IPEの果樹園2017
今週のReview
5/15-20
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金融政策と賃金政策 ・・・安倍晋三の改憲宣言 ・・・マクロンの勝利 ・・・メイ首相vs労働党 ・・・ドイツの経常黒字 ・・・ベーシックインカム論争 ・・・バルカン諸国に必要な帝国 ・・・アメリカ経済の復活 ・・・地政学的危機の株高 ・・・人道外交と援助 ・・・韓国の新大統領 ・・・ロシアの戦勝記念日 ・・・コニー長官の解任
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 金融政策と賃金政策
The Guardian, Friday 5 May 2017
The Great Recession hurt millions.
Now, Republicans want to risk a repeat
Keith
Ellison
2008年10月に,アメリカのハンク・ポールソン財務長官が議会に述べたことを,私は忘れない.もし数千億ドルがこの週末に用意できなければ,来週,経済は崩壊している.彼はそう言ったのだ.2度と見たくないが,われわれは再現しつつある.
政府は,金融危機の反省によって生まれたthe Dodd-Frank Wall
Street Reform and Consumer Protection Actは,詐欺的な金融商品からの消費者保護,株主の権利強化,金融監督の強化,これらによってウォール街をチェックするものだった.これを破棄して,政府はthe Financial Choice Actに換えようとしている.
FT May 5, 2017
Private equity and Donald Trump’s
quest for jobs
Gillian
Tett
アメリカでもっとも多くの雇用をもたらしている民間部門は何か? もし有権者や政治家に尋ねたら,彼らはWalmart, say, General Electric, IBM or Citigroupのような有名な企業名を挙げるだろう.しかし,ミルケンMichael Milkenによれば,そうではない.彼は,かつてジャンクボンドの多さまであったが今では社会活動家であるという.民間部門の雇用数トップ10で,確かにウォルマートはトップである.しかし,続く8社は,プライベートエクイティ・グループである.
ミルケンはその名を特定していないが,想像はつく.たとえばCarlyleとKKRだ.彼らがポートフォリオに入れた企業の総雇用者数は,それぞれ約70万人だ.Apolloの雇用者数は30万人であり,それと少ししか変わらない規模のWarburg Pincus, General Atlantic and TPGも同じだろう.プライベートエクイティ企業のロビー団体は,アメリカ国内で1100万人を雇用している,という.(しかし,データは明かされていない.)
この数字は驚異的なものだ.政治家や有権者が「資本主義」というとき,株式市場や収益の報告書,ふつうの人々が売り買いする企業のことをイメージしている.しかし,これは時代遅れなのだ.アメリカ資本主義というのは,ますます多くの上場企業がプライベートエクイティに買収されるところである.ファンドに人々の資金が流れ込み,彼らが株式市場を支配する.政治やメディアは,市場経済のイメージを変えなければならない.
そして重要な問題がある.有権者や政治家は,プライベートエクイティ・グループの活動を明るみに出し,公共政策の議論にしなければならないだろう,ということだ.これまで彼らはそれを拒んできた.その秘密主義の文化,効率性と利潤に焦点を当てる無慈悲さが,その理由であろう.彼らは社会的な結束を議論するより,雇用を削減することで名をはせてきた.
しかし,アメリカの論調は変化した.ホワイトハウスのトランプ大統領は雇用の創出を目標に掲げている.すでに多くの企業がやり玉に挙がった.今週も,インドのIT企業,Infosysがアメリカで1万人を雇用すると発表した.ウォルマート,IBM,ジーメンス,ダウ・ケミカル,といった企業が新しい雇用を促進している.
雇用の面でも巨人となっているプライベートエクイティがこの点では沈黙している.BlackstoneのSchwarzmanは,大統領のビジネス会議に参加しているが,ウォルマートのように雇用増を宣伝することはない.しかし,もはや隠れることはできない.
雇用創出,不平等,社会的団結,こうした論争でも,プライベートエクイティの文化を俎上に上げるべきだ.ミルケンは,そのリストをトランプに送って,巨人たちが雇用に貢献するように,得意のTwitterで攻撃してはどうか.
