IPEの果樹園2017

今週のReview

3/20-4/1

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トランプの経済政策 ・・・フランス大統領選挙 ・・・ドイツの指導力 ・・・バノンという人物 ・・・国務長官の重要性 ・・・多元化ずるヨーロッパ ・・・ロボットへの課税 ・・・韓国 ・・・中国の自由化と米中関係 ・・・北朝鮮危機 ・・・産業戦略 ・・・ベーシック・インカムの実現 ・・・グローバリズム

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


 トランプの経済政策

YaleGlobal, Thursday, March 9, 2017

Four Contradictions of US Trade Policy

Chris Miller

雇用を増やして、アメリカに製造業を復活させるためには、トランプ政権は戦略的な貿易政策を展開しなければならない。しかし、ドル高、減税と政府支出増への期待は、政策決定を難しくする。

トランプの選挙戦で不公正な貿易に不満を高めたが、それは政策ではない。TPPを破棄しても、アメリカの輸出を助けることにはならず、外国との競争においてアメリカ製造業を有利にすることもない。むしろ、それは貿易赤字を増やすだろう。

1の理由は、選挙後に生じたドル高だ。アナリストの多くは、議会の多数を握った共和党が、減税し、連邦政府の赤字を増やすと予想する。この財政拡大は、連銀の金融政策を変えるだろう。連銀は予想よりも早く金利を引き上げる。

高金利は、アメリカ国内の借り入れコストを高め、GDPの成長を遅らせる。そうした期待の影響は、低成長より、ドル高として即座に現れる。ドル高により、輸出増や貿易赤字の削減を唱える政府は約束を守るのが難しくなるだろう。

トランプ政権の貿易政策が示す第2の矛盾は、中国に関するものだ。閣僚たちは、中国が輸出を増やすために通貨価値を操作している、と考え、制裁すると脅した。中国は確かに人民元の価値を操作しているが、それはトランプ政権が思うこととは逆に、低くではなく、高く維持しているのである。ドルに対して人民元の価値が減少すれば、大規模な資本流出が発生することを中国政府は恐れている。人民元を買うために、中国の外貨準備は1兆ドルも減少した。為替管理も強化した。もし中国が為替介入を止めれば、おそらく人民元は大きくドルに対して安くなり、中国の輸出品を安価にするだろう。アメリカの貿易赤字はさらに増大するはずだ。

アメリカ貿易政策の第3の矛盾は、政府がTPPNAFTAの利益を否定することだ。1世代前とは違い、貿易を妨げる最大の障壁は関税ではない。それは各国の規制である。WTOのルールは関税を下げることには効果的だが、規制を統一することにはそれほど効果的でない。特に、多くの国有企業がビジネスを行う中国のような場合だ。アメリカが自国企業の公平な扱いを求める貿易協定を破棄すれば、それはアメリカ企業を不利にするだろう。

最後に、アメリカは間違った問題に焦点を向けている。2国間ではなく、多国間の貿易が重要だ。重要なのは、アメリカとの2国間貿易が赤字か黒字かではなく、多国間貿易でその国が貯蓄過剰、もしくは支出過小であることだ。メキシコはアメリカとの貿易では黒字だが、多国間ではほぼ均衡している。しかし、例えばドイツは、輸出が輸入よりもはるかに多い。それは、ドイツ国内の投資が少ないこと、また、国内消費よりも他国の貿易赤字を融資することにこだわっているという意味で、ドイツ家計にとって良いことではない。他の世界から見ても、財やサービスに対するドイツからの需要を失っている。

大衆の不満を正しい政策に転換することは容易でない。選挙戦の発想から政策立案に切り替えなければ、アメリカの貿易赤字が減ることはない。

NYT MARCH 10, 2017

A Bill So Bad It’s Awesome

Paul Krugman

共和党員たちがオバマケアに代わる医療保険政策を提示することは決してない、というのがだれにとっても明らかであった。しかし、今秋、公表された法案は、彼らの能力を軽んじていた者でさえ、驚くようなひどい内容だった。全く非現実の代物だ。同時に、それは共和党のひどい現状を示している。

