IPEの果樹園2017
今週のReview
3/13-18
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EU離脱は間違いだ. ・・・生産性の上昇政策 ・・・BAT(国境調整税) ・・・北朝鮮の危機に備える ・・・ロボット税 ・・・電気自動車の時代 ・・・メディアの管理と再編 ・・・オランダ選挙 ・・・革命派と国家官僚 ・・・グローバリゼーションとポピュリズム
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● EU離脱は間違いだ.
NYT MARCH 3, 2017
Tony Blair: Against Populism, the
Center Must Hold
By
TONY BLAIR
憤慨するのは簡単だ。それは動機になる。しかし、勝つためには戦略が要る。戦略を立てるのはむつかしい。
欧米に広がる右派ポピュリズムに反撃するには、何が起きているか、なぜ、何がなしうるか、冷静に分析しなければならない。フランスとドイツの選挙で決まるのは、ヨーロッパの将来、そしてある意味では、リベラルな民主主義の将来である。
右派ポピュリズムは、伝統的な保守政治を爆破し、新しい連合に代える。それは、労働者階級のコミュニティーで伝統的に左派を支持した人々、グローバリゼーションに取り残されたと感じる人々と、リベラリズムを憎む、伝統的に右派を支持する人々との連合だ。どちらの有権者たちも、移民が伝統文化を脅かしていると感じ、「政治的正しさ」を求める。国際的な連携に対抗して国民国家を信じる。いわゆるエリートに騙されたと感じ、その解決策は、エスタブリシュメントがどう思うかを気にしない、十分に強力な権威主義的指導者が現れることだと考える。
サッチャー、レーガンの1980年代にも、左派に不満を感じた労働者は右に移動した。それは主に経済的な不満であった。その時代と違い、今のポピュリズムを動かすのは理性ではなく、叫びである。それはときに無政府的な感覚だ。強力なメディアがそれを刺激する。支持者たちは指導者の挑発に乗って怒りを示す。公共の討論は過激化し、帰属意識を高める。その結果、彼らはたとえ政権内でも、自分が排除されているかのように行動する。
同時に、伝統的な保守派は自国において異邦人のように感じる。新しい秩序が生まれるのか、権威を倒す革命が起きるのか、彼らには確信が持てない。
この運動の原因は、変化の大きさ、広がり、スピードである。職場は失われ、コミュニティーは解体し、グローバリゼーションが世界の出来事や文化を身近にもたらし、国家、民族、文化の境界線を消してしまう。
同じダイナミズムが左派を分裂させた。右派と連携する者は、グローバリゼーションに反対し、移民を主要な敵にする。彼らは右派ポピュリストと、エリートについて意見が一致する。ただしそれは、左派にとって富裕層であり、右派にとってそれはリベラルである。
この左派ポピュリズムは大きな間違いを犯している。それは右派に匹敵する魅力がない。単に冷笑的になって、左派の進歩的計画を支持しなくなるだけだ。この左派の傾向は、中央のマヒ状態から生じている。中央の政党や政治家は現状維持を説き、変化を求める人々に応えなかった。
これは一時的現象なのか? それとも新しい政治的時代が始まるのか? 大西洋の両側で、政党や政治システムは産業革命後にできたものだ。論争は、社会主義と資本主義、市場と国家、という対立であった。しかし今、単純な左派と右派との対立ではない。
有権者の多くがそのようなステレオタイプに適合しない。ある者は私企業を好み、経済学の視点では保守派であるが、ゲイの権利を支持する、など、社会的にはリベラルである。また、かつて左派に投票した人々が、今は文化的に非リベラルで、富裕層の政党に投票する。
現代の対立は、オープンか、クローズか、というものだ。オープンはグローバリゼーションを機会とみなし、クローズは脅威とみなす。その区別は伝統的な政党の境界に従わず、組織化の基礎も、選挙に向けた全国規模のネットワークも機能しない。
ポピュリズムの圧力で政治は過激化し、イギリス労働党も、フランス社会党も、左派が指導権を得た。その結果、政治のセンターに空白が生じ、進歩的な政治には連携の余地が生じている。進歩派は、有権者の感じる文化的な不安を認める必要がある。移民、ラディカル・イスラム主義、ジェンダー・アイデンティティなどの問題に固執する集団との違い。
この新しい進歩的センターは、変化に直面する人びとを支援する新しい政策綱領を必要とする。その核心は、シリコンバレーの技術革命を担う人々と、公共政策に責任を負う人々との連携である。AIやビッグ・データは職場にマイナスの影響を及ぼすが、生活を改善する莫大な機会を提供することでもある。
新しい政策綱領が、その機会に注目し、人々を支援するのだ。教育や熟練を得る仕組み、税制や福祉を介した富の公平な分配、インフラの再建と貿易や技術変化に最も影響を受けるコミュニティーへの投資。こうして進歩派も政党の境界線を越える。
進歩的な政治は死なない。それは再生され、再活性化する。リベラルな民主主義こそポピュラーになる。ポピュリズムではない。
● 生産性の上昇政策
Project Syndicate MAR 3, 2017
Rethinking Productivity Growth
J.
