IPEの果樹園2017

今週のReview

5/1-6

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北朝鮮危機とアジア外交 ・・・アメリカ予算案と財政政策 ・・・世界景気回復は続くか? ・・・フランス大統領選挙が示すもの ・・・ドイツの政治文化 ・・・イギリス総選挙に向けて ・・・国際通貨制度の模索 ・・・NAFTAと貿易赤字 ・・・中国指導部の目標 ・・・Brexit交渉の行方 ・・・トランプ政権の100日 ・・・トランプ外交と世界

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


 北朝鮮危機とアジア外交

China Daily 2017-04-21

No party can fulfill peninsula peacemission single-handedly

NYT APRIL 24, 2017

America’s Dangerous Love for Special Ops

By MARK MOYAR

1950年の朝鮮戦争で北朝鮮軍が侵攻したとき、15名の部隊が韓国に侵入して待ち伏せ攻撃を行い、橋を破壊した。アメリカはそれに対抗し、低高度のパラシュートで侵入するレンジャー部隊を組織した。アメリカはこうした精鋭部隊の魅力に取りつかれた。

この国の大統領たちは、フランクリン・ルーズベルトが1942年に創設して以来、特殊部隊に魅了されてきた。ジョン・F・ケネディは2000人から10500人に拡大し、ジョージ・W・ブッシュとバラク・オバマは、特殊部隊の規模を2001年の38000人から70000人に増やした。

しかし特殊部隊の歴史は注意すべき問題点を示す。特殊部隊は戦術的手段ではあっても、戦略的な選択肢ではない、ということだ。

たとえ戦術的には成功しても、それが戦略的な成功をもたらすことはめったになかった。ブッシュもオバマも、イラクとアフガニスタンで反政府軍を特殊部隊で解体しようとした。しかし反政府勢力は支配領域や住民を失わなかった。ビン・ラディンを殺害してもアルカイダは消滅しなかったし、むしろパキスタンで戦略的なダメージが広がった。2001年にタリバンは敗退したが、戦略的な勝利には、特殊部隊と正規軍や国家治安・警察組織が統合される必要があった。

特殊部隊はテロ集団を撃退できても、ロシアの正規軍や北朝鮮軍と戦うことはできない。もしアメリカが軍から特殊部隊に財源と人材を移すなら、正規軍は大規模な戦争に対する準備が不足するだろう。

トランプ政権がシリアに海兵隊を展開したことは、こうした傾向を逆転する正しい転換であるのかもしれない。

NYT APRIL 24, 2017

China’s Leader Urges Restraint on North Korea in Call With Trump

By CHRIS BUCKLEY

FP APRIL 24, 2017

Could Playing Chicken With North Korea Pay Off?

BY JON WOLFSTHAL

アメリカ政府からますます強い声明が発表される中で、朝鮮半島における戦争の懸念が世界中で高まっている。しかし、それは他方で、外交的な解決の種もまかれている、ということである。もしトランプ政権が、その機会をつかむほど思慮深く、規律を持った姿勢を示すとしたら。また、ホワイトハウスの暴言が計算されたものであるなら。

北朝鮮も、中国も、このゲームを計算して進めてきた。北朝鮮は核兵器を開発し続けたし、中国の制裁はそれほど強化されなかった。軍事行動と体制崩壊のもたらす被害は大きすぎるからだ。何が変わったのか? 金正恩は、その父より開発を進めてしまった。そこへトランプの好戦的なTweetが流布され、ティラーソンの混乱した声明が出ている。北京やソウル、そして、ピョンヤンの人々は、アメリカ政府が先制攻撃を行うほど理性を失った者たちだ、と思うかもしれない。

この非理性的な言動は、成果をもたらすかもしれない。典型的なチキン・ゲームである。金正恩は、トランプがどこまで行くのか不安を感じているだろう。トランプがもたらす体制崩壊の危機は、外交的な解決への道である。

チキン・ゲームで、非合理的なプレーヤーが勝つには、合理的でなければならない。トランプ・チームは国内政治で成果を上げられず、外交においても十分なスタッフがいないかもしれない。政策を動かすには多くの分野の協力が必要になる。

もしまだ決めていないのであれば、今こそ政府は決断しなければならない。北朝鮮と交渉するのか? その場合、その最終目標は何か? 非核化に向けた一時的凍結を受け入れるのか? 凍結する場合、どのように検証するのか? 何を許すのか? どの程度まで核能力を残すのか? その場合、韓国の不安と核保有の主張をどうするのか? 南北が核武装するのか? 朝鮮半島はどうなるのか?

