IPEの果樹園2017

今週のReview

2/6-11

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「黙れ」 ・・・TPPの破棄 ・・・インドネシア,ミャンマー,マレーシア ・・・外交と危機 ・・・株式ブームと権威主義 ・・・NAFTAと国境の壁 ・・・トランプ政権の評価 ・・・中国のグローバリゼーション ・・・難民政策 ・・・ロシアの国際戦略 ・・・アメリカの移民・難民制限 ・・・トランプの経済戦略 ・・・トランプとヨーロッパ ・・・ドイツへの脅威 ・・・老人の共同住宅 ・・・植民地主義とヨーロッパ興隆 ・・・戦略家バノン

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


● 「黙れ」

The Guardian, Wednesday 25 January 2017

Welcome to dystopia – George Orwell experts on Donald Trump

Jean Seaton, Tim Crook and DJ Taylor

オーウェルの『1984年』を読み返すのはつらいことだ。かつて冷静に、知的な距離を措いて読むことができた本が、今は、身近な現実、苦く、ショッキングな現実に思える。

ポスト真実の世界は、オーウェルのニュー・スピークが描くディストピアと明らかに共通する。イギリスには十分すぎる専門家がいる、とMichael Goveが冷笑的なコメントを述べたことは、2+2=5 の世界に近い。1984年の世界では、専門家たちが時によって信じることを変える。今は、虚偽でさえも真実なのだ。

それはプライヴァシーの問題に及ぶ。権威主義体制は人々の感情や魂を要求する。オーウェルの双方向テレスクリーンはソーシャル・メディアを予告するものだ。トランプ政権の顧問であるKellyanne Conwayは、ジョージ・W・ブッシュ政権でも2002年に「新しいアメリカ帝国は『それ自身の現実を創り出す』」と発言した人物である。

1930年代と同じように、戦争は政治家たちの信用を破壊した。イラクとアフガニスタンの戦争に関する嘘に続いて、2008年の金融危機が起き、銀行家の得るボーナスが人々を大都市圏のメディアに不信感を強め、トランプの示す偽りの約束に引き寄せた。

NYT JAN. 26, 2017

Trump Strategist Steve Bannon Says Media Should ‘Keep Its Mouth Shut’

By MICHAEL M. GRYNBAUM

ホワイトハウスの主任戦略家Stephen K. Bannonバノンは、繰り返しメディアを、彼らは選挙結果を予測できなかったことで粉砕されたし、現政権に対する「野党」である、と批判した。電話インタビューにおいて、「メディアは混乱し、恥をかいたのであり、しばらくは黙って(政府のいうことを)聞くべきだ」と語った。

The Guardian, Friday 27 January 2017

A top White House official told the media to 'keep its mouth shut'. That's a threat

Francine Prose

Project Syndicate FEB 2, 2017

Why Millennials Will Reject Trump

JEFFREY D. SACHS


● TPPの破棄

Bloomberg JAN 25, 2017

Trump Can't Kill the TPP

Mihir Sharma

ドナルド・トランプ大統領はTPPへの支持を撤回し、アメリカ企業の競争を困難にした。労働者を理由に、歴史上初めて労働基準を取り込んだ通商協定であるTPPを放棄した。アメリカの同盟諸国に背を向け、彼らを中国の側に追いやった。

TPPには2つの目的がある。1.貿易障壁は、数十年前と異なり、関税ではない。それは複雑で、互いに矛盾した規制の体制、国家リスク、国有企業への政府支援、など、貿易が直面する諸問題だ。TPPはこれらに対する答えであった。

2.中国が国際貿易で重要な役割を占めるとき、そのルールを決めることについて、予めバランスの取れたルールを決めることを目指した。トランプはこの目的を重視しないかもしれないが、アジア諸国は明らかに重視する。たとえば、中国が指導するRCEPは、インドを含み、アメリカは含まないが、製造業のサプライ・チェーンを強化するが、国内改革や規制のハーモナイゼーションを求めない。

