前半から続く)


 メイの解散・総選挙

Project Syndicate APR 29, 2017

Theresa May’s Pyrrhic Victory

ANATOLE KALETSKY

保守党のヨーロッパ懐疑派は、この選挙をDaily Mailが掲げたように“Crush the Saboteurs.”

「妨害する奴らを粉砕せよ。」と考えている。しかし、彼らが思うようにはならないだろう。

メイは、事実上、交渉期間を延長した。イギリス政治の再編は避けられない。5年は、メイの保守主義やナショナリズムに対抗する十分な時間である。Brexitに反対の国際派や労働党の再建が間違いなく起きるだろう。

また、EU経済の回復は続くだろう。各国の選挙の後、独仏の協力はユーロ圏の生き残りに欠かせない政治統合に向かうだろう。他方、Denmark, Sweden, and Polandはユーロ圏への参加を明確に否定する。その結果、2重化したEUへの参加は、イギリス有権者の希望にかなう形になるだろう。あるいは、Brexit派はアメリカへの臣従や、中国の出先になりたいのか。

EUを離脱すれば、政府はアメリカや中国との通商条約で交渉力を失うことがはっきりする。2022年までに、有権者にもBrexitの失敗が明らかになるだろう。

FT APRIL 30, 2017

UK Election Countdown: purple prose

Sebastian Payne

The Guardian, Monday 1 May 2017

A simple people’s Brexit plan can replace May’s flawed strategy

Paul Mason

FT May 1, 2017

Brexit and the slide into nationalism

Gideon Rachman

先週、ヒースローの急行電車の中で、私はメイ首相のための演説原稿を書いた。それはBrexit交渉が回復不可能な形で決裂した後の演説だ。

首相官邸には、ユニオンジャックが見える。メイは国民にこう告げるだろう。我が国政府の顕著な努力にもかかわらず、UKEUとは合意に達することができなかった、と。彼女は、この国がこれから直面する困難な事態を警告する。長期にわたって、貿易や渡航が難しくなるだろう。深刻な不況も起きるだろう。イギリスはEU離脱を民主的に決めた。しかし、EUはその決定を進んで受け入れることなく、公平な取引にも応じない。それどころか、彼らはイギリスを処罰すると決めたのだ。

そしてここでチャーチルの名演説が再現される。彼女は声を落とし、真正面からカメラを見つめて言うだろう。ヨーロッパの政治家たちはイギリスをへこませ、自分たちの意思に従わせることができる、と信じているのだ。彼らはこの国の歴史も、このイギリス人民の性格も知らないのだ。イギリスは、ヒトラーも、ドイツ皇帝も、ナポレオンも、スペイン無敵艦隊も、敗退させた国である。ブリュッセルの官僚など恐れないし、マルタやスロヴァキアの政府も怖くない。シェイクスピアから短く引用して、国民の団結を訴え、演説を終える。

私は、こうした演説を、電車の中の短い時間で書けたことにショックを受けた。これは単なる暇つぶしの幻想である。しかし、交渉がナショナリズムと対立に向かう危険は本物だ。

FT May 2, 2017

UK Election Countdown: progressive mistake

Sebastian Payne

FT May 2, 2017

Our apathy makes politics vulnerable to capture

Janan Ganesh

FT May 2, 2017

Brexit and the rights of UK and EU expats

David Allen Green

FT May 4, 2017

UK Election Countdown: May’s day

Sebastian Payne

NYT MAY 3, 2017

Can Britain’s Labour Party Come Back From the Brink?

