IPEの果樹園2017
今週のReview
3/6-11
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ヨーロッパ経済 ・・・トランプ政権の形成 ・・・トランプの雇用政策 ・・・アメリカ外交の原則 ・・・ロボット税 ・・・大西洋保守革命 ・・・オランダの選挙 ・・・移民政策の真実 ・・・ラテンアメリカ自由貿易圏 ・・・金正男暗殺 ・・・世界資本主義の危機 ・・・トルコの言論統制 ・・・北アイルランドとBrexit ・・・トランプのイメージ ・・・人民元と国際通貨
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● ヨーロッパ経済
Bloomberg FEB 24, 2017
5 Reasons Germany Isn't Suffering in
the 21st Century
Justin
Fox
なぜドイツの方がアメリカよりも21世紀の優れた経済成果を示せるのか? いくつかの説明がありうる。
1.1990年代が、アメリカにとって最高で、ドイツにとっては苦しかった。ドイツは1990年の東西再統一に苦しむ「ヨーロッパの病人」だった。2.ドイツは2000年代に入って、労働市場の困難な改革に取り組んだ。職業訓練や再雇用の制度を改善した。3.ドイツの犯罪歴を持つ人々は、アメリカほど多くなかった。4.ユーロ圏の中で、他のヨーロッパ経済が弱いことで、ユーロ高が起きず、ドイツの製造業は競争力を失わなかった。5.ドイツ人は雇用についてアメリカ人と異なる考えを持っている。アメリカ企業は多くの労働者を解雇した。しかし、ドイツ企業や政府は解雇せず、雇用主・労働組合・政府が相談して、給与の削減、休暇の増加、労働時間の短縮により、できるだけ雇用を維持した。その結果、海外で需要が増えたとき、迅速に対応できた。
Project Syndicate FEB 28, 2017
Europe or Anti-Europe?
MICHAEL
SPENCE
「もし外国の投資家に、たとえばアメリカの投資家に、イタリアでかなりの額を投資したい、と助言を求められたら、何と答えるべきか?」 私は考えた。企業や部門によっては多くの投資機会がある。しかし、全般的な投資環境は複雑だ。私なら、システムを動かす術を知っている、ある意味ではあくれたリスクを指摘できる、事情の分かった国内投資家と組んで投資するのが良い、と勧めるだろう。
もちろん、同じことは、中国、インド、ブラジルのように、多くの国について言えるだろう。しかしユーロ圏はますます2つの異なるスピードで動く経済ブロックになりつつあり、この傾向を反映した政治の分裂が投資家たちに多大の懸念を生じている。
高レベルの投資顧問たちが集まった最近の会議で、ある司会者が、5年後にもユーロはまだ存在していると思うか、と参加者すべてに質問した。存在するとは思わない、と答えたのは、200人の中でたったの1人であった。ヨーロッパの現状を考えるなら、この驚くべき集団的な評価は、リスクを取る安易な風潮を示すものだ。
ユーロ圏諸国の社会的な悪条件は、1.財政政策や規制を統一せずに共通通貨を採用したこと、2.中国がWTOに加盟し、世界市場に統合化したこと、3.デジタル技術革命が経済構造、雇用、グローバル・サプライ・チェーンに甚大な影響を与えたこと、に各国が正しく適応できないことを示す。
ヨーロッパの将来は、スローモーションで進む列車事故なのか、より深い統合と包括的な成長モデルを担う新世代の若い指導者たちを生み出すのか、わからない。どちらの可能性もあると思う。
1つだけ明らかに言えることは、現状は明らかに不安定で、このまま維持し続けることは不可能だ、ということだ。政策や経済変化が明確にシフトしなければ、イギリスやアメリカで起きたように、政治のサーキット・ブレーカーが落ちてしまう。
● トランプ政権の形成
NYT FEB. 24, 2017
The Islamophobic Huckster in the
White House
By
STEVEN SIMON and DANIEL BENJAMIN
ホワイトハウスは、聖戦主義者のテロリストと戦う司令塔にSebastian Gorkaを指名した。歴史的な文明の衝突を予言するStephen K. Bannon and Stephen Millerとともに、アメリカ大統領はイスラム教徒を適するハッカー集団に乗っ取られた。
