(前半から続く)
● 移民政策の真実
Project Syndicate FEB 27, 2017
Refugees as Weapons of Mass
Destruction
RICARDO
HAUSMANN
カナダのハーパーStephen Harper首相は、2015年夏、4度目の政権を組織するように見えた。しかし、彼の保守党は338議席中の99議席しか取れなかった。代わって、トルドーJustin Trudeauが率いる自由党は184議席を取って、史上2番目の多数の議席を得た。
この急激な政治的転換は、何千マイルも離れた土地で起きた事件が起こしたものだ。トルコのBodrumで、シリアからのクルド人難民家族がギリシャに向かう船に乗ろうとしていた。その数分後、Rihanna Kurdiと彼女の2人の子供たちGhalib
and Aylanは溺れていた。トルコの写真家が、海岸に横たわる3歳の少年Aylan Kurdiの死体を写して、その写真をTwitterに載せた。それは世界に衝撃を与え、ハーパーの政治経歴を終わらせたのだ。
バンクーバーに住むAylan Kurdiの叔母が彼とその家族をカナダに呼ぼうとしたとき、ハーパーの難民政策転換がそれを阻んだ。イスラム主義のテロから国民を守る政策転換が、突然、カナダ人の意識を問う政策に変わった。開放的な、同情心にあふれる社会を否定する政策転換として、ハーパーは高い代償を支払ったのだ。
物事は国境の南側で全く異なった。アメリカではトランプが勝利したのだ。彼は有権者にイスラム教徒の入国を阻み、メキシコ国境に壁を建設し、「国外追放のための部隊」を約束した。アメリカとカナダの国民が異なる反応を示した2つの理由が考えられる。
第1に、不確実な状況における意思決定に関する考察だ。そこには2つの失敗の間でバランスを取る意識が働く。潜在的なテロリストが入国することと、罪もない外国人を阻止することだ。有権者たちは過去の記憶を基に、その適切なバランスを考える。パリやニースのテロを思い出すか、Aylan Kurdiの写真を思い出すか。記憶を操作することは、リスクの認識や政策の評価を変えることになる。
第2の考察は、意識の問題である。多くの政策決定は、強い根拠を示すことで、無意識に行われている。たとえば、ジョージ・W・ブッシュがイラク侵攻を決めた理由は多くあっただろう。しかし、彼が主張したのは大量破壊兵器であった。それが最も容易に侵攻を正当化できたからだ。
イスラム教徒の入国を禁止すればアメリカを守れるのか? なぜテロリストが来る7か国を選んだのか? この政策は、あるいは、メキシコ国境の壁建設は、それ自体が重要ではない。こうした政策を決めたのは、トランプ政権の戦略家バノンであって、安全保障の専門家集団ではないからだ。
人々はそれを支持した。彼らは『われわれ』と異なっており、彼らが入ることで『われわれ』がもはや『われわれ』でなくなることを心配したからだ。
NYT FEB. 27, 2017
The Immigration Debate We Need
By
GEORGE BORJAS
社会政策の変更がすべての者の生活改善をもたらすことはなく、移民政策もその例外ではない。
私は難民であり、1962年に、子供のときキューバを逃れた。移民は良い生活を求めている。そのことに強く共感するし、移民政策が人々に利益をもたらすことは確かである。しかし、そこには多くのトレード・オフが含まれている。
移民政策にも勝者と敗者があり、難しい選択が必要だ。アメリカ国民はどの程度まで負担するのか? 誰がそれを負担するのか?
