IPEの果樹園2017

今週のReview

4/3-8

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北朝鮮の核危機 ・・・EU誕生60周年 ・・・メイ首相による50条の適用申請 ・・・社会保障の共和党案 ・・・中国の外交と経済 ・・・海外援助と外交の削減 ・・・ロシア国家とデモ ・・・貿易・通貨体制 ・・・トヨタと東芝 ・・・アフガニスタンの戦争

 [長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


 北朝鮮の核危機

YaleGlobal, Thursday, March 23, 2017

North Korean Threat Tests Strength of US-Chinese Relations

Börje Ljunggren

318日、アメリカのティラーソン国務長官が北京を訪問しているとき、北朝鮮は大陸間弾道ミサイルのエンジン噴射実験を行った。2016年に事実上の核兵器保有国となってから、短期間で、2度の核実験と、21回のミサイル発射実験を行い、今年だけでも少なくとも6回のさらに高度なミサイル発射実験を行った。

数年以内に、北朝鮮国境から55キロしか離れていないソウルでだけでなく、東京や在日米軍基地、そして、グアムやアメリカ西海岸も核ミサイルで攻撃できると予想される。

トランプは、それは起きない、とTweetした。ティラーソンは「戦略的な忍耐が終わった」、軍事行動も選択肢だ、と述べた。中国とアメリカは両国関係の歴史的な瞬間を迎える、とも。

これは、国際社会が、貧しい、孤立した、破たん国家である北朝鮮を封じ込めることに失敗し、非常に深刻な安全保障のジレンマに至ったことを示す。東アジアは近年でも極めて差し迫った課題に直面しているが、既存の諸大国にはその解決策がない。交渉によって取引するしかない。

北朝鮮の核開発は20年以上も前から国際問題であった。大規模飢饉に苦しみ、生存のための支援を得ていたソ連が崩壊した後、西側は野心的な計画KEDOthe Korean Peninsula Energy Development Organization)を1995年に開始した。アメリカ、韓国、日本が、北朝鮮に軽水炉型の原発を建設し、北朝鮮は、核兵器も関係していると疑われた、Yongbyonの研究所における核開発を停止することに合意した。しかし、北朝鮮は合意したステップを実行せず、この計画は失敗に終わった。

クリントン政権は、その最後の年に、金正日との2国間交渉を行った。オルブライトMadeleine Albright国務長官が歴史的なピョンヤン訪問を行い、ビル・クリントンもピョンヤンに飛んで、条約に署名する準備をした。しかし、キムは合意を遅らせ、その機会を失った。次に大統領となったのは、アル・ゴアではなく、ジョージ・W・ブッシュであり、彼は北朝鮮を、イラン、イラクとともに、悪の枢軸と呼んだ。

こうしたことが、朝鮮半島の全面的な相互対話、金大中大統領が示した「太陽政策」の時代に並行して起きた。金大中は2000年にノーベル平和賞を受賞し、ピョンヤン訪問も行った。欧州閣僚会議議長でスウェーデン首相のGöran PerssonEUの外交・安全保障高等代表Javier Solana、欧州委員会委員のChris Pattenがトロイカとして金正日と5時間にわたって会談した。しかし、2002年後半に北朝鮮の核開発継続が判明し、期待は失われた。

2003年には、中国が呼びかけて、日本、北朝鮮、韓国、ロシア、アメリカの参加する6か国協議が始まった。一定の成果はあったが、長続きしなかった。そして2006年、北朝鮮が最初の核爆発実験を行い、2009年から交渉は行われていない。

北京とワシントンは互いを非難し合った。北京はワシントンが北朝鮮との真剣な対話を拒んだ、と非難し、ワシントンは北京が北朝鮮の生命線を握るにもかかわらず影響力を行使しない、と非難した。しかし、中国の影響力はそれほど強くないし、不信感が高まっている。中国は、北朝鮮のミサイル実験やトランプ政権に頭を冷やすように求めている。そして、北朝鮮からの石炭輸入を禁止するシグナルを送った。