その貿易ルールは、競争相手ではなく、中国のために決められるだろう。グローバルな製造業の中心となった中国は、国内生産コストが上昇し始めても、その地位を確保するためにルールを利用するだろう。それは東南アジア諸国が長期的に観て望むものではない。彼らは他の市場へもアクセスし、国境を超えて迅速かつ効果的なサービス取引を求め、さらに新しい貿易ネットワークを目指すのであって、旧ネットワークに固定されたくないだろう。

アメリカを除く11か国がTPPに残された。TPPの原理が新しい規範となるかが問われている。その焦点はインドである。インドはTPPを疑っていた。自国の製薬産業を保護し、その製造業が競争力を損なうような複雑な規制を抱えているからだ。インドの政策担当者たちはTPPの崩壊を歓迎するだろうか?

それは間違いだろう。インドが、その国内労働市場に毎月流れ込む何百万もの人々を雇用するためには、国内市場だけでは十分ではない、という真実に気づくはずだ。インド企業も輸出しなければならず、TPP型の合意が彼らに競争力をもたらす唯一の道である。インドが好む、旧式の「関税優先」アプローチは、事実が示すように、生き残れない。

トランプによる破棄が意味するのは、TPPがアメリカというシンボルを失うことである。アメリカはこれまでアジアの指導的役割を担ってきた。トランプにはその意志がない。

しかし、TPPの戦略的な有益さは変わらない。それは各国内の多くの利益集団が要求することに微妙なバランスを取り、同時に、新しい貿易パターンが登場することにも道を拓くものだ。アジアの貿易は死なず、貿易とともに成長し続けるなら、そのバランスは次の制度に引き継がれる。

トランプがペンでそれを破棄することはできない。

NYT JAN. 27, 2017

Pressure From Trump May Delay a Factory’s Exit, but It Won’t Stop It

By JUSTIN WOLFERS

FP JANUARY 27, 2017

It’s Time to Think for Yourself on Free Trade

BY DANI RODRIK

自由貿易の目的について、エコノミストたちは、効率的な、グローバルな資源配分を妨げる障壁を取り除き、世界で最も貧しい人々を助けることだ、と主張する。しかし、このような意見は簡単な思考実験でも否定できる。

通商条約の交渉を担当する者たちは、もしTPPなどの通商条約をすべて取り除いて、その提唱している目的を達成するとしたら、何を考えるだろうか? それは関税率でも、知的所有権でも、投資規制でもない。

彼らは、国際労働力移動の障壁を取り除くだろう。そのために、ある種の一時労働許可ビザを発行する条約に合意する。それは(適切に行えば)国内と世界の経済的なパイを拡大すること以外は何も生じず、しかもグローバルな分配状態を改善するだろう。

もちろん、それは政治的な事情から現実に起こる見込みがない。貿易は、政治的、社会的な目的を犠牲にして、経済的目的を達成するものとは考えられていない。経済的効率を高め、機会を増やす、という彼らの目的は、現在の貿易体制について、経済的な意味ではなく、社会的・政治的な意味で理解されている。

これを示すために、次のような思考実験を行う。ハリーとジョンは、それぞれ企業を持っており、競争している。次のようなケースを、あなたはどう思うだろうか?

1.ハリーは厳しい労働と貯蓄で投資を増やす。新しい技術を取り入れ、ジョンの企業を圧倒する。その結果、ジョンとその労働者は職を失う。

2.ハリーは、ドイツの供給業者から安価に仕入れて、ジョンに勝つ。

3.ハリーは、供給をバングラデシュの業者にアウトソーシングする。その業者は12時間労働制を採用し、極度に悪い環境で労働者たちを働かせている。

4.ハリーは、バングラデシュから一時雇用契約で労働者を輸入する。その労働環境は国内の労働・環境・安全の基準に違反している。

純粋に経済的な視点では、これらのシナリオは「同型」である。公式には区別できない。その国の経済的なパイを同じように増やすからだ。(ハリーは、ジョンが失うよりも、大きく増やす。)

しかし多くの人はこれらのシナリオに異なった反応を示す。特に、シナリオ34は問題だと思うだろう。4は明らかに違法であるが、その結果は3と同じである。なぜわれわれは3を認めるのに、4は受け入れないのか?

