IPEの果樹園2017

今週のReview

2/20-25

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フリン補佐官の辞任 ・・・トランプのアジア政策 ・・・北朝鮮,ミサイル,暗殺 ・・・イスラエルの住民破壊 ・・・独裁者とウォーターゲート ・・・メイ演説と議会 ・・・ギリシャ債務危機とIMF ・・・中国と国際秩序 ・・・大企業と経営者 ・・・アメリカの新保護主義 ・・・ヨーロッパの新しい安全保障協定 ・・・トランプが安倍に学ぶこと ・・・情報統制と戦争 ・・・ドイツ政治の活性化 ・・・トランプの間違った反イスラム主義

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


● フリン補佐官の辞任

FP FEBRUARY 10, 2017

White House Rocked by Flynn’s Overtures to Russia

BY DAN DE LUCE

The Guardian, Tuesday 14 February 2017

The Guardian view on Michael Flynn’s resignation: not a Whoops but a Wow

Editorial

ホワイトハウスの安全保障担当補佐官が辞任した。このポストはアメリカ政府の最重要ポストであり、大統領に最も近いスタッフとして安全保障に関して発言する。過去の政権でも、ヘンリー・キッシンジャーなど、重要な人物が就任した。これまで1か月足らずで辞任したケースはない。これは閣僚人事の小さな曲折ではなく、トランプ政権構想の完全な破たんである。

辞任は、政府が説明するような、政権内の不誠実な情報伝達によるのではなく、トランプ政権がロシアのプーチン大統領を宥和する戦略から生じた。トランプ政権と情報部との不信感、トランプの選挙戦に関わるロシアの役割にも関係がある。その意味で、この辞任劇こそ、ドキッとするどころか、叫びたくなる。

大統領候補や次期大統領が就任前に国際関係を動かしたケースは過去にもあった。最も深刻なケースは、リチャード・ニクソンが196810月のパリ和平会談開催を、秘密裏に南ベトナム政府と謀議し、阻止したことだ。大統領選挙が迫る中で、和平が民主党候補Hubert Humphreyに有利になることを嫌ったからだ。ニクソンが個人的な政治目的で和平会談を延期した結果、アメリカ人兵士2万人以上と数え切れないほど多くのベトナム人が死んだ。

トランプがロシアとの関係改善を図る理由も汚れたものだ。ロシアは、オバマ政権が科した制裁を嫌っていた。トランプとフリンはその取りやめをロシア高官と相談したのではないか。それはあまりにも行き過ぎた、拙速な、そして非常に危険な相談である。

NYT FEB. 14, 2017

Flynn Is Exactly What Trump Deserves

Frank Bruni

NYT FEB. 14, 2017

Why Trump Is Right on Russia

By ANATOL LIEVEN

アメリカ外交関係者の間で最も批判されたのは、トランプ政権がロシアとの関係改善を進めたがっていることだった。その親ロシア政策は、陰謀論やスキャンダルになっていた。

これは無意味な議論だ。アメリカとロシアが和解を模索するのには、東ヨーロッパから中東まで、多くの理由がある。問題は、アメリカがそのグローバルな覇権を求める欲求を抑制できるかどうか、である。

中国と違って、ロシアはアメリカに対する新興の挑戦者ではない。ロシアは、旧影響圏の断片を集めることに苦心している。さらに、ロシアはその本質において、イスラム過激派と戦うアメリカの同盟相手にふさわしい。ロシアとの緊張を緩和することは、より重要な地政学的問題にアメリカが集中することを可能にする。

究極的に見て、アメリカはロシアと協力するしかない。アメリカは旧ソ連諸国を支援しようとしたが、それは無駄だった。アメリカとNATOは、2008年のグルジア、2014年のウクライナを助けて戦闘を始めなかった。将来もそうだろう。NATO加盟に関する可能性も、何年も議論しているが、無意味である。EUの人々はすでに多くの問題を抱えており、予測できる将来において、ウクライナの加盟を助けることはないだろう。シリアにおいて、アサドを辞任させること、彼に反対する聖戦主義者たちを抑えることで、アメリカと同盟諸国とは意見が分かれた。