By ROY HATTERSLEY

FT May 4, 2017

Theresa May, Jeremy Corbyn and an election trapped in the past

Philip Stephens

FT May 4, 2017

Theresa May has a chance to assure a smooth transition to Brexit

Martin Wolf

Project Syndicate MAY 4, 2017

Cheating Britain Out of Europe

JACEK ROSTOWSKI


 トランプ減税

FT APRIL 29, 2017

Trump’s tax plan favours wealthiest Americans

Sam Fleming and Barney Jopson in Washington

NYT APRIL 29, 2017

When Congress Made Taxes Fairer

By BILL BRADLEY

FT May 3, 2017

Steven Mnuchin’s big claims show him in a poor light

Larry Summers blog

NYT MAY 3, 2017

Donald Trump’s Very Good Idea: Raise the Gas Tax

By THE EDITORIAL BOARD

月曜日、トランプ大統領はインフラ投資計画を実現するためにガソリンに連邦政府が増税することを示唆した。ちょっと待って。それは素晴らしい考えだ。

ガソリン税は道路や輸送システムを整備するために導入されたが、その役割を十分に果たせていない。しかし、議会は1993年以来、その引き上げを拒んできた。

1兆ドルのインフラ投資を、連邦予算赤字を増やすことなく実施するなら、ガソリン税の増税は1つの有効なやり方である。輸送システムの改善は通勤を容易にし、雇用を増やし、自動車の修理費用を減らす。原材料や製品の物流が容易になる。これらすべてが成長を高めることになる。トラック運転手、商工会議所、全米自動車協会も支持するだろう。

1982年、ガソリン税を5セント引き上げたレーガン大統領は議会を説得した。「平均的な自動車主勇者にとって、そのコストはわずかである。」「しかし、われわれの輸送システムに及ぼす利益は莫大である。」

NYT MAY 3, 2017

Trump Folks: Tell the Truth About Your Tax Plan

Steven Rattner


 ユーロ圏改革

Project Syndicate APR 29, 2017

Reprieve or Reform in Europe?

MICHAEL SPENCE

大統領選挙の第2回投票でマクロンは右翼のル・ペンを僅差で超え、1位になった。57日の投票では、マクロンが勝利するだろう。EUは安泰だ。少なくとも、今は。

しかし、自己満足する時ではない。ヨーロッパは成長パターンの欠陥を改め、緊急に必要な改革を進めるべきだ。さもないと長期的に生存のリスクが確実に再現する。

フランスの選挙に限らず、イタリア、スペイン、各地の選挙で既存政党への不信感が高まっている。特に、ル・ペンが若者たちの間で、教育をあまり受けていない者たちの高い支持を得ていることは心配だ。政治の分極化が改革を妨げている。

これらの国では社会保障システムがあっても、それは労働市場内の既存の労働者たちを守り、新規雇用の労働者や若者を不利にしている。低い成長率はますます新規の雇用を減らしている。もっと投資や雇用を促す改革、もっと包括的な成長パターンが必要だ。

各国にはさまざまな硬直性がある。弾力性を高める改革は複雑だ。その基本は、民間投資である。ドルに対してユーロが安くなったことは回復を助けている。さらに、ドイツや北欧だけでなく、ヨーロッパ全体で生産性の収れんが起きる必要がある。移民に対する統一した行動が重要だ。

もしこうした改革が進まなければ、現状維持を望む勢力に負ければ、マクロンの勝利は短命である。

FT May 4, 2017

The eurozone’s revival heralds spring cheer


 トルコ

FT April 30, 2017

How Turkey and Europe lost that loving feeling

Sinan Ulgen

FP MAY 3, 2017

Turkey Threatens U.S. Forces in Syria, as Putin Presses for Safe Zones

BY PAUL MCLEARY


 NAFTA再交渉

FT APRIL 30, 2017

Draft Nafta order signals tougher US stance on trade partners

FT May 1, 2017

Mexico calls on Trump to reuse TPP deals to reanimate Nafta

Jonathan Wheatley and Jude Webber

メキシコの経済大臣Ildefonso Guajardoは、アメリカがTPPの要素をNAFTAに加えることで、中国などからの安価な製品に対抗できる、北米3か国の強力な生産拠点を形成するべきだ、と主張した。

