(前半から続く)
● ロボット税
FT February 20, 2017
Bold claims for AI are hard to
compute for economists
John
Thornhill
FT February 21, 2017
Robot tax, odd as it
sounds, has some logic
ロボットに人間の仕事を奪われることが不安を高める中で、ロボットと人間とのバランスを調整するための税金が支持されている。Microsoft 創業者のBill
Gatesやフランスの左翼Benoît Hamonが導入を主張している。
生産性を高め、富をもたらす技術革新に課税することはナンセンスである。それは豊かな国から貧しい(課税のない)国への製造業の移転を加速するだけだ。
しかし、機械化とともに、ほとんどすべての豊かな国で労働者の分配率は低下している。高所得の労働者と資本の所有者が受益者となっている。ゲイツは、コミュニティーを維持するためには、機械化を遅らせ、最も影響を受けている人々に分配することをロボット税に求めている。
しかし、ロボット税が分配の平等化につながる保証はない。Hamonは、直接、ロボットに課税するより、雇用者に「社会的負担」を求めている。産業革命は社会的混乱をもたらしたが、長期の雇用水準は変えなかった。そして時間が経つにつれて、労働時間を短縮し、賃金を高め、労働市場が機能するようになった。
ロボットの導入を、社会混乱なしに、実現することが政策に求められる。
NYT FEB. 21, 2017
No, Robots Aren’t Killing the
American Dream
By THE EDITORIAL BOARD
FT February 22, 2017
Roman law offers a better guide to
robot rights than sci-fi
Luciano
Floridi
Project Syndicate FEB 23, 2017
Mapping the Future of AI
MARGARET
A. BODEN
FT February 25, 2017
Robot tax: Do androids
dream of personal deductions?
Richard
Waters
● トランプの経済政策
Project Syndicate FEB 20, 2017
How to Survive the Trump
Era
JOSEPH
E. STIGLITZ
NYT FEB. 20, 2017
On Economic Arrogance
Paul
Krugman
トランプ政権は、過度に楽観的な成長率に基づいて予算を発表した。その数字は信頼できない。トランプに限らず、共和党の政治家は高い成長率を必ず前提する。なぜか?
それは共和党が成長率を高めることに奇妙な傲慢さを持つことに由来する。レーガン政権は確かに大幅に減税し、高い成長率をもたらしたが、他方、共和党の非難にもかかわらず、クリントン政権は富裕層に増税して、さらに高い成長率を実現した。
共和党員たちの自信には根拠がない。彼らの好む減税や環境規制の緩和は、成長に関係ない。しかし、その政策は富裕層を喜ばす。
Project Syndicate FEB 21, 2017
Making Crises Great Again
JEFFREY
FRANKEL
トランプ大統領がドッド=フランク金融改革法の全面的な見直しを求める大統領令を出した.政府の目標は,規制システムを大幅に縮小することだ.これは危険な行為である.
ドッド=フランク法の主要な中身は,銀行に高い自己資本比率を求め,金融消費者保護局を設け,金融システムに重要な影響を及ぼす金融機関を特定し,銀行に厳しいストレス・テストを要求し,デリバティブに高い透明性を求めるものだ.これらを取り除き,あるいは,弱めることは,2007-2008年の金融危機が再発するリスクを高める.
規制を改善することはできるだろうが,金融業界が思うほど,トランプ政権がそれをうまく実行する保証はない.逆に,すでにトランプは規制を改悪している.それは,いわゆる信託ルールの見直しだ.投資顧問が,金融機関の利潤ではなく,消費者の最善の利益を実現するように行動することを求める.規制は4月から発効する予定である.
この規制にもマイナス面はある.たとえば,あまりにも頻繁な取引は取引コストを増やし,望ましくない.この点でエコノミストが推奨するのは,インデックス・ファンドなどを使って,貯蓄を分散投資することだ.専門的な投資顧問も必要ない.
優れた投資顧問もいるが,中古車市場のように,それを見分けることは難しい.信託ルールは予定通り実施されるべきだ.
