IPEの果樹園2017

今週のReview

1/30-2/4

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オバマは行動する ・・・大統領就任式 ・・・資本主義の転換 ・・・メイのBrexit ・・・中国とグローバリゼーション ・・・南スーダン ・・・トランプ vs メディア ・・・ポピュリズム ・・・世界秩序の転換 ・・・ロシアとの関係修復 ・・・労働の未来 ・・・トランプ政権始動

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


   オバマは行動する

NYT JAN. 19, 2017

Obama Shouldn’t Go Quietly

By ROBERT DALLEK

金曜日に執務に就いたトランプ大統領は、前任者の仕事を破り捨てるアジェンダを実行した。オバマが出した行政命令を取り消し、イランとの核合意を破棄し、オバマケアの廃止を支持し、気候変動に関する国際的枠組みから離脱する、といったことだ。

もしトランプがオバマを沈黙していると思ったのであれば、ウッドロー・ウィルソンがワシントンに住み続けて以来、最初のワシントンにとどまる大統領であるが、その最後の記者会見での発言に驚いたことだろう。新大統領の数々の問題に関しては、「私が発言する方がよいだろう」と述べたのだ。

任期が終わった元大統領たちは、趣味や慈善活動にかかわるだけで、後継者が思い通りにすることを許す、と思われている。しかし、常にそうではない。

たとえば、トルーマンHarry S. Trumanは、2年間の半引退生活で、自分がホワイトハウスにいた8年間の弁護論を2巻にわたって書いた。しかし、1960年、政治に復帰した。副大統領のニクソンRichard M. Nixonを嫌い、John F. Kennedyの父であるJosephをさらに嫌った。Josephがフランクリン・D・ルーズベルトを猛烈に攻撃し、トルーマンは、エレノア・ルーズベルトに加わって、息子のJohnを、若すぎる、経験不足と非難した。

セオドア・ルーズベルトTheodore Rooseveltは、株を保有したり、趣味や冒険を楽しんだりしたが、引退した最初の数年間、後継者のタフトWilliam Howard Taftを罵倒した。ルーズベルトはタフトが大企業とつながり、前任者である自分の進歩的政策に無関心であることを憤って、1912年、第3党の大統領候補になった。

オバマは、大統領の交代が政策の前進と後退、満ち引きにつながることを知っている。しかし、トランプは通常の交代と違う。オバマが完全に政治から退く意図はない。特に、自分の成果である、医療保険制度、気候変動、投票権に関しては、政策の駆け引きを超えたアメリカの価値を実現したものとみなしている。

オバマは紳士的な態度を貫き、彼の業績に対するトランプの行き過ぎた非難にもかかわらず、ホワイトハウスに入ることを歓迎し、選挙後の大統領にふさわしくない行動に対しても沈黙を守った。しかし、トランプが前任者の業績に対する黙認の伝統を破り、そのすべてを破り捨てるつもりなら、オバマは政治的に闘うことを避けられないし、避けるべきではない。


   大統領就任式

The Guardian, Friday 20 January 2017

Divisive, ungracious, unrepentant: this was Trump unbound

Jonathan Freedland

トランプが変心することを願った人々は失望しただろう。就任式でも、トランプは何も変わらなかった。共和党大会のときと同じように、そのメッセージは怒りに満ち、前任者の業績を否定して、アメリカを荒涼としたディストピアで描いた。ギャング、麻薬、犯罪、退廃。

歴史上の最悪の時代を恐れず、これからはアメリカ最優先でいく、という。1930年代のネイティビズム運動が掲げたスローガンだ。それはアメリカとナチスとの戦争を回避するためであった。

世界が彼の演説を聴いているときに、トランプは新しい保護主義の時代を宣言した。NATOに言及することはなく、あらゆる国際協力を無視した。新しいダーウィン主義の時代を国際関係に拓くものだ。すべての国が自国優先である、という。モスクワや北京はそれに異論を持たない。しかし、ルールに基づく国際システムというアメリカの主張を長年信じてきた小国にとって、それは衝撃である。

トランプはいつもそうであったように、ルールブックなど破り捨てた。伝統を無視して、選挙戦に敗北したヒラリー・クリントンに和解の合図を送ることはなく、彼に投票しなかった有権者たちに手を差し伸べることもなかった。