共和党案は、規制をなくし、補助金をなくし、自由市場の魔法で答えを出すものになるはずだった。オバマケアによって医療保険を得た2000万人のアメリカ人にとっては破滅的だが、少なくともイデオロギーとしては一貫していた。

しかし、共和党指導部は困難な仕事に立ち向かう意志がなかった。彼らの提案はめちゃくちゃで、保守派はオバマケア2.0と呼んだ。より正しくはオバマケア0.5であるが。なぜなら中途半端で不完全な形にオバマケアの原理を受け入れ、その基本的な条件を損なっているからだ。

オバマケアthe Affordable Care Actには3つの柱がある。1.加入を制限したり、価格を引き上げたりできないように、事前に決められた加入条件で保険者会社を規制する。2.所得と賞与に結び付けて家族は補助金を受け取り、保険契約を購入できる。3.たとえ現在は健康でも人々が保険契約を購入するように、非加入者に対する罰金がある。

裕福な若者の一部は、大幅に弱められたトランプケア、すなわち共和党の代替案によって有利になるだろうが、老人たちやそれほど裕福でないものへの影響は破滅的である。ライアン率いる共和党議員たちは、メディアに今でも鋭利で、まじめな政策通として売り込んでいるが、こんな怪物をどうやって作ったのか? 「だれでも加入できる」、「素晴らしい医療保険」を提供するというトランプの約束はどうなったのか?

共和党は、政策の専門家としての質を落としたのだ。保守派の優れた専門家たちは、イデオロギー的な忠誠心を疑われて排除された。また、共和党は医療保険からロビンフッド的な性格を奪い去った。オバマケアのような、低所得の家族にも医療保険が利用できるように支援するということをやめたのだ。

彼らの主張は嘘であったし、今もそうだ。そして、この点に関して、少なくとも、共和党の団結力には驚くばかりである。

NYT MARCH 10, 2017

What the President Could Learn From Professional Economists

By N. GREGORY MANKIW

NYT MARCH 13, 2017

Trumpcare vs. Obamacare: Apocalypse Foretold

Paul Krugman

NYT MARCH 13, 2017

Worker Safety Rules Are Among Those Under Fire in Trump Era

By BARRY MEIER and DANIELLE IVORY

FT March 14, 2017

The folly of Donald Trump’s bilateralism in global trade

Martin Wolf

FT March 17, 2017

Fat chance for Donald Trump’s skinny budget

Edward Luce

Project Syndicate MAR 22, 2017

Mnuchin’s Mission

JEFFREY FRANKEL

マヌーチンSteven Mnuchin財務長官は困難な予算編成を求められている。

これまでの政権と違い、トランプ大統領はグローバルな指導力を重視しない。しかし、政府の閣僚を経験したことのないマヌーチンが、他の諸国を説得して、共通のルールや規範をどのように実現するか、難しい課題である。

就任最初の日に中国を通貨操作国に指名してやる、というトランプの公約を実行しなかったことは正しかった。

他方、政権の閣僚であるナヴァロPeter Navarroがドイツを大幅な通貨の過小評価と非難するのは見慣れない愚かな主張である。

もしトランプが、なぜこれほど多くの通貨がドルに対して減価するのか、と不満に思うなら、過去5か月間の自分の行動を考えるべきだ。彼はメキシコと中国、その他の貿易相手国に高い関税を課すと脅迫した。国境調整税を主張した。減税を主張し、財務の累積を加速させ、金利が上昇することを予想させ、ドル高になった。

「オルターナティブ・ファクト」は選挙戦で大いにトランプを有利にしたが、5月のG7、7月のG20では、トランプを苦しませるだろう。マヌーチンの課題は、トランプに現実を教えることだ。


 フランス大統領選挙

FT March 10, 2017

An ailing French Republic totters towards meltdown

Tony Barber

ボルドー市長、元首相のアラン・ジュペAlain Juppéは、フィヨンFrançois Fillonに代わって中道右派の大統領候補になることを断った。フランスは彼に感謝する理由がある。

ジュペは、11月の党候補者争いでフィヨンに負けたのであり、中道右派の勝利を呼び戻す候補者にもなれない。それだけでなく、ボルドーにおける彼の拒否演説は、今年の大統領・議会選挙が、1958年のド・ゴールCharles de Gaulleによる第5共和制の誕生以来、フランスにとって最も重要な選挙であることを明確にした。

