(前半から続く)
● 中国の外交と経済
NYT MARCH 24, 2017
What a Buddhist Monk Taught Xi
Jinping
By IAN JOHNSON
The Guardian, Monday 27 March 2017
Like Trump, the Chinese leader is
pushing a political system to its limits
Timothy
Garton Ash
アメリカのドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席、地球上で最も強力な個人となった2人は、アメリカの夏の宮殿で行われる会談を予定している。彼らは1つの共通点がある。その国の政治システムの限界を試していることだ。
トランプの渡航禁止令を独立した司法が停止させた。諜報機関は、トランプの電話盗聴を命じたというオバマへの嫌疑を否定する。議会はトランプのオバマケア停止を拒んだ。世界最古のリベラル・デモクラシーは、そのチェック・アンド・バランスを試されている。
もう1つの帝国の首都では、習がたゆまずレーニン主義の政党を介して権力を集中している。北京には、習を最高経営責任者CEOにたとえる冗談がある。それは、なんでも企業の議長だ。しかも、北京の不透明性はワシントンより深い。レーニン主義的資本主義についての台本は何もない。
ハーシュマンAlbert
Hirschmanの三角形、退出、発言、忠誠心は、アメリカの政治システムにおいて、独立のメディア、独立の司法、活気ある市民社会として機能している。
中国では、発言や退出は抑制されている。富裕な家族が資金や子弟を海外に出すだけだ。それでも、指導部が経済成長を確保している限り、その忠誠心は豊富にプールされている。また、屈辱の歴史からグローバルな大国として認められるようになった。
問題は、習が「中所得の罠」を乗り越えるかどうか、である。中国は金融・経済危機を大規模な闘志と信用の供与で抑え込んだ。しかし、推定では、政府・企業・家計の総債務は、GDPに対する比率で、2006年の150%から昨年の270%にまで上昇した。大都市の住宅価格は驚異的な水準であるし、地方からの安価な労働力供給は枯渇しつつある。
政治的な理由で国有企業が重視され、技術革新や経済改革にとって効果的な民間部門の活動は制限されている。急速な高齢化、腐敗・汚職、資本の非効率な配分が目立っている。汚職追放運動は、官僚たちを警戒させ、意思決定が止まってしまう。
もし成長が減速し、改革が進まなければ、中国は他の方法で忠誠心を得ることになる。すなわち、ナショナリズムだ。危険なほど不安定なアメリカ大統領、北朝鮮、台湾、南シナ海、東シナ海の、多くの発火点、それらは世界の戦争と平和に結びつく。
Project Syndicate MAR 27, 2017
The Temptations of a Resilient China
STEPHEN
S. ROACH
西側には何度も中国のハード・ランディングを予想する声が高まった.中国には問題もあるが,それを解決する強さを持っている.マクロデータは上昇しており,資本流出も止まった.アメリカと中国の間で,覇権の交代は非常に緩やかに進むが,その動きは止められない.
FT March 28, 2017
A bigger catch: China’s fishing
fleet casts net wide for squid
Lucy
Hornby
Project Syndicate MAR 28, 2017
Unlocking the Potential of Chinese
Cities
ANDREW
SHENG and XIAO GENG
Project Syndicate MAR 28, 2017
The End of Poverty in China?
HANNAH
RYDER
● 香港行政長官
NYT MARCH 24, 2017
For Some, a Win-Win Election in Hong
Kong
Yi-Zheng
Lian
FP MARCH 24, 2017
Heads, Beijing Wins. Tails, Hong
Kong Loses.