オバマ政権も、同じように、これらの非常に困難な問題を検討し続けた。アメリカが失敗した場合はどうなるのか? また、成功した場合はどうなるのか? トランプ政権も同じ位置に着くのだろう。

Project Syndicate APR 25, 2017

Asia’s American Menace

BRAHMA CHELLANEY

FP APRIL 25, 2017

Senate Heads to White House for Briefing on North Korea, But U.S. Strategy Still At Sea

BY DAN DE LUCE, PAUL MCLEARY

China Daily 2017-04-25

Misjudgment of situation biggest risk to peninsula

北朝鮮もアメリカ政府も、軍事的な威嚇や発言を自制し、北京が主張するような、平和的解決策を見つけるべきだ。

アメリカは中国との協力姿勢を示している。北朝鮮は国連決議を誤解している。決議は核実験やミサイル発射に反対したものであり、北朝鮮の指導体制を転換する要求ではない。また、中国の姿勢を誤解している。

SPIEGEL ONLINE 04/26/2017

Deadly Game

Donald Trump and Kim Jong Un Risk Nuclear War

By Mathieu von Rohr, Christoph Scheuermann, Wieland Wagner and Bernhard Zand

金正恩とトランプの間のエスカレーションが軍事的な衝突の末に、数百万人の死傷者をもたらす核戦争、シリアを超える国際紛争と難民危機も、起こりかねない。

トランプには3つの軍事的選択肢がある。1.核ミサイル基地への攻撃。しかし、すべての発射台を確認できない。2.核施設に対する予防的な攻撃。しかし、報復のリスクがある。3.韓国から軍事侵攻する。核や化学兵器による報復のリスクがある。

そのため前任者たちは軍事的解決策を排除した。オバマはサイバー攻撃の準備を命じた。しかし、北朝鮮の軍はまだそれほどネットワークに依存していない。トランプは軍事力行使への誘惑を隠さないが、就任後は外交のむつかしさを認めるようになった。習近平との会談では、選挙中の約束に反して、中国を非難せず、むしろ北朝鮮問題での協力を求めた。

ただし、北朝鮮が中国からの経済制裁で態度を変えることはないだろう。国内の深刻な飢饉でも、軍事力強化・核開発の最優先順位は変えなかった。金正恩は国内権力を強化するために、前例のないほど残酷な処刑を側近・親族に対して行ってきた。他方で、経済の開放政策は慎重に進めて外貨を得ている。

日本政府は安倍首相の下で、この危機に、特別な機会を観ているだろう。安倍はすでにトランプと2度会っており、信頼を得ている。ナショナリストとして、憲法改正の強い願いを持っており、この危機は自衛隊の活動範囲や防衛費の上限を変更する機会になる。

20年前なら軍事攻撃は可能であったかもしれない。1994年、最初の核危機の際に、米韓の司令部が詳しくシミュレーションした結果、最初の数か月間で、韓国側49万人、アメリカ側52000人の戦死者を出す、と予想された。その結果、軍事的選択肢は排除されたのだ。

すでに北朝鮮は20の核弾頭を持っていると推定される。東アジアの軍事バランスは変わったのだ。軍事的な解決策は存在しない。

トランプの可能な選択は交渉を指導することだ。トランプは、常に、自分が交渉の天才であると自慢している。クシュナーをピョンヤンに派遣し、交渉について真剣な姿勢を示すだろう。金正恩も交渉に関心があるはずだ。中国を仲介として、核開発計画の凍結を約束するだろう。その結果、金正恩はいくつかの核を保有し続けるかもしれない。

ただし、それは軍事衝突が抑えられ、トランプと金正恩が過剰な反応を示さず、交渉が成功する、と仮定した場合だ。世界中の政治家が懸念する、不安定で、衝動的で、予測不可能なトランプの性格が、有利に働くかもしれない。