「われわれの国は病にある。改革が必要であると知っていながら、政治エリートへの憤慨、デマゴーグ的な公約への疑念により、改革は抵抗を受け、今、恐るべき信認の危機にある。」 ジュペの経歴がそれをよく示す。

199511月、ジュペが首相として財源不足の福祉国家を改革しようとしたとき、1968年のパリ5月革命以来、最大規模のストライキが起きた。それが、多かれ少なかれフランス政府が真剣な経済改革を試みた最後のものであった。多くの人が改革の必要を認めているのに、政治階級は分裂し、街頭デモが起きるのを恐れている。動けない、という冷たい確信が第5共和政を抑え込むのだ。

2に、ジュペは2006年の非合法な政党資金に関して有罪となり、執行猶予付の14か月禁固刑を受けた。このような選挙資金スキャンダルは現代フランスの抜きがたい一部である。週刊誌がフィヨンの妻と子供たちに関する公金の支出疑惑を示したが、有権者たちは政治エリートの恥知らずな行動に、はるか以前から不満を強めていた。司法とメディアによる「政治的な暗殺」である、とベルルスコーニのように語るフィヨンを観て、側近や支持者は嫌になった。

このジェットコースターのような大統領選挙で、独立候補のマクロンEmmanuel Macronが、極右の国民戦線を率いるル・ペンと最終投票に残る、そして、勝者になる、と考えるのは時期尚早である。しかし、マクロン大統領とその政治運動En Marche!が議会の多数を占めるとき、旧秩序の崩壊から、彼らはどのような新しい秩序を築くだろうか?

マクロンが修士論文のテーマとしたルネッサンスの哲学者は、その『君主論』第6章で警告した。「新しい政府を立ち上げるほど、困難で、失敗しやすい、実行するのに危険なことはないのだ、ということを忘れてはならない。新システムを持ち込む者を、旧システムの下で優遇されていたすべての者が敵とみなし、他方、新システムで優遇される者もまだ支持しない。」

SPIEGEL ONLINE 03/17/2017

SPIEGEL Interview with Emmanuel Macron

'I Am Offering the French Renewal'

Interview Conducted by Julia Amalia Heyer and Britta Sandberg

フランス大統領候補、Emmanuel Macronマクロンへのインタビューである。

あなたの占拠の目標は何か?

新しい政治運動"En Marche!" を始めたときの演説で示した。

フランスは誰も必要としていない。しかし、その統治のやり方を根本的に変える必要がある。私が示すのはフランスの再生、生まれ変わりだ。

あなたはどう違うのか? あなたはオランドの経済大臣だった。あなたはエリート校の出身だ。

私は古典的な政治家ではない。物事を違ったやり方で実現する。再び有権者が信頼できる人物に投票してほしい。もはや政治家との利害対立はない。選挙で選ばれる公人の所得は透明にする。

取り残された人々とはだれのことか?

都市にはグローバリゼーションで成功した人もいる。しかし、フランスの周辺、地方には疑念がある。この2つを一緒にしなければならない。

3つの主要な改革を行う。労働市場の開放。職業訓練の改善。機会の平等を高める学校システムの実現だ。

Bloomberg MARCH 20, 2017

What a Macron Presidency Would Mean for France

Therese Raphael

NYT MARCH 23, 2017

What a Le Pen Win Would Look Like

By MATTHEW J. GOODWIN

「マクロンはグローバル・エリートだ。」 ル・ペンの戦略家の1人は語った。「ロスチャイルドから来た男が労働者のことを理解できるはずがない。」

ル・ペンのチームは、マクロンの経済リベラリズムが従来の左派を励まし、保護主義を拒むことを予想する。それは国民戦線のテーマと一致するからだ。ル・ペンは自国を優先し、フランス生まれの労働者たちを優遇して、外国人の雇用に新しく課税する。ル・ペンは再工業化を約束し、Ikeaのようなグローバル企業ではなく、ローカルな製品を買うようにする。