アメリカは韓国にTHAADの配備を決めた。米中と北朝鮮の3か国協議が、6か国協議に代わる選択肢だろう。フロリダにおける米中会談が重要だ。北京を訪問したティラーソン国務長官は、中国の台詞をすっかり真似て、声明を発表した。

軍事的な選択肢はあり得ないのであり、東アジアの平和を築く重大な取引の時期は迫っている。


 EU誕生60周年

Project Syndicate MAR 24, 2017

Fighting for Life at 60

PHILIPPE LEGRAIN

EUが直面するポピュリストの脅威がどれほど深刻化、正しく理解するべきだ。極右の国民戦線を率いるル・ペンが当選すれば、EUに致命的な衝撃となるだろう。Brexitの前に、それが起きるとは予想されていなかったことを思い出すべきだ。ハンガリー、ポーランド、スロヴァキアでもすでに政府が権威主義的なナショナリストの政権となっていることは、EU内部から穴を開けつつある。イギリスやアメリカの政権が及ぼす破壊的な影響も重要だ。

ポピュリストの脅威を退け、EUが繁栄するためには、重要な諸問題を解決する積極的で有効な策を示すことだ。その主要な領域は経済である。多くのヨーロッパ市民は、長期の停滞と生活水準の悪化、子供たちの将来に対する不満と不安を強めている。ポピュリストはEUの庶民への無関心、ユーロ圏の政策、テロに対する無能さを移民・難民と結びつけて攻撃する。

もっと積極的な政治的オルターナティブが必要だ。社会全体のために働くフレッシュな政治指導者、ダイナミックで、公平で、安全な社会を実現する根本的な改革の提案、開放性、寛容さ、多様さを支持して、どのような社会的背景の人もポジティブに共有できるアイデンティティ、そのような政治運動がオランダでも、フランスでも、成功している。


 メイ首相による50条の適用申請

FT March 27, 2017

Brexit reinforces Britain’s imperial amnesia

Gideon Rachman

Brexitを支持した発想は、イギリスの艇庫奥に関する無知にある。イギリス人は、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことは詳しく習うが、インドの帝国で行ったことや、その帝国を失ったことに関しては知らない。1939年にヨーロッパで起きたことより、1839年に、第1次アヘン戦争で起こしたことを知る方が、重要であろう。イギリスが植民地化し、戦争によって蹂躙した諸国が、新興国家として世界の市場や秩序を動かすようになったのだ。たとえイギリス人は忘れても、彼らは忘れていない。

FT March 28, 2017

Brexit is an opportunity to make a federal United Kingdom

Gordon Brown

Brexitは、イギリスの権力がますますロンドンに集中するか、あるいは、分権化と、より分散した連邦化の機会を増やすだろう。メイの演説は、スコットランド、ウェールズ、ロンドンへ、権力の分散を拒んだものだ。

しかし、戦後の経済政策は、ロンドンで決まり、イギリス議会に支配された。それが、イングランドの北部と中部で、ウェールズや北アイルランドで、1人当たりの所得水準が、アメリカの最も貧しい州であるミシシッピやウェスト・ヴァージニアよりも、低い理由の1つである。それは旧東ドイツの貧しい地域と同じである。

憲法を定めるべきだ。憲法は、政府の構造を決めるだけでなく、社会的な分断を克服する方法について合意するものだから。

The Guardian, Thursday 30 March 2017

Brexit is a tragedy, but there’s much we can do before the final act

Timothy Garton Ash

今秋、5幕物のドラマBrexitの第3幕が開幕した。この劇は少なくとも5年、おそらくは10年続き、第5幕だけが、これは悲劇なのか、笑劇なのか、あるいは、まさにイギリス的な苦難を耐え続ける物語であるかがわかる。われわれのように、自分をヨーロッパ人だと思うイギリスに住む多くの人々は、芝居が終わったかのように、今、諦めてはならない。それは終わっていないし、われわれよるは単なる観衆ではない。われわれはこの芝居の俳優であり、その主な役目は仲間の俳優を説得することである。