労働市場の影響は緊張をもたらす。アメリカ生まれの労働者が尽きたがらない職業だけに移民が就労する、という前提は正しくない。競争になる未熟練労働者の多くには、アメリカ生まれの黒人やヒスパニック、そして、以前にアメリカへ来た移民たちもいる。
ある人々の賃金が低下すれば、それは利潤を増やす。移民によるネイティブの得る経済的パイの拡大は、約500億ドルである。しかし、国民全体の利益は増えても、移民と仕事を競う労働者たちは損失を被る。
全米科学アカデミーの研究報告では、財政への影響が示されている。社会に与える長期の影響もある。特に、エスニック・エンクレイブ(飛び地)を形成する結果、移民の同化は遅くなっている。労働組合が良い賃金を保証する製造業の職場は減った。移民に関するイデオロギーも変化した。今では同化を強いられない。
移民政策の選択には、原則、社会の常識、思いやりが必要である。
1.非合法移民を減らす。全国規模の電子照合システムで非合法な就労を禁止する。2.すでに居住している1100万人の未登録移民には強制退去を求めない。3.合法的な移民の上限を決める。有権者が移民流入を止めるべきだと考えるなら、その数を減らす。4.未熟練と高度な熟練労働者との比率を決める。
移民をめぐる利益と損失に関して、アメリカ国民の中での、より公平な分担を求めるべきだ。
NYT MARCH 2, 2017
Are Immigrants Causing a Swedish
Crime Wave?
Vikas
Bajaj
● ラテンアメリカ自由貿易圏
FP FEBRUARY 27, 2017
U.S. Allies Are Learning that
Trump’s America Is Not the ‘Indispensable Nation’
BY
DAN DE LUCE, JOHN HUDSON
The Guardian, Tuesday 28 February
2017
Trump wants 'peace through strength'
– but this budget is a recipe for war
Jonathan
Freedland
Project Syndicate FEB 28, 2017
Free Trade Without the US
ANDRÉS
VELASCO
ラテンアメリカはトランプ大統領のアメリカ・ファーストに対して、どのように応えるべきか? 1つの可能な答えは、アメリカ合衆国抜きの自由貿易圏を創ること、である。
もちろん、このアイデアは全く新しくない。ラテンアメリカ諸国が2世紀も議論し続けてきた。しかし、1度も成功しなかった。1960年代には地域統合論が盛んだった。サミットが開かれ、条約も成立した。しかし、自由貿易は実現しなかった。1990年代初め、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領が、アラスカからティアラ・デル・フエゴまでの自由貿易圏を提唱した。アメリカは各国と条約を結んだが、実現しなかった。
良いニュースがある。地域的な自由貿易を阻んでいたこうした諸要因がすべて消滅した。
過去の失敗の理由は、アメリカが主催する自由貿易協定に、誇り高いブラジルが参加するのを嫌ったことだ。トランプ大統領がその保護主義の約束を守るなら、アメリカとブラジルの対立は起きない。
そして、アメリカの農業補助金がアルゼンチンやブラジルのような農産物輸出国との対立になった。また、1990年代にラテンアメリカ諸国で成立した左派政権は、自由貿易を「ネオリベラル」という汚れた言葉と同一視した。こうしたポピュリズムは各地で後退した。確かにヴェネズエラとエクアドルは残っているが、彼らも参加を喜ぶだろう。
過去のブラジル大統領たちは、保護主義に依存した国内のビジネス・エリートに配慮しなければならなかった。しかし、中国は減速し、EUは低迷し、アメリカは史上を閉ざすなら、彼らもラテンアメリカ市場を頼りにするしかない。アメリカ市場に注目するしかなかったメキシコのビジネスも同じ状況だ。アメリカのさまざまな規制や非関税障壁も交渉の妨げではなくなるだろう。
アメリカがいなくなれば、ラテンアメリカのビジネス界はついに自由貿易の時代に入る。私たちはトランプのナショナリズムと保護主義に感謝するだろう。
Project Syndicate FEB 28, 2017
What Liberal World Order?
MARK
LEONARD
FT March 1, 2017
The west to Russia: you broke Syria,
now you fix it
Roula
Khalaf
FP MARCH 2, 2017
China Quietly Abandoning Bid for
‘New Model of Great Power Relations’ With U.S.