ル・ペンは、イスラムの脅威を重視し、マクロンの多文化主義や多様性を賛美する演説を、「フランスの文化がない」と非難する。

ユーロやEUはフランスを奴隷化している、とル・ペンは主張する。もし彼女が当選すれば、ユーロ圏の存続はむつかしい。通貨、財政、金融の完全な国家主権を回復する。彼女は競争的な切下げを示唆している。


 ドイツの指導力

FT March 10, 2017

The time for German leadership has arrived

メルケルのワシントン訪問は非常に重要だ。世界におけるドイツの位置を考えるときだ。

2次世界大戦後、ドイツの指導者たちがグローバルな舞台で指導力を発揮するとは考えなくなったことは、理解できる。ドイツのパワーは「ヨーロッパ」を通じて行使された。しかし、EUはもはや十分ではない。外交分野の課題が山積している。NATOの同盟諸国を重視しないアメリカ大統領、ウクライナにおける戦争状態、崩壊した中東地域からの難民、Brexit、トルコのナショナリストたち。

こうした挑戦に応えるには、EUはあまりに弱く、ドイツは大きすぎる。他方で、ドイツを西側の道義における指導者と見る考えはあまりにも大げさだ。真実はその中間にある。ドイツは、もっと想像力をもって、世界に対する明確なアプローチを示すべきだ。同時に、単独で行動できることの限界を知っておく必要がある。

ドイツでは「欧州統合軍」の考えに支持があるけれど、外交に関する重要な意見の分裂を考えるなら、それは非現実的である。また、Brexit交渉に関して、「おいしいところだけつまみ食いすることは許されない」という現在の基本原則は、不必要に対立を深め、ドイツの利益と安全保障を損なうかもしれない。

メルケルは、ワシントンでもどこでも、ルールに依拠した国際システムを支持する。トランプ政権がWTOを無視し、国連を回避するような姿勢を示すとき、メルケルが世界貿易や国際法の指導者になれるし、なるべきである。多くの挑戦に立ち向かうドイツにとっての優位は、強い経済と高い国際的評価である。

外交政策の転換は内外でむつかしいが、リベラルな価値のために立ち上がるときだ。

SPIEGEL ONLINE 03/10/2017

A Delicate Meeting

Can Merkel Bring Trump to Reason?

NYT MARCH 10, 2017

Germany’s False Hopes About Trump

Anna Sauerbrey

FP MARCH 10, 2017

German Nukes Would Be a National Tragedy

BY RUDOLPH HERZOG

Project Syndicate MAR 13, 2017

Germany, the G20, and Inclusive Globalization

WOLFGANG SCHÄUBLE

グローバリゼーションはますます西側で嫌われている.ポピュリストたちは,グローバリゼーションが平均的な市民の利益にはならない,と主張する.そして,保護主義や一方的な自国優先を主張する.国民的な政策が自国の偉大さを取り戻す,というのだ.

しかし,彼らの理解は間違っている.国際貿易はゼロサムではないし,多年にわたって,それは多くの人々を貧困から引き上げた.

しかし,グローバリゼーションにはルールや枠組みが必要である.だれにとっても利益になり,持続的な包括的な成長を実現するためだ.国内の法律とともに,その枠組みは絶えず調整する必要がある.それを破棄して,グローバリゼーションから利樽することは間違いだ.国際協力を深化させ,拡大するべきだ.

G20はそのための最善のフォーラムであると思う.世界の主要工業諸国と新興諸国が協力し,グローバルな秩序を築いて,繁栄を増大させることができる.G20はグローバルな金融的アーキテクチュアを支える政治構造であり,開放市場,秩序ある資本移動,緊急時のセーフティーネットが提供される.

G20は,裕福な諸国と貧しい諸国との格差を埋めることには向いていない.アフリカの生活水準を引き上げるには,大陸規模の開発が地政学的なリスクを減らすために重要である.G20はアフリカ機構AUとパートナーになって,「アフリカとの契約“Compact with Africa”」を推進する.それは,インフラを含む,民間投資の支援が提供される枠組みだ.AUの中の5か国 Côte d’Ivoire, Morocco, Rwanda, Senegal, and Tunisiaは率先してマクロ経済,ビジネス,金融制度の改善に取り組む姿勢を示している.

