IPEの果樹園2017
今週のReview
4/10-15
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Brexitの再編 ・・・米中のマクロ不均衡 ・・・米中首脳会談 ・・・トランプ政権の舵取り ・・・ポピュリスト政治 ・・・市場自由化の政治的反動 ・・・トランプと北朝鮮 ・・・ドイツの核武装 ・・・・・・カリフォルニア独立 ・・・空爆後のシリア
[長いReview]
****************トランプの環境政策**************
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● Brexitの再編
The Observer, Sunday 2 April 2017
The Observer view on EU negotiations
Observer
editorial
トーリーのBrexit派にとって、最高の日が来た! 泣き言と痛みを訴える声にあふれた9か月を経て、彼らの勝利を奪おうとする残留派の陰謀を乗り越え、ついに栄光の日が訪れたのだ。・・・
もうこれでヨーロッパの指令にイライラすることはない。曲がってないバナナ、バターの山。いかさまの漁獲割り当て、くすんだ、選挙されることのないヨーロッパの官僚たちが、われわれにああしろ、こうしろと言う。ポーランド人の配管工も、ルーマニア人のチューリップ農夫も、もういらない。イギリスの税金で効率の悪いフランス農家を助けることもない。ヨーロッパ合衆国のようなばかげた話も聞かなくて済む。ブリタニアはついに自由を得た。・・・
なんと愚かで、だまされたことか? かつてアメリカ統合参謀本部議長であったパウエルColin Powell将軍は、何度も注意した。「望むものには慎重でなければならない。それを得てから公開するぞ。」 1991年、パウエルはジョージ・H・W・ブッシュ大統領に、イラクを全面攻撃することには反対した。ブッシュはその助言を受け入れた。そして12年後、彼の息子はそれを無視し、今も続く深刻な結果をもたらした。
イギリス社会や政府が失敗したことを隠すための、ヨーロッパはスケープゴートになった。われわれの政治家たちの能力不足、多くの人々のナショナリスティックな、エスニックな偏見を正当化するために使われた。
● 米中のマクロ不均衡
FT April 5, 2017
Chinese finance is storing up
trouble for the rest of the world
Martin
Wolf
米中首脳会談では、貿易と為替レートを議論するだろう。しかし、より重要で、はるかに挑戦的課題である、中国の金融システムをグローバルな市場委に統合することを話し合うべきだ。アメリカ政府は、今、経常収支ではなく、資本収支を心配するべきだから。
統合された世界経済では、マクロ経済の不均衡が対応している。各地の貯蓄と投資の不均衡は金融システムにおいて均衡する。中国経済は、かつて温家宝が述べたように、「不安定で、不均衡で、協力を欠き、持続できない」。それは2007年に述べたことだが、今は、さらに正しい。
マクロ問題は単純だ。中国の貯蓄には、国内で十分な利潤を期待できる投資機会がない。2015年の貯蓄額はGDPの48%だった。家計の貯蓄はそのわずか半分で、企業と政府が貯蓄を生じている。国際比較から推定して、6%の成長率ではGDPの3分の1の投資で十分だ。すなわち、中国の過剰貯蓄はGDPの15%に達するだろう。
過剰貯蓄はどこに向かうのか? それは海外であり、経常収支黒字である。金融危機の前もそうだった。もし中国政府が為替管理を止め、信用拡大もやめれば、再現するだろう。資本が流出し、人民元は急落して、世界に対する経常収支黒字が管理不可能な規模に達する。
中国の金融当局は罠にはまった状態だ。信用の拡大を止めたい。すると投資は減り、国内の不況と大幅な貿易黒字が生じる。それを避けるには、信用拡大と投資を続け、資本流出を厳しく管理するしかない。
なぜか? 流動的で、リスクの高い、利回りの少ない金融資産がますます増えているからだ。汚職撲滅キャンペーンを言うまでもなく、企業も個人も、資産を海外に持ち出すことに必死である。外貨準備は、2014年6月の4兆ドルから2017年1月には3兆ドルにまで減った。金融当局はそれが続くことを許されない。しかし、人民元の暴落も止めねばならない。