FT May 8, 2017
Less is more when it comes to
Federal Reserve policy
Lawrence
Summers
労働市場には余裕がある。拙速な金融引き締めは不況を招く。
NYT MAY 8, 2017
Republicans Party Like It’s 1984
Paul
Krugman
政府は愚かな間違いを重ねてきたが、トランプケアほどひどい法案はない。
Project Syndicate MAY 10, 2017
The Wages of Wage Fear
BILL
EMMOTT
全てが失敗したのであれば、以前は考えられないことも試すべきだ。多くの西側諸国、明らかに、アメリカ、日本、ドイツ、そして、恐らくはイギリスも、さらにはもうすぐユーロ圏の諸国で、賃金交渉、特に、低収入の階層の賃金引き上げに政府が直接介入するべきだ。
日本は15年間も低成長に苦しみ、家計(特に低所得層)の需要が弱く、不平等や貧困が悪化している。同様の状況が、アメリカ、イギリスにも広がっている。それがトランプやBrexitに勝利をもたらした条件であった。
明確な賃金上昇がなければ、ポピュリズムの影響は広がり続け、ほとんどの西側経済が低成長に陥るだろう。所得や資産の不平等は政治的な発言力にも影響し、それを増幅する。国境封鎖や保護主義のような、近視眼的解決策への誘惑は避けられない。
政府が直接に低所得層の賃金を引き上げよ、などと主張すれば、お前は気が狂ったのか、というコメントがすぐに出る。・・・最低賃金の引き上げは失業を増やす。ロボットの普及がさらに雇用を減らす。市場による解決策を信頼しないのか? もちろん、そうした反対論は知っている。
しかし、正しい政策は状況に応じて変わる。競合する利益集団間の選択を反映する必要がある。それが政治だ。「取り残された者たち」の利益を反映しなければならない。
政府による賃金決定への介入を否定する意見は、1970年代に、賃金と物価を管理する政策がインフレを高めた経験に由来する。しかしまた、現代のビジネス界が行うロビー活動が、企業の競争力は低賃金に依存する、と主張することも影響している。政府も、多くの公務員を低賃金で雇用している。
現状を打開する勇気を出すときだ。財政政策は巨額の債務によって制約され、再分配政策にも問題が多い。金融政策は、量的緩和の末に中央銀行の公的債務保有額が膨張し、操作の余地を失った。それゆえ、賃金への介入は、事実上、残された唯一の手段である。最低賃金を引き上げても失業が増えるような条件はなく、完全雇用状態に近い。
日本、アメリカ、ドイツ、イギリスにとって、失業者が増えることより、賃金の低迷こそがリスクだ。それは家計の需要を停滞させ、それゆえ企業は投資を抑えている。アメリカの連邦最低賃金は時給7.25ドルであるが、1968年のピークに比べて、実質で3分の1も低い。日本の最低賃金、時給823円も、わずかに高いだけだ。
1960年代、日本は「所得倍増」計画を示して消費経済を発展させた。今、必要とされるのは、「最低賃金倍増」計画だ。数年をかけて実施し、企業に調整の時間を与える。もし富裕層からの支援と、「取り残された」有権者たちの支持を得るなら、その指導者は政治的な勝利を得るだろう。
トランプ大統領なら関心を持つはずだ。
● 安倍晋三の改憲宣言
FT May 5, 2017
Shinzo Abe’s wager on weaning Japan
off pacifism
Leo
Lewis
1964年,日本が東京オリンピックを開催したとき,開会式でハトが空に舞った.それは戦争の灰燼から生まれ変わった平和国家としての日本を象徴するものだった.
しかし,そのわずか2分後,日本の戦闘機の編隊が同じ空を横切った.それは,日本国憲法の有名な第9条を知る者にとって,苦渋の時であった.陸・海・空軍は,これを持たない,という条文に反することであったからだ.
