IPEの果樹園2017
今週のReview
6/12-17
*****************************
ワシントンとウォール街 ・・・6日間戦争 ・・・イギリス総選挙 ・・・悪辣な超大国 ・・・NATOと西側同盟の終わり ・・・ユニバーサル・ベーシックインカム ・・・朝鮮戦争の和平条約締結
[長いReview]
****************
**************
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● ワシントンとウォール街
FT June 7, 2017
Wall Street turns a blind eye to
Trumpian risks
Edward
Luce
ワシントンとウォール街とは、両方が正しいはずがない。一方で、リベラルな国際秩序は動揺している。他方では、ウォール街の株価は天井知らずだ。投資家と政治家が異なる判断を示すことは珍しくないが、これは行き過ぎている。
トランプが議会に提案したインフラ投資は、年間200億ドルにすぎず、約束の1兆ドルには程遠い。しかし、市場は反応しなかった。短期的な事件によってファンダメンタルズは変わらない、という説明は正しい。
しかし、市場はトランプがグローバルな秩序に負わせるリスクを無視している。ニクソンやクリントンのスキャンダルと違い、トランプが弾劾されることはないだろう。トランプのリスクとは、アメリカが築いた秩序を破壊することだ。WTOを離脱する。ロシアがバルト海諸国に侵入する。南シナ海で中国との軍事衝突が起きる。
いずれも起きそうにないが、もし1つでも起きたら、その衝撃は計り知れない。
世界が1914年の潜在的な危機を再現しつつあるとしたら、旧秩序の崩壊に対して、投資家はリスク・ヘッジしているのか? これまで数十年間、世界に安定性を供給してきたアメリカが、トランプによって不安定性の供給側に回った。
● 6日間戦争
FT June 7, 2017
Israel Inc: a nation’s calling card
helps it defy isolation
John Reed in Jerusalem
6日間戦争は、イスラエルによるパレスチナの長期占領、世界がイスラエルに対する見方の悪化、現在に至るイスラエル社会内部の亀裂、をもたらした。
PLO書記長Saeb
Erekatは、「抑圧、制服、人々の生活のすべての面を管理する」イスラエルの政策に強く抗議し、世界に協力を求めた。しかし、ネタニヤフ首相は西アフリカを訪問中であった。農業、エネルギー、水管理、ハイテク安全保障に関して、イスラエルの指導力を宣伝していた。「われわれの貯法能力はテロを阻止できる。アフリカを含む、世界中のテロに対して有効だ。」
翌月、ネタニヤフはインドのモディ首相と会談した。それはインド首相による最初のイスラエル訪問であった。イスラエル史上最大規模の武器取引に合意した後だった。
イスラエルは高い経済成長率を達成し、世界でも一流の安全保障関連ビジネスを成長させた。それは重要な外交のカードにもなっている。イスラエルでは、パレスチナとの2国家案で平和を追求する動機が大幅に弱くなった。
しかし、パレスチナ占領が続くことで、イスラエルは世界中で嫌われており、和平プロセスを進める価値は十分にあるはずだ。
● イギリス総選挙
NYT JUNE 5, 2017
A Case for Jeremy Corbyn
Roger Cohen
トランプにかわいがられる、独りよがりの、立場をころころ変える、テリーザ・メイが、選挙を経ずに首相官邸に入って、ハードBrexitが勝利し、イギリスは彼女のウサギの穴に落ち込むはずだった。
しかし、さらに重要なこととして、ボルシェビキのロシア革命から100年を経て、アメリカの世紀が終わる、といったことも考えるべきだろう。ドナルド・トランプという名の愚劣な道化師が、時代のカーテンを下したのだ。
イギリスでは何もないまま、6月8日の離脱が形式的に決まっていた。労働党は分裂し、ブレア派の中道が去って、コービンの指導による左派正統派が執行部を握った。離脱の形は見えないまま、メイがどのようにひどい失敗をしても、外相のボリス・ジョンソンは彼女を応援している。
