(前半から続く)


● リベラルな国際秩序

FT March 6, 2017

The isolation of Angela Merkel’s Germany

Gideon Rachman

ドイツは過去の過ちによって孤立しているのではない。周辺の変化によって、そのリベラルな戦後の価値に従う姿勢を非難されている。東には、ドイツを嫌うポーランド、ハンガリー、さらに東にロシアがある。西にはBrexitを進めるイギリス、そしてアメリカにはトランプがいる。南のイタリアやギリシャはドイツのせいで経済危機に苦しんでいると考える。

ドイツのメルケル首相が厳しい孤立状態に置かれている現状を理解するには、金融危機の直前、2008年にオバマ大統領がベルリンの熱狂する大群衆に演説したときと比べることだ。

フランス大統領選挙の結果がル・ペン大統領になれば、ドイツの悪夢が完成するかもしれない。

Project Syndicate MAR 6, 2017

Is Liberal Internationalism Dead?

TONY SMITH

80年以上の歴史において,トランプはアメリカ大統領としてウィルソンの描いた原理を全く逆転する最初の人物となった.

ウィルソンと違って,トランプは他の民主主義国との関係を深めることに何の価値も見いださない.彼はむしろ,特に,ロシアのプーチン大統領のような,権威主義的な指導者たちを好むようだ.

ウィルソンが生きていたら,トランプに同意する問題もある.世界市場,アメリカの銀行や大企業とその資本・技術・雇用の輸出,そして,国内のコストを無視する態度には,おそらくトランプと同館だろう.

しかし,彼らの解決策は違う.

NYT MARCH 6, 2017

Canada: Leader of the Free World

Nicholas Kristof

FP MARCH 6, 2017

The Plot Against Europe

BY JAMES KIRCHICK

FP MARCH 6, 2017

How Not to Fix the Liberal World Order

BY STEPHEN M. WALT

トランプの安全保障会議を指導する役割についた人物は,重要な問題について何も答えていない.その外交政策に関して,われわれに何も伝えないという点で,政権にふさわしいのであろう.

FP MARCH 7, 2017

The European Union Was Once a Racist, Far-Right Project

BY ROBERT ZARETSKY

FP MARCH 7, 2017

Welcome to the Post-Human Rights World

BY SEBASTIAN STRANGIO

FP MARCH 8, 2017

America Is Injuring Itself by Discouraging Foreign Visitors and Giving Up on Global Leadership

BY NINA HACHIGIAN

FP MARCH 9, 2017

Savaging State and USAID Budgets Could Do Wonders for Results

BY GORDON ADAMS, RICHARD SOKOLSKY

Bloomberg MARCH 9, 2017

Some Political Systems Handle Populism Better Than Others

Justin Fox


● オランダ選挙

SPIEGEL ONLINE 03/06/2017

The Dutch Donald

Geert Wilders Rides Populism Wave

By Claus Hecking

Bloomberg MARCH 7, 2017

Europe's Populists Aren't the Threat You Think

Leonid Bershidsky

FT March 8, 2017

Lessons from the Dutch on how to fight populism

Rutger Bregman

オランダほどテクノクラートが政治を支配する国はない。しかし、オランダは冷戦後のコンセンサスを最初に破壊する国の1つになった。なぜか?

1999年でも、オランダの全国調査機関によれば、人々は政治に対して高い信頼を示していた。同様の高い信頼を示すのは、共産主義の北朝鮮だけであった。しかし、わずか3年後に、それは半分に低下する。

だから、「人民」が長く感じ続けていたことを右派ポピュリストたちが吸収した、というのは間違いだ。彼らが新しい何かを創り出し、その後、911テロ攻撃を受けて、オランダを右傾化させたのだ。

まったく奇妙なことだが、テクノクラシーが経済の最前線を支配し続けている。2012年、社会民主党と保守党が組閣した。「中道派の勝利」と彼らの新聞は掲げた。オランダでも、英米と同じく、中道派はプラグマティックで脱イデオロギーを自分たちのイメージにしている。景気が回復すれば、思想は後退する。

しかし今では、われわれは、経済が上向けばすべての問題は解決できる、という幻想を持てなくなった。根本的に異なる説明、アイデア、ビジョンが必要なのだ。15年前にFortuynが現れたように、突然、それは人々の広い支持を得る。

オランダで何かが生まれつつある。たとえば、ベーシックインカム運動が支持を広げている。3年前には、誰もそんな考えを聞いたことがなかった。しかし今、オランダの20都市でそれは試みられようとしている。現状維持でも、ポピュリストへの政権移行でもなく、これは、市民たちが自分の手で事態を変える、ということだ。