BY
SUZANNE SATALINE
● 海外援助と外交の削減
FT March 25, 2017
Hurting Mexico will boost China and
backfire on Donald Trump
Lawrence
Summers
FT March 29, 2017
The famine abroad that Donald Trump
fails to notice
Edward
Luce
イヴァンカIvanka Trumpがどんなアクセサリーを売っているか、メラニアMelania Trumpがどこで眠るか、とアメリカ人の視聴者に尋ねたら、ほとんどの人が正しく答えられる。しかし、10人に1人も、世界が70年間で最悪の飢饉を経験していることは知らないだろう。彼らに罪はない。ケーブルテレビ局は、ドナルド・トランプ大統領に熱中するあまり、飢餓にはほとんど放映時間を割かないのだ。トランプの話は、世界やアメリカのほかのニュースを合わせたよりも多くの時間を取る。
これはトランプの目的に合致する。人々がトランプのTweetに時間をかけるほど、大統領の課題には関心を持たない。第2次世界大戦以来最大の飢饉もそうだ。ソマリア、イエメン、南スーダン、ナイジェリア北部に広がる飢饉は2000万人の命を脅かすが、トランプは何も述べない。トランプ政権は、国連の呼び掛ける44億ドルの緊急支援に、何も貢献しない。
なぜか? トランプは、すべての戦後アメリカ大統領が守ったルールに従わない、と約束して就任した。人道援助もそうだ。アメリカの海外援助と外交に対する予算を30%削減すると提案した。彼の意見では、アメリカはあまりにも長く、アメリカ以外の人々に、過剰に支出してきた。アメリカが外国人に支出しなければしないほど、アメリカ人のために多く支出できる。それがトランプの世界認識だ。その他のことは取引だ。
それでも、トランプは間違っている。飢饉は政治的な破たんを意味する。アフリカの角でも、サハラ砂漠以南のアフリカでも、西側が直接・間接に関心を持つ内戦の結果なのである。ISIS、ボコハラム、アル・シャハブ、アルカイダ、といった武装集団はこうした条件で拡大する。難民の流出もそうだ。国連の警告が正しいなら、アフリカから西側への難民はシリア難民の規模をはるかに超えるだろう。それはアメリカの国益にならない。
トランプの最初の安全保障に関する行動は、イエメンでアルカイダの基地を海兵隊に襲撃させたことだ。およそ500万人のイエメン人が飢餓に苦しむ。この襲撃は、諜報活動への貢献は疑わしいが、1名の海兵隊員William “Ryan” Owensと、イエメン市民20人以上が死亡した。トランプは、先月、Owensの未亡人を彼の議会演説に招待した。彼女は議員たちから2分間のスタンディング・オベイションを受けた。その感動的な挿話はアフリカの飢饉がそれまで、そして、それ以降に得た放映時間よりも長い。メディアの多くは、それに関して、トランプの最も大統領らしい瞬間とたたえた。
私は、その捉え方はひどい間違いだと思う。多くのアメリカ兵士も、たった1人の死を政治的に利用したことを不快に思っている。トランプは多くの将軍たちに取り巻かれている。その願いは明らかだ。トランプは来年のペンタゴンの予算を540億ドル増やした。しかし、飢饉の緩和にその10億ドルを使うだけで、10隻の戦艦よりも、アメリカの安全保障に関してアフリカで大きな成果になるだろう。マティスは当然そのような助言をする。しかし、トランプは聴くのか?
Project Syndicate MAR 29, 2017
The Risks to America’s Booming
Economy
MARTIN
FELDSTEIN
FT March 30, 2017
The South China Sea presents a
reality check for America
Jamil
Anderlini
FP MARCH 30, 2017
Lidio Javier’s Long Journey Home
BY
MOLLY O’TOOLE
FP MARCH 30, 2017
There Are No Real ‘Safe Zones’ and
There Never Have Been
BY
LAUREN WOLFE
FP MARCH 30, 2017
For Tillerson, Showing Up at NATO
Isn’t Enough
BY
JIM TOWNSEND, JULIE SMITH
● FacebookとGoogleの支配
The Guardian, Sunday 26 March 2017
Are we finally reacting to the
disruptive supremacy of Facebook and Google?
Will
Hutton
FT March 27, 2017
The law is adapting to a
software-driven world
Andrew
Burt
● シュルツとマクロン
FT March 26, 2017
Martin Schulz and Emmanuel Macron
could save Europe
Wolfgang
Münchau
シュルツMartin
Schulzがドイツ首相になれば何が変わるか? マクロンEmmanuel
Macronがフランス大統領になれば何が変わるか? どちらも頻繁に問われ、重要な問題だ。しかし、もっと興味深い問題とは、2人が当選したら、EUはどうなるのか? そして、ユーロ圏はどうなるのか?