1幕は国民投票、第2幕は50条による離脱交渉を始めるまで、第3幕は、リスボン条約に従い、2019年春に結論を出さねばならない、2年の交渉である。明らかにそれは重要な瞬間だが、ドラマの終わりではない。

テリーザ・メイは、欧州理事会議長のタスクDonald Tuskに宛てた手紙で、「かつてない広い範囲で、野心的な」自由貿易協定を、EUとイギリスは結びたい、と述べた。しかし、それは達成できそうにない。わずか2年で、しかも、EU側の27か国が自国の交渉を優先して進めると言うのだから。EUの過去の交渉から観ても、これは2021年か、それ以降も続くだろう。

この予定表は、まだ不確実さを過小に示している。男性がその妻と離婚することでも十分に複雑だが、この離脱交渉は2つの複雑な同盟間で行われる。英連邦も(Brexitのせいで)、EUも(Brexitだけでなく、多くの危機で)、それぞれ生存の危機を経験しつつある。

現在のシナリオはわずか5週間で無意味になるかもしれない。57日にマリーヌ・ル・ペンがフランス大統領になるかもしれない。あるいは、フランスでマクロンが大統領になっても、ドイツの選挙が9月にあり、シュルツが首相となれば、ヨーロッパのコア諸国で統合の深化が進むだろう。ヨーロッパの指導者たちは、EUの生存に集中しており、イギリスを助けることには関心がない。イギリスの交渉における立場は非常に弱い。

イギリスの側では、スコットランド、アイルランド、そしてBrexitの経済的な影響がわからない。「わからないことが分かっている」重要な問題だ。第3幕においてわかってくる。それは市場心理と、イギリス人の多くが示す立場による。ここに、イギリス社会の他の半分が、Brexitに投票した「人民」と同じく、参加する。

市場心理は急速に変化するが、Brexitの経済効果がマイナスであっても、来年や2年後の有権者の行動は変わらないかもしれない。Brexitを推進してきたヨーロッパに懐疑的な新聞社が、その成功を称えるプロパガンダを流し続ける。

5幕物の予定はこうだ。2018年秋、議会は暫定結果に関する投票を行う。現在のところ、世論が大きく変わって、メイにもっと良い条件で交渉しろ、と、Brexitに賛成の労働党指導部や議会多数派がブリュッセルに戻すことはないだろう。まして、自由民主党が求める2度目の国民投票は行われないだろう。

しかし、私の考えが正しければ、第4幕は話が変わる。経済的な結果はさらに明白になっている。スコットランドが2度目の住民投票を行う。アイルランドでEUの境界線を引くことのむつかしさが明らかになる。何より、2020年に総選挙がある。

労働党も、自由民主党も、他の小政党も、良い指導者を得て、Brexitの最終条件について国民に支持される権限を新政府に与えるだろう。イギリスの議会制民主主義とは、いかなる政府も後続の政府を縛らないことだ。

このシナリオが起きそうだというのではない。それは可能であり、そのためにイギリスのヨーロッパ市民たちは行動するべきだ、と考える。Brexit派の国民は、メトロポリタンのリベラル派に説得されるつもりなどない。しかし、ポピュリズムの共鳴板を超えて、事実とコモンセンスに訴え、彼らの心に届く方法を見出すべきだ。

Brexitを止めろ」ではなく、新しい目標を積極的に描くことだ。われわれの戦略的な目標とは、われわれの統合されていない王国をできるだけ維持し、大陸の事情にできるだけ深く関与すること、だから。


 社会保障の共和党案

NYT MARCH 24, 2017

The Trump Elite. Like the Old Elite, but Worse!