YaleGlobal, Tuesday, February 21,
2017
Border Walls and Taxes: Bad Medicine
for the Wrong Diagnosis
David
Dapice
FP FEBRUARY 22, 2017
Economists to Trump: It’s Not the
Trade Deficit, Stupid
BY
JESSICA HOLZER
● 中国共産党の経済運営
Project Syndicate FEB 20, 2017
Trump’s China Challenge
BRAHMA
CHELLANEY
Project Syndicate FEB 22, 2017
China’s Weapons of Trade War
KEYU
JIN
NYT FEB. 22, 2017
How the Communist Party
Guided China to Success
By
IAN JOHNSON
ベルリンのthe Mercator Institute of Chinese Studies
(Merics)所長である中国研究者のSebastian Heilmannによれば、非常に分散した、遠隔地のシステムを支配する共産党の、革命を組織した歴史が、現在のような組織と行動に反映している。
Heilmannは、共産党による問題解決の興味深い具体例を多く挙げている。それは、公共財の供給、と呼ばれる問題だ。医療システムや食料を確保することは、イデオロギーの違いに関わらず、世界中の政府が取り組む問題である。
中国の特徴は、共産党の組織を利用することだ。西側では、政策を決め、法律を通して、公務員が実行する。しかし中国では、政策の実施は党員に依存している。彼らは達成するべき明確な指標や目標を与えられ、実現を求められる。政策はトップ・ダウンで決められ、法律ではなく、共産党組織を管理する。
中国の成功を、どの程度、共産党の政治システムによって説明できるか?
いくつかの重要な要素がある。1つは、共産党が長期的な政治目標を決めることに成功したことだ。産業や技術の近代化、インフラの建設、など。1980年代に鄧小平が明らかにしたように、共産党は資源を優先目標に集中することができた。それは初期の、すなわち1980年代から2000年に入って数年間の、発展の強さであった。
もう1つの重要な要素は、(政策)実験である。中国の深く組織化された官僚システムは、予想以上に弾力的である。この弾力性(柔軟性)は、経済特区におけるパイロット・プロジェクトの実施能力に示される。地方のレベルで、住宅改革や国営企業の破産処理が実験された。全国で法律になる前に、数年にわたって、特に困難な手法はパイロット・プロジェクトにおいて、規則的なテストを課される。
重要なことは、社会主義的な官僚システムがこうした適応能力を示すのは東欧に見られなかった、ということだ。この特徴は中国共産党が権力を掌握するまでの歴史的な経験によって生じた。共産党は、非常に分散した、連続していない地方を支配していた。だから土地改革でも、実験的に、地方に分散して実施した。この点がソ連とは全く異なる。
実験に対する姿勢は、鄧小平から江沢民の時期と、習近平指導部との違いでもある。
習近平は、「トップ・レベルの設計」ということで、地方の実験を終わらせた。それが汚職の蔓延と規律の欠如をもたらした、というわけだ。今や、すべての政策を中央で承認される必要がある。しかし、そのことは政治システムから多くのエネルギーを奪うだろう。
中国の成功により、権威主義体制の、非リベラルな国家による解決策を正当化するのは間違っている。他の諸国には、中国の歴史的な経験を経た共産党がないからだ。また、今後の中国共産党が、弾力性を失った階層秩序を強める中で、ショックに対して脆弱になることが懸念される。
経済の拡大に失敗しても、西側の人々は政府を交代させればよい。しかし、中国ではそれができない。軍事衝突やナショナリズムの高まりは、人々の思う以上に政治的混乱を生じる。
FP FEBRUARY 22, 2017
Trump’s China Policy Is a Paper
Tiger
BY
MICHAEL H. FUCHS
YaleGlobal, Thursday, February 23,
2017
Sea Change Awaits Trump in Thailand
Benjamin
Zawacki
FP FEBRUARY 24, 2017
How China Became a Sci-Fi Powerhouse
BY
EMILY FENG
● トランプ・ドクトリン
NYT FEB. 20, 2017
Why the World Needs a
Trump Doctrine
By
ZBIGNIEW BRZEZINSKI and PAUL WASSERMAN
世界秩序が混乱している中で,トランプ大統領が原則を明示することは重要だ.外交の基本方針を演説し,その中で,より安定した世界を形作るためにアメリカの指導力を発揮する,と明確に述べることだ.