BRADFORD DELONG
新しい消費の機会が現れることを考慮すれば、生産性を図ることはむつかしい。その将来も予測しがたい。
現在、世界の人口は、平均で、長い農耕時代において20倍の富を得ている。BC7000年からAD1500年まで、資源は乏しく、技術革新は遅く、マルサスの観たような圧力の下で、多くの人々は生存維持水準に抑えられ、現在の価格で、1人当たりGDPは1日1.50ドルでしかなかった。
われわれのグローバルな年間所得はおよそ80兆ドルである。グローバルな生産性の果実は平等に分配されていないが、それでもわれわれの社会が達成した富は農耕時代の人々を圧倒する。
BC1世紀、皇帝ネロは一期とクリームを食べたことがなかっただろう。それは16世紀、チューダー朝の料理人が初めて作った。
1606年、魔女を扱う流血の劇を観たのは1人だけであった。イングランドとスコットランドを支配する王様、ジェームズ・スチュアートだ。彼はウィリアム・シェークスピアを抱えていた。しかし今、40億人以上がスマートフォン、タブレット、テレビを保有し、かつての王族だけが許された観劇をオンデマンドで楽しんでいる。
19世紀前半の最も裕福な人物であったネイサン・メイヤー・ロスチャイルドは、50歳代で膿瘍(腫物)により死亡した。もし現在の抗生物質が手に入るなら、その全資産を与えただろう。
未来のイチゴと生クリームは、まだ発明されていない。
● BAT(国境調整税)
Project Syndicate MAR 3, 2017
America’s Bad Border Tax
NOURIEL
ROUBINI
議会多数を握る共和党がBAT(国境調整税)を法人税改革の重要な要素にしている。アメリカの輸出業者に、補助金となるような減税を行い、輸入するアメリカ企業には罰金となる。貿易収支を改善し、国内生産、投資、雇用を増やす、と彼らは主張するが、それは間違いだ。
BATはアメリカ企業の所得ではなく、国境で調整するキャッシュ・フローに課税する。それはアメリカ企業の競争力や利潤に影響する。輸入に頼る企業は負担が増し、輸出企業は大幅に課税が減る。この変更は不当で、不公平だ。
消費者にも影響し、富裕層の利益になるだろう。さらに悪いことに、BATはアメリカ企業の国際競争から保護しない。ドル高によって競争力の改善は効果を失うだろう。さらにドル高は、外貨建ての資産を保有するアメリカ企業に数兆ドルの損害を与える。ドル建債務に依存する新興経済は債務負担が膨張し、金融不安や危機に陥る。
輸入財への課税はインフレ率を引き上げ、連銀は金利引き上げで応じるだろう。それは長期金利を上昇させるから、さらにドル高に向かう。
BATのもう1つの問題は、グローバル・サプライ・チェーンを大規模に破壊することだ。BATは、オフショア生産を妨げ、企業が労働力と資本を配置して最大限の効率を実現する能力を破壊する。それはアメリカと世界経済の厚生を低下させるだろう。
BATはWTOルールに反すると判断される恐れが高い。その場合、アメリカは4000億ドルに達する報復を受ける。
議会も、トランプ政権も、BATの支持と反対との間で割れている。しかし、たとえBATが成立しなくても、その他の保護手段が次々に現れるだろう。
● 北朝鮮の危機に備える
FT March 8, 2017
America and China can avert disaster
on N Korea
オバマは大統領府を去るとき、トランプに北朝鮮のことを警告した。
北朝鮮は、悪いカードで、うまくプレーする国である。何十年間も、近隣諸国や同盟関係を脅かし、交渉や譲歩を強いてきた。トランプ大統領はTweetしただけであったが、最近、中国がカギになることを理解したことは良いニュースだ。