David Brooks

課員における共和党の社会保障案は、純粋にトップ・ダウンの提案である。それは有権者の医療保険に関する要望をまとめたわけではない。有権者や支持者の利害を反映するわけではない。それはエリートたちの利益のために、エリートたちが書いた法案だ。ドナルド・トランプはワシントンの沼地を干上がらせると約束したが、これは沼地そのものだ。

1に、共和党のエスタブリシュメントが望んだことは、オバマケアの廃棄であり、彼らがそう呼ぶ物なら何でもよかった。政治家たちは、廃棄する、という記者会見を望んだのだ。

2に、ドナルド・トランプは勝利を必要としていた。彼のロビー活動は、法案の中身ではなかった。すべてが彼の信用を高めるため、彼のナルシシズムの産物だ。


 中国の外交と経済

The Guardian, Monday 27 March 2017

Like Trump, the Chinese leader is pushing a political system to its limits

Timothy Garton Ash

アメリカのドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席、地球上で最も強力な個人となった2人は、アメリカの夏の宮殿で行われる会談を予定している。彼らは1つの共通点がある。その国の政治システムの限界を試していることだ。

トランプの渡航禁止令を独立した司法が停止させた。諜報機関は、トランプの電話盗聴を命じたというオバマへの嫌疑を否定する。議会はトランプのオバマケア停止を拒んだ。世界最古のリベラル・デモクラシーは、そのチェック・アンド・バランスを試されている。

もう1つの帝国の首都では、習がたゆまずレーニン主義の政党を介して権力を集中している。北京には、習を最高経営責任者CEOにたとえる冗談がある。それは、なんでも企業の議長だ。しかも、北京の不透明性はワシントンより深い。レーニン主義的資本主義についての台本は何もない。

ハーシュマンAlbert Hirschmanの三角形、退出、発言、忠誠心は、アメリカの政治システムにおいて、独立のメディア、独立の司法、活気ある市民社会として機能している。

中国では、発言や退出は抑制されている。富裕な家族が資金や子弟を海外に出すだけだ。それでも、指導部が経済成長を確保している限り、その忠誠心は豊富にプールされている。また、屈辱の歴史からグローバルな大国として認められるようになった。

問題は、習が「中所得の罠」を乗り越えるかどうか、である。中国は金融・経済危機を大規模な闘志と信用の供与で抑え込んだ。しかし、推定では、政府・企業・家計の総債務は、GDPに対する比率で、2006年の150%から昨年の270%にまで上昇した。大都市の住宅価格は驚異的な水準であるし、地方からの安価な労働力供給は枯渇しつつある。

政治的な理由で国有企業が重視され、技術革新や経済改革にとって効果的な民間部門の活動は制限されている。急速な高齢化、腐敗・汚職、資本の非効率な配分が目立っている。汚職追放運動は、官僚たちを警戒させ、意思決定が止まってしまう。

もし成長が減速し、改革が進まなければ、中国は他の方法で忠誠心を得ることになる。すなわち、ナショナリズムだ。危険なほど不安定なアメリカ大統領、北朝鮮、台湾、南シナ海、東シナ海の、多くの発火点、それらは世界の戦争と平和に結びつく。


 海外援助と外交の削減

FT March 29, 2017

The famine abroad that Donald Trump fails to notice

Edward Luce

イヴァンカIvanka Trumpがどんなアクセサリーを売っているか、メラニアMelania Trumpがどこで眠るか、とアメリカ人の視聴者に尋ねたら、ほとんどの人が正しく答えられる。しかし、10人に1人も、世界が70年間で最悪の飢饉を経験していることは知らないだろう。彼らに罪はない。ケーブルテレビ局は、ドナルド・トランプ大統領に熱中するあまり、飢餓にはほとんど放映時間を割かないのだ。トランプの話は、世界やアメリカのほかのニュースを合わせたよりも多くの時間を取る。