Project Syndicate MAR 8, 2017

Living With Populism

SHLOMO BEN-AMI


● ドイツとトルコ

SPIEGEL ONLINE 03/06/2017

Let's End the Submission

Refugee Crisis Prevents Honest Dealings with Turkey

A DER SPIEGEL Editorial By Markus Feldenkirchen

トルコのエルドアン大統領が、難民に関する合意を破棄するのではないか、とドイツは恐れている。エルドアンはドイツ訪問の際の演説で、憲法改正を主張し、すでに専制的な国家を独裁制に変えようとしている。

メルケルはエルドアンに頼る難民問題の解決ではなく、ヨーロッパの難民政策を実現するべきだ。イタリアとギリシャを含む難民危機に直面する重要諸国に対して、資金、専門家、インフラのかたちで支援が提供される。そしてEUの境界線で、難民審査を行う。

SPIEGEL ONLINE 03/07/2017

Head-On

Tensions Escalate Between Berlin and Erdogan

By Maximilian Popp, Fidelius Schmid and Christoph Schult

NYT MARCH 8, 2017

Mr. Erdogan’s Jaw-Dropping Hypocrisy

By THE EDITORIAL BOARD


● 革命派と国家官僚

Project Syndicate MAR 6, 2017

Trump’s Revolutionary Dilemma

HAROLD JAMES

ロシア革命から100年を記念する年に、イギリスのBrexit革命に続き、アメリカはトランプ革命を経験している。1917年、ボルシェビキたちがそうであったように、Brexit推進派やトランプ政権は、国際的な革命の前衛である。もとUKIP党首のNigel Faragea “great global revolution”と呼んだものだ。

しかし、現代の叛乱派は歴史の教訓を考えるべきだろう。ロシア革命は莫大な損害と犠牲者を出し、それが生産的であったとみなす現代の歴史家はほとんどいない。レーニンは、革命運動が、人々から支持されていない、しかし究極において必要な行政国家、すなわち、官僚制を奪取することにかかっている、と理解した政治的パイオニアであった。

新しい革命運動も、ボルシェビキ同様、彼らを抑圧し制約する国際秩序とみなすものに反対する。レーニンにとって、それはロシアを第1次世界大戦に巻き込み、ドイツと戦争させた西側の諸大国であった。トランプにとって、それは「グローバリズム」という曖昧な言葉で表される。

全ての革命計画と同じく、トランプとバノンは国家とその権力機関を根本的に観直すつもりだ。しかし、現代の革命指導者たちは伝統的な左派と右派の分類に合致しない。その国内レジームに対する方針が何であれ、開放性の原則に反対する姿勢は明確だ。すなわち、外国の財、資本、人のフローを規制する複雑なシステムだ。

トランプ主義とは、生活をよりシンプルに、規制を緩和し、行政階級からの指令に煩わされない世界を目指す。それはグローバリゼーションを複雑で煩わしいと感じる人々への誘惑だ。多くの人が規制を嫌うが、それは危険物、労働市場、金融など、国内にも多い。

Brexitの場合、「離脱」派の運動は、「民衆」と「専門家」との間に線を引いた。そして、専門家が多すぎる、イギリスの国家機構を解体する、と主張した。こうした革命家たちが権力を握ると、保守的な“deep state”が「民衆の意志」を妨げ、革命家たちを失脚させようとしている、と信じる。EUの共感しているとイギリス外務省は非難され、アメリカの諜報機関は新聞社に情報を漏らす「民衆の敵」とされた。

しかし、革命派があまり極端に国家機構と敵対することは、別の問題を生じる。旧エスタブリシュメントだけが政府のプログラムの細部に精通し、その機能を管理できる。結局、革命派は2つの問いの間でバランスを見出すしかない。支持者たちの過激な希望を裏切るか、国家との紛争を強めて他の政策目標の達成を諦めるか。

このダイナミズムはロシア革命でも働いた。レーニンの死後、トロツキーは、スターリンの権力掌握を反革命とみなした。

革命は、権力掌握後に解決不可能なジレンマに直面する。革命を継続すれば、それは政府機能の喪失、幻滅、狂信的な魔女狩り、暴力の循環に至る。しかし、もし革命を打ち切れば、指導者たちは失脚する。

現代の革命派も権力の行使を試みる中で、行政国家による裏切りという話をよく聞くだろう。しかし、国家機構は1世紀前に比べて、さらに広範囲におよび、その能力を高めている。革命の過激化によるコストも、同様に大きなものになる。


● ベーシック・インカム

Project Syndicate MAR 7, 2017

The Pie-in-the-Sky UBI

LAURA TYSON and LENNY MENDONCA

ケニアにおけるユニバーサル・ベーシック・インカムUBIの実験に、シリコンバレーは注目しました。遠隔にある、貧しい40の村落、6000人の大人たちが、1日当たり75セントを受け取りました。毎月22ドルを12年間です。

UBIは,さまざまな方法で実現する条件がある.空想的な政策ではない.


