IPEの果樹園2017

今週のReview

4/10-15

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Brexitの再編 ・・・トランプの環境政策 ・・・米中のマクロ不均衡 ・・・米中首脳会談 ・・・トランプ政権の舵取り ・・・ポピュリスト政治 ・・・ISIS後の中東 ・・・市場自由化の政治的反動 ・・・トランプと北朝鮮 ・・・トランプの貿易政策論 ・・・ドイツの核武装 ・・・小国と国際通貨制度 ・・・カリフォルニア独立 ・・・空爆後のシリア ・・・公共放送

 [長いReview]

****************トランプの環境政策**************

主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


 Brexitの再編

FT March 31, 2017

Stop the Brexit chest thumping: successful negotiators build trust

Jonathan Powell

FT March 31, 2017

Beware the ostriches pursuing a Brexit deal

Tim Harford

Project Syndicate MAR 31, 2017

The Temptation of Theresa May

ROBERT HARVEY

テリーザ・メイは、歴史上のさまざまなメイと同じように、多面的な性格を示した。しかもBrexitの成果は、ヨーロッパにおける多くの選挙によって変わる指導者や有権者の姿勢で大きく変わる。イギリス国内でも選挙が待っている。

彼女の率いる保守党がヨーロッパ嫌いの集団に翻弄されている現在の姿は、高い支持率を維持できるのか? イギリスとヨーロッパが、世界も含めて、安定するような合意に達するビジョン、強さ、歴史上のメイたちが示した美徳を、彼女も示すことだ。

The Observer, Sunday 2 April 2017

The Observer view on EU negotiations

Observer editorial

トーリーのBrexit派にとって、最高の日が来た! 泣き言と痛みを訴える声にあふれた9か月を経て、彼らの勝利を奪おうとする残留派の陰謀を乗り越え、ついに栄光の日が訪れたのだ。・・・

もうこれでヨーロッパの指令にイライラすることはない。曲がってないバナナ、バターの山。いかさまの漁獲割り当て、くすんだ、選挙されることのないヨーロッパの官僚たちが、われわれにああしろ、こうしろと言う。ポーランド人の配管工も、ルーマニア人のチューリップ農夫も、もういらない。イギリスの税金で効率の悪いフランス農家を助けることもない。ヨーロッパ合衆国のようなばかげた話も聞かなくて済む。ブリタニアはついに自由を得た。・・・

なんと愚かで、だまされたことか? かつてアメリカ統合参謀本部議長であったパウエルColin Powell将軍は、何度も注意した。「望むものには慎重でなければならない。それを得てから公開するぞ。」 1991年、パウエルはジョージ・HW・ブッシュ大統領に、イラクを全面攻撃することには反対した。ブッシュはその助言を受け入れた。そして12年後、彼の息子はそれを無視し、今も続く深刻な結果をもたらした。

イギリス社会や政府が失敗したことを隠すための、ヨーロッパはスケープゴートになった。われわれの政治家たちの能力不足、多くの人々のナショナリスティックな、エスニックな偏見を正当化するために使われた。

FT April 3, 2017

How to get Britain back into the EU

Wolfgang Münchau

FT April 3, 2017

Amicable Brexit divorce hinges on cash settlement

Gideon Rachman

FT April 4, 2017

Singapore is not quite what Brexiters think it is

James Crabtree

Brexit後のイギリスに「ヨーロッパのシンガポール」を見る離脱派の夢想は,根本的に間違っている.まず,シンガポールがマレーシアの連邦制から離脱したのは非常に困難で,拒否したにもかかわらず,起きたことだった.また,その後のマラリアが蔓延する,貧しい中継ぎ貿易港を,世界有数の豊かな都市国家に変えた政治指導者たちは,決してレッセフェールではなく,むしろ強烈な介入主義を採用したのだ.

さらに,これほど豊かな国家であっても,今なお,マレーシアとインドネシアに挟まれ,中国やインドの地域的大国に対して非常に脆弱な国家でしかない.

