IPEの果樹園2017

今週のReview

4/24-29

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子供や若者が殺される ・・・大統領と政治顧問 ・・・トランプと北朝鮮危機 ・・・米中貿易摩擦 ・・・トルコ国民投票と憲法改正 ・・・フランス大統領選挙 ・・・メイによる総選挙 ・・・香港はどうなるか?

 [長いReview]

****************トランプの環境政策**************

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


 子供や若者が殺される

The Guardian, Saturday 15 April 2017

The cause of death that dare not speak its name: austerity

Gary Younge

月曜日、特殊学級の先生をしているKaren Smithの離婚した夫であるCedric Andersonは、彼女のSan Bernardino, Californiaにある小学校へ入った。そして彼女と8歳のJonathan Martinezを撃ち、殺害した。ほかに2人の子供を撃ち、その後、自分を撃って重傷を負った。

Martinezは、今年、アメリカで銃によって殺害された11歳以下の子供の67人目であった(その後もさらに多くの子供が殺されている)。Smithは、わずか数か月前に結婚したのだが、アメリカで夫(パートナー)や元夫によって毎月殺害される推定50人の女性の1人である。今年、すでに91件の無差別銃撃事件mass shootingsが起きている。およそ毎日1件だ。その銃撃犯は、知られているすべてが男性である。

アメリカでは、毎日、平均で7人の子供や10代の若者が銃によって殺されている。私はその家族に、なぜこのような事件が起きると思うか、尋ねた。しかし、誰もその答えを「銃」だとは言わなかった。彼らは銃撃を交通事故のように見なしているようだ。もし子供が撃たれたら、それは悔やまれるが、現代社会に生きることの悲劇的な代償である、と。どうしようもないことだ。それが男性による犯罪だ、という指摘はさらに聞かなかった。

MartinezSmithが殺された次の日、2人のロンドン住民がナイフで刺されて死んだ。90分以内の事件だ。48時間で3件のナイフによる傷害事件が起きた。ナイフによる殺傷事件が増えていることについて、デーヴィッド・キャメロン、トニー・ブレア、など、政治家たちは議論している。教育や家族の問題、そして黒人が原因として指摘された。しかし、もっと社会階級に分けて詳しく見れば、黒人が原因ではない。

近年、若者の状態が悪化していることについて共通して言えることが1つある。緊縮政策だ。2011年、政府は教育を受け続けるための財政支援をやめた。学校や大学に通う貧しい学生たちに、毎週30ポンドが支払われていたのだ。若者への行政サービス、若者のためのクラブ活動も削減された。若者の精神医療にもNHSは十分に支給しない。政府は、今、都市部の学校を減らそうとしている。

政府が危機につながる政治的選択をすれば、警察が事態を収拾することを求められる。しかし、警察も削減されている。ナイフを持ち歩く若者たちは、ギャングを恐れており、警察の保護を信用できない。

政治経済において当然とみなされている緊縮策は、われわれの社会を分裂状態にするが、そのことに無関心だ。財政が緊縮されると、弱い立場の人々が絶望的な状況に追い込まれる。


 大統領と政治顧問

FP APRIL 17, 2017

Jared Kushner Will Be Eaten by the Blob

BY STEPHEN M. WALT

トランプのホワイトハウスにおけるクシュナーJared Kushnerの役割は、民主党議員や専門家たちから激しい批判を浴びている。それは単に旧時代の身内による支配を思わせるだけでなく、若い不動産業者が彼の愛する義理の父親に頼まれて引き受けるにしても全く不可能な仕事だと思えるからだ。

クシュナーの任務は、イスラエルとパレスチナの紛争を解決すること。連邦政府の再編と整理のための民間コンサルタントによる「スワット・チーム」を率いること。中国、イラクへの、大統領の使節団を率いること。どこでもトランプが命じるところへ派遣される。また、スティーブ・バノンがやり過ぎないように歯止めになる(あるいは完全に追放する)こと。これでは、ヘンリー・キッシンジャーの狡知とリンドン・ジョンソンの政治的技量とを合わせ持つ者にでも手に余る。