FP APRIL 26, 2017

Top Admiral Says Not Looking at Regime Change in North Korea

BY PAUL MCLEARY

FP APRIL 27, 2017

Trump Raised Prospect of a North Korea Strike with U.N. Envoys, But Said He Wants to Avoid a Fight

BY COLUM LYNCH, DAN DE LUCE

FT April 28, 2017

Jimmy Carter asked to steer clear of North Korea rapprochement

Demetri Sevastopulo in Washington


 アメリカ予算案と財政政策

NYT APRIL 21, 2017

How Best to Tax Business

By N. GREGORY MANKIW

アメリカの法人税率は世界で最も高い国の1つである。それが税制改革の動機になっているのは明らかだ。それを回避するため、例えば企業は海外の子会社に資金を集め、あるいは、海外の低い税率を利用するために企業の構造を転換する。

大統領経済諮問委員会の委員長Kevin A. Hassettは、こうした税制による歪みに関する研究を行っている。また、より移動性の高い資本が、移動性の低い労働者に比べて海外に逃げ、生産性や所得を下げる、という研究もしている。

議会では、共和党も改革案を示すだろう。改革案はどのような問題に答えるべきか?

1.世界と領土。ほとんどの国は、その国境内の経済活動に課税する。そのようなシステムを領土的と呼ぶ。他方、アメリカは、アメリカに本社を置く企業に対して、世界全体の経済活動に課税する。その企業が海外で生産し、海外で販売しても、財務省はその企業がアメリカに送った利潤の一部を税として徴収する。

議会の改革案は、アメリカの税制を国際的な基準に変えるだろう。その方がアメリカ企業は平坦な競争場で外国企業と闘える。

2.所得と消費。エコノミストの多くは、所得よりも消費に課税すべきだ、と考える。消費税は貯蓄や投資を損なうことが少ない。それゆえ成長に好ましい。生産する者の価値より、人々が享受する生活水準に課税する方が公平だ。

3.源泉と行き先。法人税は、その財がどこに向かうとしても、その財の源泉企業に生じた利潤に課税する。改革案は、どこで生産されたかに関係なく、アメリカで消費された財に対して課税する。行き先に対する課税は、輸入に課税し、輸出は税を返還される。それは国境調整ともいわれる。こうした税制はヨーロッパの付加価値税に似ている。

それが貿易に及ぼす効果を主張する者もいるが、為替レートに影響することで、貿易収支は変化しないだろう。むしろ、行き先で課税する方が、源泉国を決めるより、消費国を決めるほうが容易である、という利点がある。世界各地の部品を利用する多国籍企業の世界では、移転価格のような問題が生じる。行き先で、消費国が課税する方が、そのような問題を生じにくい。

4.債務と株式。企業は債券保有者への支払いに対して税を返還されないが、株式保有者への配当については税を返還される。このため企業は株式発行よりも債務を増やすことを好む。それは企業を金融的に観て脆弱にする。

改革案は、この非対照的な扱いをなくすため、キャッシュフローに対して課税する。収入から、賃金支払いと投資支出を引いた額が、課税対象になる。正しい改革であるが、さまざまな反対意見もある。

大規模な税制改革には、勝者と敗者が出る。しかし重要なことは、アメリカ全体にとって良いかどうかであり、特殊利益集団のために反対してはならない。

NYT April 24, 2017

Zombies of Voodoo Economics

Paul Krugman

歴史的経験、事実によって何度も否定されたにもかかわらず、トランプを含めて、共和党は今も呪術的経済学Voodoo Economicsを信奉している。

トランプは有権者に対して、彼が非正統的であるし、これまでの大統領にはできなかったことをする、と売り込んだ。彼は取引の天才であり、通常のイデオロギーの分断を超えることができる、と。それゆえ支持者たちは不満だろう。彼の取引がどれも失敗し、新しいアイデアなど何も示せず、昔からの詐欺師でしかないと知ったからだ。

トランプケアは消滅し、トランプタックス(税制改革)はどうなるのか?