G20も関与して,こうした変化は必ず投資家の関心を高めるだろう.ドイツは次回のG20の議長国として,グローバリゼーションの利益が真にすべての者に届くように誠実な超会社の役割を果たすだろう.

FP MARCH 13, 2017

Trump and Merkel Need to Find a Way to Work Together

BY CHARLES KUPCHAN

トランプ政権の開始から日が浅い時期において,メルケル首相のワシントン訪問は最も重要な階段の1つである.

現在,トランプとメルケルは衝突が避けられない.EUNATO,移民,貿易,ロシア,イランの核開発,気候変動で,全く意見が異なる.トランプは既存秩序を破壊し,中枢の支配を廃止する,と支持者に約束している.メルケルはポピュリストを抑えるために秩序を安定化する.

それでも各国の指導者として,彼らは共通点を探す必要がある.まず,トランプはEUを敵視しないことだ.これに対して,メルケルは貿易費の負担を増やすと約束する.移民移管しては立場が大きく異なるが,国境の管理体制を強化し,情報交換することには合意できる.

経済問題で,ドイツは長く緊縮策にこだわったが,安全保障やインフラに支出を増やすことだ.それはドイツの需要を増やし,対外不均衡を抑えるだけでなく,ヨーロッパのポピュリズムに対抗する勢力を支援する.他方,トランプは保護主義の魔法を吹聴してはならない.メルケルはG20の議長として,アメリカが保護主義を振り回すことで,会議を失敗に終わらせたくない.トランプは少なくともWTOのルールに従うべきだ.

ヨーロッパに関して,ウクライナやプーチンの問題で2人が対立するべきではない.トランプはイランの核や気候変動で,これまでの合意を無視し,ヨーロッパの不振を高めることを避けるべきだ.

2人は水と油であるが,指導者として,協力するための妥協の機会はある.

FT March 14, 2017

Pragmatic Merkel takes on the unpredictable Trump

Stefan Wagstyl in Berlin


 住宅バブル

Project Syndicate MAR 10, 2017

Housing Bubble Déjà Vu

MARK ROE

FT March 17, 2017

A blind spot masks the danger signs in finance

Gillian Tett


 トランプ

FP MARCH 10, 2017

Is Trump the New Nixon?

BY DEREK CHOLLET

FP MARCH 20, 2017

Trump’s Worst Enemy Is His Own Big, Lying Mouth

BY MAX BOOT


 バノンという人物

NYT MARCH 10, 2017

The Bombs of Steve Bannon

Timothy Egan

世界情勢の多くに関してもそうだが、私はバノンStephen K. Bannonを理解しようとした。彼はチーフ・ストラテジストとしてトランプ政権の怪奇な大統領職とカオスの背後で権力を駆使し、このカオスをデザインする。

バノンはアメリカで最も危険な政治運営者であり、世界第2の権力者、偉大な陰謀化であるとみなされてきた。自らを、ソ連の流血の創設者、ウラジミール・レーニンにたとえたが、それはその政治についてではなく、国家を爆破するというその目標についてであった。

「暗黒を賛美する。」

トランプは本読まないことで有名だ。Fox Newsを観て、不正確なTweetをする。しかし、バノンは哲学、理論、歴史の貪欲な読書家だ。

「私はチューダー朝の司法官Thomas Cromwellクロムウェルだ。」 この人物はアイルランドを征服したOliver Cromwellクロムウェルではない。

トマス・クロムウェルはヘンリー8世の聡明な側近であった(1532-1540年)。現実のクロムウェルは、自分中心で、妻を処刑する国王が、離婚するために宗教を分割するのを助けた、抜け目ない陰謀家であった。

クロムウェルのように、バノンも大統領執務室でトランプ大統領にささやく。聡明で、ずるがしこく、矛盾に満ちている。自己嫌悪するベビーブーマー、自己嫌悪するハーヴァードビジネススクールとゴールドマンサックスのエリート、自己嫌悪するハリウッドのディレクター、そして自己嫌悪するジャーナリスト。そして、優れたプロパガンダの手法を学んでホワイトハウスに入った。