金融自由化を進めて、資本流出に見合う資本流入が起きることはないのか? 内外の投資家がポートフォリオを多様化できる。しかし、3つ問題がある。1.国内のマクロ不均衡は続く。2.金融システムは脆弱であり、さらに弱くなる。3.統合するグローバルな金融システムもまだ不安定だ。もし駐豪で金融システムの危機が起きれば、それは中国発の世界金融危機になりうるだろう。
米中はこの課題に対して協力して対応しなければならない。マクロ不均衡、金融政策、そして中国の対外不均衡を管理するため、その為替管理、為替レート、外貨準備に注意が必要だ。
習近平のスタッフにはその問題を理解する者がいる。しかし、トランプはどうか? 残念ながら、私はいないと思う。
● 米中首脳会談
FT April 4, 2017
Xi Jinping will be thinking of home
on his Florida trip
Willy
Lam
習は、トランプやティラーソンが、台湾、南シナ海、重要な外交政策に関して暴言を吐くのを聞いた。しかし、今、習の優先的な関心は国内政治にある。秋の第19回共産党大会で新しい指導部と「習近平思想」の承認を得ることだ。
だからトランプとの対立は避けるだろう。習にとって最悪のシナリオは、トランプが暴言を吐き、中国の諸都市に反米デモが起きて、強硬な政策を要求することだ。そして習がアメリカ人を抑えることに失敗すれば、彼は面目を失うだろう。
習の計画は、貿易や為替に関する論争で、トランプに共通の利益を認めさせることだ。相互の利益を増やす協力について、積極的な姿勢を示すだろう。習は、トランプがアメリカ人のナショナリズムを鼓舞してビジネスマンから大統領になった、内面的に壊れやすい男だと知っている。この男が共産党に困難をもたらしうることも知っている。
NYT APRIL 5, 2017
How Trump Can Solve His Chinese
Puzzle
By
GIDEON RACHMAN
米中会談で本当に深刻な危険は,トランプの中国政策が破壊的なものになることだ.アメリカの繁栄と安全保障を損ない,中国の台頭を加速するだろう.
トランプがアジアの中国や同盟諸国に示す脅しは,アメリカがアジアで圧倒的な支配的地位を持った時代であれば効果的な手法かもしない.しかし,今は中国の台頭によって大きな変化が生じた.私はそれを“Easternization”と呼ぶ.中国は世界最大の工業生産国,世界最大の輸出国,自動車,スマートフォン,石油の世界最大の市場である.
フィリピンだけでなく,オーストラリアも,韓国も,中国に選択を迫られている.アメリカと中国と,どちらを選ぶのか? ところが,トランプは同盟諸国の安全保障や貿易不均衡を非難する.
● トランプ政権の舵取り
FT April 3, 2017
FT interview: Trump on Merkel,
Twitter and Republican infighting
Lionel
Barber, Demetri Sevastopulo and Gillian Tett
大統領執務室におけるトランプ大統領へのインタビュー。
トランプ大統領に、同盟や政敵、世界情勢を傷つけるようなTweetについて後悔していないか尋ねた。彼は、何もしない。後悔しても無駄だ、と答えた。
トランプは共和党の歴史にこれまでなかった大統領だ。不動産大富豪、リアリティーTVの司会者、支持政党を5回も変えた。名目的なポピュリストであるが、その閣僚は歴史上最も裕福だ。
トランプは、エリートの意見は間違いだった、と述べた。景気は良い、ダウは上昇した。FDルーズベルトにはラジオ、ケネディとレーガンにはテレビがそうであったように、トランプは自分が大衆とのコミュニケーション術に優れている、と認めるように求める。
そしてDan Scavinoを読んだ。Scavinoはトランプのゴルフのキャディーであったが、選挙戦中、ソーシャルメディアを担当し、今もホワイトハウスで同じことをしている。
Twitterはトランプを世界から切り離す。彼の統治スタイルは伝統に逆らう人々を喜ばせる。しかし、実際は内外に深刻な混乱を生じている。オバマ政権が選挙戦中にトランプタワーの登頂を命じたと主張したし、選挙参謀とモスクワとの関係が問われている。こうした問題は、トランプが任期を全うできるのか、疑わせる。