中国は、石炭の輸入を止める制裁を行った。しかし、北朝鮮の挑発が韓国政府にアメリカのミサイル防衛システムを導入する決定に向かわせたことを嫌っている。韓国政府や企業に非公式の制裁を行っているが、それは無駄である。安全を脅かされている国が、どのような制裁にも譲歩しないことは明らかだ。
中国は問題の根源、隣国の政治体制に向かうべきだ。しかし、中国単独では北朝鮮を動かせない。北朝鮮は、交渉に向かう準備として、歴史的にも強い行動で逆らってきた。韓国の朴大統領が辞任したことは、北朝鮮にとってチャンスである。しかし、交渉の提案はアメリカと韓国の最強のカードであるから、北朝鮮が先にその行動を激的に変えるよう求めるだろう。同時に、中国の経済制裁を強化するべきだ。
朝鮮半島の非核化という目標に向けて、今すぐに、軍事衝突をもたらす危険な状況を鎮静化するべきだ。
● ロボット税
FT March 6, 2017
Robots are wealth creators and
taxing them is illogical
Lawrence
Summers
私は普通、公共政策に関してゲイツBill Gatesと意見が一致する。しかし、最近、彼がインタビューで、仕事をなくした労働者や不平等の問題を緩和するために、ロボットに課税することを提案したことには反対だ。
1.ロボットは仕事を減らす他の技術と区別できない。航空券をキオスクで発行することも、ワープロで書類作成が容易になることも、モバイル・バンキングも、自動運転も、病気をなくすワクチンも医師の仕事を減らす。
2.さまざまな技術革新は、さまざまなロボットも、新しい商品やサービスをもたらす。課税はそれも抑えてしまう。
3.課税は富のパイを、増やすのではなく、減らす。パイの分け方を変えるべきであるのに。生産の増加を受け入れ、その分配を変えて労働者を保護する方がよい。
4.長く国際貿易論が示してきたように、市場の開放は新技術の導入と同じである。保護主義は間違いだ。いずれも失業や不平等の対策にならない。
多くのより良い解決策がある。政府は構造的な失業に対処しなければならない。教育と職業訓練のシステムを改善し、深刻な雇用問題を生じているグループに絞って賃金を補助し、インフラ整備に投資し、直接の政府雇用も考えられる。
● 電気自動車の時代
The Guardian, Monday 6 March 2017
The Guardian view of the car
industry: an electric future
Editorial
イギリスから自動車産業は消滅した。メイ首相の産業戦略は限られた資源の知的展開でしかない。未来の自動車産業は明らかに電気である。バッテリーの開発に取り組むべきだ。
中国政府はバッテリーの世界市場を制圧する意志を示しており、現在、日本と韓国の企業がその大部分を供給している。
電気自動車の利用は、バッテリーの改善によって一気に加速するだろう。電気自動車はガソリン車に比べて軽く、クリーンで、加速・減速が容易で、燃費もよく、静かである。オランダ議会は、2025年までに、販売されるすべての自動車を電気にするよう求める政策を検討している。ある報告書は、10年で、世界の自動車販売の3分の1が電気自動車になるという。
より軽く、より多く、早い充電が可能なバッテリーを実現する技術進歩のため、すでに莫大な投資が行われており、その必要性を満たすために今後も続くだろう。電気自動車の普及は、内燃機関が実現した根本的な世界の変化を再現する。自動運転が進み、自動車の個人所有は消滅するかもしれない。少なくとも都市間では、自動運転車のネットワークがそれに代わる。
自動車の持つ社会的なシンボルは重要だ。ガソリン車の不便さが、むしろ富裕層の社会的地位を示すかもしれない。個人が馬を所有するように。
● メディアの管理と再編
Bloomberg MARCH 6, 2017
The Trump Project Bigger Than Any
