IPEの果樹園2017

今週のReview

4/17-22

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米中首脳会談 ・・・トランプのシリア空爆 ・・・移民流入の利益 ・・・空爆とロシア外交 ・・・米中と北朝鮮問題 ・・・グローバリゼーションと保護・補償 ・・・ユーロ離脱のポピュリズム ・・・・連銀を政治化するな

 [長いReview]

****************トランプの環境政策**************

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


 米中首脳会談

Project Syndicate APR 10, 2017

Crouching Donald, Paper Tiger

BARRY EICHENGREEN

選挙戦で、トランプは散々中国を非難してきた。「われわれの職場を奪っている。」 「何百億ドルも知的財産を盗んでいる。」 「通貨を操作している」 昨年5月には「われわれは中国がこの国をレイプし続けるのを許さない」と支持者たちにTweetした。

首脳会談でも、トランプはメルケルにしたように握手を拒むのではないか、支払請求書を示すのではないか、と懸念されていた。しかし、トランプは習に敬意を示して対応した。

なぜか? シリアへのミサイル攻撃が迫っていたからか? 中国が空母と、3000機の空軍、160万人の陸軍を持つからか?

もっともよい説明は、アメリカがあまりにも、経済的、政治的に、中国に依存しているから、というものだ。トランプほど外交に無頓着な大統領でも、対立を生じることは好まなかったのだろう。

経済的に観て、アメリカと中国は、断ち切ることができないほど緊密にグローバル・サプライ・チェーンに結び付いている。TargetWalmartなどの巨大販売店の棚には中国からの輸入品が並んでいる。Appleなどの電子機器業は、製品の組み立てに中国の労働者が働いている。単純に考えても、トランプが良く言うように、中国がアメリカに売る方が、アメリカが中国に売るよりも多いのだから、貿易戦争でこの不均衡を是正させることはアメリカ企業の多大なコストを強いる。

トランプにとってこれはビジネスだったのだ。中国に対して貿易制裁など発動したら、アメリカの株価が急落するだろう。1930年のスムート=ホーリー関税法が株価暴落や大恐慌をもたらしたのではなかった。しかし、高関税とそれに対する報復が株価をさらに下落させた。

政治的に観て、朝鮮半島の危機が高まる中で、アメリカは中国と深刻な対立を引き起こすべきではなかった。トランプは軍事的な選択肢が採りえないことを認めるしかないだろう。北朝鮮の核施設だけを狙った攻撃は成功しそうにないし、大規模な攻撃は韓国に破滅的な報復をもたらすだろう。

唯一可能な選択肢は、制裁と政治的圧力を強めて、北朝鮮を交渉のテーブルに就かせることだ。それができるのは中国だけであるから、アメリカは中国を怒らせるわけにはいかない。

オバマケア。税制改革、インフラ投資、NAFTA再交渉、など、トランプは他の分野でも、政策の実現と選挙戦との違いを認めさせられた。トランプは、オバマ政権が直面した制約と同じものを経験して、オバマと同様に、変化よりも継続の政治に向かっていく。

トランプ政権はまだ中国を通貨操作国として非難し、制裁しようと考えている。しかし、この主張は事実に反するものだ。人民元の為替レートは。現在、公平に評価されており、政府はその価値を安くするより、維持するために介入しているのだ。

アメリカはあまりにも大きく中国との協力に依存しており、対立を煽るようなリスクはとれない。中国を通貨操作国と指定することは、シリアの隔絶された基地に59発の巡航ミサイルを撃つのと同じことである。大きな音と騒ぎを引き起こすだけで、何の意味もない。


 トランプのシリア空爆

The Guardian, Friday 7 April 2017

After the missiles, the plan: here’s how Syrian safe zones could actually work

Hamish de Bretton-Gordon

アメリカがアサド政権の化学兵器による攻撃を辞めさせるために空爆したことを歓迎する。しかし、それが即座に国連による行動を伴わなければ、全体として成果を生まないだろう。

ティラーソン国務長官はセーフ・ゾーンの設定を提案している。北西シリアにパイロット計画があり、もし成功すれば、南部のヨルダン国境やそれ以上設置されるだろう。多くのNGOsから援助物資やインフラが提供される。