BY
DAVID WERTIME
● 金正男暗殺
FP FEBRUARY 27, 2017
How to Persuade China to Squeeze
North Korea’s Lifeline
BY
PATRICIA KIM
FT March 1, 2017
Kim Jong Nam killing spawns
intriguing conspiracy theories
Jamil
Anderlini
文明化された人々には考えられない暗殺事件だ。しかし、まず知っておくべきは、北朝鮮が、33歳の不安定な独裁者に支配されている、中世的な王朝国家である、ということだ。
金正恩は、兄の金正男を中国や西側が利用して、政権転覆をはかることを恐れていた。問題は、暗殺されたことではなく、なぜ今なのか、である。
これまで金正男は北京やマカオで中国政府によって保護されていた。1つの説明は、最近、中国の国家治安当局で粛清が行われ、警護がおろそかになった、という説明だ。もう1つは、中国が北朝鮮に暗殺の機会を与えた、というものだ。
習近平は、ドナルド・トランプの行動が予測困難であることを懸念し、朝鮮半島から核を取り除くために金正恩の排除を決めた、という見方がある。最近、北朝鮮の核とミサイルの実験に対して、石炭輸入を禁止した。この措置に対して、北朝鮮の国営テレビは直ちに反発した。中国は金正恩が危険な人物であることを知っているから、彼の権力を奪うつもりはない、という善意を示そうとした。そのために、金正男暗殺の機会を示唆したのだ。
どのような事情が隠されているか、わからない。これは今の段階で、西側の外交官が考える陰謀説の1つである。
NYT MARCH 2, 2017
North and South Korea Give China a
Double Headache
By
JANE PERLEZ and CHOE SANG-HUN
● 世界資本主義の危機
Bloomberg FEB 27, 2017
Time to Restart That Old Capitalism
Death Watch
Justin
Fox
世界資本主義システムに関する激しい論争がある。われわれはその多くに同意できる。事態が改善しないことについては、多くの説明がある。「長期停滞」論もある。
ドイツの社会学者Wolfgang Streeckストレークが、1つの可能性を示した。資本主義が死滅しつつある、という可能性だ。彼は、EU化やグローバリゼーションの中でも、労働者の参加がともなうドイツの体制を守ろうとした。しかし、その努力にますます悲観的になった。「良い政策で、私は富を創る資本主義システムを政治目的に従わせることができる、と信じていた。」と、彼は述べた。
しかし、今では資本主義を政治で管理することができなくなった。彼の本に、驚くような中身は何もない。FTに書評を書いたMartin
Wolfは、管理できない社会諸力に対する知識人の敗北主義、と呼んだ。
ストレークは、「力学ではなく、歴史を信じる」と言う。エコノミストはメカニクスだ。アメリカの元財務長官サマーズのことを、「資本主義の故障した機会の山を修理する、最も影響力あるメカニック」と書いた。私はそれが気に入った。
民主主義的な政治勢力が市場をチェックするときだけ、資本主義システムは成長と繁栄をもたらすことができる、と彼は考える。しかし彼は、グローバル国家を答とは考えない。グローバルなボルシェビキ革命を求めない。だから未来に見るのは、Brexitやトランプがいっぱいの混乱した時期が続くことだ。
● トルコの言論統制
FT February 28, 2017
Erdogan sews up Turkey’s ‘second
revolution’
Mehul
Srivastava
The Guardian, Thursday 2 March 2017
As Erdoğan turns the screw, we must
stand up for human rights in Turkey
Timothy
Garton Ash
今日、トルコに旅することは、暗黒への旅である。何万人もの公務員と、何千人ものジャーナリストが投獄されている。いかなる国よりも多くのジャーナリストが監獄におり、トルコは恐怖の冷たい霧に包まれている。
エルドアンを止めるテコを、ヨーロッパもアメリカも持っていない。難民やイスラム過激派を止めるために、エルドアンとの協力が欠かせないからだ。直接の介入は無理でも、われわれは低レベルの、より野心的ではない介入を行える。かつてソ連の時代に反体制派を支援したように。
われわれはもっと伝えねばならない。
● 次の金融危機
Project Syndicate FEB 28, 2017
The Financial Fire Next Time
SIMON
JOHNSON
金融危機後、3つの成果があった。1.破たんしたのは悪い銀行だった。良い銀行は拡大した。2.銀行は、債務より株式によって、資金調達するようになった。3.巨大銀行の危険な取引が禁止された。彼らは自行内の勘定で略奪的に行動していた。