この思考実験から次のことがわかる。ある種の国際競争は、再分配として受け入れ可能な国内の規範を否定する可能性がある、ということだ。同じことは、国内の税制を破壊するタックスヘイブンや、国内の安全基準を損なうような、安全基準の実施が甘い国からの輸入についても言える。

貿易は国内の再分配をもたらすから問題だ、という意見がある。しかし、市場経済では他のすべてのことが再分配をもたらす。技術変化や市場競争は再分配の連続だ。さらに、特定の熟練に偏りのある技術革新や、最低賃金法の実施は、貿易よりもはるかに大きく所得を再分配する。貿易だけを非難することは間違いだ。

ここで、われわれは異なる社会的・政治的な貿易を批判するに至る。貿易は、われわれの制度に体現された社会規範を破壊する、という意見だ。一国内で社会的な取引が成立し、法律や規制に実現されていることを、貿易が破壊するかもしれない。思考実験のシナリオ3である。貿易は、裏から社会的な合意を掘り崩し、ゲームのルールを秘密裏に変形する。貿易は、単なる市場関係ではなく、国内制度や、国内の特定集団に不利になるような制度の改変をもたらす手段でもある。それゆえ、このような貿易を阻止するために介入することは認められるだろう。自国の衛生基準や安全準を維持するために、すでに各国が行っていることだ。

「公正貿易」 ‘fair trade’ 論はこの点に関係している。エコノミストたちはこれを、自国の利益を守るための保護主義とみなす。しかし、自国の利益はすでに、企業に有利な形で、法律に実現している。「公正貿易」の考え方を放棄するのではなく、むしろこれを拡大するべきだ。シナリオ3のソーシャル・ダンピング論がそれである。

このような考えを認める利点は、国内の法によって認められた政治的枠組みを損なう貿易を、そうでない貿易から、明確に区別することだ。貿易相手国が、低生産性による低賃金なのか、労働者の権利を否定した低賃金なのか、明確に区別すべき状況がある。国内の再分配に与える影響は同じだが、不公正な貿易として否定されるのは後者である。

ソーシャル・ダンピングの可能性を認めないことで、その解決策を求めない通商分野の官僚たちは、貿易に関するポピュリストやデマゴーグに道を開く。一部の地域協定では、相手国の労働・環境・社会基準を「改善」する条項を含むが、それは実際に機能していない。自国の基準を破壊する貿易を阻止することは合法だが、自国の基準を外国に輸出することはそうではない。

こうした公正貿易論は反貿易 anti-trade 論ではない。その逆である。グローバルにみて、公平さの原理は、より貧しい国が成長する余地を与えるものだ。それは、知的所有権のルールや、産業政策の禁止、資本勘定の規制禁止、投資家の権利保護、という現在の地域協定が求めるものを、一切前提していない。

ドナルド・トランプのようなポピュリストが正しく指摘した貿易のもたらす悪弊とは、「公平さ」を誇張している。エコノミストが言うように、現実の経済問題、特に脱工業化と不平等の拡大に対して、貿易は小さな意味しか持たない。それらにはセーフティーネットの拡充や貿易以外の政策で対応するべきだ。しかし、エコノミストたちは貿易のもたらす影響を軽視し続け、人々がソーシャル・ダンピングに関して持つ不満を理解できなかった。

ソーシャル・ダンピングを意識する進歩派や労働組合は、グローバル・ガバナンスによって解決することを唱えるが、それは無駄である。最悪の場合、ポピュリストに利用される。むしろ、グローバル市場への開放と国民国家の権限との間に、健全なバランスを回復することだ。

貿易は、経済的利益や機会だけでなく、社会契約にストレスをもたらすのだから。

NYT Jan. 31, 2017

Trump and Trade: Extreme Tactics in Search of a Point

Eduardo Porter


● インドネシア,ミャンマー,マレーシア

FT January 26, 2017

Indonesia: A nation’s tolerance on trial

Ben Bland

インドネシアの首都、ジャカルタの市長Basuki Tjahaja Purnamaは、キリスト教徒であり、信仰やエスニックの違いによる攻撃に対して、声を震わせて反論する。インドネシアは世界最大のイスラム教徒を持つ国であり、その首都を近代的な、多文化都市に改変することを、市長は推進してきた。その再選が、イスラム教徒に対する「信仰の冒涜」という告発によって脅かされている。