空爆はシリアに希望をもたらした。しかし、2003年のイラクで犯した失敗を繰り返してはならない。国連安保理がセーフ・ゾーンを設置し、停戦を強制し、18か月以内に受け入れ可能な政治解決を得るようジュネーブ・プロセスを進めることに外交努力を最大限駆使することだ。

The Guardian, Friday 7 April 2017

His emotions have been stirred – but Trump’s bombs won’t help Syria

Simon Jenkins

アメリカ大統領は何度も中東に軍事介入したが、それはうまく行かなかった。

アメリカ大統領がテレビを観ることほど、世界にとって危険なことはない。昨夜、ドナルド・トランプは、1982年のロナルド・レーガンや2001年のジョージ・ブッシュと同様に、中東における孤立主義から介入主義に転換した。アサド体制やロシアの支援に対するプラグマティズムが180度転換し、59発のミサイルになった。

しかし感情は、たとえ正当なものでも、外交の基準としてはひどいものだし、中東ではどこよりもそうである。1982年にレーガンは2つの難民キャンプにおける大量殺戮に対して反応し、海兵隊を勝利する見込みのない内戦に派遣した。

シリアの戦争を終わらせる唯一の道は、アサドの反対派が敗北を認め、ISISはその安全地帯から追い出すことだろう。ロシアのアサド支援というプラグマティズムは、その残虐さと「無能さ」において問題があるとしても、現実政治を正しくとらえている。

300万人が犠牲となったシリアで、難民たちの救済と安全が優先されるべきだ。さらに多くの空爆がもたらすものは何もない。

FP APRIL 7, 2017

Is Trump’s Bold Syria Strike a Dangerous Miscalculation?

BY KORI SCHAKE

安全保障政策に関して,オバマ大統領のかかしを攻撃するのは楽しい.彼は侵攻するより躊躇した.軍事力の限定的な利用という考え方を疑っていた.そしてアメリカの国際的な地位や敵との関係を脆弱なものにした.安全保障に関するアメリカの約束は疑われ,抑止できなくなった.

トランプ大統領は,木曜日,懲罰的な軍事攻撃を命令した.大量破壊兵器の使用に関して,規範は守られるべきだ.アメリカは,現敵的な,しかし効果的な,軍事力の行使ができる.

Shayrat空軍基地へのトマホーク・ミサイル攻撃は,よく準備された,整然とした作戦であった.アメリカは世界にその意味を説明し,地政学的なリスクは冒さなかった.ロシア人には,彼らのシリア国内での配置について,明確に相談した.ロシアとの戦争を回避するだけでなく,そのアサドへの支持に限界があることも示された.イスラエルの国防軍にも,報復のリスクに対処できるよう,事前に通知された.

他方,トランプ政権は明らかに議会に相談しなかった.

要するに,トランプ政権は,イスラム国後の体制でアサドの占める場所に関心を持たず,彼の行動を制限することにした.オバマに不安を感じていた中東の同盟諸国は安心したかもしれない.

しかし,マイナス面をもある.ロシア人はアサド体制への関与を強めるかもしれない.ティラーソンの正直さと能力は損なわれた.シリアの軍や諜報機関,あるいは,イランの関係する武装集団が,シリアやイラク,ペルシャ湾で米軍兵士を襲うかもしれない.イランは,アメリカやイスラエルに対抗するために核武装計画を再開するかもしれない.攻撃の法的根拠や議会との関係は損なわれる.多数の子どもが殺害されているのに,そのころ仕方が化学兵器であったことにだけ反対するのは,道義的に支持されないだろう.

最大のリスクは,米軍の総司令官であるトランプ大統領が,短時間で方針を転換してしまったことだ.アサド政権は,何度も何度も化学兵器を使用したし,多くの戦争犯罪を行ってきた.アルカイダの911が成功したのは,2996人を殺害したことだけでなく,その後のアメリカの国家安全保障の政策を転換させたことだ.トランプもまた,安全保障政策がハイジャックされるのを許した.

「大きな転換」だと言うだけで,空爆後のシリア政策が何であるのかはわからない.彼はまだ,その政策を決めて,説明しなければならない.

FP APRIL 7, 2017

Tom Friedman Is Calling for a Partition of Syria. Trump Should Run the Other Way.