FT April 5, 2017

The ‘Brexit betrayal’ poses a hazard for Theresa May

Sebastian Payne

FT April 6, 2017

Britain’s dismal productivity is its biggest policy challenge

Martin Wolf

FP APRIL 6, 2017

Britain’s Beautiful Dark Twisted Fantasy About Gibraltar

BY SAM KRISS


 トルコ経済

SPIEGEL ONLINE 03/31/2017

Turkey's Struggling Economy

The Demise of the Anatolian Tiger

By Maximilian Popp


 トランプの環境政策

Project Syndicate MAR 31, 2017

Donald Trump’s Climate Fantasies

JEFFREY D. SACHS

伝説のカヌート王は潮の満ち干を変えることができなかった。しかし、トランプは気候変動を変えることができると信じている。そんなことは起きない、そして、石油や石炭、天然ガスの富が復活する、と信じている。

この就任100日間が示すように、トランプはファンタシーに住む男だ。これで雇用や成長をもたらす、という。しかし、石炭産業では無人化が進んでいる。アメリカの雇用についてほとんど影響がない。また、トランプでも誰でも、the Keystone XL Pipelineやカナダのオイルサンドは利益をもたらさないだろう。

NYT MARCH 31, 2017

Coal Country Is a State of Mind

Paul Krugman

NYT MARCH 31, 2017

Climate Progress, With or Without Trump

By MICHAEL R. BLOOMBERG

NYT MARCH 31, 2017

A Message From the End of the World

By ARIEL DORFMAN

FT April 3, 2017

Alternative truths and some hard facts about coal

Nick Butler

Bloomberg APRIL 3, 2017

How China Can Become a True Climate Leader

Adam Minter

NYT APRIL 4, 2017

To Curb Global Warming, Science Fiction May Become Fact

Eduardo Porter


 エジプトの不安

FP MARCH 31, 2017

Egypt’s Coming Revolt of the Poor

BY ZEINAB ABUL-MAGD


 アジア経済とゾンビ企業

Bloomberg MARCH 31, 2017

Long-Awaited 'Asian Century' Might Never Come

A. Gary Shilling

Bloomberg APRIL 3, 2017

Zombies Are Eating Asia

Michael Schuman

ゾンビ企業を、低利融資、その他の方法で生き延びさせることは、資源の無駄づかいであり、生産性を低下させる。ゾンビ企業への支援は、景気回復によるゾンビ企業の利潤も回復する、という期待があるからだが、それ自体が世界経済の回復を損なうものである。

Bloomberg APRIL 6, 2017

China's Banks Are Still in Trouble

Christopher Balding

Bloomberg APRIL 5, 2017

Japan Can Teach U.S. How to Overcome National Rot

Noah Smith


 米中のマクロ不均衡

FT April 5, 2017

Chinese finance is storing up trouble for the rest of the world

Martin Wolf

米中首脳会談では、貿易と為替レートを議論するだろう。しかし、より重要で、はるかに挑戦的課題である、中国の金融システムをグローバルな市場委に統合することを話し合うべきだ。アメリカ政府は、今、経常収支ではなく、資本収支を心配するべきだから。

統合された世界経済では、マクロ経済の不均衡が対応している。各地の貯蓄と投資の不均衡は金融システムにおいて均衡する。中国経済は、かつて温家宝が述べたように、「不安定で、不均衡で、協力を欠き、持続できない」。それは2007年に述べたことだが、今は、さらに正しい。

中国経済の年貯蓄額は、アメリカとEUを合わせた貯蓄額の75%5兆ドル以上もある。2015年の中国の総投資額は、GDP43%もあり、2008年の水準を超えていたが、経済成長率が3分の1も低下している。その高投資を続けるために信用を拡大し、GDPに対する比率が2008年の141%から昨年末の260%にまで上昇した。その銀行システムは世界最大の規模(融資額)になっている。

かつて1世紀にわたり、大恐慌と大不況とはアメリカと世界経済との相互作用から生じた。マクロ経済の不均衡と金融的な過剰融資とは、中国がそれに匹敵するグローバルな破局をもたらすことを意味する。中国の対外不均衡は、すでに2007-08年の金融危機でも重要な役割を果たした。今、その危険はさらに大きくなっている。

マクロ問題は単純だ。中国の貯蓄には、国内で十分な利潤を期待できる投資機会がない。2015年の貯蓄額はGDP48%だった。家計の貯蓄はそのわずか半分で、企業と政府が貯蓄を生じている。国際比較から推定して、6%の成長率ではGDP3分の1の投資で十分だ。すなわち、中国の過剰貯蓄はGDP15%に達するだろう。