2020年の東京オリンピックを前に,安倍首相はこの矛盾を解決する決意である.安倍は明らかにその機会を観ている.突然,反対派は弱くなった.憲法は今も愛されているが,着実に,改正論は国民の多くに好意的に見られるようになった.それは国論を分断するかもしれないが,必要な議論となった.地域の安全が脅かされ,緊張が高まっている.中国は人工島を建設し,アメリカのトランプ大統領は気分が変わりやすい.日本の安全保障をアメリカに頼ることの強い懸念がある.
安倍は,憲法改正の目標を2020年と表明した.問題は,改正手続きがまだ多くの厳しい条件を求めていることと,他方で,安倍の達成していない多くの改革課題が推進力を失い始めることだろう.
FP MAY 8, 2017
Japan and India to Strengthen
Military Ties, Which Means … What for the United States?
BY
EMILY TAMKIN
● マクロンの勝利
Project Syndicate MAY 5, 2017 9
The Fall of the French Ruling Class?
Hugo
Drochon
NYT MAY 5, 2017
What’s the Matter With Europe?
Paul
Krugman
NYT MAY 5, 2017
Macron and the Defense of the
Republic
Roger
Cohen
NYT MAY 5, 2017
At Stake in France’s Election: What
It Means to Be French
By
OLIVIER GUEZ
FP MAY 5, 2017
‘France Isn’t Ready for Macron’
BY
JAMES TRAUB
NYT MAY 5, 2017
What Has Failed in France
Bret
Stephens
マクロンの勝利が意味するのは,フランス人がバカンスに行くのを考え直せ,ということだ.
最も衝撃的なことは,隠れファシストがエリゼ―宮に入る可能性があった,ということではない.ロスチャイルドの元投資銀行家あり,エリートの血統や,資本家のプロフェッショナルや,企業への減税や週35時間労働の緩和など,市場に友好的な経済をもたらすことに何の罪の意識もない人物が選ばれそうだ,ということが衝撃なのだ.
フランス人は絶望している,有権者の最大の関心は,仕事をくれ,ということだ.テロでも,移民危機でもない.3月の失業率は10.1%であり,若者は23.7%である.これらの数字は不況のときでも驚くべきものだが,フランスは景気回復を示している.昨年,成長率は3%を超えた.
フランスの何がおかしいのか? よくある答えは,フランスには手が出せない外の事情だ.ブリュッセルの官僚制.ユーロという通貨の監獄.ECB.グローバリゼーションの嵐.・・・ル・ペンが得意とする非難だ.それらはトランプに通じる.
しかしもっと正直な答えは,フランス人がしばしば「社会モデル」と呼ぶものに至る.OECDの統計が示すフランスの政府支出(GDPの57%,フィンランドと同じ)と社会福祉(31.5%)は,2014年,デンマークを除いてどこよりも多い.
フランスのパラドックスとは,改革を切望しながら,改革されないことを切望していることだ.フランスは、雇用をもたらす競争的な経済を望むが,雇用を保護する競争力のない経済が解体されることを恐れている.マクロンが大統領になれば,その知識と弁舌を駆使して,彼らに説明しなければならないだろう.これら2つは選択するしかない.両方とも得ることはできない.
NYT MAY 5, 2017
Abstention, France’s Last Temptation
By
SERGE GALAM
Bloomberg 2017年5月5日
The EU Must Change After the French
Election
By
Leonid Bershidsky
マクロンの勝利をEU改革に生かすべきだ.Brexit交渉もヨーロッパの主要諸国でEU支持派の政治家を増やすだろう.
