはEU残留派が強い。Brexitなら、SNPによる独立の国民投票も予想される。
Brexitをソフト化するのは、メイの主要な約束を変えることを意味し、容易でない。
FT June 12, 2017
Britain’s chance to open serious
debate on Brexit
FT June 12, 2017
Brexit negotiations require a new
mindset
Carolyn
Fairbairn
このように不確実で、敵対的な交渉を予想すれば、民間投資は徐々に減少するだろう。そして機会は失われる。
選挙によって交渉の条件や目標を見直す良い機会が与えられた、と考えるべきだ。
FT June 12, 2017
Do not exaggerate the effect the
election will have on Brexit
Wolfgang
Munchau
ベルリンの壁崩壊がヨーロッパの歴史を変えたように、昨年の国民投票によるBrexitも歴史を変えた。しかし、先週のイギリス総選挙は違う。それは国内政治だ。Brexitと関係ない。
Brexitの中身はイギリスだけが決めることではない。Brexitの手続きは法的に進められる。イギリス政府が多数を取れない連立政権でも、それはEU交渉と関係ない。
長期の移行期間についてEUと合意することが、Brexitの混乱を回避する条件だろう。
FT June 12, 2017
Philip Hammond is the politician to
salvage a Brexit deal
Philip
Stephens
FT June 12, 2017
It is time to make a positive
economic case for Brexit
Paul
Marshall
FT June 12, 2017
Why Theresa May is the wrong PM for
Brexit
David
Allen Green's blog
FP JUNE 12, 2017
Is Theresa May’s ‘Hard Brexit’ Off
the Table?
BY
PHILIPPE LEGRAIN
われわれは政治的大混乱の中にいる。何も解決していない。それは巨大な危険であるが、また、間違った決定を翻すチャンスでもある。
Bloomberg 2017年6月12日
The EU Won't Help a Weakened Theresa
May
By
Leonid Bershidsky
FT
June 13, 2017
Sleepwalking
towards a chaotic Brexit
Martin Wolf
テリーザ・メイは、強く、安定した政府を約束した。結果は、その逆になった。キャメロンは、しなくてもよい国民投票を約束し、Brexitをもたらした。その後継者であるメイは、やらなくてもよい総選挙を実施し、ますますEUとの離脱交渉を難しくした。合意が成立しないまま離脱することが、以前よりも置きやすい状態だ。それは双方にとって破滅的であろう。
FT
June 14, 2017
The
true saboteurs of Brexit
David Allen Green's blog
FT
June 15, 2017
May’s
stubborn refusal to read the runes on Brexit
FT June 15, 2017
A path that would avoid Brexit
calamity
Philip
Stephens
SPIEGEL ONLINE 06/15/2017
Brexit Is Dead
A Wave of Anger Crashes over Britain
An
Editorial by Thomas Hüetlin
● 安倍首相の憲法改正
FT June 10, 2017
Abe risks backlash in drive to
revise Japan’s constitution
Robin
Harding in Tokyo
安倍首相は憲法改正を政治的な遺産にしようとしている。日本の保守派にとって、戦争することや軍隊を否定した憲法は、第2次世界大戦の敗戦でアメリカに強いられたものである。
しかし、自民党内部でも、この問題を急ぐことには異論がある。安倍は、自衛隊を合憲にする条文を入れる、という部分修正で、将来の全面改正を可能にする道を示そうとしている。
来年、明治維新150周年、天皇の退位があれば、これに乗じて、安倍は議会を解散するのではないか、という見方もある。
● トランプと政治的再編
NYT JUNE 10, 2017
The Headless Superpower
Ross
Douthat
中東における紛争は、ヨーロッパの戦乱を再現しつつあるのか?
ヨーロッパ諸国が1914 and 1939 (and 1870, 1853, 1805,
1756 …)の紛争に陥ったほとんどの要素が、中東に現れている。宗教、イデオロギー、戦略的利益などにおいて対立する2つの同盟、1つはイラン、もう1つはサウジが指導する同盟が形成されている。シリアとイエメンで代理戦争が続いている。イスラム国、クルド、ロシア、さまざまな予測できない第3勢力が紛争に加わっている。
そして今、サウジの同盟がカタールを孤立させようとした。1914年のオーストリアとセルビアを思わせる。その多くの要求と厳しい制裁は、すでに戦争行為である。国境を封鎖し、水の供給や航空機の乗り入れを停止した。イランとトルコがカタールを支援し、戦争のエスカレーションが起きている。
1914年には、グローバルな覇権国が存在しなかった。覇権国はすべてのライバル国を軍事的に凌駕し、紛争を地域的なものにとどめ、その国境線を維持することに、明確な関心を示す。地域紛争を抑えることこそが、パックス・アメリカーナの要点である。
しかし、アメリカ大統領は必ずしもうまく行動しなかった。ジョージ・W・ブッシュのイラク戦争は軍事的手段でイラクの改造を企て、オバマのフリースタイル外交は平和を侵食し、代理戦争を広めた。経験と知識を欠いた指導者が、カタールの危機を深めている。
トップを欠いた覇権国となったアメリカは、各地の平和にどのように作用するのか? パックス・アメリカーナの基本的構造は、大統領がそれを理解できなくても、機能するのか?