215日のジャカルタ市長選挙の次には、2年後、ジョコ・ウィドドの再選を賭ける大統領選挙がある。

FT February 2, 2017

Myanmar: the military-commercial complex

NYT FEB. 2, 2017

A Malaysian Trilogy

By CHIN-HUAT WONG

マレーシアの首相Najib Razakは、いかにして政府投資信託から10億ドルもの富を得たのか? それは世界最大規模のマネー・ロンダリングである。しかし、アメリカ司法省の告発にもかかわらず、マレーシアの司法も、与党UMNOも、国会も、この問題を取り上げない。辞任を求めるデモも、彼の政治的支配を弱める様子はない。一党支配の民主主義は機能していない。


● 外交と危機

FP JANUARY 26, 2017

Trump’s China Policy: ‘This Is How You Stumble Into a Crisis’

BY DAN DE LUCE

Project Syndicate JAN 27, 2017

Can Trump Manage North Korea?

CHRISTOPHER R. HILL

トランプが確実に直面するのは、北朝鮮の危機である。彼はTwitterで「そんなことは起こらない!」と書いた。しかし、なぜそう言えるのか、はわからない。

北朝鮮が核弾頭を生産し、大陸間弾道ミサイルを開発することは、すでに秘密ではないし、これを阻止する優れた選択肢は存在しない。東アジアには、トランプが直面する複雑な状況がある。南シナ海における中国の領土要求、韓国政府の崩壊、日韓関係の悪化。

選挙後、トランプとその政権幹部は、中国の戦略的な地位を脅かして、貿易でもっと有利な条件を得られる、と考えたようだ。「1つの中国」政策を見直すと脅せば、中国政府は譲歩するだろう、と。

しかし、トランプの言葉をまねるなら、「そんなことは起こらない!」 中国は建設の下請け業者ではないのだから。アメリカの新政権を揺さぶる手段を持っている。長期的な政略を脅すなら、2国間関係を建設的に維持することはむつかしい。米中間の不信感が増大するだけだ。

ガバナンスとは優先順位を決めることである。アメリカの中後木外交はしばしば多くの目標を掲げ過ぎた。アメリカ政府は、本気で、北朝鮮の脅威を抑えるよりも、中国との貿易関係を有利にすることを優先するのか?

FP JANUARY 30, 2017

China’s Happy to Sit Out the Nuclear Arms Race

BY MELISSA HANHAM

FP FEBRUARY 2, 2017

Trump Could Take Obama’s Drone War Further Into the Shadows

BY MICAH ZENKO


● 株式ブームと権威主義

FP JANUARY 26, 2017

Forget Dow 20,000 — the Boom Times Are Over. Is Democracy Next?

BY ZACHARY KARABELL

FT January 30, 2017

Markets enjoying a sugar high that will not last

Lawrence Summers

先週、トランプ・ラリーは続き、ダウ2万ドルを超えた。選挙後のラリーは続くのか? 誰にもその答えは出せない。株式市場の転換がいつか予測するのは愚かなことである。しかし、この高揚感を楽しむ状態が1年も続くとは思えない。

1.ダウ平均株価指数の2万ドルには特別な意味などない。

2.ルービンがクリントン政権の同僚に繰り返し言ったように、「市場は変動するものだ。」 市場の短期的な反応で政策を評価するのは間違っている。ファンダメンタルズに集中せよ。

3.市場の混乱を予想させる指標が多くある。金融株が非常に強気であるのはインサイダーの取引だ。不確実な環境でボラティリティが低いのは、突然、その幻想が終わることを意味する。