これはトランプの目的に合致する。人々がトランプのTweetに時間をかけるほど、大統領の課題には関心を持たない。第2次世界大戦以来最大の飢饉もそうだ。ソマリア、イエメン、南スーダン、ナイジェリア北部に広がる飢饉は2000万人の命を脅かすが、トランプは何も述べない。トランプ政権は、国連の呼び掛ける44億ドルの緊急支援に、何も貢献しない。

なぜか? トランプは、すべての戦後アメリカ大統領が守ったルールに従わない、と約束して就任した。人道援助もそうだ。アメリカの海外援助と外交に対する予算を30%削減すると提案した。彼の意見では、アメリカはあまりにも長く、アメリカ以外の人々に、過剰に支出してきた。アメリカが外国人に支出しなければしないほど、アメリカ人のために多く支出できる。それがトランプの世界認識だ。その他のことは取引だ。

それでも、トランプは間違っている。飢饉は政治的な破たんを意味する。アフリカの角でも、サハラ砂漠以南のアフリカでも、西側が直接・間接に関心を持つ内戦の結果なのである。ISIS、ボコハラム、アル・シャハブ、アルカイダ、といった武装集団はこうした条件で拡大する。難民の流出もそうだ。国連の警告が正しいなら、アフリカから西側への難民はシリア難民の規模をはるかに超えるだろう。それはアメリカの国益にならない。

トランプの最初の安全保障に関する行動は、イエメンでアルカイダの基地を海兵隊に襲撃させたことだ。およそ500万人のイエメン人が飢餓に苦しむ。この襲撃は、諜報活動への貢献は疑わしいが、1名の海兵隊員William “Ryan” Owensと、イエメン市民20人以上が死亡した。トランプは、先月、Owensの未亡人を彼の議会演説に招待した。彼女は議員たちから2分間のスタンディング・オベイションを受けた。その感動的な挿話はアフリカの飢饉がそれまで、そして、それ以降に得た放映時間よりも長い。メディアの多くは、それに関して、トランプの最も大統領らしい瞬間とたたえた。

私は、その捉え方はひどい間違いだと思う。多くのアメリカ兵士も、たった1人の死を政治的に利用したことを不快に思っている。トランプは多くの将軍たちに取り巻かれている。その願いは明らかだ。トランプは来年のペンタゴンの予算を540億ドル増やした。しかし、飢饉の緩和にその10億ドルを使うだけで、10隻の戦艦よりも、アメリカの安全保障に関してアフリカで大きな成果になるだろう。マティスは当然そのような助言をする。しかし、トランプは聴くのか?


 ロシア国家とデモ

FT March 28, 2017

The Russian protest movement reawakens

この5年間、ロシアの反政府運動は死んだような状態だった。日曜日、それは生命を取り戻した。カリーニングラードからウラジオストックまで、2011-2012年の冬に、腐敗した議会選挙とプーチンの大統領3期目に抗議して大規模なデモが起きて以来、最大のデモが起きた。

そこには2つの重要な違いがある。第1に、モスクワとペテルスブルグだけでなく、80もの都市で、警察の禁止にもかかわらず、デモが起きた。そこには、エリートの汚職、というテーマがあった。Alexei Navalnyナワルニーが示したビデオには、メドヴェージェフが得た不動産のポートフォリオが示されていた。その閲覧回数は1180万回に達した。

2に、2011年と違い、多くの貧しい、組織されない、生活水準の悪化に苦しむ、憤慨した市民が加わっていた。クリミア併合後の楽観論は消滅している。

デモにより政治が不安定化し、プーチンが権力を失う心配はない。しかし、4期目の大統領を目指す選挙にとって、重大な問題となる。反対派の指導者を排除すれば、クレムリンが恐れているように見える。また、当選後の大統領の正当性を損なう。