自分の支持者たちに向けて、特に赤さび地帯の労働者たちに向けて、トランプは経済ナショナリズムを強調した。彼らにとってこの演説は、トランプが多くの、不可能な約束を実行するつもりだ、と信じる理由となった。

トランプに反対する者にとって、これは予想通り「抵抗」の始まりとなった。彼らが見たのは、単に愛することのできない政府ではなく、専制君主であった。デモ隊の掲げるプラカードには、まさに、「ファシスト」とあった。

反対運動の先頭には、報道機関がいる。クリントンを排除した今、トランプはメディアを標的にしている。メディアの存在自体が彼を憤慨させるのだ。上下両院を共和党が支配し、最高裁判所の判事を指名できる。権力の機関でトランプに支配できないのは、メディアだけである。

それゆえメディアの責任は重大だ。相互に競争するより、団結して戦わねばならない。その意味で、記者会見でトランプが無視したCNNからのフェイク・ニュースに関する質問に、トランプが答えるよう、メディアが支持したことは重要だ。

トランプの言動を抑えるのは、その人物への攻撃ではなく、さまざまな問題に焦点を絞ることだ。裸の王様であるトランプを笑うことだ。ティーパーティーがオバマを苦しめたことから学んで、トランプに対する反対運動が組織されるべきだ。

The Guardian, Friday 20 January 2017

With President Trump, American democracy faces its greatest test

Marilynne Robinson

The Guardian, Friday 20 January 2017

The Guardian view on Donald Trump’s inauguration: a declaration of political war

Editorial

FT January 20, 2017

Goldman Sachs: Occupying Washington again

Ben McLannahan

抗議デモがゴールドマンサックスに向かう。デモ隊に参加する者は考えている。アメリカの経済を金融ビジネスが支配し、労働者たちの職場を破壊して、富はトップに集中し、不平等が拡大した。ゴールドマンサックスとウォール街は、文字通り、政府を操縦している。

CEOLloyd Blankfeinは、才能が集まっているからワシントンからも求められる、という。

ウォール街全体で、銀行の株価は上昇している。いわゆる「トランプ・トレード」では、税率の引き下げ、高金利、規制緩和が、選挙以降、株価を引き上げている。

特に証券取引部門は、金融危機後に厳しく規制されたが、投資家たちのトランプに対する期待で、多くの利益を上げている。ゴールドマンサックス、1年前に比べて、4半期に80%、収益を増やしている。利潤全体でも3倍になった。

ゴールドマンサックスから出たトランプ政権のキーパーソン。

Gary Cohn, head of White House National Economic Council

Steven Mnuchin, nominee for Treasury secretary | Confirmation hearing

Stephen Bannon, chief strategist

SPIEGEL ONLINE 01/20/2017

Defending Western Values

Time for an International Front Against Trump

A Commentary by Ullrich Fichtner

SPIEGEL ONLINE 01/20/2017

Historian Anne Applebaum on Trump

'Protest Is Insufficient'

Interview Conducted by Christoph Scheuermann and Gordon Repinski

SPIEGEL: 何を最も恐れているか?

Applebaum: ロシアが東欧の一部を占領すること。ドイツや他のヨーロッパの国でロシアが影響力を拡大すること。アメリカと中国との貿易戦争、さらには軍事衝突。

SPIEGEL: 近いうちに起きると思うか?

Applebaum: それは誰が政権内部の論争に勝つかによるだろう。マティスJames Mattis国防長官は、NATO100%支持すると述べた。半年前にオバマが同じことを言っても、それは退屈な生命であっただろう。今は違う。それほどトランプ政権においては基本姿勢が転換したのだ。

SPIEGEL: トランプは伝統的なメディアを信用せず、Twitterによる新しい公共圏を創り出した。これは民主主義を破壊するものではないか?

Applebaum: 問題はもっと深刻だ。今や、人々は分割されたリアリティーを生きている。彼らはFacebookからおすすめニュースを観る。そして特定の事実だけを信じる。他の人々は、異なるリアリティーを生き、まったく異なる事実だけを知っている。トランプはすべてのアメリカ人に呼びかけるつもりはない。統一という言葉を使わない。彼は魅了することも、説得することもない。彼が言うのは、自分に投票した人々への感謝であり、その他の人々は敗者である、ということだ。

SPIEGEL: トランプはNATOを時代遅れと言い、プーチンとの関係改善を好む。NATOはどうなるのか?

