IPEの果樹園2017
今週のReview
4/24-29
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子供や若者が殺される ・・・大統領と政治顧問 ・・・トランプと北朝鮮危機 ・・・米中貿易摩擦 ・・・トルコ国民投票と憲法改正 ・・・フランス大統領選挙 ・・・トランプの政策転換 ・・・メイによる総選挙 ・・・香港はどうなるか? ・・・グローバリゼーションと国民国家 ・・・化学兵器とトランプ外交
[長いReview]
****************トランプの環境政策**************
主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 子供や若者が殺される
The Guardian, Saturday 15 April 2017
The cause of death that dare not
speak its name: austerity
Gary
Younge
月曜日、特殊学級の先生をしているKaren Smithの離婚した夫であるCedric Andersonは、彼女のSan
Bernardino, Californiaにある小学校へ入った。そして彼女と8歳のJonathan
Martinezを撃ち、殺害した。ほかに2人の子供を撃ち、その後、自分を撃って重傷を負った。
Martinezは、今年、アメリカで銃によって殺害された11歳以下の子供の67人目であった(その後もさらに多くの子供が殺されている)。Smithは、わずか数か月前に結婚したのだが、アメリカで夫(パートナー)や元夫によって毎月殺害される推定50人の女性の1人である。今年、すでに91件の無差別銃撃事件mass shootingsが起きている。およそ毎日1件だ。その銃撃犯は、知られているすべてが男性である。
アメリカでは、毎日、平均で7人の子供や10代の若者が銃によって殺されている。私はその家族に、なぜこのような事件が起きると思うか、尋ねた。しかし、誰もその答えを「銃」だとは言わなかった。彼らは銃撃を交通事故のように見なしているようだ。もし子供が撃たれたら、それは悔やまれるが、現代社会に生きることの悲劇的な代償である、と。どうしようもないことだ。それが男性による犯罪だ、という指摘はさらに聞かなかった。
MartinezとSmithが殺された次の日、2人のロンドン住民がナイフで刺されて死んだ。90分以内の事件だ。48時間で3件のナイフによる傷害事件が起きた。ナイフによる殺傷事件が増えていることについて、デーヴィッド・キャメロン、トニー・ブレア、など、政治家たちは議論している。教育や家族の問題、そして黒人が原因として指摘された。しかし、もっと社会階級に分けて詳しく見れば、黒人が原因ではない。
近年、若者の状態が悪化していることについて共通して言えることが1つある。緊縮政策だ。2011年、政府は教育を受け続けるための財政支援をやめた。学校や大学に通う貧しい学生たちに、毎週30ポンドが支払われていたのだ。若者への行政サービス、若者のためのクラブ活動も削減された。若者の精神医療にもNHSは十分に支給しない。政府は、今、都市部の学校を減らそうとしている。
政府が危機につながる政治的選択をすれば、警察が事態を収拾することを求められる。しかし、警察も削減されている。ナイフを持ち歩く若者たちは、ギャングを恐れており、警察の保護を信用できない。
政治経済において当然とみなされている緊縮策は、われわれの社会を分裂状態にするが、そのことに無関心だ。財政が緊縮されると、弱い立場の人々が絶望的な状況に追い込まれる。
● 新しい乖離
VOX, 15 April 2017
European and Asian incomes in 1914:
New take on the Great Divergence
Peter
Lindert
● 大統領と政治顧問
NYT APRIL 15, 2017
Steve Bannon Was Doomed
Frank
Bruni
バノンは、政治顧問が越えてはならない線を超えた。バノンはトランプのために働くに過ぎない。「スターのため補助する役者でしかない。スターでは決してない。」「誰がスターであるかを忘れてはならない。」
FP APRIL 17, 2017
Jared Kushner Will Be Eaten by the
Blob
BY
STEPHEN M. WALT
トランプのホワイトハウスにおけるクシュナーJared Kushnerの役割は、民主党議員や専門家たちから激しい批判を浴びている。それは単に旧時代の身内による支配を思わせるだけでなく、若い不動産業者が彼の愛する義理の父親に頼まれて引き受けるにしても全く不可能な仕事だと思えるからだ。