先週、マヌーチンStephen Mnuchin財務長官は金融ビジネスに向けて、「減税の財源は成長それ自身がもたらすだろう」と述べた。その意味を、われわれはすでによく知っている。

1980年、ジョージ・HW・ブッシュは供給側の経済学を説明した。富裕層への減税が、経済的な奇跡をもたらす、すなわち、税収はむしろ増えるのだ。これは「呪術的経済政策」である。その愚かな中身にもかかわらず、すぐに、共和党の公的な原理になった。

レーガン減税はどうか? クリントンによる増税はどうか? ジョージ・W・ブッシュの減税と、オバマによるその廃止とオバマケアのための課税はどうだったか? また、カンザス州知事Sam Brownbackの実験的な税の廃止は、それが期待したような成長ではなく、財政危機に至った。他方、カリフォルニア州のJerry Brownは増税し、「経済的な自殺」と右派に非難されたが、雇用は増え、成長した。

まあ、トランプは保守派の経済原理など信じていないだろうが。単なる、呪術と計算間違いでしかない。支持者たちはどうするのか?

NYT APRIL 25, 2017

What Trump’s Budget Means for the Filet-O-Fish

By BREN SMITH, SEAN BARRETT and PAUL GREENBERG

NYT APRIL 26, 2017

The 7 Key Elements of the White House Tax Plan

By ALAN RAPPEPORT

NYT APRIL 26, 2017

Winners and Losers in the Trump Tax Plan

Neil Irwin

トランプ税制改革の簡潔なポイントが示された。

その勝者は、効率の税負担をしている企業、高所得層、会計操作を行っている個人、多国籍企業、自己申告をしている人々、国境調整を恐れる小売業者、ドナルド・トランプ自身である。

敗者は、民主党支持者の多い州に住むアッパー・ミドル階層。財政赤字を拒否するタカ派。議会が法案を通すことに夢中な政治家たち。

NYT APRIL 26, 2017

Donald Trump Is a Real Republican, and That’s a Good Thing

By CHARLES R. KESLER

NYT APRIL 26, 2017

This Isn’t Tax Policy; It’s a Trump-Led Heist

Nicholas Kristof

Bloomberg APRIL 26, 2017

U.S. Can Afford Trump's Radical Tax Cut

Tyler Cowen

Bloomberg APRIL 26, 2017

Trump Tax Plan Will Intensify the Race Between Growth and Debt

Mohamed A. El-Erian

FT April 27, 2017

Donald Trump is undermining his Treasury secretary

Larry Summers blog

トランプ大統領の税制改革案をマヌーチンSteven Mnuchin財務長官とコーンGary Cohn国家経済会議委員長が示した。予算の長期的健全さ、公平さ、経済的影響の観点から、私は非常に間違った内容であると思う。

私はマヌーチンに同情する。閣僚たちにとって最悪の瞬間は、大統領がその官庁の真剣な取り組みに敬意を示さないとき、政治情勢によって自分の以前の主張を否定しなければならないとき、忠誠心を示すために愚劣な提案を支持する必要があるとき、である。

大統領が、先週の金曜日、財務省から木曜日に改革案を示す、と述べたとき、財務省職員たちは衝撃を受けただろう。提案を具体化する時間がない。そのメリットを検討するにも、歳入への影響をシミュレーションするにも、経済的効果を推定するにも、それどころではないのだ。細部を飛ばして、マヌーチンは1枚の要旨を示すことにした。

それは選挙キャンペーンで約束したことに反している。金持ちのためではない、というのは逆転する。減税それ自体が成長に好ましい、というのも、有名なラッファー・カーブの再現だ。共和党政権が繰り返し述べてきた愚論である。

財務省の信頼を損なうことは、最も重要な国家資産を失うことである。

FT April 27, 2017

Magical thinking will not save Trump’s tax plans

NYT APRIL 27, 2017

Failing the ‘Mnuchin Test’

David Leonhardt

NYT APRIL 27, 2017

Economists Fear Trump’s Tax Plan Only Heightens a ‘Mountain of Debt’

By JAMES B. STEWART

Bloomberg APRIL 27, 2017

Trump's Tax Proposal Is Just a Symptom of the Disease

Megan McArdle


 世界景気回復は続くか?