しかし、就任期間が100日に近づき、その狂ったような姿勢には一定の手法が見られる。
トランプと彼のチームは、経済ナショナリズムと強権的指導者の時代と見ている。ロシアのプーチン、インドのモディ、中国の習近平のような。アメリカも強く自国の利益を主張しなければならない、と。
トランプはメルケル首相との会談で、彼女を冷遇したかのような報道を批判した。自分は5回も握手した、と。しかし、UKも、ドイツも、日本も、不安を感じている。トランプの取引手法は、平和や、西ヨーロッパ、朝鮮半島、西太平洋の平和を維持する役割を無視するものだから。アメリカはかつて、ルールに基づくリベラルな秩序の擁護者だったが、今や、利己的な超大国である。
トランプが最も断言したことの1つは、国際的な競争条件の同一化である。彼は、アメリカが軍事的な課さを手協すること、フリーライダーの新興経済、特に中国が世界の貿易ルールを利用すること、を彼らにとって過度に有利な条件だったと確信している。アメリカは手ぬる過ぎた。
マー・ア・ラーゴでの習近平との首脳会談は最初の厳しいテストになる。アメリカと中国の貿易収支は「8000億ドルの赤字だ」とトランプは述べた。(アメリカ商務省のデータでは2016年5000億ドルの赤字。) トランプは選挙戦中、中国が通貨を不当に操作していると非難してきた。
中国は地域内で大国となり、北朝鮮問題ではパートナーになり、台湾に関する「1つの中国」政策では対立する可能性がある。
国内政策でも、企業に促して(脅して)職場や工場を国内にとどめることでは不十分だ。移民を阻む大統領令は裁判所が停止した。オバマケアの廃止を公約したが、法案の議会通過を諦めた。トランプは、投票が必要か、と言う。税制改革や予算案に関する方針も見えない。大幅減税のためには新しい手法が必要だ。
最高裁判事を指名した。民主党は反対して上院で阻止するのを、ルールを変更して通過させた。トランプの側近たちが議会を回避するように働いている。その中心はスティーブ・バノンだ。ホワイトハウスの戦略担当として「行政国家の解体」を要求する。
大統領執務室にバノンは「参謀本部 “war room”」を設けている。そこには巨大なホワイトボードにトランプの選挙公約がリストになっている。
アメリカ最初のポピュリスト的な大統領、アンドリュー・ジャクソンの前で立ち止まった。それからゲストたちをセオドア・ルーズベルトの前に導いた。そして「ゲームを変えた男だ」と自慢した。しかし、ゲストの1人が違いを指摘した。TRは棍棒を誇示したが、ソフトに語ることも尊重した、と。
● ポピュリスト政治
Project Syndicate APR 5, 2017
The European Art of the Deal
HAROLD
JAMES
2008年の金融危機から10年が経って、西側のいたるところで対決型の政治が現れている。しかし、アメリカとEUには多くの類似点があるとしても、その社会、経済、財政問題への解決策には大きな違いがある。
トランプは政治過程が進まず、議会、法廷、州政府と対立することを学びつつある。EUは、各国政府が国内政治のダイナミズムと超国家機関、法廷と対立するのを学んだ。各国の選挙が行われるたびに機能がマヒし、反EU感情が刺激される。
両方について中心的問題は、政治そのものが機能しなくなっていることだ。市民や政治家が政治を「ゼロサム」とみなし、瀬戸際的な交渉術、敵視する戦術を採用することで、悪意が充満している。政治は「チキン・ゲーム」に変わった。避けた方が負けだ。両方とも避けなければ、ともに破滅する。
それにもかかわらず、統合に向けたEUの改革は進んできた。ユーロ危機においてヨーロッパでは、ECBや他国の政府が持続不可能な債務の維持を助けた。だれもが威嚇の破壊的な効果を知っている。
トランプ政権も、オバマケアの破棄と代替案で似たような過程を進んだ。しかし、トランプはすべての代替案を拒んだのだ。そして、その交渉術で勝利できると楽観した。それは、メルケルがユーロ危機で代替案を拒み、難民の受け入れ政策でも方針転換を拒んだことに似ている。
しかし、レトリックはトランプと似ていたが、ヨーロッパでは対立が妥協によって終息した。トランプもいずれ学ぶしかない。合意形成は本来的に不満の残るものであり、政治的な取引はいつも明瞭でないし、単純でもない。1950年代から、ヨーロッパの各国はそれを経験してきた。自国の政策順位を誰にでも押し付けることのできる、圧倒的な指導者はいない。