Gorkaはイギリス生まれで、イギリス育ちだ。ハンガリーからの移民の子供である。共産主義体制後のハンガリーにおいて政治コンサルタントになり、博士号を得て、超ナショナリストたちの政治に自ら参加した。アメリカに移住し、5年前に国籍を得た。軍事セミナーの司会者やイスラム教を敵視する情報提供者としての評価を確立した。
Gorkaは、イスラム教の武闘派を、ガバナンスの失敗や、弾圧、貧困、戦争と同じような、世俗の苦悩を反映したものと考える。「これは我々が完全に抹消するべきものだ」と、最近、彼は語った。その世界観の核心は、アメリカが「ラディカル・イスラム」とのイデオロギー戦争にロックされている、ということだ。
長期にわたる法の執行、諜報機関の分析、戦線主義者に関する多くの学術研究が示すのは、宗教の原理が彼らの行動の唯一、さらに主要な、動機ではない、ということだ。宗教戦争を宣言することは、戦線主義者の主張を証明することになるし、中間地帯にある者たちに武器を配ることにもなる。トランプ政権は、今や、その克服したいと願っている安全保障の問題を、逆に、悪化させている。
NYT FEB. 25, 2017
Trump Is Damaging Press Freedom in
the U.S. and Abroad
By
JOEL SIMON
SPIEGEL ONLINE 02/27/2017
The Destruction of Understanding
Trump, Erdogan and the Assault on
the Free Press
A
DER SPIEGEL Editorial By Klaus Brinkbäumer
Project Syndicate MAR 1, 2017
Laughing in the Dark
NINA
L. KHRUSHCHEVA
かつてソ連市民であった者として、私はあなたに言う。芸術家たちが政治に反対して声を上げ始めたら、それは良くない印だ。彼らがストライキを打つとき、システムは病んでいる。
● トランプの雇用政策
Project Syndicate FEB 25, 2017
How Imports Boost Employment
ANNE
KRUEGER
ポピュリストたちは、製造業の「良い職場」が輸入や特恵的な貿易制度によって失われた、という。しかし、このような話は事実に反する。輸入も雇用を創るからだ。
まず、多くの職場は貿易に直接関係している。たとえば船荷を扱う仕事や、輸入材の卸売りや小売りで働く労働者のように。
第2に、安価な投入財はアメリカの製造企業の競争力を改善し、その輸出を増やし、あるいは、国内市場を守る。第3に、外国からの直接投資は、アメリカ企業の投入財を安くし、研究開発費やその他の活動を助ける。
最後に、他国がアメリカに輸出することは彼らの所得を増やし、アメリカから輸入する資金を与える。輸出企業は一般に優れた熟練や給与をもたらす。
輸入がなければ、多くの職場が消滅する。海外の安価な未熟練労働者によって生産された輸入財に頼る企業は、それがなければ、それらを自分で生産するか、もっとコストのかかる国内企業から買うしかない。それは最終財の価格を引き上げ、あるいは、彼らの利潤を失わせる。ドイツや日本の製造業は、より安価な労働力のある国で投入財を生産させて、それを輸入することで世界市場での競争を可能にし、高度な熟練と高賃金の雇用を維持している。
低コストの輸入財は、アメリカ製造業の職場を「破壊」するのではなく、むしろ維持するのである。
こうしたダイナミクスを考えると、なぜ製造業の雇用が減少したのか? 1994年に成立したNAFTAのような特恵的通商条約が非難されている。しかし、製造業の雇用減少は1870年代後半から始まった傾向だ。それを部分的に説明するのは、企業が多くのサービスを外注したために、直接雇用が減少したように見えることだ。
しかし、多くのアナリストはこの問題を生産性上昇と結びつける。競争力を維持するため、アメリカ企業は絶えず新しい技術を採用するしかない。その需要が増え、生産量や付加価値が増えても、雇用は増えない。アメリカ製造業製品への需要がもっと急速に増えるか、あるいは、生産性上昇を抑制するしかない。後者の選択肢は、アメリカをもっと貧しくするものである。