Project Syndicate APR 22, 2017

The Limits of Economic Optimism

KEMAL DERVIŞ

Bloomberg APRIL 23, 2017

What Markets Should Conclude From France's Election

Mohamed A. El-Erian

FT April 26, 2017

An upswing in the world economy is not sustained growth

Martin Wolf

世界経済は改善している。問題は、それが長期の回復につながるか、である。

回復の最も重要な理由は、3つの連続したショックが終わったことだ。すなわち、2007-09年の世界金融危機、2009-13年のユーロ危機、2014-15年の一次産品価格ショック、である。

上昇の強さと持続期間は何によって決まるのか?

楽観的に観れば、自信が回復し、投資が増え、新規投資が旧整備を入れ替えて、生産性を高める。潜在成長力が高まり、債務も処理されていく。

しかし、逆のリスクもある。

1.政治リスク。オープンな世界経済が逆転する。特に、ドナルド・トランプの当選後に強まった。保護主義の危険と、大国間の政策協調が難しくなっている。

2.アメリカの新政権は危険な政策目標を掲げている。成長が過大評価されている。再選を目指してブームを刺激することは、1972年のリチャード・ニクソンのように、大きな不安定化をもたらす。

3.トランプ政権は、共和党の目標である金融規制の緩和に結び付く。

4.債務の膨張に依存する中国経済のリスクがある。

5.他の新興経済は、アメリカの金利上昇やドル高による影響を被る。

6.ヨーロッパの経済停滞が長期化するリスクがある。特に、イタリアやフランスはその危険がある。Brexitも破滅的な混乱に陥るかもしれない。

7.アメリカの右翼政治デマゴーグが増大する。ほかにも、ハンガリー、ポーランド、ロシア、トルコ、南アフリカ、など、国民投票型の独裁体制が強まっている。

最大の問題は、こうした政治情勢が正しい経済処方箋の実行を妨げることだ。しかも、政府は成長の果実をできるだけ広く配分し、共有させるべきである。

Project Syndicate APR 26, 2017

A World Turned Inside Out

STEPHEN S. ROACH

世界経済は回復し、正常に戻ったのか? 「ニュー・ノーマル」という言葉がはやっているが、世界経済に起きた驚くべき構造転換を見逃してはならない。

最近の回復は先進経済に集中している。対照的に、発展途上世界ではもっと高い成長率を実現している。以前に比べて半減したとはいえ、2017-18年で平均4.6%の成長率である。その中で強い経済China (6.4%) and India (7.5%)と弱い経済Latin America (1.5%) and Russia (1.4%)には差が生じている。

開発地域と発展途上地域との成長率の乖離は決定的な水準に至った。1980年から2007年までに、先進経済が世界GDPに占める割合は59%から41%に減少したのだ。2018年、IMFの最新の予測で、この逆転は明らかだ。先進経済が41%、途上諸国が59%である。

これはマクロ経済に3つの重要な問題を提起する。

1.金融政策の役割をどう見るか? 先進経済の異常な金融緩和は、その効果が弱く、弊害が顕著である。

2.発展途上世界が先進経済に依存してきた長期の傾向は失われたか? 先進経済の成長も、世界貿易の拡大も弱まった。

3.世界経済における中国の重要な役割は弱まるか? グローバル・サプライ。チェーンの構築を通じた中国の輸出志向型成長は弱まり、急速に内需型に転換しつつある。

金融政策についても、開発戦略についても、中国の役割についても、世界は逆転したのだ。新しいダイナミズムは発展途上世界にある。

NYT APRIL 26, 2017

The Low-Inflation World May Be Sticking Around Longer Than Expected

Neil Irwin


 Google分割

NYT APRIL 22, 2017

Is It Time to Break Up Google?