過剰貯蓄はどこに向かうのか? それは海外であり、経常収支黒字である。金融危機の前もそうだった。もし中国政府が為替管理を止め、信用拡大もやめれば、再現するだろう。資本が流出し、人民元は急落して、世界に対する経常収支黒字が管理不可能な規模に達する。

中国の金融当局は罠にはまった状態だ。信用の拡大を止めたい。すると投資は減り、国内の不況と大幅な貿易黒字が生じる。それを避けるには、信用拡大と投資を続け、資本流出を厳しく管理するしかない。

なぜか? 流動的で、リスクの高い、利回りの少ない金融資産がますます増えているからだ。汚職撲滅キャンペーンを言うまでもなく、企業も個人も、資産を海外に持ち出すことに必死である。外貨準備は、20146月の4兆ドルから20171月には3兆ドルにまで減った。金融当局はそれが続くことを許されない。しかし、人民元の暴落も止めねばならない。

金融自由化を進めて、資本流出に見合う資本流入が起きることはないのか? 内外の投資家がポートフォリオを多様化できる。しかし、3つ問題がある。1.国内のマクロ不均衡は続く。2.金融システムは脆弱であり、さらに弱くなる。3.統合するグローバルな金融システムもまだ不安定だ。もし駐豪で金融システムの危機が起きれば、それは中国発の世界金融危機になりうるだろう。

米中はこの課題に対して協力して対応しなければならない。マクロ不均衡、金融政策、そして中国の対外不均衡を管理するため、その為替管理、為替レート、外貨準備に注意が必要だ。

習近平のスタッフにはその問題を理解する者がいる。しかし、トランプはどうか? 残念ながら、私はいないと思う。


 米中首脳会談

China Daily 2017-03-31

Xi-Trump meeting can chart course for constructive ties

FT April 4, 2017

Xi Jinping will be thinking of home on his Florida trip

Willy Lam

習は、トランプやティラーソンが、台湾、南シナ海、重要な外交政策に関して暴言を吐くのを聞いた。しかし、今、習の優先的な関心は国内政治にある。秋の第19回共産党大会で新しい指導部と「習近平思想」の承認を得ることだ。

だからトランプとの対立は避けるだろう。習にとって最悪のシナリオは、トランプが暴言を吐き、中国の諸都市に反米デモが起きて、強硬な政策を要求することだ。そして習がアメリカ人を抑えることに失敗すれば、彼は面目を失うだろう。

習の計画は、貿易や為替に関する論争で、トランプに共通の利益を認めさせることだ。相互の利益を増やす協力について、積極的な姿勢を示すだろう。習は、トランプがアメリカ人のナショナリズムを鼓舞してビジネスマンから大統領になった、内面的に壊れやすい男だと知っている。この男が共産党に困難をもたらしうることも知っている。

NYT APRIL 4, 2017

Trump’s Gifts to China

Roger Cohen

大声で叫ぶが,棍棒は小さい.それがトランプだ.中国との交渉は失敗するだろう.北朝鮮でも,南シナ海でも,TPPでも,アジアの同盟諸国はアメリカを頼りにならないと思う.

リベラルでも,民主主義でも,開放型経済でもないアメリカに,なぜ同盟関係を維持する必要があるか? アメリカに対して多くの国が黒字を持つ.

FP APRIL 4, 2017

American Coal Can Fuel Friendship With China

BY GAL LUFT, R. JAMES WOOLSEY

FT April 5, 2017

Domestic concerns matter for Trump and Xi in Florida meeting

Kevin Rudd

NYT APRIL 5, 2017

How Trump Can Solve His Chinese Puzzle

By GIDEON RACHMAN

米中会談で本当に深刻な危険は,トランプの中国政策が破壊的なものになることだ.アメリカの繁栄と安全保障を損ない,中国の台頭を加速するだろう.

トランプがアジアの中国や同盟諸国に示す脅しは,アメリカがアジアで圧倒的な支配的地位を持った時代であれば効果的な手法かもしない.しかし,今は中国の台頭によって大きな変化が生じた.私はそれを“Easternization”と呼ぶ.中国は世界最大の工業生産国,世界最大の輸出国,自動車,スマートフォン,石油の世界最大の市場である.