そんなとき、マンチェスターとロンドンでテロ事件が起きた。トランプはさっそく流血から安易に自分の政治的得点を狙った。ロンドン市長の言葉を悪用し、自分の偏見が正しかったかのように自慢した。こんな人物をメイとジョンソンは称賛し、Brexitの大失策をアメリカとの貿易で埋められると主張してきたのだ。ジョンソンはトランプにイギリス訪問を呼びかける。国賓として女王と会見するため、トランプは馬車に乗って宮殿に招かれるのだ。
アメリカ後の時代に、英米はともに地位を失墜させる。
保守党の大勝利、という予想は消滅した。メイは深淵の底で墓穴を掘る。一部の人々がBrexitを後悔し始めているのに、メイはハードBrexitを推進してきた。人々が長生きし過ぎるのだから、社会保障にもっと多くの税金を払うよう求めた。
コービンはこんな失敗を犯さなかった。ブレアから借りたスローガン “For the Many not the Few” を唱え、特に、都市部の若者たちが熱狂的に支持した。若者たちにとって彼は救世主となった。サンダースか、まさにトランプのように、コービンは、イラク戦争、金融危機、ユーロ危機、不平等な社会をもたらしたシステムを、逆転できる人物だった。
選挙では、たとえ不満があっても、選択しなければならない。私はコービンの反アメリカ主義が嫌いだ。ハマスとの親交、マルクス主義、反シオニズム、NATO批判、財政規律の無さも嫌いだ。冷戦時に、モスクワをワシントンよりもましなものとして支持した姿勢にも呆れる。
しかし、メイのように恥知らずなトランプへの熱愛を示すことはない。保守党員のような反移民の愛国心を誇示することもない。テロに直面してサウジアラビアとの対決を示唆した。何より、不平等の拡大と闘う。ソフトなEU離脱を支持し、できる限りヨーロッパのそばにイギリスを置く。コービンに投票することは、Brexitの災厄をもたらした保守党への罰である。
ジェレミー・コービンを支持するべきだ。
The Guardian, Tuesday 6 June 2017
Britain’s economic model is broken:
this is our first post-crash election
Aditya Chakrabortty
選挙は、めったにないほどかけ離れた保守党と労働党との選択になると思っていたかもしれない。しかし、保守党のマニフェストは、第2次世界大戦後のいかなるときよりも、労働党のマニフェストに近い内容であった。
メイの保守党は、コービンの労働党と同じくらい、公平さ、取り残された地方の人々、翌殺された賃金を憂慮する。これはイギリスの金融危機後に行われる最初の選挙である。ノーザンロック銀行が破たんしてから10年を経たが、いずれの政党も事態は基本的に良好だと主張してきた。システムは操作されていないし、経済モデルの機能不全は解決された、と。しかし、この選挙では、そうした主張が通用しないのだ。
イデオロギーが死滅するには長い時間がかかる。しかし、ロンドンのパワー・エリートたちもそれを認めたことを、あなたは知るだろう。Jeremy Gilbertが「長い90年代」と呼んだ、ベルリンの壁崩壊からRBS破たんまでの、1つの時代が終わったのだ。
何がそれに代わるのか? その答えを出すのはむつかしい。メイ主義は、Brexitによるポンドランドとしてのイギリスを描く。安価な商品、安価な労働者、一国トーリー主義に復帰する。しかし、首都ロンドンの不満に直面する。
ニュー・レイバーを信じなかったコービンは、もっとイデオロギー的に大胆である。BBCや労働組合の作業所運営、経済民主主義を隠さない。
NYT JUNE 6, 2017
Britain’s Voyage to Inglorious
Isolation
By EDWARD LUCE
最初はBrexitのドラマだった。今度は喜劇だ。わずかな差でEU離脱を決めたイギリス国民は、予想しなかったし、望みもしなかった総選挙に投票する。
1つ、皆が認めるのは、メイ首相は秘密を守る方法を知っていた、という点だ。党の幹部でも解散するとは知らなかった。首相の繰り返す文句は、「強く、安定した、指導力」である。しかし、その以上の目的は何なのか?