Applebaum: アメリカ人は以前からNATOは機能していない、ヨーロッパ人は十分に負担していない、と考えていた。トランプが大っぴらに非難することで大西洋の連帯は損なわれるだろう。NATOの将来はヨーロッパにかかっている。ヨーロッパ諸国は自分で脅威を認識し、それに備えて、アメリカの助けなしに戦争することができるか?

SPIEGEL: ヨーロッパは複合的な危機の多発に苦しんでいる。高失業、難民、Brexit、そして、トランプ、プーチン、右翼のポピュリズム運動。ヨーロッパ諸国が共通の安全保障政策をまとめられるだろうか?

Applebaum: 右翼ポピュリズムとトランプの関連性を正しく理解し、同じ問題として対処できれば。

SPIEGEL: その見方は単純すぎないか?

Applebaum: ポピュリストたちの使う言葉は同じだ。トランプの言葉「アメリカを再び偉大にする」も、懐古的である。ヨーロッパのナショナリストたちと同様に、トランプは「真の」アメリカを観ている、という。それは、グローバリゼーションも、移民も、フェミニズムも、市民権運動も、技術革新もなかった頃のアメリカ、空想的な1950年代だ。こうした言葉は、ル・ペンも、Brexit派も、それほど違わない。

SPIEGEL: どのようにこの懐古主義を倒すのか?

Applebaum: 「何もかもうまく行っている」という主張は支持されない。現在の価値、将来の魅力を、若い人々に訴えるべきだ。伝統的な左派も右派も意味を持たない、リベラリムズの再生が必要だ。政治を動かすのは、キリスト教民主同盟と社会民主党の対立ではない。

社会構造が転換して、正当の基盤も、教会や組合も、その意味を失った。ナショナリストやポピュリストは早くこの変化に気づいていた。政治の世界を理解するには、異なる分割線が必要だ。

SPIEGEL: 国際規範に対するロシアの逸脱は特別ではない。中国も、トルコも、ヨーロッパのいくつかの国も、ますます権威主義的に、気まぐれな動きを示し始めている。民主主義はうまく行かなくなった?

Applebaum: 私は民主主義が生き残ると思う。もちろん、1990年代の楽観論は正しくなかった。トランプは変化の兆候であって、その原因ではない。グローバリゼーションは各国の政治家から権力を奪い去り、人々はそれを感じていた。急速に変化するデジタル時代に、民主主義の決定過程は遅すぎるという不満を持った。

SPIEGEL: 人々の怒りと不満にわれわれはどうやって応えるのか?

SPIEGEL ONLINE 01/20/2017

Assault on Europe

Donald Trump and the New World Order

NYT JAN. 20, 2017

The Internal Invasion

David Brooks

NYT JAN. 20, 2017

Donald the Unready

Paul Krugman

FP JANUARY 20, 2017

In the Hands of the People, the Elites Are Targets

BY JAMES TRAUB

FP JANUARY 20, 2017

Trump Promises ‘America First’ in Defiant and Divisive Inaugural Speech

BY DAN DE LUCE

FP JANUARY 20, 2017

Trump’s Civil Religion Has an Angry God

BY MICHAEL KAZIN

FP JANUARY 20, 2017

Mr. Trump Goes to Washington

BY KORI SCHAKE

Bloomberg JAN 20, 2017

Trump's Contempt Could Lead to Better Government

Leonid Bershidsky

ドナルド・トランプの任期は、政府の多くのポストを空席のままスタートした。それは破滅につながるのか、あるいは、新しい時代の始まりなのか。

Jonathan Bernsteinによれば、上院が承認する必要のある690のポストのうち28しか候補者が示されていない。140万人の連邦政府職員がアメリカの福利厚生を支えていると信じるなら、これは恐ろしいことだろう。官僚たちはそのように主張するが、トランプやその少数の指名された閣僚たちはその警告を無視するべきだ。

2004年、ソビエト崩壊後のグルジアで、伝説的な改革を実行したKakha Bendukidzeは、トランプのようにビジネスマンであったが、自国を改造することに関心を持った。改革は、グルジアの膨張し、腐敗した官僚制度から始めた。ロシアではリバタリアンとして13%のフラット・タックスを導入して成功したが、グルジアの官僚制度をほとんど理解できなかった。そこでそれらを廃止することにした。Bendukidzeの改革で、初年度に職員の35%がレイオフされた。規制や課税も単純化し、21の税金を7つに減らした。