Wall or Trade Deal
Leonid
Bershidsky
トランプ大統領は、国境の壁や貿易政策ではなく、もっと重大なアメリカの改造を進めている。
トランプはThe New York TimesやCNNを悪意ある編集であると非難し、他方で、彼の世界観を受け入れる大小の保守派メディアを称賛する。Breitbart Newsを指導したスティーブ・バノンを大統領の主席戦略家としてホワイトハウスに入れたときから、彼らがメディアに異なる物語を広めてきた。主流派メディアを多数の読者から切り離す閉じた生態系を築こうとした。政治の論調はそれによって変わったことを示している。
トランプは報道の範囲を決める力がある。人々が何を話すか、話してほしいものを決めることができる。
アメリカのメディアは生存可能な数を超えており、市場を奪い合っている。その市場で最大のニュース生産者、アメリカ大統領が同盟を組めば、絶好のチャンスが得られる。
長期的に、アメリカメディアの勢力配置を変えることは、トランプが移民、社会保障、税制を変える以上に、重大な企てである。ロシアのジャーナリストとして、私は、活気ある、リベラルで、多元的なロシアのメディアを、クレムリンの戦時メンタリティーによって決定される話題に、プーチンが変えていったことを観てきた。
プーチンは10年以上かかったから、トランプには時間が足りない。しかし、彼とその家族は、右派メディアに多くのビジネス機会を観ている。
われわれはトランプが提供する話題の真偽を検証するようなことにではなく、もっと独自の調査報道に頭を使うべきだ。ロシアのジャーナリストたちは、プーチンが何を言ったかではなく、何をしたかに、もっと注意しなければならなかった。アメリカのジャーナリストたちは、もっと賢明であるだろう。
● リベラルな国際秩序
FT March 6, 2017
The isolation of Angela Merkel’s
Germany
Gideon
Rachman
ドイツは過去の過ちによって孤立しているのではない。周辺の変化によって、そのリベラルな戦後の価値に従う姿勢を非難されている。東には、ドイツを嫌うポーランド、ハンガリー、さらに東にロシアがある。西にはBrexitを進めるイギリス、そしてアメリカにはトランプがいる。南のイタリアやギリシャはドイツのせいで経済危機に苦しんでいると考える。
ドイツのメルケル首相が厳しい孤立状態に置かれている現状を理解するには、金融危機の直前、2008年にオバマ大統領がベルリンの熱狂する大群衆に演説したときと比べることだ。
フランス大統領選挙の結果がル・ペン大統領になれば、ドイツの悪夢が完成するかもしれない。
Project Syndicate MAR 6, 2017
Is Liberal Internationalism Dead?
TONY
SMITH
80年以上の歴史において,トランプはアメリカ大統領としてウィルソンの描いた原理を全く逆転する最初の人物となった.
ウィルソンと違って,トランプは他の民主主義国との関係を深めることに何の価値も見いださない.彼はむしろ,特に,ロシアのプーチン大統領のような,権威主義的な指導者たちを好むようだ.
ウィルソンが生きていたら,トランプに同意する問題もある.世界市場,アメリカの銀行や大企業とその資本・技術・雇用の輸出,そして,国内のコストを無視する態度には,おそらくトランプと同館だろう.
しかし,彼らの解決策は違う.
● オランダ選挙
FT March 8, 2017
Lessons from the Dutch on how to
fight populism
Rutger
Bregman
オランダほどテクノクラートが政治を支配する国はない。しかし、オランダは冷戦後のコンセンサスを最初に破壊する国の1つになった。なぜか?