BY STEPHEN M. WALT

New York Times のコラミストThomas Friedmanは、アメリカの外交政策を提案する。多くのアメリカ人と同様に、彼はアメリカが高貴な動機を持つと考え、必要なら、人道的な目的でアメリカ兵が犠牲になってもよい、と言う。多くのアメリカの指導者と同様に、自分の間違いを認めず、その助言が悪い結果をもたらしても、他の者を非難する。経験から学ぼうとせず、同じ間違った分析を何度でも行う。

フリードマンは、シリアを分割し、スンニ派の反政府勢力を守る保護地区を設けるべきだ、という。その地区を守るために、さまざまな国とともに、アメリカも地上軍を派遣する。つまり、アメリカ軍はシリアに侵攻するべきだ、と主張している。

しかし、ロシアやイランが歓迎しないだけでなく、米軍は中東で非常に嫌われている。スンニ派の「穏健派」を支援する試みを西側は何度も企てたが、成功しなかった。その武器は、より危険な聖戦主義者たちに流れた。

何より、アメリカ兵士の命が失われるかもしれない決断を、正当化できるような重大なアメリカの利益が中東にはない。シリア侵攻はアメリカ国民に支持されない。シリアからの難民が減って、ヨーロッパでポピュリストの政治的反動が抑えられる、という<理由>でシリア内戦に介入するのか?

化学兵器の使用に「レッド・ライン」を設けるのは無意味だ,と以前も指摘した。アサド政権は化学兵器を使わずに多くの住民,子どもたちを殺戮してきたし、今後も殺し続けるだろう。軍事介入の是非とは関係ない。

保護地区を設定するため、NATO、アラブ連盟など、アメリカは他国の軍事力を集めることができる、という彼の前提が間違っている。アフガニスタンでも、イラクでも、多くの米兵が死体となって帰還している。しかも、スンニ派の保護は成功するか? どこに作るのか? スンニ派の聖戦主義グループは歓迎するか? 罪のないアラウィート派の住民を報復から守らないのか? 米軍が占領した地区で、長期的に誰を信用するか、わかるのか? 出口戦略はどこにもない。

これは米軍がシリアに侵攻し、中東における戦争状態を悪化させる新しい軍事介入の失敗を積み重ねるものだ。シリア内戦を終わらせる良い選択肢はなく、それゆえ悲劇が続いている。


 移民流入の利益

Project Syndicate APR 7, 2017

The Migrant Boon

IAN GOLDIN and JONATHAN WOETZEL

2015年に、移民が世界GDPに追加した額はおよそ67000億ドルであった。彼らが出身故君にとどまった場合より3兆ドル多い。移民の生産性は大幅に改善する。MGIの推定では、アメリカ約2兆ドル、ドイツ5500億ドル、英連邦3900億ドル、オーストラリア3300億ドル、カナダ3200億ドルのGDPが増加した。

もっと移民を積極的に統合し、彼らの潜在的能力を発揮させる必要がある。そのことに関心と資源を向けるべきだ。それは移民たちだけでなく、受入国に最大の利益をもたらす。現代の緊密に結びついた世界で、移民は不可避である。問題は彼らを、孤立した、不満を抱く、依存する人々にするのか、成長とダイナミズムの強力なエンジンにするのか、である。


 空爆とロシア外交

NYT APRIL 7, 2017

Trump Raises the Stakes for Russia and Iran

By DENNIS B. ROSSa former senior Middle East adviser to President Obama

敵であれ友であれ、この行動が成功し、シリア、イラン、ロシアの行動を変えるなら、重要な衝撃となる。アサドが次の化学兵器を使用するか、アメリカを試すときはすぐに来るだろう。もし使用すれば、アサドはさらに大きく空軍を失う。それは反政府勢力に対する優位を失うことだ。

アサドは化学兵器を使用せず、住民を恐れさせるために樽爆弾を使用するかもしれない。しかし、それによって支配領域を拡大することはないだろう。アサドは地上軍を展開する限界に達しており、ますますイランが派遣するシーア派の民兵に依存することになる。イランは、アメリカの空爆に対してアサドへの関与を高めるのか?