「BrexitとはBrexitだ」と、彼女は繰り返す。しかし、離脱後のイギリスがどうなるのか、彼女は描かない。
イギリスの国際派はどうなったのか? Brexitの国民投票について、ポピュリストやナショナリストの予想外の台頭が責められた。しかし、イギリスをヨーロッパや世界から撤退させたのは、エリートたちだ。
それはもっと長期的な変化を示している。1970年代の政治指導者たちEdward Heath, Denis Healey, Roy
Jenkins and Harold Wilsonは、イギリスをヨーロッパに導き、第2次世界大戦を戦った、あるいは、それを経験した。サッチャーでさえ、EU加盟を強く支持していた。
しかし、1990年代から20世紀初めに議会に現れたその後継者たちは、イギリスの外に関する経験が乏しかった。それは過去何世代、そして何世紀で比べて、国外経験の少ない世代であった。イギリスのポスト国際派、孤立主義の世代である。彼らの関心は選挙区に縛られていた。
混乱した離脱でも、ブリュッセルは対応できるが、イギリスには耐えられないだろう。それゆえ、イギリスは交渉においてEU側の好意を必要とした。ところがメイは、ヨーロッパの指導者たちがイギリスの選挙に介入する、と警告したのだ。西側民主主義諸国がロシアの脅威を語るのと同じやr方で、中身も示さずに大陸の「脅威」を持ち出した。
保守党の対象と言う予想は消滅し、メイはたとえ保守党が多数を得ても指導力を疑われるだろう。スコットランド、北アイルランド、英連邦内部での亀裂も深まる。
党の利益を優先する選挙区の小さな争いに振り回される政治世代が、戦後国際秩序に占めるイギリスの権威ある地位を失った。
The Guardian, Wednesday 7 June 2017
Austerity has strangled Britain.
Only Labour will consign it to history
Joseph
Stiglitz
この選挙で有権者が直面する選択は明白だ。失敗した緊縮策を続けるか、あるいは、UKにとって正しい、労働党が推進する経済政策目標を実行するか。なぜ労働党が正しいかを理解するために、1980年代に戻ろう。
レーガンとサッチャーの下で、資本主義の基本ルールが書き換えられた。労働者の交渉ルールを変え、労働組合を弱めた。反トラスト法を弱め、多くの独占を許した。今、われわれの経済では数社で市場を支配する産業が増えている。独占的な企業は価格を引き上げ、購買力で観た人々の所得を減らした。
企業重役たちは、会社の利益からますます多くの報酬を得るようになった。そして企業のための投資や労働者には支払わなくなった。金融政策は、雇用よりもインフレに注目するようになった。
30年後に明らかなように、書き換えられたルールは成長を減速させ、金融化と短期化を進めた。起業は長期的な投資をしなくなった。それは、低成長と不平等化、経済の分断状態を強める。
こうした支配的な考え方をネオリベラリズムと呼ぶ。不平等と金融依存は2008年の崩壊を直接に生み出す源であった。それが誤りであることは明白に示され、今や、それに変わる考えを採用するときだ。
単純化すれば、政府と市場との間に適度なバランスを回復する必要がある。経済が弱いときは、政府が人、技術、インフラに投資する。それは現在の経済を成長させるだけでなく、将来の成長をもたらす。
逆に、緊縮策は必死に支出を削減し、経済危機によって増大した債務を減らそうとする。オズボーン前蔵相が、カードの支出上限額を超えた、と表現したことは、直観的によくわかる。しかし、それは間違いである。経済は家族と違って、政府が支出し、投資すれば、その資金は循環して、雇用を増やす。それは、さらに雇用を増やす循環を生じる。景気回復は、政府の社会給付を減らし、税収を増やす。
緊縮策はこれと逆の方向に作用する。特に、若者が失業し、あるいは、適当な雇用を得られず、人的資本を減らすことは、将来の成長を損なう。
われわれは経済のルールを再び書き換えねばならない。それは長期的な経済成長に焦点を当て、持続可能な繁栄を共有するのだ。たとえ債務を増やしても、政府は人、技術、インフラに投資する。今回の選挙で、労働党はそのようなUKにとって正しい経済プランを示している。私は計画の財源に感心した。それは高所得層への課税と企業がなすべき投資を確実に実行させることだ。
● 悪辣な超大国
FT June 6, 2017
Donald Trump’s bad judgment on the
Paris accord
Martin
Wolf
アメリカは悪辣な超大国a rogue superpowerになった。2015年にパリで合意した気候変動に関する協定から離脱する決定は、その現実の意味を示すものだ。これにどう対応するべきか?