By JONATHAN TAPLIN


 フランス大統領選挙が示すもの

The Guardian, Sunday 23 April 2017

French polls show populist fever is here to stay as globalisation makes voters pick new sides

Christophe Guilluy

FT April 23, 2017

French first-round result brings Macron a step closer to coronation

Tony Barber

FT April 23, 2017

The irresistible rise of Emmanuel Macron

Peter Ricketts

私が大使としてパリにいたとき、マクロンEmmanuel Macronはフランス大統領になる、と予告したわけではないが、明らかに、彼は例外的な人物であった。俊敏な知性のひらめき、細部の完璧さ、大きな自信が結び付いた、しかも、非常にチャーミングな若者であった。人々に強い関心を持ち、新しいアイデアや議論を瞬時に吸収した。

マクロンは、オランドの大統領官邸で経済問題を担当し、大統領から大きな信頼を得ていた。彼は、オランド大統領が初期の政策である富裕層への大幅増税と雇用補助金を撤回し、減税とビジネスに好ましい環境を重視する政策に転換させた。マクロンは、フランス経済の硬直性を解消するために、さまざまな改革を行った。

新しい政治運動を立ち上げるには、大きな勇気が必要だ。大統領選挙で、ル・ペンとともに最終投票に残ったことは、フランス有権者の怒りの激しさを示すとともに、マクロンがフランス政治を大きく変える可能性を示している。

FT April 23, 2017

Macron, Le Pen and the limits of nationalism

Gideon Rachman

国際政治は新しい対立を示すことが明らかになった。右派と左派ではなく、ナショナリストとインターナショナリストの対立だ。フランス大統領選挙はその典型である。ル・ペンは、フランスがユーロ圏を離脱し、関税を引き上げ、国境管理を強化し、移民を排斥せよ、と主張している。マクロンは、EUを強く支持し、開放経済を信じ、難民を受け入れる。

トランプ、プーチン、BrexitEU内のナショナリスト政権、ドイツ、すべてが政治的に影響する。そして、ル・ペンに勝利したとして、マクロンがEUの改革に成功するか? インターナショナリストの勝敗はその成否にかかっている。

The Guardian, Monday 24 April 2017

Don’t assume Marine Le Pen is beaten: it’s delusional and dangerous

Natalie Nougayrède

FT April 24, 2017

France votes for hope over fearmongering

FT April 24, 2017

Macron shows how political talent can trump the zeitgeist

Janan Ganesh

SPIEGEL ONLINE 04/24/2017

Macron vs. Le Pen

A New Political Reality for France

A Commentary by Julia Amalia Heyer in Paris

Project Syndicate APR 24, 2017

Who Is Marine Le Pen?

CHRISTINE OCKRENT

Project Syndicate APR 24, 2017

Macron’s Mission

HAROLD JAMES

ル・ペンは、「野蛮なグローバリゼーション」に抵抗する国民の繭a national cocoonでフランスを守る、という。マクロンは、ノスタルジアと孤立を求める有権者たちにアピールしなければならない。

反ドイツ感情、反メルケルが刺激される。ユーロ危機が、奴隷にされた債務国にも、貯蓄を人質に取られた債権国にも、罠に落ちた、という感覚を生じている。

ヨーロッパを魅力的なアピールにするものは何か? 1950年代、統合を支持したドイツのKonrad Adenauer首相、フランスのCharles de Gaulle大統領、2人の老政治家たちは、自国の栄光を取り戻すためにヨーロッパを唱えた。ドイツはナチズムによって破滅し、フランスは軍事的敗北の後、共和制を放棄した。彼らは自国を破滅させたエリートたちに反対し、その支配から逃れる道を、ヨーロッパ統合に見たのだ。「フランスとドイツの和解、それのみがドイツをデカダンスから救済する」と、ド・ゴールは述べた。

独仏は、ヨーロッパの社会市場モデルによって、新しい雇用を生み出さねばならない。そして、安全保障においても統合することだ。

NYT APRIL 24, 2017

Work, Mr. Macron, Work

Roger Cohen

NYT APRIL 24, 2017

France’s Voters Keep Hope for Europe Alive

Sylvie Kauffmann

FP APRIL 24, 2017

The Radical Centrism of Emmanuel Macron

BY ROBERT ZARETSKY

Bloomberg APRIL 24, 2017

Continental Europe Wins the Sanity Contest

Leonid Bershidsky

FT April 25, 2017

The French centre-right still has a chance to make its mark

Rachida Dati

FT April 25, 2017

Emmanuel Macron will find that winning is the easy bit

François Heisbourg

Project Syndicate APR 25, 2017

The Making of Macron

DOMINIQUE MOISI

フランス革命がなければ、ナポレオン・ボナパルトはフランス陸軍の下士官に過ぎなかったであろう。マクロンは、社会党と共和党が崩壊したことで、最年少大統領候補になった。