われわれは,アメリカが世界にとって重要である理由,世界がアメリカを必要とする理由を聞きたい.同時に彼は,アメリカが世界に期待するものを示す機会を持つだろう.日々の決定より,トランプ大統領の長期的なビジョンが知りたい.特に,世界の支配的な軍事大国,アメリカ,中国,ロシアが世界の安定性を支持して協力する,という問題を解決するべきだ.
アメリカと中国とは対話を繰り返している.ロシアも両国の安定した関係を望むだろう.他方,中国とロシアが戦略的同盟を組むことには注意しなければならない.
当面,必要な協力は北朝鮮の問題だ.アメリカ単独ではなく,中国,日本,韓国と地域的な協力の中で対応するべきだ.
ロシアとの関係は,国際秩序の中心にある,明確な法的枠組みに照らして扱うべきである.ロシアの近隣諸国やヨーロッパに対する軍事介入には,非公式な介入も含めて,厳しい禁輸措置によって対処する.また,日本やイギリスのようなパートナーとの地域協定を重視するべきだ.
NYT FEB. 21, 2017
This Century Is Broken
David
Brooks
20世紀後半は,世界戦争も,大恐慌もなく,内戦や疫病の蔓延も少なかった.しかし,21世紀は違うようだ.エスニックなナショナリズムが高まり,民主主義は信頼されず,世界秩序が解体しつつある.
トランプの抵抗することより,アメリカ人はもっと深刻な問題を解決しなければならない.アメリカの成長が減速しているのだ.Nicholas Eberstadtが示したように,1948年から2000年まで,1人当たり所得は年平均2.3%で成長した.21世紀になって,それは1%に落ちた.2009年以降でも1.1%でしかない.
低成長はすべての緊張につながる.機会が失われ,楽観が消え,ゼロサム的な,奪い合う姿勢が強くなる.ドナルド・トランプが顕著に示している.多くの者が仕事に就けない.麻薬への依存や長期の禁固刑に服しているものが増えた.白人労働者の57%が,政府の就労不能な分類いずれかに属している.
アメリカは,よりダイナミックになり,同時に,より弱者を保護しなければならない.しかし,減速する中では,保護する力も失われる.Tyler Cowenが示すように,アメリカの庶民はかつての生気を失いつつある.
アメリカ人は冒険を好まず,より静的になっている.かつて機会をつかむために,移住し,生活スタイルを変えたアメリカ人が,ますます州を超えて移動しなくなり,起業することも少なくなった.アメリカの技術革新も衰えている.
2人は,異なる仕方で,アメリカの衰退,分裂,失望,悲哀を描いている.経済は減速し,社会は不満を強め,リスクを回避するようになる.
だれが,成長を再生する刺激的な計画を持っているのか? もしトランプの計画ではないとしたら,それは何か?
FT February 22, 2017
Snap and the 21st century
governance vacuum
John
Plender
NYT FEB. 23, 2017
Humans in Dark Times
Brad
Evans
Project Syndicate FEB 24, 2017
The Politics of Historicide
RICHARD
N. HAASS
● スペクタクル社会
NYT FEB. 20, 2017
Trump and the ‘Society of the
Spectacle’
Robert
Zaretsky
● 中東和平の破壊
FT February 21, 2017
A US embassy shift to Jerusalem
would right a historic wrong
Amos
Yadlin
FP FEBRUARY 21, 2017
Donald Trump Will Design a New
Middle East
BY
STEPHEN R. GRAND
FT February 22, 2017
A reality test for Donald
Trump in the Middle East
David
Gardner
イスラエルの政治家の多く,そして,中東和平に関わったアメリカの退役軍人たちの中にも,40年前のサダト大統領がエルサレムを訪問したことを思い出す者がいるだろう.エジプト大統領がイスラエルとの和平条約を指導した.しかし,アラブの指導者たちは,おそらくその終わり方を思い出すだろう.その4年後に,サダトは兵士の銃弾で殺害された.