クシュナーの任務は、イスラエルとパレスチナの紛争を解決すること。連邦政府の再編と整理のための民間コンサルタントによる「スワット・チーム」を率いること。中国、イラクへの、大統領の使節団を率いること。どこでもトランプが命じるところへ派遣される。また、スティーブ・バノンがやり過ぎないように歯止めになる(あるいは完全に追放する)こと。これでは、ヘンリー・キッシンジャーの狡知とリンドン・ジョンソンの政治的技量とを合わせ持つ者にでも手に余る。
にもかかわらず、クシュナーの役割に焦点を当てることは間違いだ。問題は、なぜ大統領が彼にこれほど多くの仕事を与えるのか、ワシントンDCの政治空間がどうなっているか、ということだ。
まず、ドナルド・トランプは老人だ。70歳の人が多くの新しいことを、新しい指導スタイルを学ぶのはむつかしい。彼は、部下を競わせて、信頼できるインサイダーを決め、彼らに強い忠誠心を求めた。彼が前例のない大統領選挙運動を展開して勝利した以上、今、その姿勢を改めるとは思えない。
全ての大統領は、彼が個人的にも親しい友人と思う側近や政治顧問(ときには家族)に頼る。Woodrow Wilson は親友のEdward
Houseに頼り、Franklin D. RooseveltにはHarry Hopkins, John F.
Kennedy には弟のBobby がいた。Barack Obamaは
Valerie Jarrett, Ben Rhodesなどのインナーサークルに外交を頼った。クシュナーが異例の経験不足な人物とはいえ、政治や外交で、大統領との個人的関係から地位を得た最初の人物ではない。
ホワイトハウスの「すべてが家族による」トランプのスタイルは、この長期的な趨勢の帰結である。大統領の権力は何十年もかけて着実に増大してきた。大統領たちは、行政官僚の権力を奪って、自分のインナーサークルに重要な決定を移したのだ。この傾向は特に外交で顕著である。
ワシントンの政治文化を考えれば、忠誠心が特に高く評価されることも理解できる。オバマ時代に起きたことを観ればよい。オバマはRobert Gates を国防長官に指名し、2年後にその退官を祝福した。しかし、Gatesは回顧録を出版し、重要な決定に関するオバマ政権の内情を暴露し、大統領を批判した。George Marshall, Dean
Acheson, or Brent Scowcroftについて、このようなことは考えられない。CIAと国防総省の長官に指名されたLeon Panettaは、2度も指名されたが、同じことをした。大統領の背中をナイフで刺したわけだ。
さらに、トランプの選挙運動が示した基本的なアイデアは、既存の政府機関は腐敗し、非効率である、政治家や政府職員は愚か者だ(あるいは、もっとひどい)、ということだ。もしそう思うのであれば、経験のない若い不動産開発業者を重要ポストに指名しても悪くはないだろう。クシュナーがこれほど大きな役割を担うのは、トランプがアメリカ政府に対して抱いている軽蔑の深さを示すものだ。
クシュナーの役割はもっと深刻な問題を示す。すなわち、トランプは政策がうまく行くかどうかに実際は関心がない、ということだ。医療保険制度がどうなるか、気候変動で何百万人も死ぬか、炭坑や自動車産業の労働者が新しい職場や良い賃金を得るどうか、イスラム国が敗退するか、アメリカのインフラを再建できるか、彼は気にしない。彼が気にしているのは、良いことが起きると彼が約束した人々に彼がやっていることを正しいと説得すること、事態がうまく行かないのは誰か他の者の責任だと信じさせることだけである。最初の日から明らかであるように、何よりも彼自身と彼の家族、彼の資産が関心のすべてである。それでおしまいだ。
国民のために仕事をすること、実際に統治すること、は激務である。だからそれはやめて、自分はゴルフをする。だれでも好きな者を雇えばよい。そして朝食の前に、膨大な仕事を命じておく。
シリアの人道的な介入において、すでにワシントンの軍事・外交専門家たちが動いたことは明らかだ。クシュナーが、それはつまりトランプが、自分たちの個人的な栄光を高める以外は、すべてをアウトソーシングするのは予測されたことである。
● リベラルと供給側の経済学
NYT APRIL 15, 2017
Supply-Side Economics, but for
Liberals
By
NEIL IRWIN
● トランプと北朝鮮危機
The Guardian, Sunday 16 April 2017
Is Donald Trump the man to promote
peace with North Korea?