ロシアとの関係修復はウクライナから始めることができる。2015年のミンスク合意があるからだ。その中でロシアはウクライナ東部の独立派を武装解除することに合意した。ウクライナは新憲法を定め、独立を宣言した東ウクライナのドンバスに高度な自治権を認めた。アメリカはロシアと協力して、ドンバスの非軍事化と国連平和維持軍による保障を実現する。また、ロシアのクリミア併合を認め(それをロシアに諦めさせるには戦争するしかないから)、合法的に承認しないとしても、制裁は解除することだ。

アメリカとNATO本部は、そのような妥協をすればロシアの攻撃を強めるだけだ、という。しかし、それは、西側エリートたちが内部の諸問題、すなわち、移民、工業の衰退、グローバリゼーションの問題を解決できないことから、焦点を外に向けたがっているだけだ。子供にもわかることだが、戦略的なフロンティアは、1988年と現在とを比べて、明らかに西側がロシアを侵食している。この数十年のロシアの行動は、とくには間違った、犯罪的な行為もあったが、圧倒的に西側の侵略に反発するものだった。ウクライナがロシアにとって、歴史、エスニック、文化、戦略、経済の点で最高の重要性を持つことは、他の東欧諸国と比べられない。

シリアでも、アメリカと西側諸国は戦争を避けた。ここでもトランプはロシアと協力することを計画している。ロシア、イラン、トルコが支援する以上、アサド体制は崩壊しないだろう。もし将来、その転換を交渉するとしたら、ロシアとイランの参加は欠かせない。イランは、イラクとシリアにおける聖戦主義者との戦いで不可欠の同盟国である。その点では、ホワイトハウスに矛盾がある。トランプと、最近辞任したフリンは、イランとの敵対も唱えていたからだ。また、イランが核合意に反する場合、アメリカはロシアに、イランへの新しい制裁を同意するよう求めるはずだが、現状では不可能だ。

中国は、アメリカ外交に刺さる他の主要問題だ。トランプは中国との敵対を示唆してきた。しかし、ロシアはそのような戦略に決して協力しない。2600マイルの国境を共有し、軍の圧倒的な人数の差を考えれば、中国と敵対姿勢を取るようロシアを説得することはできない。しかし、ロシアとの関係改善は、最新鋭の武器をロシアが中国に売却しないように制限し、中国と近隣諸国が南シナ海の島の領有で妥協するように国連が介入するのを助けるだろう。

冷戦終結以降、ロシアはむやみに反米を掲げることには反対してきた。旧ソ連諸国において、ロシアのエスタブリシュメントが、その是非はともかく、ロシアの核心的な国益とみなすものを、ロシアは守ったのだ。

ロシアもアメリカとの関係改善を望むが、それはアメリカのグローバルな指導性を認めるものではない。トランプ政権がそれを望むなら、修復の試みは失望に終わるだろう。

NYT FEB. 14, 2017

With Michael Flynn Gone, Russia Sees a Different Trump

By NEIL MacFARQUHAR

FP FEBRUARY 14, 2017

The Fog of Trump

BY DAVID ROTHKOP

FP FEBRUARY 14, 2017

Who Can Right Flynn’s Dysfunctional National Security Council?

BY JOHN HUDSON, PAUL MCLEARY

FP FEBRUARY 14, 2017

Don’t Trust Trump’s Vows to Keep Sanctions on Russia

BY TOM MALINOWSKI

Bloomberg FEB 14, 2017

The Political Assassination of Michael Flynn

Eli Lake

Bloomberg FEB 14, 2017

Putin Is Getting All He Ever Wanted From Trump

Leonid Bershidsky

Project Syndicate FEB 15, 2017

How Europe Should Deal With Trump

WOLFGANG ISCHINGER

Project Syndicate FEB 15, 2017

Trump the Reluctant Multilateralist

BARRY EICHENGREEN

アメリカのドナルド・トランプ大統領は多国間主義を信じていない。NATOだけでなく、その他の機関the International Monetary Fund, the World Bank, the World Trade Organization, and the Basel Committee on Banking Supervisionでもそうなのか?

しかし、その意見はニュアンスを含む。「アメリカ・ファースト」を実現する上で、国際機関は役に立つだろう。もしヴェネズエラやメキシコが、彼の政策によって危機に陥った場合、IMFを介して協力することは有益である。トランプが2国間交渉を優先する分野もある。しかし、気候変動を抑制するためのパリ協定も、BISにより自己資本規制も、自国だけで不利にならないように、公平な競争の場を維持するために必要だ。

彼は一方的に関税を高くするかもしれない。それはWTOのルールに違反する。国際的なルールがトランプを抑えるかどうか、われわれは見極める必要がある。

FT February 16, 2017

Russia’s receding hopes of a bargain with Trump

FT February 16, 2017

Donald Trump, Vladimir Putin and a fatal attraction

Philip Stephens

YaleGlobal, Thursday, February 16, 2017

Can Trump and Putin, Despite Uproar, Still Make a Deal?