残念ながら、これらすべては否定されるかもしれない。Goldman Sachsからのボルカー・ルールは強い圧力を受けている。トランプ政権は多くのGoldman Sachs関係者を雇った。元会長のGary Cohnはトランプの経済諮問会議議長である。彼は景気を刺激するためには自己資本規制を止めるべきだ、と述べた。それはまさに2000年代にやったことだ。その結果は、破滅であった。
● 北アイルランドとBrexit
NYT FEB. 28, 2017
Northern Ireland and the Disunited
Kingdom
By
PETER GEOGHEGAN
衝撃的なほど、アイルランドと北アイルランドとの境界には何もない。310マイルにわたる境界のどこにも、標識や壁はないのだ。レーザーワイヤもなければ、検問所もない。
しかし、Brexit国民投票の後、アイルランド政治に境界が戻ってきた。2019年の夏までのどこかでイギリスがEUを離脱すれば、アイルランドはEUのフロンティアになる。分離の予想は、アイルランドに暴力と混乱をもたらす。そしてイギリスにも。
昨年6月の国民投票で、北アイルランドの空民の56%ほどがEU残留に投票した。しかし、連立政権の立場は分裂したのだ。IRAの政治組織であるSinn Feinは残留、連立相手のDemocratic
Unionist Partyは離脱を支持した。北アイルランドの複雑な権力共有システムにおいて、2大政党が参加しなければ政府は機能しない。国民投票後、両党の関係は悪化した。
北アイルランドの住民の意思に反して、イギリスはEUを離脱しつつある。これは民主主義の赤字だけでなく、経済問題でもある。北アイルランドはイギリスで最も貧しい地域であり、経済的には、ますますアイルランド共和国に統合されている。特に農産物の取引がそうだ。
1998年のGood
Friday Agreement以降、武力闘争は終わり、エネルギーの単一市場ができた。20年間で、静かに、北アイルランドのイギリス国民意識は衰退してきた。
メイが離脱後の境界をどうしたいのか、はっきりしない。北アイルランドの経済は、イギリス政府から毎年約100億ポンドの財政移転を得て、運営している。現在の枠組みでは、EUから2020年まで、毎年約6億ユーロの財政移転がある。離脱後がどうなるか、誰にも分らない。北アイルランドの人口バランスも不安定化する。1921年に分割されたとき、人口の3分の2はプロテスタントであった。今は、半数がローマ・カトリックである。
Brexitはイギリスに栄光を取り戻すチャンスであると宣伝されてきた。しかし、イギリス帝国の最後の残滓を急速に抹消しつつある。それは連合王国だ。
連合王国は常にプラグマティックな企画であった。それは通商的・軍事的な利益に関する参加意思の取引であった。帝国の領土として、ウェールズ、スコットランド、イングランド、北アイルランドは統合していた。その絆は急速に弱まっている。ウェストミンスター(イギリス議会)がますますナショナルなものになり、保守党はスコットランドでも北アイルランドでもわずか1議席しか持たない。
メイがその政治方針を根本的に改めない限り、彼女の国は2つのユニオンに分裂するだろう。
Bloomberg FEB 28, 2017
U.K. Faces a Brexit War on Four
Fronts
Mark
Gilbert
NYT MARCH 1, 2017
Tony Blair’s Lesson for President
Trump
Thomas
L. Friedman
ブレア首相がBrexitを進める現政権を批判した演説を、アメリカ人も読むべきだ。なぜならBrexitとトランプ主義とは多くの点で似ているから。ともに世界を安定化し、繁栄、安全、法の支配、民主主義、解放された市場を広めてきた大きなシステムを破壊しようとする。すなわち、EU、グローバルな貿易システム、NAFTA、NATO、国連、TPP。
今は、ポスト・ポスト冷戦の時代だ。アメリカの指導力とグローバル・システムの結束力が一層求められる。技術変化、グローバリゼーション、気候変動が重なって国家を弱め、いたるところで憤慨する人々が力を得て、無秩序の領域が拡大しているのだから。
ブレアが、Brexitを決めた国民投票に頼って権力を誇示することは、大統領選挙で勝利したトランプを共和党の指導者たちが支持することに似ている。しかし、トランプの主張の多くは間違っている。メキシコや中国からの輸入が製造業を衰退させたのではない。気候変動はでたらめではない。国境税で製造業の雇用は取り戻せない。EU、NATO、NAFTA、TPPは過剰な「管理国家」ではない。
NYT MARCH 1, 2017
An English Sheep Farmer’s View of
Rural America
By
JAMES REBANKS
● 新興市場
FT March 1, 2017
Are emerging markets entering a new
virtuous cycle?