にもかかわらず、クシュナーの役割に焦点を当てることは間違いだ。問題は、なぜ大統領が彼にこれほど多くの仕事を与えるのか、ワシントンDCの政治空間がどうなっているか、ということだ。

まず、ドナルド・トランプは老人だ。70歳の人が多くの新しいことを、新しい指導スタイルを学ぶのはむつかしい。彼は、部下を競わせて、信頼できるインサイダーを決め、彼らに強い忠誠心を求めた。彼が前例のない大統領選挙運動を展開して勝利した以上、今、その姿勢を改めるとは思えない。

全ての大統領は、彼が個人的にも親しい友人と思う側近や政治顧問(ときには家族)に頼る。Woodrow Wilson は親友のEdward Houseに頼り、Franklin D. RooseveltにはHarry Hopkins, John F. Kennedy には弟のBobby がいた。Barack Obama Valerie Jarrett, Ben Rhodesなどのインナーサークルに外交を頼った。クシュナーが異例の経験不足な人物とはいえ、政治や外交で、大統領との個人的関係から地位を得た最初の人物ではない。

ホワイトハウスの「すべてが家族による」トランプのスタイルは、この長期的な趨勢の帰結である。大統領の権力は何十年もかけて着実に増大してきた。大統領たちは、行政官僚の権力を奪って、自分のインナーサークルに重要な決定を移したのだ。この傾向は特に外交で顕著である。

ワシントンの政治文化を考えれば、忠誠心が特に高く評価されることも理解できる。オバマ時代に起きたことを観ればよい。オバマはRobert Gates を国防長官に指名し、2年後にその退官を祝福した。しかし、Gatesは回顧録を出版し、重要な決定に関するオバマ政権の内情を暴露し、大統領を批判した。George Marshall, Dean Acheson, or Brent Scowcroftについて、このようなことは考えられない。CIAと国防総省の長官に指名されたLeon Panettaは、2度も指名されたが、同じことをした。大統領の背中をナイフで刺したわけだ。

さらに、トランプの選挙運動が示した基本的なアイデアは、既存の政府機関は腐敗し、非効率である、政治家や政府職員は愚か者だ(あるいは、もっとひどい)、ということだ。もしそう思うのであれば、経験のない若い不動産開発業者を重要ポストに指名しても悪くはないだろう。クシュナーがこれほど大きな役割を担うのは、トランプがアメリカ政府に対して抱いている軽蔑の深さを示すものだ。

クシュナーの役割はもっと深刻な問題を示す。すなわち、トランプは政策がうまく行くかどうかに実際は関心がない、ということだ。医療保険制度がどうなるか、気候変動で何百万人も死ぬか、炭坑や自動車産業の労働者が新しい職場や良い賃金を得るどうか、イスラム国が敗退するか、アメリカのインフラを再建できるか、彼は気にしない。彼が気にしているのは、良いことが起きると彼が約束した人々に彼がやっていることを正しいと説得すること、事態がうまく行かないのは誰か他の者の責任だと信じさせることだけである。最初の日から明らかであるように、何よりも彼自身と彼の家族、彼の資産が関心のすべてである。それでおしまいだ。

国民のために仕事をすること、実際に統治すること、は激務である。だからそれはやめて、自分はゴルフをする。だれでも好きな者を雇えばよい。そして朝食の前に、膨大な仕事を命じておく。

シリアの人道的な介入において、すでにワシントンの軍事・外交専門家たちが動いたことは明らかだ。クシュナーが、それはつまりトランプが、自分たちの個人的な栄光を高める以外は、すべてをアウトソーシングするのは予測されたことである。


 トランプと北朝鮮危機

The Guardian, Monday 17 April 2017

Nuclear war has become thinkable again – we need a reminder of what it means

Paul Mason

先週、ドナルド・トランプはMoab, the “mother of all bombs”を使用した。空中で爆発する10トンの高性能爆弾で、94人のISIS兵士を殺害した、と報道した。

われわれはDaily Mailの文句「世界は息を呑む」によって気づく。もしこれが原子爆弾であったらどうなったのか?