FT May 6, 2017
France: A divided nation decides
Anne-Sylvaine
Chassany
The Guardian, Sunday 7 May 2017
The French presidency goes to
Macron. But it’s only a reprieve
Timothy
Garton Ash
心臓発作に襲われかけたけれどぎりぎりで助かった人のように、ヨーロッパはエマニュエル・マクロンの勝利を祝して乾杯しているだろう。しかし、そのグラスは半分も満たされておらず、もしヨーロッパがその進路を変えなければ、死の瞬間は延期されただけだろう。
次期大統領はフランスのエリート層から出た聡明な人物だ。フランスの深刻な構造問題の理解も、それに対する優れたアイデア、強力な政策チーム、EUへの強い関与もある。秋のドイツにおける選挙で、中道の親ヨーロッパ的政府がベルリンに誕生すれば、両国でEUを強化する改革に取り組めるだろう。
しかし、すでにシャンペンは飲み干し、エスプレッソで正気に戻るときだ。まず1杯。・・・大統領選挙の第2回投票で3分の1はル・ペンを支持した。
選挙制度の違いで、Brexitやトランプと異なる結果になったが、その現実はある意味でさらに悪い。トランプは海賊資本主義の産物であり、極右の伝統的な政党の代表ではない。Brexitを支持した53%の投票は、ナイジェル・ファラージを支持したわけではない。ル・ペンはテレビ討論で、誰も彼女が投票できる候補ではないと思うほど、あまりにもひどい中身であった。
1789年の革命を生んだ国で、われわれは世界的な規模の反リベラルの反革命を象徴する人物を得たのだ。ル・ペンは現代のナショナル・ポピュリストのモデルである。彼女がテレビ討論で自慢したのは、自分なら、プーチンとロシアについて、トランプとアメリカについて、メイとBrexitについて、うまく議論できる、ということだ。(メイは仲間にされたことに傷つくだろうが) グローバリゼーション、リベラリゼーション、ヨーロッパ化の流れに反対するポピュリストの潮流は、単に、潜伏したにすぎない。
2杯目は、マクロンの改革が成功することはない、ということだ。ル・ペンに投票した人々だけでなく、多くの反対派がいる。第2回投票を、コレラとペストの選択、と呼んだ左翼もそうだ。来月の議会選挙で、マクロンが多数を握る保証はない。
マクロンはすでに、「レンツィ2.0」と呼ばれている。イタリアの若い首相が唱えた改革は失敗した。フランスの反対派はさらに強力だ。労働組合、公共部門の労働者、トラクターで通りを封鎖する農民たち。マクロンの改革が失敗すれば、2022年にはル・ペン大統領が誕生する。
3杯目。マクロンはEU改革も唱えている。それは素晴らしいことだが、彼にはできないだろう。Brexitの交渉はすでに悪化し始めている。イギリスはEU改革の同盟者にならない。イタリアはフランス以上の公的債務を負い、脆弱な銀行部門と政治不安から、次のユーロ危機を生む恐れがある。難民危機の原因も解決されていない。ハンガリー、ポーランドでは反リベラルのポピュリスト政権が続く。
マクロンのユーロ圏改革も、ドイツの有権者には受け入れられないだろう。・・・共通の財政政策、共通の財務長官、公的債務の共有化、銀行同盟の完成。
守るべきヨーロッパはどこにあるのか? これは執行猶予でしかない。何もかもがまだなされていない。しかしヨーロッパは、まだ酔っぱらっている。
NYT MAY 7, 2017
Macron and the Revival of Europe
Roger
Cohen
NYT MAY 7, 2017
Why Macron Won: Luck, Skill and
France’s Dark History
By
ADAM NOSSITER
FP MAY 7, 2017
Emmanuel Macron, the Next President
of France
BY
EMILY TAMKIN
FT May 8, 2017
President Macron must now heal a
fractured France
Gilles
Kepel
The Guardian, Monday 8 May 2017
Macron’s tragedy is that he still
believes in a discredited economic system
Olivier
Tonneau
FT May 8, 2017
Why Emmanuel Macron matters to the
whole world
Gideon
Rachman
FT May 8, 2017
Emmanuel Macron sets his sights on
economic and eurozone reforms
Wolfgang
Münchau
SPIEGEL ONLINE 05/08/2017
Macron's Challenge
France's New Leader Must Restore
Confidence
A
Commentary by Julia Amalia Heyer in Paris