Jonathan
Wheatley
● トランプのイメージ
Project Syndicate MAR 1, 2017
The Three Trumps
JEFFREY
D. SACHS
トランプ大統領への移行にはかつてないほどの大きな関心が集まる。トランプには異なる3つの姿がある。1.ロシア大統領であるプーチンの友人。2.強欲なビジネスマン。3.ポピュリストであり、デマゴーグでもある。
多くの状況証拠が、トランプがロシアの資金援助を何十年も受けてきたことを示している。ロシアのオリガークがトランプを破産から救ったようだ。選挙運動期間中も、トランプ陣営とクレムリンとの情報交換は続いた。
トランプのデマゴギーは、文明間の戦争が起きるという暗黒の世界観を持つ、トランプの首席ストラテジスト、スティーブ・バノンによって作られていると観る意見がある。暴力を最高水準に高めることで、トランプはアメリカ・ファーストの暴力的ナショナリズムを創り出そうとしている。それは第2次世界大戦後にニュルンベルグ拘置所からHermann Göringゲーリングが発した恐怖の公式に従うものだ。「民衆は常に指導者から提供された物を受け入れる。それは簡単なことだ。彼らが攻撃されている、と言うだけでよい。平和主義者には、愛国心がないと非難する。わが国が危険にさらされているのだ、と。それはいかなる国でも成功する。」
ウォーターゲートを経験した世代には、権力者の責任を追究することのむつかしさがわかる。秘密テープで暴露されなければ、ニクソンは弾劾を免れただろう。フリンの嘘がばれたとき、トランプの反応は、嘘ではなく、リークを非難することだった。ワシントンでは、そして多くの強権政治では、嘘は最後の手段ではなく、最初の手段なのだ。
権力を維持するため、デマゴーグが恐怖と暴力を駆使し、戦争さえ起こす意志を、決して過小評価してはならない。特にプーチンがトランプの支援者であり友人であるとしたら、その誘惑は強いだろう。
FP MARCH 1, 2017
Ego-Maniac Revolutions Don’t Last
BY
EMILE SIMPSON
FP MARCH 1, 2017
Don’t Believe the New Trump
BY
MAX BOOT
FP MARCH 1, 2017
Donald Trump Is Tarnishing America’s
Brand
BY
MARK P. LAGON, BRIAN P. MCKEON
● 人民元と国際通貨
NYT MARCH 1, 2017
For China’s Factories, a Weaker
Currency Is a Double-Edged Sword
By
KEITH BRADSHER
競争は厳しく、人民元の減価は一層の価格の引き下げを求められる。中国企業は人民元安を、必ずしも、有利とは考えない。
Project Syndicate MAR 2, 2017
Rewriting the Monetary-Policy Script
MICHAEL
HEISE
Project Syndicate MAR 2, 2017
Addicted to Dollars
CARMEN
REINHART
世界GDPに占めるアメリカのシェアは、第2次世界大戦が終わったときから現在までに、ほぼ30%から18%にまで低下した。同じ時期に、中国のシェアは4倍に増えて16%に達し、新興市場経済は60%に達している。
グローバルな金融市場は、このバランス変化を反映していない。第2次世界大戦後のブレトンウッズ制度はUSドルを主要な準備通貨にした。1970年代まで、世界GDPの3分の2がドルをアンカーにした。今もアメリカはその地位を維持している。世界の国の60%、世界GDPの70%がUSドルをアンカーにしている。
生産と金融とのこの乖離傾向は顕著である。しかし、この問題は新しくない。国内目標(金とドルの均衡を守る)と、準備通貨を供給するアメリカの国際的役割との矛盾は、ベルギーのエコノミスト、トリフィンRobert Triffinがブレトンウッズのリスクとして予想したことだ。2度の切下げを経て、1973年3月、ブレトンウッズ・システムは崩壊する。ドルとその他の主要通貨との為替レートは変動し、ドルはさらに減価した。
今も、アメリカは他国からのドル需要に直面している。今はドルとのリンクはないが、それはアメリカの経常収支赤字、そして公的債務の増大と連動する。アメリカが債務の抑制をすることと、国際的な役割とが矛盾する。