NYT FEB. 25, 2017
A Time for Immodest Proposals
Ross
Douthat
FT February 27, 2017
Donald Trump is creating a field day
for the one per cent
Edward
Luce
Project Syndicate FEB 27, 2017
Don’t Cry for Corporate America
STEPHEN
S. ROACH
NYT FEB. 28, 2017
Shaky Jobs, Sluggish Wages: Reasons
Are at Home
Eduardo
Porter
移民が入るのを止めたとしても、トランプは雇用を守ったわけではない。
トランプは、1970年代のグローバリゼーションで、製造業の雇用が失われたことにこだわっている。そしてもっと重要な職場の転換を見逃しているのだ。カフェテリアの運営、メインテナンスや保安要員など、企業内の膨大な職務がアウトソーシングされて、アメリカ国内の低賃金でマージナルな下請け業者に変わったのだ。
雇用の再編成は、グローバリゼーション以上に、賃金の抑制に重要な役割を果たしている。
NYT MARCH 1, 2017
What Booming Markets Are Telling Us
About the Global Economy
Neil
Irwin
NYT MARCH 2, 2017
What Trump Gets Right on Trade
By ALAN TONELSON
● ロシア大使への哀悼
NYT FEB. 25, 2017
Samantha Power: My Friend, the
Russian Ambassador
By
SAMANTHA POWER
● アメリカ外交の原則
NYT FEB. 25, 2017
What Does Steve Bannon Want?
By
CHRISTOPHER CALDWELL
トランプ大統領は、政治をシステミックなイデオロギーで理解する人々にとって問題がある。彼はそのような形で方針を示すことを好まず、その能力もない。それゆえ、不可避的に、彼のストラテジストであるバノンがシステム的な思考を示すだろう。すなわち批判する者が言うように、「トランプ主義」というものは存在せず、この政権を理解する思考を探すとしたら「バノン主義」になるだろう。
バノンは63歳であるが、異端的なキャリアの各局面で研磨するような知性を高く評価された人物だ。すなわち、海軍士官、ゴールドマンサックスの企業合併専門家、娯楽産業の資金調達者、ドキュメンタリーの脚本家・監督、サイバー煽動放送Breitbart Newsの主催者、そして、トランプの大統領選挙運動幹部であった。彼が政治に全力でかかわるようになったのは9・11テロ攻撃の後であるが、その政治的な情念は、同時代の保守派がずっと前に失ってしまったものである。
バノンに対する多くの間違った立場が定義され、攻撃されている。彼は確かに、ある種の保守強硬派であるが、その批判は誤解や歪曲によるものだ。
バノンが主流派の共和党員たちと鋭く対立するのは、彼がナショナリズムを全面的に肯定することだ。彼は主権、経済ナショナリズム、反グローバリゼーションを主張し、その点で、Brexitの支持者や超国家的なEUへの敵意と共通する。彼は木曜日、保守派政治行動会議で、トランプ政権の哲学で中核になるのは、アメリカが、境界のない世界の中で、1つの経済単位以上のものである、という信念だ。それは「文化を持った国民」であり、「存在理由」である、と語った。
こうしたバノンのイデオロギーは、トランプの人気と同じく、そのルーツを世界経済への失望に持つ。しかしトランプと違って、バノンには、アメリカが主権をどのように失ったかについての説明、それについてなすべきことの詳しい考えがある。それはティー・パーティの活動家と同じだ。政府に入った規制者たちがアメリカ人民から民主的な権限を奪ったのだ。その規制階級は、今や、「行政管理国家」を形成し、クローニー資本家たちと同盟を組んで、権力と富を集めている。
バノンには歴史の循環理論がある。それは華麗なほどに簡明で、あるいは、危険なほど単純化されている。William Strauss and Neil