4.大きなラリーが続くようなファンダメンタルズはない。新しい政策で企業の収益が増大することもない。法人税の引き下げや規制緩和も、その実現には時間がかかる。

5.政府が権威主義的な性格を示すとき、歴史的に、強気市場が生じたことは重要だ。ヒトラーやムッソリーニがそうだ。

この1週間の政権を観た後では、市場の上昇より下落を予測することが容易である。

Project Syndicate JAN 30, 2017

Trust in Markets and Antitrust in Media

SERGEI GURIEV

Project Syndicate JAN 31, 2017

Surviving the Next Housing-Market Hurricane

MARK ROE

Bloomberg FEB 1, 2017

We’re in Phase III of the Trump Rally

Mohamed A. El-Erian

選挙後のアメリカ株式市場は政策に強く影響されている。第1に急騰し、第2に狭いレンジで変動した。今や第3期である。それは、リフレ政策への期待と、スタグフレーションへの転落との間で、綱引き状態にあるため、大きな浮動性が示される。

Project Syndicate FEB 2, 2017

The End of Trump’s Market Honeymoon

NOURIEL ROUBINI

財政刺激策、エネルギー・医療保険・金融サービスに関する規制緩和、法人・個人・相続・キャピタルゲインに関する減税、というトランプの約束に投資家は喜んだ。しかし、トランポノミクスTrumponomicsは株価を引き続き上げるような中身なのか?

これらは共和党の伝統的なトリクルダウン型の、供給サイドの経済学であり、企業と富裕層には利益があるが、雇用を創り出すことも、ブルーカラー労働者の所得を増やすことも全くない。Tax Policy Centerの推定によれば、減税のほぼ半分は上位1%の富裕層に与えられる。

すでに市場の熱気は失われ始めており、トランプと投資家のハネムーンは終わりに向かっている。その理由をいくつか指摘できる。

1.財政刺激策は株価を上がるが、それは同時に長期金利を上昇させる。投資や、金利に敏感な不動産の取引は減るだろう。またドル高は、特に、ブルーカラーの雇用を失わせる。大統領はエアコン機器の製造企業Carrierをいじめて1000人の雇用を「救った」と自慢したが、その政策はドル高による40万人の雇用を破壊するだろう。

さらに、共和党は減税の誘惑に抵抗できない。たとえ歳入が不足しても、歳出削減する意欲がなくても、減税した。トランプ政権でも同じことが起きるだろう。それは財政赤字と金利上昇、ドル高を意味する。

2.インフレの亡霊がよみがえる。それにより、連銀の金利引き上げは早まるだろう。

3.財政赤字と高金利というポリシー・ミックスは、ブルーカラー労働者の所得と雇用を破壊する。その結果、トランプ政権は保護主義政策を強めるだろう。それが成長を損ない、企業の利潤を減らす。アメリカの保護主義は、貿易相手国の報復を避けられない。1930年のスムート=ホーリー関税法はグローバルな貿易戦争を生じ、世界不況を悪化させた。

4.トランプは伝統的な保護政策にとどまらず、企業の海外生産を輸入関税で阻み、政府購入価格を値切り、移民規制によって企業の人材利用を妨げる。

ノーベル賞受賞者のEdmund S. Phelpsは、企業に対するトランプの直接介入を、ドイツのナチズムやイタリアのファシズムに似ている、と述べた。バラク・オバマが同じことをしたら「共産主義」と非難されただろう。アメリカ企業は、トランプの介入に対して尻尾を巻いて黙っている。

5.トランプはアメリカの同盟関係を疑い、ロシアのような敵をほめ、中国のようなグローバル大国との対立を煽る。世界の指導者、多国籍企業、グローバルな金融市場が、その外交政策を不安視する。

6.トランプのダメージ・コントロールは、むしろ事態を悪化させている。例えば、ドル安を促す口先介入だ。選挙期間中に、トランプは金融政策が緩和しすぎている、「偽の景気」である、とYellen連銀議長を批判した。しかし、今では民間企業への融資を増やすために、新しい理事を指名したいだろう。それがうまく行かないときは、ドル安を促すために一方的に介入し、資本流入を阻止する資本規制をするかもしれない。金融市場のパニックは避けられない。

その矛盾した、移り気な、破壊的政策が、国内でも世界でも、長期の経済成長を損なうことになる。


● 縁故主義

Bloomberg JAN 27, 2017

Both France and the U.S. Have a Nepotism Problem

Leonid Bershidsky


● NAFTAと国境の壁

The Guardian, Friday 27 January 2017

Donald Trump's wall: a fitting monument for an unfit leader

John Paul Brammer

NYT JAN. 27, 2017

Mexico’s Forceful Resistance

By JORGE G. CASTAÑEDA

Bloomberg JAN 27, 2017

Think About the U.K. in Nafta. Really.