広島に投下された原子爆弾は、15キロトンとされるが、200ヤード内のすべてを破壊し、2キロ以内のすべての者を焼き殺した。トライデントミサイル(複数個別誘導再突入体付き潜水艦発射弾道ミサイル)は455キロトンの破壊力を持つという。この核爆弾が、もし1つブリストルに投下された場合、高温の火の球が1キロに及び、Portishead からKeyneshamまでのすべての人々が深刻な熱傷を負い、 the Bristol Channel からthe Washまで放射能に汚染される。このシナリオでは169000人が即座に死亡し、18万人が緊急の治療を要するが、イギリスの医療制度では、現在、101000床のベッドしかない。

あなたを怯えさせたいわけではない。しかし今、世界の核弾頭の多くが、それを使うことも考えている男たちの手に握られている、ということだ。

金正恩は考えている。ウラジミール・プーチンは、核のスカレーションを止めること、まず1つ投下してから和平を提示することを考えている。昨年、1222日に、ほぼ同時刻に、核軍備を増強し、その技術をさらに改善する、とトランプとプーチンは発表した。

まさに今、金正恩の無法国家を威嚇するため、アメリカの空母が北朝鮮に向かっている。

われわれには、米中会談でどのような外交交渉が行われたのか、わからない。わかっているのは、トランプが1980年代から核兵器の威力に魅せられたことだ。彼は軍事顧問の助言を拒み、NATOの重要概念である、核は政治的抑止力である、という考えを理解しないようだ。

私はいつも、ハリケーン・カトリーナの後にニューオーリンズへ到着したアメリカのニュース・アンカーたちが示した表情を思い出す。あたかも夢から覚めたように、自分たちが災害に向かって夢遊病者のように歩いていた、と悟ったのだ。それは、脆弱な、貧困に押しつぶされ、分断された社会が、ハリケーンに遭えばどうなるか、を示していた。わずか数日で、文明が崩壊したのだ。

われわれは幸運であるかもしれない。北朝鮮がアメリカの艦隊を挑発しないように、中国指導部は本気で圧力をかける準備があるだろう。あるいは、われわれは不幸であるかもしれない。たとえミサイルが安定した軌道を維持できないとしても、北朝鮮は核兵器を持っているのだから。

1950年代から2000年の最初の10年まで、すべての核保有国には、多国間の国際管理体制を信じる軍産複合体の政治家たちがいた。今、われわれの周りの国際政治は、情緒的で、一方的な行動を好む、大衆の喜ぶ政治に傾いた、不安定な家族とマフィアに頼る人々に握られている。

テリーザ・メイ首相がイースター(復活祭)にふさわしいメッセージを送ったとしたら、それはこういうことだろう。核保有国が示すべき責任ある行動とは、核の先制使用を否定し、外交と経済による圧力で北朝鮮の姿勢を変え、非核化と軍備縮小に独自の外交努力を惜しまないことである、と。

FT April 17, 2017

Donald Trump, Kim Jong Un and the risk of nuclear miscalculation

Gideon Rachman

1950年、ワシントンで間違った発言があり、ピョンヤンでは間違った判断があったため、朝鮮戦争が始まった。今、再び朝鮮半島で戦争が始まることを世界が注視している。それは再びアメリカと北朝鮮の政府が判断を誤り、戦闘に踏み込む危険である。

金正恩は、その祖父や父と同じ、軍事力優先、孤立主義、偏執狂を継承している。もし彼がアメリカは彼の体制を破壊すると確信すれば、最初に攻撃するだろう。Foreign Policyの軍事専門家Jeffrey Lewisは、アメリカが彼を殺害し、特殊部隊がミサイル基地を発見する前に、金正恩は先に核攻撃する戦略を取っている、という。

核ミサイルはまだ開発途上であるが、韓国の首都ソウルは通常兵器による攻撃にさらされている。日本と韓国は、北朝鮮が科学壁を利用することを恐れている。

トランプが考えるように、中国の圧力が成功するかもしれない。しかし、それでも金正恩が引かなければ、トランプはジレンマに直面する。朝鮮半島に派遣した艦隊を、そのまま引き返すように命じるのか、あるいは、一層の強い圧力を中国にかけて、米中摩擦をもたらすのか?