1999年でも、オランダの全国調査機関によれば、人々は政治に対して高い信頼を示していた。同様の高い信頼を示すのは、共産主義の北朝鮮だけであった。しかし、わずか3年後に、それは半分に低下する。
だから、「人民」が長く感じ続けていたことを右派ポピュリストたちが吸収した、というのは間違いだ。彼らが新しい何かを創り出し、その後、9・11テロ攻撃を受けて、オランダを右傾化させたのだ。
まったく奇妙なことだが、テクノクラシーが経済の最前線を支配し続けている。2012年、社会民主党と保守党が組閣した。「中道派の勝利」と彼らの新聞は掲げた。オランダでも、英米と同じく、中道派はプラグマティックで脱イデオロギーを自分たちのイメージにしている。景気が回復すれば、思想は後退する。
しかし今では、われわれは、経済が上向けばすべての問題は解決できる、という幻想を持てなくなった。根本的に異なる説明、アイデア、ビジョンが必要なのだ。15年前にFortuynが現れたように、突然、それは人々の広い支持を得る。
オランダで何かが生まれつつある。たとえば、ベーシック・インカム運動が支持を広げている。3年前には、誰もそんな考えを聞いたことがなかった。しかし今、オランダの20都市でそれは試みられようとしている。現状維持でも、ポピュリストへの政権移行でもなく、これは、市民たちが自分の手で事態を変える、ということだ。
● 革命派と国家官僚
Project Syndicate MAR 6, 2017
Trump’s Revolutionary Dilemma
HAROLD JAMES
ロシア革命から100年を記念する年に、イギリスのBrexit革命に続き、アメリカはトランプ革命を経験している。1917年、ボルシェビキたちがそうであったように、Brexit推進派やトランプ政権は、国際的な革命の前衛である。もとUKIP党首のNigel
Farageがa “great global revolution”と呼んだものだ。
しかし、現代の叛乱派は歴史の教訓を考えるべきだろう。ロシア革命は莫大な損害と犠牲者を出し、それが生産的であったとみなす現代の歴史家はほとんどいない。レーニンは、革命運動が、人々から支持されていない、しかし究極において必要な行政国家、すなわち、官僚制を奪取することにかかっている、と理解した政治的パイオニアであった。
新しい革命運動も、ボルシェビキ同様、彼らを抑圧し制約する国際秩序とみなすものに反対する。レーニンにとって、それはロシアを第1次世界大戦に巻き込み、ドイツと戦争させた西側の諸大国であった。トランプにとって、それは「グローバリズム」という曖昧な言葉で表される。
全ての革命計画と同じく、トランプとバノンは国家とその権力機関を根本的に観直すつもりだ。しかし、現代の革命指導者たちは伝統的な左派と右派の分類に合致しない。その国内レジームに対する方針が何であれ、開放性の原則に反対する姿勢は明確だ。すなわち、外国の財、資本、人のフローを規制する複雑なシステムだ。
トランプ主義とは、生活をよりシンプルに、規制を緩和し、行政階級からの指令に煩わされない世界を目指す。それはグローバリゼーションを複雑で煩わしいと感じる人々への誘惑だ。多くの人が規制を嫌うが、それは危険物、労働市場、金融など、国内にも多い。
Brexitの場合、「離脱」派の運動は、「民衆」と「専門家」との間に線を引いた。そして、専門家が多すぎる、イギリスの国家機構を解体する、と主張した。こうした革命家たちが権力を握ると、保守的な“deep state”が「民衆の意志」を妨げ、革命家たちを失脚させようとしている、と信じる。EUの共感しているとイギリス外務省は非難され、アメリカの諜報機関は新聞社に情報を漏らす「民衆の敵」とされた。
しかし、革命派があまり極端に国家機構と敵対することは、別の問題を生じる。旧エスタブリシュメントだけが政府のプログラムの細部に精通し、その機能を管理できる。結局、革命派は2つの問いの間でバランスを見出すしかない。支持者たちの過激な希望を裏切るか、国家との紛争を強めて他の政策目標の達成を諦めるか。