2017年のヨーロッパには、さらに2つの教訓を学ぶだろう。1.加盟国の離脱は破滅ではない。もしそれがその国の緊張を緩和し、将来の交渉を続ける土台があるなら。2.トランプの統治姿勢は、そうしてはならないという失敗例である。それをまねる者は、ル・ペンもそうだが、有権者に処罰されるだろう。
● 市場自由化の政治的反動
Project Syndicate APR 2, 2017
Illiberal Stagnation
JOSEPH
E. STIGLITZ
冷戦は終わって4半世紀経つが、西側とロシアは再び対立を深めている。しかし、今度はイデオロギーではなく、より分かりやすい、地政学的な対立だ。
旧ソ連の共和国では、選挙を管理する権威主義的支配者が多く残っている。彼らはプラグマティックな理由で「非リベラルな民主主義」を採用している。そのほうが事態を動かしやすいから。しかし、長期的な成長をもたらすことには失敗した。
しかし、鉄のカーテンがなくなったとき、多くの人がロシアの改革に大きく期待した。何が間違ったのか? ロシアの脱共産主義における移行過程を、もっとうまく制御できなかったのか?
私の思うのは、今我々が直面しているのは、ロシアの移行を支配したワシントン・コンセンサスの遺産である、ということだ。その影響で、民営化にあまりにも多くの強調が置かれた改革を実行した。それは、どのような形であれ、すべての改革に優先して行われた。市場が機能するために必要な制度的インフラは無視された。
私は、こうした「ショック療法」が深刻な間違いである、と主張した。私的所有さえ確立できたら、後で、法の支配などの制度は需要され、成立するだろう、と主張した者たちは間違っていたことがはっきりした。ロシアでは多くの人々が、アメリカ財務省の押し付けたワシントン・コンセンサスがロシアを弱体化した、と信じている。
● トランプと北朝鮮
The Guardian, Monday 3 April 2017
Donald Trump’s shock tactics on
North Korea may just work
Ian
Birrell
Song
Byeokは、かつて独裁者のために政治プロパガンダを描いた。しかし飢饉が襲うと、他の家族と同じように彼らも飢えた。だから脱出を試みた。中国に向けて川を渡るとき、彼の父は溺死した。彼は兵士に助けてくれと願った。しかし彼は強制労働収容所に送られた。そこでは飢餓と拷問があまりにも激しく、死んでいく囚人たちをうらやましいと思った。「私はただ早く終わらせたかった」と彼は言った。
制裁も、援助も、関与の試みも、北朝鮮を変えることに失敗した。もし世界が戦争を回避し、2500万人の人々を解放するとしたら、それは食料、エネルギー、兵器を供給している中国が行動することだ。中国は多数の難民が流入することを望まないし、繁栄し、民主的な、アメリカに親しい、そして中国の影響拡大に敵対する、韓国の指導する統一を望まない。
トランプの仕事は、この悪辣な国家を支援しないことが国益だとみなすほど、中国に強い圧力をかけることだ。他の世界もこの血塗られた指導者たちを黙認してはならない。異端の独裁者を阻止するには、異端の大統領がふさわしい。
FT April 4, 2017
Trump and Xi have joint
responsibility in N Korea
MICHAEL
MANDELBAUM
北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの開発は,かつて米ソが陥った困難な状況に似ている.
第2次世界大戦後,ソ連は通常兵器における優位を持つと信じられていた.このとき西ヨーロッパをソ連が制圧することを抑止するのは,アメリカの核兵器の独占であった.
しかし1957年にスプートニクが打ち上げられ,ソ連はアメリカ本土を直接に攻撃する能力を得るかもしれないことが明らかになった.アメリカが西ヨーロッパを防衛することは,それによってアメリカ本土に報復される危険を意味する.アメリカによる防衛を信頼できるか,という問題が生じた.
アメリカとその同盟諸国には4つの選択肢があった.先制攻撃,防衛力向上,核兵器の拡散,あるいは,抑止である.