ヘンリー国王はトランプ的な人物であった。不器用で、内気で、感情を爆発させる、若い頃はハンサムな、魅力的人物であったが、400ポンドの憤慨する怠け者になった。ヘンリーは6度も結婚し、2人の妻を処刑した。バノンとトランプも、合わせて6人の妻がいた。

クロムウェルは2つの点で有名だ。第1に、愛人と乾坤するため、国王が離婚するのを助けた。ローマ・カトリック教会が離婚を認めなかったので、ヘンリーはイギリス国教会の最高指導者になった。

2に、クロムウェルは旧秩序を破壊するために大量殺人を行った。彼は修道院や大聖堂を破壊し、その富を王室に移した。ヘンリーへの宣誓を拒む修道士や修道女は殺害された。

バノンは、開明的なローマ法王フランシスより、保守派に近い。彼らは法王の心を開くアプローチを嫌い、文明の衝突を好む。バノンは既存秩序の破壊に忙しい。自由な新聞、独立した司法、市民社会は、すべてバノンの計画を邪魔するものだ。

バノンは1950年代の上院による魔女狩りを指導したマッカーシーJoseph McCarthyを称賛する。

チーフ・ストラテジストとして、バノンは毎日、「管理国家の破壊」に従事している。それは単に連邦政府だけでなく、国際条約、貿易協定、第2次世界大戦後の相対的な平和を維持した同盟を破壊することでもある。

バノンは、その歴史上の自分の姿を観て思い出すべきだろう。1540年、裁判することもなく、ヘンリー国王はクロムウェルを処刑した。彼の切断された頭はロンドン・ブリッジにさらされた。

FP MARCH 14, 2017

The GOP Is America’s Party of White Nationalism

BY MAX BOOT

FP MARCH 16, 2017

The Making of Islamophobia Inc.

BY BETHANY ALLEN-EBRAHIMIAN

Bloomberg MARCH 16, 2017

Steve Bannon's Preposterous 'Rosebud' Moment

Francis Wilkinson

NYT MARCH 22, 2017

White Pride and Prejudice

Ross Douthat


 国務長官の重要性

FP MARCH 10, 2017

Rex Tillerson Might Be the Weakest Secretary of State Ever

BY ROBERT JERVIS

ティラーソンRex Tillerson国務長官と国務省は、トランプ政権において重要性を低下させている。通常の政権では、国務長官は閣僚の中で最も重要なポストである。しかし、現在の政権で、国務長官は重要政策に影響していない。その役割はさらに減少していくように見える。

国務長官のパワーは憲法や法律によるのではなく、5つの源泉から生じる。1.大統領の強い支持、2.国務省の高官たちからの助言や支援、3.政権内の他の指導者からの敬意や同盟関係、4.メディアや国民からその能力についての高い評価を受けること、5.外国の外交官からのパワー。

ティラーソンは重要な会談や会見において大統領と同席していない。多くの情報が国務省からの情報漏えいで伝わってくる。それは問題の多いシグナルだ。

それぞれの要素は排他的ではなく、相互に強め合う。大統領の信頼を得ている国務長官は、政権内の他の閣僚や専門的な外交官たちからも尊敬される。新聞の役割も、情勢を伝える以上に、他のプレーヤーに情報を与え、独自に判断する点で重要になる。ワシントンは小さなコミュニティーであり、国務長官の評価は即座に伝わり、非常に重要だ。

ティラーソンの影響力は低下のスパイラルにある。それは国務省や外交の力を失わせる。

FP MARCH 13, 2017

White House Seeks to Cut Billions in Funding for United Nations

BY COLUM LYNCH

FT March 14, 2017

The White House’s troubling deconstruction of diplomacy

Ivo Daalder

FP MARCH 15, 2017

5 Questions That Underpin Rex Tillerson’s Asia Trip

BY MIKE GREEN

中国と日本の双方から称賛されることは難しい.しかし,コーリン・パウエルはそれを得た.

アメリカは勝てるのか? 日本にどこまで関与するか? 1つの中国政策をどう考えるか? アジアに向けた経済戦略とは何か? 北朝鮮をどうするのか?