Bloomberg MAY 3, 2017

Trade Is the Scapegoat for Political Failure

Francis Wilkinson

FP MAY 4, 2017

Trump’s Steel Tariffs Are a Surefire Way to Hurt the Rust Belt

BY JESSICA HOLZER

トランプ大統領は、ブルーカラーの雇用を取り戻すと約束して、選挙に勝利した。しかし、彼の鉄鋼産業に対する保護措置は、その雇用を破壊するだろう。

アメリカには、鉄鋼労働者1人に対して、60人の鉄鋼を利用する産業の労働者がいる。

鉄鋼製品に関税を課すと、その国内価格が上昇し、鉄鋼価格の上昇は、たとえば、パイプライン建設プロジェクトの遅れや、計画見直しにつながるだろう。自動車産業や設備機械生産など、鉄鋼を利用する産業は縮小する。


 アベノミクス

FT May 1, 2017

The quiet but substantial successes of Abenomics

アベノミクスは失敗したのか? 2013年に始まってから、今もデフレが完全に終わったとは言えない。目標のインフレ率を達成できない政策は、やめた方がよい、と批判する声もある。

しかし、厳しい環境の中で、アベノミクスは日本経済の回復を促し、労働市場では人手不足が起きている。賃金上昇が起きるには時間がかかるが、回復は続いている。

特に、2014年に国際商品市場が下落し、2015年の新興市場で経済悪化が現れると大幅な円高が生じた。トランプの当選後にドル高が起きて、漸く、円は元の水準に戻った。

FP MAY 1, 2017

Is Japan Moving to Revise Its Pacifist Constitution?

BY EMILY TAMKIN

FT May 4, 2017

Japan proposes a rescue mission for Trans-Pacific trade


 ヨーロッパの原子力エネルギー

FT May 1, 2017

It is time for Europe to face its nuclear challenge

Nick Butler


 世界景気の不安

Project Syndicate MAY 1, 2017

A False Spring at the Spring Meetings?

CARMEN REINHART and VINCENT REINHART

毎年、春のIMF・世銀年次総会で国際官僚たちが集まり、政策のための情報を交換し、彼らの現実認識・予想を形成する。

今回のポジティブな認識は、IMFWEOが先進諸国の実質GDP成長率の予想を約2%に設定したことで示された。これが失業率を、2008年金融危機以前の水準、6%以下にまで戻すだろう。デフレや好ましくないディスインフレは過ぎ去りつつある。消費者物価のインフレ率は2%近辺であり、主要な中央銀行の目標に一致する。

しかし、経済が安定したとみるのは早すぎる。データが示していない問題の多くは未解決だ。1945年以降、金融危機を経験した後経済成長が停滞に変わったケースを、ラテンアメリカ1982-92年と日本1992-2007年が示している。危機後、先進諸国の経済パフォーマンスが顕著に低下したことをIMFのデータは示す。

成長率が下がれば、将来の消費は少なく、債務を返済するのも苦しくなる。予算の制約は厳しくなるし、金融政策を正常化するのも遅れる。

かつてアメリカは4%の成長を趨勢として期待できた。このとき、実質GDP18年で倍増した。親たちは子供の将来を明るいと考えた。しかし今、1.5%の成長率では、48年かかる。人々は孫の生活水準がどうなるのか心配している。そのような有権者に対して、政治家はむつかしい政策を選択できない。


 トランプの外交政策

FP MAY 1, 2017

Shunning Rule Book, Trump Pursues ‘Art of the Deal’ With China

BY JESSICA HOLZER

NYT MAY 2, 2017

America First’ Has Not Upended the World. Except It Has.