西側の諸国は、ロシア市民が求める汚職の追放、憲法の認める権利の行使を支援し、彼らがより公平で、法に基づくシステムを要求することに明確な支持を示すべきだ。


 貿易・通貨体制

Project Syndicate MAR 28, 2017

President Trump’s Necessary German Lessons

HANS-WERNER SINN

アメリカ大統領は、ドイツの経常収支黒字を批判する前に、自国の詐欺的な金融商品が大規模に輸出されたことを思い出すべきだ。

ドイツの黒字には2つの原因がある。1つは、1995年、マドリード・サミット以降のユーロ圏のインフレ的なバブルと、その後のECBによる低金利とQEによる救済策だ。南欧諸国で不動産バブルが起きたとき、ドイツでは不況だった。それゆえドイツのインフレ率は低く、ECBQEによるユーロ安はドイツの輸出を増やした。

もう1つの原因には、トランプ大統領の国が関係する。アメリカの通貨は世界の準備通貨であるため、金融部門は金融商品を大規模に世界に輸出できた。それは「オランダ病」と同じである。ドイツを責めるより、ウォール街を責めるべきだ。

カーター、クリントン、両大統領は、Community Reinvestment Actにより貧困層の住宅購入を支援した。ブローカーたちはこの融資をAAA格付けの債券に組み換えて、「愚かなドイツ人の貯金」を使ってアメリカの社会政策を実行できるようにした。

ドイツ政府は金融危機により銀行を救済するために2800億ユーロを拠出した。こうしたことがなければ、アメリカはこれほど多くのポルシェやメルセデス、BMWを輸入することなどなかっただろう。

アメリカ大統領は、ドイツとの貿易戦争をTweetする前に、こうしたことを考えるべきだ。


 トヨタと東芝

FT March 29, 2017

Japan gambles on Toyota’s hydrogen powered car

Robin Harding and Kana Inagaki

日本政府とトヨタやホンダは,電気自動車EVではなく,燃料電池自動車FCVの開発を進めている.トヨタのミライがそうだ.それはTeslaのバッテリーで動く自動車と全く異なる.

解決しなければならない障害は多い.あまりにも効果である.まだ大量生産の利益を生かせない.水素で発電するため,何より,安価な,炭素に依存しない,大量の水素を供給しなければならない.

しかし,水素による燃料電池には,日本の産業,エネルギー,安全保障の戦略が大きく関わっている.日本は水素の国際供給チェーンを構築し,世界をリードする,と安倍首相は立った.

むしろ危険は,水素の失敗ではなく,そのわずかな成功が,日本の技術や産業を,ガラパゴス的な生態系に閉じ込めることだろう.

それでもトヨタがFCVを選ぶのは,燃料電池を生産する技術が非常に困難なものであるからだ.電気自動車を生産するのは携帯電話に似ている.単純で,交換でき,簡単に組み立てられるから,中国やシリコンバレーからの新規参入に対して弱い.燃料電池は,対称的に,自動車会社のすべての技術を必要とする.

トヨタは,その歴史において,バッテリーの性能を上げる限界を強く意識している.他方,水素の可能性は無限である.充てん時間は短く,排出されるのは水だけだ.

問題は,炭素に依存しない水素をどうやっているか,ということだ.天然水素の貯蔵資源はない.それを生産しなければならないが,そのためには燃料が要る.TeslaElon Musk最高経営責任者が,水素自動車を「あきれるほどに愚かだ」と述べたのは,そういう意味だ.

グリーン・エネルギーで水素を生産するには大きな限界がある.しかし,日本では,安価な石炭を利用して大規模に水素を生産し,排出される炭素を集めて地下に埋めることを考えている.日本の環境問題やエネルギー問題は,ドイツやカリフォルニア,中国と,全く異なっている.