NYT MARCH 16, 2017

Rex Tillerson, America’s Low-Energy Top Diplomat

By P.J. CROWLEY

NYT MARCH 22, 2017

Calling On a Few Good Men

Thomas L. Friedman


 多元化ずるヨーロッパ

Bloomberg MARCH 10, 2017

A Multispeed Europe Will Be Hard to Pull Off

Leonid Bershidsky

EUの創立者たちは「連邦主義」の意味を明確にしなかった。

マルチ・スピードの欧州統合化とは何か? それは全会一致から多数決への移行を認める、小国への脅迫であった。欧州閣僚会議でポーランド首相は反対したが、無視された。ポーランドが反対したのはタスクが再選されたからだ。ローマ条約の合意は決定の条件から外されるのか? 小国、ユーロ圏でない国は、4大国(ドイツ、フランス、スペイン、イタリア)の行動に不安を感じる。

しかし、それ以外の選択肢はさらに悪い。

FT March 13, 2017

A multi-speed formula will shape Europe’s future

Wolfgang Münchau

1990年代に、私は同僚や友人たちと、ヨーロッパの将来に関してよく議論した。私を含む、ある者たちは、中央政府と議会を持つヨーロッパ連邦を考えた。他の者たちは、もっと分権的なヨーロッパを考えた。第3のグループは、「変化する幾何学」、すなわち、マルチ・スピードのヨーロッパを考えた。

その論争は公式に再現されている。しかも、必要に迫られている。EUは困難な状況だ。次々に危機が襲ってくる。移民政策は混乱し、1国、イギリスが離脱した。他の国、ポーランドは外交的に孤立している。ポーランドのBeata Szydlo首相は、まったく国内政治を理由として、EUの決定を阻もうとした。フランスとイタリアでは、指導的な野党がユーロからの離脱を主張する。

加盟27カ国が連邦に同意することはあり得ない。その条約改正は複雑だ。しかし、何もしないことも許されない。だから、変化する幾何学が残る。しかし、その意味は何か?

1に、協力を高めて法制化する。第2に、コア諸国の構造と、より柔軟な外縁の構造とを区別する。

全ての加盟諸国は、関税同盟と単一市場に同意するが、単一通貨や内政・外交、安全保障政策で合意する必要はない。異動の自由もコア諸国に求められるだけだ。外縁諸国には、コア政策に参加する権利はあるが、義務ではない。が異変諸国の性格も単一ではない。そのように柔軟なEUであれば、イギリスの再加盟も許されるだろう。

Project Syndicate MAR 14, 2017

How Much Europe Can Europe Tolerate?

DANI RODRIK

EUの生誕60周年を祝うのは理由のあることだ.戦争,混乱,大量殺戮の数世紀を経て,ヨーロッパは平和で民主的な時代を実現したのだから.

しかし,それは過去の成功だ.今やEUは深刻な生存の危機にある.イギリスのEU離脱,スペインやギリシャにおける若者の大規模な失業,イタリアの債務と経済停滞,ポピュリストたち,移民やユーロへの反発.

欧州委員会議長のJean-Claude Junckerが新しい白書で「ヨーロッパの将来」を論じたのは遅すぎるくらいだ.そこには5つの道が示されている.現在の目標を堅持する,単一市場に絞る.統合への格差を認める.目標を絞り込む.統一した形で,完全な統合へと進む.

しかし白書は,根本的な問題に答えていない.ヨーロッパの民主主義が再生するには,経済と政治の統合を一致させる必要がある.政治統合が経済統合に追いつくか,経済統合を抑制するか? その答えは国によって異なるだろう.つまり,ヨーロッパは弾力性を高め,それを制度的に受け入れねばならないのだ.

最初から,ヨーロッパは「機能主義」のアプローチに依拠していた.経済の協力が進めば,制度的な条件が整備され,政治統合が可能になる,という考え方だ.

これは最初うまくいった.経済統合が政治統合の一歩先を進んだ.しかし,1980年代,EUは進路を見失った.野心的な単一市場を推進して,各国の政策を超えて,財だけでなく,サービス,人,資本の自由な移動を促したのだ.単一通貨,ユーロは,そのロジックの先にあった.これはヨーロッパ規模のハイパーグローバリゼーションであった.