Therese Raphael

FT January 30, 2017

The future for Mexico under Trump

Nick Butler

メキシコ大統領Enrique Peña Nietoは、貿易戦争のコストを避けるには、アメリカのトランプ大統領が示す要求に応えるしかない。トランプ大統領が目指す、中東の化石燃料に依存することをやめて、アメリカがエネルギーを自給する戦略目標について、どこまでメキシコが有利に交渉できるか、である。

FT January 31, 2017

Nafta: First shots in a trade war

Jude Webber, Shawn Donnan and John Paul Rathbone

これ以上に明白なことはない。トランプ大統領は、毎分100万ドルの貿易の流れを破壊するような、貿易戦争の引き金を引く、と脅している。メキシコからの輸入財に20%の一方的な関税を課すという考えを吹聴し、国境線に壁の建設を進める大統領令を出し、その費用を支払うと合意しなければニエト大統領との首脳会談は無意味だ、と告げた。

ノーベル賞を受賞したエコノミストのPaul Krugmanは、トランプ政権が「弾を込めた拳銃を振り回す、甘やかされてぐれた子供」のように行動している、とTwitterに書いた。

関税引き上げは、1970年代の初めにニクソン政権がメキシコに10%の輸入課徴金を求めたことを思い出させる。しかし、その影響は現在の方がはるかに大きい。2国間貿易は5800億ドル、数百万人の雇用が国境の両側で脅かされる。

NAFTAが成立した最初の年、メキシコは危機がエスカレートしていた。南部のチアパス州ではザパティスタの叛乱が起き、その後の数か月間に2人の指導的な政治家が暗殺された。クリスまでに通貨危機は爆発し、政府は債務をデフォルトする寸前であった。メキシコのメルトダウンを回避するために、より深い、包括的な貿易統合化に進むことが目指されたのだ。1995年初めに200億ドルの救済融資を行ったクリントン大統領は、「これはアメリカの挑戦だ」と語った。

メキシコの輸出の80%はアメリカ向けだが、その40%はアメリカからの部品である。

FT February 2, 2017

Mexico has been a good neighbour for America

Guillermo Ortiz

NYT FEB. 2, 2017

Trump’s Mexican Shakedown

Ioan Grillo


● トランプ政権の評価

Project Syndicate JAN 27, 2017

Donald Trump’s Plot Against America

BERNARD-HENRI LÉVY

NYT JAN. 27, 2017

Donald Trump, the Religious Right’s Trojan Horse

By MICHELLE GOLDBERG

The Guardian, Saturday 28 January 2017

Never mind the optics, Theresa May’s US dash was mortifying

Jonathan Freedland

FT January 28, 2017

Donald Trump’s first-week scorecard: character over content

NYT JAN. 28, 2017

Wild Child Takes Charge

Maureen Dowd

NYT JAN. 28, 2017

The Fog of Trump

Ross Douthat

トランプ政権移管して評価するには、通常の大統領と違う。そもそも何が起きているのかを把握することが困難だ。

The Guardian, Sunday 29 January 2017

From Goldwater to Reagan and now Trump. But Americans will fight this latest brand of cartoon conservatism