また、トランプ大統領が北朝鮮に対して先制攻撃することも考えられる。その場合、韓国や日本の米軍基地も報復されるだろう。それは米軍が予測していることだが、ベトナム戦争と同じように、軍人たちは大統領に(嫌われるような)率直な助言を控えるかもしれない。

その場合、トランプは軍事行動が大統領にふさわしいイメージを高め、有権者が喜ぶことを知っている。また、シリアを空爆したときのように、議会も超党派で大統領の決断を支持するだろう、と考えるかもしれない。

政権には公然と北朝鮮への先制攻撃を主張する側近がいる。もし金正恩も同じ結論に至れば、彼は先制核攻撃を決断するだろう。

FT April 19, 2017

A reckless North Korea remains China’s useful ally

James Kynge

中国は今も北朝鮮と、アメリカ・西側に対抗する建国神話を共有している。

Victor Chaは、中国と北朝鮮の関係は常に良好ではなかったが、アメリカとの対抗を重視する中国にとって、北朝鮮は戦略的なパートナーであり続けている。北朝鮮に対する制裁は厳しいものではならない。北朝鮮は米軍を国境周辺から排除するための緩衝国家なのだ。


 米中貿易摩擦

FT April 19, 2017

Dealing with America’s trade follies

Martin Wolf

アメリカの政策担当者が無意味なことを主張したら、貿易相手国は何と答えるべきか? ヨーロッパ、日本、韓国の政府は困っている。アメリカの商務長官、Wilbur Rossロスは、経済の機能を理解しなくても億万長者になれることを示している。それは、生理学を理解しなくても陸上選手になれるのと同じである。

貿易赤字はその国の市場が開放的である理由にならない。それは、その国が所得以上に支出し、あるいは、貯蓄以上に投資していることを示す。保護貿易は赤字を減らすと直感的に思うだろうが、それは間違いだ。アメリカが輸入に関税を課すと、それは輸入を減らすだけでなく、輸出も減らす。貿易赤字を減らすより、GDPに対する貿易の比率が下がるだろう。

アメリカの財政赤字が貿易赤字を増やしているのだから、彼らの主張はさらに責められるべきだ。

アメリカの要求にパートナーはどのように応えるべきか? マクロ不均衡の重要性を認める。世界経済にダメージを生じないような、貿易を増やす譲歩を行う。多国間の貿易自由化を支持する。そして何より、我慢することだ。アメリカが永久に重要な問題を正しく理解しない者によって統治されるはずがないのだから。

Project Syndicate APR 20, 2017

Will Economic Illiteracy Trigger a Trade War?

JEFFREY D. SACHS

ドナルド・トランプが大統領になって100日も経つが、彼と彼が指名した商務長官は、大学の1年生が経済学で学ぶ間違った考えを、まだ主張している。すなわち、アメリカの経常収支(あるいは貿易収支)赤字は、それが黒字である中国やドイツが不公正な貿易取引をしているせいだ、

アメリカが慢性的に経常収支赤字を出すのを理解することはむつかしくない。アメリカの貯蓄率は過去30年間で顕著に低下してきた。その主要な理由は政府の貯蓄率の低下(財政赤字の増大)である。アメリカ型ポピュリズムにふける民主・共和両党が、繰り返し減税し、債務を増やしながら、低成長は他人のせいにしてきた。今、中国やドイツを責めているように。


 トルコ国民投票と憲法改正

FT April 18, 2017

A bitter victory for Turkey’s new sultan

国民投票の結果はエルドアンの勝利であった。これはトルコの歴史にとって転換点である。新憲法は大統領にチェックされない行政権限を与え、現代のスルタンにする。エルドアンは、国家機構の支配を完成するために多くの機会を得たのだ。

しかし、これは彼が強調したような勝利ではない。彼は51%の支持を得ただけである。特に、アンカラでも、イスタンブールでも、反対が多数を占めた。通常の選挙では与党AKが強い地域でもそうだった。南東部の紛争地域で、クルド人は提案を拒否した。たとえ一部が国内難民となって投票できなくても、反対したのだ。