フランスに、左右の対立という政治文化を超えた連立政権の時代を、マクロンが拓く。

FP APRIL 25, 2017

Emmanuel Macron Is Everything America’s Democrats Are Not

BY CHRISTOPHER GLAZEK

FT April 26, 2017

Emmanuel Macron’s halo can bring the London spirit to Paris

John Gapper

FT April 27, 2017

Emmanuel Macron offers the patriotic antidote to nationalism

Philip Stephens

NYT APRIL 27, 2017

How Macron Would Fix the French Economy

Ruchir Sharma

ル・ペンはEU離脱と移民排斥を唱えた。しかしマクロンは、フランスの困難を外部(EU官僚や移民)のせいにしなかった。それはフランスの「動脈硬化症」であり、持続不可能な福祉国家のせいである。最も注目すべきは、ル・ペンが福祉国家の拡大を求めたことに対して、マクロンはこの世界最速で拡大する福祉国家の規模削減を主張していることだ。

債務危機の後、スペイン、ポルトガル、イタリアは債務の削減を目指し、競争力の改善、労働コスト引き下げを勧めた。しかし、フランスは逆方向を向いている。マクロンは改革派官僚や都市若者層の強い支持を受けている。彼が批判するのは、ルールによって保護された公務員・組合員、システムの「インサイダーたち」である。

Bloomberg APRIL 27, 2017

Why Macron's Campaign Hasn't Been Hacked

Leonid Bershidsky

Bloomberg APRIL 27, 2017

Why It's Hard for Le Pen to Pull a Trump

Leonid Bershidsky


 ヴェネズエラ危機

FT April 23, 2017

Venezuela’s broken system cannot fix itself

Daniel Lansberg-Rodriguez


 ドイツの政治文化

FT April 23, 2017

German surplus hands eurozone dilemma to France

Wolfgang Münchau

この23か月以内に、トランプ大統領とフランスの新大統領は、経済外交における1つの重要問題に直面するだろう。それは、ドイツの経常収支黒字をどうするか、という問題だ。昨年は、GDP8.6%に達した。その規模と持続性は、世界経済にとっても、ユーロ圏にとっても、不均衡の最大の原因となっている。

しかし、ドイツはこれに関するすべての批判を一蹴してきた。これまでのフランス大統領たちも、ユーロ危機の緩和を最優先として、この問題を取り上げなかった。確かに、不均衡は貿易から生じているのではない。ドイツは輸出補助金や通貨操作で黒字を拡大したわけではないのだ。問題は、投資を超える貯蓄の過剰にある。それは政策の間違いと人口の高齢化によって生じている。

貿易制裁は過剰貯蓄を解消しない。世界はドイツにその原因に対処するよう求めるべきだ。すなわち、サービス部門の過剰な規制。政府・民間部門の投資不足。有害かつ不必要な財政黒字。

ドイツの反論は、ユーロ圏であるから、問題があるなら欧州委員会やECBを責めろ、ドイツ政府には何もできない、ということだ。しかし、それなら、ユーロ圏が問題に対処する権限を持たねばならない。ドイツには劣るが、世界第2の経済規模を持つユーロ圏の経常収支黒字もGDP3.4%に達する。ドイツは、たとえば、統合された財政による刺激策に反対している。

何をなすべきか? 私の考えでは、ドイツは不均衡を解消する政策を実行するか、あるいは、ユーロ圏のガバナンスを改革し、フランスが求めているような、独仏の協力でヨーロッパ統合の次の段階に進むべきだ。

フランスの次期大統領は、ドイツにユーロ圏が人々の支持を失っていること、特に、フランス国民が支持しなくなっていることを警告するべきだ。ユーロ危機はドイツにとっても重大な影響を及ぼす。それでもドイツ首相が黒字を解消しないなら、アメリカとの戦略的な連携によって、ドイツに行動を求めるのが良い。