● 難民

NYT MARCH 7, 2017

The Hard Truth About Refugees

By JAMES TRAUB

SPIEGEL ONLINE 03/09/2017

Germany's Deportation Lottery

Migrants' Fate a Game of Chance

By SPIEGEL Staff


● フランス選挙

NYT MARCH 7, 2017

France Braces for the Now-Possible Impossible

Sylvie Kauffmann

FT March 9, 2017

Voters in France yearn for national renewal


● サイバー組織犯罪

FT March 8, 2017

Organised crime finally embraces cyber theft

Misha Glenny


● シリア

FT March 8, 2017

Assad is a long way from victory in Syrian conflict

David Gardner

SPIEGEL ONLINE 03/08/2017

Gangster's Paradise

Assad's Control Erodes as Warlords Gain Upper Hand

By Fritz Schaap (Text) and Christian Werner (Photos)


● グローバリゼーションとポピュリズム

FT March 9, 2017

Three reasons why globalisation will survive protectionist rebellions

Martin Sandbu

J.M.ケインズが名声を得た著書『平和の経済的帰結』において「19148月に終わった・・・人類の経済進歩における素晴らしい時代」と祝福した、最初のグローバリゼーションは第1次世界大戦によって阻まれた。

2のグローバリゼーションもそれと同じくらい目覚ましいものだった。数十億の人々がより豊かに、そしてより自由になった。しかし、世界経済に取り残されたと感じる人々が、その多くは西側諸国の自国に生まれた労働者階級だが、今や叛乱を起こしている。

グローバリゼーションは再び終焉を迎えるのか? 今日の開放型世界経済が攻撃に耐えられると考える3つの理由がある.

1.グローバリゼーションの未来は,もはや西側だけによって決められない.トランプは1月に「アメリカ人の大虐殺」について演説したが,習近平はダヴォスでグローバリゼーションを擁護し,開放型の世界経済を指導すると宣言していた.グローバリゼーションそのものが,先進経済の富を相対的に減らし,新興経済の富を増やすものだ.新興世界はグローバリゼーションを維持することに強い関心とより大きなパワーを持ち,保護主義への退行に激しく抵抗するだろう.

2.小国だけでなく,たとえアメリカであっても,グローバリゼーションを逆転することは以前よりも困難である.現代の国際取引は知識のフローが決定しており,関税や壁によっても止まらない.国境を超える広範なサプライチェーンが可能にした大規模生産が国際取引を決めている.エコノミストのRichard Baldwinが言うように,「アメリカとメキシコの間に貿易障壁を設けることは、工場の中に壁を作るようなものだ。それが国内産業の競争力を高めることはない。」

3.反グローバリズムは良い結果につながらない.低熟練のネイティブ労働者たちが働く機会を失っているような,西側の経済問題についてグローバリゼーションはほとんど責任がない.製造業の労働者が減少したのは,経済成長の証拠である.労働者全体のごくわずかな部分を雇用して全人口の農産物を供給できるように,製造業も縮小し続けるだろう.残る職場とは,高度な機械を操作する高熟練労働だ.

保護するかどうかにかかわらず,ブルーカラー労働者とそのコミュニティーや文化は再生しない.未来の職場はサービス部門であり,特に介護の労働だ.工場を取り戻すという反グローバリストの約束は詐欺である.グローバリゼーションを逆転させるほどの行動をとる指導者はいないだろう.

逆に,経済的に取り残された者に対して,国内政策をもっと活用できる.再分配し,失業や病気に対する社会保険を提供し,教育と再訓練を行い,市場のパワーを乱用させないことだ.もし西側の政策担当者たちが,取り残された者への改善策に全力を尽くせば,彼らはいまだ利用されていない国民経済の自律性を発見する.そうすることで,グローバリゼーションへの非難は消える.

今度こそ,第2次世界大戦の後,ケインズが再建に尽力した世界経済は,第1次世界大戦前の世界経済より優れた未来を示せるだろう.