共和党には温暖化を否定する者が多い。鉛やたばこの害を否定したロビー活動とも似ている。しかし、アメリカが世界に占める役割に関して、その見解を変えたことも重要だ、
トランプの安全保障と経済に関する補佐官である2人HR McMaster and Gary Cohnが、最近、発表した文書に注目する。「大統領は最初の外遊で明晰な思考を示した。世界は「グローバル・コミュニティ」ではなく、優位を求めて争う諸国民、非政府組織、企業の競技場だ。われわれは並ぶもののない軍事・政治・経済・文化・道徳の強さを示した。国際事情におけるこうした基本的要素を否定するのではなく、われわれはそれを受け入れる。」 これがホワイトハウスの「賢人たち」が示す考えであることを、われわれは忘れてはならない。
アメリカがグローバルな責任や炭素排出量の削減に責任を果たさないなら、アメリカは偉大さを回復できないだろう。非合意的な、外国人を排除する政策を好むトランプは時代を間違っている。世界は、アメリカが正気を回復すると信じて待つだろう。
● NATOと西側同盟の終わり
Project Syndicate JUN 6, 2017
Life After Pax Americana
IAN BURUMA
西側の指導者としてはド・ゴール大統領以来はじめて,ドイツのメルケル首相が,ヨーロッパはアメリカの指導力にもはや頼れない,と公然と述べた.このことを,ドイツの,大西洋同盟支持者であるメルケルが述べたのは皮肉である.虐殺を犯した独裁国家ドイツが平和的なリベラル民主主義国に転換するために,他のどの国よりも多く,アメリカを必要としていたことを考えると,皮肉なのである.
おそらく我々はパックア・アメリカーナの終わりを歓迎すべきだろう.いかなる帝国のシステムも永久には続かない.第2次世界大戦の廃墟から生まれ,2大核保有大国の冷戦によって長期化した国際秩序だが,もはや十分に機能しない.
NATOの目的は,その初代総司令官Lord Hastings Ismayによって見事に表現された.「アメリカを残し,ロシアを排除し,ドイツを抑える.」 しかし,ドイツを抑える必要はなくなったし,ソ連崩壊後もロシアを排除すべきであったか,議論の余地がある.トランプは,乱暴な仕方だが,この点で正しい.ヨーロッパは,そして日本も,アメリカの軍事力に依存しすぎている.
集団的安全保障をアメリカに頼ることは,同盟諸国を植民地にするわけではない.アメリカは公式には帝国でもない.しかし,帝国の終盤に共通するジレンマが,現在,東アジアや西ヨーロッパに見られる.もしアメリカが請求にその指導力を破棄すれば,カオスが広がり,他国にとって好ましくない大国がその空白を埋めるだろう.しかし,もし諸国がアメリカの指導するシステムに長く頼りすぎると,アメリカへの依存により,彼ら自身の安全保障に対する責任を引き受けない状態が続く.