経済は改革に反応し、現実とは思えないような成長を示した。成長率は2004年に5.6%2005年に9.6%2006年には9.4%に達した。

もちろん、グルジアの人口は450万人で、アメリカの小さな州の大きさしかない。しかし、パキスタンは巨大な、混乱した国だ。アメリカの人口の60%にほぼ等しい。2010年、憲法改正で権限を地方政府に移譲した。教育、医療、社会福祉、環境、労働など、2年で17の連邦省庁が廃止された。地方政府は、必要な職員を採用するよう求められた。改革は決して円滑に進まなかったが、経済は成長し始めた。

アメリカのような豊かな国で、中央官庁の改革、特に削減は、貧困国よりも難しい。官僚たちは非常に有能で、自分たちの不可欠な役割を説得できる。ただし、経済危機に直面した場合、豊かな国でも緊縮策を採用することがある。イギリスの公務員は2009年秋に644万人でピークに達し、その後、100万人を削減した。

アメリカにも官僚を削減する多くの余地がある。政府職員の一部は民間企業が受け入れるだろう。トランプ自身は気づいていないが、ずっと少ない政府職員で高い水準の行政を実現する指導者になれる。

Bloomberg JAN 20, 2017

Trump Turns a JFK Phrase Against His Message

Noah Feldman

FT January 21, 2017

President Trump inauguration speech: a dismissal of history

Sam Leith

FT January 21, 2017

Trump stays the populist course in first speech as President

Cardiff Garcia

FT January 21, 2017

How Donald Trump can really make America great again

Bill Emmott

1.長期的に考える。インフラ投資は重要だ。アメリカの生産性を高める。

2.超党派で考える。自ら政治のルールを書き換えると主張してきた。2010年、オバマが失敗したSimpson-Bowles委員会の合意を、議会で通過させることだ。

3.アメリカの慢性病に取り組む。それはメキシコや中国から職場を取り戻すことではない。アメリカが長期的な変化に対応する力は驚くほど劣っている。特に、国民の健康状態、不平等が問題だ。

4.オバマの経済諮問委員会が出した2つの報告書を実行することだ。規制によって雇用が抑えられ、主要産業では競争が妨げられている。

トランプはセオドア・ルーズベルトのように行動するべきだ。「金ぴか時代」の悪弊を取り除くために、反トラストを強化し、不平等、非効率、不公平と闘った。大企業や銀行の過剰な支配力を削ったのだ。

FT JANUARY 21, 2017

Millions of women feel compelled to march this weekend

Anne-Marie Slaughter

さまざまな目的で、さまざまな理由で、女性たちが集まってきた。トランプの大統領就任式の翌日である。

河のように、海のように、女性たちの行進がアメリカの諸都市にあふれ、この国の最も重要な公共の広場を、想像する限りの、鮮明な存在によって占拠し、宣言している。

FT JANUARY 21, 2017

Trump has already delivered a huge reservoir of confidence

ANA PALACIO

Project Syndicate JAN 21, 2017

Adrift in Trump’s New Century

NYT JAN. 21, 2017

The America We Lost When Trump Won

By KEVIN BAKER

FT JANUARY 22, 2017

Joyless fantasies abound in Trump’s inauguration speech

Simon Schama

Bloomberg JAN 23, 2017

Don't Stop Marching

Pankaj Mishra

The Guardian, Wednesday 25 January 2017

Welcome to dystopia – George Orwell experts on Donald Trump

Jean Seaton, Tim Crook and DJ Taylor

Project Syndicate JAN 25, 2017

National Debt and Global Order

HAROLD JAMES

トランプの就任演説ではこれまでにない言葉が繰り返された.Bleed, carnage, depletion and disrepair. Ripped, rusted and stolen. Tombstones, trapped and windswept. Urban, sad and Islamic. 黙示録的な終末映画の台本を大声で読み上げているように感じた.

トランプは,「愛国心に尽くせば,偏見が入る余地はない」と述べた.しかし,逆である.愛国心は偏見を神聖化する.アメリカ建国の父たちは愛国心に燃えていたが,その多くは奴隷の所有者であった.