Mark
Seddon
The Guardian, Sunday 16 April 2017
The Guardian view on North Korea:
apocalypse not right now
Editorial
The Guardian, Monday 17 April 2017
Nuclear war has become thinkable
again – we need a reminder of what it means
Paul
Mason
先週、ドナルド・トランプはMoab, the “mother of all bombs”を使用した。空中で爆発する10トンの高性能爆弾で、94人のISIS兵士を殺害した、と報道した。
われわれはDaily Mailの文句「世界は息を呑む」によって気づく。もしこれが原子爆弾であったらどうなったのか?
広島に投下された原子爆弾は、15キロトンとされるが、200ヤード内のすべてを破壊し、2キロ以内のすべての者を焼き殺した。トライデントミサイル(複数個別誘導再突入体付き潜水艦発射弾道ミサイル)は455キロトンの破壊力を持つという。この核爆弾が、もし1つブリストルに投下された場合、高温の火の球が1キロに及び、Portishead
からKeyneshamまでのすべての人々が深刻な熱傷を負い、 the Bristol Channel からthe
Washまで放射能に汚染される。このシナリオでは16万9000人が即座に死亡し、18万人が緊急の治療を要するが、イギリスの医療制度では、現在、10万1000床のベッドしかない。
あなたを怯えさせたいわけではない。しかし今、世界の核弾頭の多くが、それを使うことも考えている男たちの手に握られている、ということだ。
金正恩は考えている。ウラジミール・プーチンは、核のスカレーションを止めること、まず1つ投下してから和平を提示することを考えている。昨年、12月22日に、ほぼ同時刻に、核軍備を増強し、その技術をさらに改善する、とトランプとプーチンは発表した。
まさに今、金正恩の無法国家を威嚇するため、アメリカの空母が北朝鮮に向かっている。
われわれには、米中会談でどのような外交交渉が行われたのか、わからない。わかっているのは、トランプが1980年代から核兵器の威力に魅せられたことだ。彼は軍事顧問の助言を拒み、NATOの重要概念である、核は政治的抑止力である、という考えを理解しないようだ。
私はいつも、ハリケーン・カトリーナの後にニューオーリンズへ到着したアメリカのニュース・アンカーたちが示した表情を思い出す。あたかも夢から覚めたように、自分たちが災害に向かって夢遊病者のように歩いていた、と悟ったのだ。それは、脆弱な、貧困に押しつぶされ、分断された社会が、ハリケーンに遭えばどうなるか、を示していた。わずか数日で、文明が崩壊したのだ。
われわれは幸運であるかもしれない。北朝鮮がアメリカの艦隊を挑発しないように、中国指導部は本気で圧力をかける準備があるだろう。あるいは、われわれは不幸であるかもしれない。たとえミサイルが安定した軌道を維持できないとしても、北朝鮮は核兵器を持っているのだから。
1950年代から2000年の最初の10年まで、すべての核保有国には、多国間の国際管理体制を信じる軍産複合体の政治家たちがいた。今、われわれの周りの国際政治は、情緒的で、一方的な行動を好む、大衆の喜ぶ政治に傾いた、不安定な家族とマフィアに頼る人々に握られている。
テリーザ・メイ首相がイースター(復活祭)にふさわしいメッセージを送ったとしたら、それはこういうことだろう。核保有国が示すべき責任ある行動とは、核の先制使用を否定し、外交と経済による圧力で北朝鮮の姿勢を変え、非核化と軍備縮小に独自の外交努力を惜しまないことである、と。
The Guardian, Monday 17 April 2017
Can Trump defuse North Korea by
acting like Ike?