Richard Weitz

FT February 17, 2017

Moscow resets expectations as disorder reigns in Washington

Kathrin Hille

Project Syndicate FEB 17, 2017

Mutual Assured Deterrence

SERGEI KARAGANOV


● トランプのアジア政策

Bloomberg FEB 10, 2017

Trump's Chance to Walk Back His Asia Bluster

Noah Feldman

FT February 14, 2017

Donald Trump’s tack towards the mainstream on Asia


● 北朝鮮,ミサイル,暗殺

NYT FEB. 11, 2017

North Korea Fires Ballistic Missile, Challenging Trump

By CHOE SANG-HUN

The Guardian, Monday 13 February 2017

North Korea’s missile test is a high five from one narcissist with bad hair to another

Paul Mason

The Guardian, Wednesday 15 February 2017

Kim Jong-nam was assassinated. But was it on his brother’s orders?

Aidan Foster-Carter

FT February 17, 2017

North Korea’s young marshal flexes his muscle

Bryan Harris, Tom Mitchell and Jeevan Vasagar

Project Syndicate FEB 17, 2017

The Art of the North Korean Deal

YOON YOUNG-KWAN

選挙戦でトランプは金正恩とも会う、と言った。そうするべきだ。

先制攻撃はむつかしい。韓国は決して同意しない。北朝鮮が固形燃料を開発したとすれば、標的と攻撃時期を決めることができない。

制裁の強化も難しい。中国は北朝鮮が崩壊することを望まない。歴史的に、中国は朝鮮半島の体制を、自国の安全保障の点から、懸念している。

北朝鮮の核武装を破棄するには、トランプが2つの取引を成立させるしかない。中国に対して、北朝鮮の体制転換は行わない、と約束する。当面、THAADの配備を撤回する。北朝鮮に対して、安全保障を約束する。核武装の破棄に向けて、関係を正常化する。


● イスラエルの住民破壊

NYT FEB. 11, 2017

Israel Bulldozes Democracy

By AYMAN ODEH

イスラエルのネタニヤフ首相が、今週、ワシントンを訪問し、トランプ大統領と会談する。彼らはおそらくその共通の政治思想について議論するだろう。憎悪と恐怖による権力だ。イスラム教徒のアメリカ入国を禁止する政府と、新しい入植者がパレスチナ人から土地を奪い取る法律を定めた政府とは、さぞ共鳴することだろう。

トランプのように、ネタニヤフは2015年の選挙をあからさまな人種攻撃で勝利した。それ以来、彼はパレスチナ市民を差別してきた。特に苦痛を与えるのは、政府の人種差別的、不公平な土地・住宅政策だ。

アラブ人はイスラエル人口の5分の1を占めるが、法的には2.5%しか土地を保有していない。国家創設以来、700以上の町や都市がユダヤ人のために建設されたが、アラブ人のためには1つも新設されなかった。

イスラエル南部の10万人以上のアラブ系市民は特に危機に直面している。Naqab砂漠にある35の村が、国家によって「承認」されていないのだ。この未承認村落の住民はイスラエル国籍を持つが、国家は、水、電気、道路、学校、など、基本的ニーズを供給しようとしない。さらに、イスラエル政府は村落の存在を認めず、国家による撤去命令の恐怖の下で暮らしている。いつ警察や来て、彼らを強制退去させ、住居をブルドーザーで破壊するか、それさえ分からないのだ。

FP FEBRUARY 13, 2017

Memo to Trump: Iraq Is Too Big to Fail

BY MICHAEL KNIGHTS

Project Syndicate FEB 14, 2017

Trump’s Palestine Quandary

DAOUD KUTTAB

NYT FEB. 14, 2017

Can This ‘Special Relationship’ Be Saved?