● 資本主義の転換

FT January 20, 2017

Disillusioned in Davos

Lawrence Summers

FT January 20, 2017

For economic success at home, Trump must lead globally

Mohamed El-Erian

トランプ政権下のアメリカ経済に関して、アメリカの内と外で非常に対照的な予想が広がっている。アメリカが今にも貿易戦争を始める、という懸念は行き過ぎである。アメリカはその繁栄に反する行為を抑えるチェック・アンド・バランスがシステムに備わっている。しかし、アメリカの潜在的な成長力を発揮することは、他国にも利益になる、と理解させることは重要だ。

アメリカの産業界は、トランプ大統領の法人税減税、規制緩和、インフラ投資、財政刺激策を歓迎している。それは高い成長とインフレをもたらし、彼らの売り上げを伸ばし、価格支配力を強めるからだ。外国の見方は異なる。アメリカは輸入品への関税率を引き上げ、2国間・多国間の合意を破棄し、工場の海外移転を妨げるだろう。そうなれば、アメリカの成長は国際的に波及しない。

しかし、政府が採るのは「ニンジンと鞭」のアプローチであって、NAFTAの解体や関税戦争、国際合意の破棄ではないだろう。個別の企業の圧力をかけるのも、自国の生産を重視するように促すとしても、それで成長や雇用の目標を達成できるものではない。むしろ、こうした短期的アプローチは、ドル高によって成長や企業の収益を失わせる効果に圧倒される。

そこで、アメリカ政府は国際交渉を必要とする。2つの例で、熟練の交渉術に必要な論点を示すことができる。

中国と経済問題を論争する際には、通貨操作ではなく、もっと労働基準や外国投資の規制、そして、外国市場や国有企業から消費主導の成長モデルに転換する問題を話し合うべきだ。また、ヨーロッパに対しては、Brexitではなく、もっと成長をスタートさせる構造改革や財政刺激策の余地を話し合うべきだ。

G7やその後のG20を通じて、トランプの国内成長策を強化する形で、国際的な政策協調を促進することができるだろう。

Project Syndicate JAN 20, 2017

Trumping Capitalism?

Anatole Kaletsky

トランプ主義は資本主義の新しい時代を拓くのか? グローバル資本主義は、①1840年代の革命後、リベラル帝国主義、②1930年代の大恐慌後、ケインズ主義、③1970年代のインフレーションを経て、サッチャー=レーガンの市場原理主義、という転換を遂げてきた。

トランプの経済政策は効果があるか? それは政治的に持続可能か? トランプ主義は経済政策の思想や資本主義に対する姿勢を転換するか?

FT JANUARY 21, 2017

Wilbur Ross brings art of restructuring to Team Trump

Philip Delves Broughton

FT January 22, 2017

Donald Trump meant everything he said

Christopher Caldwell

FT January 22, 2017

Energy and industrial policy: the case for a long-term view

Nick Butler

SPIEGEL ONLINE 01/23/2017

Tumultuous Times

'Political Uncertainty Has Doubled the Around World'

Interview Conducted by Peter Müller

スタンフォード大学のエコノミストNicholas Bloomに聞く。

SPIEGEL: 政治と経済との不確実性が始まったのか? 政治的不確実さは高まっているのか?

Bloom: 経済成長の減速と不平等の拡大は、政治の不確実さを強める。

FP JANUARY 23, 2017

The Grave Dangers and Deep Sadness of ‘America First’

BY MAX BOOT

Bloomberg JAN 23, 2017

The Rising Risk of Central Bank Instability

Mohamed A. El-Erian

The Guardian, Tuesday 24 January 2017

Trump didn’t kill TPP, the people did

Owen Jones

FT January 24, 2017

Time for business leaders to wake up

Larry Summers blog

FT January 24, 2017

Take the US president’s protectionism seriously

NYT JAN. 24, 2017

Ditching T.P.P. Won’t Solve the Trade Deficit

By JARED BERNSTEIN

FP JANUARY 24, 2017

Trump’s Plan for a Massive Deportation Is Cruel, Unjust, and Economic Suicide

BY DOUGLAS MASSEY

FP JANUARY 24, 2017

Facing Trump, Mexicans Think the Unthinkable: Leaving Nafta

By ELISABETH MALKIN

NYT JAN. 24, 2017

Mexico’s Potential Weapons if Trump Declares War on Nafta

Eduardo Porter

Project Syndicate JAN 25, 2017

Four Certainties About Populist Economics

MICHAEL SPENCE

経済グローバリゼーションが成功するときは、各国の成長パターンも合理的に成功するものになっている。第2次世界大戦後の30年間がそうだった。多くの国で高い成長率が実現し、その利益は諸国の中でも広く分配された。発展途上諸国が台頭してグローバルな不平等も縮小した。