Howeが1990年代に2冊の本でモデル化した。その主張によれば、80年から100年の循環があり、概ね20年ごとの「高揚」、「覚醒」、「解体」、「危機」が存在する。アメリカ独立革命、南北戦争、ニュー・ディール。第2次世界大戦、そして、われわれは今、次の危機に入ろうとしている。2008年の金融崩壊に関して、the Strauss-Howe modelを使ったドキュメンタリー、“Generation Zero”を、バノンは2010年に発表した。その結論をHowe自身が述べている。「歴史には季節があり、冬が来ようとしている。」
バノンの見解は、過去10年ほどの保守主義の転換を反映している。彼の制作したドキュメンタリーにそれを観ることができる。レーガン大統領が共和党のヒーローだった。しかし、その5年ほど後、金融崩壊はハイブリッドを生んだ。バノンは“Generation Zero”で、サプライサイダー、自由市場派だけでなく、正統から外れた保護主義のニュースキャスター、Lou Dobbsや、投資マネージャーBarry
Ritholtzの声を取り上げた。彼らは、自由市場が本当に自由なのか、と問う。金融危機の結果とは、「富裕層の社会主義、そして、他のすべての者には資本主義」であった、とRitholtzは言う。
2014年までに、バノンのイデオロギーは後者に集中するようになった。彼はAyn Rand派やリバタリアン的な資本主義を支持する客観主義者に警告する。彼らによれば、資本主義は人々を商品に変え、客体化する。しかし、バノンは言う。資本主義は、「ユダヤ=キリスト教的な」土台の上に据えねばならない。ビジネス界の方針に合った、政治資金を集めやすい自由市場の思想が、共和党の全体、そしてユダヤ=キリスト教の先入観、“a
nation with a culture”を呑み込んだのだ。
しかし、有権者たちはこれ以上耐えられない。バノンはユダヤ=キリスト教文化をあまり語らないが、1つだけはっきりしていることがある。それはイスラムではない、ということだ。多くのアメリカ人と同じように、彼もイスラム主義を危険な敵とみなしている。オバマ大統領やジョージ・W・ブッシュ大統領はそれを宗教と区別したが、バノンは、イスラム圏の政治運動、宗教としてのイスラム教の拡大を、政府が阻むべきだと考える。
トランプ大統領は知識人の間で人気がない。閣僚には思索家がおらず、体制に迎合しない、革命派、あるいは、個人主義者と見られている。ワシントンの人々はバノンを敵視している。バノンが発する政策や混乱を、首都の多くの政策専門家たちは受け入れることが難しい。しかしバノンは決して妥協せず、原則を変えなかった。彼のボスは多数票を得たわけでもなかった。エスタブリシュメントはバノンを、社会的に受け入れられない、危険な存在とみなしている。彼は歴史家Ronald Radoshとの対話で、すべてを破壊する「レーニン主義者である」と語った(のちに否定したが)。
9・11テロ攻撃が彼を変えた。バノンと長く一緒に仕事をした脚本家Julia Jonesによれば、彼は軍人としての奉仕により世界観を得た。彼が最もよく使った言葉は「ダルマ」であった。それはヒンドゥー教の聖典の1つ、バガヴァッド・ギーターから得たものだ。Jonesは、政治的には左派・リベラルの知識人で、バノンがナショナリズムを受け入れたことを残念だという。しかし、バノンは無政府主義者ではないし、人種差別主義者でも決してない、と言う。
バノンが政治に関与したのは新しく、権威を無視する意志がある。信用を失った前世紀のイデオロギーを何も受け入れないが、歴史の循環理論は気に入った。しかし、それは控えめに言っても、まだ試されたことがない。彼はグランド・セオリーに魅了される政治的知識人であり、それは予測できない結果をもたらす組み合わせだ。
同様に、バラク・オバマも歴史の方向性、「円弧」(を描いて進む)を信じた。2つの歴史はともにナイーブで、非現実的と言えるだろう。進歩派は、歴史を多かれ少なかれ直線的とみなし、不正と闘うために政治に参加する。保守派は、歴史が循環することぉお信じ、次の20年、ないし80年を管理する役割を求めて闘う。そして、誰もがそうであるように、彼の仕事もやり直される。
FP FEBRUARY 28, 2017