フィリピンだけでなく,オーストラリアも,韓国も,中国に選択を迫られている.アメリカと中国と,どちらを選ぶのか? ところが,トランプは同盟諸国の安全保障や貿易不均衡を非難する.

FP APRIL 5, 2017

Trump’s Team Has No Idea What It’s Doing On China

BY MIRA RAPP-HOOPER, ALEXANDER SULLIVAN

FP APRIL 5, 2017

Trump’s Attempt at Personal Diplomacy With Xi Is No Substitute for Strategy

BY DAVID MCKEAN, DAVID WADE

FP APRIL 5, 2017

When Xi Meets the Trumps

BY PAMELA KYLE CROSSLEY, JONATHAN FENBY, RICHARD BERNSTEIN, DAVID DOLLAR

Bloomberg APRIL 5, 2017

Trump and Xi Could Break the System

Michael Schuman

全く異なる星から来たような2人の指導者たちが,それぞれの成功を求めて会談する.2人に共通するのは,ルールに従わないことだ.ともにそのパワーがグローバルな秩序に依存していることを感謝していない.

問題は,彼らによって国際機関や規範が破壊させるのではないか? その結果,我々すべてが苦しむことになる.

FT April 6, 2017

A high-stakes summit between Trump and Xi

FT April 6, 2017

Donald Trump, Xi Jinping and a great power bargain

Philip Stephens

Project Syndicate APR 6, 2017

The Trump-Xi Strategic Face-Off

LE HONG HIEP

NYT APRIL 5, 2017

President Trump’s Most Important Meeting

By THE EDITORIAL BOARD

NYT APRIL 6, 2017

How Trump Can Improve the Messy U.S.-Chinese Economic Relationship

Neil Irwin

FP APRIL 6, 2017

When Xi Meets the Trumps

BY STEPHEN S. ROACH, HO-FUNG HUNG, PAMELA KYLE CROSSLEY, ISABEL HILTON, RICHARD BERNSTEIN, JONATHAN FENBY, DAVID DOLLAR


 トランプ政権の舵取り

NYT MARCH 31, 2017

President Trump’s Leaky Ship of State

By ELIZABETH WILLIAMSON

NYT MARCH 31, 2017

Bannon Made Millions in Shaping Right-Wing Thought

By MATTHEW GOLDSTEIN, STEVE EDER, KATE KELLY, ALEXANDRA STEVENSON and BEN PROTESS

FT April 3, 2017

FT interview: Trump on Merkel, Twitter and Republican infighting

Lionel Barber, Demetri Sevastopulo and Gillian Tett

大統領執務室におけるトランプ大統領へのインタビュー。

トランプ大統領に、同盟や政敵、世界情勢を傷つけるようなTweetについて後悔していないか尋ねた。彼は、何もしない。後悔しても無駄だ、と答えた。

トランプは共和党の歴史にこれまでなかった大統領だ。不動産大富豪、リアリティーTVの司会者、支持政党を5回も変えた。名目的なポピュリストであるが、その閣僚は歴史上最も裕福だ。

トランプは、エリートの意見は間違いだった、と述べた。景気は良い、ダウは上昇した。FDルーズベルトにはラジオ、ケネディとレーガンにはテレビがそうであったように、トランプは自分が大衆とのコミュニケーション術に優れている、と認めるように求める。

そしてDan Scavinoを読んだ。Scavinoはトランプのゴルフのキャディーであったが、選挙戦中、ソーシャルメディアを担当し、今もホワイトハウスで同じことをしている。

Twitterはトランプを世界から切り離す。彼の統治スタイルは伝統に逆らう人々を喜ばせる。しかし、実際は内外に深刻な混乱を生じている。オバマ政権が選挙戦中にトランプタワーの登頂を命じたと主張したし、選挙参謀とモスクワとの関係が問われている。こうした問題は、トランプが任期を全うできるのか、疑わせる。

しかし、就任期間が100日に近づき、その狂ったような姿勢には一定の手法が見られる。

トランプと彼のチームは、経済ナショナリズムと強権的指導者の時代と見ている。ロシアのプーチン、インドのモディ、中国の習近平のような。アメリカも強く自国の利益を主張しなければならない、と。