Project Syndicate MAY 8, 2017
Macron and a Multi-Need Europe
KLAUS
SCHWAB
マクロンの勝利は、EU改革に向けた自信が回復する兆しである。しかし、「マルチ・スピードのヨーロッパ」という目標は不十分だ。
それは、EUに対する不信感や敵意を解消することができない。さらに重要な点は、それがEU諸国の異なった必要を無視していることだ。共通の価値を主張するのは良いが、労働市場改革、財政再建、単一市場にふさわしい規制改革、などは全く別の問題だ。
南北の競争力にギャップがあることより、もっと重要なことは、EU統合によって、より平等な経済条件を得て、すべての市民が受益者となることだ。また、EUとして国際的な地位を高め、紛争と危険が増すグローバルな環境の中でも、安定性の島として確立されることだ。
ドイツは2008年の経済危機に丁寧に対処し、失業を管理可能な水準に抑えて、経済をより強化した。しかし、経常収支黒字が増大したことはEU内の持続不能な不均衡をもたらしており、問題だと認識している。
公的債務の将来について、選挙前に明確な対策を述べることのできる政府はないだろう。しかし、すべての加盟諸国にとって前進を意味する改革を支持するはずだ。ドイツは、エゴイズムを克服し、敏感に、かつ責任をもって指導力を発揮した。2015年、シリアやイラクからの難民に国境を開放する決定がそうだった。その政策は反発をもたらし、多大の政治資本を失わせたが、人口減少の続くドイツにとって価値があることを証明できるだろう。
政治指導者は、弱さの兆候や非効率性につながる妥協を拒むべきだ。民主的な決定を最強の手段として、加盟国の異なる必要に応じた改革を実現することだ。
Project Syndicate MAY 8, 2017
The End of the Left/Right Divide?
IAN
BURUMA
NYT MAY 8, 2017
The Altered State of France
By
BOUALEM SANSAL
Bloomberg 2017年5月8日
What Macron Can Do for Free Markets
Everywhere
By
Mohamed A. El-Erian
FT May 9, 2017
Macron win earns Europe a reprieve
from the forces of populism
Gideon
Rachman
Project Syndicate MAY 9, 2017
Can Macron Pull it Off?
DANI
RODRIK
ピケティThomas Pikettyは,社会主義者の候補Benoît
Hamonを支持した.マクロンは「昨日のヨーロッパ」を代表する,と述べた.マクロンの政策の多くはネオリベラルの性格を示す.どの政策も,マクロンが取り組むべき最大の課題,雇用の創出,をもたらさない.インフラ投資による財政刺激策も不十分だ.
それゆえ,重点はユーロ圏改革に至る.財政構造を改革し,政治的な統合に進むのか? それはドイツの問題だ.ドイツが全面的に支援しなければ,ユーロ圏やEUは激しく攻撃される.ドイツの協力を要請することが,マクロンの切り札だ.
Project Syndicate MAY 9, 2017
Emmanuel Macron, the Novel
BERNARD-HENRI
LÉVY
NYT MAY 9, 2017
France Still Waits for a
Revolution’s Outcome
Sylvie
Kauffmann
Bloomberg 2017年5月9日
Germany's Enthusiasm for Macron
Won't Last
By
Clive Crook
FT May 10, 2017
Emmanuel Macron weighs up France’s
biggest challenges
Martin
Wolf
FT May 10, 2017
Macron’s worthy goals for eurozone
reform
Project Syndicate MAY 10, 2017
France Returns to Europe
ZAKI
LAÏDI
Project Syndicate MAY 10, 2017
Has Populism Peaked?
PHILIPPE
LEGRAIN
Project Syndicate MAY 10, 2017
The Macron Miracle
DOMINIQUE
MOISI
Bloomberg 2017年5月10日
Macron's Moment Is Europe's Too
By
Ferdinando Giugliano
YaleGlobal, Thursday, May 11, 2017
France Defies Populism With Strong
Advocacy for Europe
François
Godement
Project Syndicate MAY 11, 2017
Macron and a Sixth Republic?