中国は、この現代の「トリフィン・ジレンマ」を解決するように求めている。1つの可能性は、大幅なドルの減価でアメリカの経常収支赤字が消滅することだ。それは、中国など、主要なドル建て資産保有者が大きな損失を強いられる。それとは異なる可能性として、中国が新しい準備資産を供給する。このシナリオでは、準備資産の供給は世界で最も成長する地域のGDPに連動する。直接、人民元が準備通貨になるか、人民元を含むIMFのSDRで、間接的に、準備資産の管理者になるか、IMFは後者を望んできた。
さらに、第3の可能性がある。US準備資産への需要が減少することだ。中国の資本逃避が起きるというのではなく、中国が変動為替レートや国内金融市場改革を進めるからだ。それは準備通貨をめぐる好戦的な姿勢を失わせる。
Bloomberg MARCH 2, 2017
What the IMF Doesn't Know About
Ukraine
Leonid
Bershidsky
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The Economist February 18th 2017
The United Kingdom: Sliding towards Scoxit
Greece and the euro: Uphill task
China’s beleaguered liberals: The two faces of Mr Xi
Turmoil in the administration: Errant Flynn
Bello: A Peronist on the Potomac
Turkish-Russian relations: Getting into the bed with the
bear
Charlemagne: French lessons in degagisme
Electric cars: Volts wagons
Free exchange: Not enough Europe
(コメント) グローバリゼーションの逆転ではないとしても、グローバルな危機の圧力に抗する集合的な試みが問われています。
イギリスがBrexitをすすめるほど、スコットランドの独立を求める声は高まるけれど、そのコストが増す。ギリシャの債務に対する危機と救済融資の再現が、IMFとESM・ECB・欧州委員会との論争を深めてしまいます。中国の国際派・改革派と、リベラル派に対する弾圧、という2つの顔を持つ習近平をどう見るか。フリン辞任の政権混乱は、トランプの権力スタイルに根深く関係している。それは、ラテンアメリカの視点から、ありふれたペロニストである。
トルコとロシアとの関係緊密化をどう見るか。フランス大統領選挙で、にわかに注目を集めてきたル・ペンに対抗するマクロンは、アウトサイダーか。その転換コストに企業は苦しむが、電気自動車への移行は加速する。ヨーロッパは危機を通じて権力を集中し、必要な機関を整備する、と想定された危機の救済者ではなく、危機の犯人にされてしまった。
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IPEの想像力 3/6/2017
英米における反リベラルの「大西洋保守革命」に関するGeorge Rachmanのコラムを読んで、日本の憲法改正論と保守革命を連想しました。
退位を望む天皇の発言は、「人間宣言」(の再確認)として理解するべきだと私は思っていました。天皇の退位(法整備)について、日本の政治家たちが何を基準に議論しているのか、よくわかりません。ネット検索した中で、神保哲夫と宮台真司のマル激ライブ「なぜ天皇の生前退位がそれほど大問題なのか」を観ました。とても面白かったです。
天皇の政治性、あるいは、道具性について、彼らはむしろ肯定的に、(政治利用と区別した)純粋な形(日本の特異点)を彫琢しようとします。
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彼ら(神保・宮台)は指摘します。今上天皇の人柄や思想はリベラルで、尊敬できる方だ。実際、君が代や国旗掲揚が強制ではいけない、と天皇は明確に語ったし、嫌韓ブームへのけん制も(恐らく意図的に)示した、と。