帝国のシステムが崩壊するとき,しばしば,暴力が起きた.オスマントルコの崩壊は,アルメニア人の虐殺,オーストリア・ハンガリー帝国の解体は,反ユダヤ主義と過激なナショナリズム,チトーのユーゴスラビアが保持したバルカンの帝国が滅んだときも,同じことが起きた.イギリスによるインド帝国の終わりに分断された国家でも,多数のヒンドゥー教徒,イスラム教徒が殺害された.
帝国主義を支持するわけではない.しかし,トランプの時代は,1945年以降のアメリカ指導による秩序が終わり,その結果に直面する用意がいる.それは多くの失敗や間違いもあったが,プラスの要素もあった.
西ヨーロッパ,日本,そして遅れて,韓国,台湾も,アメリカの保護下で,自由と繁栄を得た.過度に反コミュニズムを示すこともあったが,アメリカの支配はイデオロギー的な過激化を抑制した.共産主義,ファシズム,過激なナショナリズムが,パックス・アメリカーナの下のヨーロッパでは強まらなかった.日本でも,左派は弱められ,保守政党が長期の権力を得た.他方,失地回復論も抑えられた.
疑いなく,短期的に,アメリカの指導力後退はロシアや中国の利益になる.アメリカに比べて,ロシアや中国は西欧や日本に近い.彼らを巨額の取引で取り込むことはできるだろう.ロシアや中国がNATOや日本を侵略する可能性は低い.
しかし,ロシアや中国の浸食に対する脆弱性が増すことで,そのコストは増すだろう.アメリカは西側の「共通の価値」を支持する点で,同盟諸国からの批判を許し,健全なリベラル民主主義として受け入れた.中国が支配する世界では,こうしたことはありえない.
パックス・アメリカーナの終わりは,軍事的侵略や世界戦争でないかもしれないが,アメリカ帝国を懐かしく思うような苦しいものであるだろう.
● ユニバーサル・ベーシックインカム
Bloomberg 2017年6月4日
Universal Basic Income Is Neither
Universal Nor Basic
By
Yuval Noah Harari
この先、機械やロボットが進化して、何千万、何億人もの仕事が消滅するだろう。経済や貿易のネットワークに大混乱が生じる。産業革命以来、形成された都市労働者階級が、20世紀の社会・政治史の大部分を決定する諸問題を生んできた。同様に、人工知能革命は、新しい「非労働階級」を生み出し、彼らの希望と不安が21世紀の歴史を決定するだろう。
前例のない技術変化、経済混乱に対して、われわれは全く新しいモデルを必要としている。ますます注目を集めている1つのモデルが、ユニバーサル・ベーシックインカムUBIである。それは、制度(おそらく政府)によって、人工知能やロボットを管理する億万長者と企業に課税し、その財源ですべての市民に基本的必要を満たす給付が行われる。
それが必要だと、すべての者が認めているわけではない。19世紀の機械化も大規模な失業を生まなかった。20世紀にトラクターやコンピューターで失われた仕事は、新しい職場に代わった。しかし、これこそ以前と違う理由にもなる。学習する機械は、人間納労働者を本当に駆逐するかもしれない。今やAIの認識能力は人間をはるかに凌駕しているからだ。
しかし、UBIの解法はいくつかの問題を生じる。それが「ユニバーサル」や「ベーシック」の意味を明確に定義できないことだ。
人々がUBIを考えるとき、それを国家規模であると前提している。これまで試みられたUBIはすべて、国家もしくは都市の単位であった。問題は、AIやロボット化の犠牲となる労働者が、フィンランドやアムステルダム、アメリカの国民ではないかもしれないことだ。グローバリゼーションにより、ある国の人々は他国の労働者に大きく依存している。何百万人ものバングラデシュの労働者が、アメリカの消費者に売るシャツを生産することで生活している。
AI、ロボット、3Dプリンターは、安価な労働者への需要を大きく減らすだろう。彼らはあなたの3DプリンターやGoogleクラウドのAIについて不満を持つ。南アジアの労働者たちの得ていた所得は、カリフォルニアのハイテク大企業に流れ込み、発展途上諸国に激しい社会的緊張状態をもたらす。アメリカの有権者は、Amazonや(Googleの)Alphabetに課税して、ペンシルベニアの炭坑夫やニューヨークのタクシードライバーが仕事を失ったことに給付するかもしれない。しかし、バングラデシュの膨大な失業者たちにも送るだろうか?