先制攻撃は第3次世界大戦を意味した.ミサイル攻撃への防衛は,ソ連が核ミサイルの保有量を増やすことで不確実になる.ニクソン大統領はソ連とABM(弾道弾迎撃ミサイル制限)協定を結んだ.これは相互のミサイル攻撃を防ぐことを制限することで,攻撃を思いとどまらせた.
第3の選択肢,核の第3国への拡散は,ヨーロッパ自身が核武装するものだ.ド・ゴールはこれを利用して核開発を進めた.このとき,ドイツが同じことをするのは歴史的経験から難しかった.
ヨーロッパは,アメリカの核抑止に依存する状態を続け,アメリカは西ヨーロッパを必ず防衛すると繰り返し約束した.そしてドイツの最前線にアメリカの部隊を駐留させ,ソ連が攻撃した場合にアメリカが全面戦争に参加する保証としたのだ.
60年後に,朝鮮半島で同じ危機が生じている.北朝鮮は弾道ミサイルの開発を続けており,同様に,アメリカは本土に攻撃を受ける危険を冒してまでアジアの同盟諸国を防衛するのか? と問われている.他方で,その抑止戦略は,アメリカがその独裁者と核の均衡によって共存する道を選択することを意味し,難しいように思われた.
もしアジアの同盟諸国が核武装しても,核の均衡が維持できるとは限らない.韓国,台湾,日本は,すぐにも核武装できる条件を持つ.アメリカはABM条約を離脱して迎撃力を得ようとしている.しかし複数の国が核武装して,自国への核攻撃に必ず報復できる,という抑止の前提を,そのすべての国が信じるのは難しい.その場合,先制攻撃の動機が強まる.
ヨーロッパと異なり,東アジアには4つの選択肢が有効ではない.しかし,幸い,それ以外の選択肢を持つ.中国が,食糧,燃料の供給で,北朝鮮の生命線を握っていることだ.中国はこれまで,北朝鮮が核開発するのを止めるほど強い姿勢を示さなかった.それは,北朝鮮の崩壊と難民流入(そして親米の統一朝鮮)を恐れたからだ.
中国が行動しなければ,北朝鮮は止められない.だからトランプは習に,北朝鮮や他の(中国と友好的でない)アジア諸国が核武装する世界は,中国にとっても非常に危険な世界であることを認めさせることだ.
● ドイツの核武装
FP APRIL 3, 2017
If Germany Goes Nuclear, Blame Trump
Before Putin
BY
MAXIMILIAN TERHALLE
トランプの発言はNATOや核の傘に対する信頼を損なった。ドイツは深刻な論争を始めることになる。アメリカの安全保障に頼るのか? 独自に核の抑止力を得るのか? それを歴史の教訓を顧みない冒険主義的な蛮勇であると非難するのは単純すぎる。この論争はいい加減な空想から生じているのではなく、ヨーロッパ大陸の核心にある潜在的な、戦略的真空によって生じているからだ。
核兵器は、金のかかる、論争を呼ぶ、潜在的に他国の核武装を刺激する、危険な兵器である。ドイツが核武装に突進することはない。しかし、もしアメリカの核の傘はなく、ロシアの核がベルリンを向いているなら、他の選択肢はないだろう。
● 小国と国際通貨制度
Bloomberg APRIL 4, 2017
New Currency Peg Is No Panacea for
Iceland
Mohamed
A. El-Erian
アイスランドは、既存の国際通貨体制の下で「小国開放経済」とその通貨が経験する困難な状況を示している。その回復はすばらしい。多くの旅行者を集め、外国債権者たちに債権の大幅削減を合意させ、資本規制も解除した。
アイスランドの問題はその為替・通貨制度を変えることでは解決できない。主要通貨がQEを離脱する過程で貿易と金融をめぐるグローバルな不確実さの問題だ。むしろ国内金融システムの改革、自国の金融市場の深化、他の小国と協議を重ねて、大国の金融政策やIMFの支配する国際通貨システムについて対策と改善策を求めることだ。
● カリフォルニア独立
NYT APRIL 4, 2017
It’s O.K., California. Breaking Up
Isn’t Hard to Do.