ティラーソン国務長官は、アサドの将来は「シリア国民が決めるだろう」と述べた。

イランは、アメリカに高い代償を支払わせる、他の選択肢を持っている。シリアかイラクで、シーア派民兵にアメリカ軍を襲撃させることだ。しかし、よく考えるべきだ。それは、イランやシーア派イラクに対する直接の脅威であるイスラム国を壊滅するアメリカの努力を邪魔することになるからだ。

ロシアはどうか? シリアにより多くの軍を送ってアメリカの行動を加速させることもできる。あるいは、アサドに対する保護を与えないと明確にすることもできる。ロシアは空爆を非難したが、それはアメリカによる軍事力の行使が重要でないと思わせるためだ。

プーチンはすでにシリアで多くを得た。アサド体制を維持した。空軍基地を得た。海軍の施設を拡張した。ロシアはこうした成果を確実にする時期であり、一層のコストを意味する紛争介入は望まない。

これらのアクターがアメリカ政府を試すかどうか、すぐにはわからない。しかし、大統領と政権スタッフは事態の推移を静観してはならない。ロシア、イラン、シリアに、民間レベルで、われわれを試すな、火遊びをするな、と伝えるべきだ。特にロシアはメッセージを受け取るべきだ。アサドに対する反政府勢力は消滅しない。ロシアがシリアにとどまるなら、そのコストは増すだろう。アメリカはロシアと協力して、ジュネーブ和平プロセスの諸原則を実行する用意がある、と。

外交にはしばしば軍事行動による強制の要素が必要になる。ロシアは、彼らが支持した国連安保理決議22542268を守る動機になったかもしれない。すなわち、敵対行為や占領を終わらせ、人道支援のアクセスを保証し、18か月間の政治的な政権移行を行う。

アメリカの空爆はシリアのダイナムズムを変え、新しい可能性を開いた。あるいは、この人道的な破滅をもたらしてきた内戦が、すべての関与する側が消耗するまで終わることのない戦争に向けて、さらに一歩進めたのかもしれない。


 米中と北朝鮮問題

FP APRIL 13, 2017

It’s Time for America to Cut South Korea Loose

BY DOUG BANDOW

なぜアメリカは、遠く離れた、貧しい、孤立した北朝鮮のために、自分が属してもいない地域に軍を関与させ続けるのか?

ワシントンは第2次世界大戦終結以来、朝鮮半島に軍を駐留させてきた。当時は、冷戦によって国際関係がゼロサムになっていた。アメリカが失えばソビエトが得る。朝鮮戦争で37000人の兵士を失ったアメリカが韓国を手放すことはできないし、それがアメリカの信用にかかわった。中国を「共産主義」の側に失ったという感覚が強く、アジアで共産化する国を増やす気は誰にもなかった。

しかし、そのような世界はずっと前に消滅した。朝鮮半島は地政学的な重要性を失った。韓国は無力ではなく、アメリカは関与の目的を失った。トランプ大統領は、アメリカの利益を効果的に守るために外交を転換するだろう。世界で最も新しい、最も無責任な核保有国がある東アジアは、それを示すのに良い地域だ。

朝鮮半島の戦争は悲劇であり、犠牲者が多数出るだろうが、アメリカが戦争に加わらなければ半島の外へは広がらないだろう。逆に、朝鮮半島に米軍が駐留し続ければ、事実上、戦争の拡大を確実にする。

韓国の防衛にアメリカはもはや必要ない。1960年代の韓国経済は北を追い越した。1980年代には民主化し、1990年代までに、北は飢餓に苦しむが、南は経済ブームを実現していた。そのギャップはすでに十分大きく、さらに拡大している。韓国の軍事的な潜在能力は高く、それはアメリカへの依存も理由となって、まだ実現していない。

なぜアメリカの軍隊はまだ韓国にいるのか?