このダイナミズムはロシア革命でも働いた。レーニンの死後、トロツキーは、スターリンの権力掌握を反革命とみなした。
革命は、権力掌握後に解決不可能なジレンマに直面する。革命を継続すれば、それは政府機能の喪失、幻滅、狂信的な魔女狩り、暴力の循環に至る。しかし、もし革命を打ち切れば、指導者たちは失脚する。
現代の革命派も権力の行使を試みる中で、行政国家による裏切りという話をよく聞くだろう。しかし、国家機構は1世紀前に比べて、さらに広範囲におよび、その能力を高めている。革命の過激化によるコストも、同様に大きなものになる。
● グローバリゼーションとポピュリズム
FT March 9, 2017
Three reasons why globalisation will
survive protectionist rebellions
Martin
Sandbu
J.M.ケインズが名声を得た著書『平和の経済的帰結』において「1914年8月に終わった・・・人類の経済進歩における素晴らしい時代」と祝福した、最初のグローバリゼーションは第1次世界大戦によって阻まれた。
第2のグローバリゼーションもそれと同じくらい目覚ましいものだった。数十億の人々がより豊かに、そしてより自由になった。しかし、世界経済に取り残されたと感じる人々が、その多くは西側諸国の自国に生まれた労働者階級だが、今や叛乱を起こしている。
グローバリゼーションは再び終焉を迎えるのか? 今日の開放型世界経済が攻撃に耐えられると考える3つの理由がある.
1.グローバリゼーションの未来は,もはや西側だけによって決められない.トランプは1月に「アメリカ人の大虐殺」について演説したが,習近平はダヴォスでグローバリゼーションを擁護し,開放型の世界経済を指導すると宣言していた.グローバリゼーションそのものが,先進経済の富を相対的に減らし,新興経済の富を増やすものだ.新興世界はグローバリゼーションを維持することに強い関心とより大きなパワーを持ち,保護主義への退行に激しく抵抗するだろう.
2.小国だけでなく,たとえアメリカであっても,グローバリゼーションを逆転することは以前よりも困難である.現代の国際取引は知識のフローが決定しており,関税や壁によっても止まらない.国境を超える広範なサプライチェーンが可能にした大規模生産が国際取引を決めている.エコノミストのRichard Baldwinが言うように,「アメリカとメキシコの間に貿易障壁を設けることは、工場の中に壁を作るようなものだ。それが国内産業の競争力を高めることはない。」
3.反グローバリズムは良い結果につながらない.低熟練のネイティブ労働者たちが働く機会を失っているような,西側の経済問題についてグローバリゼーションはほとんど責任がない.製造業の労働者が減少したのは,経済成長の証拠である.労働者全体のごくわずかな部分を雇用して全人口の農産物を供給できるように,製造業も縮小し続けるだろう.残る職場とは,高度な機械を操作する高熟練労働だ.
保護するかどうかにかかわらず,ブルーカラー労働者とそのコミュニティーや文化は再生しない.未来の職場はサービス部門であり,特に介護の労働だ.工場を取り戻すという反グローバリストの約束は詐欺である.グローバリゼーションを逆転させるほどの行動をとる指導者はいないだろう.
逆に,経済的に取り残された者に対して,国内政策をもっと活用できる.再分配し,失業や病気に対する社会保険を提供し,教育と再訓練を行い,市場のパワーを乱用させないことだ.もし西側の政策担当者たちが,取り残された者への改善策に全力を尽くせば,彼らはいまだ利用されていない国民経済の自律性を発見する.そうすることで,グローバリゼーションへの非難は消える.
今度こそ,第2次世界大戦の後,ケインズが再建に尽力した世界経済は,第1次世界大戦前の世界経済より優れた未来を示せるだろう.