Roger Cohen

FP MAY 2, 2017

Trump Needs to Get Schooled on Commander-in-Chief Skills

BY JANINE DAVIDSON, LOREN DEJONGE

全ての大統領が任期の最初に、指揮官としての役割、その重圧と規模に驚く。ジョン・F・ケネディ大統領は、「アメリカに負わされた責任は、私が想像した以上であった。良い結果をもたらすためにわれわれの能力には限界があることも想像した以上であった。」 だから学習曲線の傾斜は急である。大統領の優劣は、このことを学ぶ速さ、自分と政府が破滅的に圧倒されないよう、修正する手際にかかっている。

大統領顧問からMichael Flynnを排除し、国家安全保障NSC会議にH.R. McMasterを起用してから、意思決定が迅速になった。トランプが、いかなる大統領もすべてを行うことはないし、重要な権限を、特に軍事面で、委譲するべきだ、と学んだのは良いことだ。しかし、彼の教訓は結びついていない。あらゆるシナリオを考慮した戦略が明確であれば、危機は管理できる。そうでなければ、効果的な権限移譲はできない。

トランプは、大統領の負担を減らそうとしてきた。しかし彼は、重要な、直観に反するが、有益な摩擦から、自分を孤立させてしまう。James Mattis国防長官の常套句では「では、どうしましょうか?」である。戦略に関する議論もせずに、軍事的オプションを使うことになる。トランプは、シチュエーション・ルームでの長い議論より、感情や逸話により見解を修正することが好きだ。そして、軍人を信頼している。

以前の多くの政権が、安全保障政策を、ますます戦略的ではなく、事態に即応するものとして決めるようになった。世界中の危機に軍隊は素早く対応し、速やかに勝利することが指導者を喜ばせた。ほとんどの大統領たちは国内の政策課題によって選出されるのであり、安全保障の立場は重要でない。しかし彼らはすぐに理解する。議会での論争や妥協を要する国内政策決定に比べて、指揮官として、大統領は大きな自由を行使できる。その自由には大きな政治的、道義的責任が求められ、世界におけるアメリカの役割に関する大統領の明確な考えが必要なのだ、ということを。

たとえば、化学兵器で子供を殺したシリアのアサド大統領に対するトランプの感情的な反応は、以前の非介入姿勢を完全に逆転するもので、公式声明も一貫性を欠いた。59発のトマホーク・ミサイルは、シリアにおける目標にどのような形で貢献するのか? また、トランプの好戦的な発言と軍事的エスカレーションは、イランでも、アフガニスタン、イラク、北朝鮮でも、顕著である。そのマイナスの影響について、彼は説明する責任を感じていない。同盟諸国にも、議会にも、アメリカ国民にも、説明しない。

こうしたアプローチは転換しなければならない。戦略を示し、アメリカの役割に関する彼の哲学と、スタッフたちとの信頼関係を築くことだ。そうすれば、大統領は権限を委譲し、部下たちの行動について明確な説明や、さまざまな事態に対する修正を行える。指揮官としての役割を楽しめるだろう。

YaleGlobal, Tuesday, May 2, 2017

Lose Now or Later: America’s Uneasy Choices in Afghanistan

Ehsan M. Ahrari

Project Syndicate MAY 2, 2017

The Trump Reversal the World Needs

SHLOMO BEN-AMI

FP MAY 2, 2017

The Arab Prince Standing Up to Trump

BY KIM GHATTAS

FP MAY 3, 2017

Has President Trump Learned to Love the United Nations?

BY SHEBA CROCKER

FP MAY 3, 2017

How Not to Lose Asia to China

BY MICHAEL H. FUCHS, NINA HACHIGIAN

Bloomberg MAY 3, 2017

Trump's Springtime for Despots

Eli Lake

FP MAY 3, 2017

This Isn’t Realpolitik. This Is Amateur Hour.