FT June 12, 2017
Donald Trump’s budget data cuts are
a false economy
Rana
Foroohar
Project Syndicate JUN 12, 2017
Trumping the Dollar
JIM
O'NEILL
トランプが政権についてから、最初、ドルは強くなったが、その後は4月から価値を低下させてきた。その説明として、1.トランプの成長政策が実現しそうにない。2.アメリカのほかの経済圏が、ユーロ圏だけでなく、予想よりも高い成長を示した。
しかし、3つ目の説明がある。それは、トランプ政権の予測不可能な政策に対して、市場がプレミアムを求めている、ということだ。
伝統的な理論では、為替レートは購買力によって決まる。しかし、Béla Balassa, Paul
Samuelson, and John Williamsonなど、エコノミストは国際収支と完全雇用を考慮した実質均衡為替レートを考えた。私はその枠組みを簡略化して、GSDEERを提唱した。景気循環の局面を考慮して調整したものは、現実の為替レートとの差がプレミアムであることを示唆している。
トランプ政権が孤立主義を採用して、アメリカのGDPを高めている消費の肥大化を抑える間違った選択をするかもしれないからだ。
Project
Syndicate JUN 13, 2017
Can
US States Right Trump’s Wrongs?
BARRY EICHENGREEN
トランプ大統領は、共和党が支配する議会の協力を得て、アメリカ人が大切にしてきた基本的価値の多くを否定しつつある。医療保険を否定し、さまざまな社会給付を削減し、富裕層への税負担が大幅に削減されて、逆向きの再分配が行われる。
最近、トランプの間違った判断で、アメリカは気候変動抑制に関するパリ協定からも離脱すると表明した。それは地球の健康と福祉をリスクにさらし、アメリカのグローバルな地位を低下させる。
この機会に、アメリカが連邦制度を取っていることを思い出すべきだ。すべての権力を中央が握る(フランスのような)単一権力システムではない。アメリカ合衆国憲法修正第10条が示すように、連邦政府に明確に認めた権限を除いて、権力の一部が各州に留保されているのだ。
伝統的に、州の権限は、奴隷制度を擁護する南部州によって提唱された。より最近では、社会的に保守的な諸州が、進歩的な立法に反対し、連邦権力が拡大するのを阻止するために訴えた。しかし今は、この修正を逆向きに適用すべきときだ。社会的な給付の削減、進歩的な連邦法の廃止に対して、諸州の権限として、アメリカ国民はこの流れを阻むべきだろう。
たとえば環境政策を考える。カリフォルニアはすでに自動車の排出量に関する厳格な基準を示している。ほかにも14州がこの基準を採用しており、アメリカ国民の40%に及ぶ。自動車会社は、厳格な基準と寛容な基準の2つについて、別々の自動車を生産することはできない。その結果、カリフォルニアの基準が支配するだろう。
さらに、カリフォルニアが中国や他の諸国と、気候変動に関するパリ合意を維持する監視と責任の精神を自発的な条約に署名する、と考えてみる。実際、カリフォルニアの炭素削減に向けた市場化cap-and-tradeプログラムは、中国が検討中の炭素市場制度のモデルになっている。また、カリフォルニア州が世界第6位の経済規模を持つことも重要だ。
しかし、難しいケースもある。カリフォルニア州は、単一支払者制度a single-payer health
planを通過させたところだが、支払うための財源は決めていない。消費税化、連邦財源かもしれない。また、カリフォルニア州は、教育、社会サービスの支出拡大に積極的だ。その問題は、すでに個人や企業にとって高い税率を理由に、産業や雇用が州外に流出するかもしれない点だ。
Emmanuel
Saez and Gabriel Zucmanによれば、解決策は2つある。第1に、市場シェアで観たカリフォルニアの比率に従った、グローバルな利潤に対する課税だ。第2に、2000万ドル以上の所得に対する1%の富裕税だ。1%の増税によって、ブレイン・ドレインや、資本家がニュージーランドに大規模流出する、と考えるのは無理であろう。
2つのシナリオが考えられる。善意のシナリオと、悪意のシナリオだ。それを、「進歩的連邦主義」、とLaura Tysonは呼ぶ。
善意のシナリオの場合、人々は自分の好みに応じて州を選ぶ。大きい政府か小さい政府か、公的な給付か民間による供給か、国際協力か孤立主義か。
悪意のシナリオの場合、トランプ政権と共和党が、各州の権限を禁止し、奪うだろう。
アメリカ国民は、どちらのアメリカに生きているのか? すぐに知るはずだ。
NYT JUNE
13, 2017
A
Trumpian Caesar? Shakespeare Would Approve
By JAMES SHAPIRO
FP JUNE
13, 2017
The
Madness of King Donald
BY RICHARD EVANS
トランプ政権の統治スタイルは王室と宮殿による似ている。では、王様の統治能力にメンタルな欠陥があるとわかったとき、何が起こるだろうか? 歴史は何を教えているか?