By
STEVEN GREENHUT
カリフォルニアが州になった1850年以来、住民たちの間で多くの分離・独立案が出された。
絵に描いた餅だと提案をバカにする者もいる。しかし国家の境界線はずっとあいまいであったし、非論理的なものでさえあった。人々はBrexitも不可能だと考えていた。しかし、国家の境界線は神聖なものではない。境界線を調整することで政治的分断状態を改善できるときがある。
● 空爆後のシリア
NYT APRIL 5, 2017
President Trump’s Real-World Syria
Lesson
Thomas
L. Friedman
新大統領は重大な問題が起きるたびにオバマケアと同じような経験をするだろう。優れた、簡単にできる解決策があるなら、それはすでに見いだされたはずであり、あまり良くない解決策でも、彼の共和党は財源を出さず、国民は忍耐心を欠く。
火曜日、悲劇的なことに、彼はこのことをシリアの市民に対する毒ガスの利用という形で知った。
トランプのISIS攻略作戦と中東外交は簡単だった。より多くの爆撃、より多くの特殊部隊で、オバマよりタフなことを証明することだ。ISIS攻略はプーチンとのパートナーシップを築くことにもなるはずだった。
それはナイーブな考えだ。ISISは真空に存在するのではない。また、それは地域の単なる悪役ではない。ISISは、イラクにおけるイランの大規模な進出に対するスンニ派ムスリムの反応だった。イラクでは、イランが支援するシーア派民兵とマリキNouri al-Malikiのイラク政府軍が、その国に残るスンニ派権力機関を粉砕し、完全なイランの従属国にしようとした。
イラク・スンニ派に対するイラン・シーア派の攻勢は、シリアにおけるアサドのシーア派・アラウィート体制と並行して進んだ。多数の宗派を含む民主化運動がスンニ派とシーア派の宗派間戦争に変わった。アサドは、もし彼が多数のスンニ派を銃殺し、毒ガスで殺戮すれば、民主化運動を宗派間戦争に転換できる、と考えたのだ。それは成功した。
反政府派がアサドをほとんど打倒するに至ったとき、ロシア、イラン、イラン系のヒズボラ民兵がアサドを支援して、シリアのスンニ派は粉砕された。
ISISは、シリアとイラクと2つのシーア派運動が結び付くことで、破壊されたスンニ派の生んだ運動であった。トランプが、ロシアと協力してISISを粉砕すると言ったとき、アサド、ロシア、イラン、ヒズボラはこの主張を楽しく聴いた。トランプの無知は彼らにとって有利に働くからだ。アサドは、化学兵器を使って反対派を制圧しても問題ない、と考えたのだろう。
トランプはこの問題を起こしたわけではないし、オバマ政権の外交チームに文句を言うのも許される。アメリカはロシアやイラン、その他の主要勢力と交渉したが、地上におけるレバレッジを持たなかった。しかし、アメリカがシリアに介入しなかった本当の理由は、私たちにある。
マンデルバウムMichael Mandelbaumはその著書“Mission
Failure: America and the World in the Post-Cold War Era”で説明した。「アメリカの軍事的なテコがシリアで阻まれた唯一の理由は、アメリカの民主主義である。」「アメリカの大衆は、要するに、シリアで恐ろしい事態を緩和するとしても、満足できるものにはならない、そんなことのために米兵の命や財源が失われることを望まなかった。」 それはイラクとアフガニスタンで失敗したブッシュの介入の副産物でもあった。
だが私は、何もしないことは失敗であったと思う。アサドに委ねても殺戮が続くだけだ。交渉によって権力を共有することは、強い不信感によって、不可能だ。
最小の悪に抑える選択肢は、シリア分割である。そして国際的な軍を派遣して、スンニ派住民を保護する地域を設定する。それに必要ならアメリカの軍隊も加わるだろう。殺戮を阻止すれば、EUに蔓延するポピュリスト・ナショナリストの反動とそれを刺激している難民も減るだろう。
かつてアメリカはヨーロッパで民主主義を維持するため、40万人の軍隊を送り、セクト間戦争を抑えた。NATOとアラブ連合がシリアにセーフティー・ゾーンを設け、他方で、プーチンはイランとダマスカスの殺人君主アサドを守ればよい。
オバマケアを廃止しようとしたとき知ったように、容易な答えはない。最小の悪に抑える妥協案が、あなたのホテルと同様、トランプの名を付けて残るだろう。
FT April 7, 2017
History has served up a rare second
chance on Assad
Richard
Haass
化学兵器,核兵器を含めて,大量破壊兵器の禁止を求める国際体制を強化することだ.