By STEVEN SIMON and AARON DAVID MILLER

FP FEBRUARY 16, 2017

Trump’s Two-State Tap Dance Won’t Last

BY DANIEL SHAPIRO

NYT FEB. 17, 2017

The One-State Two-State Blues

Roger Cohen

2国家案が実現する現実的な根拠は何もない。アメリカがそれに固執するのは指導者たちの怠慢であり、そのイチジクの葉の陰に最悪の状態を隠しているのだ。

ネタニヤフが知っているように、「1国家」とはパレスチナ人も唯一「好む」ものである。そこにおいて彼らは完全な、平等な市民権を得て、投票する。人口増加による未来に、ユダヤ人国家が終焉する、とわかる。あるいは、イスラエルは膨大なパレスチナ人を排除した、非民主的パーリア国家になる。

イスラエルはヨルダン川西岸を併合しない。なぜなら250万人のパレスチナ人がユダヤ国家の解体に加わるからだ。入植地の拡大は続くだろう、それはほとんど50年も経つが、40万人の入植者は言葉以上に「パレスチナ国家」の彼らの考えを示している。パレスチナ政府は無能なまま、人々の怒りが規則的に爆発する。

トランプ=ネタニヤフの熱愛は、パレスチナ民衆への侮蔑を共有している。その偏見こそが政策である。1国家の未来はどこにもない。


● 独裁者とウォーターゲート

NYT FEB. 11, 2017

How We Overcame Tyranny Before

By ARIEL DORFMAN

NYT FEB. 11, 2017

Can This Presidency Be Saved?

Ross Douthat

NYT FEB. 11, 2017

Are Democrats Falling Into Trump’s Trap?

Frank Bruni

The Guardian, Sunday 12 February 2017

Instead of draining the swamp, Trump has become Wall Street’s best buddy

Will Hutton

Bloomberg FEB 12, 2017

Mr. President, I'd Like to Introduce You to Andrew Jackson

Albert R. Hunt

NYT FEB. 13, 2017

The Power of Disruption

Charles M. Blow

FP FEBRUARY 13, 2017

Trump’s Big Mouth Has Already Weakened America

BY MAX BOOT

Project Syndicate FEB 14, 2017

How to Be a Misleader

LUCY P. MARCUS

NYT FEB. 14, 2017

How Should One Resist the Trump Administration?

David Brooks

NYT FEB. 15, 2017

On the Road to Another Watergate?

By TIM WEINER

フリンMichael Flynnが国家安全保障会議から,突然,辞任したことは,過去になかったことのように見えるが,そうではない.しかしその結果は,アメリカ合衆国を地図の無い海域へ向かわせるだろう.

レーガン大統領の下でも2人,Robert McFarlane and John Poindexterが国家安全保障会議から辞任した.彼らはアメリカの法律と良識に反して,イランへ極秘に武器を売却し,中米の反政府組織に資金を渡していた.

かつて,リチャード・ニクソンが当選したとき,1969年,リチャード・ニクソンの就任前に,キッシンジャーがソ連側と情報交換した,という有名なケースがあった.しかし,キッシンジャーとフリンは違う.フリンの行動については,FBICIAが捜査している.

ここにはウォーターゲートにつながった嫌な臭いがする.ニクソンの辞任に至る事件は,19694月に始まっていた.就任演説から3か月後に,大統領はキッシンジャーに命じたのだ.秘密情報の不快なリークを止めるため,彼のスタッフにわなを仕掛けろ,と.そのような命令を次々と出して,ついには憲法に背くこととなった.

Bloomberg FEB 15, 2017

President Trump's Boris Yeltsin Moment

Leonid Bershidsky

ドナルド・トランプ大統領は,彼の安全保障担当顧問の辞任を騒ぐメディアに憤慨した.「極秘の情報が漏れることこそスキャンダルなんだ.「情報」がキャンディーみたいに違法に提供されている.」と,彼は水曜日にTweetした.「まるでアメリカじゃないぞ!」 もちろんそうだ.これはアメリカ的ではない.ロシアである.それも1990年代の.

トランプが勝利した直後,ロシア生まれの政治学者Andrei Korobkovが論文を発表し,ボリス・エリツィンとの類似点を述べた.2人は支配的なエリートに敵対し,その国の政治的な規範を打ち破って,有権者の大きな支持を得た.アメリカのエリートがトランプに対して行ったあからさまな妨害は,1987-1991年にロシアのノーメンクラツーラの行動とそっくりだ.

