(前半から続く)
● トランプ外交
FT May 22, 2017
Donald Trump’s unpredictability is
destabilising the world
Gideon
Rachman
トランプが自慢する予測不能な行動は、アメリカ外交を大きく損なっている。NATO、EU、同盟諸国はアメリカを頼りにならないと考えるだろう。
トランプ外交の不安定さは、大国間で、ロシアや中国を有利にし、彼らの自信を強めている。
YaleGlobal, Tuesday, May 23, 2017
Globalization Without Uncle Sam:
America First May Mean America Out
Hassan
Siddiq
第2次世界大戦後、グローバリゼーションはアメリカ化でもあった。トランプが「アメリカ・ファースト」を主張し、グローバリゼーションから交代する姿勢を明確にしても、グローバリゼーションは止まらない。むしろ、新興諸国が相互の取引を拡大し、さまざまな分野でアメリカが取り残されるだろう。それは「アメリカ・アローン」である。
● ドイツと軍隊の統合化
FP MAY 22, 2017
Germany Is Quietly Building a
European Army Under Its Command
BY
ELISABETH BRAW
ドイツは,チェコとルーマニアから部隊を受け入れ,ヨーロッパ軍隊の統合化に進もうとしている.
FT May 23, 2017
Give Emmanuel Macron time to develop
eurozone reforms
Clemens
Fuest
永久的な財政移転をともなう共通予算を作るより、深刻な経済危機にある国への融資だけでなく、財政移転を行う、基金を設けるべきだ。
VOX 23 May 2017
Social Europe revisited
Samuel
Bentolila, Juan Dolado
Project Syndicate MAY 23, 2017
How Macron Can Unite Europe
HANS-WERNER
SINN
財政統合には政治統合が必要であり、政治統合には軍の統合化が求められる。
NYT MAY 24, 2017
Macron’s Disastrous Eurozone Plan
By
JOCHEN BITTNER
● 開放市場
Project Syndicate MAY 22, 2017
How to Be an Open Economy
MICHAEL
SPENCE
● アメリカの停滞
NYT MAY 22, 2017
The Unfreeing of American Workers
Paul
Krugman
自由を好む国民として有名だが、アメリカの労働者たちは保険契約を通じて、ますます企業の奴隷となる道を進んでいる。かつてロシアの濃度たちが地主に支配されたように。
Project Syndicate MAY 23, 2017
Understanding Today’s Stagnation
ROBERT
J. SHILLER
2007-2009年の「大不況」から後、世界の主要な中央銀行は短期金利をゼロ近辺まで引き下げてきた。しかも、記録的な水準まで莫大な債券購入を行ってきた。
なぜ経済の生命維持装置が必要だったのか? それはなぜこれほど長く続くのか?