トランプはメルケル首相との会談で、彼女を冷遇したかのような報道を批判した。自分は5回も握手した、と。しかし、UKも、ドイツも、日本も、不安を感じている。トランプの取引手法は、平和や、西ヨーロッパ、朝鮮半島、西太平洋の平和を維持する役割を無視するものだから。アメリカはかつて、ルールに基づくリベラルな秩序の擁護者だったが、今や、利己的な超大国である。

トランプが最も断言したことの1つは、国際的な競争条件の同一化である。彼は、アメリカが軍事的な課さを手協すること、フリーライダーの新興経済、特に中国が世界の貿易ルールを利用すること、を彼らにとって過度に有利な条件だったと確信している。アメリカは手ぬる過ぎた。

マー・ア・ラーゴでの習近平との首脳会談は最初の厳しいテストになる。アメリカと中国の貿易収支は「8000億ドルの赤字だ」とトランプは述べた。(アメリカ商務省のデータでは20165000億ドルの赤字。) トランプは選挙戦中、中国が通貨を不当に操作していると非難してきた。

中国は地域内で大国となり、北朝鮮問題ではパートナーになり、台湾に関する「1つの中国」政策では対立する可能性がある。

国内政策でも、企業に促して(脅して)職場や工場を国内にとどめることでは不十分だ。移民を阻む大統領令は裁判所が停止した。オバマケアの廃止を公約したが、法案の議会通過を諦めた。トランプは、投票が必要か、と言う。税制改革や予算案に関する方針も見えない。大幅減税のためには新しい手法が必要だ。

最高裁判事を指名した。民主党は反対して上院で阻止するのを、ルールを変更して通過させた。トランプの側近たちが議会を回避するように働いている。その中心はスティーブ・バノンだ。ホワイトハウスの戦略担当として「行政国家の解体」を要求する。

大統領執務室にバノンは「参謀本部 “war room”」を設けている。そこには巨大なホワイトボードにトランプの選挙公約がリストになっている。

アメリカ最初のポピュリスト的な大統領、アンドリュー・ジャクソンの前で立ち止まった。それからゲストたちをセオドア・ルーズベルトの前に導いた。そして「ゲームを変えた男だ」と自慢した。しかし、ゲストの1人が違いを指摘した。TRは棍棒を誇示したが、ソフトに語ることも尊重した、と。

NYT APRIL 3, 2017

Jared Kushner, the Assistant With the Big Portfolio

By BRUCE BARTLETT

The Guardian, Wednesday 5 April 2017

Trump's chief strategist Steve Bannon stripped of national security council role

Spencer Ackerman in New York

NYT APRIL 5, 2017

In Search of a Good Emperor

Ross Douthat

FP APRIL 5, 2017

In Reversal, Trump Banishes Bannon from National Security Council

BY DAN DE LUCE

FT April 6, 2017

A conversation with Donald Trump in the Oval Office

Lionel Barber

NYT APRIL 6, 2017

Creeping Toward Crisis

Charles M. Blow

トランプが無限に流す矛盾とウソはこの国の境界線で止まるわけではない.世界は彼を注視しており,この危険極まりない男が権力を維持し,行使するために人殺しを行うのを見ているのだ.

トランプは誇りに満ち,強い男のイメージに執着し,歴史的な視点,地政学的な視野を持たない.これは最悪の条件だ.われわれを軍事的な冒険に引き込むこの男は,悲惨なほど知的な関与を示さない.

シリアのアサド大統領が自国民に化学兵器で攻撃した.トランプはそれまで,ショッキングなほどに柔軟な評価をしていたが,アサド政権に対して,アメリカの外交政策を逆転する可能性がある.水曜日にヨルダン国王とのインタビューが放映された.トランプはアサドがレッドラインを超えた,多くのラインを超えた,と断言した.

しかし,レポーターがシリア情勢に関する困難な情勢とアメリカ外交に関して質問すると,トランプは無知で答えられず,関係ないイランとの核合意を非難した.

北朝鮮に関して,トランプは習近平が飼い稀有するべきだ,と考える.しかし,中国がやらない時は,アメリカがやる,と断言した.この国と,世界を戦争状態に向かわせる.

The King of Chaosカオスの王様だ.

NYT APRIL 5, 2017

Bannon’s Out. But Did H.R. McMaster Win?