1970年代以降もグローバリゼーションが続いたが、成長のパターンは変化した。系座グローバリゼーションには労働賃金の裁定が働き、デジタル技術の破壊的影響が加わった。先進経済の中産階級、製造業の雇用が失われ、中位の所得は伸びなくなった。GDPの成長は続いても、職場と所得の分極化が進んだ。この傾向は1980年代、90年代にも持続し、2000年以後、加速した。不平等が急速に拡大し、グローバリゼーションの基礎が失われたのだ。

諸国の間で対応はさまざまだった。不平等を減らす政策を採った国もある。税制、社会保障、教育システム、さまざまな社会的保護、効果的な職業訓練による再分配である。文化的な規範、労働者の制度化された交渉力、労使間の信頼関係、個人や企業の富が政治に及ぼす影響、などが再分配政策と関係している。

そのような不平等への緩和策が弱い国、すなわち、英米では、所得や資産、機会における分裂が極度に厳しくなった。再分配政策や交渉力にかかわる制度がなく、人々の怒りが高まった。こうした包括的な成長を欠いた経済も、遅れて転換した。その転換点は政治的なものであり、しばしば劇的な変化を意味した。発展した民主主義の国を除けば、それはしばしば暴力や市民の抵抗につながる。民主主義の国では、Brexitやトランプのように、選挙や国民投票に示される。有権者が欠陥のあるシステムを拒否するのは健全な反応だ。

アメリカの新しい成長パターンは多くの特徴を示している。国際機関や国際協調より、2国間や保護主義。移民政策の転換。公共投資、財政刺激策への転換。規制、税制の変化。教育、職業訓練、医療保険など、供給側の政策重視。

Bloomberg JAN 25, 2017

Mnuchin Abandons the 'Strong Dollar' Mantra

Mark Gilbert

Bloomberg JAN 25, 2017

Trump Can't Kill the TPP

Mihir Sharma

FT January 26, 2017

Powerful forces will lead to a strong dollar under Trump

Barry Eichengreen

ドルに関しては、トランプ自身が最大の敵である。ドル高は輸出を難しくし、製造業の雇用を奪う。しかし、彼の政策がドル高を促しているのだ。

1に、アメリカが財政的な拡大と金融引き締めを行う、という予想だ。減税し、インフラや軍備に投資をすれば、アメリカの財に対する需要が増える、完全雇用に近い状態でそうなれば、他の需要な外国の供給に向かう必要がある。それを促す市場メカニズムはドル高だ。

また、インフレ期待が高まれば、連銀の金利引き上げは早くなる。高金利は外国から資本を招き寄せ、ドル高がさらに進む。財政政策は経常収支の赤字を強め、金融政策は資本収支の資本流入を強める。この組み合わせは、レーガンとベイカーが学んだように、耐え難いドル高をもたらすだろう。

2に、相手先による法人税を導入する。法人税は、財がどこで消費されたかによって賦課され、どこで生産されたかによるのではない。輸入財には課税されるが、輸出した企業は法人税を下げる。それは輸入財を高価にするから、国内で生産された財に多く支出するだろう。しかし、完全雇用に近い状態であるから、支出が再び海外に向かうような調整が働く。すなわち、一層のドル高だ。

3に、メキシコや中国からの輸入材に高い関税率で邪魔をすることだ。国内の供給に支出を向けるが、同様に、ドル高をもたらす。インフレを抑えるためにも、ドル高だ。

トランプはどうするだろうか? 通貨価値を操作している国を処罰する。ドルに対して減価するような国は追加の関税を課して輸入を阻止する。しかし、それは一層のドル高になる。保護主義的なサイクルが無限に続く。

あるいは、トランプは財務省にドル売りを指示する。それはインフレを加速するだろう。アメリカ連銀は、中央銀行の独立性として、それを抑える権限を行使する。エコノミストたちが言う「不胎化介入」である。外国為替市場への介入と、金融政策の効果が打ち消し合って、為替レートには持続的な効果がない。トランプは連銀に憤慨するだろう。

ドル高に対する合理的な藩王とは、それをもたらしている政策をやめることだ。完全雇用状態では不要な減税を行わず、相手先による法人税減税もやめる。なにより破壊的な関税引き上げは放棄する。

FP JANUARY 26, 2017

Forget Dow 20,000 — the Boom Times Are Over. Is Democracy Next?