過度の単純化を超えて、1.長期停滞、2.ブラック・スワンへの警戒心、3.技術革新が雇用を奪うことへの不安、という説明がなされている。
人々は破局を恐れている。ゼロ金利だけでなく、投資家や消費者の心理的不安を解消するニュースが必要だ。
NYT MAY 24, 2017
A Road Trip Through Rusting and
Rising America
Thomas
L. Friedman
● 金融システム
FT May 23, 2017
Five suggestions for avoiding another
banking collapse
Larry
Summers blog
FT May 25, 2017
A holistic approach to
future-proofing the financial system
Nobuchika
Mori
● NATOとトランプ
Project Syndicate MAY 23, 2017
What NATO Needs from Trump
MICHAEL
MANDELBAUM
ドナルド・トランプは最初の外遊でブリュッセルに行き、NATOの指導者たちと会う。アメリカの同盟諸国がトランプに望むことは2つだ。彼がヨーロッパ情勢の基本的事実を理解していること。彼がNATOに必要な指導力を行使する意志を持っていること。
現在のヨーロッパが国際関係を考えるとき、ロシアのもたらす脅威がもっとも重要である。プーチンの専制国家体制は、旧ソ連諸国のグルジアに対して軍を送り、ウクライナを侵略・占領し、NATO加盟諸国でもあるバルト3国Estonia, Latvia, and Lithuaniaに妨害・干渉した。冷戦期と同様、ヨーロッパ諸国は東からの脅威に対してNATOによる防衛を必要としている。
トランプは、選挙期間中の暴言を訂正したが、大統領執務室でロシア外相や駐アメリカ大使と会談し、ヨーロッパ諸国を不安にした。トランプは、プーチンがアメリカやヨーロッパの友人ではなく、ロシアの影響力を拡大するためにNATOを弱体化したがっている、ということを理解していない。
オバマ大統領は、伝統的な同盟諸国Egypt, Israel, and Saudi Arabiaから距離を措いて、彼らの敵であるイランとの関係を改善した。それはイランの行動をより友好的で、抑制されたものにする、と説明された。しかし、そうはならなかった。ロシアも同じである。
NATOはトランプに指導力を求めている。それはアメリカ大統領が歴史的に同盟関係で示してきたものだ。ロシアの脅威に対しては、NATOの軍事力を強化して、クレムリンがさらに攻勢を強める誘惑を断つ、ということだ。
トランプが指摘したように、NATO諸国は軍備強化の公平な分担責任を果たしてこなかった。そして、彼らはアメリカ政府が求めるような負担をしそうにない。冷戦の時期でもそうだった。大統領は、公的には丁重に、私的には断固として要請し、アメリカ自身がより大きな負担を引き受けたのだ。
ヨーロッパ諸国が共通の安全保障を実現するのは、かつて以上に、今はむつかしくなっている。東の加盟諸国はロシアの脅威をより強く受けているが、西の加盟諸国は、天然ガスの供給をロシアに頼るドイツのように、その意識が薄い。さらに、ポピュリストの運動が広がり、ロシアに対する防衛は関心になく、プーチン体制を称賛する者もいる。
冷戦期と同様に、アメリカだけがこれらの分裂状態を克服して、全体としての同盟の利益を推進し、大西洋全体の防衛政策を実現することができる。ヨーロッパの政府関係者たちは、たとえそうはっきりと言わなくても、アメリカ抜きにNATOが機能しないことを知っている。トランプは今回の会談でそれを理解するだろう。アメリカの指導、方針、支援が必要なのだ。
トランプに必要なものは、周りを混乱させる演説や、まして衝動的なTweetなどではない。NATOを強化するという目標を示し、団結させ、新しい脅威に対処する能力を高めること、ヨーロッパの指導者たちとの関係を深め、丸め込み、おだて上げ、ときには買収して、彼らの必要なことをさせることだ。
FP MAY 23, 2017
The Message NATO Needs to Hear From
Trump
BY
DOUGLAS LUTE
FT May 24, 2017
The value of Nato goes beyond
defence spending
Ivo
Daalder
SPIEGEL ONLINE 05/24/2017
Deterrence or Détente
How Can NATO Best Address the
Russian Threat?
By
Konstantin von Hammerstein
FP MAY 24, 2017
NATO Prepares to Be Disappointed by
the Cheshire Cat President
BY
JULIE SMITH, JIM TOWNSEND
NYT MAY 25, 2017
Is NATO Getting Too Big to Succeed?