 アフガニスタンの戦争

FP MARCH 28, 2017

 ‘Mission Accomplished’ Will Never Come in Afghanistan

BY STEPHEN M. WALT

もしあなたのボスが,羊に飛ぶことを教えろ,とあなたに命じたら,あなたはどうするか? アフガニスタンでアメリカの部隊を率いる司令官であれば,習慣とプロ意識により,あなたは「できます」というだろう.そして,羊の飛行に関する新しい作戦を計画する.

真面目な,計測された,前向きの報告書を,毎年,提出する.まだうまく飛行した羊はいないことを認めつつも,あなたは議会や大統領,そして国民に説明する.何匹かの羊は地上から数インチ離れてどうにかジャンプした.特に1匹の子羊はわずかな傾斜で「見事に着地」した.群れの前進は「低迷」しているが,達成することはまだ可能である.ただし,それにはもちろんより多くの時間と資金,そしてあと数千人の兵士を増やしてほしい,と言う.

これが,アフガニスタンでアメリカが戦争していることの要点だ.それは2001年に,タリバン政権を倒し,アルカイダを追い散らすことで始まった.しかし今や最終の目的もわからず,成功する見込みもない,果てしない,費用の掛かる,非現実的な試みになっている.

しかし,誤解してはならないが,これは戦争だ.市民の犠牲者の数は2016年に新たな高水準に達した.政府の治安部隊は15000人以上が死亡し,5000人以上を殺害した.昨年,死亡したアメリカ兵は14名であり,2017年に政府治安部隊を訓練するためにアメリカ政府が支払う額は約50億ドルだ.さらに数十億ドルをアメリカ兵市の活動に支払う.

ドナルド・トランプはアフガニスタンについてほとんど何も話さない.この問題をどう扱うつもりなのか,われわれにはわからない.しかし,秘密にしてもよいことは何もない.将軍たちが正しく助言できるとは限らない.オバマに増派を助言したのも将軍だ.

アメリカの軍隊は生来の好戦的な集団ではない(むしろ,しばしば一部の市民よりも戦争を好まない)が,敗北を嫌うし,引き分けも好まない.

さらに憂慮すべきは,トランプが外交を軽蔑していることだ.外交への無関心が問題になるのは,アフガニスタンで長期的な解決策とは,幅広い政治的な和解しかないからだ.競争するアフガニスタン内の武装勢力が和解し,外国の勢力がもっと建設的な役割を担うために介入することである.

問題はこうだ.国家安全保障担当の大統領顧問H. R. McMasterマクマスターは,アフガニスタンで行っていることの困難,あるいは不毛さを理解しているのか? 羊に飛ぶことを教えるのは不可能だ.もしその点を彼が理解しているなら,それを大統領に言えるのか?

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The Economist March 11th 2017

Geopolitics: One China, many meanings

The on-China policy: The great brawl of China

The Dutch election: The populists’ dilemma

Buttonwood: A port in a storm

The Dutch economy: Who’s Nexit?

Free exchange: Borrowed time

(コメント) 「1つの中国」政策とは,台湾海峡の平和を維持する仕組みでしたが,その前提条件が失われてきた,と記事は指摘します.新しい枠組みが必要です.

オランダもシンガポールも,そしてイギリスも,グローバリゼーションに大きく依存する国家であり経済ですが,その政治スタイルは独特です.

世界経済が金融危機から回復したのか,また,次の危機を準備していないのか,その答えは政治家たちの能力を問うものです.

The Economist March 18th 2017

On the rise

Brexit and Scotland: Leave one union, lose another

Aid to fragile states: The Central African conundrum

The world economy: From deprivation to daffodils

Exceptionalism: Wagner vs Wagner

Central African Republic: Averting another CAR crash

South Sudan: Death spiral

Charlemagne: Open up

Free exchange: The best policy

(コメント) 世界経済の回復が一斉に始まったのか? データはそれを示しますが,不安要因もあります.特にトランプ政権です.