合意を模索する、プラグマティックな姿勢ではなく、反体制派を逮捕・追放し、クルド人反政府軍との対話の再開や経済改革を行う希望を断った。エルドアンは、ナショナリズムに訴える戦略が成功した、と考えるだろう。

これはヨーロッパの交渉相手はジレンマに直面する。慎重な反応を示したブラッセルだが、新憲法はEU加盟に必要な基準を満たさないものだ。トルコのEU加盟は以前から可能性が乏しい想像であったが、今や笑い種である。しかしEUの指導者たちは、真正を拒否するより、貿易、安全保障、移民でEUに欠かせない国であり、国民の半数は反対したことを考慮するだろう。

より緊密な経済関係、例えば、トルコとの関税同盟を追究することは可能であろう。それはトルコが望んだような、完全かつ対等なパートナーシップには代わるものではない。トルコが西側に参加する道は、常に困難であったが、何十年かの後退を経て、ついに希望が消滅した。

これはトルコにとっての悲劇である。エルドアンは、改革や発展より対立を深めた。イスラム教徒が多数の大国が民主主義を実現することに打撃となり、また1つ、国民投票による専制国家が誕生しつつある。


 フランス大統領選挙

FP APRIL 17, 2017

The Last Days of Charles De Gaulle

BY ROBERT ZARETSKY

フランス中道右派の目標は、ドゴール主義を守ることに向けられている。フランス第5共和政を、1958年に始めたドゴールCharles de Gaulle将軍だ。危機に陥った国家を、ドゴールのビジョンを体現した憲法と、その意志を体現する政党が推進することになった。

ドゴールには政党に対するアレルギーがあった。第3共和制と第4共和政の衰退を生きた彼には、それだけの理由があったのだ。1940年、フランスはドイツに降伏し、1958年、アルジェリアを放棄した。彼はそれが、自分たちの特別な目標を追求する諸政党の失敗だと考えた。

諸政党が議会をマヒさせ、国民を分断した、とドゴールは信じていた。「ゴーリズム」は、それと対照的に、党派性や特異性(排他主義)を許さない。国民の基盤は誰にとっても十分に広く、地方、職業、民族、宗教に関わらないものだ。それは1944826日、解放されたパリのシャンゼリゼ通りをドゴールが歩いたときの啓示であった。のちにドゴールは書いた。「海のように、国民意識の奇跡の1つ1つがわれわれの歴史に輝くのを私は観た。群衆の中には、1つの思想、1つの躍動、1つの叫びがあり、すべての相違、すべての個人は消滅した。」

それでもドゴールは、フランスを諸政党によって統治するしかないことを知り、新しい政党L’Union pour la nouvelle république, or Union for the New Republic (UNR)を作った。それは中道と保守派を集め、あらゆるイデオロギーのシチューであった。そして彼らは、常にドゴール将軍の相続人であると主張した。

「ゴーリズムの中心はドゴールであり、そのほかには沈黙しかない。」と初期のゴーリストは語った。フランス政治の高名な学者Stanley Hoffmannは、ゴーリズムを「イデオロギー的には空洞である」と非難した。しかし、そこには何かがあったのだ。

最も基本的なレベルで、ゴーリズムとは、強い、高度に集権化された国家を意味する。国家は健康や社会的権利を守る者、また、社会的安定性の保障であった。

FP APRIL 20, 2017

France’s Election Is Trump vs. Merkel vs. Modi vs. Corbyn

BY JAMES TRAUB

今年の初め、マリーネ・ル・ペンMarine Le Penが国民戦線の3000人の活動家たちに約束したのは、「2つの全体主義」に対して戦うことだった。すなわち、「イスラム主義」と「金融主義」である。この「文明の選択」において、とル・ペンは厳粛に約束した。「われわれの社会の外側に向けた壁を守る」、と。

ル・ペンが取り上げる2つの主要なテーマ、「ナショナル・アイデンティティー」と「グローバリゼーション」に関して、「リベラル」と「反リベラル」という2つの反応に分けるなら、4人の候補者の誰があなたの投票する人物かわかるだろう。