さらに、「ベーシック」な必要を、明確に定義できない。純粋に生物学的な視点で、1日2500カロリーの食料を定義しても、その貧困水準を超えて、文化や歴史が追加的な「ベーシック」を決める。もし2050年に世界政府がGoogle,
Amazon, Baidu Inc. and Tencent Holdings Ltd.に課税して、全地球で人類にUBIを給付するなら、ダッカからデトロイトまで、「ベーシック」を定義できるだろうか?
教育や医療を「ベーシック」に含めると、それ以外の必要物を求める人々は、さらに苛烈な競争と政治闘争を展開するだろう。結果的に、Tencentの経営者やGoogleの株主は多くの奢侈財を得て、UBIに依存する貧困層はさらに多くの奢侈財から切り離され、制約される。UBIシステムは操作されている、詐欺だ、という非難が強まるかもしれない。
人々は、以前の世代から改善したことを喜ぶより、同世代の富裕層と比較して、強い不満を持つ。現代の通信技術が比較を容易にし、不満を増幅するだろう。
UBIは、客観的な貧困状態を平均的に解消するかもしれないが、主観的な満足を高めることには失敗するだろう。
● 朝鮮戦争の和平条約締結
NYT JUNE 8, 2017
End the Korean War, Finally
By JAMES DOBBINS and
JEFFREY HORNUNG
64年前、1950年から53年まで、36000人の米兵を殺した朝鮮戦争は、停戦合意によって停止した。しかし、平和条約は結ばれていない。この戦争は正式には終わっていないのだ。
北朝鮮の指導者たちは、長期にわたって、戦争を正式に終結させることを重視してきた。休戦では、朝鮮半島を永久に分断することを含む、多くの問題が未解決だ。
北朝鮮は、停戦ではなく、明確な平和を宣言するよう求め、彼らが攻撃されないこと、そして、アメリカ、韓国、その他の世界が彼らを正式な主権国家として、正当な権力を承認されることを求めてきた。
これまでのアメリカ大統領は、和平交渉に多くの前提条件を付けた。非核化やミサイル実験の停止、などだ。しかし、北朝鮮の指導者、金正恩は、自分がイラクのサダム・フセインやリビアのカダフィと同じ運命をたどらない、と確信しない限り、核兵器やミサイル開発計画を諦めないだろう。
北朝鮮指導部を、どのように説得できるだろうか? 冷戦時代にも、アメリカ、その同盟関係にある西ドイツは、同じ問題に直面した。
1974年、アメリカはドイツ民主共和国を承認し、東ベルリンに大使館を開いた。他方で、ドイツ連邦共和国(西ドイツ)を歴史的なドイツの唯一正統な政府、将来の統一ドイツの政府として、承認していた。それは16年後に実現したのだ。同様の創造的な発想が、朝鮮半島の平和条約にも求められる。
北朝鮮の核危機に対する解決に向けて、平和条約の締結は必要な要素となるだろう。その場合、合意に参加する政府はどこか? 合意の検証と強制力をどのように確保するか?
交渉はナイーブな姿勢で行わない。アメリカは地域の安全保障と同盟関係に関する疑念を生じるような、軍事演習の停止や行動を取ってはならない。すべての段階で、北朝鮮が約束を守らないことに注意しなければならない。
********************************
The Economist May 27th 2017
Deep trouble
Ocean fishing: All the fish in the sea
Charlemagne: The terrible trio
Bagehot: The two Thereasas
Stockpicking: Quants and the quirks
(コメント) 地球の表面はその4部の3が海である.その膨大な水をもってしても,人類の行為は温暖化や魚,サンゴの死滅という恐ろしい結果を生じている,と記事は警告しています.