しかしその後,政治統合と経済統合のアンバランスが広がった.多くの政治家は機能主義がいずれは解決してくれると期待していた.単一市場に見合う政治制度が発展するだろう,と.それにはドイツやフランスのようなヨーロッパの大国が重要である.

それに代わるモデルもある.ヨーロッパが市場統合に沿って共通の社会モデルの発展を許すことだ.それは,市場だけでなく,社会政策,労働市場の制度,財政の枠組みも統合することを意味する.ヨーロッパ中で社会モデルは多様であるから,共通のルールには合意できないだろう.当然,統合のペースや範囲は分割される.

それは不利なことではない.むしろ有益な是正である.その結果は,より小さなEUが,さらに深い統合化に集まるが,同時に,多くの加盟諸国はより野心的でない水準にとどまる.

楽観論者は,新しい指導者や改革されたEUの統合モデルが現れる,という.悲観論者は,ベルリン=パリ枢軸の秘密交渉で,エコノミストや法律家が準備している,という.

FT March 15, 2017

Europe’s fight to prove union has staying power after Brexit

Philip Stephens

Project Syndicate MAR 15, 2017

The United Europe of Tomorrow?

NOËLLE LENOIR

Project Syndicate MAR 16, 2017

Mixed Signals from the Eurozone

DANIEL GROS

ユーロ圏は将来どうなるのか? ヨーロッパ経済は回復しつつある.雇用は回復しつつあり,1人当たりGDP成長において,アメリカを超えた.しかし,政治危機は深刻だ.

ユーロ圏解体のリスクは,1.投資家の景況感を示すSentix2.中央銀行間のいわゆるTARGET2残高,,3.人々が資金をどこに保有しているかで変化する市場金利スプレッド,で観察されている.

すべての指標が一致して崩壊を示唆してはいないが,楽観できるわけではない.

FT March 17, 2017

Broken Europe is down but not out

Timothy Garton Ash

60歳のEUは満身創痍で病気の巣だ.EUが女性になれば,老婦人だ.

20196月のヨーロッパ議会選挙に向けてユンカー欧州委員会委員長は一般教書を用意した.しかし,現実に重要なのは,今週,オランダの選挙,57日,フランス大統領選挙,924日,ドイツ総選挙,である.

各国の政治家たちはすべての悪条件をブラッセルのせいにするのをやめるべきだ.有権者の不満に注意深く耳を傾け,その懸念に応える政策を示すべきだ.インターネットでポピュリズムに集まる人々が魅力を感じるような言葉で,直接,その政策を彼らに訴えるべきだ.すべての政治コミュニティーがそうであるように,人々がその生存を望む場合しか生き残れない.

FT March 22, 2017

Italy is falling out of love with Europe

Tony Barber

FT March 23, 2017

A Franco-German bargain to save Europe

Philip Stephens

独仏の合意でEUは実現した,という神話が,とくにイギリスでは強い.しかし,それは間違いだ.最初から,独仏は異なる目標を掲げ,その妥協によって合意を積み重ねてきた.

ローマ条約で,ドイツは共同市場を求め,フランスは核開発を強く求めた.ボンは工業製品の関税撤廃を求め,パリは農民の所得を守ろうとした.フランスにとって,単一通貨はドイツの経済支配を抑え込む手段であった.ドイツはマルクを放棄することを嫌ったが,ユーロは政治同盟に向けた過程であった.

イギリスの政治家たちは,独仏の違いを利用して,その関係にくさびを打つために時間を費やし,それに失敗しただけであった.

今もそうだ.


 移民

Bloomberg MARCH 10, 2017

Immigration Works Fine When Newcomers Integrate

Noah Smith

NYT MARCH 16, 2017

George Soros: When Hate Surges

By GEORGE SOROS

SPIEGEL ONLINE 03/21/2017

Myths of Migration

Much of What We Think We Know Is Wrong

By Hein de Haas

FP MARCH 22, 2017

Welcome to Wimberg: Population 1,800 (+300 Refugees)

BY YARDENA SCHWARTZ


(後半に続く)