ル・ペンの最大の敵であるマクロンEmmanuel Macronは、どちらについてもリベラルだ。共和党の候補者、フィヨンFrançois Fillonは、アイデンティティーではリベラルを否定し、経済ではリベラルだ。左派の指導者、メランションJean-Luc Mélenchonは、その逆である。驚いたことに、選挙前のフランス有権者たちは、現代の重大問題に関する4人の立場の間で、ほぼ均等に分裂している。

Brexitとドナルド・トランプ当選の衝撃を受けて、西側世界は2つの大陣営に分裂した。東欧・アメリカの非リベラル諸政府は、その政策がル・ペンの公約に似ている。そして、マクロン的な、西欧のリベラル体制と対立する。しかしさらに大きく見れば、フィヨン的な民主主義体制が、インド、トルコにもあり、ナショナリズムを強めるが、にもかかわらずグローバリゼーションの利益を得ることにも熱心だ。メランション(もしくはバーニー・サンダース)的な反グローバリゼーションの左派は、Syrizaがかろうじてギリシャでだけ政権を得ているが、同様の政党がイタリア、スペインなど、南欧で勢力を拡大している。

未来はリベラルと非リベラルとの純粋な闘いではない。この2項対立を超えて、われわれは考える必要がある。

移民、アイデンティティー、グローバリゼーション、世界市民、金融の支配、週35時間制、EU・ユーロ。各候補者たちは対立する主張を展開している。多くの有権者がだれに投票するか決めておらず、むしろ戦略的な計算で投票するだろう。どうしたらル・ペンが大統領になるのを阻めるか? ル・ペンのナショナリズムはフィヨンよりもずっと過激であり、ル・ペンの経済政策はメランションよりもずっと破滅的だ。

その結果、より多くの票を得るのはマクロンだろう。穏健な左派も、穏健な保守も、マクロンなら我慢できる。彼は若く、ハンサムで、ダイナミックだ。他の候補者たちより未来を感じさせる。しかし、それは奇妙なことだ。フランスの有権者は、伝統的に自由市場を嫌っていたし、今はテロと「コミュニタリアニズム」(フランス人が嫌う集団主義)を懸念しているのに、純リベラルな大統領を選ぶ。マクロンは、フランス市民が旧来の英米型世界観に従わないことを知るだろう。なすべきことを持たない大統領が誕生する。

自由市場、自由貿易への信念は、もはや、グローバリゼーションに取り残されたと感じる中産階級に支持されない。難民や移民を歓迎する文化的な普遍主義も、多くのイスラム教徒が政教分離や西側の進歩的価値観を受け入れない現実と矛盾する。リベラリズムは、ナショナリズムや排外主義に対抗する、新しい言葉、新しい政策のセットを見出さねばならない。世界市民主義のアイデンティティー、ヨーロッパのアイデンティティーでさえ、人々が気持ちよく受け入れるものではない。

未来は愛国心に肯定的なリベラルの定義を見出すことにある。


 メイによる総選挙

The Guardian, Wednesday 19 April 2017

Coalition, collaboration and tactical voting: that’s how to halt hard Brexit

Paul Mason

テリーザ・メイは、七面鳥がクリスマスを支持することはない、ということを発見するだろう。

メイ政権が成功しているのは、誰も何も知らないからだ。だれも何をするか思いつかない。

パニックと無能さから、メイは総選挙を決めた。数か月に及ぶ党内抗争と反対派、労働党の支持率は低い。パニックは、メイが50条による離脱交渉を申請したとき、何の計画も、合意された交渉姿勢もなく、経済が悪化する中で起きた。インフレは賃金上昇よりも大きく、われわれの実質賃金は低下する。

銀行も、保険会社も、自動車工場も、ハードBrexitというメイの政策に足で投票し、イギリスを出て行く。メイは交渉姿勢を明確に示さない。マニフェストは重要問題に答えない。人の自由移動も、EUの通商政策も、EUの裁判所も。

メイの保守党が主張するのは、「われわれを信頼せよ」だけである。

イギリス政治の半分を占める進歩派はBrexitについて分裂している。自由民主党と緑の党は逆転を望み、労働党内のブレア派もそうだ。それは正当な、立憲的方法で行われねばならない。私はそれが、最終のBrexit法案を議会で投票し、もし承認されない場合は現状維持を決める、という形で行われると考えた。ブラッセルにも、イギリス議会にも、それは不可能だという者がいるが、彼らは嘘つきだ。