Bannon’s Vision of the World Isn’t
What Makes America Great
BY
ANTONY J. BLINKEN
バノンは、70年に及ぶ超党派の、アメリカが始動する国際主義、それが依拠する価値を否定する、という政権の決意を再表明した。彼が強調したのは、経済ナショナリズム、主権、アイデンティティであった。自由貿易、移民、グローバリゼーション、同盟、国際機関、リベラルな価値の普及、は否定される。開放的な、相互に結び付いた、ルールに依拠した世界、それは他国の平和、進歩、安全保障が直接にわれわれ自身の利益になる、そういう世界を否定して、無慈悲な競争が支配する、ホッブズ的なゼロサム世界、そこにおけるアメリカの使命とは、白人、キリスト教国家としての、「われわれの」文化的なアイデンティティを守ることである。
バノンが話した翌日、アメリカの外交官を最も長く務めた人物が国務省の引退セレモニーで、まったく異なる見解を示した。Dan Friedである。外交に40年間関わり、大使から国務次官補にまでなった。中東欧の自由化と西側への統合に重要な役割を果たした。
Friedは聴衆に、アメリカが例外的であるのは、19世紀末。閉じたヨーロッパ諸帝国の時代に、大国として登場して以来、開放型の、ルールによる支配を好み、その下で、共和制とビジネスの利益を重視するわれわれの民主的価値を実現しようとしたことだ、と語った。
われわれは、共有された血にアイデンティティのルーツを持つ、エスノ国家ではない。われわれの国家はアイデアに基づく。すなわち、すべての者が平等に創られた。そのアイデアを受け入れることでわれわれはアメリカ人になる。
● ロボット税
The Guardian, Sunday 26 February
2017
If the robots are coming for our
jobs, make sure they pay their taxes
John
Naughton
多くの議論は、人々の不安を緩和することに向かう。技術革新はいつでも雇用に影響する。それを邪魔するより、新しい職場に移動するのを助ければよい、という。
しかし、問題は技術革新がいつも深刻な社会的破壊を生じて実現したことだ。経済歴史家のGregory Clarkによれば、産業革命の時代、1770-1810年、イギリスの実質賃金は10%下落した。産業革命による移行期は60年から70年もかかった。それまで労働者の実質賃金は上昇しなかったのだ。
このコストは誰が支払うのか?
Project Syndicate FEB 27, 2017
A Tax on Robots?
YANIS
VAROUFAKIS
Bloomberg FEB 28, 2017
What's Wrong With Bill Gates' Robot
Tax
Noah
Smith
ロボット税は、労働を補完する技術と、労働に代替する技術とを、区別できない。
● ジンバブエ
FT February 27, 2017
Zimbabwe is staring at currency
chaos again
Tony
Hawkins
● 大西洋保守革命
FT February 27, 2017
Le Pen, Trump and the Atlantic
counter-revolution
Gideon
Rachman
フランスとアメリカは、どちらも自分たちを例外的な国民だと考えている。しかし両国の歴史はしばしばよく似たパターンをたどった。1775-83年のアメリカ革命の後、速やかに1789年のフランス革命が続いた。歴史家たちの中には、18世紀後半を「大西洋諸革命」の時代と呼ぶ者もいる。
未来の歴史家たちは、21世紀初めについて「大西洋反革命」を叙述するのだろうか? 昨年11月にドナルド・トランプがアメリカ大統領に当選したことに続いて、今年の5月にフランスの極右政党National Front の指導者マリーヌ・ル・ペンが大統領に当選するかもしれない。
トランプとル・ペンの運動には多くのアイデアが共通する。イスラムへの敵意、ナショナリズム、ポピュリズム、保護主義、Brexitへの支持、ロシアに共感し、主要メディアを嫌う。どちらの指導者もグローバリゼーションや多文化主義以前の、より保守的な時代に時計を巻き戻す。そして憎まれている「リベラルなエスタブリシュメント」に対する反革命を提唱する。