壊れやすい国家や地域に,Brexit後のイギリスやEUに,アメリカの姿勢は重大な悪影響をもたらすでしょう.中央アフリカ共和国と南スーダンの記事に注目します.

ポピュリズムの影響はどこまで広まるのか? オランダの政治から考えています.また,移民に関する効果的な支持論を説く必要を強調します.

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IPEの想像力 4/3/2017

この腕を、治してほしい。私の指を、動かない足を、治してほしい。・・・遠くの村からも、貧しい家の、今まで治療を受けられなかった子供たちが「船の病院」にやってきます。

地球ドラマチック「バングラデシュ“船の病院”がやってくる」を観ました。

彼らが,医師や医療というものを、子供たちが新しい人生を手に入れ、人々の生活を大きく変える力になる、と確信していることに感銘を受けます。知識や技術が人を幸せにする、ということを実感できるからでしょう。

フランスの形成外科のチームが加わったために、やけどで指や手足が変形した子供たちが多く訪れたようです。「船の病院」はバングラデシュのNGOが運営し、3週間停泊します。そのニュースが村々に広まったことはもちろんです。

受診できる科の医師が来ていることを、スタッフが浜辺で確認します。医師がいなければ、来年、来てください、と言われます。1日に受診する数は300人。それを超えては受診させてもらえず、翌日まで夜明かしして浜で待つ患者たちもいます。

やけどで足が動かなくなったポピー、指が引っ付き、手が使えなくなったパルベス、胸から脇まで、広い範囲をやけどし、化膿しているタハミール。幼い子供や若者の人生がかかっています。手術が終わった、成功した、と聞くときの,どこかぼんやりした両親の笑顔.・・・手術を受けている子供を抱いて、その痛みを想い、涙を流す母親.・・・元気になって遊び始めた子供の笑顔。

医師達は、時間を忘れて1人でも多くの治療を行います。家族の瞳に希望の輝きがあらわれ、子供たちの笑顔を観るときは最高だ、と医師は言います。

貧しい社会では、やけどは深刻な問題です。土間のかまどで煮炊きするため、親が少し目を離すと、子供たちがやけどしてしまいます。すぐに適切な処置がなされず、後遺症が残ります。女性は人前に出られなくなって孤立し、男性も激しい肉体労働しか仕事はないので、働くことができません。近くに病院はなく、医師に診てもらうお金もありません。また、患者たちの多くは文字が読めず、衛生や医療に関する説明を受けても理解することが難しいのです。

私たちはどうでしょうか? 豊かな社会では、むしろ、肥満に悩み、ストレスに苦しみ、美容や老化に関するコマーシャルが頻繁に流されます。私たちが病院に行くと感じるのは、財政的な負担や老人の多さ、そして、むしろ不幸な感覚ではないでしょうか?

国民医療保険制度があることの重要性を,私たちはもっと実感できるような形にするべきだ,と思います.それは,移民や難民の政治論争と似ています.

医師達は夜が明ける前から準備を始めます。日本が貧しい地域や困窮する人々を支援する仕組みとして,PKO参加を検討するだけでなく,こうした「船の病院」を派遣してほしい,と思いました.

とても良い経験になった,という医師の姿が,新しい秩序に向けて,私たちを変えるのです.

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スコットランドだけでなく、カリフォルニアにも、分離独立運動があるそうです。

チベット、香港、台湾.それは、政治統合の限界地において、何ができるのか、というEUにも通じる問題です。

アメリカの核の傘が信頼できないとき、ドイツも、日本も、核武装を必要とするかもしれません。しかし、その計画を検討する委員会には、近隣諸国の代表も含まれていることでしょう。

各地の内戦を終結させるケースと同じように、ヴェネズエラや北朝鮮の社会・政治体制が平和的に移行するのを、国際的な委員会が監視し、保証することになる時代が来たのだと思います。

安全保障から,雇用や医療保険まで,政治共同体の姿は変容し続けています.

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