天皇の退位発言は政治的であり(だから許されない)、保守派から見て、アンチ・リベラルへの反対を意図したものではないか、と疑われました。2人は、そうではない(天皇の意図は保守派が恐れるようなものではない)と考えます。
天皇を尊崇するという者ほど、平気で天皇を利用している(人としての生き方を抹殺する)。実は不敬である。天皇の発言がこうして示されたのは、退位論議から(天皇の意思を無視する)「保守派(の一部)」を排除するためであったかもしれない。
神権政治の利用は、明治憲法でも、敗戦でも、支配エリートの側で了解され、現在まで続いていることだ。岩倉使節団以来、日本の政治エリートは(そして占領したアメリカも)唯一神の政治的な効用を知っていた。天皇は王Kingではなく、皇帝に近い神聖な存在である。その国に固有の特異点があり、人々が受け入れる神聖な意味を担う役割がある。近代の社会体制には存在しないはずのものを、現憲法は象徴天皇制として組み入れている。
小さなトライブ(血縁集団・部族)の狩猟社会から、大規模定住社会に変わったとき、秩序の装置を組み込む必要があった。それが一神教だ(神が見ている)。それを欠く大規模社会には、共同性、社会の意識、皆がそう思っている、という感覚がある。象徴天皇はこれを確実にする。しかし、その正しい意味で、天皇は日常の政治を超越していなければならない。
天皇は、個人として、戦後体制の矛盾を強いられた存在だ。「一般意思」の体現者として振る舞うことを受け入れている。あるいは、独裁者の志向性を持つ者が天皇であれば、それが大きく変わる。こうした、天皇の人柄によって支持されなければ続かないような現行制度の実効性・正統性・有効性は非常にもろく、危うい。
天皇には人権も自由もない。その人が天皇を辞めたい、というときはどうするのか? 歴史的には、普通に、譲位があった。しかし、現在の政治や制度は天皇に自由を認めない。日本国憲法そのものの矛盾になっている。天皇は憲法の一部でありながら、法の下の平等から外れている。
「事実性の車輪が回ること」(宮台は天皇制を維持する条件をそう呼ぶ)を維持できるか。天皇制は、心の内側から天皇への敬意を生み出すような、一人一人の国民を前提している。それが続くにはどうすればよいか? リベラルが合理性だけで判断すれば、敵味方の闘いに終わる。
また、「右翼」の考える天皇ではだめだ。天皇は、むしろ革命のシンボルである。天皇がいることで、新しい権力のもたらす秩序を(より平和的に)受け入れさせる。バークの保守主義とは異なる。
昭和天皇の崩御で覚醒したものの大きさは、それまで誰も予想できなかった。日本人はその奇妙な性格を持ち続けられるか。それは長所か、短所か、まだわからない。このエートス(に近いもの)はどのように心に宿るのか? 外国に行った日系人の2世や3世、日本に住む外国人にも生じるのか?
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私は神保・宮台ほど天皇の肯定的な意味を重視しません。天皇や皇室は、人として、生きることを否定されていると思います。
誰が皇室の男子と結婚するか? 皇族の信仰の自由や皇太子がLGBTである場合の皇位継承はどうなるのか? その政治的信条や人としての感情さえも抑制しなければならない生き方に、喜んで耐える人は、血縁だけで保証される個性・人格ではないでしょう。
これは、大西洋反革命どころではないな、と思いました。憲法改正論議で、日本の保守反革命は神話の世界、神武天皇までさかのぼる論争を政治に投げ込みかねません。
Brexit後のイギリスが、連合王国の解体に向かうように、憲法改正後の日本は、天皇制をめぐって解体し始めるのではないでしょうか。民主的な政治体制を保証する、国民のシンボルにふさわしい天皇制を見出さない限り、天皇論は日本の政治体制を溶解し、転覆し、煽動する道具に変わるでしょう。
David Brooksのコラム「啓蒙のプロジェクト」を読んで、日本の憲法改正論がその一部であってほしいと思いました。神であれ、王であれ、それは社会の歴史的な発明品であり、人々が従うかどうかは、十分に議論して決めるべきだ、と啓蒙主義者は考えます。
すべての人間は天皇である。ベルリンの壁や、ケインズ主義のように、こういう形で天皇制度の美点を国民的な合意に転換するには、神話の時代を政治的に利用することなく、近代社会にふさわしい柔軟な制度を明確に生み出すことでしょう。
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