トランプは、一方的な貿易制裁で脅すより、フランスと連携してドイツを動かすべきだろう。

Bloomberg APRIL 24, 2017

German Nationalists Double Down on Extremism

Leonid Bershidsky

Project Syndicate APR 25, 2017

Germany’s Coming Silver Age

MICHAEL HEISE

FP APRIL 27, 2017

Germany Has an Arrogance Problem

BY PAUL HOCKENOS

移民でも、製造業でも、財政政策でも、再生可能エネルギーでも、ドイツが、ドイツだけが最善のやり方を知っている、という確信をますます深めている。新聞のコラムや議会の討論、ビールを飲みながらの会話、いたるところに見られる傾向だ。

しかし、ドイツはヨーロッパ最大の汚れた石炭消費国(世界第7位)であり、パリ協定の2020年目標に対応できていない。その最大の輸出品は、大型の、高価な、排気ガス自動車である。ディーゼル車の虚偽データを使ったフォルクスワーゲンなど、ドイツ自動車産業はスキャンダルにまみれている。それが暴露されたのはアメリカの検査である。


 イギリス総選挙に向けて

FT April 23, 2017

Blair urges voters to back anti-Brexit candidates — even if Tory

Jim Pickard, Chief Political Correspondent

The Guardian, Monday 24 April 2017

The way to fight the Tories in June’s election is to turn Brexit against them

Tony Blair

Brexitがこの選挙を特別なものにしている。保守党はそれが有利に働くと考えているが、彼らに不利なことを示せるだろう。

私は戦術的な投票を呼び掛けたことはない。私は人々が十分に情報を得たうえで投票するべきだと主張する。有権者は、候補者がBrexitに関してどのような立場をとっているか、明確に、知っておくべきだ。保守党か、自民党か、労働党か、ということより、「いかなる犠牲を払ってもBrexit」という立場に、政党を超えて反対する選挙運動が必要だ。

Brexitだけが争点ではない、国民医療保険や学校の削減に関して、労働党への支持を求めるべきだ、と従来の考え方なら主張するだろう。しかし、それは失敗する。

本質において、保守党は、この選挙を「Brexit交渉に向かう首相により強い権力を与えてほしい」という形で示し、保守党を支持することが国益である、と主張している。

労働党がその戦略を打破するに、保守党の求める強い権力は、国益ではなく、保守党の右派が信奉するイデオロギーのために、「いかなる犠牲を払ってもBrexit」へと導くものだ、と示すことだ。しかも、これは労働党の狭い利益としてではない。人々は、合理的で、広範な、政党による分断を超えた立場を求めている。

スコットランドで、労働党は1議席を得るのも難しいだろう。しかし、スコットランドにおいて、UKを支持し、EUも支持しているのは、唯一、スコットランド労働党だけである。

これは従来の政党選挙ではない。

FT April 24, 2017

UK Election Countdown: the enemy defeats itself

Sebastian Payne

The Guardian, Tuesday 25 April 2017

Tony Blair should zip it. Interventions from its right wing won’t help Labour

Sam Glover

The Guardian, Tuesday 25 April 2017

Labour has a real Brexit alternative. Now it must get the message to voters

Owen Jones

労働党は、EUの諸権利と労働者保護を提案する。労働党は、UKを分断するBrexitではなく、統一を支持する。

FT April 26, 2017

UK Election Countdown: Labour’s well-constructed fudge

Sebastian Payne

FT April 26, 2017

Local approach will help Labour moderates dethrone Jeremy Corbyn

Sebastian Payne

労働党はコービンの下で何を戦うのか? すべては手遅れであろう。穏健派が主導権を奪い返すしかない。

The Guardian, Wednesday 26 April 2017

How can Labour survive this Tory tidal wave? Reach for the sandbags

Polly Toynbee

労働党の左派指導部と支持者とのかい離は決定的に拡大した。戦術的な投票、もしくは、進歩的な同盟。それを避ければ労働党議員は議会から一掃される。

The Guardian, Wednesday 26 April 2017

The Guardian view on the last PMQs: now the unnecessary election

Editorial

FT April 27, 2017

UK Election Countdown: when steamrollers collide

Sebastian Payne

Project Syndicate APR 27, 2017

What Mandate for Theresa May?

CHRIS PATTEN


(後半へ続く)