Project Syndicate MAR 28, 2017
France’s Extraordinary Election
DOMINIQUE
MOISI
● ロシア国家とデモ
NYT MARCH 27, 2017
The Bolsheviks Versus the Deep State
Anne
O’Donnell
10月革命の後も、レーニンと共産党は中央銀行や各省の役人を動かすことができなかった。革命は、ロシア国家機関との闘いであった。100年前の事件から、トランプ政権に関して学ぶことが多いだろう。
FT March 28, 2017
The Russian protest movement
reawakens
この5年間、ロシアの反政府運動は死んだような状態だった。日曜日、それは生命を取り戻した。カリーニングラードからウラジオストックまで、2011-2012年の冬に、腐敗した議会選挙とプーチンの大統領3期目に抗議して大規模なデモが起きて以来、最大のデモが起きた。
そこには2つの重要な違いがある。第1に、モスクワとペテルスブルグだけでなく、80もの都市で、警察の禁止にもかかわらず、デモが起きた。そこには、エリートの汚職、というテーマがあった。Alexei Navalnyナワルニーが示したビデオには、メドヴェージェフが得た不動産のポートフォリオが示されていた。その閲覧回数は1180万回に達した。
第2に、2011年と違い、多くの貧しい、組織されない、生活水準の悪化に苦しむ、憤慨した市民が加わっていた。クリミア併合後の楽観論は消滅している。
デモにより政治が不安定化し、プーチンが権力を失う心配はない。しかし、4期目の大統領を目指す選挙にとって、重大な問題となる。反対派の指導者を排除すれば、クレムリンが恐れているように見える。また、当選後の大統領の正当性を損なう。
西側の諸国は、ロシア市民が求める汚職の追放、憲法の認める権利の行使を支援し、彼らがより公平で、法に基づくシステムを要求することに明確な支持を示すべきだ。
FT March 28, 2017
The menace of populism has made the
tribal left think again
Janan
Ganesh
Project Syndicate MAR 28, 2017
The October Revolution in Post-Truth
Russia
ANDREI
KOLESNIKOV
YaleGlobal, Tuesday, March 28, 2017
Resurgent Russia Joins Great Game in
South Asia
Harsh
V Pant
● 貿易・通貨体制
FP MARCH 27, 2017
3 Strategies U.S. Trade Partners
Should Pursue Post-TPP
BY
PHIL LEVY
Project Syndicate MAR 28, 2017
President Trump’s Necessary German
Lessons
HANS-WERNER
SINN
アメリカ大統領は、ドイツの経常収支黒字を批判する前に、自国の詐欺的な金融商品が大規模に輸出されたことを思い出すべきだ。
ドイツの黒字には2つの原因がある。1つは、1995年、マドリード・サミット以降のユーロ圏のインフレ的なバブルと、その後のECBによる低金利とQEによる救済策だ。南欧諸国で不動産バブルが起きたとき、ドイツでは不況だった。それゆえドイツのインフレ率は低く、ECBのQEによるユーロ安はドイツの輸出を増やした。
もう1つの原因には、トランプ大統領の国が関係する。アメリカの通貨は世界の準備通貨であるため、金融部門は金融商品を大規模に世界に輸出できた。それは「オランダ病」と同じである。ドイツを責めるより、ウォール街を責めるべきだ。
カーター、クリントン、両大統領は、Community Reinvestment
Actにより貧困層の住宅購入を支援した。ブローカーたちはこの融資をAAA格付けの債券に組み換えて、「愚かなドイツ人の貯金」を使ってアメリカの社会政策を実行できるようにした。
ドイツ政府は金融危機により銀行を救済するために2800億ユーロを拠出した。こうしたことがなければ、アメリカはこれほど多くのポルシェやメルセデス、BMWを輸入することなどなかっただろう。
アメリカ大統領は、ドイツとの貿易戦争をTweetする前に、こうしたことを考えるべきだ。
SPIEGEL ONLINE 03/29/2017
Ego Trip
Trump Steers into Global Economy
Collision Course
By
Christian Reiermann
NYT MARCH 29, 2017
Trump Is a Chinese Agent
Thomas
L. Friedman
● モディの権力
Bloomberg MARCH 27, 2017
Modi's Alarming Power Grab
Mihir
Sharma
● トヨタと東芝
FT March 28, 2017
Self-driving cars discover the
limits of autonomy
Izabella
Kaminska
FT March 29, 2017
Japan gambles on Toyota’s hydrogen
powered car
Robin
Harding and Kana Inagaki
日本政府とトヨタやホンダは,電気自動車EVではなく,燃料電池自動車FCVの開発を進めている.トヨタのミライがそうだ.それはTeslaのバッテリーで動く自動車と全く異なる.