Project Syndicate MAR 9, 2017
Populism Versus Prosperity
BILL EMMOTT
フランスの右翼,国民戦線の指導者ル・ペンMarine Le Penは,21世紀の決定的な闘いは,愛国心とグローバリズムとの戦いだ,と言った.アメリカのトランプDonald Trump大統領は,「全くインチキなニュース・メディア」と自分(そして自分が代表する「人民」)との闘い,と確信しているようだ.彼らは間違っている.
今世紀を決める闘いは,長期思考と短期思考との間の闘いだ.長期の計画を実行する政治家たちとその政府は,その場限りの選挙循環しか見ようとしない,見ることを拒む者たちを打ち負かすだろう.
中国は長期思考をすることで有名だが,その点でわれわれが専制体制に変わる必要はない.西側民主主義諸国のいくつかは,グローバリゼーション,技術変化,高齢化の強烈な力に対して必要な仕事をしている.そのような国の経済は安定しており,ポピュリストたちの挑戦を受けていない.他方,短期思考に固まった諸国は,その結果として大きく苦悩している.
私は,教育チャリティ団体the Wake Up Foundationのために,新しい合成指標を作った.この指標the Wake Up 2050 Indexは,世界経済フォーラムのGlobal Competitiveness Indexなどと違って,過去や現在の経済パフォーマンスを観るのではない.それらを超えて,各国の将来の負担は何か,彼らの主要な資産,特にその市民たちの生産性がどうなりそうか,ということを推測する.
25の尺度で,OECDの先進経済35か国をランクづけた.各国が準備するのは5つの領域だ.人口動態,知識社会,技術革新,グローバリゼーション,予想外のショックに対する回復力.
スイスがトップである.スイスでも極右政党が支持を得ているが,外国生まれの移民が人口の4分の1を超えてからであり,その水準はアメリカやイギリスの2倍である.スイスの4つの隣国は,文化的にも歴史的にも近く,緊密な貿易関係もあるが,大きく劣っている.ドイツ15位,オーストリア17位,フランス20位,イタリア32位である.
スイスは裕福で,教育水準が高く,革新的で,ショックに強いという評判を得ている.しかし,その賃金が世界の最高水準であり,スイスのGDPの19%(アメリカは12%,イギリスは10%)を製造業が担うことを観れば,その将来は中国や雇用を破壊する自動化に対して非常に脆弱だと思われる.しかし,スイスは困難を乗り越えた.
同じことをイタリアには言うことができない.有権者の歓心を得ようと短期的な年金の支出を増やすイタリアは,教育や科学研究に対する財源がない.成功する国には,知識を得た市民たちがそれを生産的に活用しようとする規制環境,企業文化が存在する.
日本は,その世界最速の高齢化にもかかわらず,長期的な計画を重視して成功している国だ.65歳以上の人口の20%が働いている.フランスは2.9%でしかない.
アメリカには革新も知識もあるが,高等教育の劣化や労働参加率の低さで,それを効果的に利用できない.その潜在能力を発揮していないことが,トランプの当選をもたらした主要な理由で,アメリカの将来を暗くしている.
移民問題は基本的に長期思考が必要な問題である.フランスで行われる大統領選挙では,開放性の問題が主要な闘いになる.ル・ペン,トランプ,Brexit推進派は,開放性を災厄だと主張する.しかし,ル・ペンの2人の対立候補は,ともに,より大きな開放性を支持し,自由な市場を求める.
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The Economist February 25th 2017
Clean energy’s dirty secret
Renewable energy: A world turned upside down
France’s Europhile candidate: The anti-Marine
Bagehot: Rebuild, and they will come
(コメント) 再生可能エネルギーは十分に供給できるはずだが,それを助成してきた政策が間違っている.大企業への補助金に頼る体制を見直すことで,エネルギーの転換は機能する,と言います.
フランス大統領選挙に現れたマリーヌ・ル・ペンへの対立候補が政治を変える可能性が,今まで全くなかったけれど,現れつつあります.他方で,Brexitにまい進するイギリスのメイ首相と政治家たちに,ブレア元首相の演説は強い説得力を示します.イギリスがBrexitを変えるには,国民投票の結果によって分裂した既存の政治集団を,再編する過程で,全く新しい内容を実現することでしょう.