By
CHARLES A. KUPCHAN
ロシアとの関係改善はトランプが約束した重要な外交方針だった。
アメリカとヨーロッパの同盟諸国がNATOへの参加を旧ソ連圏の諸国にも認めたことは、ロシアから見て、その伝統的な影響圏を奪う行為であった。アメリカが、もしカナダやメキシコにロシアの軍事基地を置く条約が結ばれると知れば、同様に強い不安を感じるだろう。
NATO拡大はバルカン半島の旧ユーゴ諸国を限界として明確に終わりにするべきだ。
● ヨーロッパ政治
Bloomberg 2017年5月22日
Why Center-Left Parties Choose to Go
Radical
By
Leonid Bershidsky
Project Syndicate MAY 24, 2017
Confronting Europe’s Illiberals
GUY
VERHOFSTADT
● マンチェスターのテロ事件
The Guardian, Tuesday 23 May 2017
The Guardian view on reacting to
terror: be Manchester
Editorial
FT May 24, 2017
Terror’s wicked purpose will not
prevail in Britain
NYT MAY 23, 2017
Manchester’s Resilience
By
DENISE EVANS
NYT MAY 23, 2017
What an Attack at an Ariana Grande
Show Means for Teen Girls
By
NATALIE SHUTLER
The Guardian, Wednesday 24 May 2017
Enough of Theresa May’s outrage. We
need a tough response to terror
Simon
Jenkins
テロを、自由でオープンな社会において、完全に防ぐことはできない。首相がなすべきことは、テロの計画レベルを引き上げ、次のテロが迫っている、と国民の恐怖を刺激することではない。
指導者の役割は、大衆の恐怖をやわらげることであり、高めることではない。事件の影響を最小限にする。9・11テロの後、ジュリアーニRudy Giuliani市長の示した対応が優れた手本である。彼はニューヨーク市民に冷静になるように求め、「ピザを買い、子供と公園に行き、演劇を観よう」と呼びかけた。
The Guardian, Wednesday 24 May 2017
Troops on the streets create
unsettling terrain for our democracy
Jonathan
Freedland
FT May 25, 2017
The path from Middle East
sectarianism to European terror
Philip
Stephens
リヤドとマンチェスターに直線的な関係はない。サウジアラビアの首都で、アメリカのトランプ大統領がアラブの指導者たちに演説したが、それはイングランド北部のコンサートホールでテロが行われたことと関係ない。
それにもかかわらず、私たちはその同時性に不快を感じる。襲撃者だけが爆弾テロの責任を負う。しかしまた、イスラム過激派が西側政府の政策と無関係である、というふりをするのは間違いだ。
われわれは壁によって世界を遮断することはできない。若者の心がイデオロギーに冒され、デジタル情報で殺人技術を学ぶことも、阻止できない。
リヤドで、トランプはサウジアラビアと湾岸諸国に対して、自国におけるテロとの戦いを強化するように求めた。それはおなじみの偽善である。大統領の顧問たちは、外交のリアリズム、と呼ぶだろうが。サウジアラビアは過激思想、スンニ派のワッハーブ主義を輸出し、聖戦主義者の宗教的な正当化を助けている。9・11のテロ実行犯のほとんどがサウジ市民だった。
トランプはそんなことを言及しないし、人権問題も扱わない。彼はアメリカの武器を1100億ドルも売って、サウジからのアメリカ向け投資も引き寄せた。「ジョブ、ジョブ、ジョブ」である。この政権は他国の国内政治に干渉しない、と言う。