Matthew
d'Ancona
FT April 17, 2017
Donald Trump, Kim Jong Un and the
risk of nuclear miscalculation
Gideon
Rachman
1950年、ワシントンで間違った発言があり、ピョンヤンでは間違った判断があったため、朝鮮戦争が始まった。今、再び朝鮮半島で戦争が始まることを世界が注視している。それは再びアメリカと北朝鮮の政府が判断を誤り、戦闘に踏み込む危険である。
金正恩は、その祖父や父と同じ、軍事力優先、孤立主義、偏執狂を継承している。もし彼がアメリカは彼の体制を破壊すると確信すれば、最初に攻撃するだろう。Foreign Policyの軍事専門家Jeffrey
Lewisは、アメリカが彼を殺害し、特殊部隊がミサイル基地を発見する前に、金正恩は先に核攻撃する戦略を取っている、という。
核ミサイルはまだ開発途上であるが、韓国の首都ソウルは通常兵器による攻撃にさらされている。日本と韓国は、北朝鮮が科学壁を利用することを恐れている。
トランプが考えるように、中国の圧力が成功するかもしれない。しかし、それでも金正恩が引かなければ、トランプはジレンマに直面する。朝鮮半島に派遣した艦隊を、そのまま引き返すように命じるのか、あるいは、一層の強い圧力を中国にかけて、米中摩擦をもたらすのか?
また、トランプ大統領が北朝鮮に対して先制攻撃することも考えられる。その場合、韓国や日本の米軍基地も報復されるだろう。それは米軍が予測していることだが、ベトナム戦争と同じように、軍人たちは大統領に(嫌われるような)率直な助言を控えるかもしれない。
その場合、トランプは軍事行動が大統領にふさわしいイメージを高め、有権者が喜ぶことを知っている。また、シリアを空爆したときのように、議会も超党派で大統領の決断を支持するだろう、と考えるかもしれない。
政権には公然と北朝鮮への先制攻撃を主張する側近がいる。もし金正恩も同じ結論に至れば、彼は先制核攻撃を決断するだろう。
NYT APRIL 17, 2017
President Trump’s Loose Talk on
North Korea
By THE EDITORIAL BOARD
NYT APRIL 17, 2017
The North Korea Paradox: Why There
Are No Good Options on Nuclear Arms
By
MAX FISHER
NYT APRIL 18, 2017
How America Is Losing the
Credibility War
Antony
J. Blinken
FT April 19, 2017
A reckless North Korea remains
China’s useful ally
James
Kynge
中国は今も北朝鮮と、アメリカ・西側に対抗する建国神話を共有している。
Victor
Chaは、中国と北朝鮮の関係は常に良好ではなかったが、アメリカとの対抗を重視する中国にとって、北朝鮮は戦略的なパートナーであり続けている。北朝鮮に対する制裁は厳しいものではならない。北朝鮮は米軍を国境周辺から排除するための緩衝国家なのだ。
NYT APRIL 19, 2017
How to Defuse the Crisis With North
Korea
By JOEL S. WIT
FP APRIL 19, 2017
Is the United States Really Blowing
Up North Korea’s Missiles?
BY
JEFFREY LEWIS
The Guardian, Thursday 20 April 2017
Trump is president. That's reason
enough not to go to war with North Korea
Isaac
Stone Fish
NYT APRIL 20, 2017
Paging the Trump Armada
Gail
Collins
トランプの「無敵艦隊」は朝鮮半島には向かわず、その反対方向に進んでいた。・・・なんだ、それは?