By JONATHAN STEVENSON

FP APRIL 6, 2017

Bannon’s Demotion Means the Trump Team Is Learning — Even if Trump Isn’t

BY JULIE SMITH, LOREN DEJONGE SCHULMAN


 ロシア

FT April 1, 2017

Restive young Russians challenge Vladimir Putin

Kathrin Hille and Max Seddon

YaleGlobal, Tuesday, April 4, 2017

The Challenge of Getting Russia Right

Thomas Graham

SPIEGEL ONLINE 04/05/2017

National Awakening

Alexei Navalny Shakes Up a Slumbering Russia

By Christian Esch


 ポピュリスト政治

FT April 1, 2017

Marine Le Pen’s elite guard look to a bloody past

Kate Maltby

FT April 4, 2017

Angry voters are nostalgic for powerful elites

Janan Ganesh

Project Syndicate APR 4, 2017

Growing Out of Populism?

KENNETH ROGOFF

世界経済の回復には不思議なことはない.まだ問題は多く残されているが,金融危機後の長期の債務処理や調整が進みつつあるのだ.しかし,もし十分に成長を達成しなければ,ポピュリズムの勢いは止まらず,その破壊的な政策が回復そのものにとってのリスクになる.

Project Syndicate APR 5, 2017

The European Art of the Deal

HAROLD JAMES

2008年の金融危機から10年が経って、西側のいたるところで対決型の政治が現れている。しかし、アメリカとEUには多くの類似点があるとしても、その社会、経済、財政問題への解決策には大きな違いがある。

トランプは政治過程が進まず、議会、法廷、州政府と対立することを学びつつある。EUは、各国政府が国内政治のダイナミズムと超国家機関、法廷と対立するのを学んだ。各国の選挙が行われるたびに機能がマヒし、反EU感情が刺激される。

両方について中心的問題は、政治そのものが機能しなくなっていることだ。市民や政治家が政治を「ゼロサム」とみなし、瀬戸際的な交渉術、敵視する戦術を採用することで、悪意が充満している。政治は「チキン・ゲーム」に変わった。避けた方が負けだ。両方とも避けなければ、ともに破滅する。

それにもかかわらず、統合に向けたEUの改革は進んできた。ユーロ危機においてヨーロッパでは、ECBや他国の政府が持続不可能な債務の維持を助けた。だれもが威嚇の破壊的な効果を知っている。

トランプ政権も、オバマケアの破棄と代替案で似たような過程を進んだ。しかし、トランプはすべての代替案を拒んだのだ。そして、その交渉術で勝利できると楽観した。それは、メルケルがユーロ危機で代替案を拒み、難民の受け入れ政策でも方針転換を拒んだことに似ている。

しかし、レトリックはトランプと似ていたが、ヨーロッパでは対立が妥協によって終息した。トランプもいずれ学ぶしかない。合意形成は本来的に不満の残るものであり、政治的な取引はいつも明瞭でないし、単純でもない。1950年代から、ヨーロッパの各国はそれを経験してきた。自国の政策順位を誰にでも押し付けることのできる、圧倒的な指導者はいない。

2017年のヨーロッパには、さらに2つの教訓を学ぶだろう。1.加盟国の離脱は破滅ではない。もしそれがその国の緊張を緩和し、将来の交渉を続ける土台があるなら。2.トランプの統治姿勢は、そうしてはならないという失敗例である。それをまねる者は、ル・ペンもそうだが、有権者に処罰されるだろう。

Project Syndicate APR 5, 2017

Europe’s Other Populist Problem

ANDERS ÅSLUND

1991年,Rudiger Dornbusch and Sebastián Edwardsにより出版された研究書,The Macroeconomics of Populism in Latin Americaがある.彼らはポピュリズムの経済学を「成長と再分配を強調し,インフレのリスクや財政赤字,対外的な制約,市場を無視した政策に対する経済主体の反応を無視するもの」と書いた.ポピュリストの政策担当者たちは「保守的な閑雅を拒み,マクロ政策のいかなる制約をも考えない.」

これは2008年の金融危機後にユーロ圏で取られた政策と不気味なほど似ている.Paul Krugman and Joseph E. Stiglitzは間違っている.問題の原因は財政・金融政策が不十分であったからではない.成長の潜在力を高める構造改革を行わなかったことだ.