解決しなければならない障害は多い.あまりにも効果である.まだ大量生産の利益を生かせない.水素で発電するため,何より,安価な,炭素に依存しない,大量の水素を供給しなければならない.
しかし,水素による燃料電池には,日本の産業,エネルギー,安全保障の戦略が大きく関わっている.日本は水素の国際供給チェーンを構築し,世界をリードする,と安倍首相は立った.
むしろ危険は,水素の失敗ではなく,そのわずかな成功が,日本の技術や産業を,ガラパゴス的な生態系に閉じ込めることだろう.
それでもトヨタがFCVを選ぶのは,燃料電池を生産する技術が非常に困難なものであるからだ.電気自動車を生産するのは携帯電話に似ている.単純で,交換でき,簡単に組み立てられるから,中国やシリコンバレーからの新規参入に対して弱い.燃料電池は,対称的に,自動車会社のすべての技術を必要とする.
トヨタは,その歴史において,バッテリーの性能を上げる限界を強く意識している.他方,水素の可能性は無限である.充てん時間は短く,排出されるのは水だけだ.
問題は,炭素に依存しない水素をどうやっているか,ということだ.天然水素の貯蔵資源はない.それを生産しなければならないが,そのためには燃料が要る.TeslaのElon Musk最高経営責任者が,水素自動車を「あきれるほどに愚かだ」と述べたのは,そういう意味だ.
グリーン・エネルギーで水素を生産するには大きな限界がある.しかし,日本では,安価な石炭を利用して大規模に水素を生産し,排出される炭素を集めて地下に埋めることを考えている.日本の環境問題やエネルギー問題は,ドイツやカリフォルニア,中国と,全く異なっている.
FT March 29, 2017
Toshiba: Japan’s nuclear challenge
Nick
Butler
● パリ協定
FP MARCH 28, 2017
Is the Paris Climate Agreement Dead?
BY
PAUL BODNAR
● アフガニスタンの戦争
FP MARCH 28, 2017
‘Mission
Accomplished’ Will Never Come in Afghanistan
BY
STEPHEN M. WALT
もしあなたのボスが,羊に飛ぶことを教えろ,とあなたに命じたら,あなたはどうするか? アフガニスタンでアメリカの部隊を率いる司令官であれば,習慣とプロ意識により,あなたは「できます」というだろう.そして,羊の飛行に関する新しい作戦を計画する.
真面目な,計測された,前向きの報告書を,毎年,提出する.まだうまく飛行した羊はいないことを認めつつも,あなたは議会や大統領,そして国民に説明する.何匹かの羊は地上から数インチ離れてどうにかジャンプした.特に1匹の子羊はわずかな傾斜で「見事に着地」した.群れの前進は「低迷」しているが,達成することはまだ可能である.ただし,それにはもちろんより多くの時間と資金,そしてあと数千人の兵士を増やしてほしい,と言う.
これが,アフガニスタンでアメリカが戦争していることの要点だ.それは2001年に,タリバン政権を倒し,アルカイダを追い散らすことで始まった.しかし今や最終の目的もわからず,成功する見込みもない,果てしない,費用の掛かる,非現実的な試みになっている.