1950年との違いは、韓国が自分で防衛できないという理由がないことだ。もし米軍が半島を離れれば、それは実行されるだろう。もちろん、それには大きな財政負担と努力を要する。それこそ韓国政府の第1の責任だ。

確かに北朝鮮は、核兵器を開発したことで、半島の軍事的な均衡を変えた。しかし、米軍が駐留する必要はない。アメリカは、北の核攻撃に対して必ず報復すると保証することで、韓国に北の抑止を提供できるだろう。

韓国自身が核抑止力を持つことも考えるべきだ。1970年代後半、朴正煕大統領がアメリカの姿勢を信頼できないと疑い、独自の核開発を進めた。当時はアメリカが圧力をかけて中止させたが、今や、それを促す方がアメリカの利益になるだろう。

もちろん、核拡散を促すことは危険である。しかし、アメリカは北東アジアの核紛争から抜け出せる。中国は、日本が核軍拡競争に加わることを恐れて、ソウルの核保有を阻止するために、北朝鮮に強い行動を取るだろう。

アメリカ軍の駐留は慈善活動ではない。同盟は確かに抑止をもたらす。しかし、第1次世界大戦が劇的に示したように、それは戦争を拡大することにもなる。さらに、大国に守られた小国は、自国の防衛を負担せず、しばしば無責任に行動する。


 グローバリゼーションと保護・補償

Project Syndicate APR 11, 2017

Too Late to Compensate Free Trade’s Losers

DANI RODRIK

世界のビジネス界や政策担当者の間に新しいコンセンサスが現れた。グローバリゼーションですべての者が豊かになる、と言った主張は消えて、勝者と敗者があることをエリートたちも認めるようになった。反グローバリゼーションの政治的反動を抑えるためには、逆転するのではなく、敗者に補償しよう、というのだ。

エコノミストたちは、ずっと前から、貿易自由化がその国の経済的なパイを増やすとしても、再分配を生じ、絶対的に所得を失う者もいることを知っていた。それゆえ、自由化の勝者が敗者に補償するときだけ、その国の厚生は改善する。補償政策は貿易の開放政策を支持し、政治を健全にするものだ。

かつては、大規模な移民流出や、貿易自由化の逆転、保護の再導入が、特に農業で行われた。福祉国家が登場したことで、貿易を制限することは少なくなった。今日、国際経済に最もさらされた先進国ほど、セーフティーネット、社会保険プログラム、すなわち、福祉国家が最も充実している。ヨーロッパでは、グローバリゼーションの敗者に対して国内で積極的な社会政策や労働市場への介入がみられる。

福祉国家と開放経済とは、20世紀の大部分を通じて、同じコインの裏と表であった、と言ってよいほどだ。

ほとんどのヨーロッパ諸国に比べて、アメリカはグローバリゼーションが遅かった。最近まで、アメリカの国内市場規模、そして相対的に観た、地理的孤立性が、特に低賃金諸国からの、輸入からの保護を、提供していた。アメリカの福祉国家は歴史的によわかった。

1980年代、アメリカもメキシコや中国などから輸入が増え始めると、ヨーロッパ諸国と同じ道へ進むと思われた。しかしそうではなく、レーガン支持者や市場原理主義の考えにより、逆の道を進んだ。アメリカは「巧妙に敗者を無視した」(Larry Mishel)のである。そして、貿易に関する弱い補償プログラムを攻撃した。Mishelは、自由貿易論者であるなら、労働者階級への配慮をするべきだ、と述べた。完全雇用、集団交渉、労働基準、最低賃金保証、などだ。低賃金諸国との貿易が増えるまで、それらが実現していた。

それは、2007年に、政治学者のKen ScheveとエコノミストのMatt Slaughterが「ニューディールのグローバル化」と呼ぶものであった。世界経済への統合化は実質的な再分配プログラムと結びついていた。すなわち、税制の累進制強化である。

Slaughterは、ジョージ・W・ブッシュの下で共和党本部に属していたから、アメリカの政治が、その後、どれほど大きく変化したかわかるだろう。今、そのような提案が共和党から出ることは想像できない。

現在の新しいコンセンサスは、啓蒙された自己利益に勝者が従うことを前提する。経済の開放度を支持するように敗者を補償することが必要だ、と。しかし、トランプの勝利は別の可能性を示した。すなわち、現在のグローバリゼーションは、開放性から利益を受けるスキルや資産を持つ者が政治のパワー・バランスを有利に変更し、最初は敗者が持つかもしれない組織された影響力を掘り崩す、ということだ。グローバリゼーションへの初期の不満は、容易に、まったく違うものへ、すなわち、エリートたちにも支持できる政策へと変えられてしまう。