フランスの経済・社会情勢は、トランプのケース以上に、ル・ペンにとって有利である。失業者はより多く、成長はより遅い。アメリカと違って、フランスにはEUによる財政規律が強いられる。だから主権を失ったという不満が強い。
フランスの政治エリートは腐敗し、国民の声を聴かない、というル・ペンの批判を証明するような行動を取る。中道・右派の統一候補François Fillonは汚職について正式に起訴され、カリスマ的な若い候補Emmanuel Macronは、エリートのさまざまな象徴を帯びている。ル・ペンはこうした弱点をテレビ演説で巧みに攻撃した。
従来、フランスの政治エリートの間には、戦後の大統領選挙で、極右候補に有権者の過半数は取れない、という前提があった。しかし、今、ル・ペンの高い支持率はそれを打ち破る可能性を示している。
フランスのエリートには目に見えて不安が高まっている。先週、パリで、2人の旧い友人が「移住するとしたらどこが良いか?」と話し合うのを聞いた。ル・ペンが当選するかもしれないからだ。トランプ大統領のいるアメリカ、EUを離脱するイギリス、彼らの選択肢は狭くなっていく。
Project Syndicate FEB 27, 2017
How Trump is Testing Democracy
KOICHI
HAMADA
トランプが勝利した理由は、国民が経済の現状に不満を感じており、政治家たちがそれを見逃していたからだ。しかし、トランプは選挙戦のレトリックを大統領就任後も続けている。問題は、オフショア生産や移民の流入ではなく、工場労働者を減らす機械化である。
正しく、グローバリゼーションを管理することである。日本の安倍政権が、TPPに参加しつつ、それによる影響を緩和するために農家を保護するやり方に学ぶべきだ。
トランプの個人的な取引による政治や外交は、民主主義の下で機能しない。アメリカ憲法はそれをチェックするようにできている。
NYT FEB. 28, 2017
The Enlightenment Project
David
Brooks
グランド・ストラテジーのセミナーの最後に,Charles Hillはグラフを描いた.現在の出来事を歴史的な視点で見るために.
グラフの中心には,啓蒙思想を示す長い直線がある.それは,ジョン・ロックやイマニュエル・カントを含む,思想家たちだ.彼らは,人々が権力に盲目的に従って生きるのをやめるべきだ,と主張した.その代わりに,物事を基礎から考えること,事実を重視し,自分たちの前提や革新を疑って,再吟味することを求めた.
啓蒙思想家たちはその考え方を正二にも当てはめた.アメリカ憲法は,その著名な例だ.アメリカの建国者たちは,人民も,彼ら自身も信頼せず,それゆえ利益と利益とを対立させてチェック・アンド・バランスとする,支配システムを構築した.
20世紀に入って,啓蒙主義の指導者たちはそのプロジェクトをグローバル化した.EUやNATOのようなルールに依拠した国際機関で,大国の脅威を抑え,バランス・オブ・パワーを維持したのだ.
啓蒙主義のプロジェクトは近代世界をわれわれに与えたが,弱点もあった.すなわち,1.その指導者たちが考えたほど,宗教や人種差別は消滅しなかった.2.人民を合理的なエゴイストと考え,政府は魂を持たない官僚が動かす,と考えたのは理解が浅かった.3.啓蒙主義のガバナンスは繰り返し崩壊した.
それゆえ反啓蒙主義の運動が強まった.かつてのマルクス主義者たち,ニーチェ主義者たちがそうだ.現在,金融危機,EUの緩やかな崩壊,イラクを経験したことで,再び反対思想が強まっている.ウラジミール・プーチン,習近平は,啓蒙主義の秩序から利益を得ているが,そのルールを破壊したがっている.ドナルド・トランプもそうだ.
彼らは人民の本能に美徳や知恵を観る.国家や民族の集団意識の神話的核心を重視する.歴史は協調に向かうのではなく,ゼロサムの紛争がもたらす破滅の循環である.ルールに依拠したシステムや国際組織,民主的な政治の妥協を敵視し,人民の意志を体現する強権的指導者の直接支配を求める.
リンカーンは,決して,魂のない官僚ではなかった.慈善,理性,忍耐という,啓蒙の方法を高めて熱狂主義と闘い,分断を超えて統一を求めた.彼は希望を持ったペシミストであり,闘いが長いことを認めたが,摂理と究極の正義を信じた.