BY STEPHEN M. WALT

観る人によっては、ドナルド・トランプがフィリピンのドゥアルテ大統領をホワイトハウスに招待したことは、古典的な硬派のリアルポリティクスだろう。ドゥアルテが麻薬撲滅キャンペーンで殺人を奨励し、容疑者を個人的に殺害したことを自慢しても、他の疑わしい主張を表明しても、そんなことは気にせず、人権活動家ではないのだから、重要なアジアの同盟国として、その指導者を扱うわけだ。

しかし、こんなものは真実からほど遠い。

リアリストにとって、アメリカの安全保障に基軸となるのは、西半球の支配を維持し、かつ、いかなる競争相手にも、ヨーロッパやアジアの死活的な権力中枢を押さえないよう、あるいは、ペルシャ湾の重要エネルギー資源の支配権を握らないように、そのような事態を阻むということだ。現代世界でアメリカになりうる唯一の国は、中国である。

アジアにおけるリアリストのアプローチとは、中国を詳しく監視し、アジアのパートナー諸国とバランスを取るようにしておくことだ。アメリカは、一貫性、慎重な判断、スマートな外交を駆使し、それとともに、(アジアにおいて)信頼できる軍事力を維持しなければならない。その点で、トランプのやり方は、いずれもお粗末な失敗であった。

台湾、オーストラリア、韓国、北朝鮮、そして、中国との首脳会談。トランプの外交とは、ドタバタ喜劇、笑い話、そんな程度であるが、アメリカにとって破滅的である。


 アフガニスタン

Bloomberg MAY 1, 2017

Making Afghanistan Great Again

Eli Lake


 ハマス

The Guardian, Tuesday 2 May 2017

Why now is the time to talk to Hamas

Tareq Baconi

NYT MAY 2, 2017

A First Step to Peace: Calm Angers, Then Talk

By CHARLES R. BRONFMAN and SUSIE GELMAN


 アイデンティティー

NYT MAY 2, 2017

The Collapse of American Identity

By ROBERT P. JONES

FT May 3, 2017

Arbitration on trial: the US and UK’s fear of the supranational

Alan Beattie in Brussels


 ベトナム戦争

NYT MAY 2, 2017

The Great Vietnam War Novel Was Not Written by an American

VIET THANH NGUYEN


 ヴェネズエラの崩壊

FP MAY 2, 2017

Venezuela Is Heading for a Soviet-Style Collapse

BY ANDERS ASLUND

ヴェネズエラは破滅的な経済危機に陥った最初の国ではない。しかし、莫大な石油資源を持つ点で、ソ連の崩壊と似ている。

エネルギー価格は、ほぼ四半世紀ごとに上昇と下落を繰り返す。まだ10年は低価格が続きそうだ。同じような経済的打撃がソ連を襲ったのは1980年代だった。改革を推進したガイダルYegor Gaidarによれば、ソ連の政策担当者たちは、水の上を歩けると思っていた。経済の重力は自分たちに適用できないと信じていたのだ。

同じことが、現在のヴェネズエラの指導者、マドゥロNicolás Maduroにも言える。大規模に価格を管理し、肉やパンのような食糧の価格を下げておくために、多額の補助金を与えた。彼らには、ソ連の支配者と同様に、石油収入があったので、これが可能だと考えた。

しかし2014年半ばから、石油価格は半分を少し超えるところまで下落した。ソ連でも、財政赤字が急激に増大していた。1986年にはGDP6%を超えたが、1991年にGDP3分の1に達した。ヴェネズエラもそれを追っている。輸入するために外貨準備が枯渇すると、政府は貨幣を印刷して財政赤字を支払った。それは必然的に、ハイパーインフレーションになった。

すでにマドゥロの財政・金融政策は失敗を重ね、インフレ率が700%に達したようだ。月50%のハイパーインフレーションに向かっている。Steve Hankeによれば、世界でこの定義に当てはまるケースは56しかないが、その半分が共産主義崩壊のときに起きた(ソ連が分裂してできた15の共和国がすべて含まれる)。

ハイパーインフレーションは深刻な道徳的退廃を生じる。突然、働くことが無意味になるのだ。火星で得たお金を持って食料の列に並ぶより、働くことをやめる。そして投機によって儲けることを考え、商品や不動産という安全な資産を買う。その結果、生産量が急減し、金融が安定するまで、悪循環に沈む。