● ギリシャ債務危機
FT February 21, 2017
A lack of trust is blighting Greece
Lorenzo
Bini Smaghi
● 地球温暖化
Project Syndicate FEB 21, 2017
A Conservative Plan to Combat Global
Warming
MARTIN
FELDSTEIN
FP FEBRUARY 24, 2017
Only China Can Save the Planet
BY
JACOB DREYER
● アジアの貯蓄
Project Syndicate FEB 21, 2017
Putting Asia’s Savings to Work in
Asia
ANDREW
SHENG and XIAO GENG
● インドの通貨改革
FT February 22, 2017
India’s bold experiment with cash
Martin
Wolf
● ドイツ
FP FEBRUARY 22, 2017
The Only Thing That Can Beat Merkel
Is Anti-Merkel
BY
PAUL HOCKENOS
SPIEGEL ONLINE 02/24/2017
'Rearmament Spiral'
A German Clash over Trump's NATO
Demands
By
Konstantin von Hammerstein
● エコノミストの思想
FT February 23, 2017
Kenneth Arrow, economist, 1921-2017
Tim
Harford
Project Syndicate FEB 23, 2017
Economists in Denial
ROBERT
SKIDELSKY
Bloomberg FEB 23, 2017
America Needs a New Milton Friedman
Noah
Smith
Bloomberg FEB 23, 2017
Economists Get Too Much Credit --
and Blame
Victoria
Bateman
● ロシアの戦争
FT February 23, 2017
Russia mobilises an elite band of
cyber warriors
Sam
Jones
FP FEBRUARY 23, 2017
Advice to Trump: Beware of Russian
Trolls
BY
MARK GALEOTTI
● 労働党の衰滅
FT February 24, 2017
Labour’s weakness leaves the Tories
free to do as they please
Nick
Pearce
● トニー・ブレアの反Brexit演説
Project Syndicate FEB 24, 2017
The Battle for Britain
TONY
BLAIR
(2月17日,トニー・ブレアはBrexit論争を再開することを求める演説を行った.その重要性に鑑み,ここに演説テキストの全文を載せる.)[ただし,以下は概略の紹介.]
イギリスの人々はEU離脱を投票で決めた.その意志は実行されねばならない.しかし,人々はBrexitの条件を知らなかった.それが明らかになれば,その決定を変える権利も持っている.
われわれの前にあるのは,残念ながら,国民投票が示した単純なものではない.イギリスが進んでいる道は「ハードBrexit」ではない.「いかなる犠牲を払ってもBrexit」である.
メイ首相やハモンド財務大臣の説明は,9か月前と大きく異なっている.メイは,国民投票に向けて,離脱がこの国にとっていかに悪いことか,経済,安全保障,世界に占める役割を損なうと指摘した.今,彼女は,イギリスが偉大さを発揮する「今の世代に1度きりの機械」であるという.
矛盾のがらくたが示すのは,メイとその政権が事態をコントロールしているのではない,ということである.彼らはバスを運転しているのではなく,操縦されている.ここには重大な論争が欠けたままである.なぜこれを続けることがよいのか,ということが問題だ.Brexitのキャンペーンで医療保険に使うといった毎週3億5000万ポンドの支出はどうなったのか?
確かに,イギリスの中にはヨーロッパからの移民流入や,公共サービス,賃金への影響を懸念する声がある.しかし,メイは最近,イギリスが必要としている移民について認めた.残りの8万人のうち,3分の1がロンドンに来て,食品加工や医療・介護の職に就く.彼らがロンドに外でイギリス生まれの人々から職を奪うこともありそうにない.
移民は,この国の安定性を脅かす,恐ろしい人々なのか? そうではない.全体としてみれば,彼らは勤勉で,税金を支払い,経済的な利益をもたらす.