GILES
MERRITT
● メイ首相vs労働党
FT May 5, 2017
How the UK government is making a
successful Brexit difficult
David
Allen Green
FT May 7, 2017
New Tory supporters will alter
government priorities
Mark
Wallace
FT May 7, 2017
What Theresa May has learnt from
Margaret Thatcher
Philip
Stephens
The Guardian, Sunday 7 May 2017
Never before in my adult life has
the future seemed so bleak for progressives
Will
Hutton
FT May 8, 2017
The great British political
realignment
FT May 10, 2017
The UK election, Brexit and the five
stages of grief
Roula
Khalaf
NYT MAY 10, 2017
Nigel Farage, UKIP and the Revenge
of the Fruitcakes
By JASON COWLEY
The Guardian, Thursday 11 May 2017
Never mind who leaked it, this
Labour manifesto is a cornucopia of delights
Polly
Toynbee
これは豊穣の実現を称える宣言だ。労働党の選挙公約がリークされた。なすべきでなかったものはすべて逆転させ、すべての者が生活を改善できるだろう、と約束する。
これは、1983年の選挙公約がもたらした「歴史的な長い自殺」を再現するものではない。当時、労働党を分断した約束が繰り返されているのではない。すなわち、ヨーロッパやNATOを一方的に離脱すること。軍縮、保護主義的な為替・輸入の管理、製薬産業、建築資材産業、その他の国有化、であった。明らかに不本意なものであるだろうが、ここにはトライデント核ミサイルを保持し続け、NATOの求めるGDP2%の防衛費を公約している。国防に弱いという労働党への多年にわたる非難を退けるためだ。
緊急に必要とすることのすべてが盛り込まれている。NHS国民保健サービス、社会介護、学校資金の再建である。労働者の権利の回復もそうだ。名ばかりの自営業、ゼロ時間契約労働者たちに団体交渉権を取り戻す。それなしには、1980年代以降、GDPのシェアを大幅に減少させてしまった賃金と、逆に膨張してきた利潤や経営幹部の報酬とを、是正することはできない。
郵便や鉄道を再公有化する。しかし、契約が終了すれば、エネルギー部門は国有化するのではなく、地域ごとに比較できるようにする。10年間で2500億ポンドの国債を発行し、インフラに投資することも大いに必要なことだ。授業料を無償化し、貧困家庭には教育のための支援を給付することも、無料の学校給食も、素晴らしい。
これらすべてのことに合意し、実現できたら、この国はより暮らしやすい、子育てにとって優れた、おそらく、繁栄する国に変わるだろう。労働党はBrexit交渉など求めず、単一市場。関税同盟を維持する。この国が無情にも削減してきた社会給付を回復し、開かれた、「公正な」移民システムに合意するなら、われわれは今あるような状態より、素敵な、親切な、楽観的な国民になれるだろう。今、Brexitに向かうイギリスはそうではない。
政治とは、可能性のアートである。また、政治は、説得のアートでもある。どの約束も好ましいものだが、それぞれが厳格な基礎を欠いている。労働党がどのように経済的な信頼を獲得し、人々の争いや個人主義、しばしば排外主義となる傾向を抑えるのか、すべては将来の課題である。
The Guardian, Thursday 11 May 2017
The leaked Labour manifesto: our
writers on how the policies stack up
Faiza
Shaheen, Jonathan Freedland, Aditya Chakrabortty, Ayesha Hazarika and Poppy
Noor
The Guardian, Thursday 11 May 2017
The Guardian view on Labour’s
manifesto: a bold step
Editorial
VOX 11 May 2017
Options for a ‘Global Britain’ after
Brexit
Steven
Brakman, Harry Garretsen, Tristan Kohl
NYT MAY 11, 2017
Theresa May’s Vapid Vision for a
One-Party State
By WILLIAM DAVIES
メイの政治戦略は,政治的なカオスの中で,唯一の確実な権力の中心を明確にすること,典型的なポピュリストの政治ゲームだ.
FP MAY 11, 2017
The Most Hated Man in Britain Thinks
He Can Save the Country
BY
TOM WHYMAN
トニー・ブレアが政治の最前線に戻ってきた.自分は立候補しないが,有権者を結びつける政策論争を形成したい,と.
FT May 12, 2017
The Brexit catch for North Sea cod
Joshua
Chaffin in Peterhead
FT May 12, 2017
UK Election Countdown: you say you
want a revolution
Sebastian
Payne
FT May 12, 2017
Corbyn’s misguided bid to turn the
clock back
指令経済を目指すものではないが,これは1970年代に回帰するものだ.高インフレ,低成長,戦闘的な労働組合,停滞するコーポラティズム.