公式の為替レートを過大評価して、政府は国民が豊かであるような錯覚を与えた。ソ連ではルーブルが闇市場の5倍の価値で示された。その意味は、外貨を買うために政府が補助金を与えた、ということだ。199112月にソ連が崩壊したとき、ロシアの平均的な給与は、月にわずか6ドルであった。ヴェネズエラもそうなるだろう。

同じく、ソ連は対外債務が膨張した。ヴェネズエラの債務は多くを中国に負うものだ。貧困を否定する政府は、ソ連でもヴェネズエラでも、可能な限り債務を増やして、それが得られないとき、デフォルトになった。金融危機は悪化し続ける。経済改革は、マドゥロがこれまでの政策の間違いを認めることを意味し、人々が政権を倒すことに向かうからだ。

それを回避するには、大衆的な不満の高まりがマドゥロの体制を先制的に破棄し、あるいは、マドゥロが亡命することだろう。あるいは、外貨準備を失い、デフォルトになったとき、輸入の途絶と通貨ボリバルの価値が急落するだろう。体制の崩壊は避けられない。

必要な経済の調整には、国民生活の窮乏化が避けられない。新政権は、深刻な経済危機の中で、可能な選択肢が限られる。財政赤字をなくすために補助金を廃止するしかない。為替レートも、市場が均衡する水準において単一化する。マクロ経済の改革に合意することで、IMFが外貨準備と市場の信認回復に協力できる。

かつて、ソ連の崩壊後、ロシアは予算の均衡化に、あまりにも長い期間、7年もかかった。国際社会はその負担を緩和する支援策に失敗し、彼らの政治を西側に敵対するものへ向かわせた。ヴェネズエラが改革を進めるときは、その初期に、劇的かつ迅速な金融支援を行うべきだろう。

NYT MAY 3, 2017

Chaos Looms Over Venezuela

By HUGO PRIETO

FT May 5, 2017

The implosion of the Venezuelan thugocracy


 NATO

YaleGlobal, Wednesday, May 3, 2017

The Futures of NATO

Jolyon Howorth


 EUの難民危機

SPIEGEL ONLINE 05/04/2017

The Deadly Mediterranean Route

EU Seeks to Ward Off New Refugee Crisis

By Christiane Hoffmann, Walter Mayr, Peter Müller, Christoph Schult and Wolf Wiedmann-Schmidt

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The Economist April 22nd 2017

Handle with extreme care

Islam in Indonesia: The rise of intolerance

Britain’s election: Game change

The French election: La lute

North Korea: Strategic confusion

Asian Geopolitics: Disorder under heaven

McJobs: The tempest

A snap election: Back into battle

Bagehot: Theresa May, Tory of Tories

(コメント) 北朝鮮危機も,米中合作(G2秩序)も,フランスの選挙も,興味深い内容です.しかし,私が強い関心を持った記事は,イギリスの政治でした.Brexitを生んだEUとの関係,イギリス政治自体の分裂状態,孤立を美化する強硬派に手を焼き,左派強硬派に振り回される労働党から離反する支持者を奪い取って,何よりメイにはナショナリズムを利用する条件があります.

もう1つの重要な記事は,マック・ジョブに苦しむ南欧諸国の若者たちです.

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IPEの想像力 5/8/2017

フランスの大統領選挙より,イギリスの解散・総選挙に,日本との類似性を感じます.しかし,いつの時代もそうなのでしょうか? 政治は怪異に満ちています.

コニーFBI長官が解任された,というニュースに驚きました.トランプ政権というのは何だ? という不気味な感覚がよみがえります.中国と協力して,北朝鮮の核兵器を,そして,朝鮮半島を解決に導くかもしれない,という希望が一瞬で悪夢に変わりました.ヒラリー・クリントンのメール問題,フリンやクシュナー,トランプとロシアとの関係,どちらも政治からの独立性を,捜査当局は明確にしなければならないときです.