SNPEU残留を望み、Brexitなら分離・独立に関する2度目の国民投票を目指す。メイはこれを保証しない。労働党の多数派はソフトBrexitを望む。彼らの目的はメイ政権打倒で一致する。

今では、「進歩派同盟」を形成する時間がない。しかし、選挙区の協力や連携には多くの機会がある。保守党候補者を落選させるために戦術的な投票を行うべきだ。

われわれの目標は、ぎりぎりで多数を得ることではない。ハードBrexitを推進するトーリー主義を1世代にわたって政治から一掃すること、イギリスとEUの関係を、「半ばは離脱するが、重大な意味で関与した」関係に再生させることだ。社会正義をともなうBrexitか。あるいは、制御不能のナショナリズムに翻弄されるBrexitか、である。後者はUKの解体、経済崩壊をもたらす。

民間部門の実質賃金が低下する中で、保守党はすでに、公務員の給与を制限し、高齢者の介護はカオスに向かい、100万人以上がゼロ時間契約に従っている。住宅バブルは破裂するだろう。

ハードBrexitを推進する保守党は、すでに職場の権利、人権、福祉国家を攻撃してきた。しかし、投票結果が何であれ、イギリスには進歩的多数派が存在する。反動的な、ナショナリスト、排外主義者、民営化推進派を圧倒できる。


 香港はどうなるか?

FT April 20, 2017

Hong Kong faces an uncertain future as dynamism fades

Lionel Barber

香港クラブで昼食をとった。ホストはCH Tungだった。CHは英語を話す資産家で、1997年の香港中国返還後、最初の行政長官であった。

CH79歳だが、まだまだ元気だ。彼の世代の多くの人たちと同様、第2次世界大戦後、共産主義の支配を逃れた上海からの難民であった。香港に関する彼の判定はあいまいだ。・・・

香港は今も法の支配を守り、トップクラスの金融センターであり、中継ぎ貿易港である。しかし、そのダイナミズムは失われてしまった。低成長、住宅価格の高騰が中産階級を苦しめ、社会的な上昇を難しくした。ビジネスは得意な分野で、すなわち不動産投資で栄えている。しかし革新は起きない。香港は市民が議論できる公共政策機関を整備しなかった。干拓事業も停滞している。

次期行政長官であるCarrie Lamは、非常に優秀な官僚であるが、難しい仕事に就く。彼女は2人の主人に仕えるからだ。一方では北京政府、もう一方では香港住民。どの行政長官も、北京の歓心を買おうとして、香港住民に深く嫌われた。

かつて香港返還交渉において、Margaret Thatcherサッチャーの切り札は、香港が金の卵を産むガチョウであったことだ。北京がこれを絞め殺すことはないだろう、と。しかし、今は違う。中国経済は自由化され、競争するガチョウたち、上海、広州、深圳がいる。香港は取り残されることを恐れている。

2014年の雨傘革命は当局を脅かした。北京の忍耐が試されたのだ。抑制する感覚が支配したが、脅威がもっと強ければ本土からの介入が起きただろう。

イギリス政府は沈黙した。イギリスにとっては貿易が重要であり、Brexit後の中国・イギリス関係は「黄金時代」である、とたたえている。中国政府に敬意を表するのは理解できるが、民主化に対して沈黙したことは恥ずべきだ。

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The Economist April 8th 2017

North Korea: The land of lousy options

Banyan: An Australia that can say no

Donald Trump and the unions: A riveting relationship

Lexington: America’s forgotten war victory

The United Arab Emirates: The Gulf’s little Sparta

The Pearl River Delta: Jewel in the crown

Trade: Back to the 1980s

Free exchange: Self-inflicted wounds

(コメント) 北朝鮮,アラブ首長国連邦,ヴェネズエラ。これら3つの国家に関する記事が興味深いです。北朝鮮危機に関する選択肢は,いずれも好ましくない,偶発的な戦争による甚大な損害を前提とした外交ゲームです。他方,アラブ首長国連邦の拡大戦略は,少なくともここまで,目覚ましい成功を遂げました。おそらく,それが地域の均衡を破壊するでしょう。そして,石油資源に依存したヴェネズエラの危機です。ポピュリズムの破壊的局面を鮮明に示しています。