ヨーロッパ以外からの移民がBrexitに影響したことは確かである.異なる文化圏から来た,同化しにくい人々だ.かつて,さまざまな問題についてバランスを取る議論が行われたが,今やBrexitとは移民の流入を管理することだけである.
しかし,国民投票が権限を与えたのは,「いかなる犠牲を払ってもBrexit」ではない.
もしわれわれが真に議会制民主主義を信じ,1度の国民投票で政府を決めたのではないなら,それに至ることだけが問題ではない.と指摘するべきだろう.なぜするのか? そのコストはどうか? それに伴う痛みに値するのか?
単一市場を失い,EUにおける影響力を失う.かつてない複雑な交渉を行う.ポンドの価値は下落し,われわれの経済は貧しくなる.
これらは看過できない.しかし,Brexitは政治が人々の不満を無視したから起きた.中欧の政治が問題に答えを示さない時,過激な主張がそれを利用する.しかし,政治の役割は,不満に応えることであって,それに同調することではない.
メイ政権が乗るバスを動かしているのは,Brexitのイデオローグたちだ.ヨーロッパの外でイギリスが経済を動かすとしたら,税率の低い,規制の少ない,オフショア・ハブとしての機能である.メイがヨーロッパの隣国を脅し,イデオローグが主張している.それはビジネス界が政府に求めるものだ.しかし,イギリス経済,税制,福祉のこのような再編成を,Brexitに投票した人々は望んだのか? 多くの有権者は,それとは逆に,もっと公平な資本主義,労働者に良い報酬をもたらす約束だ,と思っただろう.
右翼のメディアを含むBrexitの政治同盟は,プロパガンダを駆使して,さまざまな勢力を効果的に集めた.他方,労働党の弱さが,反対する声を彼らが無視するのを許している.
彼らは,人民の意志を変わらないという.それは変わる.EU離脱は避けられないという.それは回避できる.反対派は多数の国民の声を表しているし,国家を分断しているのはBrexit派である.
われわれは真の国益に従って行動するべきだ.
Project Syndicate FEB 24, 2017
Tony Blair’s Democratic
Insurrection
ANATOLE
KALETSKY
Brexitに関する政治家やメディアが,ブレアの演説を,反乱や「人民の敵」,「街頭闘争(内戦)」と呼ぶのはなぜか? 反対派は民主主義が機能するために必要な条件である.離脱派は,Brexitによってパンドラの箱を開け,さまざまな不満を解放した.そして,メイは国民投票を利用して,それらを解決する権限を得たと主張する.反対する者は,交渉を不利にする「裏切り者」である.
ブレアは,異なる道を示した.イギリスとヨーロッパの関係を,もっと合理的に考えて交渉することは可能である.議会は,民主主義の正当な機能として,国民を説得することだ.
● 資本移動
VOX 24 February 2017
On the fickleness of capital flows
Barry
Eichengreen, Poonam Gupta, Oliver Masetti
● 共産主義
NYT FEB. 24, 2017
What’s Left of Communism
David
Priestland
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The Economist February 11th 2017
Courting Russia
Financial regulation in America: The litter of the law
Russia and America: Champions of the world
Lobour mobility in Asia: Waiting to make their move
Israel and Palestinians: The ultimate fantasy
The Dutch election: Act “normal” or get out
Free exchange: It’s been a privilege
(コメント) アメリカとロシアの関係が改善するには,さまざまな問題が関係しています.金融規制に関するトランプ政権の姿勢も,中東和平やイスラエルとの関係も,疑わしいものです.
しかし,特に興味深いのは,アジアにおける労働力供給の大きな差異を地域間で移動させることで調整する,そのための政策が必要であること.オランダの総選挙がヨーロッパ移民政策に関する論争や政治的バランスの全体的移行を予告すること.トランプが語らない最も重要な「アメリカ・ファースト」の要素が,ドルの世界的な特権的地位をどうするのか,ということです.