近代においても、それ以上に歴史をさかのぼっても同様に、狂気は定義しにくい概念だ。しかし、多くの例がある。立憲的なシステムにおいては、政治的な争いが制度によって安定化される、というメリットがある。ただし、トランプはルールに従わない。既存の権力システムに対するポピュリスト的な侮蔑を示している。
Project
Syndicate JUN 14, 2017
Is a
Trump Doctrine Taking Shape?
MICHAEL J. BOSKIN
FP JUNE 14, 2017
Trump Isn’t Being a CEO. He’s Just
AWOL.
BY
MICAH ZENKO
Project Syndicate JUN 15, 2017
The End of the Trump Administration?
JORGE
G. CASTAÑEDA
● イランのテロ事件
NYT JUNE 11, 2017
Will Iran Descend Into Chaos?
By
CHRISTOPHER DE BELLAIGUE
中東世界における唯一の安定した国民国家である、と自慢してきたイラン中心部で、イスラム国の自爆攻撃が起きた。
この事件は、内外において、イラン政府のシリア政策、サウジとの敵対関係への批判を強めるだろう。トランプ政権がイランを敵視する中で、イランは外交を再考する必要がある。
● 金融政策
VOX 11 June 2017
Why keeping the balance sheet of the
Federal Reserve constant is equivalent to a gradual exit
Daniel
Gros
非伝統的な金融政策から抜け出す道をどうするのか、中央銀行は模索している。アメリカ連銀は、量的緩和の視点からは、その出口戦略をすでに進めていると言える。
NYT
JUNE 14, 2017
Janet
Yellen and the Case of the Missing Inflation
Neil Irwin
FT June 16, 2017
Janet Yellen banks on an
aggressively passive strategy
Gillian
Tett
FT June 16, 2017
An independent Federal Reserve has
never been more crucial
● マクロンの可能性
FT June 12, 2017
Emmanuel Macron will offer no mercy
to Theresa May
Gideon
Rachman
イギリスのメイは選挙によって力を失い、フランスのマクロンは選挙によってさらに大きな力を得た。イギリスの親ヨーロッパの人々は、これによってハードBrexitの罠から抜け出せるのではないか、と期待する。しかし、それは起こりそうにない。
フランス大統領は、イギリスを混乱から救い出す動機を何も持たないからだ。むjしろマクロンにとって、Brexitはフランスの戦略が実現する歴史的チャンスである。
マクロンは、EU再生の中で、フランスの再生を求めている。EUの統合を防衛や金融分野で深化させて、ユーロ圏に財務大臣を設けることも主張した。しかし伝統的に、イギリスはこうした連邦主義にブレーキをかけた。
マクロンは、国内の政敵であるル・ペンを意識しており、また、Brexitによってフランスの銀行や製造業がイギリスから市場を奪う大きな機会を得ることを考えるはずだ。その意味で、交渉や移行期を長期化するより、ハードBrexitでイギリスが大きな損失を出すことが明確になる方が好ましい、と考える。
フランスは、Brexit交渉やトランプとの関係で、ドイツがマクロンを支持すると期待できる。また、東欧へのEU拡大をフランスは望まなかったが、ポーランドやハンガリーで非リベラルの反民主的政権がEUのルールを逸脱することに強い対決姿勢で制裁を求めるだろう。
こうしたEU内の力学は、マクロンの強硬姿勢を促している。
FT June 12, 2017
Emmanuel Macron takes lessons from
the Sun King
Anne-Sylvaine
Chassany
マクロンはルイ14世を目指す。最高権威のイメージが重要だ。
FT June 13, 2017
Macron has the means to govern; now
he must act
PHILIPPE AGHION
Project
Syndicate JUN 13, 2017
How
Macron Keeps Winning
BENEDICTE BERNER
Project
Syndicate JUN 14, 2017
A
Magic Wand for France?
ANDERS ÅSLUND
マクロンは、手品師のように、主要政党の候補を破り、決定的な差をル・ペンにつけて、フランス大統領になった。その最新の手品が議会選挙だ。マクロンの与党LREMが、議会で圧倒的な多数の議席を得た。
しかし、マクロンが選挙の魔術師以上の成果を出すかどうかは、経済プログラムの成否にかかっている。それは何より、貧血症の経済を活性化し、雇用を増やすことだ。
フランスには複雑な改革が求められる。特に、複雑な労働規制の自由化、簡素化、である。若者や移民を、早急に、労働市場に統合しなければならない。また、教育システムを改善するべきだ。
こうした改革は、EUと関係なく、自国だけで一方的に行えるが、EUの改革はフランスに経済的な機会を与えるだろう。
Project
Syndicate JUN 14, 2017
Emmanuel
Macron and the Post-Revolutionary Idea
BERNARD-HENRI LÉVY
FT June 15, 2017
Macron
marches France towards uncharted optimism
Roula Khalaf
(後半へ続く)