その代わりに、トランプはアメリカを、イランに対抗するスンニ派同盟に参加させた。イランとの核合意を破棄する、という約束は実現していないが、トランプは、かつてジョージ・W・ブッシュとトニー・ブレアがサダム・フセインを追放し、中東を民主化しようとした位置に戻ったようだ。
バラク・オバマは中東の平和を実現するために、サウジアラビアとイランのバランス、スンニ派とシーア派とのバランスが必要だ、と考えた。イランとの核合意を成立させ、テヘランを国際社会に戻すことを目指した。他方、トランプは、宗派対立の火に油を注ぐことを好む。確かにイランは、シリア内戦でも、他のスンニ派諸国でも、シーア派勢力を支援し、不安定化に関わっている。しかし、ルーハニ大統領の再選が示すように、ある種の民主的な体制に近づいてきた。
アメリカと西側は、中東秩序の不安定性を「解決」することはできない、と学んだ。ブッシュとブレアは、クルーズ・ミサイルで民主主義を移植できる、と信じたようだが、イラクとシリアの暴力状態がその代償だ。しかし、アラブの独裁政権を支援することも成功しないだろう。抑圧体制こそ、イスラム過激派の育つ温床である。
マンチェスターのテロに戻って、われわれが決意すべきは、侵略者たちからリベラルな民主的諸価値を守る、ということだ。宗派争いに関わることは、過激主義の克服を遅らせるだけだろう。
FT May 25, 2017
Accidental encounters in a
Manchester on edge
Roula
Khalaf
NYT MAY 24, 2017
A Terrorist’s Teenage Target
By
TANYA WEIZ
NYT MAY 24, 2017
The Jihadi State of Mind
Kenan
Malik
● トランプの予算案
FT May 24, 2017
Trump’s implausible plan for the US
budget
FT May 23, 2017
A warning on Trump’s budget
Larry
Summers blog
Bloomberg 2017年5月24日
Trump's Budget Is a Waste of
Everybody's Time
By
The Editors
FT May 25, 2017
Donald Trump’s epic betrayal of
America’s middle class
Edward
Luce
ドナルド・トランプがヴァチカンへ向かうとき、アメリカの予算案が発表された。法皇だけが、トランプの告白を聴くだろう。それは予算案と同じくらいショッキングなはずだ。法王フランシスは“social capitalism”の主唱者であり、それは社会の成員全てを1人1人重視する。トランプの予算案では、最富裕層に減税の恵みを与えるが、最貧層を支援することは止める。予算は数字の魔術によって均衡する。これほど疑わしい計算で示された予算案はめったにない。
これはトランプを支持したアメリカ中産階級を裏切るものだ。フード・スタンプ、高等教育支援などの予算は削られる。低賃金雇用を維持する補助金も大幅削減。研究、職業訓練、なども削減。唯一増えるのは防衛費と、メキシコ国境の壁の建設費だ。
これは選挙に向かう自殺行為であり、共和党員の支持も得られないだろう。
トランプは、アメリカの経済目標を歪める。人々に投資するより、ギャツビー級の富裕層に有利な分配を行い、予算の良識を棄てて魔術に向かう。何より、連邦政府からアメリカの挑戦に応じる手段を奪うものだ。
アメリカ・モデルがソビエト連邦に勝利してわずか4半世紀しか経たない。その勝利は、アメリカの中産階級に投資した混合経済がもたらしたのだ。ソ連の脅威が啓蒙された資本主義の最善の性格を引き出した。
しかし、不平等化を進めた20年を経て、アメリカは民主的な寛容さの限界にまで達してしまった。トランプは、今、その限界を破ろうとしている。
NYT MAY 23, 2017
Trump’s Budget Doesn’t Make Sense
By
MAYA MACGUINEAS
● メルケルのECB批判
Bloomberg 2017年5月23日
Merkel's Weak-Euro Complaint Has Two
Goals
By
Leonid Bershidsky
メルケルはECBの政策について反対することは避けてきた。なぜメルケルはECBを批判したのか?