西欧の指導者たちが,トランプ,プーチン,エルドアンによって政治的な孤立を味わっている,という記事,そして,メイ首相の指導者としての能力不足と狭隘さが問われています.
******************************
IPEの想像力 6/12/2017
大阪の産業遺産に指定されている建物をめぐる散歩道を歩くため、私は妻と電車に乗っていました。ある駅で乗り換えのために待っているとき、大学の宣伝を観ました。こんな大学もあるね、という感じで宣伝文句を眺めていたのです。
大学は学生を集めるのにますます苦労するのでしょう。ブランドに頼る大学と、就職の実績を示す大学に絞られていくのかもしれません。
熱心に学ぶことこそが素晴らしい。学ぶことの原点は、技術、資格、探求心・知識欲・美意識・正義感・・・。
****
中学を卒業したら、自分が就きたい職業をめざして、専門学校に進学するのがよいでしょう。18で働き始め、20くらいで結婚する。早く父親や母親になることで、人は大人になる。
そして、仕事を経験する中で、もっと高度な知識が得たいと強く思ったら、大学や大学院に進学する。経済学や政治学は、公人・政治家になるための学問です。そして、政治家が何を考えているのか、市民が理解するために学ぶものです。
政治家になろうと思う人たちが、あるいは、政治過程を正しく判断するために知識を得ようとする者が、大学で学びます。
だから教師は、もっとフィールドワークを中心に、その知識を鍛える。政府、企業、団体、政治家、市民グループなどから依頼を受け、あるいは、学生たちとともに、自分から多くの社会調査と報告書を出すべきです。
若者たちが時間を浪費することは、その国の成長を大きく損なっています。大学には、学ぶ理由、学ぶ意欲が要るのです。もっと意味のある時間、もっと理想主義の育つ場所に、政府は投資しなければなりません。
****
夕食のとき、質問してほしい、と妻に頼みました。・・・地方の議会が消滅? 従軍慰安婦について抗議する人たちを納得させる? マクロンは何をするのか?
しかし、いちばん注目したのは新聞広告でした。「安心の介護・医療支援体制」、「都市型立地」、「充実の共用スペース」、という介護付有料老人ホームの広告です。
その費用に驚嘆しました。1人で入居する場合、一時金が2950万円〜1億6000万円。健康管理費が500万円。さらに、毎月の費用もかかります。管理費が11万4000円。食費6万9000円。・・・こんなにかかるのでしょうか? 老人になっても、このような富裕なコミュニティを金で買う。ゲーティッド・シティに暮らして、社会の「貧困」「不安」を遮断する。
歳を取ると、生活するのに、これほどの貯蓄が必要なのだ、と言われたようで、唖然としました。こんなに貯蓄がない人はどうすればよいのでしょうか? 毎月の年金額ではなく、楽しく、質素に暮らせるということを、政治家たちは示すべきだ、と思います。
都市に高層ビルを建てる必要はありません。マンション内にプール、フィットネスルーム、大浴場、アトリエ、カラオケルームは要りません。市民プール、小学校(校庭の利用や趣味の教室)、医院、銭湯、カラオケスナックが近所にあって、低料金で利用できればよいのです。
離島や山村、過疎地域の駅を中心に、老人たちのために住宅をリフォームし、何軒もホームが集まる再生地区を計画するとよいでしょう。すべて、老人たちのベーシックインカムから基金を設け、実現させます。
地方行政、建築家、社会福祉関係者、もちろん、老人たちが集まって、各地の町を設計します。そして、ネットで募集・応募し、情報交換して、移住します。
若者から老人まで、人生の時間と空間を再設計することで、もっと楽しく生きることです。
******************************