権力を得てからも,エリツィンは政府官僚層の抵抗や,今,トランプが苦しむ以上の官僚たちの情報漏えい,指導者に関する苦情,偽情報によって統治を損なわれた.経済自由化は,エリツィンが改良の支配を無力化するために推進したものであった.そして,組織のヒエラルキー的機能を奪うために,治安機関をさまざまに分解し,統合した.

ノーメンクラツーラは議会の多数を支配し,エリツィンを2度も弾劾決議の瀬戸際に追い込んだが,可決できなかった.それでもエリツィンが2期目を終えずに辞任する前から,重病のために次の選挙には李候補できない,という話が流れていた.

諜報機関・秘密警察,警察,軍,などを動かす"deep state"を変えることに,エリツィンは失敗した.プーチンは自由化や改革をすべて逆転させた.トランプには成功するチャンスがあるだろう.しかし,もしトランプも失敗したら,彼と組むつもりのプーチンの側近が機会を失うだけではない.それはプーチンの瞬間,政府機関が個性的な政治家を排除し,支配を取り戻す瞬間である.非常にロシア的な.

FP FEBRUARY 16, 2017

Emperor Donald the Weak

BY DEREK CHOLLET

NYT FEB. 17, 2017

What a Failed Trump Administration Looks Like

David Brooks

FT February 18, 2017

Trump is stirring memories of Nixon and Watergate

Elizabeth Drew


● メイ演説と議会

The Guardian, Sunday 12 February 2017

Brexit can wait. Europe’s pressing worry is its fracturing eastern democracies

Jan Kubik

FT February 12, 2017

President Le Pen – small risk, big shock

Gavyn Davies

FT February 13, 2017

How a post-Brexit redesign can save the capital markets union

Reza Moghadam

FT February 14, 2017

Theresa May will rue her failure to lower expectations

Janan Ganesh

FT February 15, 2017

Workplaces can be islands of tolerance in unpleasant times

Michael Skapinker

NYT FEB. 15, 2017

Theresa May’s Empire of the Mind

By TOM WHYMAN

先月、EU離脱交渉に向けたイギリスの姿勢を示すテリーザ・メイ首相の勇猛な演説を受けて、右派タブロイド紙The Daily Mailの第1面にメイの漫画が載った。それは彼女がドーヴァー海峡のホワイトクリフから頭を剃らに向けて誇り高く突き出す姿であった。EUの旗を踏み潰す彼女の背後には、ユニオンジャックがはためく。

その絵は、セシル・ローズCecil Rhodes を描いた、1892年の有名な漫画“The Rhodes Colossus”の好戦的な姿勢とよく似ている。ローズは、カイロからケープタウンまで、アフリカをまたいでいた。「われわれはまずい取引から手を引く。その代償を支払うのはEUだ。」 漫画には、今やメイの親友となったトランプに似た説明が付けてある。

正気な者から見れば、メイの計画は全くの愚策である。ヨーロッパ単一市場を棄てて、移民政策の完全な支配権を手に入れる。それは、ポピュリスト的な支持を得るために、基幹産業や貿易相手国を深く傷つけることだ。この計画にほとんど何の影響も及ぼせないような形でメイに権限を与えた下院の決議は、リベラルな民主主義の中で、立法府としての役割を自ら否定するものだ。Brexitは、同時に、地方を離反させる。スコットランドは、国民投票以来、再び独立志向を強め、北アイルランドも和平への影響を恐れている。

この混乱のすべてが、イギリスの国民的なアイデンティティに深く関わっている。Brexitは帝国のノスタルジー、イギリスは例外だという神話に結び付いている。それは、特に2008年以後、世界の強国ではもはやなくなっている現実に離反するものとして現れた。Brexit後のイギリスを、メイは「グローバル・ブリテン」と表現した。イギリス人とは、ヨーロッパの地平を超えて、世界中に広がる機会を得るために拡大し、帝国を築く国民である。戦時のポスターや、旧時代を示す楽しい小物が愛される。世界金融危機により高まった中産階級の不満を吸収して、Brexit派は現実世界から撤退する。

それは最悪のシナリオを実現するだろう。スコットランド、北アイルランド、さらにはウェールズも失った、小さな、孤立した、1党支配国家のイングランドが、自国の特別な栄光という幻想に取りつかれた、教訓を説く学校教師のような保守派に支配される。そこに職場はない。


後半に続く)