Project Syndicate APR 6, 2017

Europe’s Reform Opportunity

HERMAN VAN ROMPUY, JANIS A. EMMANOUILIDIS and FABIAN ZULEEG

Project Syndicate APR 6, 2017

Populism at the Barrel of a Gun?

SŁAWOMIR SIERAKOWSKI


 イスラエルの移民政策

VOX 01 April 2017

Israel’s immigration story: Globalisation lessons

Assaf Razin


 ISIS後の中東

FT April 2, 2017

A global strategy is the way to defeat Isis 2.0

Karin von Hippel

FT April 4, 2017

Chaos will reign when Isis loses Raqqa

David Gardner

ISISの首都であるラッカが陥落することは予想される時期になった。主要な地上部隊はクルド人のYPGが担っている。この準国家が崩壊すれば、そのあとには何ができるのか? 計画は見えず、危険な状態である。

ワシントンはクルド人部隊を主要な攻撃部隊にしている。NATO諸国は参加を断り、トルコの申し出は受け入れなかった。トルコとの関係はオバマ政権のときから悪化しているが、トランプも対立を高めそうだ。エルドアンは、イラク北部のクルド人準国家を激しく嫌っている。

先週、ワシントンがアサド政権の退陣を優先しないことを表明したが、それは、ロシアやイランとも協力することを示唆したものだ。ラッカの陥落は、そのままアサド体制に委ねることになるだろう。クルド人はイラクの支配領域にしか関心がない。

ロシアはシリアの将来に関する計画を持っているが、アメリカにはない。しかし、シリアの和解をアサドに頼ることは、ISISやアルカイダの復活にもつながる。

SPIEGEL ONLINE 04/05/2017

Like Obama, Only Worse

Trump's Ill Thought-Out Battle Against Islamic State

An Editorial by Christoph Reuter


 市場自由化の政治的反動

Project Syndicate APR 2, 2017

Illiberal Stagnation

JOSEPH E. STIGLITZ

冷戦は終わって4半世紀経つが、西側とロシアは再び対立を深めている。しかし、今度はイデオロギーではなく、より分かりやすい、地政学的な対立だ。

旧ソ連の共和国では、選挙を管理する権威主義的支配者が多く残っている。彼らはプラグマティックな理由で「非リベラルな民主主義」を採用している。そのほうが事態を動かしやすいから。しかし、長期的な成長をもたらすことには失敗した。

かつて世界の2大超大国であったロシアは、ドイツのGDPの約40%、フランスの50%でしかない。寿命の長さでは、世界の153位、ホンジュラスやカザフスタンの下だ。ロシアの1人当たり所得は、(購買力平価で)73位、東中欧の旧衛星諸国より低い。ロシアは脱工業化し、天然資源を主に輸出している。

ロシアは今も核兵器を保有し、いくつかの分野で重要だ。国連安保理の拒否権を持ち、西側民主主義の選挙に干渉する。

しかし、鉄のカーテンがなくなったとき、多くの人がロシアの改革に大きく期待した。何が間違ったのか? ロシアの脱共産主義における移行過程を、もっとうまく制御できなかったのか?

私の思うのは、今我々が直面しているのは、ロシアの移行を支配したワシントン・コンセンサスの遺産である、ということだ。その影響で、民営化にあまりにも多くの強調が置かれた改革を実行した。それは、どのような形であれ、すべての改革に優先して行われた。市場が機能するために必要な制度的インフラは無視された。

私は、こうした「ショック療法」が深刻な間違いである、と主張した。私的所有さえ確立できたら、後で、法の支配などの制度は需要され、成立するだろう、と主張した者たちは間違っていたことがはっきりした。ロシアでは多くの人々が、アメリカ財務省の押し付けたワシントン・コンセンサスがロシアを弱体化した、と信じている。

トランプ政権の異常さをただすことにわれわれは苦しんでいるが、ロシアがウクライナで行っている国際法違反を「正常とみなす」ことも許してはならない。

Project Syndicate APR 2, 2017

Delivering on Promises to the Middle Class

MICHAEL SPENCE and DAVID BRADY

没落する中産階級の声が政治に届いていなかったことを、トランプは代表すると約束した。しかし、そのための効果的な政策手段を見つけたわけではない。政治への不信と機能マヒが悪循環になってしまう。


(後半へ続く)