日本でも,共謀罪に関する事前の捜査や情報収集とは何か,国会が紛糾しています.だれのメールや電話も盗聴されるということか? それは誰が,どのようにして,認めたり,検証したり,するのか? 諜報機関による政治への介入,無関係な市民への嫌疑と告発,政治的意見の表明や集会の妨害,あるいは,それを恐れた野党や反政府活動,政治・公共政策に関する研究への影響.・・・

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2012年末に,安倍首相が2度目の権力掌握に成功したのは,中国の脅威があったからだ,と言ってもいいでしょう.北朝鮮の核実験やミサイル発射,韓国の慰安婦像,尖閣諸島,竹島,北方領土問題,これらは戦後日本の政治的な負債でしたが,安倍政権にとっては権力の長期安定化に貢献した最重要な資産でした.

安倍首相が,国会の答弁で過度の余裕を示し,答えるとか,質問をかわすというより,不満なら聞かなくてもいい,自分たちで正しいことをやるから,と,あしらう姿勢を示すようになったのは,エルドアンやプーチンに似た権力者のイメージに染まりつつあると思います.Brexitやトランプの登場が,こうした形で,日本にも影響しているのです.

イギリスとの類似性に興味を持ちました.メイは,EU離脱のための交渉において,多数の議席を,自分の指導下における選挙で獲得することが,交渉に柔軟性と決断力をもたらす,と考えたようです.それは,何よりも,野党である労働党のコービン党首が不人気であるからです.

保守党の切り札は,一方で,EUとの対立をあおるナショナリズムと「国民の団結」,さまざまな神話であり,他方では,野党の党首に対する攻撃,その時代錯誤の左派思想,極端な経歴,愚劣な政治気質に関する豊富な資料です.選挙がなければ,労働党の分裂や議会におけるコービンの混乱した姿勢は,攻撃するより,むしろ放置し,温存して弱らせたわけです.

同様に,中国の指導部は,極右の安倍政権が短期で失敗する,と考えたかもしれません.The Economist April 22nd 2017の特集記事は,アジアの地政学,です.中国が周辺地域の紛争を自国の軍事力や貿易・投資の影響圏によって解決し,一定の秩序において統一しようとするのは,アメリカと何も変わりません.国際政治,というものが生み出す,合理的でも,民主的でもない,暴力的な側面です.

FTのコラムニストGideon Rachmanが,EU離脱交渉決裂後の,メイ首相の演説を作文しました.それを少し変えるだけで,安倍首相の演説ができます.憲法改正に向けて,彼の政治的な基盤を強化する,すなわち,中国や韓国との領土・安全保障・経済交渉を非難し,ナショナリズムを刺激するものです.

・・・安倍は、日本がこれから直面する困難な事態を警告する。「長期にわたって、貿易や渡航が難しくなるだろう。深刻な不況も起きるだろう。日本国民は私を民主的に首相と決めた。しかし、中国や韓国は,その決定を進んで受け入れることなく、公平な合意にも従わない。それどころか、彼らは日本を処罰すると決めたのだ。」

彼は声を落とし、真正面からカメラを見つめて言うだろう。「中国と韓国の政治家たちは日本をへこませ、自分たちの意思に従わせることができる、と信じているのだ。彼らはこの国の歴史も、この日本人民の性格も知らないのだ。日本は、元寇も、清も、ロシア皇帝も、アジアにおけるヨーロッパの帝国主義も、敗退させた国である。北京の官僚など恐れないし、ソウルの政府も怖くない。」 そして教育勅語から短く引用して、国民の団結を訴え、演説を終える。

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衝撃に応じて,制度は怪異を呼び,政治を歪めます.

この社会を,共通して担う人々が,市民として発言し,その社会的統合がもたらす成果,地位の変化,パワーの配分の,何が正しく,何は不正であるかを決める,それが政治です.民主的な政治の文化,が損なわれていると思います.社会制度を通じて,人々の満足できる合意をもたらす集団的な能力が,各地で問われています.

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