これはエコノミストが言う「時間的不整合性」である。自由化の受益者たちは補償を約束するが、彼らはその政策を実行しない。それはグローバリゼーションの逆転があまりにもコストを高めるからであり、あるいは、政治的なパワー・バランスが変わってしまうからだ。

敗者に補償するよりも、グローバリゼーションのルールそれ自体を変えることだ。


 ユーロ離脱のポピュリズム

FT April 10, 2017

Euro exit for Italy or France would be a trauma

Wolfgang Münchau

フランスとイタリアのポピュリストたちはユーロからの離脱を好むようだ。しかし、その決定はしばらく先に延ばす。すべては国民投票に委ねる、と。ル・ペンやグリッロがわれわれにそう言うとき、彼らがどれほど極端な行動に走り、いい加減な者か、よくわかる。彼らがフランスの国民戦線、イタリアの五つ星運動の指導者だ。

どちらの国でも、ユーロを離脱するという主張は、困難だが、知的に述べることができる。しかし、彼らはそうしない。もし真剣に離脱を実現するつもりなら、これは政権のすべてを決める重大問題であり、Brexitよりもはるかに大変だ。イギリス政府がBrexitに翻弄されていることを観ればわかる。

もし離脱すれば、どちらの国も人類史上最大のデフォルトになる。EU全体に銀行危機が起きるだろう。その複雑さと危機の陥穽は、戦争を始めるのと似ている。人々が国衙からユーロを持ち込むのを阻止するために国境を閉鎖する。暴動を鎮圧するために警察を動員する。物資を確保するために軍事的な作戦を要する。それは、週末に、戦車が町に並ぶようなものだ。

五つ星が勝利すれば、首相になる可能性の高いディマジオLuigi Di Maioが、ユーロ離脱を党の2番目の政策にしたことで呆れた。・・・私の今年の抱負は、第1に、チョコを食べ過ぎないこと。第2に、離婚することだ。こんな話かよ! 彼は真実を語っていないか、あるいは、何も準備していないのだ。30歳のディマジオは、1992年にEMRからイギリスとイタリアが排除されたとき、まだ6歳だった。当時の混乱を記憶する者は誰も、ERMよりはるかに深刻なユーロ離脱の危険を知っている。

投資家たちは国民投票の結果を待たないだろう。ディマジオが次期首相と決まれば、合理的な投資家はデフォルトの規模を計算し、新しい通貨に転換する損失を利回りに換算して中立化しようとする。選挙の日の夜から、ディマジオはイタリア金融システムからの資本流出と闘うことを意味する。ECBのドラギ総裁は資金供給を拒むはずだ。

もしイタリアやフランスがユーロを離脱するとしたら、それは国民投票によってではなく、資本流出の事件で起きるだろう。残念だが、事件は本当に起きることがある。


 連銀を政治化するな

NYT APRIL 12, 2017

Don’t Politicize the Federal Reserve

By ROBERT E. RUBIN

トランプは、来年中に、7人の理事の内、5人を指名することができる。彼らが連銀の2つの使命(物価の安定と完全雇用)ではなく、ホワイトハウスの喜ぶ政策を実行することを、私は恐れる。

また連銀は、政権が非現実的な成長目標を実現できないときに、スケープゴートにされるかもしれない。

私が財務長官であったころ、グリーンスパン議長と、サマーズ財務次官と一緒に、週に1度は朝食をとった。私たちは何でも秘密にせず、アメリカ経済の見通しや政治ゴシップまで、話し合った。しかし、サマーズも私も、決して1度も、私的な話であろうと、金融政策には触れなかった。クリントン政権の誰も、そのようなことをしなかった。

それによって連銀議長はホワイトハウスの介入がありえないと信じ、連銀と財務省との緊密な協力を実施できる信頼関係となったのだ。メキシコやアジアの通貨危機がそうだった。

連銀理事の指名が政治によって歪められてはならない。

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The Economist April 1st 2017

Britain and the European Union: The negotiator

America’s check and balance: Constrained?