しかし,誤解してはならないが,これは戦争だ.市民の犠牲者の数は2016年に新たな高水準に達した.政府の治安部隊は1万5000人以上が死亡し,5000人以上を殺害した.昨年,死亡したアメリカ兵は14名であり,2017年に政府治安部隊を訓練するためにアメリカ政府が支払う額は約50億ドルだ.さらに数十億ドルをアメリカ兵市の活動に支払う.
ドナルド・トランプはアフガニスタンについてほとんど何も話さない.この問題をどう扱うつもりなのか,われわれにはわからない.しかし,秘密にしてもよいことは何もない.将軍たちが正しく助言できるとは限らない.オバマに増派を助言したのも将軍だ.
アメリカの軍隊は生来の好戦的な集団ではない(むしろ,しばしば一部の市民よりも戦争を好まない)が,敗北を嫌うし,引き分けも好まない.
さらに憂慮すべきは,トランプが外交を軽蔑していることだ.外交への無関心が問題になるのは,アフガニスタンで長期的な解決策とは,幅広い政治的な和解しかないからだ.競争するアフガニスタン内の武装勢力が和解し,外国の勢力がもっと建設的な役割を担うために介入することである.
問題はこうだ.国家安全保障担当の大統領顧問H. R. McMasterマクマスターは,アフガニスタンで行っていることの困難,あるいは不毛さを理解しているのか? 羊に飛ぶことを教えるのは不可能だ.もしその点を彼が理解しているなら,それを大統領に言えるのか?
Project Syndicate MAR 29, 2017
Tillerson Goes to Asia
CHRISTOPHER
R. HILL
NYT MARCH 29, 2017
The Art of a Deal With the Taliban
By RICHARD G. OLSON
NYT MARCH 30, 2017
The Blind Spots in Trump’s Foreign
Policy
By
JAVIER CORRALES
● イタリアのファイブ・スター
FT March 31, 2017
Five Star leads the way in Italian
poverty politics
James
Politi and Davide Ghiglione
● 核エネルギー
FT March 30, 2017
Britain has a chance to rethink its
nuclear energy policy
Michael
Shellenberger
Project Syndicate MAR 30, 2017
How to Handle an Oil Shock
CARMEN
REINHART
Bloomberg MARCH 30, 2017
U.S. Nuclear Setback Is a Boon to
Russia, China
Leonid
Bershidsky
● 民主主義の危機
YaleGlobal, Thursday, March 30, 2017
The Crisis of Democracy
Joanna
Korey
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The Economist March 11th 2017
Geopolitics: One China, many meanings
The on-China policy: The great brawl of China
The Dutch election: The populists’ dilemma
Buttonwood: A port in a storm
The Dutch economy: Who’s Nexit?
Free exchange: Borrowed time
(コメント) 「1つの中国」政策とは,台湾海峡の平和を維持する仕組みでしたが,その前提条件が失われてきた,と記事は指摘します.新しい枠組みが必要です.
オランダもシンガポールも,そしてイギリスも,グローバリゼーションに大きく依存する国家であり経済ですが,その政治スタイルは独特です.
世界経済が金融危機から回復したのか,また,次の危機を準備していないのか,その答えは政治家たちの能力を問うものです.
The Economist March 18th 2017
On the rise
Brexit and Scotland: Leave one union, lose another
Aid to fragile states: The Central African conundrum
The world economy: From deprivation to daffodils
Exceptionalism: Wagner vs Wagner
Central African Republic: Averting another CAR crash
South Sudan: Death spiral
Charlemagne: Open up
Free exchange: The best policy
(コメント) 世界経済の回復が一斉に始まったのか? データはそれを示しますが,不安要因もあります.特にトランプ政権です.
壊れやすい国家や地域に,Brexit後のイギリスやEUに,アメリカの姿勢は重大な悪影響をもたらすでしょう.中央アフリカ共和国と南スーダンの記事に注目します.
ポピュリズムの影響はどこまで広まるのか? オランダの政治から考えています.また,移民に関する効果的な支持論を説く必要を強調します.