艦隊はオーストラリアとの合同軍事演習に参加する。公式説明では、その後、朝鮮半島に向かうらしい。スパイサー報道官は水曜日に語った。明日は、あわれなスパイサーがスキーを履いて現れ、われわれはスイスと戦争する、というだろう。
有権者は、選挙運動でトランプが言ったことの半分は、すでに逆転したことを知っている。
NYT APRIL 20, 2017
The North Korea-Trump Nightmare
Nicholas
Kristof
FP APRIL 20, 2017
Trump’s North Korea Standoff Rattles
Allies and Adversaries
BY
ROBBIE GRAMER, PAUL MCLEARY
● Brexitとドイツ
FT April 16, 2017
A two-speed post-Brexit Europe is
best avoided
Hans-Werner
Sinn
The Guardian, Wednesday 19 April
2017
Germany needs a strong EU. Why would
it allow Britain an easy Brexit?
Charles
Grant
イギリスはドイツの姿勢を長く誤解してきた。保守党の多くは、メルケルが経済的利益を理由にイギリスとの取引を求めるだろう、と間違って前提している。
しかし、現実には、ドイツの姿勢は強硬である。メイが総選挙に勝っても、その姿勢は変えられない。メイが議会の多数を握れば、交渉は容易になる、とベルリンは観ている。
メイは、野党や貴族院からの批判に対抗し、保守党内の懐疑派を抑えねばならない。選挙期間にあふれる過激な反EUの主張により、交渉成立に必要な好意は失われるだろう。
多くのドイツ人は、フランスやイタリアと違い、自由貿易や自由な市場を支持し、市場への介入に反対するイギリスが離脱することを惜しんでいる。EU財政や防衛・外交政策でも、離脱は好ましくない。Brexit後のEUでドイツがさらに支配的な国になれば、強く反発する加盟国がある。
しかし、だからイギリスの交渉は容易だ、と思うのは間違いだ。ドイツの最優先する目標は、BrexitがEUを弱めない、ということだ。従って、イギリスに特別な条件を与えない、ということになる。
国内政治でも、EU内でも、メルケルの政治力に陰りが見える。それは以前に比べて強硬な姿勢を取らせるだろう。ドイツは、イギリス側が十分に交渉準備をしていないと考えている。EU財政の負担がBrexitによって最も増えるのはドイツである。ドイツの妥協を期待することはできない。
SPIEGEL ONLINE 04/20/2017
International Trumpquake
Tentative Stirrings of a
Beijing-Berlin Axis
By
Ralf Neukirch, Gerald Traufetter and Bernhard Zand
● 米中貿易摩擦
FT April 16, 2017
Chinese buyers fuel Brooklyn real
estate boom
Rana
Foroohar
FT April 18, 2017
American farm belt anxious about
Trump trade threats
Shawn
Donnan
FT April 19, 2017
Dealing with America’s trade follies
Martin Wolf
アメリカの政策担当者が無意味なことを主張したら、貿易相手国は何と答えるべきか? ヨーロッパ、日本、韓国の政府は困っている。アメリカの商務長官、Wilbur Rossロスは、経済の機能を理解しなくても億万長者になれることを示している。それは、生理学を理解しなくても陸上選手になれるのと同じである。
貿易赤字はその国の市場が開放的である理由にならない。それは、その国が所得以上に支出し、あるいは、貯蓄以上に投資していることを示す。保護貿易は赤字を減らすと直感的に思うだろうが、それは間違いだ。アメリカが輸入に関税を課すと、それは輸入を減らすだけでなく、輸出も減らす。貿易赤字を減らすより、GDPに対する貿易の比率が下がるだろう。
アメリカの財政赤字が貿易赤字を増やしているのだから、彼らの主張はさらに責められるべきだ。
アメリカの要求にパートナーはどのように応えるべきか? マクロ不均衡の重要性を認める。世界経済にダメージを生じないような、貿易を増やす譲歩を行う。多国間の貿易自由化を支持する。そして何より、我慢することだ。アメリカが永久に重要な問題を正しく理解しない者によって統治されるはずがないのだから。
Bloomberg APRIL 19, 2017
Free Trade With South Korea Is
Working
Editorial
Board
Project Syndicate APR 20, 2017
Will Economic Illiteracy Trigger a
Trade War?