Project Syndicate MAR 9, 2017

Populism Versus Prosperity

BILL EMMOTT

フランスの右翼,国民戦線の指導者ル・ペンMarine Le Penは,21世紀の決定的な闘いは,愛国心とグローバリズムとの戦いだ,と言った.アメリカのトランプDonald Trump大統領は,「全くインチキなニュース・メディア」と自分(そして自分が代表する「人民」)との闘い,と確信しているようだ.彼らは間違っている.

今世紀を決める闘いは,長期思考と短期思考との間の闘いだ.長期の計画を実行する政治家たちとその政府は,その場限りの選挙循環しか見ようとしない,見ることを拒む者たちを打ち負かすだろう.

中国は長期思考をすることで有名だが,その点でわれわれが専制体制に変わる必要はない.西側民主主義諸国のいくつかは,グローバリゼーション,技術変化,高齢化の強烈な力に対して必要な仕事をしている.そのような国の経済は安定しており,ポピュリストたちの挑戦を受けていない.他方,短期思考に固まった諸国は,その結果として大きく苦悩している.

私は,教育チャリティ団体the Wake Up Foundationのために,新しい合成指標を作った.この指標the Wake Up 2050 Indexは,世界経済フォーラムのGlobal Competitiveness Indexなどと違って,過去や現在の経済パフォーマンスを観るのではない.それらを超えて,各国の将来の負担は何か,彼らの主要な資産,特にその市民たちの生産性がどうなりそうか,ということを推測する.

25の尺度で,OECDの先進経済35か国をランクづけた.各国が準備するのは5つの領域だ.人口動態,知識社会,技術革新,グローバリゼーション,予想外のショックに対する回復力.

スイスがトップである.スイスでも極右政党が支持を得ているが,外国生まれの移民が人口の4分の1を超えてからであり,その水準はアメリカやイギリスの2倍である.スイスの4つの隣国は,文化的にも歴史的にも近く,緊密な貿易関係もあるが,大きく劣っている.ドイツ15位,オーストリア17位,フランス20位,イタリア32位である.

スイスは裕福で,教育水準が高く,革新的で,ショックに強いという評判を得ている.しかし,その賃金が世界の最高水準であり,スイスのGDP19%(アメリカは12%,イギリスは10%)を製造業が担うことを観れば,その将来は中国や雇用を破壊する自動化に対して非常に脆弱だと思われる.しかし,スイスは困難を乗り越えた.

同じことをイタリアには言うことができない.有権者の歓心を得ようと短期的な年金の支出を増やすイタリアは,教育や科学研究に対する財源がない.成功する国には,知識を得た市民たちがそれを生産的に活用しようとする規制環境,企業文化が存在する.

日本は,その世界最速の高齢化にもかかわらず,長期的な計画を重視して成功している国だ.65歳以上の人口の20%が働いている.フランスは2.9%でしかない.

アメリカには革新も知識もあるが,高等教育の劣化や労働参加率の低さで,それを効果的に利用できない.その潜在能力を発揮していないことが,トランプの当選をもたらした主要な理由で,アメリカの将来を暗くしている.

移民問題は基本的に長期思考が必要な問題である.フランスで行われる大統領選挙では,開放性の問題が主要な闘いになる.ル・ペン,トランプ,Brexit推進派は,開放性を災厄だと主張する.しかし,ル・ペンの2人の対立候補は,ともに,より大きな開放性を支持し,自由な市場を求める.


● 資本移動に対する政策

VOX 09 March 2017

Revisiting the paradox of capital

Emine Boz, Luis Cubeddu, Maurice Obstfeld

新興市場への資本流入と流出について,適切な政策対応はどうあるべきか?

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The Economist February 25th 2017

Clean energy’s dirty secret

Renewable energy: A world turned upside down

France’s Europhile candidate: The anti-Marine

Bagehot: Rebuild, and they will come

(コメント) 再生可能エネルギーは十分に供給できるはずだが,それを助成してきた政策が間違っている.大企業への補助金に頼る体制を見直すことで,エネルギーの転換は機能する,と言います.

フランス大統領選挙に現れたマリーヌ・ル・ペンへの対立候補が政治を変える可能性が,今まで全くなかったけれど,現れつつあります.他方で,Brexitにまい進するイギリスのメイ首相と政治家たちに,ブレア元首相の演説は強い説得力を示します.イギリスがBrexitを変えるには,国民投票の結果によって分裂した既存の政治集団を,再編する過程で,全く新しい内容を実現することでしょう.