BY ZACHARY KARABELL

Bloomberg JAN 26, 2017

Trump's Economic Approach Starts to Take Shape

Mohamed A. El-Erian


   メイのBrexit

FT January 20, 2017

Theresa May’s global ambitions disguise diminished status

Linda Colley

NYT JAN. 20, 2017

Theresa May’s ‘Global Britain’ Is Baloney

Roger Cohen

The Guardian, Monday 23 January 2017

The Guardian view on industrial strategy: hot air but no liftoff

Editorial

FT January 23, 2017

Europe will pay unless the Brexit deal is a fair one

Wolfgang Münchau

FT January 24, 2017

Industrial policy in the UK, without the industry

イギリスに必要な物は産業政策ではない。生産性上昇のための政策だ。教育、職業訓練、移民政策が重要だ。勝者を選別する戦略は失敗する。Brexitのせいで、移民政策に触れていないのは間違いだ。

FT January 25, 2017

The UK Supreme Court rules for democracy

FT January 25, 2017

The Supreme Court judgment shows the constitution is working

David Allen Green

The Guardian, Thursday 26 January 2017

The Guardian view on dining with Donald Trump: use a long spoon, prime minister

Editorial

Project Syndicate JAN 26, 2017

Theresa May’s Triple Bet

DOMINIQUE MOISI

メイ首相は、明確に離脱を目指す、と宣言した。首相官邸で働いた専門家は、投票では残留を支持していたが、これを歓迎した。現在のイギリスは、「手負いのライオン」である、と。

1に、ヨーロッパの統合モデルは危機にあり、その修復はむつかしい。離脱はイギリス的なリアリズムである。イギリスとEUとの間には常に齟齬があった。イギリスにとって統合とは経済だけである。ユーロスターがロンドンと大陸の諸都市を結んでも、EU単一市場がイギリス人をヨーロッパ人にすることはなかった。

2に、EUを離脱する方が、27か国で複雑なアレンジを模索するより単純だ。その目的は、イギリス保守党の統一を維持し、権力を保持し続けることである。

3に、大英帝国は、脅威と感じる外的な圧力に対して寛大ではありえない。メイの演説はチャーチルを彷彿とさせる。イギリス国民は、ヨーロッパに代わる道がある、と確信した。

これは率直な意見であり、離脱とは帝国への懐古である。経済問題よりも主権が優先される。イギリスはもちろん民主主義国だが、プーチンがロシア国民に述べた言葉は、彼女の演説に似ていなくもない。「人はパンのみで生きるのではない。主権を回復し、国家の栄光を取り戻すことは、経済的なリスクに値する。」

しかし、メイは現実的だろうか? しかも、ドナルド・トランプがアメリカに登場した。自由貿易への情熱やロシアへの疑念は、メイとトランプでは全く異なっている。2人の個性が友好的な雰囲気を作り出すとは考えられない。

誰でも思うことだが、もしアメリカの選挙が先に行われていたら、イギリスはBrexitを選択しただろうか? ヨーロッパではなく、トランプのアメリカを頼るのか?

2次世界大戦後、チャーチルはヨーロッパ人に統合を勧めたが、もしイギリスが大西洋同盟とヨーロッパとの選択を問われたら、イギリスは常にアメリカを選ぶだろう、と答えた。当時は、アメリカが西側の同盟を指導し、中国は内戦状態であった。

もはやそうではない。中国はアメリカと対抗しつつあり、イギリスは孤立して、アメリカの保障は確かなものではない。イギリスが「栄光ある孤立」のカードを切るには都合の悪い情勢だ。メイは3つの賭けをした。UKについて、USについて、そして、世界情勢について。

ヨーロッパに代わって、諸国民の連携や国際機関が頼りになるし、トランプも最終的には合理的な政治指導者になる。グローバリゼーションは社会的な悪影響によって阻止される。

Brexitとトランプの後、地政学的な西側の維持にとって独仏の連携が重要になった。ドイツとフランスの選挙が、そのバランスを握る。

Bloomberg JAN 26, 2017

Post-Brexit, the U.K.'s Future Is Creative

Leonid Bershidsky


後半へ続く)