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IPEの想像力 2/27/2017
2004年3月15日のReviewに書いたことが問われます。
「私の孫たちは多言語を話し,諸外国に散って,多くの隣人が不思議な音楽や食事を楽しみ,中には同性のカップルや,集団で養育を分担する集合家族が,緑の豊かな公園で談笑する.街のあちこちで,さまざまな宗教的儀礼による祝祭と葬礼が催されている.」(『グローバリゼーションを生きる』)
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オランダ人は非常に合理的で,講演会など,話が面白くなければ,さっさと退室してしまう,と読んだことがあります.Brexitに続いて,オランダが離脱するか,と注目されています.自由党PVVのウィルダース党首が,反ユーロ(反緊縮政策),反移民,反イスラムを掲げて,支持率トップになっている,と伝えられているからです.
オランダと言えば,運河のある,小さな国です.チューリップや風車の国,低地帯という国名のように,湿地や沿岸部を埋め立てて国土を作った.オランダの領有権をめぐってスペインとフランスの絶対王政が戦った.オランダ国王がイギリスを征服して国王になった.イギリスに先立って,近代的な中央銀行や、株式会社としての東インド会社を設立した.チューリップの球根が投機的な金融危機を引き起こした.北海油田によって富を得たゆえに,「石油の呪い」もしくは「オランダ病」で脱工業化を経験した.初代ノーベル経済学賞をヤン・ティンバーゲンが受賞した。労働者の組織化や団体交渉による富のより公平な分配を実現し,フルタイムとパートタイムの差別的扱いをなくし,雇用の弾力化,労働力の移動を促した.売買春やドラッグを合法化し,安楽死も合法化した.同性婚や性転換についても先進的な国.英語とドイツ語が混じったようなオランダ語を話す.そして,私は初めてオランダに行ったとき,小さなケーキ屋さんでも3か国語以上を話し,飛び切り美味しいケーキを売っていることに驚きました.
オランダは変化の起点,「台風の目」であり,オランダがウィルダースの影響を受けて大きく転換することは,ヨーロッパの政治・経済秩序が変わる予兆である,と考えられています.『グローバリゼーションを生きる』で、私はグローバル社会の1つの未来、多文化主義の理想を表しました。しかし、イギリス、オランダ、ヨーロッパは、それを拒みつつあります。
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アジアでも国際的な労働力移動の時代が始まるでしょう。The Economistは書いています。「アジアには世界人口の半分以上が住む。しかし国際移出民に占める割合は34%でしかなく、国際移入民に占める割合はたったの17%である。」
急速に豊かになる地域(特に、シンガポール、香港、台湾、韓国)もあれば、貧しく、仕事のない若者たちがますます増大する地域(フィリピンなど、東南アジア)もあるのです。これらの地域が労働力移動によって結びつけば、互いに多くの問題を解決し、事態を改善できます。
ヨーロッパとは違い、アジアの受入れ諸国は移民の管理を強め、定住化を回避するとともに自国の労働需要に合わせるため法律や制度を強化しました(職場や賃金の規制:帰国を促すために、予め帰国費用を支払わせ、賃金の一部を集めて、帰国してから受け取る:移民労働者の雇用に対して雇用主は税金を支払う)。日本は、そもそも移民を受け入れるより、企業が海外に工場を移転しました。中国も、移民労働者の獲得競争に参加します。
もし成功すれば、高齢化する社会は3つの利益を受ける、とThe
Economistは指摘します。移民は労働供給を増やし、女性の労働市場参加を促す安価な家事労働を提供し、出産や養育のコストを下げて子供、すなわち、未来の労働者を増やす。
****
政治の主要な争点(成長、雇用、分配、社会的な機会、公共財)が、次第に、移民や安全保障に関心を奪われ、政党の分割や連立政権の条件も決まるようになっています。エスニック政治や、極右の宣伝カーによって、選挙や議会の論争が支配される結果、重要な改革は無視されます。あるいは、まったく違う論争で勝利した後、その勢力が強い権力を得て、社会を変える介入を強めます。
分断ではなく、地域の統合化を目指す、厚い・深い政治的コミュニティーを築くために、重要な政策領域の知識・情報・論争を組織することが、現代の政治国家の新しい役割だと思います。
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