JEFFREY D. SACHS
ドナルド・トランプが大統領になって100日も経つが、彼と彼が指名した商務長官は、大学の1年生が経済学で学ぶ間違った考えを、まだ主張している。すなわち、アメリカの経常収支(あるいは貿易収支)赤字は、それが黒字である中国やドイツが不公正な貿易取引をしているせいだ、
アメリカが慢性的に経常収支赤字を出すのを理解することはむつかしくない。アメリカの貯蓄率は過去30年間で顕著に低下してきた。その主要な理由は政府の貯蓄率の低下(財政赤字の増大)である。アメリカ型ポピュリズムにふける民主・共和両党が、繰り返し減税し、債務を増やしながら、低成長は他人のせいにしてきた。今、中国やドイツを責めているように。
● トルコ国民投票と憲法改正
FP APRIL 16, 2017
RIP Turkey, 1921 – 2017
BY
STEVEN A. COOK
NYT APRIL 17, 2017
Democracy Loses in Turkey
By
THE EDITORIAL BOARD
Bloomberg APRIL 17, 2017
Turkey's New Playbook for the
Semi-Authoritarian
Noah
Feldman
FT April 18, 2017
A bitter victory for Turkey’s new
sultan
国民投票の結果はエルドアンの勝利であった。これはトルコの歴史にとって転換点である。新憲法は大統領にチェックされない行政権限を与え、現代のスルタンにする。エルドアンは、国家機構の支配を完成するために多くの機会を得たのだ。
しかし、これは彼が強調したような勝利ではない。彼は51%の支持を得ただけである。特に、アンカラでも、イスタンブールでも、反対が多数を占めた。通常の選挙では与党AKが強い地域でもそうだった。南東部の紛争地域で、クルド人は提案を拒否した。たとえ一部が国内難民となって投票できなくても、反対したのだ。
合意を模索する、プラグマティックな姿勢ではなく、反体制派を逮捕・追放し、クルド人反政府軍との対話の再開や経済改革を行う希望を断った。エルドアンは、ナショナリズムに訴える戦略が成功した、と考えるだろう。
これはヨーロッパの交渉相手はジレンマに直面する。慎重な反応を示したブラッセルだが、新憲法はEU加盟に必要な基準を満たさないものだ。トルコのEU加盟は以前から可能性が乏しい想像であったが、今や笑い種である。しかしEUの指導者たちは、真正を拒否するより、貿易、安全保障、移民でEUに欠かせない国であり、国民の半数は反対したことを考慮するだろう。
より緊密な経済関係、例えば、トルコとの関税同盟を追究することは可能であろう。それはトルコが望んだような、完全かつ対等なパートナーシップには代わるものではない。トルコが西側に参加する道は、常に困難であったが、何十年かの後退を経て、ついに希望が消滅した。
これはトルコにとっての悲劇である。エルドアンは、改革や発展より対立を深めた。イスラム教徒が多数の大国が民主主義を実現することに打撃となり、また1つ、国民投票による専制国家が誕生しつつある。
Project Syndicate APR 18, 2017
Erdoğan’s Pyrrhic Victory?
SOLI
ÖZEL
NYT APRIL 18, 2017
What’s Next After Turkey’s
Referendum?
By
GONUL TOL
Bloomberg APRIL 18, 2017
How Turkey's Referendum Could Be a
Prelude to French Surprise
Mohamed
A. El-Erian
FT April 19, 2017
Recep Tayyip Erdogan won his vote
but lost half of Turkey
David
Gardner
● イスラエル監獄のストライキ
NYT APRIL 16, 2017
Why We Are on Hunger Strike in
Israel’s Prisons
By MARWAN BARGHOUTI
● AI問題
FT April 17, 2017
Only human intelligence can solve
the AI challenge
John
Thornhill
FT April 17, 2017
How workers can profit by taking
control of technology
Margaret
Heffernan
(後半へ続く)