● ヴェネズエラ
FT May 5, 2017
The implosion of the Venezuelan
thugocracy
● ドイツの経常黒字
SPIEGEL ONLINE 05/05/2017
The Global Chancellor
How Merkel Got Her Groove Back
By
René Pfister
FP MAY 9, 2017
The Forever Chancellor
BY
CAMERON ABADI
NYT MAY 10, 2017
‘We Are Not Burqa’: What Does German
Culture Even Mean?
Anna
Sauerbrey
Project Syndicate MAY 11, 2017
Is Germany Unbalanced or Unhinged?
BARRY
EICHENGREEN
アメリカのトランプ大統領は、その国の経済的な強さを経常収支で測る。この考え方は、もちろん、ひどい経済的ナンセンスである。重商主義として、200年以上も前に間違っていることを非難された、古びた考えの寄せ集めである。重商主義は、何よりも、経常収支黒字が最大のドイツを、世界最強の経済とみなすだろう。
2016年、ドイツの経常収支黒字は2700億ユーロ(2970億ドル)、GDPの8.6%であった。アメリカとの間の貿易黒字は650億ドルの黒字であった。それはトランプの不満の標的になった。しかし、気にすることはない。ドイツはユーロ圏に属しているから、為替レートの操作はしていない。アメリカのドイツに対する輸出に障壁もない。他の諸国と赤字や黒字があるのだから、2国間の収支はその国の福祉に影響しない。しかし、トランプにとっては重要でない。スケープゴートにしたいだけだ。
ドイツが対外黒字を出すのは、貯蓄が投資を超えているからであり、それは統計的に自明のことだ。彼らは生産したよりも少なくしか支出せず、その差は必ず純輸出となっている。
ドイツが高い貯蓄率を示すのには理由がある。人口が他の諸国よりも急速に高齢化しているのだ。人々が老後に備えて貯蓄するのは当然だ。だからドイツの指導者に、ホワイトハウスやドイツのエコノミストが、ユーロ圏を出て、通貨を強くしろ、などと助言しても無意味である。為替レートはドイツ人が貯蓄する動機と関係ない。
それどころか、通貨が強くなれば、資本集約的な輸出部門で投資が抑制されるだろう。(貿易財の価格が下落し)非貿易財の相対価格が上昇するから、(非貿易財である)サービス部門への投資が大幅に増える。
そんなことをするより、直接に、貯蓄や投資の誘因を変えるのが良い。この点が、次のドイツ選挙の争点である。メルケル首相のキリスト教民主同盟は、減税を主張している。ドイツ政府の予算黒字237億ユーロは記録的な高水準であるから、その意味で、正しい主張だ。
問題は、貯蓄を優先するドイツ人家計が支出を増やす保証はないことだ。ドイツ企業に投資減税する方が効果的であろう。しかし、労働者の国民所得におけるシェアが低下しているドイツで、こうした政策は政治的に受け入れにくい。
他方、社会民主党のシュルツMartin Schulzは、特にインフラ投資を通じて、政府支出の拡大を主張している。ほぼゼロ金利状態であるから、民間投資が妨げられる心配はない。医療、教育、通信、輸送インフラに、多くの需要がある。インフラ投資は非貿易財ではないか、という反対論は間違いだ。完全雇用状態の経済で、政府が非貿易財への支出を増やせば、家計や企業は他の方法で需要を満たし、貿易財への支出が増える。
問題は、ドイツが経常収支黒字を減らす理由である。それはトランプの不満ではない。IMFが言うように、世界経済には投資が不足しており、ユーロ圏でも南欧諸国がもっと輸出することが望ましいが、そのためにも他国が、特に北欧諸国は輸入を増やすべきだ。
何より、インフラや医療、教育に投資することはドイツ国民の利益になる。生産性を、そして生活水準を高め、不平等を緩和し、ドイツの弱点を克服する。「世界最強の経済」なら、もっと優れたことができるはずだ。
(後半へ続く)