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IPEの想像力 3/13/2017

Great Race「イギリス大荒野 激寒420キロ」を観ました。7日間、ほとんど眠らず、420キロ、フルマラソンを10回も走る。・・・まったく、ありえない。

3日間で1時間しか眠らないトップランナーは、疲れだけでなく、幻聴や幻視にも悩み始めます。

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Brexitとは,1つではなく,4つの国民投票によって形成されます.1つは,2016年の国民投票.それに刺激されて,第2のスコットランド国民投票が議論されています.そして,第3に,2017年のヨーロッパ,特にフランスにおける大統領選挙,オランダ,ドイツ,イタリア議会の国民投票です.

最後の国民投票とは何か? それはイギリスです.離脱交渉の過程で,あるいは,離脱の混乱を経た結果の先に,国民投票があるでしょう.(まだ存在しているなら)EUとの関係を定め,ヨーロッパと新しい関係に入るために.

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電気自動車、自動運転が普及することを,法律や税金によって抑制することは可能でしょうか? 望ましいのでしょうか? 市場においても機能するでしょうか?

さまざまな機械化が進み,さまざまな科学の応用が労働を減らし,全く新しい商品で旧製品の消滅をもたらしたことを想えば,電気自動車や自動運転,AIの普及を阻むことは困難です.しかし,それがエコノミストたちの結論であるとしたら,社会的にも政治的にも支持されないロジックです.

卒業する学生が研究室に来てくれたので,彼の務める企業が生産するトラックの将来をどう考えるのだろうか,と思いました.しかし,採用学生に対する企業の説明会で,そのような問題は何も触れていなかった,ということでした.長距離トラックは真っ先に自動化されるのではないか?

自家用車は消滅するでしょう。若者たちは自動車を買うより,スマホを駆使して友人たちとの情報交換をすることに夢中です.長い時間と費用をかけて自動車の運転を習い,購入するにも維持するにも巨額のコストをかけ,しかも運転にともなう多大のリスクを取ることが,ますます不安定で,賃金の上昇を期待できない若者から観て,現実的な消費の対照にはならないでしょう.次の世代は,自動運転のネットワークに接続する生活を選択します。

安全で、書斎のように、静か。ドアからドアまで,仕事をしながら移動する。交通渋滞や事故のリスクも大幅に低下し,社会はもっと他の分野,例えば,医療保険制度や高齢者の介護に投資することができます.私は卒業生に、リスクの大きな自動運転車の開発には、企業が分社化を選択するかもしれない、と言いました。手を挙げることだ.あと5年で社長になれる、と。

しかし,同時に,ドライバーたちは人間の仕事として消滅してしまうでしょう。彼は、ドライバーが仕事を失うことを、可哀そうだ、と言いました。

そう、私も、同情します。

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近所の散髪屋さんに行きました。

カットのみだと1080円でした。安い,と驚きました.以前は1500円と消費税で、1620円でした。料金体系を変えて,顔剃り、シャンプーは別料金になったからです。

多くの人はカットのみ。顔を剃ってくれた((その多くは)女性たちがどうなったのか? 解雇されたのではないでしょうか.1500円の散髪屋でも,町中の個人散髪業を圧倒していました.もはや,1軒も残らないのだな,と思いました.よほどの美容院でない限り.お寿司屋さんと同じです.

散髪屋の女性は,カットのみの客にも,カットされた毛を払い、ていねいに整髪してくれます。女性の柔らかい指で触れてもらうと,なかなか気持ちいい。

しかし、残った彼女も職場を失わないために必死なのか,と思います。

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次々に仕事は消滅します。

自由貿易論や、技術革新、アウトソーシング、移民問題。経済学はその苦悩を軽視しているように思います。あるいは,市場による円滑で理想的な調整を過信しているのです.

市場による調整過程の限界・問題を,公共政策として,国家の政治経済力学は解決する努力を積み重ねてきました.経済成長や国際収支不均衡、為替レート、そして、構造変化の調整コスト、という問題です。

FTのコラムでMartin Sandbu Richard Baldwinの言葉を引用しています。「アメリカとメキシコの間に貿易障壁を設けることは、工場の中に壁を作るようなものだ。それが国内産業の競争力を高めることはない。」 さらに、こう言い換えてもよいだろうと思いました。それは胃と腸の間に、あるいは、脳と肝臓、肺と心臓の間に、壁を作るようなものだ、と。

政治経済学は,市場の虚構に対して,明確な要求をするべきだと思います.市場価格というのは,資源を効率的に利用するシグナルとして意味を持つだけです.雇用であれ,富・資産であれ,社会的に帰属し,分配されるものであり,個人に帰属させるべきではありません.政治的な合意形成が欠かせません.

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週末は、ロサンゼルスマラソンに参加します。Reviewは休んで、ドジャースタジアムからサンタモニカまで、なんとか走りたいです。

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