オーストラリアは,あまりにも多くの貿易黒字を得たことで,中国に対する外交を苦慮しています。トランプが,共和党の破壊し続けた労働運動と親密な関係を築いたこと。アメリカの大統領が国民を戦場に送り,戦死者たちを称えるとき,その理想をどのように描くべきか。1980年代の対日貿易摩擦と同じ発想が何を意味するのか。

特集記事,珠江デルタ。しかし,中国経済の爆発的な成長力を称賛する記事には,複雑なマイナス面への言及が欠けていると思います。

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IPEの想像力 4/24/2017

グローバリゼーションにふさわしい政治秩序とは何か?

世界金融危機とトランプ政権によって、各地の指導者たちは後戻りできないグローバルな政治経済構造の転換に呑み込まれたように見えます。

フランス大統領選挙では、ル・ペン、マクロン、フィヨン、メランションがグローバリゼーションの政治経済秩序をめぐって争いました。ル・ペンは、愛国心(排外主義)を優先し、グローバリゼーションの利益を否定します。国際秩序より自国第一の、トランプやプーチンと共鳴します。

他方、マクロンは、自国に限定されない、人類の自由・平等・友愛を訴え、グローバリゼーションを改革できると主張します。EUやユーロはそのための制度であり、さらに強化して、望ましい市民社会を経済成長と社会正義・安定性に導きます。

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「国際関係論」のテキストを使いながら、私はやや不満でした。リベラルな秩序が依拠する国民国家、ウェストファリア体制(主権のビリヤード型モデル)が、唯一の、人類が目標とする国際秩序である(あった)ような説明に,疑問が残ったからです。

「国民国家」は、ヨーロッパの特別な歴史地理的条件、E.ジョーンズのいう諸国家並存体制において、しかも他の大陸における帝国化を継続しつつ、維持されました。ヨーロッパ諸帝国の解体後、国家・民主化・自由化のモデルは他の大陸で必ずしも成功していません。宗教改革にともなう30年戦争の殺りくが、今、中東で起きているとしても、この地域がウェストファリア体制に向かうことで安定するとは限りません。

ヨーロッパでさえ,「さあ国家ができた。これから国民を作ろう。」と政治指導者たちは,何度も,戦争を引き起こしました。覇権の移行における近代の大戦争が待っているとしたら,国民国家を採用しない方がよいでしょう。

それは,軍事的な要素の強い帝国や、技術的・文化的な要素の強い文明圏であったし、各地の合意や歴史的な制度を破壊する,外から(上から)の国際秩序であったと思います。圧倒的な軍事力の優位、神秘的な(宗教的な)医学の知識は、西洋の衝撃としてグローバルな秩序の破壊と再編を推し進めました。こうした西洋(欧米そして,同じモデルを採用した日本)の衝撃が平和をもたらしたのは、原子爆弾の恐怖が自分たちにもおよぶと知ったからでしょう。

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ヨーロッパが目指すのは,ウェストファリア体制からの離脱です。柔軟なEUは,さまざまな分野における合意された規範や法を基に,「戦争による平和」の悪夢を克復する試みです。

あるいは,資本主義システムのダイナミズム、グローバル・サプライ・チェーンは,諸大陸を結ぶ繁栄の砦を築きつつあります。多国籍企業と貿易・金融システムが,リベラルな社会的理想を抱く市民のネットワークを,国民国家ではない形で生み出すかもしれません。珠江デルタ地帯は,今も,北京と香港とのバランスを世界に問いかけます。

市場が開放され,社会的な分業が拡大して,次々に革新を波及し,旧来の秩序を破壊するとき,政治経済秩序の革新は,グローバルなニューディール、福祉国家、社会改革の可能性に答えの一部を探します。

グローバリゼーションも,リベラルの理想も,平和と繁栄,コミュニティーの労働や暮らしやすさを実現する,海や風であると思います。

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