シリア軍の空軍力を破壊する.ロシアは軍事的な反撃に加わらないだろう.自国の経済を回復させることを優先しなければならないからだ.プーチンへの外交も必要になる.
シリアのクルド人やスンニ派の反政府勢力に,もっと強い防衛能力を与える.また,テロリストの脅威を退ける地域住民の武装を強化する.
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The Economist March 25th 2017
Amazon’s empire
The future of the European Union: How to save Europe
Donald Trump and multilateralism: China first
Yemen: Beggar thy neighbor
The case for flexibility: Creaking at 60
(コメント) Amazon, Google, Facebook, MicroSoft・・・ ITに関わる巨大企業の独占禁止法適用はどうあるべきか,本格的な見直しを始める時が来ました.
EU60周年の抱える問題の深刻さは,傷だらけ,病気だらけで,全身が動かなくない老人のようです.弾力性を回復せよ,と特集は訴えます.
大国アメリカを動かすことへの恐怖と深刻さを,いかに傲慢な人物でも,学ぶ時が来るはずです.他方で,小国イエメンの人々が味わう危機の広がりを世界市民が学ぶことでしょう.
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IPEの想像力 4/10/2017
アメリカは59発の巡航ミサイルを発射してシリア政府を懲罰した、というニュースが流れています。
その論争は始まったばかりです.何が論点となるべきか,点検リストを作ることは重要です.ただし,不完全であることに注意して.
1) 事実の確認・認識の形成
2) 政治指導者の性格と判断
3) 米中首脳会談・大国外交
4) 国内権力基盤・支配力学
5) 軍事介入と国際政治
6) 米ロ外交・地域安全保障の枠組み
7) アメリカによる国際秩序
8) ドイツと日本
9) 北朝鮮核・ミサイル問題への圧力
10) 米中合意と韓国・日本
11) 大量破壊兵器の国際管理体制
12) トランプ政権の学習過程
13) シリアと北朝鮮
14) ロシア問題
15) 国際秩序の再編
16) シリア内戦の構造
17) 戦争と国内・国際制度
18) 空爆後の反応
19) 戦争行為の検証
20) 国際秩序の改革・調整過程
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トランプが命じた59発の巡航ミサイルは、その答えを出せるのか?
日本に住む私たちから見て,2つの視点に注目します.1つは,北朝鮮が韓国と日本に向けてミサイル攻撃をする可能性です.
北朝鮮は,アメリカと戦争して勝利するとは考えません.アメリカによる軍事介入で体制転換を強いられることを恐れるのです.マンデルバウムが明解に書いているように,アメリカと北朝鮮は,かつての米ソ対立と同じ恐怖の均衡を維持してきました.アメリカは韓国と日本に安全保障を提供し,北朝鮮は通常兵器と軍隊を増やして対抗したのです.そのための犠牲を無視できる国内支配体制が,だれも予想しなかったほど,長期的に生き延びたのです.
北朝鮮が核兵器を開発し,さらに弾道ミサイルの開発に成功したら,アメリカは韓国や日本を防衛することがアメリカ本土への核ミサイル攻撃という報復を受ける可能性を国民に説明しなければなりません.アメリカの民主主義は,それを許さない,と思います.すでにトランプは防衛負担を削減するつもりです.
もう1つは,アジアの地域安全保障を制度化することです.米ソ対立と異なるのは,北朝鮮に強い圧力をかけることができる中国の存在です.しかも中国は,香港,台湾,チベット,など,安全保障の問題を周囲に抱えます.中国は,アメリカのTHAADが韓国や日本,台湾に配備されることを強く拒みます.
中国は解決のカギを握る国であり,同時に,中国自身が「巨大な北朝鮮」,巨大な「ベルリンの壁」なのです.これらの問題を解決するには,30年で,柔軟なEUのアジア版を築くことです.そのために,まず,米中を含む,アジア安全保障の制度化に合意することではないか,と思います.
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