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IPEの想像力 4/3/2017
この腕を、治してほしい。私の指を、動かない足を、治してほしい。・・・遠くの村からも、貧しい家の、今まで治療を受けられなかった子供たちが「船の病院」にやってきます。
地球ドラマチック「バングラデシュ“船の病院”がやってくる」を観ました。
彼らが,医師や医療というものを、子供たちが新しい人生を手に入れ、人々の生活を大きく変える力になる、と確信していることに感銘を受けます。知識や技術が人を幸せにする、ということを実感できるからでしょう。
フランスの形成外科のチームが加わったために、やけどで指や手足が変形した子供たちが多く訪れたようです。「船の病院」はバングラデシュのNGOが運営し、3週間停泊します。そのニュースが村々に広まったことはもちろんです。
受診できる科の医師が来ていることを、スタッフが浜辺で確認します。医師がいなければ、来年、来てください、と言われます。1日に受診する数は300人。それを超えては受診させてもらえず、翌日まで夜明かしして浜で待つ患者たちもいます。
やけどで足が動かなくなったポピー、指が引っ付き、手が使えなくなったパルベス、胸から脇まで、広い範囲をやけどし、化膿しているタハミール。幼い子供や若者の人生がかかっています。手術が終わった、成功した、と聞くときの,どこかぼんやりした両親の笑顔.・・・手術を受けている子供を抱いて、その痛みを想い、涙を流す母親.・・・元気になって遊び始めた子供の笑顔。
医師達は、時間を忘れて1人でも多くの治療を行います。家族の瞳に希望の輝きがあらわれ、子供たちの笑顔を観るときは最高だ、と医師は言います。
貧しい社会では、やけどは深刻な問題です。土間のかまどで煮炊きするため、親が少し目を離すと、子供たちがやけどしてしまいます。すぐに適切な処置がなされず、後遺症が残ります。女性は人前に出られなくなって孤立し、男性も激しい肉体労働しか仕事はないので、働くことができません。近くに病院はなく、医師に診てもらうお金もありません。また、患者たちの多くは文字が読めず、衛生や医療に関する説明を受けても理解することが難しいのです。
私たちはどうでしょうか? 豊かな社会では、むしろ、肥満に悩み、ストレスに苦しみ、美容や老化に関するコマーシャルが頻繁に流されます。私たちが病院に行くと感じるのは、財政的な負担や老人の多さ、そして、むしろ不幸な感覚ではないでしょうか?
国民医療保険制度があることの重要性を,私たちはもっと実感できるような形にするべきだ,と思います.それは,移民や難民の政治論争と似ています.
医師達は夜が明ける前から準備を始めます。日本が貧しい地域や困窮する人々を支援する仕組みとして,PKO参加を検討するだけでなく,こうした「船の病院」を派遣してほしい,と思いました.
とても良い経験になった,という医師の姿が,新しい秩序に向けて,私たちを変えるのです.
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朝にニュースで、チベット仏教の聖地、ラルンガル・ゴンパを観ました。
どれほど昔からある宗教都市なのか,と思ったのは,大きな間違いでした.わずか40年の歴史しかない。その起源を,文化大革命によって寺院や仏像が破壊されたことに求めています。
厳しい自然と政治的な迫害は,信仰心を鍛えるもっとも重要な試練です.
しかし,殺生を禁じる誓いを自分の命より重んじるのはどうか。鳥葬によって最後の善い行いを見守る,という遺族の感覚も,次第に,宗教的な聖者の行為として限定されるのではないでしょうか?
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スコットランドだけでなく、カリフォルニアにも、分離独立運動があるそうです。
チベット、香港、台湾.それは、政治統合の限界地において、何ができるのか、というEUにも通じる問題です。
アメリカの核の傘が信頼できないとき、ドイツも、日本も、核武装を必要とするかもしれません。しかし、その計画を検討する委員会には、近隣諸国の代表も含まれていることでしょう。
各地の内戦を終結させるケースと同じように、ヴェネズエラや北朝鮮の社会・政治体制が平和的に移行するのを、国際的な委員会が監視し、保証することになる時代が来たのだと思います。
安全保障から,雇用や医療保険まで,政治共同体の姿は変容し続けています.
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