Firming in the Midwest: Rhyme time

Chine-American economic ties: The silk-silver axis

Free exchange: Remember the mane

(コメント) Brexit交渉は非常に困難だ,と考えます.時間がかかり,次第に不利益が分かってくる.記事は,メイ首相が国民の期待を下げておくべきだ,また,柔軟な姿勢で臨み,協力できる分野を強調せよ,と忠告します.・・・しかし,メイが選んだのは総選挙による勝利でした.

トランプは,アメリカ憲法が用意したチェック・アンド・バランスのしくみによって政策を阻まれています.それは成功するのでしょうか? 政治風刺が威力を発揮しています.しかし,議会が分裂を深めて,協力して政策を決める力を失い,大統領の権限強化に向かう傾向は続きます.

アメリカ中西部の農場に関して,米中貿易不均衡が長期的には均衡するまでの金融・政治不安について,さまざまな技術革新が労働者を不要にするとき,かつて馬車や馬の職場を奪った歴史から何を学ぶか,興味深く読みました.

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IPEの想像力 4/17/2017

シリアの空軍基地をトマホーク・ミサイル59基で爆撃した,というニュースは,時間がたつほどトランプ政権の欠陥を意識させます.

シリア内戦の和平会議に向けたダイナミズムに与える影響を,アメリカが十分に考慮して行われた政策であったのか,疑わしいからです.トランプは外交を,特にオバマを軽蔑し,軍事力の強化と自国の利益を優先することが,特に2国間の交渉であれば自分には何でもできる,という姿勢でした.これは,そのテレビ・ショーの一部です.

攻撃と,外交,戦略,政治的解決の関係,重要性を,トランプは学ぶのか? 学ぶ気があるか?

外交・安全保障の専門家たちは,一気に,トランプ政権の姿勢を批判し,あるいは,取り込むために擁護する論調を強めています.戦争行為と人道的理由,多くの反応,意図しない結果,3次元チェス.戦略の構築,明確な説明と多方面の外交.注意深く選択されたか?

「化学兵器の使用は許さない」,そして,「戦略的な忍耐」は終わった.それはどういう意味でしょうか? アメリカが軍事的に勝利できないことを認める.戦争を終えるための外交と政治的解決策を見いだす.その枠組みに参加しない武装勢力,イスラム国の掃討に,ロシア,イランとも協力する.

アメリカ外交が転換したのはオバマの熟慮によるものでした.中東において軍事介入は2度としない.アジアにおける平和の構築,貿易・投資協定に向けて,積極的な関与を強める,という戦略を求めたのです.

トランプは全く違うスタイルで,同じ結論を得るのかもしれない,と思いました.

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戦禍によって苦しむ人々.死亡した子どもの写真,メルケルとトランプは,その政策を転換しました.ドイツは難民受け入れに積極的な門戸開放を選択し,トランプは化学兵器を積んだ攻撃機の拠点をミサイル攻撃したのです.

その選択の是非は,数年,数十年を経て議論されます.

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トランプがシリア内戦を解決することはできないでしょう.しかし,北朝鮮問題は解決するかもしれない,と思いました.重要なアクターが限定されているからです.

シリア内戦と北朝鮮問題とに共通するのは,体制転換,への言及です.アサドは退陣しなければならない,と和平プロセスに前提条件を付けたことが,オバマ外交の失敗であったと言われます.トランプは,自分なら金正恩との直接交渉もできる,と主張していました.

リビアでカダフィが殺害された後,政治体制は崩壊し,地理的な分断と過激な武装組織の侵透が広まった,という結果を,西側の指導者たちは忘れないでしょう.自由貿易も,民主主義も,容易に輸出できません.

穏健派に勝利するチャンスがあるとしたら,それは和平が達成され,その後の選挙や政権構想が重要な時期になってからだ,という指摘を思い出します.アメリカ政府が,シリアの反政府軍に武器を与えても,穏健なリベラル,すなわち,医師や弁護士,学校の先生,商店主たちの市民軍が,殺戮を続けてきた聖戦主義の武装集団と戦って勝利することは望めません.

トランプ政権は,その経験を批判して,構想を描くことができます.北朝鮮の目標が体制維持と安全保障であり,アメリカの目標が非核化と国際ルールの厳守であれば,段階を踏んで両国は合意し,実現することができると思いました.

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