Heather Cox Richardson

FP JANUARY 30, 2017

3 Ways to Get Rid of President Trump Before 2020

BY ROSA BROOKS

最初の1週間で、トランプが恐れられた通りの狂人であるとわかった。

そこで問題は、われわれが本当にドナルド・トランプを我慢するべきなのか? ということだ。状況によるが、無様な大統領を排除する4つの方法がある。

1202011月まで待つ。その時までにアメリカの有権者が正気を取り戻す。しかし、4年は長すぎる。

2.弾劾する。下院の過半数と上院の3分の2が賛成することで大統領を弾劾できる。しかし、両院とも共和党が多数を握っている。

3.憲法修正第25条で、副大統領と閣僚の過半数が大統領の職務遂行は困難と判断すれば、副大統領が変わって権力を執行する。

4.狂気の命令を出す大統領に軍が従わず、クーデタを起こす。「明日、メキシコに侵攻せよ。」 「イスラム教徒のアメリカ人をまとめてグアンタナモに送れ。」 「中国に教訓を与えるために、核攻撃せよ。」

FT January 31, 2017

How alternative facts rewrite history

Alan Smith

NYT JAN. 31, 2017

The Supreme Court Meets Reality TV

Frank Bruni

Project Syndicate FEB 1, 2017

Trump’s First Victims

PETER SINGER

FP EBRUARY 1, 2017

We Must Reclaim Patriotism From Leftists — and From Trump

BY ROBERT D. KAPLAN

FP EBRUARY 1, 2017

America’s Mao Zedong

BY ELIZABETH M. LYNCHF

トランプはこれまでのアメリカ大統領と大きく異なる。彼は特定の政策や一貫した政策枠組みを実現するために権力を握ったのではない。その目標は、カオスの創造である。その性格を理解するには、むしろ中華人民共和国の創設者、毛沢東と比較するのが良い。

毛沢東は、中国の旧秩序を転覆する革命的なポピュリストとして権力を得た。その傾向は、彼が支配した27年間のほとんどがカオスの中で展開したことを説明する。

「もし破壊しなければ、建設はできない」という言葉を毛沢東は好んだ。そして中国を、焦点の定まらない、深刻な自己破壊的、永久革命の道へと導いた。トランプの政策もそうだ。メキシコに20%の関税率を強いる経済的な理由はない。イスラム教徒の移民入国を禁止するアメリカ的な価値などない。

権威主義的体制の要素とは、経済的そして社会的な前進を犠牲にしても、イデオロギー的な目的を優先することだ。毛沢東の「大躍進」がそうだった。1958年から1962年まで、中国を一気に、工業化した、裕福な、共産主義社会に変えることを目指して行われた。その結果は、市場でもまれな大飢饉であった。1年もたたずに、これが大失敗であるとわかったが、共産党はその事実を認めず、運動を継続した。

毛沢東から習近平まで、中国政治は粛清の連続であった。粛清は、政敵を追放するだけでなく、共産党の規律を厳格化するために行われた。ほとんどの共和党議員が、イスラム教徒の入国を禁止する大統領令が違法である、とは発言しなかった。そのような発言はトランプに嫌われるからだ。トランプの閣僚人事が示すのは、能力よりもイデオロギー的な服従を優先する、ということだ。

新聞を「野党」と呼び、記者たちに「何を書くべきか」と講釈する。ジャーナリストたちを「地上で最も不正直な者」と呼ぶ。トランプ政権の戦略とは、メディアの殲滅である。それは中国共産党が表現の自由を弾圧した過程と不気味なほど似ている。アメリカの新聞は権力を監視する役割を誇っている。しかし、トランプ政権が本気で共産党式のメディア破壊を目指すなら、その勝者が誰になるかは不明である。

トランプ政権の言う「オルタナティブ・リアリティ」とは、権威主義体制の下で以前からあることだ。もちろんアメリカは中国ではないし、アメリカ人が権威主義体制を受け入れる宿命だ、とは思わない。しかし、有権者もメディアも、トランプ政権の本質を理解するのが遅すぎた。トランプはアメリカの歴史に共通する目標を持たず、権威主義体制に向かっている。

政権に対する抵抗は必要だ。しかし、カオスを求める指導者を阻止することは容易でない。

NYT FEB. 2, 2017

Case Study in Chaos: How Management Experts Grade a Trump White House

By JAMES B. STEWART

FT February 3, 2017

A telling moment for business leaders

Larry Summers blog


後半へ続く)