● 台湾の核武装計画
FT May 24, 2017
Asia opts for a replay of cold war
nuclear deterrence
Jamil
Anderlini
台湾は、中国が必要なら武力統一すると警告する中で、極秘の核武装計画を進めて、北朝鮮のように核武装することを考えるだろう。かつて、Chang Hsien Yiがアメリカの諜報員となって、核武装計画の情報を漏らし、台湾はそれを阻止された。
アメリカと同盟諸国は、北朝鮮の核兵器と金正恩を取り除くために、戦争を行う意志があるのか? あるいは、そうでないとしたら、アジアの同盟国を守るために、アメリカが北朝鮮から核攻撃されるリスクを冒すのか? と問わねばならない。
シンガポールの外交官Bilahari Kausikanは、その答えが間違いなく “No” であるという。アメリカはアジアの同盟諸国を守らない。日本や韓国は、いますぐ、独自に核武装しなければならないだろう。日本は、非常に短期間で核武装する能力を持っており、韓国もそれに近い。
問題は、その場合、この地域の安全保障と安定性だ。冷戦期に広く支持された抑止論は、相互確証破壊、であった。北東アジアも同じである。しかも、それは、ワシントン、東京、ソウルにとって、現在の秩序を変えない、というメリットがある。中国による東アジアの秩序再編を阻むのだ。
Kausikanは、北朝鮮が核兵器を放棄することはないだろう、と考える。そして、ソビエト連邦と同様、核武装したままピョンヤンの体制は、いつか、崩壊する。それがすぐに起きないなら、地域の核軍拡競争は不可避である。
しかし、地域の核武装が始まったら、台湾だけが核武装しないとは考えられない。そのとき、北京は先制的な軍事力で統一するのか?
1人のスパイが核兵器を阻止できた時代は遠い過去だ。
Project Syndicate MAY 24, 2017
Maintaining Growth in a Fast-Aging
Asia
CHANGYONG
RHEE
Project Syndicate MAY 24, 2017
China’s Imperial Overreach
BRAHMA
CHELLANEY
一帯一路は、21世紀の東インド会社である。それは歴史家Paul Kennedyが「帝国の過剰拡大」と呼んだ問題を生じるだろう。
● チェンバリン
FT May 24, 2017
Joseph Chamberlain sets the Tories a
bad example
Nicholas
Macpherson
● アメリカの指導力
NYT MAY 24, 2017
Colin Powell: American Leadership —
We Can’t Do It for Free
By
COLIN POWELL
● モディ政権
Bloomberg 2017年5月24日
Modi's Idea of India
By
Pankaj Mishra
その政策の失敗にもかかわらず、モディへの支持は衰えない。モディは、ネルーの描いたインドの理想ではなく、東アジアの開発独裁国家を目指している。しかし、東アジアのような同質的な国民を持たないインドでは、彼の権威主義的独裁とヒンズー至上主義政党は、余りにも多くのマイノリティーを弾圧することになる。
● トルコ
Bloomberg 2017年5月24日
Lessons From Turkey's Slide Toward
Dictatorship
By
Noah Feldman
● ベーシックインカム
Bloomberg 2017年5月25日
Universal Basic Income Could Work in
Italy
By
Leonid Bershidsky
多くの国でベーシックインカムへの関心が高まる中、OECDがこの問題を取り上げた。
● アフガニスタン戦争
FP MAY 25, 2017
Here’s How Trump Can Win America’s
Longest War
BY
PAUL D. MILLER
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The Economist May 13th 2017
Courting troubles
Governing France: Macron’s mission
Trumponomics: Home-cooked policies
The Trump trilemma: You can’t always get what you want
Reassessing global trade: Make his day
President Macron: Marchons, marchons!
(コメント) トランプにインタビューした記事は,その経済政策や思想が,単なる思い付きで,全く経済学の基本的真実も理解していない,と断定します.
その基本は,成長率を上げて(製造業の)雇用を増やす,ということです.どうやって上げるか? それが貿易赤字を解消して,アメリカで生産することなのです.経済ナショナリズムによる,保護主義の採用と海外投資への処罰です.
さらに,富裕層への大減税と(ウォール街のための)規制緩和が加わります.
それは,内的に矛盾しており,長期的にアメリカ経済を悪化させる,と評価します.
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IPEの想像力 5/29/2017
日曜日の朝、「がっちりマンデー」、「ルソンの壺」を観ました。
食堂ビジネスは拡大しているようです。銀行や建設など、大企業と違って、経営者たちが若い。それが印象的です。
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揚げ物のお店で,Dr. Fryという賢いツールが紹介されています。揚げ油に振動を起こすことで,高度な揚げ物が,すぐに,だれでも揚げられるようになる・・・? 水気の多い大根のような材料も揚げられる.いろいろな異なる食材を一緒に揚げられる.しかも,薄い衣で,カリッと,おいしく.