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IPEの想像力 3/13/2017
電気自動車、自動運転が普及することを,法律や税金によって抑制することは可能でしょうか? 望ましいのでしょうか? 市場においても機能するでしょうか?
さまざまな機械化が進み,さまざまな科学の応用が労働を減らし,全く新しい商品で旧製品の消滅をもたらしたことを想えば,電気自動車や自動運転,AIの普及を阻むことは困難です.しかし,それがエコノミストたちの結論であるとしたら,社会的にも政治的にも支持されないロジックです.
卒業する学生が研究室に来てくれたので,彼の務める企業が生産するトラックの将来をどう考えるのだろうか,と思いました.しかし,採用学生に対する企業の説明会で,そのような問題は何も触れていなかった,ということでした.長距離トラックは真っ先に自動化されるのではないか?
自家用車は消滅するでしょう。若者たちは自動車を買うより,スマホを駆使して友人たちとの情報交換をすることに夢中です.長い時間と費用をかけて自動車の運転を習い,購入するにも維持するにも巨額のコストをかけ,しかも運転にともなう多大のリスクを取ることが,ますます不安定で,賃金の上昇を期待できない若者から観て,現実的な消費の対照にはならないでしょう.次の世代は,自動運転のネットワークに接続する生活を選択します。
安全で、書斎のように、静か。ドアからドアまで,仕事をしながら移動する。交通渋滞や事故のリスクも大幅に低下し,社会はもっと他の分野,例えば,医療保険制度や高齢者の介護に投資することができます.私は卒業生に、リスクの大きな自動運転車の開発には、企業が分社化を選択するかもしれない、と言いました。手を挙げることだ.あと5年で社長になれる、と。
しかし,同時に,ドライバーたちは人間の仕事として消滅してしまうでしょう。彼は、ドライバーが仕事を失うことを、可哀そうだ、と言いました。
そう、私も、同情します。
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近所の散髪屋さんに行きました。
カットのみだと1080円でした。安い,と驚きました.以前は1500円と消費税で、1620円でした。料金体系を変えて,顔剃り、シャンプーは別料金になったからです。
多くの人はカットのみ。顔を剃ってくれた((その多くは)女性たちがどうなったのか? 解雇されたのではないでしょうか.1500円の散髪屋でも,町中の個人散髪業を圧倒していました.もはや,1軒も残らないのだな,と思いました.よほどの美容院でない限り.お寿司屋さんと同じです.
散髪屋の女性は,カットのみの客にも,カットされた毛を払い、ていねいに整髪してくれます。女性の柔らかい指で触れてもらうと,なかなか気持ちいい。
しかし、残った彼女も職場を失わないために必死なのか,と思います。
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次々に仕事は消滅します。
自由貿易論や、技術革新、アウトソーシング、移民問題。経済学はその苦悩を軽視しているように思います。あるいは,市場による円滑で理想的な調整を過信しているのです.
市場による調整過程の限界・問題を,公共政策として,国家の政治経済力学は解決する努力を積み重ねてきました.経済成長や国際収支不均衡、為替レート、そして、構造変化の調整コスト、という問題です。
FTのコラムでMartin
Sandbu がRichard Baldwinの言葉を引用しています。「アメリカとメキシコの間に貿易障壁を設けることは、工場の中に壁を作るようなものだ。それが国内産業の競争力を高めることはない。」 さらに、こう言い換えてもよいだろうと思いました。それは胃と腸の間に、あるいは、脳と肝臓、肺と心臓の間に、壁を作るようなものだ、と。
政治経済学は,市場の虚構に対して,明確な要求をするべきだと思います.市場価格というのは,資源を効率的に利用するシグナルとして意味を持つだけです.雇用であれ,富・資産であれ,社会的に帰属し,分配されるものであり,個人に帰属させるべきではありません.政治的な合意形成が欠かせません.
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週末は、ロサンゼルスマラソンに参加します。Reviewは休んで、ドジャースタジアムからサンタモニカまで、なんとか走りたいです。
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