多くの者が啓蒙主義の行動や制度を疑う今こそ,指導者たちは立ち上がって,そのプロジェクトを擁護しなければならない.
NYT FEB. 28, 2017
As France’s Towns Wither, Fears of a
Decline in ‘Frenchness’
By ADAM NOSSITER
NYT MARCH 1, 2017
Can Populism Take Paris?
Ross
Douthat
● アジアの世紀
FT February 27, 2017
The End of the Asian Century by
Michael Auslin – strategic games
Review
by Lucy Hornby
「アジアの世紀」はもう終わった。中国の台頭が支配的な論点ではなく、アジアの弱さと危険が主要な議論になった。
ドナルド・トランプ大統領は、クリントン=オバマの「アジア旋回」とTPPを終わらせる。アジアの人々が中国の台頭をどう見ているのか? アジアには衝突するコースが待っており、彼ら自身が解決策を示せない。
今もアメリカ人は、日本の台頭が金融バブルで終わったことを忘れている。また、アジアには安全保障のメカニズムがない。中国の影響力拡大は、反発を生んでいる。中東のイスラム過激派はアジアにも多くの拠点を持つ。
南シナ海の紛争は深刻だ。アジア版NATOを作ることに、中国は反対し、アジア諸国も「封じ込め」策を受け入れないだろう。アジアにはむしろ関係の多様な網の目が広がり、相対的な強さと弱さが頻繁な調整を生じるだろう。
アメリカはアジアの世紀を助けるのか、阻むのか? アジアの人々が望むものは何か、アメリカの求めるものをよく考えることだ。
● オランダの選挙
NYT FEB. 27, 2017
Geert Wilders, Reclusive
Provocateur, Rises Before Dutch Vote
By
ALISSA J. RUBIN
イスラム諸国からの移民を禁止する、ヘッド・スカーフに課税する、コーランを禁止する。ソーシャル・メディアに頻繁に現れるが、現実には警察の警護に囲まれて生活している。選挙運動もめったに自分で行わず、毎晩、違う場所で眠る、と言われている。
極右のシンボルとなったGeert Wildersウィルダースは、ヨーロッパで最もリベラルな国、何世紀も宗教的な寛容や移民を歓迎してきた伝統のあるオランダに現れたという意味で、注目されるだけではない。彼とその政党が支持されることは、フランス、ドイツ、そしておそらくイタリアでも行われる重要な選挙で、極右がどこまで勢力を拡大し、それゆえ、EUの将来を決めるかを示す。ウィルダースは国民投票によるEU離脱Nexitを求めている。
53歳のウィルダースは、2004年に、彼を害する計画を警察が摘発した後、その警護を受けている。インターネットやソーシャル・メディアを通じて、ジャーナリストのフィルターを通さず、有権者に直接アピールしている。彼は非常に戦略的な政治家だ、と政治学者Sarah de Langeは見ている。巧妙で、論争がうまく、メディアを利用する。幻滅している市民たちに近づき、効果的に支持を集めている。彼らが言えないこと、言ってはならないとされていることを言う。
たとえ第1党になっても、ウィルダースは政権を得られないだろう。しかし、ウィルダースの政党は選挙で勝利すること、政権を得ることが主要な目標ではない。彼はすでにその政治的野心を実現した。オランダの政治を右派に傾け、少し前には考えられないことだ、移民流入を遮断し、EUを解体することを議論している。
FP MARCH 1, 2017
How Geert Wilders Became America’s
Favorite Islamophobe
BY
FREKE VUIJST
Bloomberg MARCH 1, 2017
They Really Knew How to Do Populist
Revolts in 1672
Justin
Fox
SPIEGEL ONLINE 03/01/2017
'Geert Peddles Illusions'
Dutch Populist's Brother Speaks Out
Interview
Conducted By Claus Hecking
Bloomberg MARCH 2, 2017
Geert Wilders Doesn't Want to Govern
Justin
Fox
(後半へ続く)