どんどん一緒に揚げてよいから,たった一人が揚げて,次々に注文をさばけるようです.お客さんの回転が速い.
職人の不足も問題でした.揚げ物は,安価な天丼屋さんを例外として,多くはなかなか高価で,高級店と職人が上客を囲い込んでいる状態です.しかし,このAIが導入されれば,回転寿司と同じように,大きく業界が再編されるかもしれません.
以前紹介された,英国風のパブを広めるチェーン店や,お菓子作りのためにこだわりの容器や飾りを1点からでもネット販売するコッタも,面白かったです.
年々売り上げを伸ばすビジネスには,なるほど,という理由があるのだな,と感心します.
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「ルソンの壺」では,朝からでも行列のできるステーキ屋さんを紹介していました。
広告費よりも話題性を強くしてSNSでお客さんの情報発信を刺激する.大いに行列してもらう.新店舗開設には29円でステーキを食べさせる.
ステーキ肉をあらかじめカットしておくことで,回転率を上げる.塩コショウだけで調理し,タレや薬味は,待っているお客さんが自分のテーブルで作る.ハンバーグなど,関連業種と同時に経営して,肉を大量に仕入れ,部材を活用する.ラーメンの替え玉を真似た,替え肉を取り入れて,皆が満腹・満足する.
これらの工夫は,いずれも,特別なものではない,と私は思いました.他店にもできます.逆に,革新しない他の店舗からお客をもぎ取ってくる,古典的な市場競争だと思います.だからこそ,若い,意欲的な経営者が必要なのです.
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実家の近くで私が行くスーパーは3軒あります。近い順に、KとAとMです。Kは小さな店舗に,実に様々な商品を並べ,価格も抑えています.狭いほうが,必要なものを見つけて,さっさと買える,と思います.曜日によって特売の商品が決まっています.他方,Mは店舗が広く,価格競争を掲げて,一定の客層を確実につかんでいます.
これらの中ではAが苦戦しているように見えます。ちょっと高級志向になっているのです.変わったハーブやきれいな展示がそれを示します.店舗は広く、魚売り場の調理スタッフ、パン売り場のスタッフ、レジや駐輪場の警備員、など、買い物客の数よりも多くいて,人件費を超える利益を確保できるのだろうか,と心配になります。価格競争や品揃えでは、KとMに差をつけることがむつかしいのです.
私が経営者だったら,と考えました.
店舗面積を半分にします.そして半分を1階と2階に増築し、エクササイズやヨガの講習会場、サイクリング、ランニング、ウォーキング、旅行の情報センターにしてはどうか。今や小売店はインターネットによって市場を失いつつある時代です.ライフ・スタイルと組み合わせて,商品やサービスを売ることが,小売業の優位を形成するのではないでしょうか?
2階には、コーヒー・紅茶とケーキのカウンターもあるとよいでしょう。もちろん、コインシャワーやロッカーと更衣室も備えます。ここが住民たちの交流拠点になるでしょう.
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金融業界の高額報酬,大企業や資産家たちへの優遇策,他方で,旧業態の保護や補助金,さまざまな支援,インターネットを介した新しい市場支配,企業買収,など.イギリスの労働党や保守党が,こぞって自由市場に反対するマニフェストを出したのは当然です.
だからこそ,市場のダイナミズムを回復してほしいです.巨大な産業組織を目指すよりも,若い経営者が次々に業界や業態を革新し,小さな単位が連携したり,合同したり,分裂できるような組織化を刺激するほうが,働くことは厳しく,かつ,意欲的な挑戦となるでしょう.
就活や失業を苦にせず,いつでも新しい職場があり,自ら企業を組織し,経済を変革する者たちが競い合う,活気ある時代になってほしいです.
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